IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

<>
  • 特許-気密試験装置 図1
  • 特許-気密試験装置 図2
  • 特許-気密試験装置 図3
  • 特許-気密試験装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】気密試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/22 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
G01M3/22
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023077299
(22)【出願日】2023-05-09
【審査請求日】2023-10-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】秋山 尚久
(72)【発明者】
【氏名】田中 進一郎
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-77854(JP,A)
【文献】特開2022-77855(JP,A)
【文献】特許第7186849(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00-3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の両端に当接し、当該両端を前記管の軸方向に押圧することで、前記管を所定の位置で固定する管固定部と、
前記管の端部を被覆する被覆治具であって、当該被覆治具の内部にエアーが注入されるエアー注入口と、前記管が挿通される第1挿通孔と、が形成されている被覆治具と、
前記軸方向に互いに重なるように配置されており、前記管と前記第1挿通孔との間をシールする複数のシール部材と、を備えることを特徴とする気密試験装置。
【請求項2】
前記複数のシール部材のそれぞれには、前記管が挿通される第2挿通孔が形成されており、
前記複数のシール部材のそれぞれは、前記第2挿通孔に前記管が挿通されることにより、弾性変形して前記管に密着する弾性部材であることを特徴とする請求項1に記載の気密試験装置。
【請求項3】
前記第2挿通孔が開放されている状態で、前記第2挿通孔の直径が前記端部での前記管の外径よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の気密試験装置。
【請求項4】
前記エアー注入口は、前記被覆治具の内部に注入されるエアーを、前記エアー注入口から注入された後に前記シール部材から離れていく方向、または前記管と前記シール部材との境界に沿った方向に導くように、前記被覆治具に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の気密試験装置。
【請求項5】
前記管固定部を前記管の前記両端に押圧させるシリンダをさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の気密試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、管を所定の位置で固定するための管固定部と、管を覆うためのフードと、を備える気密試験装置が開示されている。当該気密試験装置では、管固定部がパッキンを介して管の端部に当接することにより、管の気密性を向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-77854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の気密試験装置では、気密試験の繰り返しによるパッキンのへたりの影響により、検知用ガスが管の端部から管の内部に入り込む場合がある。よって、当該気密試験装置には、管に対する気密試験の精度を向上する点で改善の余地がある。本発明の一態様は、管に対する気密試験の精度を向上する上で、管が被覆治具に対して挿脱される場合にシール部材のへたりを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る気密試験装置は、管の両端に当接し、当該両端を前記管の軸方向に押圧することで、前記管を所定の位置で固定する管固定部と、前記管の端部を被覆する被覆治具であって、当該被覆治具の内部にエアーが注入されるエアー注入口と、前記管が挿通される第1挿通孔と、が形成されている被覆治具と、前記軸方向に互いに重なるように配置されており、前記管と前記第1挿通孔との間をシールする複数のシール部材と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、管に対する気密試験の精度を向上する上で、管が被覆治具に対して挿脱される場合にシール部材のへたりを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態1に係る気密試験装置の全体構成を示す模式図である。
