(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】ネガワット取引支援装置、ネガワット取引システムおよびネガワット取引方法
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20240105BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240105BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20240105BHJP
【FI】
H02J13/00 311T
H02J3/32
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2019175428
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
(72)【発明者】
【氏名】田中 晃司
(72)【発明者】
【氏名】猿田 健一
(72)【発明者】
【氏名】柴本 真吾
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-134522(JP,A)
【文献】特開2018-160949(JP,A)
【文献】国際公開第2014/196364(WO,A1)
【文献】特開2011-060921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H02J 3/32
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電点を介して外部から電力の供給を受ける負荷における負荷電力が変動する際に、前記受電点における受電電力の値が所定の閾値である負荷追従閾値を超えないように、前記受電電力の値を入力として、前記受電電力とは別に前記負荷に電力を供給する補助電力源の出力の値をフィードバック制御する制御装置の前段に設けられたネガワット取引支援装置であって、
ネガワット取引におけるデマンドレスポンス指令として前記受電電力の削減量を指定の値にする旨の目標削減量を受信するDR指令受信部と、
前記受電電力を削減する際の基準となるベースラインの値を算出するベースライン算出部と、
前記ベースラインから前記目標削減量を減算して、受電電力目標値を算出する受電電力目標値算出部と、
受電点における電源周波数
と基準周波数との差分である周波数偏差を、電力値である周波数偏差補正値
に変換する周波数偏差補正部と、
前記受電電力目標値から前記周波数偏差補正値を減算して、周波数偏差補正後受電電力目標値を算出する周波数偏差補正後受電電力目標値算出部と、
前記負荷追従閾値から前記周波数偏差補正後受電電力目標値を減算して、受電電力目標バイアス値を算出するバイアス値算出部と、
前記受電電力目標バイアス値を前記受電電力の値に加算して仮想受電電力を算出して、前記算出した仮想受電電力の値を前記受電点における受電電力の値に代えて前記制御装置に入力する仮想受電電力算出部と、
を備えたことを特徴とするネガワット取引支援装置。
【請求項2】
前記周波数偏差補正部は、前記周波数偏差が所定値以内の場合、前記目標削減量を変化させない不感帯を設定することを特徴とする、
請求項1に記載のネガワット取引支援装置。
【請求項3】
前記補助電力源は、蓄電池であることを特徴とする、
請求項1または2に記載のネガワット取引支援装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のネガワット取引支援装置
と、
前記ネガワット取引支援装置にデマンドレスポンス指令を送信するネガワット取引システム
と、
を有するシステムであって、
前記ネガワット取引システムは、
前記デマンドレスポンス指令を受信する複数の前記ネガワット取引支援装置のそれぞれに対応する受電点における受電電力を管理する手段と、
前記管理する手段で管理された受電電力に基づいて、対応するネガワット取引支援装置に対して送信するデマンドレスポンス指令を生成する手段と、
を有することを特徴とす
るシステム。
【請求項5】
受電点を介して外部から電力の供給を受ける負荷における負荷電力が変動する際に、前記受電点における受電電力の値が所定の閾値である負荷追従閾値を超えないように、前記受電電力の値を入力として、前記受電電力とは別に前記負荷に電力を供給する補助電力源の出力の値をフィードバック制御する制御装置をネガワット取引に適合させるためのネガワット取引支援方法であって、
ネガワット取引におけるデマンドレスポンス指令として前記受電電力の削減量を指定の値にする旨の目標削減量を受信するステップと、
前記受電電力を削減する際の基準となるベースラインの値を算出するステップと、
前記ベースラインから前記目標削減量を減算して、受電電力目標値を算出するステップと、
受電点における電源周波数
と基準周波数との差分である周波数偏差を、電力値である周波数偏差補正値
に変換するステップと、
前記受電電力目標値から前記周波数偏差補正値を減算して、周波数偏差補正後受電電力目標値を算出するステップと、
前記負荷追従閾値から前記周波数偏差補正後受電電力目標値を減算して、受電電力目標バイアス値を算出するステップと、
前記受電電力目標バイアス値を前記受電電力の値に加算して仮想受電電力を算出して、前記算出した仮想受電電力の値を前記受電点における受電電力の値に代えて前記制御装置に入力するステップと、
を含むことを特徴とするネガワット取引支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はネガワット取引支援装置、ネガワット取引システムおよびネガワット取引方法に関し、詳細には、バーチャルパワープラントを実現するためのネガワット取引支援装置、ネガワット取引システムおよびネガワット取引方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電力網は、火力発電所や水力発電所などの大型の発電所で発電した電力を、電気の需要家である企業や家庭に供給する形態をとるのが一般的であった。電気は貯留できない性質をもっているので、電気の品質を維持するためには需要電力と供給電力とをバランスさせる必要がある。従来の電力網においては、需要家で必要とする電力の増減に合わせて、大型の発電所での発電量を調整することで需要と供給のバランスをとっていた。
