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特許7412705構造物用表面保護シート及び表面保護シート付き構造物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】構造物用表面保護シート及び表面保護シート付き構造物
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240105BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20240105BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
B32B27/00 Z
E04G23/02 A
B32B27/18 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020027291
(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公開番号】P2021130267
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英一
(72)【発明者】
【氏名】山本 鋼志
(72)【発明者】
【氏名】丸山 一平
(72)【発明者】
【氏名】刈茅 孝一
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 節男
(72)【発明者】
【氏名】島田 昌紀
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-064968(JP,A)
【文献】特開2017-066761(JP,A)
【文献】特開平02-225385(JP,A)
【文献】特開2019-035233(JP,A)
【文献】特開2021-130591(JP,A)
【文献】特開2012-246665(JP,A)
【文献】特開2016-196743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
E04G 23/00
C23F 11/00
C04B 41/00
E21D 11/00 - 23/00
E01D 1/00 - 24/00
E04B 1/62 - 1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の表面を保護するための表面保護シートであって、
基材と、
炭酸イオンを放出可能な化合物を含む樹脂層とを備え
前記炭酸イオンを放出可能な化合物が、炭酸ナトリウム、又は炭酸水素ナトリウムであり、
前記樹脂層の材料が、硬化性成分を含み、
前記樹脂層の材料において、前記硬化性成分100重量部に対して、前記炭酸イオンを放出可能な化合物の含有量が、50重量部以上である、構造物用表面保護シート。
【請求項2】
前記樹脂層が、前記基材の第1の表面側に配置されており、
前記樹脂層が接着性を有する樹脂層である、請求項1に記載の構造物用表面保護シート。
【請求項3】
前記硬化性成分が、変性シリコーン化合物と、エポキシ化合物とを含む、請求項1又は2に記載の構造物用表面保護シート。
【請求項4】
前記硬化性成分が、変性シリコーン化合物と、エポキシ化合物と、シラノール縮合触媒と、エポキシ硬化剤とを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の構造物用表面保護シート。
【請求項5】
前記樹脂層の材料において、前記変性シリコーン化合物100重量部に対して、前記エポキシ化合物の含有量が、1重量部以上100重量部以下である、請求項3又は4に記載の構造物用表面保護シート。
【請求項6】
前記基材が、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン又はポリエチレンを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の構造物用表面保護シート。
【請求項7】
前記基材の表面に、炭素膜を備える、請求項1~のいずれか1項に記載の構造物用表面保護シート。
【請求項8】
構造物と、
請求項1~のいずれか1項に記載の構造物用表面保護シートとを備え、
前記構造物用表面保護シートが、前記構造物の表面に配置されている、表面保護シート付き構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート等の構造物に用いる構造物用表面保護シートに関する。また、本発明は、上記構造物用表面保護シートを備える表面保護シート付き構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁及びトンネル等の構造物では、建築時に施工不良が生じたり、建築されてから長期間経過したりすると、ひび割れ及びジャンカ等が生じることがある。ひび割れ及びジャンカ等が発生した構造物では、構造物の強度が低下する。構造物の多くは、交通及び輸送等の社会基盤インフラを担っているため、建替えや取り壊しを安易に行うことができない。また、インフラ機能を停止させての大規模な補修又は補強は、困難である。
【0003】
また、コンクリートは、通常、アルカリ性である。しかしながら、コンクリートは、空気中の二酸化炭素及び酸性雨等の影響により、表面から内部に向かって、徐々に中性に変化する。コンクリート構造物おいて、その内部が中性に変化すると、鉄筋が腐食して、コンクリート構造物の強度が大幅に低下する。特に、ひび割れ部分及びジャンカ部分がある場合には、そこから内部に向かって、中性に変化し、コンクリート構造物の強度が低下しやすい。
【0004】
そのため、コンクリートの表面を保護シート等により保護することにより、コンクリート表面部分の剥落を防止したり、コンクリート構造物の強度の低下を抑制したりする方法が知られている。
【0005】
下記の特許文献1には、コンクリート構造物と、コンクリート構造物の表面を覆う保護シートとを備え、上記保護シートが、樹脂からなる基材と、炭素膜とを含むコンクリート構造物の保護構造が開示されている。
【0006】
また、下記の特許文献2には、セメント硬化体構造物と、上記セメント硬化体構造物の表面を、接着層を介して覆う保護シートとを備えるセメント硬化体構造物の保護構造が開示されている。このセメント硬化体構造物の保護構造では、上記保護シートが、樹脂層と、上記樹脂層に積層された炭素膜とを含む積層体であり、上記接着層が、変性シリコーン樹脂硬化物とエポキシ樹脂硬化物とを含む硬化樹脂層である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-009508号公報
【文献】特開2017-008626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