図2図1に示す気密試験装置が備える被覆治具付近を示す斜視図である。
図3図1に示す気密試験装置が備えるシール部材の構成と、管固定部の固定端付近の構成と、を示す図である。
図4】本発明の実施形態2に係る気密試験装置が備える被覆治具付近を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
<気密試験装置1の構成>
図1は、本発明の実施形態1に係る気密試験装置1の全体構成を示す模式図である。図2は、図1に示す気密試験装置1が備える被覆治具20付近を示す斜視図である。図1において、ガス注入器50から管T1に向かう方向をZ軸方向、管T1の延伸方向をX軸方向、X軸方向及びZ軸方向の両方に直交する方向をY軸方向とする。
【0009】
X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は互いに直交する方向である。Z軸正方向は上方向であり、Z軸負方向は下方向である。ここで説明したX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の定義は、図1以外の他の図においても適用されるものとする。図2は、真空ポンプ11P、検知部12及びフード40を省略している。
【0010】
気密試験装置1は、管T1の気密性を試験する気密試験を行うための装置である。管T1としては、例えばダクタイル鋳鉄管が挙げられる。また、管T1は必ずしもダクタイル鋳鉄管に限定されるものではなく、鋼管等の金属製の管であってもよい。図1に示すように、気密試験装置1は、管固定部10,10Aと、真空ポンプ11Pと、検知部12と、バルブV1,V2と、被覆治具20,20Aと、複数のシール部材30A~30Hと、を備える。また、気密試験装置1は、フード40と、ガス注入器50と、台座60と、支持ローラ61と、シリンダ70と、を備える。
【0011】
<管固定部10,10A及びシリンダ70の構成>
管固定部10,10Aは、管T1の両端に当接し、当該両端を管T1の軸方向に押圧することで、管T1を所定の位置で固定する。管T1の軸方向はX軸方向である。管固定部10は固定端11を有し、管固定部10Aは押圧端11Aを有する。固定端11は、気密試験装置1において一定の位置に固定されている。
【0012】
管T1の一端には、他の管T1の挿し口を挿入可能な受口が形成され、管T1の他端には、他の管T1の受口に挿入可能な挿し口が形成されている。固定端11には管T1の受口側の端部T2が当接する。なお、挿し口及び受口が形成された管T1は一例であり、管T1は、必ずしも挿し口及び受口が形成されているものに限定されない。
【0013】
押圧端11Aは、シリンダ70のロッド71に接続されている。ロッド71がX軸方向に移動することにより、押圧端11Aは、固定端11に対してX軸方向に移動する。押圧端11Aには管T1の挿し口側の端部T3が当接する。
【0014】
シリンダ70は、ロッド71及び筒状体72を有する。ロッド71はX軸方向に延伸しており、筒状体72はロッド71を収容可能なものである。シリンダ70は、管固定部10,10Aを管T1の両端に押圧させる。具体的には、シリンダ70は、ロッド71をX軸正方向に移動させることにより、固定端11を管T1の端部T2に押圧させるとともに、押圧端11Aを管T1の端部T3に押圧させる。これにより、管T1は固定端11と押圧端11Aとの間に挟持された状態で所定の位置に固定される。
【0015】
シリンダ70は、例えば、筒状体72の内部に注入される流体の流体圧によってロッド71をX軸方向に移動させる流体圧シリンダである。当該流体圧シリンダとしては、例えば油圧シリンダが挙げられる。また、シリンダ70は、電動でロッド71をX軸方向に移動させる電動シリンダであってもよい。
【0016】
シリンダ70が管固定部10,10Aを管T1の両端に押圧させるため、管固定部10,10Aを管T1の両端に強力に押圧させることができる。よって、管T1と管固定部10,10Aとの間の気密性を十分に担保することができ、気密試験の精度を向上することができる。
【0017】