【0003】
こうした従来の電力網に代わる電力網として、近年、バーチャルパワープラント(VPP:Virtual Power Plant)を用いた電力網が注目されている。バーチャルパワープラントは、太陽光発電、蓄電池、電気自動車、ネガワット(節電した電力)といった広く普及したエネルギーリソース(分散型のエネルギーリソース)を活用すべく、IoTを駆使した高度なエネルギーマネジメント技術によって分散型のエネルギーリソースを遠隔・統合制御し、あたかも1つの発電所のような機能を実現するものである。
【0004】
このように、バーチャルパワープラントの分散型のエネルギーリソースのひとつであるネガワット取引による電力を制御するための技術は、バーチャルパワープラントの要素技術として普及が期待されている。
【0005】
一方、需要家には、受電電力が契約電力閾値以下の電力になるように受電電力を調整する受電電力調整設備を有する需要家(以下、「受電電力調整需要家」ともいう)が存在する。受電電力調整設備とは、蓄電池システム、自家発電設備などの常用発電設備やデマンドコントローラを用い、受電電力調整需要家の負荷が増大したときに常用発電設備から受電電力調整需要家の負荷に電力を供給して受電電力を契約電力閾値以下の電力に調整している。デマンドコントローラを用いた設備では、受電電力調整需要家の負荷が増大したときに、デマンドコントローラにより受電電力調整需要家内の負荷を選択遮断して受電電力を契約電力閾値以下の電力になるようにしている。
【0006】
例えば、受電電力調整設備が常用発電設備であり、常用発電設備として蓄電池システムを有する受電電力調整需要家では、受電電力のピークカットを目的とし、受電電力に応じて蓄電池システムの充放電電力を自動的に調整している。
【0007】
特許文献1では、こうした受電電力調整需要家の既設の受電電力調整設備を改造したり取替えたりすることなくネガワット取引が可能となるネガワット取引支援装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載されたネガワット取引支援装置を
図11に示す。
図11において、ネガワット取引支援装置60は、受電電力調整需要家の既設の受電電力調整設備である蓄電池システム1に追加的な構成として用いることができる。蓄電池システム1は、負荷2に並列に接続されており、その蓄電池出力Pbatを受電電力PjAに加えて負荷2に供給することができる。制御装置10は、入力された受電電力PjAと蓄電池システム1の蓄電池出力Pbatとに基づいて蓄電池システム1の目標出力Pbatrefを決定して電力変換装置12に出力して、蓄電池11の出力を調整することにより蓄電池出力Pbatを制御している。
【0010】
図11のネガワット取引支援装置60は、制御装置10の前段に設けられる。ネガワット取引支援装置60は、ネガワット取引のトリガとなるデマンドレスポンス指令に含まれる受電電力削減量に応じて受電電力PjAを仮想受電電力PjBに変換して制御装置10に入力することにより、ネガワット取引を実現している。デマンドレスポンス指令(以下、「DR指令」ともいう)はデマンドレスポンスを指示する信号であり、デマンドレスポンスで指定する値(以下、「DR値」ともいう)やデマンドレスポンス開始時刻・終了時刻などデマンドレスポンスを実行するために必要な指示を含んでいる。
【0011】
しかしながら、ネガワット取引において電力需要の削減量が調整できたとしても、需要家において必要な電力が増加した場合は、電力需要量がそれに応じて増加することとなり、想定していた電力需要量を超えてしまう場合がある。想定していた電力需要量を超えてしまうと、電力網全体において電力需要量の調整を確実に実行できないという問題がある。
【0012】
また、周波数に注目すると、従来のネガワット取引支援装置では、自端周波数(系統の周波数のことであり、以下、電源周波数ともいう)を調整する機能(いわゆるガバナフリー機能)は存在していなかった。
電力需給のバランスが保たれているときには、電源周波数は基準周波数(例えば50Hz)に一致している。しかしながら、供給(発電量、放電量)に対して需要が増加すると、電源周波数は低下するため、供給を増加させる必要がある。一方、供給に対して需要が減少すると、電源周波数は上昇するため、供給を減少させる必要がある。
【0013】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、本発明の課題は、デマンドレスポンス指令によって、需要家の電力需要量が所望の値となるように調整することを可能とし、電力網全体において電力需要量の調整を確実に実行させるためのネガワット取引を実現することができるネガワット取引支援装置、ネガワット取引システムおよびネガワット取引方法を提供することにあり、その際、電源周波数が低下したときに出力を増加させ、電源周波数が上昇したときに出力を減少させるというガバナフリー機能を搭載することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の代表的な実施の形態に係るネガワット取引支援装置は、受電点を介して外部から電力の供給を受ける負荷における負荷電力が変動する際に、前記受電点における受電電力の値が所定の閾値である負荷追従閾値を超えないように、前記受電電力の値を入力として、前記受電電力とは別に前記負荷に電力を供給する補助電力源の出力の値をフィードバック制御する制御装置の前段に設けられたネガワット取引支援装置であって、ネガワット取引におけるデマンドレスポンス指令として前記受電電力の削減量を指定の値にする旨の目標削減量を受信するDR指令受信部と、前記受電電力を削減する際の基準となるベースラインの値を算出するベースライン算出部と、前記ベースラインから前記目標削減量を減算して、受電電力目標値を算出する受電電力目標値算出部と、受電点における電源周波数に基づき周波数偏差補正値を算出する周波数偏差補正部と、前記受電電力目標値から前記周波数偏差補正値を減算して、周波数偏差補正後受電電力目標値を算出する周波数偏差補正後受電電力目標値算出部と、前記負荷追従閾値から前記周波数偏差補正後受電電力目標値を減算して、受電電力目標バイアス値を算出するバイアス値算出部と、前記受電電力目標バイアス値を前記受電電力の値に加算して仮想受電電力を算出して、前記算出した仮想受電電力の値を前記受電点における受電電力の値に代えて前記制御装置に入力する仮想受電電力算出部と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の代表的な実施の形態に係るネガワット取引システムは、上記のネガワット取引支援装置にデマンドレスポンス指令を送信するネガワット取引システムであって、前記デマンドレスポンス指令を受信する複数の前記ネガワット取引支援装置のそれぞれに対応する受電点における受電電力を管理する手段と、前記管理する手段で管理された受電電力に基づいて、対応するネガワット取引支援装置に対して送信するデマンドレスポンス指令を生成する手段と、を有することを特徴とする。
【0016】
本発明の代表的な実施の形態に係るネガワット取引支援方法は、受電点を介して外部から電力の供給を受ける負荷における負荷電力が変動する際に、前記受電点における受電電力の値が所定の閾値である負荷追従閾値を超えないように、前記受電電力の値を入力として、前記受電電力とは別に前記負荷に電力を供給する補助電力源の出力の値をフィードバック制御する制御装置をネガワット取引に適合させるためのネガワット取引支援方法であって、ネガワット取引におけるデマンドレスポンス指令として前記受電電力の削減量を指定の値にする旨の目標削減量を受信するステップと、前記受電電力を削減する際の基準となるベースラインの値を算出するステップと、前記ベースラインから前記目標削減量を減算して、受電電力目標値を算出するステップと、受電点における電源周波数に基づき周波数偏差補正値を算出するステップと、前記受電電力目標値から前記周波数偏差補正値を減算して、周波数偏差補正後受電電力目標値を算出するステップと、前記負荷追従閾値から前記周波数偏差補正後受電電力目標値を減算して、受電電力目標バイアス値を算出するステップと、前記受電電力目標バイアス値を前記受電電力の値に加算して仮想受電電力を算出して、前記算出した仮想受電電力の値を前記受電点における受電電力の値に代えて前記制御装置に入力するステップと、を含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態に係るネガワット取引支援装置を既存の受電電力調整設備に組み込んだ構成図である。
【
図2】周波数偏差補正部および周波数偏差補正後受電電力目標値算出部を含む周波数偏差補正回路の機能ブロックである。
【
図3】
図2の周波数偏差補正回路により達成する目標削減量の変化を示すグラフである。
【
図4】一実施形態に係るネガワット取引支援装置を組み込んだ受電電力調整設備のDR動作の一例を説明する図である。
【
図5】DR動作における目標削減量と電源周波数の変動の関係を説明するための図である。
【
図6】他の周波数偏差補正回路の機能ブロックである。
【
図7】
図6の不感帯を考慮した周波数偏差補正回路により達成する目標削減量の変化を示すグラフである。
【
図8】さらに他の周波数偏差補正回路の機能ブロックである。
【
図9】
図8の周波数偏差補正回路により達成する目標削減量の変化を示すグラフである。
【
図10】バーチャルパワープラントの概念構成を説明するための図である。
【
図11】従来のネガワット取引支援装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0019】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るネガワット取引支援装置(30)は、受電点を介して外部から電力の供給を受ける負荷における負荷電力が変動する際に、前記受電点における受電電力の値が所定の閾値である負荷追従閾値を超えないように、前記受電電力の値を入力として、前記受電電力とは別に前記負荷に電力を供給する補助電力源の出力の値をフィードバック制御する制御装置の前段に設けられたネガワット取引支援装置であって、ネガワット取引におけるデマンドレスポンス指令として前記受電電力の削減量を指定の値にする旨の目標削減量Ptを受信するDR指令受信部(31)と、前記受電電力を削減する際の基準となるベースラインP0の値を算出するベースライン算出部(32)と、前記ベースラインから前記目標削減量Ptを減算して、受電電力目標値Psetを算出する受電電力目標値算出部(33)と、受電点における電源周波数fに基づき周波数偏差補正値Pcorrを算出する周波数偏差補正部(34)と、前記受電電力目標値Psetから前記周波数偏差補正値Pcorrを減算して、周波数偏差補正後受電電力目標値Psetcを算出する周波数偏差補正後受電電力目標値算出部(35)と、前記負荷追従閾値Pgrefから前記周波数偏差補正後受電電力目標値Psetcを減算して、受電電力目標バイアス値Pbiasを算出するバイアス値算出部(37)と、前記受電電力目標バイアス値Pbiasを前記受電電力の値PjAに加算して仮想受電電力を算出して、前記算出した仮想受電電力の値PjBを前記受電点における受電電力の値PjAに代えて前記制御装置に入力する仮想受電電力算出部(39)と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
[2]上記ネガワット取引支援装置(30)において、前記周波数偏差補正部(34)は、前記電源周波数fと基準周波数との差分である周波数偏差Δfを、電力値である前記周波数偏差補正値Pcorrに変換し、前記周波数偏差補正後受電電力目標値算出部(35)に出力することを特徴とする。