構造物の表面に、特許文献1,2に記載のような保護シートを配置すると、構造物の強度の低下を抑えることができる。しかしながら、特許文献1,2に記載のような従来の保護シートでは、紫外線によって、また、空気中の水蒸気及び雨水等の水分により保護シートに含まれる樹脂成分が加水分解することによって、保護シートが徐々に劣化する。そのため、従来の保護シートでは、構造物の表面に保護シートを配置してから長期間経過すると(例えば、20年~50年経過後)、保護シートが十分に機能せず、その結果、構造物の強度が低下する。
【0009】
また、特許文献1,2に記載のような保護シートでは、コンクリート構造物の内部に発生したひび割れ及びそれに伴う内部への水の浸入によるコンクリート構造物の強度の低下を抑えることは困難である。
【0010】
本発明の目的は、構造物の強度の低下をかなり抑えることができる構造物用表面保護シートを提供することである。また、本発明の目的は、上記構造物用表面保護シートを備える表面保護シート付き構造物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の広い局面によれば、構造物の表面を保護するための表面保護シートであって、基材と、炭酸イオン又はカルシウムイオンを放出可能な化合物を含む樹脂層とを備える、構造物用表面保護シートが提供される。
【0012】
本発明に係る構造物用表面保護シートのある特定の局面では、前記樹脂層が、前記基材の第1の表面側に配置されており、前記樹脂層が接着性を有する樹脂層であり、前記樹脂層の材料が、硬化性成分を含む。
【0013】
本発明に係る構造物用表面保護シートのある特定の局面では、前記硬化性成分が、変性シリコーン化合物と、エポキシ化合物とを含む。
【0014】
本発明に係る構造物用表面保護シートのある特定の局面では、前記硬化性成分が、変性シリコーン化合物と、エポキシ化合物と、シラノール縮合触媒と、エポキシ硬化剤とを含む。
【0015】
本発明に係る構造物用表面保護シートのある特定の局面では、前記樹脂層の材料において、前記変性シリコーン化合物100重量部に対して、前記エポキシ化合物の含有量が、1重量部以上100重量部以下である。
【0016】
本発明に係る構造物用表面保護シートのある特定の局面では、前記炭酸イオン又はカルシウムイオンを放出可能な化合物が、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ナトリウム、又は炭酸水素ナトリウムである。
【0017】
本発明に係る構造物用表面保護シートのある特定の局面では、前記樹脂層100重量%中、前記炭酸イオン又はカルシウムイオンを放出可能な化合物の含有量が、5重量%以上である。
【0018】
本発明に係る構造物用表面保護シートのある特定の局面では、前記基材が、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン又はポリエチレンを含む。
【0019】
本発明に係る構造物用表面保護シートのある特定の局面では、前記構造物用表面保護シートは、前記基材の表面に、炭素膜を備える。
【0020】
本発明の広い局面によれば、構造物と、上述した構造物用表面保護シートとを備え、前記構造物用表面保護シートが、前記構造物の表面に配置されている、表面保護シート付き構造物が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る構造物用表面保護シートは、構造物の表面を保護するための表面保護シートであって、基材と、炭酸イオン又はカルシウムイオンを放出可能な化合物を含む樹脂層とを備える。本発明に係る構造物用表面保護シートでは、上記の構成が備えられているので、構造物の強度の低下をかなり抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る表面保護シート付き構造物を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の第2の実施形態に係る表面保護シート付き構造物を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0024】
(構造物用表面保護シート)
本発明に係る構造物用表面保護シート(以下、「保護シート」と略記することがある)は、構造物の表面を保護するために用いられる。本発明に係る保護シートは、基材と、炭酸イオン又はカルシウムイオンを放出可能な化合物(以下、「化合物X」と記載することがある)を含む樹脂層とを備える。上記樹脂層は、化合物Xを含む。
【0025】
本発明に係る保護シートでは、上記の構成が備えられているので、構造物の強度の低下をかなり抑えることができる。
【0026】
本発明に係る保護シートを用いることにより、構造物の強度の低下を抑えることができるメカニズムについて、以下に説明する。
【0027】
本発明に係る保護シートを、上記樹脂層側から構造物の表面に配置する。上記樹脂層又は構造物の表面が、雨水、空気中の水蒸気、及びコンクリートに付着した水分等と接触した場合、該水分がひび割れ部分等を通って、構造物の内部に浸入する。また、樹脂層に含まれる化合物Xも、これらの水分と接触した場合、構造物の内部に流れ出たり、拡散したりする。このとき、これらの水分に含まれる炭酸イオン又はカルシウムイオンと、上記化合物Xから放出された炭酸イオン又はカルシウムイオンとが、構造物の表面及び内部において化学反応し、炭酸カルシウム(セメント)が生成する。すなわち、構造物の表面と樹脂層との界面、及び構造物の内部(例えば、水分の浸入経路であるひび割れ部分)に、炭酸カルシウム層が生成する。生成した炭酸カルシウムにより、構造物の構造は、より一層強固に保護される。また、紫外線等により保護フィルムが劣化した場合であっても、生成した炭酸カルシウムにより、構造物の表面は強固に保護される。このため、本発明に係る保護シートを用いることにより、構造物の強度の低下をかなり抑えることができる。なお、炭酸カルシウムは、通常、数カ月~数年をかけて生成すると考えられる。
【0028】
上記構造物としては、コンクリート構造物、RC高架橋構造物、山岳トンネル、及び地下トンネル等が挙げられる。本発明の効果がより一層効果的に発揮されるので、上記構造物は、コンクリート構造物であることが好ましい。上記構造物用表面保護シートは、コンクリート構造物用表面保護シートであることが好ましい。
【0029】
また、上記構造物は、新設の構造物であってもよく、ひび割れ部分やジャンカ部分等の欠陥部分を有する構造物であってもよい。
【0030】
以下、本発明に係る保護シートに用いられる各成分の詳細等を説明する。
【0031】
(基材)
上記保護シートは、基材を備える。
【0032】
上記基材は、特に限定されない。上記基材としては、金属、プラスチック、紙、及び布等が挙げられる。上記プラスチックとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン及びポリプロピレン等が挙げられる。
【0033】
上記基材は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン又はポリエチレンを含むことが好ましい。この場合には、基材の強度を高めることができ、また、基材の劣化を効果的に抑えることができ、さらに、保護シートの取扱性を高めることができる。
