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特許7412612欠陥のない印刷ノズルおよび補償された、欠陥のある印刷ノズルを用いた印刷製品の印刷方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】欠陥のない印刷ノズルおよび補償された、欠陥のある印刷ノズルを用いた印刷製品の印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240104BHJP
   B41J 29/393 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
B41J2/01 205
B41J2/01 207
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J29/393 107
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023014392
(22)【出願日】2023-02-02
(65)【公開番号】P2023113589
(43)【公開日】2023-08-16
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】10 2022 102 523.3
(32)【優先日】2022-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten-Anlage 52-60, D-69115 Heidelberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ティタ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ケーラー
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-094004(JP,A)
【文献】特開2020-082738(JP,A)
【文献】特開2019-137044(JP,A)
【文献】特開2020-026076(JP,A)
【文献】特開2012-045831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 29/393
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
欠陥のない印刷ノズルおよび補償された、欠陥のある印刷ノズルを用いた印刷製品の印刷方法であって、
前記印刷製品(2)を印刷するため、かつテストパターン(10)を印刷するために印刷ノズル(4,5)を備えた印刷機(3)を準備するステップと、
搬送される被印刷材料(1)上にマトリクス状に配置された多数のテストフィールド(11)を有する前記テストパターン(10)を印刷するステップであって、前記テストフィールド(11)をハーフトーンにおいて、トーンバリューの所定のセットからの各トーンバリューによって複数の印刷ノズル(4,5)によって生成し、各テストフィールド(11)において、印刷されていない線(12)を、アクティブ化されていない、したがって印刷を行わない印刷ノズル(4)によって生成し、前記印刷されていない線を、少なくとも1つの、印刷を行う、隣り合うノズル(5)によって補償し、前記隣り合うノズルの補償強度を、補償強度の所定のセットから選択し、前記テストパターンに対して、トーンバリューと補償強度との多数の対を設定し、使用する、ステップと、
少なくとも1つの画像検出システム(6)によって前記テストパターンの画像を検出するステップと、
少なくとも1つの計算機(7)によって、前記画像を評価し、前記印刷製品の印刷のための前記補償強度を特定するステップと、
前記印刷製品を印刷するステップとを有している、方法において、
トーンバリューと補償強度との各所定の対を前記テストパターン(10)に対して複数回使用し、この際、対ごとに複数のテストフィールド(11)を、相互に間隔を空けた、前記テストパターンの箇所において生成し、
前記評価の際に、各測定フィールドに、前記補償強度の質を特定する特性値を割り当て、前記特性値は、x方向、すなわち前記被印刷材料の搬送方向yに対して横方向における前記テストフィールドの均一性を表し、前記トーンバリューのそれぞれに対して、所定の基準に応じて最良の特性値を特定し、ひいては前記印刷製品の印刷時に使用されるべき前記補償強度を前記トーンバリューのそれぞれに対して特定する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
特性値として標準偏差を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
