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特許7412597ダイナミックレンジを使用した分散型音響検知の改善
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】ダイナミックレンジを使用した分散型音響検知の改善
(51)【国際特許分類】
   G01H 9/00 20060101AFI20240104BHJP
   H04B 10/071 20130101ALI20240104BHJP
   H04B 10/077 20130101ALI20240104BHJP
   G01D 5/353 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
G01H9/00 E
H04B10/071
H04B10/077
G01D5/353 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022567807
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-20
(86)【国際出願番号】 US2021031667
(87)【国際公開番号】W WO2021231344
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-11-22
(31)【優先権主張番号】63/023,288
(32)【優先日】2020-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/316,621
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504080663
【氏名又は名称】エヌイーシー ラボラトリーズ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】NEC Laboratories America, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】イプ、 エズラ
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、 ユエ-カイ
(72)【発明者】
【氏名】ジ、 フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】村上 修司
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0014071(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0316494(US,A1)
【文献】特開2019-060666(JP,A)
【文献】特開2017-003339(JP,A)
【文献】特開昭62-110160(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0348086(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0187223(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0222811(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00-17/00
G01D 5/26- 5/38
H04B10/00-10/90
H04J14/00-14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型光ファイバ検知/分散型音響検知システムであって、
ある長さの光検知ファイバと、
前記光検知ファイバと光通信する分散型光ファイバ検知/分散型音響検知のインタロゲータとを有し、
前記インタロゲータは、
光プローブパルスを生成し、該光プローブパルスを前記光検知ファイバに導入するためのレーザ光源と、
前記光検知ファイバを行き来するプローブパルスから生じるレイリー後方散乱を受信するコヒーレント受信機と、
コヒーレント検出前の前記レイリー後方散乱のダイナミックレンジを抑制するダイナミックレンジ抑制器とを有し、
前記ダイナミックレンジ抑制器は、コヒーレント検出前の前記レイリー後方散乱を増幅する増幅器のポンプ電流を制御するフィードバックループを含み、