【0021】
[3]上記ネガワット取引支援装置(30)において、前記周波数偏差補正部(34)は、前記周波数偏差Δfが所定値以内の場合、前記目標削減量Ptを変化させない不感帯を設定することを特徴とする。
【0022】
[4]上記ネガワット取引支援装置(30)において、前記補助電力源(11)は蓄電池であることを特徴とする。
【0023】
[5]上記ネガワット取引支援装置(30)にデマンドレスポンス指令を送信するネガワット取引システムであって、前記デマンドレスポンス指令を受信する複数の前記ネガワット取引支援装置(30)のそれぞれに対応する受電点における受電電力を管理する手段と、前記管理する手段で管理された受電電力に基づいて、対応するネガワット取引支援装置(30)に対して送信するデマンドレスポンス指令を生成する手段と、を有することを特徴とするネガワット取引システム。
【0024】
[6]受電点を介して外部から電力の供給を受ける負荷における負荷電力が変動する際に、前記受電点における受電電力の値が所定の閾値である負荷追従閾値を超えないように、前記受電電力の値を入力として、前記受電電力とは別に前記負荷に電力を供給する補助電力源の出力の値をフィードバック制御する制御装置をネガワット取引に適合させるためのネガワット取引支援方法であって、ネガワット取引におけるデマンドレスポンス指令として前記受電電力の削減量を指定の値にする旨の目標削減量Ptを受信するステップと、前記受電電力を削減する際の基準となるベースラインP0の値を算出するステップと、前記ベースラインから前記目標削減量Ptを減算して、受電電力目標値Psetを算出するステップと、受電点における電源周波数fに基づき周波数偏差補正値Pcorrを算出するステップと、前記受電電力目標値Psetから前記周波数偏差補正値Pcorrを減算して、周波数偏差補正後受電電力目標値Psetcを算出するステップと、前記負荷追従閾値Pgrefから前記周波数偏差補正後受電電力目標値Psetcを減算して、受電電力目標バイアス値Pbiasを算出するステップと、前記受電電力目標バイアス値Pbiasを前記受電電力の値PjAに加算して仮想受電電力を算出して、前記算出した仮想受電電力の値PjBを前記受電点における受電電力の値PjAに代えて前記制御装置に入力するステップと、を含むことを特徴とする。
【0025】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0026】
図1は、一実施形態に係るネガワット取引支援装置を既存の受電電力調整設備に組み込んだ構成図である。
図1では、受電電力調整設備が蓄電池システム1である場合を例に挙げて説明している。ネガワット取引支援装置30は、
図11に示したネガワット取引支援装置60と同様に、既存の蓄電池システム1の制御装置10の前段に設けることができる。
【0027】
蓄電池システム1は、制御装置10と、蓄電池11と、制御装置10からの出力に基づいて蓄電池11の蓄電エネルギーを蓄電池出力Pbatに変換して負荷2に供給するための電力変換装置12とを備えている。蓄電池システム1は、受電電力に応じて、その蓄電池出力Pbatが変化するように構成されている。制御装置10が、入力された受電電力の値と蓄電池出力Pbatの値とに応じて蓄電池システム調整値Pbatrefを決定して電力変換装置12へ出力し、この蓄電池システム調整値Pbatrefに基づいて電力変換装置12は蓄電池出力Pbatを調整している。
【0028】
制御装置10は、負荷電力算出部13と、負荷追従閾値設定部14と、蓄電池システム調整値算出部15とを備えている。
【0029】
負荷電力算出部13は、入力された受電電力に蓄電池出力Pbatを加算して負荷の値を算出する。ネガワット取引支援装置30を設けていない場合は、制御装置10には受電電力として受電点で受電される実受電電力PjAが入力されるので、負荷電力算出部13で算出される負荷の値は負荷2における実際の負荷電力PLと等しい値となる。
【0030】
負荷追従閾値設定部14は、蓄電池システム1の出力目標を決定するための閾値が設定される。この閾値に従って蓄電池システム1の出力目標値が蓄電池システム調整値算出部15によって算出される。閾値としては契約電力に準じた値が設定される。契約電力に等しい値を閾値としてもよいが、契約電力よりも低い値を閾値とすると、蓄電池システム1が余裕をもって動作開始できる。設定できる閾値は1つに限らず、複数を設定しておき、どの閾値に基づいて制御を行うかをさらに設定できるようにしてもよい。
【0031】
蓄電池システム調整値算出部15は、負荷電力算出部13で算出された負荷の値が負荷追従閾値設定部14で設定された閾値を超えないように、蓄電池システム1の出力を調整するための値である蓄電池システム調整値Pbatrefを算出する。算出された蓄電池システム調整値Pbatrefは、制御装置10から電力変換装置12に出力される。
【0032】
電力変換装置12は、制御装置10から受信した蓄電池システム調整値Pbatrefに従って蓄電池11の出力Pbatを調整している。
【0033】
このように蓄電池システム1は、蓄電池11の出力Pbatの値と出力Pbatによって変化する受電電力の値との合計を負荷の値として算出し、算出された負荷の値が、制御装置10の負荷追従閾値として設定された閾値である目標値に収束していくように、蓄電池11の出力Pbatの調整値となる蓄電池システム調整値Pbatrefを算出して、蓄電池11の出力Pbatを制御している。すなわち受電電力を入力として、受電電力と蓄電池11の出力Pbatとの合計値が負荷追従閾値として設定される値を目標値として、これに収束するように蓄電池11の出力Pbatを制御する、これは受電電力が、負荷追従閾値として設定される目標値に収束するように蓄電池出力Pbatが制御されることに等しく、負荷追従閾値を目標値に、受電電力をフィードバック量とするいわゆるPI制御によるフィードバック系を構成しているといえる。ネガワット取引支援装置30は、こうしたフィードバック系における目標値に代えて、ネガワット取引のトリガとなるDR指令値(デマンドレスポンスで指定する値)で指定された値を目標値として制御するように変換するものである。
