(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】プーリ圧制御弁のダンピング圧供給回路
(51)【国際特許分類】
F16H 61/00 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
F16H61/00
(21)【出願番号】P 2022558917
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2021034558
(87)【国際公開番号】W WO2022091638
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2020183956
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野武 久雄
【審査官】中野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/038503(WO,A1)
【文献】特開2015-148312(JP,A)
【文献】特開2015-148310(JP,A)
【文献】特開2009-115307(JP,A)
【文献】特開平10-141456(JP,A)
【文献】特開平10-141455(JP,A)
【文献】米国特許第5415606(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルポンプの吐出油をライン圧に調圧するプレッシャレギュレータバルブと、
前記ライン圧を元圧として第1のパイロット圧を生成する第1パイロットバルブと、
前記第1のパイロット圧を元圧として第2のパイロット圧を生成する第2パイロットバルブと、
前記第2のパイロット圧を元圧として第3のパイロット圧を生成する第3パイロットバルブと、
を有し、
前記第1のパイロット圧は、ベルト無段変速機のプライマリプーリ圧を制御するための信号圧であるプライマリ信号圧を生成するプライマリソレノイドバルブ、及び、前記ベルト無段変速機のセカンダリプーリ圧を制御するための信号圧であるセカンダリ信号圧を生成するセカンダリソレノイドバルブに元圧として導入し、
前記第2のパイロット圧は、トルクコンバータのロックアップクラッチのロックアップ圧を制御するための信号圧を生成するロックアップソレノイドバルブに元圧として導入し、
前記第3のパイロット圧は、前記プライマリ信号圧に基づき前記プライマリプーリ圧を制御するプライマリプーリ圧制御弁、及び、前記セカンダリ信号圧に基づき前記セカンダリプーリ圧を制御するセカンダリプーリ圧制御弁にダンピング圧として導入する、
プーリ圧制御弁のダンピング圧供給回路。
【請求項2】
請求項1に記載のプーリ圧制御弁のダンピング圧供給回路であって、
前記第3のパイロット圧は、前記プライマリ信号圧と対向するように前記プライマリプーリ圧制御弁に導入されるとともに、前記セカンダリ信号圧と対向するように前記セカンダリプーリ圧制御弁に導入される、
プーリ圧制御弁のダンピング圧供給回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプーリ圧制御弁のダンピング圧供給回路であって、
前記第2のパイロット圧は、前記ライン圧の設定範囲下限以上に設定され、
前記第3のパイロット圧は、前記ライン圧の前記設定範囲下限より低く設定される、
プーリ圧制御弁のダンピング圧供給回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプーリ圧制御弁のダンピング圧供給回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の
図2には、無段変速機のコントロールバルブユニット内の概略を表す油圧回路図が開示されている。特許文献1では、
図2に示されるように油路(401)から分岐した油路(402)にパイロットバルブ(25)が設けられ、パイロットバルブ(25)はライン圧から予め設定された所定圧を生成してパイロット圧油路(403)に出力する。これにより、ライン圧ソレノイドバルブ(30)、クラッチ圧ソレノイドバルブ(31)、ロックアップソレノイドバルブ(32)、プライマリソレノイドバルブ(33)、セカンダリソレノイドバルブ(34)から出力される信号圧の元圧が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の油圧回路の改良として、パイロットバルブをもう一つ追加することが考えられる。2つのパイロットバルブにより2段階で減圧を行うことで、低圧及び高圧の2種類のパイロット圧を生成できる。