前記フィードバックループは、前記レイリー後方散乱の信号の光包絡線を回復する包絡線検出器と、その後に前記レイリー後方散乱の信号振幅包絡線の逆数に実質的に等しいポンプ電流を生成する信号調整器とを含む、システム。
【請求項2】
請求項に記載のシステムにおいて、
前記コヒーレント受信機の前段に配置された光振幅変調器であって、前記レイリー後方散乱の信号が前記コヒーレント受信機の前に当該光振幅変調器に印加されるように配置された光振幅変調器をさらに含む、システム。
【請求項3】
請求項に記載のシステムにおいて、
前記光振幅変調器のための駆動電圧が、前記レイリー後方散乱の信号の光包絡線を回復する包絡線検出器と、その後にバイアス電圧および振幅変動を提示する前記光振幅変調器のための駆動電圧を生成する信号調整器とを含むフィードバックループ内で生成される、システム。
【請求項4】
請求項に記載のシステムにおいて、
前記信号調整器は、アナログまたはデジタル電子機器に実装され、追加のダイナミックレンジ抑制を生成するように構成された凹型非線形関数を提示する、システム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムにおいて、
ダイナミックレンジ抑制は、アナログ-デジタル変換の前に、コヒーレント受信機光検出器の出力から凹状非線形関数を通すことにより、電気信号を用いて行われる、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、分散型光ファイバ検知に関し、より詳細には、ダイナミックレンジ抑制を使用する分散型音響検知に関する。
【背景技術】
【0002】
公知のように、分散型光ファイバ検知(DFOS)およびより特に分散型音響検知は、任意の数の重要な用途に適用された場合に、大きな有用性を示している。そのような重要な適用可能性を考慮すると、分散型音響感知における改善は、当技術分野における歓迎すべき進歩を表す。
【発明の概要】
【0003】
当技術分野の進歩は、光学素子および電気素子を含むフィードバックループ、またはコヒーレント検出後に電気領域内の非線形素子を使用することによって、光時間領域反射率測定のダイナミックレンジ抑制を使用して、強化された分散型音響検知を提供するシステム、方法、および構造に向けられた本開示の態様に従ってなされる。フィードバックループを使用する場合、コヒーレントOTDRの周期波形の振幅を反転することができる。これは、振幅ダイナミックレンジを最小化することを目標として、コヒーレント検出前に受信光信号の光学的前置補償を可能にする。あるいは、電気領域における非線形要素は、アナログ-デジタル変換器(ADC)によるサンプリング前に振幅ダイナミックレンジを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本開示のより完全な理解は、添付図面を参照することによって実現され得る。
【0005】
図1】レイリー後方散乱のコヒーレント検出を使用する分散型音響検知(DAS)のための例示的な従来技術のインタロゲータの概略図を示す図である。
【0006】
図2】標準的なシングルモードファイバ(SSMF)の典型的なコヒーレント光時間領域反射率測定(OTDR)トレースのプロットを示し、ファイバ減衰によるレイリー後方散乱振幅の大きなダイナミックレンジ変動を示す図である。
【0007】
図3】本開示の態様による、コヒーレント受信機の前段に配置された増幅器の利得のフィードバック制御を使用して、OTDRのダイナミックレンジを抑制する例示的なOTDR配置の概略図を示す図である。
【0008】
図4】本開示の態様による、挿入損失を調整するために振幅変調器およびフィードバック制御を使用してOTDRのダイナミックレンジを抑制する例示的なOTDR配置の概略図を示す図である。
【0009】
図5A】インライン非線形電気素子による支援がない場合の振幅変調器を使用したOTDRダイナミックレンジ抑制のシミュレーションを示すプロットである。
図5B】本開示の態様によるフィードバックループ内に双曲線正接非線形電気素子を挿入した場合の振幅変調器を使用したOTDRダイナミックレンジ抑制のシミュレーションを示すプロットである。
【0010】
図6】本開示の態様による、非線形アナログ関数Fを使用して、電気領域内のOTDRのダイナミックレンジを抑制する、例示的なOTDR配置の概略図を示す図である。
【0011】