x方向で、所定の領域にわたって前記標準偏差を特定する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記評価の際に、前記標準偏差のマトリクスを、トーンバリューおよび補償強度に関連して作成する、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
最小の標準偏差に相当する特性値が最良の特性値として特定されることを所定の基準として使用する、請求項2または3記載の方法。
【請求項6】
前記評価の際に、トーンバリューと補償パラメータとの同一の組み合わせを有するテストフィールドの特性値を、特性値の各セットにまとめ、前記各セットから、それぞれ最良の特性値を特定する、請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
前記評価の際に、前記測定フィールドの種々異なるトーンバリュー間の比較を可能にするために、前記測定フィールドを線形化に供する、請求項1または2記載の方法。
【請求項8】
前記テストパターンは、付加的なベースフィールド(13)を含んでおり、前記ベースフィールドをフルトーンで生成し、前記評価の際に、前記テストフィールドと前記ベースフィールドとの比較を行う、請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
前記被印刷材料の強度INullならびに/または最も暗いテストフィールドの強度IMaxおよび/または最も暗い補償された線の強度IMaxを、テストフィールドにおいて、光測定技術によって特定するために前記ベースフィールドを使用する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記テストパターンは2つの部分から構成されており、前記テストフィールドを、前記テストパターンの第1の部分に配置し、前記ベースフィールドを、前記テストパターンの第2の部分に配置する、請求項記載の方法。
【請求項11】
前記テストパターンの前記2つの部分を、搬送方向yにおいて互いに離間して、前記被印刷材料上に配置する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
アクティブではあるが印刷を行わないまたはエラーを伴って印刷する少なくとも1つの印刷ノズルの少なくとも1つの印刷されていない線を含んでいるテストフィールドを前記評価の際に排除する、請求項1または2記載の方法。
【請求項13】
前記テストパターンは、前記被印刷材料の搬送方向yにおいて測定された、L>0である長さLと、前記被印刷材料の搬送方向に対して横方向で測定された、B>0である幅Bとを有している、請求項1または2記載の方法。
【請求項14】
前記テストパターンは、n>1である、y方向における複数のn個のテストフィールドと、m>1である、x方向におけるm個のテストフィールドとを含んでいる、請求項1または2記載の方法。
【請求項15】
前記テストパターンはフルトーンストリップ(14)を含んでおり、前記フルトーンストリップは、フルトーンで、所定のトーンバリューのもとで印刷され、B2≧Bである幅B2を有している、請求項13記載の方法。
【請求項16】
アクティブではあるが印刷を行わないまたはエラーを伴って印刷する印刷ノズルのx位置を、フルトーンストリップにおいて特定し、このように特定された前記印刷ノズルを前記評価の際に排除する、請求項15記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明
本発明は、請求項1の上位概念に記載の特徴を有する、欠陥のない印刷ノズルおよび補償された、欠陥のある印刷ノズルを用いた印刷製品の印刷方法に関する。
【0002】
技術分野
本発明は、グラフィック産業の技術分野にあり、当該技術分野において、特に、産業的な、すなわち、平らな基材上への生産性の高いインク印刷(インクジェット)の分野にあり、すなわち、好ましくは紙、厚紙、板紙、プラスチック、金属または複合材料から成る枚葉紙状、ウェブ状、フィルム状またはラベル状の被印刷材料上への、ノズルから吐出された液体インクから成る極めて微細な液滴の、画像に従った被着の分野にあり、ここでは、吐出しないノズルまたは誤って吐出するノズルは、たとえば自身の隣り合うノズルによって補償される。
【0003】
背景技術