固定端11は、パッキンP1を介して管T1の端部T2に当接し、押圧端11Aは、パッキンP2を介して管T1の端部T3に当接する。このため、管T1の気密性を試験する場合に用いる検知用ガスが、固定端11と管T1との間から管T1の内部に入り込むことを防ぐとともに、押圧端11Aと管T1との間から管T1の内部に入り込むことを防ぐことができる。検知用ガスは、大気中における存在比率が極めて小さいガスであり、検知用ガスの具体例として、He(ヘリウム)またはAr(アルゴン)が挙げられる。
【0018】
また、固定端11には、管T1に対向する面から当該面の逆側の面まで貫通する貫通孔16が形成されている。固定端11に管T1が当接している場合、貫通孔16は管T1の内部と連通する。なお、固定端11に管T1の端部T3が当接するとともに、押圧端11Aに管T1の端部T2が当接してもよい。
【0019】
<真空ポンプ11P及び検知部12の構成>
真空ポンプ11Pは、管T1の内部を真空にするポンプである。真空ポンプ11Pには配管14が接続されており、配管14にはバルブV1が設けられている。配管14は、別の配管13に接続されている。配管13の一部は貫通孔16の内部に配置されている。バルブV1が開いている場合、真空ポンプ11Pは、配管13及び配管14を介して管T1の内部と連通する。
【0020】
検知部12は、管T1の内部において検知用ガスを検知するものである。検知部12としては、例えば、気体の成分を分析する分析器が挙げられる。検知部12には配管15が接続されており、配管15にはバルブV2が設けられている。配管15は配管13に接続されている。つまり、配管14及び配管15は、配管13に合流している。バルブV2が開いている場合、検知部12は、配管13及び配管15を介して管T1の内部と連通する。
【0021】
<被覆治具20,20Aの構成>
被覆治具20は、管固定部10,10Aで固定された管T1の端部T2を被覆するものであり、被覆治具20Aは、管固定部10,10Aで固定された管T1の端部T3を被覆するものである。図2に示すように、被覆治具20の側面25には、被覆治具20の内部にエアーが注入されるエアー注入口21A,21B,21C,21Dが形成されている。
【0022】
被覆治具20の内部とは、被覆治具20、管T1及び管固定部10により規定される空間である。また、被覆治具20には、被覆治具20の内部からエアーを排出する図示しないエアー排出口がさらに形成されている。これにより、被覆治具20の内部の検知用ガスの濃度を下げることができる。
【0023】
エアー注入口21A~21Dにはそれぞれ、チューブ22A,22B,22C,22Dが接続されている。エアー注入口21A~21D及びチューブ22A~22Dを介して、被覆治具20の内部にエアーが注入される。被覆治具20Aは、管T1の端部T3を被覆する点を除いて、被覆治具20と同様の構成を有する。このため、以下の説明では、被覆治具20についてのみ説明し、被覆治具20Aについての説明を省略する。
【0024】
被覆治具20は管T1の端部T2を被覆するため、被覆治具20の形状は環状である。被覆治具20をX軸方向に垂直な平面で切断した場合の被覆治具20の断面形状は円形となる。なお、被覆治具20の断面形状は矩形であってもよい。また、被覆治具20は、少なくとも2つの部分被覆治具を組み合わせることで構成されてもよい。当該部分被覆治具は、管T1の周方向において互いに異なる範囲を被覆する。それぞれの上記部分被覆治具が被覆する範囲は互いに接している。
【0025】
被覆治具20は、X軸方向に垂直な前面24と、前面24の外周端部からX軸正方向に延伸する側面25と、を有する。側面25は管固定部10に固定され、側面25におけるX軸負方向側の端部は前面24に接続されている。前面24には、管T1が挿通される第1挿通孔23が形成されている。
【0026】
<シール部材30A~30Dの構成>
図3は、図1に示す気密試験装置1が備えるシール部材30Aの構成と、管固定部10の固定端11付近の構成と、を示す図である。図3の符号101の図は、シール部材30Aの構成を示す正面図であり、図3の符号102の図は、管固定部10の固定端11付近の構成を示す断面図である。図3の符号102の図は、被覆治具20、シール部材30A~30D及びフード40を省略している。
【0027】
被覆治具20Aに設けられるシール部材30E,30F,30G,30Hはそれぞれ、シール部材30A~30Dと同様の構成を有する。このため、以下の説明では、シール部材30A~30Dについてのみ説明し、シール部材30E~30Hについての説明を省略する。
【0028】