【0005】
この場合、各ソレノイドバルブに対して2種類のパイロット圧を使い分けることが考えられる。具体的には、高圧のパイロット圧はライン圧ソレノイドバルブ、クラッチ圧ソレノイドバルブ、プライマリソレノイドバルブ、セカンダリソレノイドバルブの元圧とし、低圧のパイロット圧はロックアップソレノイドバルブの元圧とすることが考えられる。さらに、低圧のパイロット圧はプライマリプーリ圧やセカンダリプーリ圧を制御するレギュレータバルブつまりプーリ圧制御弁にダンピング圧として導入して利用することが考えられる。
【0006】
しかしながら、低圧のパイロット圧がライン圧の設定範囲下限以上だと、ライン圧が低圧のパイロット圧以下になった場合に、2つのパイロットバルブはともにライン圧をパイロット圧として出力する。つまりこの場合は低圧のパイロット圧がライン圧となる。
【0007】
このためこの場合は、ライン圧の振動つまりライン圧の上下変動の繰り返しがプーリ制御弁のダンピング圧の振動となり、プライマリプーリ圧やセカンダリプーリ圧の変動を招く虞がある。
【0008】
また、ロックアップソレノイドバルブは元圧とされるパイロット圧が低くなると信号圧の使用範囲が狭くなる。このため、低圧のパイロット圧を低く設定し過ぎると、ロックアップクラッチの制御性が悪化し、締結ショックの発生を招く虞がある。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、ロックアップクラッチの制御性とプーリ圧制御弁のダンピング性とを確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様のプーリ圧制御弁のダンピング圧供給回路は、オイルポンプの吐出油をライン圧に調圧するプレッシャレギュレータバルブと、前記ライン圧を元圧として第1のパイロット圧を生成する第1パイロットバルブと、前記第1のパイロット圧を元圧として第2のパイロット圧を生成する第2パイロットバルブと、前記第2のパイロット圧を元圧として第3のパイロット圧を生成する第3パイロットバルブとを有する。前記第1のパイロット圧は、ベルト無段変速機のプライマリプーリ圧を制御するための信号圧であるプライマリ信号圧を生成するプライマリソレノイドバルブ、及び、前記ベルト無段変速機のセカンダリプーリ圧を制御するための信号圧であるセカンダリ信号圧を生成するセカンダリソレノイドバルブに元圧として導入される。前記第2のパイロット圧は、トルクコンバータのロックアップクラッチのロックアップ圧を制御するための信号圧を生成するロックアップソレノイドバルブに元圧として導入される。前記第3のパイロット圧は、前記プライマリ信号圧に基づき前記プライマリプーリ圧を制御するプライマリプーリ圧制御弁、及び、前記セカンダリ信号圧に基づき前記セカンダリプーリ圧を制御するセカンダリプーリ圧制御弁にダンピング圧として導入される。
【発明の効果】
【0011】
上記態様によれば、ロックアップソレノイドバルブの元圧機能を持たせた第2のパイロット圧を元圧として第3のパイロット圧を生成し、第3のパイロット圧にプーリ圧制御弁のダンピング圧機能を持たせる。このため、第2のパイロット圧を適切な大きさに設定しつつ第3のパイロット圧をライン圧の設定範囲下限より低く設定することが可能になる。従って、ロックアップクラッチの制御性とプーリ圧制御弁のダンピング性とを確保することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1は車両の概略構成図である。車両はエンジンENGとトルクコンバータTCと前後進切替機構SWMとバリエータVAとを備える。車両では変速機TMがトルクコンバータTCと前後進切替機構SWMとバリエータVAとを有するベルト無段変速機とされる。
【0015】
エンジンENGは車両の駆動源を構成する。エンジンENGの動力はトルクコンバータTC、前後進切替機構SWM、バリエータVAを介して駆動輪DWへと伝達される。換言すれば、トルクコンバータTC、前後進切替機構SWM、バリエータVAは、エンジンENGと駆動輪DWとを結ぶ動力伝達経路に設けられる。
【0016】
トルクコンバータTCは、流体を介して動力を伝達する。トルクコンバータTCでは、ロックアップクラッチLUを締結することで、動力伝達効率が高められる。
【0017】
