(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】T形安全単管ジョイント
(51)【国際特許分類】
E04G 7/20 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
E04G7/20 C
(21)【出願番号】P 2023176339
(22)【出願日】2023-10-11
【審査請求日】2023-10-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523161996
【氏名又は名称】末富 喜敏
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100176692
【氏名又は名称】岡崎 ▲廣▼志
(72)【発明者】
【氏名】末富 喜敏
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-116070(JP,A)
【文献】実公昭42-022986(JP,Y1)
【文献】特開平07-243257(JP,A)
【文献】実開昭55-055536(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0088295(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 7/20
F16B 7/00-7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に係止ピンが設けられた第1の単管と第2の単管との間に介在して、これら第1の単管と第2の単管を連結するT
形安全単管ジョイントであって、
前記第1の単管の長手方向端部を外嵌可能に構成され、該第1の単管に挿入される側の端部外周面に、前記係止ピンの挿通および離脱が可能な平面視略T字形の第1の切欠部を形成した第1の筒状部と、
前記第2の単管の長手方向端部を外嵌可能に構成され、該第2の単管に挿入される側の端部外周面に、前記係止ピンの挿通および離脱が可能な平面視略逆L字形の第2の切欠部を形成した第2の筒状部と、
前記第1の筒状部と前記第2の筒状部を同心状かつ一体的に接続する、環状の部材からなる中間円筒部と、を備え、
前記第1の切欠部は、前記T字の横棒部分を構成する領域の一方端領域に設けた第1のピン係止部と、前記T字の横棒部分を構成する領域の他方端領域であって該T字の横棒部分の最端領域に設けた第2のピン係止部と、前記他方端領域であって前記最端領域と前記T字の縦棒部分との間に設けられ、前記第1の筒状部の開口方向に凹状にくびれたくびれ部からなる第3のピン係止部とを有することを特徴とするT
形安全単管ジョイント。
【請求項2】
前記T字の横棒方向と、前記くびれ部の開口側一方端から底部に向かう第1の辺状部とのなす第1の角度が略45°で、前記T字の横棒方向と、前記くびれ部の開口側他方端から底部に向かう第2の辺状部とのなす第2の角度が90°より小さく、かつ前記第1の角度よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のT
形安全単管ジョイント。
【請求項3】
前記第1の筒状部の軸方向における前記くびれ部の深さが前記係止ピンの直径と略同じであることを特徴とする請求項1に記載のT
形安全単管ジョイント。
【請求項4】
前記第1の筒状部の軸方向における前記第3のピン係止部の高さが前記係止ピンの直径と略同じであることを特徴とする請求項1に記載のT
形安全単管ジョイント。
【請求項5】
当該T
形安全単管ジョイントを介して垂直方向上側に位置する前記第1の単管と垂直方向下側に位置する前記第2の単管とが垂直方向に連結され、該第2の単管を軸心方向に回転して当該T
形安全単管ジョイントより離脱する際、前記第1の単管の係止ピンが前記第1の切欠部の前記一方端領域より前記他方端領域へ移動した場合、該係止ピンが前記第2のピン係止部または前記第3のピン係止部に保持されることで該第1の単管と当該T
形安全単管ジョイントとの連結状態が維持されることを特徴とする請求項1に記載のT
形安全単管ジョイント。
【請求項6】
前記中間円筒部の外周面であって周方向に対称となる位置に、当該T
形安全単管ジョイントの軸方向に線状に延びる一対の溝をさらに備え、前記第1の切欠部と前記第2の切欠部それぞれの位置に対応させて前記軸方向における該溝の溝幅を変えたことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のT