図1及び図2に示すように、シール部材30A~30Dは、第1挿通孔23に設けられ、管T1と第1挿通孔23との間をシールする。管T1を被覆治具20に挿入する場合、シール部材30A~30Dは被覆治具20の内部に向かって傾斜する。シール部材30A~30Dの材料は、シリコンゴム等のシリコン樹脂、ウレタンまたは天然ゴムであるが、特にシリコン樹脂であることが好ましい。
【0029】
シール部材30A~30Dの材料をシリコン樹脂とする場合、後述のように複数のシール部材を互いに重ねることでシール部材の強度を十分なものにしつつ、シール部材30A~30Dと管T1との間に生じる摩擦力を十分に小さくすることができる。よって、管T1を被覆治具20に対して挿脱するために必要な力を低減することができ、管T1が被覆治具20に対して挿脱される場合にシール部材30A~30Dのへたりを十分に低減するとともに、管T1の取り外しを容易にすることができる。
【0030】
また、シール部材30A~30Dと管T1との間に生じる摩擦力を十分に小さくできるため、支持ローラ61をY軸正方向に対して左回転させることで、管T1を被覆治具20から引き抜くことができる。
【0031】
図3の符号101に示すように、シール部材30Aの形状は環状である。シール部材30Aには、管T1が挿通される第2挿通孔31Aが形成される。第2挿通孔31Aが開放されている状態での第2挿通孔31Aの直径をL1とする。第2挿通孔31Aが開放されている状態とは、第2挿通孔31Aに管T1が挿通されていない状態である。
【0032】
また、図3の符号102に示すように、管T1の端部T2での管T1の外径をL2とする。この場合、第2挿通孔31Aの直径L1は、端部T2での管T1の外径L2よりも小さい。本実施形態において外径は直径を意味するものとする。一例として、管T1の外径L2が230mmである場合、第2挿通孔31Aの直径L1は、例えば215mm以上220mm以下である。
【0033】
第2挿通孔31Aの直径L1が管T1の外径L2よりも小さいことにより、第2挿通孔31Aに管T1が挿入される場合、シール部材30Aを管T1に密着させることができる。よって、X軸方向における管T1の中央付近から被覆治具20の内部へ検知用ガスが流入することをより効果的に低減することができる。
【0034】
シール部材30B~30Dの形状は、シール部材30Aの形状と同じ形状である。図1に示すように、シール部材30Aと同様に、シール部材30Bには、管T1が挿通される第2挿通孔31Bが形成される。また、シール部材30Cには、管T1が挿通される第2挿通孔31Cが形成され、シール部材30Dには、管T1が挿通される第2挿通孔31Dが形成される。シール部材30A~30Dは、X軸方向に互いに重なるように配置されている。つまり、シール部材はX軸方向に互いに重なるように複数配置されている。
【0035】
シール部材30Aは、第2挿通孔31Aに管T1が挿通されることにより、弾性変形して管T1に密着する弾性部材である。シール部材30Bは、第2挿通孔31Bに管T1が挿通されることにより、弾性変形して管T1に密着する弾性部材である。同様に、シール部材30C,30Dも、弾性変形して管T1に密着する弾性部材である。
【0036】
複数のシール部材30A~30Dのそれぞれは、弾性変形して管T1に密着する弾性部材であるため、管T1を第1挿通孔23に固定しなくても、管T1と第1挿通孔23との間をシールすることができる。よって、管T1を被覆治具20に対して容易に挿脱することができるため、管T1を容易に取り替えて気密試験を行うことができる。
【0037】
一例として、シール部材30A~30Dのそれぞれの厚みは、例えば1mmである。この場合、4つのシール部材30A~30DをX軸方向に互いに重なるように配置することにより、シール部材30A~30Dからなるシール部材群の厚みは4mmとなる。別の一例として、気密試験装置1はシール部材30Dを備えず、シール部材30A~30Cのそれぞれの厚みは、3mmであってもよい。この場合、3つのシール部材30A~30CをX軸方向に互いに重なるように配置することにより、シール部材30A~30Cからなるシール部材群の厚みは9mmとなる。
【0038】
第1挿通孔23に設けられるシール部材の枚数は、2枚以上であることが好ましい。これにより、管T1と第1挿通孔23との間の気密性を十分に維持することができ、また、仮に1枚のシール部材が破れた場合であっても、別のシール部材によって気密性を維持することができる。
【0039】
また、第2挿通孔31A~31Dの直径は互いに異なっていてもよい。例えば、図1に示すように、管T1の端部T2付近に、管T1の中央付近から管T1の端部T2に向かうにつれて外径が大きくなるように、傾斜部T4が形成されている場合を考える。この場合、第2挿通孔31A,31B,31C,31Dの順に、第2挿通孔31A~31Dの直径が大きくなっていることが好ましい。これにより、シール部材30A~30Dのそれぞれから管T1にかかる力を一定にすることができ、局所的に管T1を被覆治具20から引き抜きにくくなることを防ぐことができる。
