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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】検知体及び超音波洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/12 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
B08B3/12 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023558742
(86)(22)【出願日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 JP2023023746
【審査請求日】2023-10-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000124959
【氏名又は名称】株式会社カイジョー
(74)【代理人】
【識別番号】100081318
【弁理士】
【氏名又は名称】羽切 正治
(74)【代理人】
【識別番号】100132458
【弁理士】
【氏名又は名称】仲村 圭代
(74)【代理人】
【識別番号】100165146
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 博喜
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 彩波
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 浩史
(72)【発明者】
【氏名】今関 康博
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-096264(JP,A)
【文献】特開2020-039051(JP,A)
【文献】特開2018-169332(JP,A)
【文献】国際公開第2017/104194(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液が収容された洗浄槽と、
前記洗浄槽に対して超音波を照射する振動子と、
前記超音波を発生するための駆動信号を前記振動子に対して印加する発振器と、を備えた超音波洗浄装置において、
前記洗浄液の音圧を検知する検知体であって、
少なくとも一部が前記洗浄液中に浸漬される支持体と、
前記支持体の非接液部において前記支持体の中心軸周りに等間隔で配置され、互いに同一の検知特性を有する複数の音圧センサと、を備え、
前記支持体を通じて伝搬された前記超音波による振動を、前記複数の音圧センサのそれぞれが音圧値として検知すること
を特徴とする検知体。
【請求項2】
洗浄液が収容された洗浄槽と、
前記洗浄槽に対して超音波を照射する振動子と、
前記超音波を発生するための駆動信号を前記振動子に対して与える発振器と、
少なくとも先端部が前記洗浄液中に浸漬される支持体、及び、前記支持体の後端部において前記支持体の中心軸周りに等間隔で配置され、互いに同一の検知特性を有する複数の音圧センサを備え、前記支持体を通じて伝搬された前記超音波による振動を、前記複数の音圧センサのそれぞれが音圧値として検知する検知体と、
前記検知体が接続される制御手段と、を備える超音波洗浄装置であって、
前記制御手段は、前記検知体の検知結果に基づいて、前記超音波洗浄装置の運転状態が正常か異常かを判定すること
を特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記複数の音圧センサのそれぞれが検知した前記音圧値に基づいて、前記検知体の作動状態が正常か異常かを判定する判定部と、
前記検知体による検知結果を表示可能な表示部と、を備え、
前記判定部は、前記複数の音圧センサを、前記音圧値が最も小さい1つの下位音圧センサと、前記下位音圧センサを除く上位音圧センサと、に設定し、前記下位音圧センサが検知した下位音圧値と、前記上位音圧センサが検知した上位音圧値に対応する基準音圧値と、に基づいて、前記検知体の作動状態が正常か異常かを判定すること
を特徴とする請求項2に記載の超音波洗浄装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記基準音圧値と所定の閾値との積と、前記下位音圧値と、の比較結果に基づいて前記検知体の作動状態が正常か異常かを判定すること
を特徴とする請求項3に記載の超音波洗浄装置。
【請求項5】
前記複数の音圧センサの数が3つ以上であるとき、前記基準音圧値は、前記上位音圧センサのうちで、前記音圧値がより大きな上位2つの前記上位音圧センサの前記上位音圧値の平均値であること
を特徴とする請求項4に記載の超音波洗浄装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記発振器からの前記駆動信号の出力の有無に基づいて、前記発振器の作動状態が正常か異常かを判定すること
を特徴とする請求項5に記載の超音波洗浄装置。
【請求項7】
前記判定部は、予め定めた初期音圧値と、前記基準音圧値と、の比較結果に基づいて前記振動子の作動状態が正常か異常かを判定すること
を特徴とする請求項6に記載の超音波洗浄装置。
【請求項8】
前記複数の音圧センサの数が2つであるとき、前記基準音圧値は、1つの前記上位音圧センサが検知した前記上位音圧値であること
を特徴とする請求項4に記載の超音波洗浄装置。
【請求項9】
前記判定部において前記検知体の作動状態が異常であると判定されたときに、前記超音波洗浄装置の動作を停止させる停止信号を出力する制御装置を備えること
を特徴とする請求項3に記載の超音波洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波洗浄装置に用いる検知体、及び、この検知体を備えた超音波洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波洗浄を行う装置において、超音波が印加された、洗浄槽や処理槽における液体の音圧を検知するために、音圧を検知可能な検知装置やセンサを配置した構成が提案されている。例えば、特許文献1に記載の音圧検知装置は、プローブとモニタからなるものであり、このプローブは、棒状の感応片と、感応片の後端部を支持するための把持部と、把持部の内部において感応片の後端面に接着された音圧センサと、を備える。音圧センサとしては圧電素子が用いられる。音圧センサの接着部とその周辺部は、感応片の後端部と把持部の先端部を外側から覆うようにホルダを把持部の外周面にねじ込むことによって、把持部の先端部の内側に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-21412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の音圧検知装置は、長期に渡って使用することにより、感応片からの音圧センサの剥がれや浮き、ホルダの緩みや破損、音圧センサ自体の劣化などの不具合が生じる場合があり、このような不具合が生じることで検知信号における振幅が本来より小さくなるなどの問題があった。一方、検知信号の振幅が小さくなった場合、音圧センサのほか、処理槽に超音波を与える振動子や発振器に不具合が生じているケースや、処理槽内の液体が減少して空焚き状態となっているケースもあり、各部構成の作動状態が正常か異常かを判定することが困難であった。