例示的な実施形態は、図面および詳細な説明によってより完全に説明される。しかしながら、本開示による実施形態は、様々な形態で実施することができ、図面および詳細な説明に記載された特定のまたは例示的な実施形態に限定されない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下は、単に本開示の原理を例示するものである。したがって、当業者は、本明細書に明示的に記載または図示されていないが、本開示の原理を具現化し、その精神および範囲内に含まれる様々な構成を考案することができることが理解されよう。
【0013】
さらに、本明細書に列挙されるすべての実施例および条件付き言語は、読者が本開示の原理および本発明者によって当該技術分野を促進するために寄与される概念を理解するのを助けるための教育目的のためにのみ意図され、そのような具体的に列挙された実施例および条件に限定されないと解釈されるべきである。
【0014】
さらに、本開示の原理、態様、および実施形態を列挙する本明細書のすべての記述、ならびにその具体例は、その構造的および機能的均等物の両方を包含することを意図する。さらに、そのような等価物は、現在知られている等価物および将来開発される等価物、すなわち、構造にかかわらず同じ機能を実行する開発された任意の要素の両方を含むことが意図される。
【0015】
したがって、たとえば、本明細書の任意のブロック図は、本開示の原理を実施する例示的な回路の概念図を表すことが当業者には諒解されよう。
【0016】
本明細書で明示的に指定されない限り、図面を含む図は、一定の縮尺で描かれていない。
【0017】
いくつかの追加的背景として、我々は、まず、分散型光ファイバ検知(DFOS)が、温度(分散型温度検知-DTS)、振動(分散型振動検知-DVS)、伸張レベルなどの環境条件を検出するための重要で広く使用されている技術であり、それは、今度はインタロゲータに接続される光ファイバケーブルに沿った任意の場所であることに着目することから始める。周知のように、現代のインタロゲータは、ファイバへの入力信号を生成し、反射/散乱され、続いて受信された信号を検出/分析するシステムである。信号を分析し、ファイバの長さ方向に沿って遭遇する環境条件を示す出力を生成する。そのように受信された信号は、ラマン後方散乱、レイリー後方散乱、およびブリリオン後方散乱のようなファイバ内の反射から生じることがある。また、複数のモードの速度差を利用した順方向の信号にすることもできる。一般性を損なうことなく、以下の説明では、同様のアプローチを転送された信号にも適用することができるが、反射された信号を仮定する。
【0018】
理解されるように、現代のDFOSシステムは、周期的に光パルス(または任意の符号化信号)を生成し、それらを光ファイバに注入するインタロゲータを含む。注入された光パルス信号は、光ファイバに沿って搬送される。
【0019】
ファイバの長さ方向に沿った位置で、信号の小さな部分が反射され、インタロゲータに戻って搬送される。反射された信号は、インタロゲータが検出するために使用する情報、例えば、機械的振動を示すパワーレベル変化を搬送する。
【0020】
反射された信号は、電気領域に変換され、インタロゲータの内部で処理される。パルス注入時間および時間信号が検出されることに基づいて、インタロゲータは、信号がファイバに沿ったどの位置から来ているかを決定し、それにより、ファイバに沿った各位置の活動を検知することができる。
【0021】
先に述べたように、レイリー後方散乱に基づくコヒーレント光時間領域反射率測定(OTDR)を用いた分散型音響検知(DAS)は、音響振動を検出するためのよく知られた技術である。図1は、レイリー後方散乱のコヒーレント検出を使用する分散型音響検知(DAS)のための例示的な従来技術のインタロゲータの概略図を示す。
【0022】
その図から観察されるように、低位相雑音レーザから出力された光は、音響光変調器(AOM)を通して導かれ、プローブ信号x(t)を生成し、これは、光ブースタ増幅器の後段にサーキュレータを経由して、被試験センサファイバ(FUT)に入射される。FUTで生成されたレイリー後方散乱は、サーキュレータの(第3の)ポートで回復される。この後方散乱信号は、二重偏波90°ハイブリッドとそれに続く平衡光検出器(BPD)から成る通常のコヒーレント受信機を駆動する局部発振器(LO)と同じ入力レーザを用いてコヒーレントに検出される。デジタル信号処理(DSP)を用いて、回復したベースバンド電場に基づいて、各ファイバ位置での振動を推定する。
【0023】
単一偏波のみを考慮する場合、受信されるコヒーレント光時間領域反射率測定(OTDR)シグナルは、
【数1】
と書くことができる。
【0024】
ここで、プローブ信号は、典型的にはパルス列