【0040】
第1挿通孔23にシール部材30A~30Dが設けられることにより、検知用ガスが管T1の中央付近から被覆治具20の内部へ流入することを防ぐことができ、またエアーが被覆治具20の内部から管T1の中央付近へ漏れることを防ぐことができる。検知用ガスが管T1の中央付近から被覆治具20の内部へ流入することを防ぐことにより、気密試験の精度を向上することができる。
【0041】
また、エアーが被覆治具20の内部から管T1の中央付近へ漏れることを防ぐことにより、被覆治具20付近の検知用ガスがエアーによって吹き飛ばされることを防ぐことができるため、被覆治具20付近についても管T1の試験範囲とすることができ、管T1の未試験範囲を小さくすることができる。
【0042】
さらに、第1挿通孔23にシール部材30A~30Dを設けることにより、第1挿通孔23と管T1との間の隙間がシール部材30A~30Dによって塞がれる。このため、管T1における寸法または形状等のばらつきに対応することができ、管T1における様々な口径及び種類にも対応することができる。
【0043】
シール部材30A~30Dは、被覆治具20の内部に配置されている。また、エアー注入口21A~21Dからエアーが被覆治具20の内部に注入されている。これにより、被覆治具20の内部の圧力によりシール部材30A~30Dが管T1に密着する。よって、管T1と第1挿通孔23との間の気密性を効果的に向上することができる。
【0044】
<フード40及びガス注入器50の構成>
図1に示すように、フード40は、管固定部10,10Aに固定された管T1を覆うものである。フード40は、図示しない複数のチェーンによって吊り下げられている。ガス注入器50は、フード40が管T1を覆った状態で、フード40と管T1の外面との間の空間に検知用ガスを注入する。
【0045】
ガス注入器50は、フード40と管T1の外面との間の空間に検知用ガスを注入するためのガス注入管51を有する。フード40が管T1を覆った状態で、ガス注入管51の開口端は、フード40の下端よりも高い位置に配置されているとともに、管T1の外面に接触しない位置に配置されている。ただし、ガス注入管51の開口端の位置はこれに限られない。
【0046】
<台座60及び支持ローラ61の構成>
複数の台座60にはそれぞれ、支持ローラ61が設けられている。支持ローラ61は管T1を支持する。支持ローラ61に支持された管T1は、支持ローラ61の回転により、X軸方向に移動可能である。
【0047】
シリンダ70がロッド71をX軸正方向に移動させるとともに、支持ローラ61がY軸正方向に対して右回転する場合を考える。この場合、管T1と支持ローラ61との間に生じる摩擦力により、管T1を被覆治具20の内部に挿入し、管T1の端部T2を固定端11に押圧させることができる。また、シリンダ70がロッド71をX軸負方向に移動させるとともに、支持ローラ61がY軸正方向に対して左回転する場合、管T1と支持ローラ61との間に生じる摩擦力により、管T1を被覆治具20から引き抜くことができる。
【0048】
支持ローラ61は、管T1の外径または気密試験の進行に応じて、Z軸方向に移動可能であってもよい。この場合、台座60における支持ローラ61の載置面が図示しないモータにより昇降される。
【0049】
<管T1の引き抜き機構>
気密試験装置1は、管T1を被覆治具20から引き抜くための図示しない引き抜き機構を備えてもよい。例えば、当該引き抜き機構は、管T1を挟持する挟持部を有し、当該挟持部が管T1を挟持した状態で上記挟持部をX軸負方向に移動させることにより、管T1を被覆治具20から引き抜く。
【0050】
ここで、傾斜部T4が形成されている管T1を被覆治具20から引き抜く場合を考える。この場合、傾斜部T4が形成されていることによってシール部材30A~30Dから管T1にかかる力が強く、管T1を引き抜くために必要な力が大きいときであっても、上記引き抜き機構により管T1を被覆治具20から引き抜くことができる。
【0051】
なお、上記引き抜き機構は、管固定部10Aと、シリンダ70と、上記挟持部と、を有するものであってもよい。この場合、上記挟持部は押圧端11Aに設けられる。シリンダ70がロッド71をX軸負方向に移動させることにより、管T1を被覆治具20から引き抜く。これにより、シリンダ70が管T1を引き抜く力を管T1に作用させ、管T1を被覆治具20から引き抜くことができる。