【0005】
そこで本発明は、超音波洗浄装置の洗浄槽内の液体の音圧を検知する検知体の音圧センサからの出力が小さい等の異常が生じた場合に、超音波洗浄装置の各部構成の作動状態が正常か異常かを判定することができ、各部構成のすべての作動状態が正常か、少なくとも一つの構成の作動状態に異常があるかどうかによって超音波洗浄装置の運転状態が正常か異常かを判定することができる、検知体及び超音波洗浄装置を提供することを目的とする。また、本発明の目的は、音圧センサに異常が生じたかどうかを判定することができる、検知体及び超音波洗浄装置を提供することにある。さらに、本発明は、検知体からの出力に異常が生じた場合に、音圧センサ、洗浄槽、洗浄槽に超音波を照射する振動子、及び、発振器のいずれに異常が生じたのかを判定することができる、検知体及び超音波洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の検知体は、洗浄液が収容された洗浄槽と、前記洗浄槽に対して超音波を照射する振動子と、前記超音波を発生するための駆動信号を前記振動子に対して与える発振器と、を備えた超音波洗浄装置において、前記洗浄液の音圧を検知する検知体であって、少なくとも一部が前記洗浄液中に浸漬される支持体と、前記支持体の非接液部において前記支持体の中心軸周りに等間隔で配置され、互いに同一の検知特性を有する複数の音圧センサと、を備え、前記支持体を通じて伝搬された前記超音波による振動を、前記複数の音圧センサのそれぞれが音圧値として検知する
ことを特徴とする。
【0007】
本発明の超音波洗浄装置は、洗浄液が収容された洗浄槽と、前記洗浄槽に対して超音波を照射する振動子と、前記超音波を発生するための駆動信号を前記振動子に対して与える発振器と、少なくとも先端部が前記洗浄液中に浸漬される支持体、及び、前記支持体の後端部において前記支持体の中心軸周りに等間隔で配置され、互いに同一の検知特性を有する複数の音圧センサを備え、前記支持体を通じて伝搬された前記超音波による振動を、前記複数の音圧センサのそれぞれが音圧値として検知する検知体と、前記検知体が接続される制御手段と、を備える超音波洗浄装置であって、前記制御手段は、前記検知体の検知結果に基づいて、前記超音波洗浄装置の運転状態が正常か異常かを判定することを特徴とする。
【0008】
本発明の超音波洗浄装置において、前記制御手段は、前記複数の音圧センサのそれぞれが検知した前記音圧値に基づいて、前記検知体の作動状態が正常か異常かを判定する判定部と、前記検知体による検知結果を表示可能な表示部と、を備え、前記判定部は、前記複数の音圧センサを、前記音圧値が最も小さい1つの下位音圧センサと、前記下位音圧センサを除く上位音圧センサと、に設定し、前記下位音圧センサが検知した下位音圧値と、前記上位音圧センサが検知した上位音圧値に対応する基準音圧値と、に基づいて、前記検知体の作動状態が正常か異常かを判定することを特徴とする。
【0009】
本発明の超音波洗浄装置において、前記判定部は、前記基準音圧値と所定の閾値との積と、前記下位音圧値と、の比較結果に基づいて前記検知体の作動状態が正常か異常かを判定することを特徴とする。
【0010】
本発明の超音波洗浄装置において、前記複数の音圧センサの数が3つ以上であるとき、前記基準音圧値は、前記上位音圧センサのうちで、前記音圧値がより大きな上位2つの前記上位音圧センサの前記上位音圧値の平均値であることを特徴とする。
【0011】
本発明の超音波洗浄装置において、前記判定部は、前記発振器からの前記駆動信号の出力の有無に基づいて、前記発振器の作動状態が正常か異常かを判定することを特徴とする。
【0012】
本発明の超音波洗浄装置において、前記判定部は、予め定めた初期音圧値と、前記基準音圧値と、の比較結果に基づいて前記振動子の作動状態が正常か異常かを判定することを特徴とする。
【0013】
本発明の超音波洗浄装置において、前記複数の音圧センサの数が2つであるとき、前記基準音圧値は、1つの前記上位音圧センサが検知した前記上位音圧値であることを特徴とする。
【0014】
本発明の超音波洗浄装置において、前記判定部において前記検知体の作動状態が異常であると判定されたときに、前記超音波洗浄装置の動作を停止させる停止信号を出力する制御装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、超音波洗浄装置の洗浄槽内の液体の音圧を検知する検知体の音圧センサからの出力が小さい等の異常が生じた場合に、超音波洗浄装置の各部構成の作動状態が正常か異常かを判定することができ、また、音圧センサに異常が生じたかどうかを判定することができ、さらに、検知体からの出力に異常が生じた場合に、音圧センサ、洗浄槽、洗浄槽に超音波を照射する振動子、及び、発振器のいずれに異常が生じたのかを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)、(b)は、第1実施形態に係る検知体の支持体の構成を示す側面図、(c)は、支持体の平面図である。
図2】(a)、(b)は、第1実施形態に係る検知体の構成を示す側面図、(c)は(a)に示す検知体に配線を固定した状態を示す図、(d)は、検知体の平面図である。
図3】(a)、(b)は、第1実施形態に係る超音波洗浄装置の構成をブロック図を含めて示す図である。
図4】第1実施形態に係る正常・異常判定方法の手順を示すフローチャートである。
図5】(a)は変形例1における支持体の構成を示す側面図、(b)は変形例1における検知体の構成を示す側面図、(c)は(a)に示す支持体の平面図、(d)は(b)に示す検知体の平面図である。
図6】(a)は変形例2における支持体の構成を示す側面図、(b)は変形例2における検知体の構成を示す側面図、(c)は(a)に示す支持体の平面図、(d)は(b)に示す検知体の平面図である。
図7】(a)は変形例3における支持体及び音圧センサの配置を示す平面図、(b)は変形例3に係る検知体の構成を示す側面図、(c)は変形例4における支持体及び音圧センサの配置を示す平面図、(d)は変形例4に係る検知体の構成を示す側面図である。
図8】(a)は変形例5における支持体及び音圧センサの配置を示す平面図、(b)は変形例5に係る検知体の構成を示す側面図、(c)は変形例6における支持体及び音圧センサの配置を示す平面図、(d)は変形例6に係る検知体の構成を示す側面図である。
図9】変形例5に係る検知体を洗浄槽に固定した状態を示す図である。
図10】(a)、(b)は第2実施形態に係る超音波洗浄装置の構成においてブロック図も含めた図である。