インクジェット印刷ヘッドは、通常、個々に駆動制御可能な多数のノズルを有している。これらのノズルは、通常、1つのノズル列または複数のノズル列において、被印刷材料搬送方向に対して平行に(または僅かに傾斜して)配置されている。各ノズルは、各ノズルの駆動制御時に1つまたは複数のインク滴を生成する。ノズルの持続的な駆動制御時に、ノズルは、インク色での視認可能な線を被印刷材料上に印刷する。他方で、たとえば、ノズルのノズル開口部が硬化したインクによって詰まっているためにノズルが機能していない場合、またはノズルが液滴を斜めに吐出するまたは霧としてしか吐出しない場合にも視認可能な明るい線(英語で「missing nozzle」、「missing line」または「whiteline」とも称される)が生じることがある。不所望な結果として、被印刷材料の色、大抵は白が、線として印刷イメージにおいて透けて見える。さらに、たとえば過度に補償された、欠陥のあるノズルの場合には、視認可能な暗い線(英語で「darkline」とも称される)が生じることがある。
【0004】
このような、印刷を行わないノズルまたはエラーを伴って印刷するノズルは、産業分野においては補償されなければならない。なぜなら、高品質の印刷製品において「whitelines」は、顧客によって許容されないからである。既知の手法では、印刷ヘッド-ノズルの駆動制御に応じて種々異なる大きさの液滴を形成することを可能にする、印刷ヘッド-ノズルの特性が利用される。このように、隣り合うノズル(欠陥を有するノズルの「右側のノズルおよび左側のノズル」)を利用して、より大きな補償液滴を生成し、その余剰インクによって、「whiteline」を完全に、または少なくとも、肉眼ではもはや妨害と知覚されないように塞ぐことができる。
【0005】
このような分野において慣用される略語MNCは、「missing nozzle compensation」またはより一般的には「malfunctioning nozzle compensation」を意味し、すなわち印刷を行わない印刷ノズルまたはエラーを伴って印刷する印刷ノズルの補償を意味している。
【0006】
ノズル列における、印刷を行わないノズルまたはエラーを伴って印刷するノズルもしくはそれらの各位置を識別するために、この目的のために作成されたテストパターンを印刷し、このテストパターンを、たとえばカメラを用いて記録し、記録された画像を、計算機を用いて評価することが既に知られている。この場合、補償されるべきものとして識別されたノズルに対して、補償の程度、たとえば低い程度の補償または高い程度の補償を決定する補償強度が特定され得る。
【0007】
欧州特許第2845735号明細書は、インク印刷の分野において、たとえば請求項1の範囲において画像記録装置を開示しており、この画像記録装置は、欠陥を有する記録要素に対する補償パラメータのための最適化装置と、生成された検査テーブルを読み取るため、かつ読み取りデータを生成するための読み取り装置とを備えている。最適化装置は、読み取りデータのための分析装置を含んでいる。ここでは、測定テーブルにおける濃度が、欠陥を有する記録要素に対する各補償パラメータに対する均一な濃度を有する領域における濃度と比較され、欠陥を有する記録要素に対する補償パラメータの最適な値として、均一な濃度を有する領域からの濃度差を最小化する測定テーブルにおける濃度に相当する、欠陥を有する記録要素に対する補償パラメータが導出される。
【0008】
従来技術では、機能していないノズルまたは正しく印刷しないノズルの補償が行われるが、印刷イメージにおいて妨害が引き続き知覚可能であることが起こり得る。これは特に、補償が手動で特定・調整される場合に起こり得る。たとえば、UVインクが使用され、僅かな過小補償の場合には、UVインク層において、(「引っ掻き傷のような」)妨害となる窪みが知覚可能であることが起こり得る。
【0009】
技術的な課題
したがって、本発明の課題は、特に、機能していないノズルまたは正しく印刷しないノズルの補償をさらに改良し、これによって印刷の質をさらに高めることを可能にする、従来技術に対する改良を提供することである。
【0010】
課題の本発明による解決手段
上述の課題は本発明に従って、請求項1記載の方法によって解決される。
【0011】
本発明の有利な、したがって好ましい発展形態は、従属請求項ならびに明細書および図面から明らかとなる。
【0012】
本発明による、欠陥のない印刷ノズルおよび補償された、欠陥のある印刷ノズルを用いた印刷製品の印刷方法は次のステップ、すなわち、印刷製品を印刷するため、かつテストパターンを印刷するために印刷ノズルを備えた印刷機を準備するステップと、搬送される被印刷材料上に多数のテストフィールドを有するテストパターンを印刷するステップであって、テストフィールドがハーフトーンにおいて、トーンバリューの所定のセットからの各トーンバリューによって複数の印刷ノズルによって生成され、各テストフィールドにおいて、印刷されていない線が、アクティブ化されていない、したがって印刷を行わない印刷ノズルによって生成され、印刷されていない線が、少なくとも1つの、印刷を行う、隣り合うノズルによって補償され、隣り合うノズルの補償強度が、補償強度の所定のセットから選択され、テストパターンに対して、トーンバリューと補償強度との多数の対が設定され、使用される、ステップと、少なくとも1つの画像検出システムによってテストパターンの画像を検出するステップと、少なくとも1つの計算機によって、画像を評価し、印刷製品の印刷のための補償強度を特定するステップと、印刷製品を印刷するステップとを有しており、この方法は、トーンバリューと補償強度との各所定の対がテストパターンにおいて、複数回使用され、対ごとに相応に、多数のテストフィールドが、相互に間隔を空けた、テストパターンの箇所において生成され、評価の際に、各測定フィールドに、補償強度の質を特定する特性値が割り当てられ、この特性値は、x方向におけるテストフィールドの均一性を表し、トーンバリューの各トーンバリューに対して、所定の基準に応じて最良の特性値が特定され、ひいては印刷製品の印刷時に使用されるべき補償強度がトーンバリューの各トーンバリューに対して特定されることを特徴とする。
【0013】
発明の有利な構成および作用
本発明は、有利には、機能していないノズルまたは正しく印刷しないノズルの補償をさらに改良し、これによって印刷の質をさらに高めることを可能にする。
【0014】
本発明では、補償強度を手動で求めることは行われず、有利には、テストパターンが使用されて、自動的に処理される、すなわち印刷され、検出され、特有に評価される方法が実施される。検出は、好ましくはカメラによって行われる。評価は、好ましくはデジタルコンピュータによって実施される。
【0015】
したがって、本発明による方法において使用される、補償強度(「MNC強度」)の自動的な特定は、テストフィールドを有するテストパターンを使用し、ここでは、各印刷ノズルが人為的にオフされ、テストパラメータセットによって、この印刷ノズルの補償が試される。このような要素は、好ましくは、明視野照明のもとで産業用ラインカメラによって記録される。
【0016】
選択されるべき各補償強度は、たとえば、ノズル駆動制御のための波形もしくはこれによって生成されるインク量、使用される基材、使用されるインク、生成されるべきトーンバリュー、および場合によっては特有の印刷ヘッド特性(たとえば特定の印刷ヘッド半部もしくはこのような印刷ヘッド半部のインク滴生成の種々のタイミング)に関連し得る。
【0017】
さらに、異なる特性を有する極めて多くの異なる基材(および網目スクリーン、インク)が存在する。したがって、各基材に対して補償強度を標準的に特定・提供することはできない。したがって補償強度は、好ましくは印刷機において直接的に特定される。本発明による方法は、機械での直接的な、未知の基材に対する補償強度の自動的な、ひいては迅速な特定を可能にする。
【0018】
本発明による方法では、好ましくは、より広い領域の種々異なる補償強度、たとえば5,10,15,20,…,200が種々異なるトーンバリューもしくは網点面積率、たとえば0,3,6,9,12,15,18,…,31において印刷される(表記法:占有印刷点は、液滴サイズに応じて重み付けされている)。
【0019】
本発明によれば、各テストフィールドにおいて、好ましくはたとえばテストフィールドの中央において、欠落箇所(印刷されていない線)が生成され、この欠落箇所は、好ましくは既知の、準備された補償アルゴリズムによって補償される。補償の質が十分であるか否かをコンピュータによって支援されて自動で判断するための指標もしくは特性値は、好ましくは、(好ましくはy方向において平均化された線にわたった)標準偏差である。
【0020】
測定枚葉紙、すなわちテストパターンが上に印刷されている枚葉紙は、種々異なるトーンバリューを有するテストフィールドと、このテストフィールド内にある、それぞれ意図的にオフされたノズルの線とを含んでいる。これらのノズルは、好ましくは、種々の補償強度もしくは準備された補償アルゴリズムの種々異なるパラメータ化によって補償される。
【0021】
特定の組み合わせ(トーンバリューと補償強度との組み合わせ)が、有利には、複数回、好ましく複数の測定枚葉紙または印刷区間長にわたって、測定枚葉紙上に局所的に分散して印刷されてよく、このようにして、ノイズ、印刷ヘッドのノズルの特有の特性、カメラの種々異なる結像特性およびその他のプロセス散乱を平均化することができる。
【0022】
付加的に、測定枚葉紙は、適切なトーンバリューにおいて(x方向の)少なくとも1つのフルトーンストリップを含んでよい。このフルトーンストリップは、有利には、実際に機能していない、すなわち意図的にオフされた/駆動制御されていないノズルを識別することを可能にし、これによって、実際に機能していないノズルを伴うテストフィールドが、別のアルゴリズムにおいて考慮されなくなる。このような理由からも、トーンバリューおよび補償強度の同じ組み合わせを複数回再現印刷することが有利である。
【0023】
テストフィールドが検出されると、生じ得るカメラクロストークのために、好ましくはx方向における1つのセクションだけが選択され、次いでy方向におけるプロファイルが生成される。