【0034】
上記基材は、酸化防止剤を含んでいてもよい。上記基材は、上記酸化防止剤を含むことが好ましい。上記酸化防止剤として従来公知の酸化防止剤を用いることができる。酸化防止剤の使用により、基材の劣化を効果的に抑えることができる。
【0035】
上記基材の厚さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下である。上記基材の厚さが上記下限以上及び上記上限以下であると、コンクリート構造物の内部が中性に変化することを効果的に抑えることができ、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、上記基材の厚さが上記下限以上及び上記上限以下であると、基材のひび又は割れを効果的に抑えることができ、また、保護シートの取扱性及び施工性を高めることができる。
【0036】
上記基材の線膨張率は、好ましくは10×10-5/K以下、より好ましくは5×10-5/K以下である。上記基材の線膨張率が上記上限以下であると、基材のひび又は割れを効果的に抑えることができ、また、上記保護シートが炭素膜を備える場合に、該炭素膜のひび又は割れを効果的に抑えることができる。
【0037】
上記基材の線膨張率は、JIS K7197に準拠して測定される。
【0038】
(樹脂層)
上記保護シートは、化合物Xを含む樹脂層を備える。上記樹脂層は、上記基材の第1の表面側に配置されていることが好ましい。なお、上記樹脂層は、上記基材の第1の表面上に直接配置されていてもよく、炭素膜等の他の層を介して配置されていてもよい。
【0039】
上記樹脂層は、接着性を有さない樹脂層であってもよく、接着性を有する樹脂層であってもよい。上記保護シートと上記構造物の表面との接着方法としては、接着剤を用いる方法、粘着剤を用いる方法、アンカー打ちによる方法、及びビス止めによる方法等が挙げられる。これらの方法は、2種以上が用いられてもよい。上記保護シートと上記構造物の表面との間に、接着剤を介在させてもよく、介在させなくてもよい。
【0040】
上記構造物の表面への保護シートの施工性を高める観点からは、上記樹脂層は、接着性を有する樹脂層であることが好ましい。すなわち、上記樹脂層は、接着層であることが好ましい。
【0041】
上記樹脂層は、熱可塑性樹脂、ホットメルト樹脂、熱硬化性樹脂、又は湿気硬化性樹脂を含むことが好ましい。上記樹脂層は、熱可塑性樹脂、ホットメルト樹脂、熱硬化性樹脂の硬化物、又は湿気硬化性樹脂の硬化物を含むことが好ましい。
【0042】
上記樹脂層は、上記化合物Xを含む。上記樹脂層の材料は、上記化合物Xを含む。上記樹脂層の材料は、硬化性成分を含むことが好ましい。上記樹脂層は、上記硬化性成分の半硬化物を含むことが好ましく、上記硬化性成分の硬化物を含むことも好ましい。
【0043】
<硬化性成分>
上記樹脂層の材料は、硬化性成分を含むことが好ましい。上記硬化性成分は、硬化可能な成分である。上記硬化性成分は、23℃で液状であってもよく、23℃でペースト状であってもよく、23℃で半固形状であってもよい。上記硬化性成分としては、硬化性化合物、硬化剤、及び光重合開始剤等が挙げられる。上記硬化性成分は、上記硬化性化合物と、上記硬化剤とを含むことが好ましい。上記硬化性成分は、上記硬化性化合物と上記硬化剤との混合物であることが好ましい。上記硬化性化合物、上記硬化剤、及び上記光重合開始剤はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0044】
上記硬化性成分は、樹脂と溶剤とを混合した樹脂含有溶液を加熱乾燥して、溶剤を除去して得られる23℃で固体の樹脂であってもよく、モノマー溶液又はオリゴマー溶液を重合して得られる23℃で固体のポリマーであってもよく、2種以上のモノマー又は2種以上のオリゴマーを反応させて得られる23℃で固体のポリマーであってもよい。
【0045】
上記硬化性化合物としては、シリコーン化合物、エポキシ化合物、ポリオール化合物、フェノール化合物、ビニルエステル化合物、及びナフトキサジン化合物等が挙げられる。
【0046】
上記シリコーン化合物としては、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。上記オルガノポリシロキサンの主鎖は、ジオルガノシロキサンの重合体が一般的であるが、一部枝分かれした構造又は環状の構造を有していてもよい。上記オルガノポリシロキサンが有するアルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、ペテニル基、へキセニル基、オクテニル基、及びシクロへキセニル基等が挙げられる。
【0047】
上記シリコーン化合物は、変性シリコーン化合物であってもよい。上記シリコーン化合物は、変性シリコーン化合物であることが好ましい。
【0048】
上記変性シリコーン化合物としては、特に限定されないが、湿気硬化型の変性シリコーン化合物等が挙げられる。湿気硬化型の変性シリコーン化合物は、加水分解性ケイ素基を有する。上記加水分解性ケイ素基を有する変性シリコーン化合物は、ポリエーテル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー又はアクリル系ポリマーを主鎖(加水分解性ケイ素基を除く部分)として有する。したがって、上記主鎖の材料となるモノマーとしては、アルキレンオキサイド系モノマー、オレフィン系モノマー又はアクリル系モノマー等が挙げられる。上記重合体は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。上記重合体が共重合体である場合、用いられるモノマーとしては、アルキレンオキサイド系モノマー、オレフィン系モノマー成分、アクリル系モノマー、及びビニル系モノマー等が挙げられる。変性シリコーン化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0049】
上記アルキレンオキサイド系モノマーとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイド等が挙げられる。硬化後の伸びおよび粘性的な取り扱い易さを良好にする観点から、上記アルキレンオキサイド系モノマーは、プロピレンオキサイドを重合することにより得られる、ポリプロピレンオキサイドであることが好ましい。
【0050】
上記オレフィン系モノマーとしては、イソブチレン等が挙げられる。
【0051】
上記アクリル系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-3-メチルブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル2-ヒドロキシエチルフタル酸、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル2-ヒドロキシプロピルフタル酸等が挙げられる。なお、アクリル系ポリマーが、他のビニルモノマー成分が共重合されたものである場合、加水分解性ケイ素基を有するビニルモノマー成分を共重合することにより加水分解性ケイ素基を導入することができる。