図11】第2実施形態に係る正常・異常判定方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る、検知体及び超音波洗浄装置について図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1(a)、(b)は、第1実施形態に係る検知体10の支持体110の構成を示す側面図、(c)は、支持体110の平面図である。図1(a)は(c)の1A方向から見た図、(b)は(c)の1B方向から見た図である。
図2(a)、(b)は、第1実施形態に係る検知体10の構成を示す側面図、(c)は(a)に示す検知体10に配線を取付固定した状態を示す図、(d)は、検知体10の平面図である。図2(a)は(c)の2A方向から見た図、(b)は(c)の2B方向から見た図である。
【0018】
図3(a),(b)は、第1実施形態に係る超音波洗浄装置100の構成におけるブロック図も含めた図である。
【0019】
超音波洗浄装置100は、図3(a)に示すように、検知体10(図2(a)、(b)、(c))を備えた構成を有し、図3(b)に示すように、図3(a)に示す構成に、制御装置61を有する外部装置60を加えた構成も可能である。
以下に各部構成について説明する。
【0020】
<検知体10>
検知体10は、図1(a)、(b)、(c)に示す支持体110に、図2(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、音圧センサとしての圧電素子を3つ配置した構成を備える。
支持体110は、洗浄槽20(図3(a)、(b))に浸漬したときに、洗浄液23の音圧に基づく振動を伝搬可能な棒状材である。このような棒状材としては、例えば、ステンレス鋼や石英を成形したものが挙げられ、支持体110は、中心軸AX1を有する円柱状をなしている。洗浄液23の音圧の変化は、振動子30(図3(a)、(b)参照)から洗浄槽20内の洗浄液23へ印加された超音波によって生じており、支持体110が伝搬する振動は、振動子30から印加される超音波の音圧に対応する。
【0021】
図1(a)、(b)に示すように、支持体110は、中心軸AX1に沿ったZ1-Z2方向において、先端部110aと後端部110bとを備える。図3(a)、(b)に示すように、支持体110は、先端部110a側が洗浄液23に浸漬され、後端部110b側は洗浄液23の液面22よりも上側に配置される。別言すると、支持体110の一部である先端部110aが洗浄液23に浸漬される。音圧センサ121、122、123は、最も水位の高いときの洗浄液23の液面22よりも高い位置に配置される。よって、洗浄液23の液面の変化にかかわらずに、音圧センサ121、122、123は洗浄液23には浸漬されない位置に配置される。すなわち、非接液部である後端部110bが、常に、洗浄液23の液面22よりも上側に配置される。これにより、洗浄槽20内の洗浄液23に浸漬することに起因する、音圧センサ121、122、123の特性の変化、劣化、剥がれの進行等を防ぐことができる。
【0022】
図1(a)、(b)、(c)に示すように、支持体110の後端部110bには、中心軸AX1に関して互いに対称に、3つの傾斜面111、112、113が形成されている。別言すると、これらの傾斜面111、112、113は、中心軸AX1に関して、120°ごとの等角度間隔に設けられている。これらの傾斜面111、112、113は、同一若しくは実質的に同一の平面形状を有し、Z1-Z2方向において同じ範囲に設けられ、後端部110bの最も後ろ側の後端面110cへ向かうほど中心軸AX1に近づく傾斜となっている。
【0023】
図2(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、3つの傾斜面111、112、113には、3枚の音圧センサ121、122、123がそれぞれ固定されている。この固定は接着剤を用いて行い、接着剤としては、例えばエポキシ系の接着剤を用いる。音圧センサ121、122、123は、互いに同一の形状、同一の変形モード、同一の検知特性を備える板状の圧電素子である。変形モードは限定しないが、例えば、厚み方向に変形する変形モードを有する圧電素子を用いる場合には、その底面を、対応する傾斜面(傾斜面111、112、113)に接着して固定する。3つの音圧センサ121、122、123は、Z1-Z2方向において、そのZ2側(後端側)の角部が隣り合う音圧センサと互いに近接する位置に配置される。図2(d)に示すように、音圧センサ121、122、123は、中心軸AX1に関して、120°ごとの等角度間隔に設けられる。音圧センサ121、122、123が、Z1-Z2方向において、Z2側(後端側)の角部が隣り合う音圧センサと互いに近接する位置に配置されることにより、傾斜面111、112、113のうち、支持体110の後端部110bの後端面110c側が音圧センサ121、122、123に覆われずに露出する。
【0024】
音圧センサ121、122、123は、傾斜面111、112、113にそれぞれ設けたことにより、傾斜面を設けない構成と比較して、音圧センサを固定するための面積を広く確保することができる。また、支持体110の中心軸AX1に沿った振動、及び、中心軸AX1と角度を持った振動のいずれについても、一定の精度で検知することができる。このため、音圧検知素子としての圧電素子の選択の自由度が広くなる。ここで、傾斜面111、112、113の中心軸AX1に対する傾斜角度は、音圧センサ121、122、123の大きさ等に応じて任意に設定することができる。
【0025】
図2(c)、図3(a)、(b)に示すように、検知体10には、一方の端部が、制御手段としての本体部50に電気的に接続された信号線131、151、152、153の他方の端部がそれぞれ接続されている。これらの信号線131、151、152、153は、絶縁被覆された電線を用いる。第1信号線131は、支持体110に半田付けされ、ここに電気的に接続された、3本の接続線141、142、143が、音圧センサ121、122、123の負極にそれぞれ接続される。音圧センサ121、122、123の正極には、3本の第2信号線151、152、153がそれぞれ接続されている。この配線によって、支持体110を伝搬した振動によって音圧センサ121、122、123のそれぞれに加わる圧力が電圧に変換され、この電圧が本体部50で、洗浄槽20内の洗浄液23における音圧値として検知される。
【0026】
<超音波洗浄装置100>
図3(a)に示すように、超音波洗浄装置100は、検知体10、洗浄槽20、振動子30、発振器40、及び、本体部50を備える。また、図3(b)に示すように、超音波洗浄装置100に外部装置60を加えた構成も可能である。
【0027】
洗浄槽20には、洗浄のための洗浄液23が満たされており、検知体10は、支持体110の中心軸AX1が鉛直方向に沿うように、かつ、先端部110a側が洗浄液23に浸漬され、後端部110b側においては少なくとも音圧センサ121、122、123が液面22よりも上側になるように、洗浄槽20又は洗浄槽20の外部の固定具(不図示)に固定されている。洗浄液23は想定される洗浄の進行に合わせた所定の水量で、洗浄槽20に新たな洗浄液23をポンプや電磁弁等(不表示)で流入させ、かつ、汚れた洗浄液23をポンプや電磁弁等(不表示)で外部へ排出する。