【0034】
ネガワット取引支援装置30は、DR指令受信部31と、ベースライン算出部32と、受電電力目標値算出部33と、周波数偏差補正部34と、周波数偏差補正後受電電力目標値算出部35と、負荷追従閾値設定部36と、バイアス値算出部37と、DR発動指令部38と、仮想受電電力算出部39とを備えて構成されている。
【0035】
DR指令受信部31は、上位装置からのDR指令を受信することができる。本実施形態において、DR指令受信部31は、ネガワット取引におけるDR指令として、DRの開始・終了の時刻を示す信号と、受電点における受電電力の削減量を指定の値にする旨の目標削減量Ptとが含まれている。本実施形態において上位装置とは、バーチャルパワープラントを構成するリソースアグリゲーターなどが挙げられる。
【0036】
ベースライン算出部32は、ベースラインP0の値を算出する。
ベースラインP0とは、ネガワット取引において、需要家がDR指令に応じて、受電電力を削減する際の基準となる値である。例えば、ベースラインP0は、その需要家における、所定時間における負荷電力または受電電力の過去数日間に亘る平均値である。例えば、過去5日間において30分毎に特定した負荷電力の平均値をその時間におけるベースラインP0の値とすることができる。DR発動時において、需要家における当日の負荷電力PLとベースラインP0とは近接した値となっていることが好ましい。
【0037】
受電電力目標値算出部33は、ベースラインP0から目標削減量Ptを減算して、受電電力目標値Psetを算出し、周波数偏差補正後受電電力目標値算出部35に出力する。この受電電力目標値Psetは、DR指令に応じて受電点の受電電力を削減する場合における、受電電力の目標値である。
【0038】
周波数偏差補正部34は、受電点における電源周波数fを受信し、以下で詳述するように、周波数偏差補正値Pcorrを算出し、周波数偏差補正後受電電力目標値算出部35に出力する。
【0039】
周波数偏差補正後受電電力目標値算出部35は、受電電力目標値Psetから周波数偏差補正値Pcorrを減算して、周波数偏差補正後受電電力目標値Psetcを算出し、バイアス値算出部37に出力する。
【0040】
負荷追従閾値設定部36には、制御装置10の負荷追従閾値設定部14で設定された閾値と同じ値が閾値として設定される。例えば負荷追従閾値設定部14と同様に、契約電力に準じた閾値Pgref(以下、負荷追従閾値Pgrefともいう)が設定される。負荷追従閾値設定部36は、負荷追従閾値Pgrefをバイアス値算出部37に出力する。
【0041】
バイアス値算出部37は、負荷追従閾値Pgrefから周波数偏差補正後受電電力目標値Psetcを減算して、受電電力目標バイアス値Pbiasを算出し、DR発動指令部38に出力する。
【0042】
DR発動指令部38は、DR指令受信部31において受信したDR指令に含まれるDRの開始時刻をDR発動指令Xとして受信すると、DR発動指令Xの時刻に同期するように受電電力目標バイアス値Pbiasを仮想受電電力算出部39に出力する。
【0043】
仮想受電電力算出部39は、受電電力目標バイアス値Pbiasを受信すると、受電点における実受電電力PjAに受電電力目標バイアス値Pbiasを加算し、仮想受電電力PjBを算出して制御装置10に出力する。
【0044】
例えば、DRが発動していない場合(DR発動指令信号X=0の場合)には、DR発動指令部38から“0”が出力されるので、仮想受電電力算出部39は、実受電電力PjAの値に“0”を加算して仮想受電電力PjBを算出する。すなわち、DR発動の指示されていない場合(DR発動指令信号X=0の場合)には、実受電電力PjAの値がそのまま受電電力PjBとして出力され、制御装置10(負荷電力算出部13)は、実受電電力PjAを用いて負荷電力PLを算出する。
【0045】
一方、DRが発動している場合(DR発動指令信号X=1の場合)には、DR発動指令部38から“受電電力目標バイアス値Pbias”が出力されるので、仮想受電電力算出部39は、実受電電力PjAの値に“受電電力目標バイアス値Pbias”を加算して仮想電力PjBを算出する。すなわち、DRが発動している場合には、実受電電力PjAの値を“受電電力目標バイアス値Pbias”だけかさ上げした(バイアスした)値が、受電電力PjBとして出力され、制御装置10(負荷電力算出部13)は、実受電電力PjAの代わりに仮想受電電力PjBを用いて負荷電力PLを算出する。
【0046】
ネガワット取引支援装置30を蓄電池システム1の前段に設けた場合、制御装置10は、係る仮想受電電力PjBに基づいて蓄電池システム調整値Pbatrefを算出することができるので、受電点における受電電力が受電電力指定値Psetに収束するような蓄電池システム1の出力Pbatに制御するための蓄電池システム調整値Pbatrefを算出することができる。
【0047】
本実施形態のネガワット取引支援装置30で算出される受電電力目標バイアス値Pbiasは、制御装置10内の負荷追従閾値設定部14で閾値として設定された値Pgrefと、DR指令における受電電力指定値Psetを周波数偏差補正した周波数偏差補正後受電電力目標値Psetcと、の差と等しい。すなわちバイアス値算出部37において算出される受電電力目標バイアス値Pbiasは、本来のフィードバック目標値と、新たに設定されるフィードバック目標値と、の差分といえる。これを予め実受電電力PjAに加算して仮想受電電力PjBを算出して制御装置10に入力することによって、制御装置10内の負荷追従閾値設定部14で設定された閾値Pgrefに代えて、新たに設定された受電電力指定値Psetを周波数偏差補正した周波数偏差補正後受電電力目標値Psetcをフィードバック目標値として、受電点における実受電電力PjAがこの目標値に収束するような蓄電池システム調整値Pbatrefが算出されることになる。
【0048】