【0052】
耐候性を高める観点からは、上記変性シリコーン化合物における上記主鎖は、アクリル系モノマーに由来する構造単位を有することが好ましい。
【0053】
耐候性を高める観点からは、上記変性シリコーン化合物における上記主鎖100重量%中、アクリル系モノマーに由来する構造単位の含有率は、好ましくは5重量%以上、好ましくは20重量%以下である。
【0054】
上記加水分解性ケイ素基としては、特に限定されないが、ハロゲン化シリル基、アルケニルオキシシリル基、アシロキシシリル基、アミノシリル基、アミノオキシシリル基、オキシムシリル基、アミドシリル基、及びアルコキシシリル基等が挙げられる。
【0055】
上記加水分解性ケイ素基におけるケイ素原子に結合した加水分解性基の数は、好ましくは1以上であり、好ましくは3以下である。1個のケイ素原子に結合した加水分解性基は1種であってもよく、2種以上であってもよい。上記加水分解性基と非加水分解性基とが1個のケイ素原子に結合していてもよい。安定性に優れ、取り扱いが容易であることから、上記加水分解性ケイ素基は、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、又はトリアルコキシシリル基であることが好ましい。
【0056】
上記変性シリコーン化合物の数平均分子量は、好ましくは1000以上、より好ましくは4000以上、更に好ましくは10000以上であり、好ましくは500000以下、より好ましくは100000以下、更に好ましくは30000以下である。上記変性シリコーン化合物の数平均分子量が上記下限以上であると、樹脂層の材料を硬化させて樹脂層を作製するための時間を短くすることができ、また、樹脂層の耐久性をより一層効果的に高めることができる。上記変性シリコーン化合物の数平均分子量が上記上限以下であると、樹脂層の材料の粘度を良好にすることができ、取扱性を高めることができる。
【0057】
上記変性シリコーン化合物の数平均分子量は、GPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィー)を用いて測定することができる。
【0058】
上記硬化性成分が上記変性シリコーン化合物を含む場合に、上記硬化性成分は、シラノール縮合触媒を含むことが好ましい。すなわち、上記硬化性成分は、上記変性シリコーン化合物と、シラノール縮合触媒とを含むことが好ましい。上記シラノール縮合触媒を用いることにより、変性シリコーン化合物を含む樹脂層の材料を短時間で硬化させることができ、樹脂層を短時間で良好に得ることができる。上記シラノール縮合触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0059】
上記シラノール縮合触媒としては、モノアルキル錫エステル及びジアルキル錫エステル等の錫触媒、ポリ(ジアルキルスタノキサン)ジシリケート化合物、並びに有機チタネート等が挙げられる。
【0060】
上記モノアルキル錫エステルとしては、例えば、ブチルスズトリス(2-エチルヘキサノエート)等が挙げられる。上記ジアルキル錫エステルとしては、例えば、ジブチル錫アセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジオレート、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジフェノキシド、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫アセトアセテート、オクタン酸第一錫等が挙げられる。
【0061】
上記有機チタネートとしては、例えば、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラ(2-エチルヘキシルチタネート)トリエタノールアミンチタネート等のチタンアルコキシド類、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンエチルアセトアセテート、オクチレングリコレート等のチタンキレート類等が挙げられる。
【0062】
上記変性シリコーン化合物100重量部に対して、上記シリコーン縮合触媒の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。上記シリコーン縮合触媒の含有量が上記下限以上であると、変性シリコーン化合物を含む樹脂層の材料を短時間で硬化させることができ、樹脂層を短時間で良好に得ることができる。上記シリコーン縮合触媒の含有量が上記上限以下であると、樹脂層の接着強度を高めることができる。
【0063】
上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、及びこれらの水添化物等のビスフェノール型エポキシ化合物;ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル型エポキシ化合物等のグリシジルエーテル型エポキシ化合物;フタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ化合物等のエステル型エポキシ化合物;フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、及びこれらの水添化物等のノボラック型エポキシ化合物;トリフェノールメタン型エポキシ化合物等のトリスフェノール型の多官能エポキシ化合物;トリグリシジルイソシアヌレート型エポキシ化合物、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ化合物、テトラグリシジルメタキシレンジアミン型エポキシ化合物、ヒダントイン型エポキシ化合物等の含窒素環型多官能エポキシエポキシ化合物;ナフタレン型エポキシ化合物等の縮環型エポキシ化合物;ビフェニル型エポキシ化合物;ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物;エーテルエステル型エポキシ化合物;3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどの脂環式構造を有するエポキシ化合物;ウレタン型エポキシ化合物;ポリブタジエン及びアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のゴム骨格を有するゴム変性エポキシ化合物等が挙げられる。
【0064】
上記硬化性成分が上記エポキシ化合物を含む場合に、上記硬化性成分は、エポキシ化合物の硬化剤(エポキシ硬化剤)を含むことが好ましい。すなわち、上記硬化性成分は、上記エポキシ化合物と、エポキシ硬化剤とを含むことが好ましい。また、上記硬化性成分は、上記変性シリコーン化合物と、上記エポキシ化合物と、上記シラノール縮合触媒と、上記エポキシ硬化剤とを含むことが好ましい。この場合には、得られる樹脂層において、エポキシ化合物の硬化物に由来して靭性を高めることができ、かつ変性シリコーン化合物の硬化物に由来して弾性を高めることができる。
【0065】