【0028】
しかして、本発明者らは、音圧センサ121、122、123は、1つの棒状材である検知体10に取付固定され、音圧センサ121、122、123から発生する信号は、同じ種類の信号が夫々の音圧センサ121、122、123から得られるが、この得られた同じ種類の信号を比較することによって、検知体10からの出力に異常が生じた場合に、音圧センサ121、122、123、洗浄槽20、洗浄槽20に超音波を照射する振動子30、及び、発振器40のいずれの作動状態に異常が生じたのかを判定をすることができることを発見し、本発明を完成するに至ったものである。要するに、音圧センサ121、122、123から発生する信号は、同じ種類の信号であるから、その発生する信号から得られる音圧値は、強弱の信号が得られるのみであって、本発明による洗浄装置の各部構成等の作動状態が正常か異常かについての判定はそのままの処理では難しいが、本発明者らは、音圧センサ121、122、123から発生する同じ種類、すなわち同一の検知特性を有する信号を比較することによって、本発明を完成させるに至ったものである。詳細については後述する。
また、音圧センサ121、122、123は、1つの棒状材である検知体10の後端部110b側に取付固定して配設したことによって、音圧センサ121、122、123が1つの棒状材である検知体10の後端部110b側の近傍に配置されることによって、音圧センサ121、122、123の夫々から発生する信号のばらつき等をなくすようにして、得られる信号の精度を高めたものである。
【0029】
洗浄槽20の底面21には振動子30が取付固定されている。振動子30の種類は、超音波洗浄装置100による洗浄の仕様に応じて任意のものを使用することができる。振動子30は、発振器40から与えられた駆動信号によって超音波振動する。その超音波は、洗浄槽20に照射され、洗浄槽20内の洗浄液23に印加される。この超音波の振動にしたがって洗浄液23において音圧が変動する。
【0030】
本体部50は、演算部51と、記憶部52と、判定部53と、表示部54と、入力部55と、制御装置61と、を備える。演算部51は、第1信号線131と、3本の第2信号線151、152、153のそれぞれと、の間の電圧に基づいて、音圧センサ121、122、123のそれぞれにおいて検知された音圧値を算出する。これらの音圧値の算出は、予め記憶部52に保存された、電圧値を音圧の強さとして表示する。ここで、記憶部52には、電圧値と音圧値の相関関係に基づいた換算表や換算式が保存されており、演算部51は、それらの換算表や換算式に基づいて電圧値から音圧値を算出する。
【0031】
演算部51は、算出した音圧値を、対応する音圧センサ(音圧センサ121、122、123)の名称と関連付けて、記憶部52に保存する。さらに、演算部51は、3つの音圧センサ121、122、123が検知した音圧値のうちの上位2つの音圧値、すなわち大きい方の2つの音圧値(上位音圧値)、の平均値Ave(基準音圧値)を算出して、それらの音圧値を検知した2つの音圧センサ(上位音圧センサ)の名称と関連付けて記憶部52に保存する。また、最下位の音圧値Min、すなわち最も小さな音圧値(下位音圧値)と、その音圧値を検知した音圧センサ(下位音圧センサ)の名称とを組み合わせて記憶部52に保存する。ここで、上位音圧センサは、3つの音圧センサ121、122、123のうち、前記下位音圧センサを除く2つの音圧センサである。
【0032】
演算部51で算出された音圧値は判定部53へ出力され、判定部53は、上記平均値Aveと所定の閾値Xの積と、最下位の音圧値Minと、の比較演算を行い、その比較結果に基づいて、音圧センサ121、122、123の作動状態が正常か異常かの判定、すなわち作動状態の異常の発生の有無を判定する。判定結果は記憶部52に保存されるとともに、図4に示す処理において所定の形式で表示部54に表示される。閾値Xは予め入力部55の操作によって入力され、記憶部52に保存されている。制御手段としての本体部50(判定部53)は、音圧センサ121、122、123のすべての作動状態が正常であるとき、超音波洗浄装置100の運転状態が正常であると判定し、いずれかの作動状態に異常があるときは超音波洗浄装置100の運転状態が異常であると判定する。
【0033】
制御装置61は、判定部53による判定結果を受け取り、この判定結果に基づいて、発振器40に対する制御信号を生成し、発振器40へ出力する。この制御信号としては、例えば、判定部53による判定結果において、音圧センサ121、122、123のいずれかの作動状態に異常が生じたと判定されたとき、発振器40に対して、振動子30への駆動信号の送出を停止させるための制御信号が挙げられる。
【0034】
図3(b)に示すように、外部装置60は、超音波洗浄装置100の本体部50と発振器40にそれぞれ接続された、制御装置61を備える。制御装置61は、図3(a)に示す構成において本体部50内に備えられた制御装置61と同じ機能を有する。
【0035】
図4は、第1実施形態に係る超音波洗浄装置の運転状態が正常か異常かの判定、すなわち各部構成の作動状態が正常か異常かの判定、の手順を示すフローチャートである。以下、図4を参照しつつ、第1実施形態における、正常・異常判定について説明する。
【0036】
振動子30の駆動を始める前に、入力部55を操作して、予め閾値Xを設定し記憶部52に記憶させる(図4のステップS11)。閾値Xは、振動子30が発生する超音波の特性(周波数など)、洗浄液23の温度・液深・水量、洗浄槽20における音圧センサ121、122、123の配置高さ、音圧センサ121、122、123の特性、支持体110の振動特性、洗浄槽20における検知体10の配置、洗浄対象物の形状や種類等に応じて任意に設定する。
閾値Xは、洗浄槽20等の音圧値は環境等により常時変動するため、これらの変動による誤検知を防ぐために設定する。
【0037】
次に、発振器40から振動子30へ駆動信号の出力を開始し、振動子30は超音波を洗浄槽20へ照射する。このとき、洗浄槽20内の洗浄液23では照射された超音波に応じた音圧が生じる。検知体10の支持体110では、洗浄液23に浸漬された部分で、この音圧に応じた振動が生じ、この振動は後端部110b側へ伝搬される。振動は、後端部110bの傾斜面111、112、113に設けた音圧センサ121、122、123において、変形に比例した電圧に変換され、電圧は演算部51において音圧値に換算され、これによって、音圧センサ121、122、123のそれぞれにおける音圧値が検知される(ステップS12)。検知された音圧値は、音圧センサ121、122、123の名称と対応させて記憶部52に保存される。
【0038】
演算部51は、同じタイミングで3つの音圧センサ121、122、123のそれぞれで検知された3つの音圧値を比較し、音圧値の大きさによって順位を決定する。さらに、演算部51は、上位2つの音圧値の平均値Aveを算出し、対応する音圧センサを特定する名前とともに記憶部52に保存する(ステップS13)。また、演算部51は、最下位の音圧値Minを、対応する音圧センサを特定する名前とともに記憶部52に保存する(ステップS14)。上記ステップS13、S14における保存動作においては、その時の時刻も関連付けて保存される。