【0024】
テストフィールドにおける目下の補償強度が過度に小さい場合、これはテストフィールドのカメラ画像のグレースケール値の観察時にピークを生じさせる。これに対して、補償強度が過度に強い場合には、反対方向のピークが生じる。しかし補償強度が最適に選択されていると、上方または下方への関連するピークは生じない、もしくはこれはノイズに埋もれる。好ましくは、補償の質を判断するために使用可能な指標もしくは特性値は、x方向における領域にわたる標準偏差である。
【0025】
次に、ステップ1~5を有する好ましい一例を示す:
1.全てのテストフィールド、もしくは全てのテストフィールドの、グレートーンの各測定値が、好ましくは、トーンバリュー間のより良好な比較を可能にするために線形化に供され、すなわち、グレースケールプロファイルは濃度プロファイルに変換される。
可能な計算:濃度=-1*log10((値-IMax)/(INull-IMax))
ここでこの考察は、全てのトーンバリューに対して「whitelines」および/または「darklines」を同様に重み付けすることにある。
2.付加的なベースフィールドが、好ましくはテストフィールドに対する比較として用いられる。好ましくは、最も明るいテストフィールドおよび最も暗いテストフィールドが特定される。人為的な「whitelines」を伴わずに、別個の枚葉紙上、または同一の枚葉紙上の別個のレイアウトにおいて印刷されているベースフィールドは、好ましくは、強度INull(基材の濃度)およびIMax(最も暗いフィールド)を特定するために使用される。「darkline」は、たとえば最も暗いフィールドよりもさらに暗くあり得るので、最も暗いフィールドは好ましくは再度スケーリングされる。
3.実際に機能していない可能性のあるノズルを有するテストフィールドが、好ましくは選り分けられる。このためには、テストパターンの印刷の近くの時点で(またはむしろ印刷と同時に)、検出ステップ(検出および評価)を介して、印刷ヘッドにおいて実際に機能していないノズルの位置が特定され得る。付加的なフルトーンストリップを、好ましくはデジタル画像処理を使用して、アーチファクト(「whitelines」)について、たとえば印刷方向yに対して横方向の信号におけるピークについて、調べることができる。このように確定されたアーチファクトの領域内に位置する全ての測定フィールドは、好ましくは、以降のステップにおいて考慮されない。「whiteline」を含んでいる領域にわたる標準偏差の計算によって、各テストフィールドに対する、すなわちトーンバリューと補償強度との組み合わせに対する標準偏差が得られる。同じトーンバリューおよび補償の同じパラメータ化を有する全てのテストフィールドは、好ましくは1つのグループと見なされる。(フィールドの数に対応する)このような値のセットから、好ましくは、(個々のフィールドの標準偏差の)標準偏差が再び計算される。値が、この標準偏差の外側にある場合には、このフィールドは好ましくはグループから除去される。
4.テストフィールドには、好ましくは印刷の均一性に相当するそれぞれ1つの特性値が割り当てられる(テストフィールドが均一であればあるほど、ノズルの補償がより良好に機能する)。トーンバリューと補償パラメータとの同じ組み合わせのテストフィールドの特性値は、好ましくは、このようなこの組み合わせを代表して、個々の特性値にまとめられる。好ましくは、標準偏差は、補償の質の指標もしくは特性値として計算される。同じトーンバリューおよび補償の同じパラメータ化を有する全てのテストフィールドから、好ましくは、1つの値が平均化される。これは好ましくは全てのグループに対して行われる。次いで、たとえば、トーンバリューと補償強度とのマトリクスが生じ、これは、使用されるパラメータ化の補償の質に対する尺度である、標準偏差の値を伴う。
5.好ましくは、トーンバリューごとに最良の特性値が特定され、したがって、このトーンバリューにおいて使用されるべき補償強度が特定される。所与のトーンバリューに対する最良の補償強度として、好ましくは、標準偏差が最小である補償強度が選択される。
【0026】
発明の発展形態
以降で、本発明の好ましい発展形態(略して発展形態)について説明する。
【0027】
一発展形態は、特性値として標準偏差が使用されることを特徴とし得る。テストフィールドにおける標準偏差の基準によって、一方のテストフィールドが他方のテストフィールドよりも良好であるか、または不良であるかについての十分に良好な判断が可能になる。
【0028】
一発展形態は、x方向、すなわち被印刷材料の搬送方向yに対して横方向で、所定の領域にわたって標準偏差が特定されることを特徴とし得る。
【0029】
一発展形態は、評価の際に、標準偏差値のマトリクスが、トーンバリューおよび補償強度に関連して作成されることを特徴とし得る。