前後進切替機構SWMは、エンジンENGとバリエータVAとを結ぶ動力伝達経路に設けられる。前後進切替機構SWMは、入力される回転の回転方向を切り替えることで車両の前後進を切り替える。前後進切替機構SWMは、前進レンジ選択の際に係合される前進クラッチFWD/Cと、リバースレンジ選択の際に係合される後進ブレーキREV/Bとを備える。前進クラッチFWD/C及び後進ブレーキREV/Bを解放すると、変速機TMがニュートラル状態、つまり動力遮断状態になる。
【0018】
バリエータVAは、プライマリプーリPRIと、セカンダリプーリSECと、プライマリプーリPRI及びセカンダリプーリSECに巻き掛けられたベルトBLTとを有するベルト無段変速機構を構成する。プライマリプーリPRIにはプライマリプーリPRIの油圧であるプライマリプーリ圧Ppriが、セカンダリプーリSECにはセカンダリプーリSECの油圧であるセカンダリプーリ圧Psecが、後述する油圧制御回路1からそれぞれ供給される。
【0019】
変速機TMは、メカニカルオイルポンプMPと電動オイルポンプEPとモータMとをさらに有して構成される。メカニカルオイルポンプMPは油圧制御回路1に油を圧送する。メカニカルオイルポンプMPは、エンジンENGの動力により駆動される。電動オイルポンプEPは、メカニカルオイルポンプMPとともに、或いは単独で油圧制御回路1に油を圧送する。電動オイルポンプEPは、メカニカルオイルポンプMPに対して補助的に設けられる。モータMは電動オイルポンプEPを駆動する。電動オイルポンプEPはモータMを有して構成されると把握されてもよい。
【0020】
変速機TMは、油圧制御回路1と変速機コントローラ2とをさらに有して構成される。油圧制御回路1は複数の流路、複数の油圧制御弁で構成され、メカニカルオイルポンプMPや電動オイルポンプEPから供給される油を調圧して変速機TMの各部位に供給する。
【0021】
変速機コントローラ2は変速機TMを制御するためのコントローラであり、各種センサ等から入力される信号に基づき油圧制御回路1や電動オイルポンプEPを制御する。油圧制御回路1は、変速機コントローラ2からの指示に基づき、ロックアップクラッチLU、前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B、プライマリプーリPRI、セカンダリプーリSEC等の油圧制御を行う。
【0022】
図2は油圧制御回路1の概略構成図である。油圧制御回路1はプレッシャレギュレータバルブ11と、プライマリレギュレータバルブ12と、セカンダリレギュレータバルブ13と、クラッチレギュレータバルブ14と、トルコンレギュレータバルブ15と、ロックアップレギュレータバルブ16と、第1パイロットバルブ17と、ライン圧ソレノイドバルブ18と、プライマリソレノイドバルブ19と、セカンダリソレノイドバルブ20と、クラッチ圧ソレノイドバルブ21と、第2パイロットバルブ22と、ロックアップソレノイドバルブ23と、第3パイロットバルブ24とを有する。
【0023】
プレッシャレギュレータバルブ11は、メカニカルオイルポンプMP及び電動オイルポンプEPのうち少なくともいずれかのオイルポンプの吐出油をライン圧PLに調圧する。ライン圧PLを指し示す破線は油路ではなく油圧を指し示すことを意味する。プレッシャレギュレータバルブ11は、オイルポンプ吐出油の一部をドレンしながら調圧を行う。ライン圧PLに調圧された油はプライマリレギュレータバルブ12とセカンダリレギュレータバルブ13と第1パイロットバルブ17とに供給される。
【0024】
プライマリレギュレータバルブ12とセカンダリレギュレータバルブ13とはプーリ圧制御弁であり、ライン圧PLに調圧された油をプーリ圧に調圧することによりプーリ圧を制御する。プーリ圧は、プライマリレギュレータバルブ12の場合はプライマリプーリ圧Ppriとされ、セカンダリレギュレータバルブ13の場合はセカンダリプーリ圧Psecとされる。
【0025】
クラッチレギュレータバルブ14にはプレッシャレギュレータバルブ11からドレンされた油が供給される。クラッチレギュレータバルブ14はプレッシャレギュレータバルブ11からドレンされた油をクラッチ圧に調圧する。クラッチ圧に調圧された油は前進クラッチFWD/C及び後進ブレーキREV/Bのいずれかに選択的に供給される。クラッチレギュレータバルブ14は油の一部をドレンしながら調圧を行う。
【0026】
トルコンレギュレータバルブ15にはクラッチレギュレータバルブ14からドレンされた油が供給される。トルコンレギュレータバルブ15はプレッシャレギュレータバルブ11からドレンされた油をトルクコンバータTCのコンバータ圧に調圧する。トルコンレギュレータバルブ15は油の一部をドレンしながら調圧を行い、ドレンされた油は変速機TMの潤滑系に供給される。コンバータ圧に調圧された油はトルクコンバータTCとロックアップレギュレータバルブ16とに供給される。