形安全単管ジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単管パイプを連結して足場等を組む際に使用するT形安全単管ジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
建築現場、外壁塗装現場、土木工事現場等において、単管パイプ、クランプ等の部材を使用して高所作業用の足場を組み立てている。その際、所定長の単管パイプのみでは必要な長さの足場を構成できない場合、単管パイプ同士を単管ジョイントを用いて連結し、所望の長さの足場を確保している。
【0003】
単管ジョイントは、両端部それぞれに単管を差し込むためのパイプ状の部材で構成されており、例えば、軸方向両端部の周方向にL形の切欠部を設け、両端部それぞれに差し込んだ単管を各々軸心回り(時計方向)に回転させて、単管の内部の端部近傍に設けられたロックピンを、L形の切欠部に挿入して係合させることで、単管同士を連結している。
【0004】
一方、両端部にL形の切欠部を設けた従来の単管ジョイントに結合された単管パイプをその単管ジョイントから引き抜く場合、引き抜く側の単管パイプあるいは単管ジョイントそのものを所定方向に回転して、L字形の切欠部から単管パイプのロックピンを解除する。その際、引き抜く単管パイプと反対側の単管パイプのロックピンも単管ジョイントから解除状態となり、引き抜く側の単管パイプによって単管ジョイントが引っ張られた場合、単管ジョイントが脱落するという問題がある。また、連結された単管パイプが同時に抜けて単管ジョイントがフリーの状態となり、そのまま脱落するという問題もある。
【0005】
上記の問題に着目して提案された特許文献1のパイプジョイント(単管ジョイント)は、一方端部の外周に略L字形の係止溝を形成し、他方端部の外周に略逆T字形の係止溝を形成して、略L字形の係止溝を有する側に結合された単管パイプを回転させて引き抜く際にパイプジョイントが回転しても、略逆T字形の係止溝を有する側に結合された単管パイプのロックピンが略逆T字形の一方の係止部から他方の係止部に移動することで、パイプジョイントの脱落・落下事故を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のパイプジョイントは、パイプジョイントを介して水平方向に連結された単管パイプをパイプジョイントから引き抜く場合におけるパイプジョイントの脱落防止に有効であるが、パイプジョイントを介して垂直方向に連結された単管パイプをパイプジョイントから引き抜く場合には、パイプジョイントの脱落を防止できないという問題がある。
【0008】
具体的には、
図6(a)に示すように、特許文献1に記載のパイプジョイント(パイプジョイント101とする)によって、L字形の係止溝112が形成された一方端部103を上側、T字形の係止溝109が形成された他方端部105を下側にして、単管パイプ121,123(図では破線で示す)が垂直方向に連結されている場合、単管パイプ123を図中の矢印G方向に回転が止まるまで回すと、単管パイプ123のロックピン125がT字形の係止溝109の一方の係止位置から他方の係止位置(破線で示す位置から点線で示す位置)へ移動し、その回転に連動して単管ジョイント101も回転する。
【0009】
これにより、単管パイプ121のロックピン127がL字形の係止溝112の解放位置(点線で示す位置)へ移動し、単管ジョイント101を脱落させずに、単管パイプ123に単管ジョイント101が結合した状態でそれらを引き抜くことができる。
【0010】
一方、
図6(b)に示すように特許文献1のパイプジョイント101を、T字形の係止溝109が形成された一方端部105を上側、L字形の係止溝112が形成された他方端部103を下側にして、垂直方向に単管パイプ121,123(図では破線で示す)が連結されている場合には、以下の問題が生じる。
【0011】
すなわち、作業者が、単管パイプ123を図中の矢印G方向に止まるまで回して、L字形の係止溝112に係止された単管パイプ123のロックピン127を係止位置から解放位置(破線で示す位置から点線で示す位置)へ移動させ、単管ジョイント101から単管パイプ123を引き抜く場合、単管パイプ123の回転と連動して単管ジョイント101も回転し、それにより、単管パイプ121のロックピン125がT字形の係止溝109の一方の係止位置から他方の係止位置(破線で示す位置から点線で示す位置)に移動すると、その位置においてロックピン125により単管ジョイント101が垂直方向に支持された状態で、それらが結合することになる。
【0012】