【0039】
なお、最下位の音圧値Minの保存は、上記順位の決定の際に行っても良い。
また、3つの音圧センサ121、122、123の音圧値が互いに同一であった場合は、任意の2つを上位2つの音圧値として平均値Aveを算出し(ステップS13)、残りの1つを最下位の音圧値Minとして記憶部52に保存する(ステップS14)。
【0040】
平均値Aveと最下位の音圧値Minは判定部53へ与えられ、判定部53は、閾値Xを記憶部52から読みだして平均値Aveと閾値Xの積を算出し、音圧値Minと比較する(ステップS15)。
【0041】
判定部53は、音圧値Minが平均値Aveと閾値Xの積より大きい場合(ステップS15でYES)、音圧値Minに対応する音圧センサの作動状態は正常であると判定する(ステップS16)。このとき、制御手段としての本体部50は、超音波洗浄装置100の運転状態は正常であると判定している。
【0042】
一方、音圧値Minが平均値Aveと閾値Xの積より小さい、又は、同一である場合(ステップS15でNO)、音圧値Minに対応する音圧センサの作動状態は異常であると判定する。異常であると判定したとき、判定部53は表示部54に、音圧センサの作動状態に異常がある旨を表示させる(ステップS17)。その後、判定部53は、異常の有無に関わらず、ステップS16、S17に続いて、平均値Aveを音圧値として表示部54に表示させる(ステップS18)。このとき、制御手段としての本体部50は、超音波洗浄装置100の運転状態は異常であると判定している。
【0043】
閾値Xは、上記ステップX15のように、音圧値Minが平均値Aveと閾値Xの積より大きいかどうかの判定で用いる場合、0よりも大きく1よりも小さい数値を設定することが好ましい。ここで、閾値Xを大きくすると(例えば0.7以上とすると)、早期に音圧センサの作動状態の異常を判定することができるため、剥落等による洗浄対象物への影響が生じることを防ぐことができる。閾値Xを小さくすると(例えば0.5以下とすると)、洗浄状況などに起因する音圧値変化を音圧センサの作動状態の異常と混同して判定してしまうことを防止できる。
【0044】
以上のように、上位2つの音圧値の平均値を算出し、これに基づいて作動状態が正常か異常かの判定を行うことについては、異常と判定される音圧センサの音圧値は著しく低い値であり、また、3つの音圧センサ121、122、123のうち、2つ以上の音圧センサが同時に故障することはきわめて起こりにくいと考えられるため、上位2つの平均値を判定の基準として用いている。これによって、本発明によれば、検出精度が高められている。
【0045】
音圧センサの作動状態の正常・異常の判定を、音圧値自体ではなく、上位音圧センサの音圧値の平均値Aveと閾値Xの積に基づいて行うことについては、洗浄槽20においては、洗浄液23の流入・排出が行われ、また、環境に対応した変化、例えば液面の揺れ等により、振動の伝搬状態が常に変化しているため、検知される音圧値も変動する。このため、音圧値自体に基づいて音圧センサの作動状態の正常・異常の判定を行うと、音圧値のわずかな変動によって誤検知をしてしまう恐れがある。これに対して、閾値Xとの積を用いると、微小な変動による誤検知を防ぐことが可能となり、また、著しく音圧値が低下した音圧センサの作動状態を異常と判定することが容易となる。
【0046】
以下に変形例について説明する。
検知体に用いる支持体の形状は、洗浄槽20において支持体の一定範囲、すなわち一部、が洗浄液23内に浸漬されるとともに、非接液部に配置した音圧センサを有するものであればよい。例えば、図5(a)に示すように傾斜面を有しない円柱状や、図6(a)に示すような角柱形状、図7に示すような円筒状、図8に示すようなツバ付きの円筒状が挙げられる。
【0047】
(変形例1)
図5(a)は変形例1における支持体210の構成を示す側面図、(b)は変形例1における検知体の構成を示す側面図、(c)は(a)に示す支持体210の平面図、(d)は(b)に示す検知体の平面図である。図5(b)は(d)の5B方向から見た図である。
【0048】
図5(a)に示す支持体210は、中心軸AX2に沿ったZ1-Z2方向において、先端部210aと後端部210bとを備える。この支持体210に対して、上記第1実施形態の音圧センサ121、122、123と同じ構成の音圧センサ221、222、223が、後端部210bの外周面211上に、中心軸AX2に関して等角度間隔にそれぞれ接着固定されている。
【0049】
(変形例2)
図6(a)は変形例2における支持体310の構成を示す側面図、(b)は変形例2における検知体の構成を示す側面図、(c)は(a)に示す支持体310の平面図、(d)は(b)に示す検知体の平面図である。図6(a)は(c)の6A方向から見た図、(b)は(d)の6B方向から見た図である。
【0050】
図6(a)に示す支持体310は、中心軸AX3に沿ったZ1-Z2方向において、先端部310aと後端部310bとを備え、4つの外側面311、312、313、314を備えた四角柱形状を有する。この支持体310に対して、上記第1実施形態の音圧センサ121、122、123と同じ構成の4つの音圧センサ321、322、323、324が、後端部310bの4つの外側面311、312、313、314上にそれぞれ接着固定されている。音圧センサ321、322、323、324は、外側面311、312、313、314よりも小さな幅を有するため、互いに接触しない状態で、支持体310に固定することができる。
【0051】
(変形例3、4)
図7(a)は、変形例3における支持体410及び音圧センサ421、422、423の配置を示す平面図、図7(b)は変形例3に係る検知体の構成を示す側面図である。図7(c)は、変形例4における支持体410及び音圧センサ451、452、453の配置を示す平面図、図7(d)は変形例4に係る検知体の構成を示す側面図である。図7(a)、(c)は、支持体410が蓋部413で閉じられている状態を示しており、内部の構造を破線で示している。変形例3と変形例4においては、共通の部材については同一の符号を付して説明する。
【0052】
支持体410は、中空で有底の円柱状部材であって、第1実施形態と同様の材料で構成する。
図7(a)、(b)に示す変形例3においては、3つの音圧センサ421、422、423が、支持体410の内部の底面411上に接着固定されている。これらの音圧センサ421、422、423は、支持体410の中心軸AX4に関して等角度間隔で互いに対称となる、換言すると、中心軸AX4周りに等間隔で配置され、中心軸AX4側から径方向にそれぞれ延びるように配置されている。
【0053】
支持体410は、音圧センサ421、422、423を内部に配置した後に、上部が円板状の蓋部413で封止され、これによって音圧センサが配置された内部空間への液体の浸入を防ぐことができる。
【0054】