【0027】
ロックアップレギュレータバルブ16はコンバータ圧に調圧された油をロックアップ圧に調圧する。ロックアップクラッチLUはコンバータ圧とロックアップ圧との差圧であるロックアップ差圧によりロックアップ制御される。ロックアップ圧に調圧された油はロックアップクラッチLUに供給される。
【0028】
プレッシャレギュレータバルブ11はライン圧ソレノイドバルブ18が生成する信号圧に基づき調圧を行う。プライマリレギュレータバルブ12及びプライマリソレノイドバルブ19、セカンダリレギュレータバルブ13及びセカンダリソレノイドバルブ20、クラッチレギュレータバルブ14及びクラッチ圧ソレノイドバルブ21、ロックアップレギュレータバルブ16及びロックアップソレノイドバルブ23についても同様である。
【0029】
ライン圧ソレノイドバルブ18、プライマリソレノイドバルブ19、セカンダリソレノイドバルブ20、クラッチ圧ソレノイドバルブ21それぞれには、第1のパイロット圧P1が元圧として導入される。第1のパイロット圧P1は第1パイロットバルブ17によりライン圧PLを元圧として生成される。第1のパイロット圧P1は第2パイロットバルブ22にも導入される。
【0030】
第2パイロットバルブ22は、第1のパイロット圧P1を元圧として第2のパイロット圧P2を生成する。第2のパイロット圧P2はライン圧PLの設定範囲下限以上に設定される。第2のパイロット圧P2はロックアップクラッチLUの制御性を考慮して予め設定される。第2のパイロット圧P2はロックアップソレノイドバルブ23と第3パイロットバルブ24とに導入される。
【0031】
ロックアップソレノイドバルブ23は、第2のパイロット圧P2を元圧としてロックアップ信号圧を生成する。ロックアップ信号圧はトルクコンバータTCのロックアップクラッチLUのロックアップ圧を制御するためにロックアップソレノイドバルブ23が生成する信号圧である。
【0032】
第3パイロットバルブ24は、第2のパイロット圧P2を元圧として第3のパイロット圧P3を生成する。第3のパイロット圧P3はライン圧PLの設定範囲下限より低く設定される。第3のパイロット圧P3はプライマリレギュレータバルブ12及びセカンダリレギュレータバルブ13のダンピング性を考慮して予め設定される。第3のパイロット圧P3はプライマリレギュレータバルブ12とセカンダリレギュレータバルブ13とにダンピング圧として導入される。
【0033】
ダンピング圧として導入される第3のパイロット圧P3は、プライマリ信号圧と対向するようにプライマリレギュレータバルブ12に導入される。プライマリ信号圧はプライマリプーリ圧Ppriを制御するためにプライマリソレノイドバルブ19が生成する信号圧である。
【0034】
同様に、ダンピング圧として導入される第3のパイロット圧P3は、セカンダリ信号圧と対向するようにセカンダリレギュレータバルブ13に導入される。セカンダリ信号圧はセカンダリプーリ圧Psecを制御するためにセカンダリソレノイドバルブ20が生成する信号圧である。
【0035】
次に本実施形態の主な作用効果について説明する。
【0036】
ここで、仮に第2のパイロット圧P2をプライマリレギュレータバルブ12及びセカンダリレギュレータバルブ13にダンピング圧として導入すれば、ロックアップソレノイドバルブ23の元圧機能と、プライマリレギュレータバルブ12及びセカンダリレギュレータバルブ13のダンピング圧機能とを第2のパイロット圧P2に持たせることができ、第3パイロットバルブ24は不要となる。
【0037】
しかしながらこの場合、第2のパイロット圧P2が高いと、プライマリレギュレータバルブ12及びセカンダリレギュレータバルブ13それぞれにおいて、ダンピング圧に基づく作用力に抗してスプールを付勢するスプリングを強化する必要が生じる。但し、油圧制御回路1ではレイアウト制限が厳しくそのようなスプリングを成立させることが困難となる。このためこの場合は、第2のパイロット圧P2を下げる必要がある。
【0038】
その一方で、ロックアップソレノイドバルブ23は元圧とされる第2のパイロット圧P2が低くなるとロックアップ信号圧の使用範囲が狭くなる。このため、第2のパイロット圧P2を低く設定し過ぎると、ロックアップクラッチLUの制御性が悪化し、締結ショックの発生を招くことが懸念される。
【0039】