上記エポキシ化合物の硬化剤(エポキシ硬化剤)としては、アミン化合物、イミダゾール化合物、アミド化合物、及びシアノ化合物等が挙げられる。上記アミン化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、それらのアミンアダクト、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。上記イミダゾール化合物としては、メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、エチルイミダゾール、イソプロピルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、フェニルイミダゾール、ウンデシルイミダゾール、ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、及び2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。上記アミド化合物としては、ポリアミド等が挙げられる。上記シアノ化合物としては、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0066】
上記エポキシ化合物は、活性アミンがブロックされており、水分などの所定の条件下で活性化するケチミンなどの潜在型硬化剤であってもよい。たとえばケチミンは、水分がない状態では安定に存在するが、水分の存在によって一般に一級アミンとなり、エポキシ化合物と反応する。具体的には、2,5,8-トリアザ-1,8-ノナジエン、2,10-ジメチル-3,6,9-トリアザ-2,9-ウンデカジエン、2,10-ジフェニール-3,6,9-トリアザ-2,9-ウンデカジエン、3,11-ジメチル-4,7,10-トリアザ-3,10-トリデカジエン、3,11-ジエチル-4,7,10-トリアザ-3,10-トリデカジエン、2,4,12,14-テトラメチル-5,8,11-トリアザ-4,11-ペンタデカジエン、2,4,20,22-テトラメチル-5,12,19-トリアザ-4,19-トリエイコサジエン、2,4,15,17-テトラメチル-5,8,11,14-テトラアザ-4,14-オクタデカジエンなどが挙げられる。
【0067】
上記エポキシ化合物と上記エポキシ硬化剤とを反応させることにより、エポキシ化合物の硬化物を得ることができる。
【0068】
本発明の効果をより一層効果的に発揮させる観点からは、上記エポキシ化合物は、芳香族骨格を有するエポキシ化合物を含むことが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ化合物、又はビスフェノールF型エポキシ化合物であることがより好ましい。
【0069】
本発明の効果をより一層効果的に発揮させる観点からは、上記エポキシ硬化剤は、アミン系硬化剤(アミン化合物)であることが好ましい。
【0070】
上記エポキシ化合物と上記エポキシ硬化剤との配合比は、エポキシ化合物とエポキシ硬化剤との種類の組み合わせによって適宜変更可能である。上記エポキシ化合物と上記エポキシ硬化剤との配合比は、例えば、エポキシ当量(活性水素当量)を基準にして、設定することができる。上記エポキシ化合物100重量部に対して、上記エポキシ硬化剤の含有量は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上であり、好ましくは120重量部以下、より好ましくは100重量部以下である。
【0071】
上記樹脂層の材料において、上記変性シリコーン化合物100重量部に対して、上記エポキシ化合物の含有量は、好ましくは1重量部以上、より好ましくは2重量部以上、さらに好ましくは10重量部以上であり、好ましくは100重量部以下、より好ましくは80重量部以下、さらに好ましくは50重量部以下である。上記エポキシ化合物の含有量が上記下限以上であると、上記樹脂層において靭性をより一層効果的に高めることができる。上記エポキシ化合物の含有量が上記上限以下であると、上記樹脂層において、弾性をより一層効果的に高めることができる。
【0072】
上記ポリオール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、シクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロヘキシルメタンジオール、ジメチルジシクロヘキシルメタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ε-カプロラクトン又はα-メチル-ε-カプロラクトンなどのラクトンを開環重合して得られる重合体等が挙げられる。
【0073】
上記ポリオール化合物の硬化剤としては、ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。上記ポリイソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。上記芳香族ポリイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。上記脂環族ポリイソシアネートとしては、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0074】
上記ポリオール化合物と上記ポリイソシアネート化合物とを硬化反応させることにより、ウレタン樹脂を得ることができる。
【0075】
本発明の効果をより一層効果的に発揮させる観点からは、上記ポリオール化合物は、ポリエステルポリオール、又はポリエーテルポリオールであることが好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮させる観点からは、上記ポリオール化合物の硬化剤(ポリイソシアネート化合物)は、ジフェニルメタンジイソシアネート、又はトルエンジイソシアネートであることが好ましい。
【0076】
上記ポリオール化合物と上記ポリイソシアネート化合物との配合比は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との種類の組み合わせによって適宜変更可能である。上記ポリイソシアネート化合物の配合量は、上記ポリオール化合物の水酸基量と、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基量(NCO量)とが等量となる量であることが好ましい。
【0077】
上記シリコーン化合物としては、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。上記オルガノポリシロキサンの主鎖は、ジオルガノシロキサンの重合体が一般的であるが、一部枝分かれした構造又は環状の構造を有していてもよい。上記オルガノポリシロキサンが有するアルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、ペテニル基、へキセニル基、オクテニル基、及びシクロへキセニル基等が挙げられる。
【0078】