T字形の係止溝109において、T字の横棒は水平方向(一方端部105の周方向)にそのまま延びる形状であることから、ロックピン125は水平方向に容易に移動し、単管パイプ121と単管ジョイント101との結合は不安定な状態になる。このような不安定な結合状態にある単管パイプ121と単管ジョイント101のいずれか、あるいは双方に何らかの外力が付加され、それにより発生した振動等によってロックピン125が水平方向にずれて、T字の横棒の中央部(T字の縦棒部分)に至ると、ロックピン125がT字形の係止溝109から解放され、単管パイプ121と単管ジョイント101との結合状態が維持されなくなる。
【0013】
その結果、単管ジョイント101が単管パイプ121より離脱して落下するという問題が生じる。このような単管ジョイント101の離脱が高所の工事現場、足場等で発生した場合、単管ジョイントが金属製で相当の重量があることを勘案すると、その落下により生じる人的被害が甚大なものとなり、それを未然に防止することが喫緊の課題となる。
【0014】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、単管ジョイントを介して連結された単管パイプ、特に単管ジョイントを介して垂直方向に連結された単管パイプの解体時に単管ジョイントの脱落を防止する構成を備えたT形安全単管ジョイントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成し、上述した課題を解決する一手段として以下の構成を備える。すなわち本発明は、内部に係止ピンが設けられた第1の単管と第2の単管との間に介在して、これら第1の単管と第2の単管を連結するT形安全単管ジョイントであって、前記第1の単管の長手方向端部を外嵌可能に構成され、該第1の単管に挿入される側の端部外周面に、前記係止ピンの挿通および離脱が可能な平面視略T字形の第1の切欠部を形成した第1の筒状部と、前記第2の単管の長手方向端部を外嵌可能に構成され、該第2の単管に挿入される側の端部外周面に、前記係止ピンの挿通および離脱が可能な平面視略逆L字形の第2の切欠部を形成した第2の筒状部と、前記第1の筒状部と前記第2の筒状部を同心状かつ一体的に接続する、環状の部材からなる中間円筒部とを備え、前記第1の切欠部は、前記T字の横棒部分を構成する領域の一方端領域に設けた第1のピン係止部と、前記T字の横棒部分を構成する領域の他方端領域であって該T字の横棒部分の最端領域に設けた第2のピン係止部と、前記他方端領域であって前記最端領域と前記T字の縦棒部分との間に設けられ、前記第1の筒状部の開口方向に凹状にくびれたくびれ部からなる第3のピン係止部とを有することを特徴とする。
【0016】
例えば、前記T字の横棒方向と前記くびれ部の開口側一方端から底部に向かう第1の辺状部とのなす第1の角度が略45°で、前記T字の横棒方向と前記くびれ部の開口側他方端から底部に向かう第2の辺状部とのなす第2の角度が90°より小さく、かつ前記第1の角度よりも大きいことを特徴とする。例えば、前記第1の筒状部の軸方向における前記くびれ部の深さが前記係止ピンの直径と略同じであることを特徴とする。また、例えば、前記第1の筒状部の軸方向における前記第3のピン係止部の高さが前記係止ピンの直径と略同じであることを特徴とする。さらには、当該T形安全単管ジョイントを介して垂直方向上側に位置する前記第1の単管と垂直方向下側に位置する前記第2の単管とが垂直方向に連結され、該第2の単管を軸心方向に回転して当該T形安全単管ジョイントより離脱する際、前記第1の単管の係止ピンが前記第1の切欠部の前記一方端領域より前記他方端領域へ移動した場合、該係止ピンが前記第2のピン係止部または前記第3のピン係止部に保持されることで該第1の単管と当該T形安全単管ジョイントとの連結状態が維持されることを特徴とする。さらに例えば、前記中間円筒部の外周面であって周方向に対称となる位置に、当該T形安全単管ジョイントの軸方向に線状に延びる一対の溝をさらに備え、前記第1の切欠部と前記第2の切欠部それぞれの位置に対応させて前記軸方向における該溝の溝幅を変えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、垂直方向に連結された単管の解体時において、単管ジョイントが抜けて脱落するのを確実に防止できるので、単管固定用の部品の付加、単管と単管ジョイントとのテーピング等による固定が不要になる。また、単管の解体時、単管の連結部分に作業員が移動して単管ジョイントを保持する等の作業も不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係るT