【0030】
一発展形態は、最小の標準偏差に相当する特性値が最良の特性値として特定されることが所定の基準として使用されることを特徴とし得る。
【0031】
一発展形態は、評価の際に、トーンバリューと補償パラメータとの同一の組み合わせを有するテストフィールドの特性値が、特性値の各セットにまとめられ、このような各セットから、それぞれ最良の特性値が特定されることを特徴とし得る。
【0032】
一発展形態は、評価の際に、測定フィールドの種々異なるトーンバリュー間の比較を可能にするために、測定フィールドが線形化に供されることを特徴とし得る。
【0033】
一発展形態は、テストパターンが付加的なベースフィールドを含むことを特徴とし得る。ここではベースフィールドはフルトーンで生成され、評価の際に、テストフィールドとベースフィールドとの比較が行われる。
【0034】
一発展形態は、被印刷材料の強度INullならびに/または最も暗いテストフィールドの強度IMaxおよび/または最も暗い補償された線の強度IMaxを、テストフィールドにおいて、光測定技術によって特定するためにベースフィールドが使用されることを特徴とし得る。
【0035】
一発展形態は、テストパターンが2つの部分から構成されており、テストフィールドが、テストパターンの第1の部分に配置されており、ベースフィールドが、テストパターンの第2の部分に配置されていることを特徴とし得る。
【0036】
一発展形態は、テストパターンの2つの部分が、搬送方向yにおいて互いに離間して、被印刷材料上に配置されていることを特徴とし得る。
【0037】
一発展形態は、アクティブではあるが印刷を行わないまたはエラーを伴って印刷する少なくとも1つの印刷ノズルの少なくとも1つの印刷されていない線を含んでいるテストフィールドが評価の際に排除されることを特徴とし得る。
【0038】
一発展形態は、テストパターンが、被印刷材料の搬送方向yにおいて測定された、L>0である長さLと、被印刷材料の搬送方向に対して横方向で測定された、B>0である幅Bとを有していることを特徴とし得る。
【0039】
一発展形態は、テストパターンが、n>1である、y方向における複数のn個のテストフィールドと、m>1である、x方向におけるm個のテストフィールドとを含んでいることを特徴とし得る。
【0040】
一発展形態は、テストパターンがフルトーンストリップを含んでおり、このフルトーンストリップが、フルトーンで、所定のトーンバリューのもとで印刷され、B2≧Bである幅B2を有していることを特徴とし得る。
【0041】
一発展形態は、アクティブではあるが印刷を行わないまたはエラーを伴って印刷する印刷ノズルのx位置が、フルトーンストリップにおいて特定され、このように特定された印刷ノズルが評価の際に排除されることを特徴とし得る。
【0042】
一発展形態は、印刷イメージの印刷に対して、各インク体積VS、VMおよびVLを有する3つの異なる液滴サイズS、MおよびLが使用され、ここではVS<VM<VLが当てはまることを特徴とし得る。
【0043】
一発展形態は、欠陥のある各印刷ノズルの補償のために、少なくとも1つの、この印刷ノズルに隣接する補償印刷ノズルが使用され、その際、各インク体積VS*、VM*およびVL*を有する液滴サイズS*、M*またはL*が使用され、ここではVL*<VLが当てはまることを特徴とし得る。
【0044】
一発展形態は、さらにVS<VS*が当てはまることを特徴とし得る。
【0045】
一発展形態は、さらにVM<VM*が当てはまることを特徴とし得る。
【0046】
一発展形態は、S液滴、S*液滴、M液滴およびM*液滴が印刷に使用されることを特徴とし得る。
【0047】
一発展形態は、L液滴およびL*液滴が補償に使用されることを特徴とし得る。
【0048】
一発展形態は、UV硬化インクが使用されることを特徴とし得る。
【0049】
さらなる問題における発明の発展形態
オフセット印刷の場合とは異なり、UVインクを用いた印刷時に、インク層は次のような層圧、すなわち、傾斜した観察角度のもとで、層における窪みまたは引っ掻き傷が光沢損失として識別され得るような層厚を有することがある。妨害となるこのような窪みは、たとえば、補償が過度に弱く選択されており(いわゆる過小補償)、したがって過度に少ないインクが、補償されるべき箇所に達する場合に生じ得る。したがって、妨害となる過大補償の回避は、同様に妨害となる過小補償に達しないように、注意深く進められなければならない。
【0050】
一発展形態は、検出された画像がデジタル計算機によって評価され、ここではトーンバリューと補償強度との各対に対して、計算技術によって求められた、補償に対する特性値を示すマトリクスが生成され、各トーンバリューに対して、これらの特性値の1つが、最小の過小補償または最小の過大補償が行われる最良の特性値として計算技術によって特定され、各トーンバリューにそれぞれの特定の特性値を考慮して補償強度が割り当てられ、これらのトーンバリューおよびこれらのトーンバリューに割り当てられた補償強度で印刷ジョブが印刷されることを特徴とし得る。