図2は、周波数偏差補正部34および周波数偏差補正後受電電力目標値算出部35を含む周波数偏差補正回路の機能ブロックを示す図である。
周波数偏差補正部34は、周波数偏差算出部341と、変換部344とを含む。
周波数偏差算出部341は、電源周波数fおよび基準周波数(例えば50Hz)を受信し、電源周波数fと基準周波数との差分である周波数偏差Δfを算出する。
変換部344は、所定のゲイン(G)に基づき、周波数を電力値に変換する回路であり、周波数偏差Δfを周波数偏差補正値Pcorrに変換する。変換部344は、リミッタとして、上限および下限を有する。
上述したように、周波数偏差補正後受電電力目標値算出部35は、受電電力目標値Psetから周波数偏差補正値Pcorrを減算して、周波数偏差補正後受電電力目標値Psetcを算出する。
周波数偏差を補正するための周波数偏差補正回路を設けたことにより、電源周波数の変動を電力の変動に変換し、目標削減量を制御することができる。
【0049】
図3は、
図2の周波数偏差補正回路により達成する目標削減量の変化を示すグラフであり、横軸は電源周波数を示し、縦軸は目標削減量を示している。
電源周波数fが基準周波数(例えば50Hz)より増加すると(周波数偏差Δf>0)、周波数偏差補正回路は目標削減量を減少させる。一方、電源周波数fが基準周波数(例えば50Hz)より減少すると(周波数偏差Δf<0)、周波数偏差補正回路は目標削減量を増加させる。
なお、変換部344に入力される周波数偏差Δfが下限値未満または上限値超の場合、変換部344のリミッタ機能により、目標削減量は一定値となる。
【0050】
図4は、一実施形態のネガワット取引支援装置を組み込んだ受電電力調整設備におけるDR動作の一例を説明する図である。
図4において、(a)と(b)とは同じ時間軸に沿って示されており、(a)のグラフは、その需要家の受電点において受電した実受電電力PjAの変動をベースラインP0の変動およびその需要家における当日の負荷電力PLの変動と併せて示しており、(b)のグラフは蓄電池出力Pbatの変動を示している。なお、
図4(a)においては、説明のために、時点T1から時点T8までは、実受電電力PjAとほぼ等しい受電電力目標値Psetが示されている。
はじめに、電源周波数fが基準周波数に一致していると仮定する(すなわち、Pcorr=0)。
【0051】
図4では、DR指令受信部31が、時点T1においてDRを開始するDR指令を受信するとともに、時点T8においてDRを終了するDR指令を受信した場合の実受電電力PjAおよび蓄電池出力Pbatの変化を示している。
図4において、時点T1以前においては、負荷電力PLは実受電電力PjAで賄っており、実受電電力は契約電力閾値Pgrefを超えていない。したがって蓄電池出力Pbatは「0」となっている。
【0052】
DR指令受信部31において、目標削減量Ptを受信すると、受電電力目標値算出部33は、時点T1におけるベースラインP0から時点T1における目標削減量Ptを減算することによって、時点T1における受電電力目標値Psetを算出して周波数偏差補正後受電電力目標値算出部35に出力する。
【0053】
周波数偏差補正後受電電力目標値算出部35は、算出した時点T1における受電電力目標値Psetから周波数偏差補正値Pcorr(本例では0)を減算して、周波数偏差補正後受電電力目標値Psetcを算出する。
【0054】
バイアス値算出部37は、負荷追従閾値Pgrefから周波数偏差補正後受電電力目標値Psetcを減算して、受電電力目標バイアス値Pbiasを算出する。
仮想受電電力算出部39は、受電電力目標バイアス値PbiasをT1の直前の時点における実受電電力PjAに加算して、仮想受電電力PjBを得る。
【0055】
制御装置10において仮想受電電力PjBを受信すると、負荷電力算出部13はT1の直前の時点における蓄電池出力Pbatを仮想受電電力PjBに加算して仮想負荷PLBを算出して蓄電池システム調整値算出部15に出力する。
【0056】
蓄電池システム調整値算出部15は、受信した仮想負荷PLBから負荷追従閾値Pgrefを減算して、減算した値に応じた蓄電池システム調整値Pbatrefを算出し、電力変換装置12に出力する。電力変換装置12は、蓄電池システム調整値Pbatrefに基づいて蓄電池11の出力Pbatを調整する。本実施形態のネガワット取引支援装置を組み込んだ受電電力調整設備は、上記で説明した時点T1におけるDR動作と同様のDR動作をその時点に応じた値に従って繰り返し、蓄電池11の出力Pbatを調整することができる。
【0057】
図4に示すように、各時点において、蓄電池システム調整値Pbatrefによって調整される蓄電池11の出力Pbat(B1、B2、B3)は、負荷電力PLと受電電力目標値Pset(=周波数偏差補正後受電電力目標値Psetc)との差分B1、B2、B3と等しい。このように、蓄電池11の出力Pbatは、負荷電力PLと受電電力目標値Pset(=周波数偏差補正後受電電力目標値Psetc)との差分を補う値に調整されるので、受電点における受電電力は、目標値Psetと等しい値に収束することとなる。
【0058】
図4に示す場合では、目標削減量Ptが一定であり、所定の時間間隔ΔTでベースラインP0が変動しているので、受電電力目標値Pset(=周波数偏差補正後受電電力目標値Psetc)も所定時間間隔ΔTで変動している。蓄電池11の出力Pbatが、負荷電力PLと受電電力目標値Pset(=周波数偏差補正後受電電力目標値Psetc)の差分を補う値となるように蓄電池システム調整値Pbatrefが決定される。したがって、各時点における負荷電力PLと受電電力目標値Pset(=周波数偏差補正後受電電力目標値Psetc)との差分B1、B2、B3の値は蓄電池11の出力Pbat(B1、B2、B3)と等しくなる。
【0059】
次に、電源周波数fが基準周波数から偏差している場合を説明する。
図5は、DR動作における目標削減量と電源周波数の変動の関係を説明するための図である。
図5(a)(b)(c)において、横軸は時間を示し、