上記シリコーン化合物の硬化剤(架橋剤)としては、SiH基を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、フェニルメチルハイドロジェンポリシロキサン、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、及び両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0079】
上記フェノール化合物としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール、及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
【0080】
上記フェノール化合物の硬化剤としては、ヘキサメチレンテトラミン、及びパラホルムアルデヒド等が挙げられる。
【0081】
上記ビニルエステル化合物としては、エポキシ化合物と不飽和一塩基酸との反応物等が挙げられる。上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその高分子量同族体、ノボラック型ポリグリシジルエーテル及びその高分子量同族体、並びに1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族系グリシジルエーテル類等が挙げられる。上記不飽和一塩基酸としては、アクリル酸及びメタクリル酸等が挙げられる。上記エポキシ化合物と、上記アクリル酸及び上記メタクリル酸との反応物としては、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0082】
上記ビニルエステル化合物の硬化剤としては、有機過酸化物等が挙げられる。上記有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、パーベンゾエート、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリルパーオキサイド、パーオキシエステル、及びパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0083】
上記硬化性成分が上記ビニルエステル化合物を含む場合に、該硬化性成分は、ラジカル重合性不飽和単量体を含んでいてもよい。上記ラジカル重合性不飽和単量体としては、スチレンモノマー、スチレンのα-,o-,m-,p-アルキル,ニトロ,シアノ,アミド,エステル誘導体、クロルスチレン、ビニルトルエン、及びジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー、ブタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、イソプレン、及びクロロプレン等のジエン類;(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸-i-プロピル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸アミド及び(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド;(メタ)アクリル酸アニリド等のビニル化合物;シトラコン酸ジエチル等の不飽和ジカルボン酸ジエステル;N-フェニルマレイミド等のモノマレイミド化合物;N-(メタ)アクリロイルフタルイミドなどが挙げられる。
【0084】
上記樹脂層の材料100重量%中、上記硬化性化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは70重量%以下、さらに好ましくは60重量%以下である。上記硬化性化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0085】
なお、例えば、変性シリコーン化合物とエポキシ化合物とシラノール縮合触媒とエポキシ硬化剤と化合物Xとを含む樹脂層の材料を用意して、上記樹脂層を作製してもよい。また、例えば、変性シリコーン化合物とエポキシ硬化剤とを含み、かつ化合物Xを含まないか含む第1の組成物と、エポキシ化合物とシラノール縮合触媒とを含み、かつ化合物Xを含まないか含む第2の組成物とを用意し、これらを混合して、樹脂層の材料を作製し、上記樹脂層を作製してもよい。この場合には、構造物表面に凹凸又はひび割れがあったとしても、構造物と樹脂層との密着性を高めることができ、また、保護シートの耐候性も高めることができる。
【0086】
<炭酸イオン又はカルシウムイオンを放出可能な化合物(化合物X)>
上記樹脂層は、炭酸イオン又はカルシウムイオンを放出可能な化合物(化合物X)を含む。上記樹脂層は、上記化合物Xを含む。上記化合物Xは、炭酸イオンを放出可能な化合物であってもよく、カルシウムイオンを放出可能な化合物であってもよく、炭酸イオンとカルシウムイオンとの双方を放出可能な化合物であってもよく、炭酸イオンを放出可能な化合物とカルシウムイオンを放出可能な化合物との混合物であってもよい。上記化合物Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0087】
上記炭酸イオンを放出可能な化合物Xとしては、炭酸塩、及び炭酸水素塩等が挙げられる。上記炭酸塩としては、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム、炭酸銅(II)、炭酸鉄(II)、及び炭酸銀(I)等が挙げられる。上記炭酸水素塩としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、及び炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0088】
上記カルシウムイオンを放出可能な化合物Xとしては、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、炭酸水素カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、及び硫酸カルシウム等が挙げられる。
【0089】
上記炭酸イオンとカルシウムイオンとの双方を放出可能な化合物Xとしては、炭酸カルシウムが挙げられる。
【0090】
上記化合物Xは、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ナトリウム、又は炭酸水素ナトリウムであることが好ましい。上記化合物Xは、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ナトリウム、又は炭酸水素ナトリウムであることがより好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0091】