形安全単管ジョイントの外観構成図である。
【
図2】本実施形態に係る単管ジョイントを介して垂直方向に連結した単管を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る単管ジョイントより垂直下方に位置する単管を離脱し、垂直上方に位置する単管と単管ジョイントとが連結を維持する状態を示す図である。
【
図4】単管ジョイントの第1の筒状部の切欠部に形成されたくびれ部の詳細構成を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る単管ジョイントの中間円筒部の外周面に設けた溝を示す図である。
【
図6】両端に単管パイプを垂直方向に連結した従来の単管ジョイントの課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るT
形安全単管ジョイント(以下、適宜、単管ジョイント、あるいはジョイントともいう)の外観構成図である。
図1に示すように本実施形態に係る単管ジョイント1は、全体が円筒状で、軸方向の中間部分には、軸方向に一定幅で周回する、リング形状の中間円筒部(カラーともいう)7を有し、中間円筒部7の軸方向一方側に第1の筒状部3、中間円筒部7の軸方向他方側に第2の筒状部5を備える。
【0020】
第1の筒状部3および第2の筒状部5は、単管パイプ(以下、単に単管ともいう)21,23を外嵌可能であり、外周部分において単管21,23が回転可能な径(例えば、48.6mm)を有する。第1の筒状部3に単管21が外嵌され、つまり、第1の筒状部3が単管21の端部に挿入され、第2の筒状部5に単管23が外嵌される、つまり、第2の筒状部5が単管23の端部に挿入されることで、単管ジョイント1を介して単管21,23が互いに連結される。
【0021】
具体的には、単管21の開口部に単管ジョイント1の第1の筒状部3の先端部を軸方向に差し込み、そのまま軸方向へ押し込んだ後、単管21を時計回りに回転して、単管21の内部の軸方向端近傍において径方向に延びる係合棒(ロックピン)25を、第1の筒状部3に形成された切欠部(係止溝)9,10間に係合させる。
【0022】
同様に単管23の開口部に単管ジョイント1の第2の筒状部5の先端部を軸方向に差し込み、そのまま軸方向へ押し込んだ後、単管23を時計回りに回転して、単管23の内部の軸方向端近傍において径方向に延びる係合棒(係止ピン、あるいはロックピンともいう)27を、第2の筒状部5に形成された切欠部(係止溝)11,12間に係合させる。これにより、単管21は第1の筒状部3の外周面を囲むように嵌合(外嵌)し、単管23は第2の筒状部5の外周面を囲むように嵌合(外嵌)する。
【0023】
切欠部9,10は、単管ジョイント1の軸に対して垂直な方向より平面視したとき略T字状となる形状を有する、パイプ抜止め用の切欠であり、同様に、切欠部11,12は、単管ジョイント1の軸に対して垂直な方向より平面視したときL字状(逆L字状ともいう)となる形状のパイプ抜止め用の切欠である。これらの切欠部9,10、切欠部11,12は、それぞれ軸中心に対称となる位置に対をなすように設けられている。後述するように、ピン係止部9b,10bそれぞれには、くびれ部8a,8bが形成されている。
【0024】
次に、本実施形態に係る単管ジョイントにより連結された単管を解体する態様について説明する。
図2は、単管ジョイント1を介して単管21,23を垂直方向(
図2のz方向(鉛直方向)である)に連結した様子を示している。ここでは、単管ジョイントの第1、第2の筒状部を覆うように被さる単管を破線で示し、単管の内部に挿入された第1、第2の筒状部等を実線で示す。
【0025】
単管21,23を垂直方向に連結するため、
図2に示すように単管ジョイント1は、端部に略T字状の切欠部9,10が形成された第1の筒状部3が垂直上方側となり、端部にL字状の切欠部11,12が形成された第2の筒状部5が垂直下方側となるように配置される。
【0026】
単管21のロックピン25a(波線で示す)が、略T字状の切欠部9のピン係止部9aと、略T字状の切欠部10のピン係止部10aとの間を挿通して係止され、単管21が第1の筒状部3の外周に嵌合(外嵌)されている。これにより、単管21の軸方向に引っ張り力が付加されても、単管21が第1の筒状部3から離脱しない。
【0027】
同様に、単管23のロックピン27(波線で示す)が、L字状の切欠部11のピン係止部11aと、L字状の切欠部12のピン係止部12a間を挿通して係止され、単管23が第2の筒状部5の外周に嵌合(外嵌)されている。よって、単管23の軸方向に引っ張り力が付加されても、単管23が第2の筒状部5から離脱しない。