図5(a)において、縦軸は周波数を示し、
図5(b)(c)において、縦軸は電力を示している。
DR指令受信部31が、時点T1においてDRを開始するDR指令を受信するとともに、時点T8においてDRを終了するDR指令を受信している。
図5(a)に示すように、電源周波数fは、基準周波数(例えば50Hz)に対して変動している。
【0060】
図5(b)は、周波数偏差補正をしないときのベースラインおよび受電電力を示す。
目標削減量は、ベースラインと受電電力との差分である。
図5(c)は、周波数偏差補正をしたときのベースラインおよび受電電力を示す。なお、
図5(c)においても、周波数偏差補正をしないときの受電電力を一点鎖線で示している。
期間P1では、
図5(a)に示すように、電源周波数fは、基準周波数より高く、
図5(c)に示すように、受電電力は、周波数偏差補正をしないときの受電電力(一点鎖線)より高い。それゆえ、
図5(b)の場合と比較して、目標削減量は減少している。
期間P2では、
図5(a)に示すように、電源周波数fは、基準周波数より低く、
図5(c)に示すように、受電電力は、周波数偏差補正をしないときの受電電力(一点鎖線)より低い。それゆえ、
図5(b)の場合と比較して、目標削減量は増加している。
【0061】
このように、電源周波数fが基準周波数より上昇したときには、目標削減量を減少させ(=受電電力を増加させ、電力需要を増加させ)、一方、電源周波数fが基準周波数より低下したときには、目標削減量を増加させる(=受電電力を減少させる、電力需要を減少させる)ことにより、需給調整を行う。
以上より、ネガワット取引装置100に周波数調整機能(ガバナフリー機能)を搭載することにより、電源周波数fの変動を受電電力の変動とみなして充放電電力を制御することができる。
【0062】
図6を用いて、他の周波数偏差補正回路の機能ブロックを説明する。
周波数偏差補正部34は、周波数偏差算出部341と、不感帯算出部342と、不感帯調整済周波数偏差算出部343と、変換部344とを含む。
周波数偏差算出部341は、電源周波数fおよび基準周波数(例えば50Hz)を受信し、周波数偏差Δfを算出する。
不感帯算出部342は、例えば上限+0.1Hz、下限-0.1Hzとしたリミッタであり、-0.1≦Δf≦+0.1の場合には、入力である周波数偏差Δfをそのまま出力し、Δf<-0.1の場合には、“-0.1”を出力し、+0.1<Δfの場合には、“+0.1”を出力する。
不感帯調整済周波数偏差算出部343は、周波数偏差算出部341から受信した周波数偏差Δfから、不感帯算出部342から受信した値を減算し、不感帯調整済周波数偏差Δf’を変換部344に出力する。
変換部344は、所定のゲイン(G)に基づき、周波数を電力値に変換する回路であり、不感帯調整済周波数偏差Δf’を周波数偏差補正値Pcorrに変換する。変換部344は、リミッタとして、上限および下限を有する。
【0063】
例えば、電源周波数f=50.05Hzの場合、Δf=0.05Hzであり、不感帯算出部342は0.05を出力するため、Δf’=0である。すると、Pcorr=0であり、Psetc=Psetとなる。
一方、電源周波数f=50.2Hzの場合、Δf=0.2Hzであり、不感帯算出部342は0.1を出力するため、Δf’=0.1である。すると、Pcorr≠0であり、Psetc=Pset-Pcorrとなる。
【0064】
図7は、
図6の不感帯を考慮した周波数偏差補正回路により達成する目標削減量の変化を示すグラフであり、横軸は電源周波数を示し、縦軸は目標削減量を示している。
49.9≦f≦50.1の場合には(すなわち、-0.1≦Δf≦+0.1の場合には)、上述したように、Δf’=0、Pcorr=0、Psetc=Psetとなるため、目標削減量は一定であり変化しない。
一方、f<49.9または50.1<fの場合には、
図3の場合と同様に、電源周波数fの変動に応じて、目標削減量も変動する。
このように、周波数偏差補正部34は、電源周波数fと基準周波数との差分が所定値以内の場合、目標削減量を変化させない不感帯を設定することができる。すなわち、電源周波数fが基準周波数から一定以内でしか変化しない周波数帯域を不感帯とすることにより、わずかな周波数変動では目標削減量を変化させないことができる。
なお、図示例では、不感帯の上限を+0.1Hz、下限を-0.1Hzとしているが、任意の値に設定することができる。
【0065】
図8を用いて、さらに他の周波数偏差補正回路の機能ブロックを説明する。
周波数偏差補正部34は、周波数偏差算出部341と、変換部344と、不感帯調整部345と、不感帯調整済周波数偏差算出部346とを含む。
周波数偏差算出部341は、電源周波数fおよび基準周波数(例えば50Hz)を受信し、周波数偏差Δfを算出する。
変換部344は、所定のゲイン(G)に基づき、周波数を電力値に変換する回路であり、周波数偏差Δfを周波数偏差補正値Pcorrに変換する。変換部344は、例えば上限+0.5Hz、下限-0.5Hzとしたリミッタ機能を有する。
不感帯調整部345は、電源周波数fを受信し、f≦f1またはf2≦fの場合には、“1”を出力し、f1<f<f2の場合には、“0”を出力する。
不感帯調整済周波数偏差算出部346は、周波数偏差補正値Pcorrに“1”または“0”を乗算する。
【0066】
図9は、
図8の周波数偏差補正回路により達成する目標削減量の変化を示すグラフであり、横軸は電源周波数を示し、縦軸は目標削減量を示している。
【0067】
図9(a)では、変換部344のリミッタの内側にf1、f2が存在する、すなわち、49.5<f1かつf2<50.5である場合を検討する。
f1<f<f2の場合、不感帯調整部345は0を出力するため、不感帯調整済周波数偏差算出部346も0を出力する。すると、Psetc=Psetとなるため、目標削減量は一定であり変化しない。それゆえ、f1<f<f2の周波数帯域を不感帯とみなすことができる。