【数2】
であるが、式(1)の出力を符号化シーケンスの複素共役と相関させることによって、x*(t)*y(t)はx*(t)*x(t)がデルタ関数に近いとき、レイリーインパルス応答h(t)の推定値をもたらすこともできる。n(t)は、受信機によって追加される等価の加算性白色ガウス雑音(AWGN)であり、光増幅器の自然放射増幅光(ASE)、ショット雑音、および熱雑音を含むことに留意されたい。また、
【数3】
は、レイリー散乱による関心のある複素数値インパルス応答であり、
【0025】
【数4】
の形を取り、ここで、r(z’)は位置z’におけるレイリー散乱体の複素値振幅であり、e-2αz’はサーキュレータ出力からそのファイバ位置への往復伝搬損失であることに注意する。
【0026】
レイリー散乱体は、通常、(ξth=(NA)2/4α)の理論的分散を用いて円形ガウス型可変
【数5】
としてモデル化することができ、それぞれファイバの開口数(NA)と損失係数(α)に依存する。
【0027】
ファイバ上に音波が存在することによって誘起される歪が存在する場合、レイリー散乱体をさらに次のようにモデル化することができる。
【数6】
ここで、r0(z’)は、緩和されたファイバのレイリー散乱体の振幅であり、
【数7】
は、サーキュレータ出力からファイバ位置z’までの蓄積された引張ひずみによって生じる位相遅延である。
【0028】
図2は、標準単一モードファイバ(SSMF)の典型的なコヒーレント光時間領域反射率測定(OTDR)トレースのプロットを示し、ファイバ減衰によるレイリー後方散乱振幅の大きなダイナミックレンジ変動を示す。
【0029】
そのプロットから分かるように、包絡線は、往復伝搬損失e-2αz’のために指数関数的に減衰する。長いファイバを問い合わせるとき、ダイナミックレンジが問題となり得る。例えば、減衰0.2dB/kmの標準単一モードファイバ(SSMF)の120kmスパンは、48dBの最大往復損失を示すであろう。
【0030】
当業者が容易に理解するように、このような極端なダイナミックレンジは、複数の問題を生じる。より詳細には、コヒーレントOTDR信号は局部発振器(LO)と結合され、平衡フォトダイオード(BPD)で検出される。OTDRの初期部分における高い信号電力は、信号-信号ビーティング(すなわち、不十分なLO対信号電力比)によって引き起こされる干渉の影響を受けやすくなり、BPDに高電力損失を引き起こすことさえある。受光した光信号を光検出前に減衰させると、トレースの端部は、低い光信号電力によるショット雑音および熱雑音の影響を受けやすくなる。
【0031】
有利には、本開示の態様によるシステム、方法、および構造は、OTDRトレースのダイナミックレンジを低減する。
【0032】
図3は、本開示の態様による、コヒーレント受信機の前段に配置された増幅器の利得のフィードバック制御を使用して、OTDRのダイナミックレンジを抑制する例示的なOTDR配置の概略図を示す。
【0033】
その図を参照すると、その出力電力を安定に保つ目的で、コヒーレント受信機の前段に最後のEDFAのポンプ電流を制御するためにフィードバックループが採用されることが観察され得る。フィードバックループに関して、結合器は、任意の受光の一部をタップし、それは、低速フォトダイオードを含む包絡線検出器を通って導かれ、続いて、電気的低域通過フィルタが導かれる。
【0034】
包絡線検出器は、レイリーフェージング(例えば、図2の差し込み図参照)によって引き起こされるいかなるより速い振幅変動にも応答することなく、電力プロファイル
【数8】
を回復する。この条件は、電気的LPFの3dB帯域幅をαt=2(c/neff)αよりも大きくしてOTDR包絡線の指数関数的減衰を追跡し、プローブパルスの帯域幅である1/Tより小さくすることによって満たされる。次いで、包絡線
【数9】
を反転し、調整して、EDFAのためのポンプ電流Ip(t)を生成する。
【0035】
反転前にバイアスを追加することは、出力が有界であることを保証することであることに注意する。調節可能な電気的遅延τは、ポンプ電流を受信信号に同期させる。コヒーレントOTDR包絡線は周期的であるため、フィードバック制御が可能である。ループの伝搬遅延は、パルス繰り返し周期Tpの整数倍でなければならない。
【0036】
図4は、本開示の態様による、挿入損失を調整するために振幅変調器(AM)およびフィードバック制御を使用してOTDRのダイナミックレンジを抑制する、別の例示的なOTDR配置の概略図を示す。
【0037】
