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  • 特許-泥だんご素材 図1
  • 特許-泥だんご素材 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】泥だんご素材
(51)【国際特許分類】
   A63H 33/00 20060101AFI20240105BHJP
   G09B 19/10 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
A63H33/00 F
A63H33/00 302C
G09B19/10 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019153324
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2021029623
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】503361189
【氏名又は名称】大幸工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519144439
【氏名又は名称】オフィスメーカー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596177559
【氏名又は名称】インターマン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】水野 克己
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 好規
(72)【発明者】
【氏名】嘉門 雅史
(72)【発明者】
【氏名】乾 徹
(72)【発明者】
【氏名】大嶺 聖
【審査官】三田村 陽平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-185538(JP,A)
【文献】特開2004-344317(JP,A)
【文献】ぴかぴか泥だんごの作り方~思わず夢中になっちゃう砂遊び~,[online],2017年09月13日,インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20170913050404/https://hoiclue.jp/500133212.html>
【文献】『光るどろだんご』の作り方,[online],2015年07月16日,インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20150716033015/http://wwr5.ucom.ne.jp/gfuru45/dango/tukurikata/tukurikata.htm>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00- 37/00
G09B 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
礫と石を取り除いたシルトと粘土・コロイドを含む土に水を加え捏ね、略球体とし、十分に乾燥させてなる泥だんご素材であって、前記泥だんご素材には、底面から穴が形成されていることを特徴とする泥だんご素材。
【請求項2】
前記泥だんご素材の表面には、凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の泥だんご素材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気軽に泥だんごの制作を体験できる泥だんご素材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、泥だんご作りとは、泥を丸めて団子状にする子供の泥遊びの一種である。しかし、素手で泥に触れる感触の良さや、一定の手順を踏めば非常に美しい光る球体が出来上がるという達成感から、大人でも楽しめる遊びとなっている。
【0003】
泥だんごに用いる土には礫と石と砂とシルトと粘土・コロイドが含まれる。礫と石と砂とシルトは水を加えても粘らないが、粘土・コロイドは水を加えるとノリのように粘り、数日間以上天日乾燥すると礫と石と砂とシルトなどの骨材をノリのように繋いで固化することができる。
【0004】
光る泥だんごを作るには、泥を丸めて作った玉にきめの細かい砂などを降り掛けて固め、更にそれを磨いて硬く絞め、乾かしては表面を泥でぬらして砂を手で擦り込んで固めるという数日以上に渡る工程を経て、表面が艶々とし出せば、光る泥だんごが出来上がる。
【0005】
実際には、光る泥だんごの作成がうまくいくかどうかは土の質により、素人が土を選定し光るだんごを安定的に作成するのが困難であることから、特許文献1では、何処でも、何時でも、均質な光る泥だんごを簡単に作成することができるとされる泥だんご作成セットが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-344317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されている泥だんご作成セットを用いた場合でも、作成を開始してから、実際に光る泥だんごを完成するまでには、途中の自然乾燥の時間を含め、少なくとも数日以上の日数を要する。このため、泥だんご作りには、それなりの時間と手間暇がかかり、ちょっと試しにやってみるというようなものではない。例えば、学校などで泥だんご作成体験を行うには、一定のコマ数が必要となり、導入が難しくなっている。
【0008】
すなわち、芯となる泥だんごの表面を光らす工程において、砂とシルトと粘土が含まれる土を水で分散し、砂・シルトと粘土・コロイドを重力沈降で分離し、粘土・コロイドを表面に1mm程度被膜し、それを乾燥させたのち、ガラスなどで磨く。これにより、泥だんごの表面に光沢が出てくる。
【0009】
粘土・コロイドが光る原理は、粘土・コロイドは板状の結晶をしており、例えれば、湿気た状態ではテッシュペーパーのようなしわくちゃになっている。これをアイロンをかけるように、粘土・コロイドより硬いガラスなどて押し付け、しわを伸ばすように磨けば、平面が板状となり光りを反射し光輝く。
【0010】
この時、芯となる泥だんごが硬く、アイロンがかけるようなガラスの圧力に対抗できないと、芯となる泥だんごが変形する。このため、例えば芯となる泥だんごの表面につまようじを指して、つまようじの先が、貫入しないほどの硬さが必要となる。従って、これまで、数日間以上天日乾燥する必要に迫られていた。このため、40分や60分単位で行われる学校の授業では、時間的な制約から採用されなかったのである。
【0011】