蓋部413上には、コネクタ430が配置され、音圧センサ421、422、423のそれぞれと電気的に接続されている。コネクタ430には、本体部50に接続されたケーブル440が接続されており、これにより、音圧センサ421、422、423と本体部50とが互いに接続される。
【0055】
図7(c)、(d)に示す変形例4においては、3つの音圧センサ451、452、453が、支持体410の内周面412上に接着固定されている。これらの音圧センサ451、452、453は、支持体410の中心軸AX4に関して等角度間隔で互いに対称となる、換言すると、中心軸AX4周りに等間隔で配置され、中心軸AX4に沿ってそれぞれ延びるように配置されている。蓋部413、コネクタ430、及び、ケーブル440に関する構成は変形例3と同様である。
【0056】
支持体410において、底面411を有する底壁、及び、内周面412を有する側壁は、超音波の伝達性や透過性、耐久性、液密性を考慮した厚みで形成することが好ましい。
【0057】
変形例3及び変形例4の構成により、支持体410を洗浄液23中に浸漬したときに、内部空間が、洗浄液23が侵入しない非接液部として機能する。これにより、検知体を、コンパクトで、製造しやすい構成において、液密性を確実に確保できる形態として実現することができる。
【0058】
(変形例5、6)
図8(a)は、変形例5における支持体510及び音圧センサ521、522、523の配置を示す平面図、図8(b)は変形例5に係る検知体の構成を示す側面図である。図8(c)は、変形例6における支持体510及び音圧センサ551、552、553の配置を示す平面図、図8(d)は変形例6に係る検知体の構成を示す側面図である。図9は、変形例5に係る検知体を洗浄槽20に固定した状態を、洗浄槽20を断面で示した図である。図8(a)、(c)は、支持体510が蓋部513で閉じられている状態を示しており、内部の構造を破線で示している。変形例5と変形例6においては、共通の部材については同一の符号を付して説明する。
【0059】
支持体510は、第1実施形態と同様の材料で構成され、中空で円柱状の本体部514と、本体部514よりも大径の円板形状を有して本体部514の底部を閉じる円板部515と、が一体的に形成された構成を備える。本体部514と円板部515は、共通の中心軸AX5を有している。円板部515は、径方向において、その外周部が本体部514の外周面よりも外側へ、フランジ状に延びている。
【0060】
図8(a)、(b)に示す変形例5においては、3つの音圧センサ521、522、523が、支持体510の内部の底面511上に接着固定されている。これらの音圧センサ521、522、523は、支持体510の中心軸AX5に関して等角度間隔で互いに対称となるように、中心軸AX5側から径方向にそれぞれ延びるように配置されている。
【0061】
支持体510は、音圧センサ521、522、523を内部に配置した後に、上部が円板状の蓋部513で封止され、これによって音圧センサが配置された内部空間への液体の浸入を防ぐことができる。
【0062】
蓋部513上には、コネクタ530が配置され、音圧センサ521、522、523のそれぞれと電気的に接続されている。コネクタ530には、本体部50に接続されたケーブル540が接続されており、これにより、音圧センサ521、522、523と本体部50とが互いに接続される。コネクタ530及びケーブル540は、中心軸AX5と同心状に配置され、かつ、径方向において支持体510よりも小さなサイズの範囲に設けられている。
【0063】
図8(c)、(d)に示す変形例6においては、3つの音圧センサ551、552、553が、支持体510の内周面512上に接着固定されている。これらの音圧センサ551、552、553は、支持体510の中心軸AX5に関して等角度間隔で互いに対称となる位置において、中心軸AX5に沿ってそれぞれ延びるように配置されている。蓋部513、コネクタ530、及び、ケーブル540に関する構成は変形例5と同様である。
【0064】
支持体510において、底面511を有する円板部515、及び、内周面512を有する側壁は、超音波の伝達性や透過性、耐久性、液密性を考慮した厚みで形成することが好ましい。
【0065】
支持体510の本体部514の外周面514aには螺旋溝が形成されている。この外周面514aには、内周面に螺旋溝を備えたリング状のナット516が螺合されている。このナット516は、その内周面の螺旋溝と、本体部514の外周面514aの螺旋溝と、の噛み合いにしたがって、支持体510の中心軸AX5に沿った方向に移動可能である。
【0066】
図9に示すように、洗浄槽20の側壁24には、支持体510の本体部514と同径の円形状に貫通形成された固定穴部25が設けられている。変形例5に係る検知体は、固定穴部25に対し洗浄槽20の内側から挿入され、ケーブル540、コネクタ530、及び、本体部514の蓋部513側が、洗浄槽20の外側へ露出される。この状態において、洗浄槽20の外側において、本体部514にナット516を螺合させ、ナット516と円板部515とで、洗浄槽20の側壁24を挟持させ、挟持部分を接着材で固定する。これにより、円板部515が洗浄槽20の内部に配置された状態で、固定穴部25における洗浄液23の出入りを抑えるように封止することができる。
なお、このような検知体の配置は、変形例6の検知体についても同様に行うことができる。
【0067】
変形例5及び変形例6の構成により、コンパクトな構成によって、支持体510の円板部515を洗浄槽20内の洗浄液23に浸漬させることができ、かつ、洗浄槽20に確実に固定させることができる。また、円板部515を洗浄液23中に浸漬したときに、支持体510の内部空間が、洗浄液23が侵入しない非接液部として機能する。これにより、検知体を、コンパクトで、製造しやすい構成において、液密性を確実に確保できる形態として実現することができる。
【0068】
上記第1実施形態及び変形例1、3、4、5、6では、3つの音圧センサを備えた構成について説明し、変形例2では、4つの音圧センサを備えた構成を説明したが、音圧センサの数はこれらに限定されず、2つ、又は、5つ以上を等角度間隔で配置することができる。音圧センサを2つとする場合、基準音圧値としては、上記第1実施形態の場合の2つの上位音圧センサの音圧値の平均値Aveに代えて、1つの上位音圧センサの音圧値を用いる。音圧センサを4つ以上とする場合、基準音圧値としては、上記第1実施形態の場合と同様に、2つの上位音圧センサの音圧値の平均値Aveとすることが好ましいが、1つの下位音圧センサを除く音圧センサのすべて、又は、3つ以上を上位音圧センサに設定し、それらの音圧値の平均値を基準音圧値としてもよい。
【0069】
上記第1実施形態では、音圧センサの作動状態の正常・異常の判定のために、上位音圧センサの音圧値の平均値Aveと閾値Xの積を、最下位の音圧値Minと比較していたが、音圧値Minとの比較対象はこれに限定されず、例えば、平均値Aveに対して、閾値Xに代わる閾値を加算又は減算した値としてもよい。
【0070】
上記第1実施形態では、音圧センサとして圧電素子を用いたが、洗浄槽20内の洗浄液23の音圧を検知できればこれに限定されず、例えばダイヤフラム(振動板)を用いても良い。