【0028】
単管21,23が上記の連結状態にあるとき、単管23を軸心左回りに回転して、単管23のロックピン27を切欠部11,12のピン係止部11a,12a間から、ピン解放部11b,12b間を挿通するように移動させ(
図2に示すように、ロックピン27aの状態からロックピン27bの状態に移行する)、次に、単管23を垂直下方へ引くことにより、
図3に示すように単管ジョイント1より単管23が離脱した状態となる。
【0029】
単管23を単管ジョイント1より離脱させる際、通常、作業者は単管23の軸心方向の回転が止まるまで回す。その際、単管23のみが回転して単管ジョイント1が軸心回りに回転しない場合と、単管ジョイント1も軸心回りに回転する場合とがある。
【0030】
すなわち、単管23のロックピン27bが、L字状の切欠部11,12のピン解放部11b,12bの側壁に当接した状態で単管23をさらに回転させた場合、単管23の回転力がロックピン27bを介して単管ジョイント1に伝播してジョイントそのものも回転し、それにより第1の筒状部3も軸心回りに左回転する。
【0031】
第1の筒状部3が軸心回りに左回転すると、ロックピン25は、
図2に示すように、切欠部9のピン係止部9aと切欠部10のピン係止部10aとの間を挿通していたロックピン25aの状態から、切欠部9のピン係止部9bと切欠部10のピン係止部10bとの間を挿通するロックピン25bの状態に移行する。
【0032】
ピン係止部9b,10bそれぞれには、後述するくびれ部8a,8bが形成されているため、単管ジョイント1に何らかの外力が付加されて、第1の筒状部3が軸心回りに右回転すると、
図3に示すように、単管21のロックピン25は、ロックピン25bの状態からロックピン25cの状態に移行して、くびれ部8a,8bに嵌り込み、くびれ部8a,8b間を挿通する。
【0033】
くびれ部8a,8bは、ピン係止部9b,10bにおいて、第1の筒状部3の軸方向の解放口側に向けて凹状、すなわち、単管ジョイント1を、切欠部9,10を上側にして垂直状態にした場合、垂直上方側に凹状に形成されている。単管ジョイント1には自重による垂直下方への力が付加されているため、単管21のロックピン25がくびれ部8a,8bに嵌り込んだ状態(ロックピン25cの状態)で、単管21と単管ジョイント1との垂直方向における連結状態が維持される。
【0034】
したがって、ロックピン25がくびれ部8a,8bに嵌り込んでいることで、くびれ部8a,8bがピン係止部として機能し、単管ジョイント1の軸心回りの回転が阻止されて、単管21のロックピン25が水平方向に移動して単管ジョイント1からの解放位置に至ることがない。その結果、単管ジョイント1が単管パイプ21から離脱して落下することを確実に防止できる。
【0035】
図4は、第1の筒状部3の切欠部9,10に形成された、くびれ部8a,8bの詳細構成を示している。切欠部9,10は、上述したように平面視略T字状(
図4では逆T字状)の形状を有し、T字の横棒に対応する領域のうち一方端領域がピン係止部9a,10aとなり、他方端領域がピン係止部9b,10bとなる。
【0036】
さらに、ピン係止部9b,10bにおいて、T字の横棒の最深部分(最端領域)に対応する部位をピン係止部Aとし、T字の横棒の略中位(上記の最端領域とT字の縦棒部分との間)をピン係止部Bとする。ピン係止部Bには、くびれ部8a,8bが形成されている。第1の筒状部3の軸方向におけるピン係止部Aの高さH2と、くびれ部8a,8bの深さH1は、第1の筒状部3に外嵌される単管のロックピン25の径Dと略等しい(H1,H2≒D)。
【0037】
H1≒Dとすることで、ロックピン25が、安定した状態を維持しながらくびれ部8a,8bに嵌り込む。また、H2≒Dとし、ピン係止部Aに係止されたロックピンが第1の筒状部3の軸方向にずれる“遊び”を排除することで、単管ジョイントが、その軸方向に力を加えても移動しないことから、作業者は、ロックピン25がピン係止部Aに確実に位置することを容易に確認できる。
【0038】
一方、ピン係止部9a,10aの軸方向の高さH0、およびピン係止部9b,10bのうちT字の縦棒近傍領域の軸方向高さH0は、ロックピンの径Dよりも大きい(H0>D)。これにより、単管ジョイントと単管との連結時および開放時、ピン係止部9a,10a,9b,10bへのロックピンが導入および引出しを円滑に行える。
【0039】