これらのことから、ロックアップクラッチLUの制御性が悪化しない範囲内で第2のパイロット圧P2を下げようとすると、第2のパイロット圧P2がライン圧PLの設定範囲下限以上に設定されることがある。
【0040】
ライン圧PLは高速走行時に設定範囲下限に調整され得る。ライン圧PLが高速走行時に第2のパイロット圧P2以下になると、第2パイロットバルブ22からはライン圧PLが第2のパイロット圧P2として出力される。
【0041】
このときロックアップクラッチLUは締結されたままとなる。このため、第2のパイロット圧P2以下のライン圧PLが第2のパイロット圧P2としてロックアップソレノイドバルブ23に導入されても、ロックアップクラッチLUの制御性には影響しない。
【0042】
ところが、第2のパイロット圧P2としてのライン圧PLがプライマリソレノイドバルブ19及びセカンダリソレノイドバルブ20にダンピング圧として導入されると、ライン圧PLの振動がダンピング圧の振動となる。結果、この場合はプライマリプーリ圧Ppriやセカンダリプーリ圧Psecの変動を招くことが懸念される。
【0043】
(1)本実施形態にかかる油圧制御回路1はプーリ圧制御弁のダンピング圧供給回路に相当し、プレッシャレギュレータバルブ11と、第1パイロットバルブ17と、第2パイロットバルブ22と、第3パイロットバルブ24とを有する。第1パイロットバルブ17により生成される第1のパイロット圧P1は、プライマリ信号圧を生成するプライマリソレノイドバルブ19、及び、セカンダリ信号圧を生成するセカンダリソレノイドバルブ20に元圧として導入される。第2パイロットバルブ22により生成される第2のパイロット圧P2は、ロックアップ信号圧を生成するロックアップソレノイドバルブ23に元圧として導入される。第3パイロットバルブ24により生成される第3のパイロット圧P3は、プライマ信号圧に基づきプライマリプーリ圧Ppriを制御するプライマリレギュレータバルブ12、及び、セカンダリ信号圧に基づきセカンダリプーリ圧Psecを制御するセカンダリレギュレータバルブ13にダンピング圧として導入される。
【0044】
このような構成によれば、ロックアップソレノイドバルブ23の元圧機能を持たせた第2のパイロット圧P2を元圧として第3のパイロット圧P3を生成し、第3のパイロット圧P3にプライマリレギュレータバルブ12及びセカンダリレギュレータバルブ13のダンピング圧機能を持たせる。
【0045】
このためこのような構成によれば、第2のパイロット圧P2を適切な大きさに設定しつつ第3のパイロット圧P3をライン圧PLの設定範囲下限より低く設定することが可能になる。従って、ロックアップクラッチLUの制御性とプライマリレギュレータバルブ12及びセカンダリレギュレータバルブ13のダンピング性とを確保することが可能になる。
【0046】
(2)油圧制御回路1では、第3のパイロット圧P3はプライマリ信号圧と対向するようにプライマリレギュレータバルブ12に導入されるとともに、セカンダリ信号圧と対向するようにセカンダリレギュレータバルブ13に導入される。
【0047】
このような構成によれば、第3のパイロット圧P3をダンピング圧として適切に機能させることができる。
【0048】
(3)油圧制御回路1では、第2のパイロット圧P2はライン圧PLの設定範囲下限以上に設定され、第3のパイロット圧P3はライン圧PLの設定範囲下限より低く設定される。
【0049】
このような構成によれば、第2のパイロット圧P2をプライマリレギュレータバルブ12及びセカンダリレギュレータバルブ13のダンピング圧として導入した場合にプライマリプーリ圧Ppri、セカンダリプーリ圧Psecの変動を招き得るという事情に照らし、ロックアップクラッチLUの制御性とプライマリレギュレータバルブ12及びセカンダリレギュレータバルブ13のダンピング性とを適切に確保することができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0051】
1 油圧制御回路(ダンピング圧供給回路)
11 プレッシャレギュレータバルブ
12 プライマリレギュレータバルブ(プライマリプーリ圧制御弁)
13 セカンダリレギュレータバルブ(セカンダリプーリ圧制御弁)
17 第1パイロットバルブ
19 プライマリソレノイドバルブ
20 セカンダリソレノイドバルブ
23 ロックアップソレノイドバルブ
22 第2パイロットバルブ
24 第3パイロットバルブ
EP メカニカルオイルポンプ(オイルポンプ)
LU ロックアップクラッチ
MP 電動オイルポンプ(オイルポンプ)
TC トルクコンバータ
TM 変速機(ベルト無段変速機)