【0052】
本実施形態において、管T1の端部T2を被覆する被覆治具20に形成されているエアー注入口21A~21Dから被覆治具20の内部にエアーが注入されることで、被覆治具20の内部の圧力が上昇する。このため、気密試験に用いる検知用ガスが被覆治具20の内部へ流入しにくくなる。つまり、検知用ガスが管T1の端部T2から管T1の内部へ流入しにくくなる。したがって、気密試験の精度を向上することができる。
【0053】
また、上述したように、管T1と第1挿通孔23との間をシールするシール部材30A~30Dが、X軸方向に互いに重なるように複数配置されている。これにより、管T1と第1挿通孔23との間の気密性を向上することができる。さらに、複数のシール部材30A~30Dを互いに重ねることでシール部材の強度を十分なものにしつつ、複数のシール部材30A~30Dのそれぞれが変形し易い状態となる。
【0054】
したがって、管T1を被覆治具20に対して挿脱し易くしつつ、管T1が被覆治具20に対して挿脱される場合にシール部材30A~30Dのへたりを低減することができる。シール部材30A~30Dのへたりを低減できるため、シール部材30A~30Dを繰り返して使用できる。
【0055】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。図4は、本発明の実施形態2に係る気密試験装置1Aが備える被覆治具20B付近を示す斜視図である。図4は、管T1と、真空ポンプ11Pと、検知部12と、被覆治具20Bの前面24と、フード40と、を省略している。
【0056】
図4に示すように、気密試験装置1Aは、気密試験装置1に比べて、被覆治具20に代えて被覆治具20Bを備える点が異なる。被覆治具20Bは、被覆治具20に比べて、被覆治具20Bの内周面26に被覆部材27が複数設けられている点が異なる。内周面26は側面25の裏側の面である。チューブ22A~22Dのそれぞれは、被覆治具20Bの側面25に形成された開口部A1,A2,A3,A4に接続されている。
【0057】
複数の被覆部材27のそれぞれは、被覆治具20Bの内側において開口部A1~A4のうち対応する開口部を被覆している。エアー注入口21A~21Dはそれぞれ、被覆部材27と内周面26との間に形成される。これにより、エアー注入口21A~21Dは、被覆治具20Bの内部に注入されるエアーを、エアー注入口21A~21Dから注入された後にシール部材30A~30Dから離れていく方向、または管T1とシール部材30A~30Dとの境界に沿った方向に導くように、被覆治具20Bに形成される。
【0058】
管T1とシール部材30A~30Dとの境界に沿った方向は、管T1の周方向D1である。また、エアーがエアー注入口21A~21Dから注入された後にシール部材30A~30Dから離れていく方向は、エアー注入口21A~21Dの位置を通過するとともにX軸方向に垂直な平面と、管固定部10と、の間の領域に向かう方向である。
【0059】
被覆治具20Bの内部に注入されるエアーがエアー注入口21A~21Dから注入された後にシール部材30A~30Dから離れていく方向、または管T1とシール部材30A~30Dとの境界に沿った方向に導かれる。このため、シール部材30A~30Dを管T1の外周面から離れさせる方向にはエアーは導かれない。よって、管T1と第1挿通孔23との間の気密性をより向上することができる。
【0060】
〔変形例〕
第2挿通孔31A~31Dにはそれぞれ、複数の切り込みが形成されていてもよい。これにより、管T1を被覆治具20に対して挿脱する場合に、シール部材30A~30Dのへたりをより低減することができる。
【0061】
また、少なくとも一組の隣り合うシール部材において、一方のシール部材に形成されている複数の切り込みのそれぞれが、他方のシール部材に形成されている複数の切り込みとは管T1の周方向D1にずれていてもよい。少なくとも一組の隣り合うシール部材とは、シール部材30A,30Bの組、シール部材30B,30Cの組、または、シール部材30C,30Dの組のうち、少なくとも一組を示す。切り込みがずれていることにより、管T1と第1挿通孔23との間の気密性を向上することができる。
【0062】
〔実施例〕
本発明の実施例では、第1試験条件及び第2試験条件で図1に示す気密試験装置1を用いて気密試験を行った。気密試験を行った結果を以下の表1に示す。表1において、エアーの有無は、エアー注入口21A~21Dから被覆治具20の内部に注入するエアーの有無であり、Heの流入量の平均値は、管T1の中央付近から被覆治具20の内部へ流入するHeの量を3回計測した結果の平均値である。表1に示すHeの流入量の平均値は、10-10MPa・m/sを単位とするものである。