49.5<f≦f1またはf2≦f<50.5の場合、不感帯調整部345は1を出力するため、不感帯調整済周波数偏差算出部346はPcorrを出力する。それゆえ、電源周波数fの減少に応じて目標削減量は増加し、電源周波数fの増加に応じて目標削減量は減少する。
f≦49.5または50.5≦fの場合、電源周波数fは、変換部344のリミッタを超えているため、変換部344は一定値を出力する。それゆえ、目標削減量も一定となる。
【0068】
図9(b)では、変換部344のリミッタとf1、f2が一致する、すなわち、f1=49.5かつf2=50.5である場合を検討する。
f1<f<f2の場合、不感帯調整部345は0を出力するため、不感帯調整済周波数偏差算出部346も0を出力する。すると、Psetc=Psetとなるため、目標削減量は一定であり変化しない。それゆえ、f1<f<f2の周波数帯域を不感帯とみなすことができる。
f≦49.5または50.5≦fの場合、不感帯調整部345は1を出力する。ただし、f1=49.5またはf2=50.5は、変換部344のリミッタに一致するため、変換部344は一定値を出力する。それゆえ、目標削減量も一定となる。
このように、電源周波数fが基準周波数から一定以内でしか変化しない周波数帯域を不感帯とする方法には、さまざまな変形例が考えられる。
【0069】
図10は、バーチャルパワープラントの概念構成を説明するための図である。
図10において、アグリゲーションコーディネーターACを中心として、その下位に、パワープラントPP1、PP2、PP3、PP4とリソースアグリゲーターRA1、RA2、RA3、RA4、RA5とを含み、さらにリソースアグリゲーターRA1、RA2、RA3、RA4、RA5のそれぞれの下位には需要家C1~C19を含んで構成される。
【0070】
ここでパワープラントとは、一般送配電事業者や小売電気事業者のことをいう。リソースアグリゲーターとは、需要家とバーチャルパワープラントサービス契約を直接締結して電力リソースの制御を行う事業者のことをいう。アグリゲーションコーディネーターとは、リソースアグリゲーターが制御した電力を束ね、一般送配電事業者や小売電気事業者と直接電力取引を行う事業者のことをいう。
【0071】
バーチャルパワープラントにおいては、これらの構成要素における情報を処理するコンピュータなどの情報処理装置が、
図10に従った構成に従って互いに通信可能に接続されており、電力リソースを制御している。以下の説明では、バーチャルパワープラントを構成する構成要素における情報処理装置の動作を各構成要素の動作として説明している。
【0072】
需要家C1~C19は、受電電力が契約電力閾値以下の電力になるように受電電力を調整する受電電力調整設備を有する受電電力調整需要家を含んでいる。受電電力調整需要家は、電力需要を抑制する要求に応じて自身が有する受電電力調整設備を稼働させて受電電力を下げる代わりに、電力需要を抑制した対価を受信する、いわゆるネガワット取引をすることができる。ネガワット取引は、上述した一実施形態に係るネガワット取引支援装置30を用いることによって実現することができる。需要家C1~C19におけるネガワット取引は、その上位のリソースアグリゲーターRA1~RA5との間で行われる。
【0073】
リソースアグリゲーターRA1~RA5は、それぞれの下位の需要家C1~C19の受電電力などを管理する管理手段を有するとともに、その需要家C1~C19が有するネガワット取引支援装置30に対して、ネガワット取引を要求するためのDR指令を送信する送信手段を有している。さらに、リソースアグリゲーターRA1~RA5は、管理手段で管理している各需要家C1~C19の受電電力に基づいてDR指令を生成する手段を有することができる。管理している各需要家C1~C19の受電電力に基づいてDR指令を生成することによって、各需要家における受電電力を考慮したDR指令を生成することができる。
【0074】
アグリゲーションコーディネーターACは、需要家C1~C19とネガワット取引を行うリソースアグリゲーターRA1~RA5との間やパワープラントPP1~PP4との間におけるDR値を制御してバーチャルパワープラント全体で電力の需給がバランスするようにネガワット取引を行う。
【0075】
リソースアグリゲーターRA1~RA5に対して、DRとしてある量の電力需要を抑制する旨の要求があった場合に、リソースアグリゲーターRA1~RA5は、需要家C1~C19に対して、DRを行うためのDR指令を送信する。DRを行う場合、受電電力の削減量を指定したDRと受電電力を直接指定するDRとが考えられる。受電電力を直接指定するDRによれば、電力負荷が通常とは大きく異なる場合に、電力需要の抑制量が必要量を満たさないという事態を回避できる。
【0076】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さまざまな変形例が可能である。
例えば、上述した実施形態では、DR指令受信部が、DR指令として目標削減量Ptを受信したが、受電電力目標値Psetを受信することもできる。
また、上述した実施形態では、周波数偏差補正部34および周波数偏差補正後受電電力目標値算出部35を含む周波数偏差補正回路が、蓄電池システム1の制御装置10の前段に設けられるネガワット取引支援装置内に追加されたが、同様の周波数偏差補正部を、発電機システムの制御装置の前段に設けられるネガワット取引支援装置内に追加することもできる。
【符号の説明】
【0077】
1…蓄電池システム、2…負荷、10…制御装置、11…蓄電池、12…電力変換装置、13…負荷電力算出部、14…負荷追従閾値設定部、15…蓄電池システム調整値算出部、30…ネガワット取引支援装置、31…DR指令受信部、32…ベースライン算出部、33…受電電力目標値算出部、34…周波数偏差補正部、341…周波数偏差算出部、342…不感帯算出部、343…不感帯調整済周波数偏差算出部、344…変換部、345…不感帯調整部、346…不感帯調整済周波数偏差算出部、35…周波数偏差補正後受電電力目標値算出部、36…負荷追従閾値設定部、37…バイアス値算出部、38…DR発動指令部、39…仮想受電電力算出部、60…ネガワット取引支援装置。