上記樹脂層の材料において、上記硬化性化合物100重量部に対して、上記化合物Xの含有量は、好ましくは20重量部以上、より好ましくは50重量部以上であり、好ましくは300重量部以下、より好ましくは200重量部以下である。上記化合物Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、炭酸イオン又はカルシウムイオンがより一層効果的に放出され、炭酸カルシウムが良好に生成される。また、上記化合物Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性樹脂の物性を良好に維持することができる。
【0092】
上記樹脂層の材料において、上記硬化性成分100重量部に対して、上記化合物Xの含有量は、好ましくは20重量部以上、より好ましくは50重量部以上であり、好ましくは300重量部以下、より好ましくは200重量部以下である。上記化合物Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、炭酸イオン又はカルシウムイオンがより一層効果的に放出され、炭酸カルシウムが良好に生成される。また、上記化合物Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性成分の物性を良好に維持することができる。
【0093】
上記樹脂層の上記化合物Xを除く成分100重量部に対して、上記化合物Xの含有量は、好ましくは20重量部以上、より好ましくは50重量部以上であり、好ましくは300重量部以下、より好ましくは200重量部以下である。上記化合物Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、炭酸イオン又はカルシウムイオンがより一層効果的に放出され、炭酸カルシウムが良好に生成される。また、上記化合物Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂層の物性を良好に維持することができる。
【0094】
上記樹脂層100重量%中、上記化合物Xの含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。上記化合物Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、炭酸イオン又はカルシウムイオンがより一層効果的に放出され、炭酸カルシウムが良好に生成される。また、上記化合物Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂層の物性を良好に維持することができる。
【0095】
上記化合物Xは、マイクロカプセルの内包物であってもよい。上記樹脂層は、上記化合物Xを内包物として含有するマイクロカプセルを含んでいてもよい。上記化合物Xは、表面がコーティングされていてもよい。上記化合物Xがマイクロカプセルの内包物であるか、又は、上記化合物Xの表面がコーティングされていると、該化合物Xから炭酸イオン又はカルシウムイオンが放出される時期及び量を制御することができる。
【0096】
上記マイクロカプセルは、上記化合物Xを放出可能であることが好ましい。上記マイクロカプセルは、水分と接触したときに、マイクロカプセルを構成する膜が崩壊することが好ましい。この場合には、化合物Xから炭酸イオン又はカルシウムイオンが放出される時期及び量をより一層良好に制御することができる。
【0097】
上記マイクロカプセルを構成する膜の材料及び化合物Xの表面をコーティングするためのコーティング剤としては、加水分解性を有するエチルセルロース、ゼラチン等のタンパク質、アルギン酸、デンプン、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、及びポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0098】
<他の成分>
上記樹脂層及び上記樹脂層の材料は、必要に応じて、上記硬化性成分及び上記化合物X以外の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、脱水剤、エポキシシランカップリング剤、酸化防止剤、充填剤、可塑剤、タレ防止剤、紫外線吸収剤、顔料、溶剤、及び香料等が挙げられる。上記他の成分は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0099】
上記樹脂層の厚さは、特に限定されない。上記樹脂層の厚さは、好ましくは100μm以上、より好ましくは200μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは800μm以下である。上記樹脂層の厚さが上記下限以上であると、樹脂層の弾性を良好にすることができ、構造物の表面との密着性を一層効果的に高めることができる。上記樹脂層の厚さが上記上限以下であると、樹脂層を容易に作製することができる。
【0100】
上記樹脂層の10%伸長時の応力は、好ましくは0.7N/mm以下、より好ましくは0.5N/mm以下、更に好ましくは0.3N/mmである。上記樹脂層の10%伸長時の応力が上記上限以下であると、保護シートを構造物の表面に配置した際に保護シートへの応力が効果的に吸収される。また、上記保護シートが炭素膜を備える場合に、該炭素膜のひび又は割れを効果的に抑えることができる。
【0101】
上記樹脂層の10%伸長時の応力は、JIS K6251に準拠して測定される。
【0102】
上記樹脂層は、海島構造を有していてもよい。上記樹脂層が海島構造を有する場合に、海部よりも島部に上記エポキシ化合物及び上記エポキシ硬化剤に由来する成分が多く含まれていることが好ましい。
【0103】
構造物に接着される前の上記保護シートにおいて、上記樹脂層は、上記樹脂層の材料の硬化物層であってもよく、半硬化物層であってもよい。構造物に接着された後の上記保護シートにおいて、上記樹脂層は、上記樹脂層の材料の硬化物層であることが好ましい。
【0104】
(炭素膜)
上記保護シートは、炭素膜を備えていてもよく、備えていなくてもよい。水蒸気の透過性を効果的に抑える観点及びコンクリートの中性化を効果的に抑える観点からは、上記保護シートは、上記基材の表面に炭素膜を備えることが好ましく、上記基材と上記樹脂層との間に上記炭素膜を備えることがより好ましい。
【0105】
上記炭素膜としては、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜、及びグラファイト膜等が挙げられる。コンクリートの中性化をより一層効果的に抑える観点からは、上記炭素膜は、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜であることが好ましい。上記DLC膜とは、ダイヤモンド構造(sp3結合)と、グラファイト構造(sp2結合)とを有する非晶質の膜である。上記DLC膜は、水素原子を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。なお、上記DLC膜におけるダイヤモンド構造と上記グラファイト構造との混在比率、及び、水素原子の含有率は特に限定されない。上記水素原子を含むDLC膜としては、ta-C:H膜、a-C:H膜等が挙げられる。上記水素原子を含まないDLC膜としては、ta-C膜、a-C膜等が挙げられる。
【0106】