【0051】
一発展形態は、(たとえば光沢を妨害する窪みを生じさせる過小補償を回避するため、同時に過度に強い過大補償を回避するために)少なくとも複数のトーンバリューに、各補償強度が、特定の特性値として、計算技術によって選択された各特性値を考慮して割り当てられ、ここでは選択される特性値は、所定の境界を維持する過大補償が行われるように制限されて、トーンバリューに対する最良の特性値とは異なって選択されることを特徴とし得る。
【0052】
一発形態は、特性値が、それぞれ符号が付けられた標準偏差であることを特徴とし得る。
【0053】
このような発展形態では、最良の絶対値を伴うテストフィールドにおいて、プロファイルピーク(インク層のプロファイルにおける「谷」または「山」)が負であるか正であるかが検査される。ピークが過大補償を示唆する場合には、パラメータセットが使用される。これに対してピークが過小補償を示唆する場合には、(マトリクス「トーンバリューおよび補償強度」において)所与のトーンバリューのもとで、各テストフィールドピークが、過小補償から過大補償への変化によって推定されるまで、上昇する補償強度を有するテストフィールドが順次、サーチされる。ここでは、可能な限り小さい過大補償が、補償強度として選択される。択一的に、窪みによって生じる光沢損失を確実に回避するために、可能な限り小さい過大補償から、補償強度を1つまたは所定の複数の強度ぶんだけ、さらに高くすることが可能である。
【0054】
回帰モデルによる発展形態
各トーンバリューに対してのみそれぞれ、個々に最良の補償強度を計算技術によって特定する代わりに、回帰モデルに基づいて、計算技術によって、トーンバリューと補償強度とから成る単調に増加する曲線が近似されてよい。回帰モデルによって、トーンバリューと補償強度との組み合わせにおける、たとえばノイズによって生じ得る跳躍的変化を回避することができる。このような回帰モデルを、「符号が付けられた標準偏差」の利用の拡張と組み合わせることもできる。
【0055】
その際、好ましい手順は次の通りである:
標準偏差(符号ありまたは符号なし)は、目標量Yであり、トーンバリューX1および補償強度X2は、独立した変数である。テストデータに基づいて、たとえば補償強度に対するトーンバリューの単調に増加する関係を設定する回帰モデルを特定することができる。この回帰モデルは、検出されたデータに適用される。これによって、一種の「平滑化された」マトリクスが生じ、このマトリクスから、各トーンバリューに対する各最良の補償強度が特定される。回帰モデルによって、トーンバリューと補償強度との2D面が生じる。典型的には、「マトリクスにおける谷」、すなわち最も低い値が最良の補償とされる。回帰モデルから得られる、最良の補償の曲線を、択一的に、輝度を妨害する窪みを回避するために、過大補償の方向へシフトさせることができる。
【0056】
回帰モデルによって、トーンバリューと最良の補償強度との連続的な割り当てを可能にする数学モデルへの変換が可能となる。その後、モデルは再び離散的な具体的な標本点へ換算される。
【0057】
上記の技術分野、発明および発展形態の段落および後続の実施例において開示される特徴および特徴の組み合わせは、互いに任意の組み合わせで、本発明の別の有利な発展形態を表す。
【0058】
図は、本発明および発展形態の好適な実施例を示している。互いに対応する特徴には、図中、同一の参照符号を付してある。図中、繰り返しとなる参照符号は、見やすくするために一部省略されている。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】本発明の分野における印刷機を示す図である。
図2】本発明の方法の好ましい実施例を示す図である。
図3】本発明の範囲にあるテストパターンを示す図である。
図4】本発明の範囲にあるマトリクスを示す図である。
図5】本発明の範囲にある別のマトリクスを示す図である。
【0060】
図1には、印刷機3による、被印刷材料1の加工方法、すなわち、欠陥のない印刷ノズルおよび補償された、欠陥のある印刷ノズルを用いた印刷製品2の印刷方法が示されている。印刷機は、種々の印刷インク、好ましくは少なくともプロセスカラーCMYKを印刷する複数の印刷ユニット3aを備えるインク印刷機である。被印刷材料は、たとえば枚葉紙として示されている。択一的に、ウェブ状の被印刷材料の加工も可能である。各印刷ユニットは、インク滴の吐出および転移のための、一連の印刷ノズル4(たとえばx方向の、すなわち被印刷材料搬送方向yに対して横方向のいわゆる印刷バー)を含んでおり、ここでは縁部ノズルを除いて、各印刷ノズル4が2つの隣り合うノズル5によって挟まれる(90°回転させられて示された、印刷列の拡大図において見て取れる)。さらに印刷機は、画像検出システム6、特にカメラと、デジタル計算機7、たとえば印刷機用の制御計算機とを含んでいる。