また、芯となる泥だんごの表面に、水で溶いた粘土・コロイドペーストを被膜し、粘土・コロイドのしわを伸ばすように硬いガラスで押し付けて磨くが、乾燥した芯となる泥だんごには、わずかな空気と、砂とシルトと粘土・コロイドが存在する。その周りに、水で溶いた粘土・コロイドペーストを被膜するため、空気を通さない層ができるため、手の平のぬくもりが、芯となる泥だんごに伝わり、磨く過程において、膨張破壊し泥だんごを割り、子供たちに深い悲しみを与えていた。これは、砂とシルトと粘土・コロイドを使わない、例えば、陶芸用などの粘土・コロイドだけを使った芯となる泥だんごにおいても、数日間以上天日乾燥する必要があり、同様に膨張破壊した。
【0012】
そこで、本発明の目的は、気軽に自然への触れ合いを体験でき、短時間で美しく光る宝石のような泥だんごを制作できる泥だんご素材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の1つの様相による泥だんご素材は、礫と石を取り除いたシルトと粘土・コロイドを含む土に水を加え捏ね、略球体とし、十分に乾燥させてなる泥だんご素材であって、前記泥だんご素材には、底面から穴が形成されていることを特徴とする。
【0014】
更に、一つの実施例では、前記泥だんご素材の表面には、凹凸が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係わる泥だんご素材によれば、誰でも気軽に短時間で美しく光る宝石のような泥だんごを制作できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施例に係る泥だんご素材を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の実施例に係る泥だんご素材を用いた泥だんごの制作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施例による泥だんご素材の実施例を説明する。図1は、本発明の一実施例による泥だんご素材1を示す斜視図である。
【0018】
この泥だんご素材1は概ね次のようにして作成する。まず、礫と石と砂とシルトと粘土・コロイドが含まれる土を集め、砕き、礫と石を篩い、取り除く。残った砂とシルトと粘土・コロイドに水を混ぜ、丸いだんご状にする。
【0019】
この際、本件実施例では、球体の底部から中心にかけて穴を空けておく。この穴は、ペン等を差し込んで簡単に作っても良いし、強度が低下し過ぎない程度に内部をくり抜いて中空状態としても良い。
【0020】
この泥だんご素材は、泥だんごの制作体験をするためのものである。したがって、最初から完全な球体となっていると、表面を滑らかにする過程を楽しむことができない。そのため、泥だんごの表面には、あえて凹凸を形成するようにする。この凹凸は、図示のような細かなキズのようなものでも、模様のようなものでも良い。凹凸は、乾燥前に例えばザラザラした面上を転がすことでつけることもできる。
【0021】
最後に、キズのついた略球体の状態となった粘土を、日陰で乾かし数週間良く乾燥させて、製品としての泥だんご素材1が完成する。
【0022】
この泥だんご素材は、泥だんご制作体験において、次のように使用する。まず、泥だんご素材が入る大きさの容器を用意し、そこに水をいれる。そして泥だんご素材1を入れて約3分間浸して、十分に水を浸透させる。
【0023】
次に、水から泥だんご素材を取り出して、両手で優しく撫でる。手の平が乾燥していくと、再度泥だんご素材を水に漬ける。表皮が0.5mm程度の硬い泥土層になるまで、5回以上これを繰り返す(図2)。
【0024】
表皮が0.5mm程度の硬い泥土層になったら、エッグ立てやグラス等の円形の口を使って、泥だんご素材の表面を擦って、削り落としながら、完全な球体に近づけるようにする。手の平が乾燥したら、再度泥だんご素材を水に漬ける。これを全体がほぼ真球になるまで繰り返す。
【0025】
全体がほぼ真球になれば、表皮は概ね0.5mm程度の粘土層となる。ここで一旦作業を終了し、両手を水で洗い、ペーパータオルで拭いて乾燥させる。
【0026】
次に、真球となった泥だんご素材をしっかり手で持って、グラスの横面で表面を磨いていく。これにより表面が、光り輝きツルツルになるまで磨き上げる。この泥だんごを回転させ、軸にブレがなければ、泥だんごの完成となる。
【0027】
粘土は、細かい鉱物の集まりであり、鉱物はもともと光沢をもっている。磨きながら鉱物の粒子を綺麗に並ばせることで光沢が出るようになるのである。従って、表面を磨くときは、少し力を入れ乍ら作業する方が綺麗な泥だんごが作れる。
【0028】
なお、泥だんご素材1に設けられた穴部2は、本件実施例において特に効果的なものである。この穴を形成したことにより、乾燥後の全体の歪みを少なくし、ひびが入りにくくなる。また、重量も小さくなり、取り扱いが楽になる。更に、大きめの泥だんごを制作する際に、この穴に指をかけることで誤って落下させてしまう虞れが小さくなる。
【0029】
更には、泥だんご素材を中空にすることで、数日間以上かかっていた天日乾燥を一日に短縮できる。また、中空にした泥だんご素材の一部に水が入り、中からも、水が浸透することで、乾燥した空気を中空部分から押し出し、膨張破壊しなくなったことも大きな特徴である。
【0030】
また、泥だんご素材の原材料である砂とシルトに、石膏やセメントや有機ノリを混ぜると固化は早まるが、割れると二度と粘り固化しないので、このような混合物は、ここでは用いない。実際、このような混合物には、高アルカリ性など、人間の体に良い影響を与えない恐れがあるため、芯となる泥だんごの配合は、天然の砂とシルトと粘土・コロイド成分が基本となる。なお、ここで、粘土の粒径は、0.5mm以下であることが望ましい。
【0031】
シルトと粘土・コロイドだけに水を加えて、天日乾燥させ芯となる泥だんごを作る方法もある。しかし、砂とシルトを含まない場合、天日乾燥だと完成まで一か月以上かかる。
【0032】
また、泥だんごに含まれる水分(自由水)は、重力により泥だんごの下方底部に移動する。そのため、下方底部が柔らかくなり。上部は硬くなり、重力変形し、球状にならない。しかし、泥だんご素材としては、少々歪であっても問題はない。
【0033】
以上のように、本発明による泥だんご素材を使った泥だんご制作の体験者は、土や泥の感触を手の平の触覚で感じ、視覚で輝きが発見できる。さらに、中空にしたことで、乾燥した泥だんごに水を入れるとミシミシと岩が割れるような音を聴覚で聞き、驚きと感動を得ることができる。触覚、視覚、聴覚で体感しながら。時計時間で管理された日常を離れて、自然に触れ合う時(とき)を楽しむ事ができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のように、本発明による泥だんご素材では、完全に天日乾燥させ、中空にして、一部水が入る穴がある、真球状の乾燥した泥だんごを提供することができる。これを水に数分浸水させ、その後、硬いガラスなどて押し付け、しわを伸ばすように磨けば、20分から30分の時間で磨ける。従って、学校などの授業なども安全に提供できるようになった。従って、気軽に自然への触れ合いを体験でき、短時間で美しく光る宝石のような泥だんごを制作できる。
【符号の説明】
【0035】
1 泥だんご素材
2 穴部
図1
図2