くびれ部8a,8bは、ロックピン25の断面外形に沿う形状の半円部41と、その半円部41の一方端からピン係止部Aの上縁部に至る第1の線状部43と、半円部41の他方端からピン係止部9b,10bのうちT字の縦棒近傍領域の上縁部に至る第2の線状部45とからなる形状を有する。
【0040】
くびれ部8a,8bにおいて、第1の線状部43の傾斜角(T字の横棒方向となす角)θ1を略45°とし、第2の線状部45がT字の横棒方向となす傾斜角θ2は、90°>θ2>θ1とする。第1の線状部43の傾斜角θ1を略45°とすることで、単管ジョイント1に何らかの外力が付加された場合等において、ピン係止部Aに係止されたロックピン25が容易にくびれ部8a,8bへ移動して、ピン係止部Bにおける係止状態を維持可能となる。
【0041】
また、傾斜角θ2を、90°>θ2>θ1とすることで、ピン係止部Bに位置するロックピン25が振動等によりT字の縦棒部分へ移動するのを阻止して、ロックピン25が略T字状の切欠部から解放されるのを防ぐことができる。
【0042】
よって、第1の筒状部3の切欠部9,10において、ピン係止部9a,10aが第1のピン係止部として機能し、上述したピン係止部A、すなわち、ピン係止部9b,10bのうちT字の縦棒の最端部分が第2のピン係止部として機能し、この最端部分とT字の縦棒部分との間(上述したピン係止部B)に設けられたくびれ部8a,8bが第3のピン係止部として機能する。
【0043】
図5は、単管ジョイント1の中間円筒部7の外周面に所定形状の溝を設けた例を示している。
図5に示す溝31a,31bは、溝切り加工等により中間円筒部7の外周面の周方向において対称となる位置に対となって形成されている。溝31a,31bは、単管ジョイント1の軸方向に線状に延び、溝31aの延びる方向が、
図5において実線矢印で示すように、第1の筒状部3に形成された略T字状の切欠部9のT字の縦棒の方向と一致する。また、溝31bの延びる方向は、
図5において波線矢印で示すように、第1の筒状部3に形成された略T字状の切欠部10のT字の縦棒の方向と一致する。
【0044】
溝31a,31bは、例えば断面がV字形状で、1mm程度の深さで形成され、単管ジョイント1の開口部に向かうにつれて溝幅が徐々に大きくなる形状を有する。よって、溝31a,31bの溝幅が太くなる方向に、それぞれ略T字状の切欠部9,10が位置し、溝幅が狭くなる方向に、L字状の切欠部11,12が位置することになる。
【0045】
溝31a,31bを設けたことで、第1の筒状部3が単管21により外嵌され、第2の筒状部5が単管23により外嵌されて、溝31a,31bが外部から見えない状態となっても、作業者に対して、切欠部9,10の方向、切欠部11,12の方向、さらには、第1の筒状部3に形成された略T字状の切欠部9,10の位置を目視で容易に判断可能になる。同時に溝31a,31bは、作業者が手により単管ジョイント1を軸回りに回転させる際の滑り止めの役割を果たす。
【0046】
なお、上述した特許文献1では、パイプジョイントにおける係止溝の位置を外部から確認できるように半球状の突起からなる目印6等を設けているが、例えば、水平方向に延びる横パイプと垂直方向に延びる縦パイプとを、パイプジョイントが配置された箇所でクロスさせて繋ごうとする場合、パイプジョイントに設けられた半球状の突起が障害となって、緊結金具(クランプ部材)が使用できないため、横パイプと縦パイプを繋ぎ合わせて固定できないという問題がある。
【0047】
そこで、本実施形態に係る単管ジョイントは、単管ジョイントの切欠部の位置を目視で容易に判断可能にするための手段として、単管ジョイント1の中間円筒部7に切り込み溝である溝31a,31bを形成することで、上述したクランプ部材の使用が可能となり、高所作業用の足場の組み立ても容易になる。
【0048】
さらに、溝31a,31bを外部から容易に視認可能な大きさとし、溝31a,31bの内部に塗料等を流し込んで彩色することで、例えば、単管ジョイントと単管パイプとが長期間に渡り使用され、それらが埃、錆等によって同化した状態にあっても、単管ジョイントの存在、その位置等を外部から容易に確認できる。
【0049】
また、溝31a,31bの彩色が異なる2種類の単管ジョイントを用意して、ある彩色が溝に施された単管ジョイントには、通常のロックピンを備えた単管を結合し、それとは異なる彩色の単管ジョイントには、ロックピンのないパイプ(いわゆるバタパイプ)を結合することで、結合されている単管の種類を単管ジョイントの溝の色を見るだけで確認できるので、バタパイプが結合された単管ジョイントから不用意にそのパイプを抜くことによる単管ジョイントの脱落を防ぐことができる。