【0061】
図2には、本発明による方法の好ましい実施形態がフローチャートとして示されている。この方法は、複数の連続するステップ、すなわち、準備20、(好ましくは印刷機3による)テストパターンの印刷30、(好ましくは画像検出システム6による)検出40、(好ましくはデジタル計算機7による)評価50、(好ましくは同様に印刷機3による)印刷製品の印刷60を含んでいる。これらのステップの詳細は、本出願に記載されている。
【0062】
図3には、被印刷材料1上に印刷されたテストパターン10が示されている。この例では、テストパターンは、第1の部分10aと第2の部分10bとから成る。テストパターンの第1の部分は、y方向における長さLと、x方向における幅Bとを有している。
【0063】
第1の部分は、多数のテストフィールド11を含んでいる。これらは、x方向において行に、y方向において列に、マトリクス状に配置されている。個々のテストフィールドがそれぞれハーフトーンで印刷されており、各テストフィールドが特定のトーンバリューを有している(異なるトーンバリューは異なる斜線で示されている)ことが見て取れる。各テストフィールドは好ましくはテストフィールドの中央に配置されている、印刷されていない線12を有している。印刷されていない線は意図的に形成され、ここではそれぞれ1つの印刷ノズル4が一時的に非アクティブ化されているもしくは駆動制御されない。
【0064】
第2の部分は、ベースフィールド13と、x方向において長さB2を有する、フルトーンストリップ14とを含んでいる。
【0065】
図4には、複数のマトリクスフィールド71を含んでいる、補償強度の座標軸とトーンバリューの座標軸とを有するマトリクス70が示されている。図5には、同様に、マトリクスフィールド71を含んでいる、このようなマトリクス70が示されている。2つのマトリクスは、好ましくは計算機7によって、好ましくは「評価」ステップ50において生成される。2つのマトリクスの隣に、それぞれスケールが示されており、このスケールから、図示において、どの斜線がどの値(好ましくは標準偏差の値)を表しているのかを見て取ることができる。さらに、両方のマトリクスにおいて、特定のマトリクスフィールドが囲まれて示されている。これらのマトリクスフィールドは、ここでは「選択されたマトリクスフィールド」72と称される。選択されたマトリクスフィールドは、各行において、すなわち所与のトーンバリューに対して、最小値を有するマトリクスフィールドを表す。選択されたマトリクスフィールドの計算も、好ましくは計算機7によって行われる。
【0066】
図4によって次のことが見て取れる:評価50のステップにおいて、選択されたマトリクスフィールド72が計算技術によって特定される。次いで、所与のトーンバリューに、選択されたマトリクスフィールドを介して、好ましくは、選択されるべき補償強度を割り当てることができる。これは、本方法の範囲において、可能な限り最良の補償に相当する。
【0067】
図5によって次のことが見て取れる:評価50のステップにおいて、選択されたマトリクスフィールド72が計算技術によって特定される。さらに、評価50のステップにおいて、領域73が計算技術によって特定される。この領域におけるマトリクスフィールドは過大補償に相当する。領域73の各行において、選択されたマトリクスフィールドに最も近くに位置するマトリクスフィールド74が存在する(図示の例ではそれぞれ、この領域の左側のマトリクスフィールド)。次いで、マトリクスフィールド74を介して、所与のトーンバリューに、好ましくは選択されるべき補償強度を割り当てることができる。これは、「軽い」過大補償、すなわち妨害しない過大補償に相当し、ここでは妨害となる過小補償が回避される。
【符号の説明】
【0068】
1 被印刷材料
2 印刷製品
3 印刷機
3a 印刷ユニット
4 印刷ノズル
5 隣り合うノズル
6 画像検出システム、特にカメラ
7 計算機
10 テストパターン
10a テストパターンの第1の部分
10b テストパターンの第2の部分
11 テストフィールド
12 印刷されていない線
13 ベースフィールド
14 フルトーンストリップ
20 準備
30 テストパターンの印刷
40 検出
50 評価
60 印刷製品の印刷
70 マトリクス
71 マトリクスフィールド
72 選択されたマトリクスフィールド
73 領域
74 マトリクスフィールド
x x方向、被印刷材料の搬送方向に対して横方向
y y方向、被印刷材料の搬送方向
L y方向におけるテストパターンの長さ
B x方向におけるテストパターンの幅
B2 x方向におけるフルトーンストリップの幅
図1
図2
図3
図4
図5