【0063】
【表1】
【0064】
第1試験条件は、気密試験装置1においてシール部材30A~30Dを設けず、管T1と被覆治具20との間の隙間が30mmとなることである。第1試験条件でエアーを注入しない場合、つまり、被覆治具20の内部の圧力が0MPaである場合、Heの流入量を3回計測した結果、Heの流入量の平均値は191000となった。
【0065】
また、第1試験条件でエアーを注入する場合、つまり、被覆治具20の内部の圧力にエアーの圧力がある場合、Heの流入量を3回計測した結果、Heの流入量の平均値は33000となった。よって、被覆治具20の内部にエアーを注入することにより、被覆治具20の内部へ流入するHeの量を低減することができた。
【0066】
第2試験条件は、気密試験装置1においてシール部材30A~30Dの第2挿通孔31A~31Dの直径が232mmとなるとともに、管T1の外径が236mmとなることである。ここで外径は直径を意味するものとする。第2試験条件でエアーを注入しない場合、つまり、被覆治具20の内部の圧力が0MPaである場合、Heの流入量を3回計測した結果、Heの流入量の平均値は2165となった。また、第2試験条件でエアーを注入する場合、つまり、被覆治具20の内部の圧力にエアーの圧力がある場合、Heの流入量を3回計測した結果、Heの流入量の平均値は113となった。
【0067】
したがって、第2挿通孔31A~31Dの直径を小さくすることにより、被覆治具20の内部へ流入するHeの量をより低減することができる。以上により、被覆治具20の内部にエアーを注入するとともに、管T1と第1挿通孔23との間の気密性を向上することにより、被覆治具20の内部へ流入するHeの量を安定して低減することができる。
【0068】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る気密試験装置は、管の両端に当接し、当該両端を前記管の軸方向に押圧することで、前記管を所定の位置で固定する管固定部と、前記管の端部を被覆する被覆治具であって、当該被覆治具の内部にエアーが注入されるエアー注入口と、前記管が挿通される第1挿通孔と、が形成されている被覆治具と、前記軸方向に互いに重なるように配置されており、前記管と前記第1挿通孔との間をシールする複数のシール部材と、を備える構成である。
【0069】
本発明の態様2に係る気密試験装置は、上記の態様1において、前記複数のシール部材のそれぞれには、前記管が挿通される第2挿通孔が形成されており、前記複数のシール部材のそれぞれは、前記第2挿通孔に前記管が挿通されることにより、弾性変形して前記管に密着する弾性部材である構成としてもよい。
【0070】
本発明の態様3に係る気密試験装置は、上記の態様2において、前記第2挿通孔が開放されている状態で、前記第2挿通孔の直径が前記端部での前記管の外径よりも小さい構成としてもよい。
【0071】
本発明の態様4に係る気密試験装置は、上記の態様1から3のいずれかにおいて、前記エアー注入口は、前記被覆治具の内部に注入されるエアーを、前記エアー注入口から注入された後に前記シール部材から離れていく方向、または前記管と前記シール部材との境界に沿った方向に導くように、前記被覆治具に形成されている構成としてもよい。
【0072】
本発明の態様5に係る気密試験装置は、上記の態様1から4のいずれかにおいて、前記管固定部を前記管の前記両端に押圧させるシリンダをさらに備える構成としてもよい。
【0073】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
T1 管
1、1A 気密試験装置
10、10A 管固定部
20、20A、20B 被覆治具
21A~21D エアー注入口
23 第1挿通孔
30A~30H シール部材
31A~31D 第2挿通孔
70 シリンダ
L1 直径
L2 外径
T2、T3 端部
【要約】
【課題】管に対する気密試験の精度を向上する上で、管が被覆治具に対して挿脱される場合にシール部材のへたりを低減する。
【解決手段】気密試験装置(1)は、管(T1)を所定の位置で固定する管固定部(10、10A)と、管(T1)の端部を被覆し、エアーが注入されるエアー注入口(21A、21B)と、管(T1)が挿通される第1挿通孔(23)と、が形成されている被覆治具(20、20A)と、軸方向に互いに重なるように配置されており、管(T1)と第1挿通孔(23)との間をシールする複数のシール部材(30A~30H)と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4