【0071】
上記第1実施形態では、隣り合う音圧センサを互いに近接するように配置していた。この近接距離は、音圧センサとしての圧電素子のサイズと支持体110の径方向サイズによって設定され、このように近接配置することで、各音圧センサにおいて検知される音圧値のばらつきを一定値以下に抑えることを可能としていた。このようなばらつき抑制の効果の点においては、隣り合う音圧センサの最小距離は、0より大きく、かつ、音圧センサの幅の50%以下とすることが好ましい。
【0072】
上記第1実施形態では、音圧センサ121、122、123が洗浄液23から露出するように、検知体10を配置していたが、音圧センサ121、122、123の変形を妨げないように、支持体110の後端部110bを水密状態で覆うカバー等を設けた場合には、音圧センサ121、122、123も洗浄液23の水面よりも下方に配置してもよい。
【0073】
(実施例1、2)
表1と表2に第1実施形態に係る超音波洗浄装置100における検知結果の数値実施例1、2をそれぞれ示す。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】
【0076】
表1に示す実施例1では、音圧センサ121で検知された音圧値Aが51(単位mV)、音圧センサ122で検知された音圧値Bが48(単位mV)、音圧センサ123で検知された音圧値Cが53(単位mV)となっており、これらの音圧値から、上位音圧センサである2つの音圧センサ121、123の音圧値の平均値Aveが52(単位mV)となる。一方、下位音圧センサである音圧センサ122の音圧値48が最下位の音圧値Minとなる。そして、閾値Xを0.5にした場合、平均値Ave×Xは26となるため、この音圧値26と音圧値Minとしての48とが比較され、48の方が大きいため、下位音圧センサである音圧センサ122の作動状態は正常であると判定される。
【0077】
表2に示す実施例2では、音圧センサ121で検知された音圧値Aが51(単位mV)、音圧センサ122で検知された音圧値Bが15(単位mV)、音圧センサ123で検知された音圧値Cが53(単位mV)となっており、これらの音圧値から、上位音圧センサである2つの音圧センサ121、123の音圧値の平均値Aveが52(単位mV)となる。一方、下位音圧センサである音圧センサ122の音圧値15が最下位の音圧値Minとなる。そして、閾値Xを0.5にした場合、平均値Ave×Xは26となるため、この音圧値26と音圧値Minとしての15とが比較され、15の方が小さいため、下位音圧センサである音圧センサ122の作動状態は異常であると判定され、作動状態が異常である旨が表示部54に表示される。
【0078】
上記第1実施形態によれば、超音波洗浄装置100の洗浄槽20内の洗浄液23の音圧を検知する音圧センサ121、122、123からの出力が小さい等の作動状態の異常が生じた場合に、音圧センサ121、122、123のいずれのセンサに異常が生じたかどうかについて、迅速に、かつ、簡便な構成で判定することができる。
【0079】
<第2実施形態>
つづいて、本発明の第2実施形態について説明する。図10(a),(b)は第2実施形態に係る超音波洗浄装置600の構成をブロック図を含めて示す図である。図10(a)に示すように、第2実施形態の超音波洗浄装置600においては、第1実施形態の超音波洗浄装置100と同じ構成に加え、発振器40から振動子30へ与えられる駆動信号と同じ信号が同時に本体部50にも出力されている。また、図10(b)に示すように、超音波洗浄装置600が、第1実施形態と同様の制御装置61を有する外部装置60を備える構成も可能である。
【0080】
超音波洗浄装置600においては、発振器40から、振動子30と本体部50へ、同じ駆動信号が同時に送られるように構成されている。本体部50では、判定部53が、発振器40から駆動信号が届いているか否かを識別し、この識別結果に基づいて、発振器40が駆動信号を正しく出力している状態であるかどうかを判定する。制御手段としての本体部50(判定部53)は、音圧センサ121、122、123のすべての作動状態、振動子30の作動状態、及び、発振器40の作動状態が、いずれも正常であるとき、超音波洗浄装置600の運転状態が正常であると判定し、各部構成のいずれかの作動状態に異常があるときは超音波洗浄装置600の運転状態が異常であると判定する。
【0081】
図11は、第2実施形態に係る正常・異常判定の手順を示すフローチャートである。以下、図11を参照しつつ、第2実施形態における、正常・異常判定の流れについて説明する。
【0082】
振動子30の駆動を始める前に、入力部55を操作して、予め閾値X、Y及び初期音圧値Iを設定し記憶部52に記憶させる(図11のステップS21)。閾値X、Yは第1実施形態の閾値Xと同様に設定し、互いに同じ数値に設定してもよい。初期音圧値Iは、作動状態が正常な発振器40から、作動状態が正常な振動子30に与える駆動信号によって生じる超音波に対して音圧センサ121、122、123が正常に検知した場合に検知されると推定される音圧値である。または、作動状態が正常であることが分かっている音圧センサにより実際に検知を行ったときの音圧値でもよい。
【0083】
次に、発振器40から振動子30及び本体部50へ駆動信号の出力を開始し、判定部53において、発振器40から所定の駆動信号が届いているか否かを判定する(ステップS22)。
【0084】
発振器40から所定の駆動信号が届いているか否かの判定(ステップS22)において、駆動信号が届いているとき(ステップS22でYES)は、発振器40が正常に動作しているものと判定し(ステップS23)、駆動信号が届いていないとき(ステップS22でNO)は、判定部53は、発振器40の作動状態に異常があると判定する(ステップS34)。
【0085】
発振器40から本体部50へ所定の駆動信号が届いている場合(ステップS22でYES)、振動子30にも駆動信号が入力されており、振動子30が発生した超音波が洗浄槽20へ照射される。このとき、洗浄槽20内の洗浄液23では照射された超音波に応じた音圧が生じる。検知体10の支持体110では、洗浄液23に浸漬された部分で、この音圧に応じた振動が生じ、この振動は後端部110b側へ伝搬される。振動は、後端部110bの傾斜面111、112、113に設けた音圧センサ121、122、123において、変形に比例した電圧に変換され、電圧は演算部51において音圧値に換算され、これによって、音圧センサ121、122、123のそれぞれにおける音圧値が検知される(ステップS24)。検知された音圧値は、音圧センサ121、122、123と対応させて記憶部52に保存される。
【0086】
演算部51は、同じタイミングで3つの音圧センサ121、122、123のそれぞれで検知された3つの音圧値を比較し、音圧値の大きさによって順位を決定する。さらに、演算部51は、上位2つの音圧値(上位音圧値)の平均値Ave(基準音圧値)を算出し、対応する音圧センサを特定する名前とともに記憶部52に保存する(ステップS25)。また、演算部51は、最下位の音圧値Min(下位音圧値)を、対応する音圧センサを特定する名前とともに記憶部52に保存する(ステップS26)。上記ステップS25、S26における保存動作においては、その時の時刻も関連付けて保存される。