【0050】
以上説明したように、単管どうしを結合するための円筒状のT形安全単管ジョイントにおいて、その軸方向一方端部に平面視略T字状の切欠部を形成し、軸方向他方端部に平面視逆L字状の切欠部を形成し、この略T字状の切欠部においてT字の横棒部分を構成する領域の一方端領域に第1のピン係止部を設け、T字の横棒部分を構成する領域の他方端領域であってT字の横棒部分の最端領域に第2のピン係止部を設け、さらに、他方端領域であって、上記最端領域とT字の縦棒部分との間に、当該ジョイントの軸方向一方端部の開口方向に凹状にくびれたくびれ部からなる第3のピン係止部を設けた。
【0051】
こうすることで、当該ジョイントを介して垂直方向に連結された単管のうち、垂直方向下部に位置する、逆L字状の切欠部が形成された単管を軸心方向に回転して単管ジョイントから離脱させる際の回転力により、垂直方向上部において当該ジョイントと結合する単管のロックピンが、平面視略T字状の切欠部におけるT字の横棒部分の一方端領域から他方端領域に移動し、外部からの振動等により、他方端領域内で水平方向にずれても、そのロックピンが、他方端領域に設けた、くびれ部からなる第3のピン係止部によって確実に保持、係止される。
【0052】
よって、垂直方向に連結された単管の解体時、垂直方向下部にある単管をジョイントから離脱した後において、垂直方向上部にある単管と当該ジョイントとの結合状態が維持されるので、垂直上方の単管から単管ジョイントが外れて脱落するのを確実に防止でき、建築現場、外壁塗装現場、土木工事現場等における重量物の落下に伴う甚大な事故を未然に防ぐことができる。
【0053】
また、単管の解体時に作業員が単管ジョイントを保持する作業、単管の組立時あるいは解体前にテーピング等により単管ジョイントと単管の接続面を覆う作業、単管の解体後の状況に応じてテーピング等を除去するといった作業が不要になるので、単管の組立および解体作業効率が大幅に向上する。
【0054】
さらに、単管ジョイントの中間円筒部の外周面の周方向において対称となる位置に、その単管ジョイントの軸方向に線状に延びる一対の溝を設け、第1の切欠部の位置に対応させて溝の溝幅を大きくし、第2の切欠部の位置に対応させて溝の溝幅を小さくしたことで、単管ジョイントに形成された、いずれの切欠部によって単管が結合されているかを視認でき、結合状態の確認が容易になる。
【0055】
なお、上記の実施形態では、単管ジョイントを介して垂直方向に連結された単管について説明したが、本実施形態に係る単管ジョイントにより水平方向に連結された単管において、逆L字状の切欠部を形成した筒状部を外嵌する単管を単管ジョイントから取り外す方向に回転して、その単管と単管ジョイントとの結合を解除する際、それにより略T字状の切欠部を形成した筒状部が回転しても、その筒状部を外嵌する単管の係止ピンが略T字状の切欠部により係止され続けるので、その単管と単管ジョイントとの結合状態が維持される。
【0056】
よって、本実施形態に係る単管ジョイントを介して水平方向に連結された単管においても、その単管の解体時に単管ジョイントが抜けて脱落するのを防止できる。
【符号の説明】
【0057】
1 T形安全単管ジョイント
3 第1の筒状部
5 第2の筒状部
7 中間円筒部
8a,8b くびれ部
9,10 T字状の切欠部
9a,10a,9b,10b,11a,12a ピン係止部
11,12 逆L字状の切欠部
11b,12b ピン解放部
21,23 単管
25,27 ロックピン
31a,31b 溝
41 くびれ部を構成する半円部
43 くびれ部を構成する第1の線状部
45 くびれ部を構成する第2の線状部
【要約】
【課題】単管の解体時に単管ジョイントの落下を防止するT
形安全単管ジョイントを提供する。
【解決手段】T
形安全単管ジョイントの軸方向一方端部に平面視略T字状の切欠部を形成し、軸方向他方端部に平面視逆L字状の切欠部を形成する。略T字状の切欠部においてT字の横棒部分を構成する領域の一方端領域に第1のピン係止部を設け、他方端領域においてT字の横棒部分の最端領域に第2のピン係止部を設け、その最端領域とT字の縦棒部分との間に、当該ジョイントの軸方向一方端部の開口方向に凹状にくびれたくびれ部からなる第3のピン係止部を設けた。この他方端領域内で係止ピンがずれても、第3のピン係止部によって確実に保持、係止されるため、垂直方向に連結された単管のうち垂直下部にある単管を引き抜いた後においても、垂直上部にある単管と当該ジョイントとの結合状態が維持され、垂直上部の単管から単管ジョイントが外れて脱落するのを防止できる。
【選択図】
図3