前述の構成と同様に、結合器は、包絡線検出のために、コヒーレント受信器の前段で受光の一部をタップする。次いで、検出された包絡線
【数10】
は、スケーリングされ、任意の非線形関数
【数11】
が後に続き、結果として得られる信号がVampの振幅変動を有する。AMは、(Vπ-Vamp)よりもわずかに小さな電圧Vbiasでバイアスされ、したがって、入力光電力Pin(t)が極大であるとき、AM駆動電圧は、ほぼVπになり、出力
【数12】
が抑制される。
【0038】
ampおよびVbiasの値は、ダイナミックレンジのばらつきを抑えることと、AMを通る信号損失を最小化すること(つまり、振幅特性のピーク付近のAMにバイアスをかけることは、Pin(t)が小さな場合に挿入損失を最小化することになり、これは、光信号対雑音比(SNR)を維持するために重要である。)との最善のトレードオフを達成するために選択されることに注意する。
【0039】
図5(A)および図5(B)は、本開示の態様による、振幅変調器を使用したOTDRダイナミックレンジ抑制のシミュレーションを示すプロットであり、図5(A)は、インライン非線形電気素子による支援が無い場合を示し、図5(B)は、フィードバックループ内に双曲線正接非線形電気素子を挿入した場合を示す。
【0040】
図5(A)は、0.2dB/kmの損失(48dBのダイナミックレンジ)を持つ120kmファイバのシミュレーション例を示しており、ここで信号はVπ=3VのAMを通過し、Vbias=2.235VとVamp=0.75Vとが選択され、7.8dBのダイナミックレンジ抑制を達成した。更なるダイナミックレンジ抑圧は、図4の包絡線検出器出力を固定するために非線形関数
【数13】
を使用することにより可能である。
【0041】
図5(B)に示す第2のシミュレーション実施例では、フィードバックループに双曲線正接関数
【数14】
が挿入されており、ダイナミックレンジ抑制が22.7dBに増加していることが示されている。実用的な実施形態では、
【数15】
は、凹状の振幅レスポンスを有する任意のアナログエレクトロニクスデバイスであり得る。一例として、高入力振幅でゲインが下がる演算増幅器(オペアンプ)がある。
【0042】
上記の両方の方法において、Pout(t)が一定である必要はない。目的は、光信号のダイナミックレンジを、コヒーレント受信機の前段で許容可能なレベルまで減少させることだけである。フィードバックループにおける信号処理は、アナログおよび/またはデジタルエレクトロニクスを用いて行うことができる。
【0043】
当業者であれば、デジタル信号処理(DSP)の使用により、記載された単純な機能よりも複雑な機能が可能となり、潜在的に、より大きなダイナミックレンジ抑制が可能となることを理解し、理解するであろう。
【0044】
本開示の態様によるダイナミックレンジ抑制方法は、有利には、指数関数的に減衰する包絡線を有するPin(t)に依存しないことに留意されたい。質問されたファイバがラマン増幅器および/または遠隔光ポンプ増幅器(ROPA)によるインライン増幅を有する場合、Pin(t)の包絡線は、e-2αLよりも小さなダイナミックレンジ変動を有する(すなわち、インライン増幅は、ダイナミックレンジ抑制方法と見なすこともできる)。しかしながら、本明細書に開示される本発明の方法は、有利なことに、コヒーレント受信機の前に追加の光ダイナミックレンジ抑制を依然として達成する。
【0045】
最後に、本開示の態様による非線形アナログ関数Fを使用して、電気領域内のOTDRのダイナミックレンジを抑制する例示的なOTDR配置の概略図を示す、図6に示されるようなBPDの後段に非線形要素
【数16】
を挿入することによって、電気領域内にダイナミックレンジ抑制を実装することが可能であることに留意されたい。
【0046】
前述のように、この非線形要素は演算増幅器(オペアンプ)とすることができる。電気領域におけるダイナミックレンジを抑圧することは、より少ない構成要素を必要とし、信号電力が低い場合の信号対量子化雑音比(SQNR)を改善するとともにクリッピングを低減するのに役立つ。しかしながら、この方法は、BPDへの光学的損傷を防止したり、高入力光信号振幅のためにBPDでの信号-信号ビーティングから生じる干渉を防止したりすることができない。
【0047】
いくつかの特定の例を使用して本開示を提示したが、当業者は、本教示がそのように限定されないことを認識するであろう。したがって、この開示は、本明細書に添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6