【0087】
次に、平均値Aveと最下位の音圧値Minが判定部53へ与えられ、判定部53は、閾値Xを記憶部52から読みだして平均値Aveと閾値Xの積を算出し、音圧値Minと比較する(ステップS27)。
【0088】
判定部53は、音圧値Minが平均値Aveと閾値Xの積より大きい場合(ステップS27でYES)、音圧値Minに対応する音圧センサは作動状態が正常であると判定する(ステップS28)。一方、音圧値Minが平均値Aveと閾値Xの積より小さい、又は、同一である場合(ステップS27でNO)、音圧値Minに対応する音圧センサの作動状態は異常であると判定する。異常であると判定したとき、判定部53は表示部54に、音圧センサの作動状態に異常がある旨を表示させる(ステップS29)。
【0089】
判定部53は、音圧センサの作動状態の異常の有無に関わらず、ステップS28、S29に続いて、閾値Yと初期音圧値Iを記憶部52から読みだして、これらの積と平均値Aveとを比較する(ステップS30)。
【0090】
判定部53は、平均値Aveが、閾値Yと初期音圧値Iの積より大きい場合(ステップS30でYES)、振動子30は作動状態が正常であると判定(ステップS31)するとともに、表示部54に、平均値Aveを音圧値として表示させる(ステップS32)。このとき、制御手段としての本体部50(判定部53)は、各部構成のすべての作動状態が正常であるとして、超音波洗浄装置600の運転状態は正常であると判定している。
【0091】
一方、平均値Aveが、閾値Yと初期音圧値Iの積より小さい、又は、同一である場合(ステップS30でNO)、判定部53は、振動子30の作動状態の異常や空焚きであると判定する(ステップS33)。
【0092】
ステップS33における振動子30の作動状態が異常であるとの判定の後、及び、ステップS34における発振器40の作動状態が異常であるとの判定の後、判定部53は、制御装置61に対してエラー信号を送出する(ステップS35)。エラー信号を受けた制御装置61は、発振器40に対して、振動子30への駆動信号の送出を停止する停止信号を送出する(ステップS36)。
ここで、制御手段としての本体部50は、各部構成のいずれかにおいて作動状態が異常であるとき、超音波洗浄装置600の運転状態は異常であると判定している。
【0093】
閾値Yは、環境等による音圧値の変動と、許容できる、音圧センサの性能低下の範囲に基づいて設定する。上記ステップS30のように、平均値Aveが初期音圧値Iと閾値Yの積より大きいかどうかの判定で用いる場合、0.5以上で1よりも小さい数値を設定することが好ましい。閾値Yを0.5以上とすることで、実際の洗浄状況に応じて変化する平均値Aveのわずかな変化で振動子30の作動状態が異常と判定されることなく、安定して洗浄を継続することができるが、閾値は使用状況により変化するので、使用環境に合わせて設定することが望ましい。
【0094】
(実施例3)
表3に第2実施形態に係る超音波洗浄装置600における検知結果の数値実施例を示す。
【0095】
【表3】
【0096】
表3に示す実施例3では、初期音圧値Iが55(単位mV)、音圧センサ121で検知された音圧値Aが21(単位mV)、音圧センサ122で検知された音圧値Bが21(単位mV)、音圧センサ123で検知された音圧値Cが19(単位mV)となっており、これらの音圧値から、上位音圧センサである2つの音圧センサ121、122の音圧値の平均値Aveが21(単位mV)となる。一方、下位音圧センサである音圧センサ123の音圧値19が最下位の音圧値Minとなる。そして、閾値Xを0.5、閾値Yを0.6にした場合、平均値Ave×Xは10.5、初期音圧値I×閾値Yは33となる。
【0097】
このような状況においては、発振器40からの信号はあるという条件(図11のステップS22でYes、発振器40の作動状態は正常)では、ステップS27、S30における判定結果は次のようになる。
(1)ステップS27「Min>Ave×X?」については、音圧値Minが19、Ave×Xが10.5であるから、音圧値Minの方が大きいため音圧センサの作動状態は正常であると判定される。
(2)ステップS30「Ave>I×Y?」については、平均値Aveが21、I×Yは33であるから、平均値Aveの方が小さいため振動子30の作動状態に異常があると判定される。
【0098】
第2実施形態によれば、第1実施形態における作用効果に加え、検知体10からの出力に異常が生じた場合に、音圧センサ121、122、123、振動子30、及び、発振器40のいずれの作動状態に異常が生じたのかを判定することが可能となる。
なお、その他の作用、効果、変形例は第1実施形態と同様である。
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
【符号の説明】
【0099】
10 検知体
20 洗浄槽
21 底面
22 液面
23 洗浄液
25 固定穴部
30 振動子
40 発振器
50 本体部(制御手段)
51 演算部
52 記憶部
53 判定部
54 表示部
55 入力部
60 外部装置
61 制御装置
100、600 超音波洗浄装置
110、210、310、410、510 支持体
110a、210a、310a 先端部
110b、210b、310b 後端部
110c 後端面
111、112、113 傾斜面
121、122、123 音圧センサ
131 第1信号線
141、142、143 接続線
151、152、153 第2信号線
211 外周面
221、222、223 音圧センサ
311、312、313、314 外側面
321、322、323、324 音圧センサ
411、511 底面
412、512 内周面
413、513 蓋部
421、422、423 音圧センサ
430、530 コネクタ
440、540 ケーブル
451、452、453 音圧センサ
514 本体部
514a 外周面
515 円板部
516 ナット
521、522、523 音圧センサ
551、552、553 音圧センサ
Ave 上位音圧センサの音圧値の平均値
AX1、AX2、AX3、AX4、AX5 中心軸
I 初期音圧値
Min 最下位の音圧センサの音圧値Min
X、Y 閾値
【要約】
検知体の音圧センサからの出力が小さい等の異常が生じた場合に、超音波洗浄装置の各部構成の作動状態が正常か異常かを判定することができる、検知体及び超音波洗浄装置を提供する。このために、洗浄液の音圧を検知する検知体において、少なくとも一部が洗浄液中に浸漬される支持体と、支持体の非接液部において支持体の中心軸周りに等間隔で配置され、互いに同一の検知特性を有する複数の音圧センサと、を備え、支持体を通じて伝搬された超音波による振動を、複数の音圧センサのそれぞれが音圧値として検知する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11