上記炭素膜の硬さは、特に限定されない。上記炭素膜の硬さは、1GPa以上であってもよく、1GPa未満であってもよい。本発明では、上記樹脂層が上記の構成を備えているので、上記炭素膜の硬さが1GPa以上であっても、炭素膜のひび割れを効果的に抑制することができる。
【0107】
上記炭素膜の硬さは、ナノインデンテーション法により測定することができる。ナノインデンテーション法とは、圧子を試料表面に押し込み、荷重と変位量とから微小領域の硬さ、ヤング率等を測定する方法である。本発明では、ベルコビッチ型圧子と呼ばれる三角錐型ダイヤモンド製圧子を炭素膜表面に垂直に当て、炭素膜表面から炭素膜の膜厚の10%の押し込み量まで徐々に荷重を印加後、荷重を0にまで徐々に戻す。この時の最大荷重Pを圧子接触部の投影接触面積Aで除した値P/Aを炭素膜の硬さとして算出する。
【0108】
測定装置としては、BRUKER社製「Hysitron Triboscope」等が挙げられる。
【0109】
上記炭素膜の厚さは、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。上記炭素膜の厚さが上記下限以上及び上記上限以下であると、水蒸気の透過性をより一層効果的に抑えることができ、また、コンクリートの中性化をより一層効果的に抑えることができる。
【0110】
(保護シートの他の詳細)
上記保護シートの厚さは、好ましくは110μm以上、より好ましくは200μm以上であり、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1000μm以下である。上記保護シートの厚さが上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0111】
上記保護シートは、例えば、以下のようにして作製することができる。
【0112】
上記基材の第1の表面上、又は、上記炭素膜の上記基材とは反対側の表面上に樹脂層の材料を配置する。上記樹脂層の材料を配置する方法としては、塗布、浸漬、スプレーによる方法が挙げられる。次いで、樹脂層の材料を硬化させる。なお、樹脂層の材料を硬化させる条件は、硬化性成分の種類等により適宜変更可能である。
【0113】
(表面保護シート付き構造物)
本発明に係る表面保護シート付き構造物は、構造物と、上述した保護シートとを備え、上記保護シートが、上記構造物の表面に配置されている。上記表面保護シート付き構造物では、上記保護シートが、上記樹脂層側から上記構造物の表面に接着している。上記樹脂層と、上記構造物の表面とが接着している。
【0114】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る表面保護シート付き構造物を模式的に示す断面図である。
【0115】
表面保護シート付き構造物11は、構造物10と、保護シート(構造物用表面保護シート)4とを備える。構造物10の表面に保護シート4が配置されている。
【0116】
保護シート4は、基材1と、炭素膜3と、樹脂層2とを備える。基材1の第1の表面1a上に炭素膜3が配置されており、炭素膜3の基材1とは反対側の表面上に樹脂層2が配置されている。したがって、基材1の第1の表面1a側に樹脂層2が配置されている。
【0117】
雨水及び空気中の水蒸気の影響により、樹脂層2の表面又は構造物10の表面が水分と接触した場合、これらの水分に含まれる炭酸イオン又はカルシウムイオンと、樹脂層2に含まれる化合物Xから放出された炭酸イオン又はカルシウムイオンとが化学反応し、樹脂層2と構造物10との接触面において、炭酸カルシウム(セメント)が生成する。すなわち、構造物10の表面と樹脂層2との間に、炭酸カルシウム層が生成する。生成した炭酸カルシウムにより、構造物10の表面は、より一層強固に保護される。また、紫外線等により保護シート4が劣化した場合であっても、生成した炭酸カルシウムにより、構造物10の表面は強固に保護される。このため、保護シート4を用いることにより、構造物10の強度の低下をかなり抑えることができる。
【0118】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る表面保護シート付き構造物を模式的に示す断面図である。
【0119】
表面保護シート付き構造物11Aは、構造物10と、保護シート(構造物用表面保護シート)4Aとを備える。構造物10の表面に保護シート4Aが配置されている。
【0120】
保護シート4Aは、基材1Aと、樹脂層2Aとを備える。基材1Aの第1の表面1Aa上に樹脂層2Aが直接配置されている。
【0121】
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0122】
以下の材料を用意した。
【0123】
(基材)
ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、東レ社製「X10S」、厚さ0.125mm)
【0124】
(樹脂層の材料)
硬化性成分:
変性シリコーン-エポキシ系接着剤(変性シリコーン化合物100重量部とエポキシ化合物70重量部との混合物)
化合物X:
炭酸イオンを放出可能な化合物:炭酸水素ナトリウム
【0125】
(実施例1)
保護シートの作製:
変性シリコーン-エポキシ系接着剤100重量部に対して、炭酸水素ナトリウム50重量部を混合し、樹脂層の材料を得た。PETフィルムの第1の表面上に、樹脂層の材料を2mmの厚さとなるように、ゴムヘラを用いて均一にコーティングした。その後、23℃で24時間静置して、樹脂層の材料を硬化させた。このようにして、保護シートを作製した。
【0126】
(実施例2)
変性シリコーン-エポキシ系接着剤100重量部に対して、炭酸水素ナトリウム100重量部を混合したこと以外は、実施例1と同様にして保護シートを得た。
【0127】
(評価)
(1)浸漬試験
得られた保護シートを、縦:2cm×横:2cmにカットした約2gの試験サンプル(基材と樹脂層と備える試験サンプル)を作製した。この試験サンプルの重量を浸漬前の試験サンプルの重量とした。次いで、試験サンプルを、4重量%の塩化カルシウム溶液(海水の100倍濃度を想定)100gに浸漬した。浸漬から5日後、14日後、21日後に、試験サンプルを取り出し、その重量を測定した。浸漬前の試験サンプルを基準として、該試験サンプルの重量増加割合を求めた。
【0128】
結果を表1に示す。
【0129】
【表1】
【0130】
実施例1,2で得られた試験サンプルでは、浸漬時間が長くなるにつれて、重量が増加する傾向があった。また、浸漬から21日後の実施例1,2で得られた試験サンプルを観察したところ、樹脂層の表面が灰色(セメント色)に変化していた。一方、基材の表面には変化がなかった。このため、実施例1,2で得られた試験サンプルでは、樹脂層の表面に形成された炭酸カルシウムに起因して、重量が増加していると考えられる。
【符号の説明】
【0131】
1,1A…基材
1a,1Aa…第1の表面
2,2A…樹脂層
3…炭素膜
4,4A…保護シート(構造物用表面保護シート)
10…構造物
11,11A…表面保護シート付き構造物
図1
図2