(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】イタドリとシナニッケイとを含む抗血栓用組成物、それを含む抗血栓用健康食品、及び抗血栓有効成分の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 36/704 20060101AFI20240105BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20240105BHJP
A61K 36/54 20060101ALI20240105BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
A61K36/704
A23L33/105
A61K36/54
A61P7/02
(21)【出願番号】P 2020543437
(86)(22)【出願日】2018-09-20
(86)【国際出願番号】 KR2018011130
(87)【国際公開番号】W WO2019083168
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2020-04-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】10-2017-0141167
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520146754
【氏名又は名称】韓國韓醫藥振興院
【氏名又は名称原語表記】National Institute for Korean Medicine Development
(73)【特許権者】
【識別番号】517288254
【氏名又は名称】ノブメタファーマ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】金 孝靜
(72)【発明者】
【氏名】金 善健
(72)【発明者】
【氏名】蘇 宰賢
(72)【発明者】
【氏名】李 華洞
(72)【発明者】
【氏名】康 惠▲令▼
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】齋藤 恵
【審判官】光本 美奈子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105106540(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1751608(CN,A)
【文献】特開2005-281179(JP,A)
【文献】特開昭61-171427(JP,A)
【文献】特開2010-95545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K35/00-35/768
A61P7/00-7/12
CAplus/EMBASE /MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イタドリとシナニッケイと
を1:2~2:1の重量比で
混合して抽出した抽出物のみを有効成分として含む、抗血栓用組成物。
【請求項2】
前記イタドリとシナニッケイと
を1:1の重量比で
混合して抽出した抽出物を抗血栓性有効成分として含む、請求項1に記載の抗血栓用組成物。
【請求項3】
イタドリとシナニッケイの1:2~2:1の重量比の混合物に150~250倍(体積)の抽出溶媒を加え、50~70℃で22~26時間浸漬させて抽出液を得る段階、
前記得られた抽出液を濾過、減圧濃縮及び乾燥させる段階を含む、
イタドリとシナニッケイとの混合抽出物のみで構成された抗血栓有効成分の製造方法。
【請求項4】
前記溶媒は、70%エタノールであることを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の組成物を含む、抗血栓用健康食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイタドリとシナニッケイとを有効成分として含む抗血栓用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、国民所得が向上して消費の質が向上するにつれて血管内障害による死亡率が急増している趨勢である。特に、動脈硬化、血栓症などの血管性危険因子の増加による心悩血管疾患の罹患率が全世界的にずっと増加している。
【0003】
生体内で血液は凝固と溶解作用がいつも平衡を成しているので、正常状態では出血や血栓などによって血液の流れが妨げられない。しかし、血管壁が損傷されれば、このような平衡状態が崩れる(Lee HS. How safe is the readministration of streptokinase, Drug Safety 13, 76-80. 1995)。
【0004】
動脈硬化は、遺伝的変異、過酸化物、高血圧、糖尿、血漿ホモシステイン濃度の増加、微生物感染などによって血管の内皮細胞が損傷されて発生する疾病である。機能不全を引き起こした血管内皮細胞は細胞付着物質を発現し細胞透過性を増加させることで、兔疫細胞、血小板、脂肪質などが組職内に侵透することができるようにする。組職内に侵透した兔疫細胞によって炎症媒介因子、成長因子などが分泌されるなど、一連の炎症反応によって動脈硬化性病変が発生する((Ross R. Atherosclerosis-an inflammatory disease. New Engl J Med. 340(2):115-126, 1999)。また、血管内膜が損傷されれば、血小板が血管組職の損傷部位に粘着し、コラーゲン(collagen)、アラキドン酸(arachidonic acid)、ADP、トロンボキサンA2(thromboxane A2.TXA2)のような凝集誘導体による血小板活性化につながり、その後、癒着接着(adhesion)・分泌(secretion)・凝集(aggregation)反応を引き起こして血液凝固系を活性化させ、結局血栓が形成される(Yang SA. et al., Effect of methanolic extract from Salvia miltiorrhiza Bunge on in vitro antithrombotic and antioxidative activities. Korean J. Food Sci. Technol. 39, 83-87. 2007)。
【0005】
血栓症は血管に血栓が積もり、このような血管内血栓が血液の流れを妨げて細胞成長及び細胞機能の障害を誘発するものであり、脳梗塞、心筋梗塞などの多くの形態の成人病を引き起こす主要原因である。血栓が静脈で生成されれば、血液循環障害が引き起こされて浮腫や炎症が発生し、動脈で発生すれば、虚血や梗塞を引き起こして動脈硬化、心筋梗塞症、脳卒中及び肺動脈塞栓症などの心血管系疾患をもたらす。
【0006】
今まで知られた抗血小板剤としては、テオフィリン(theophylline)、モルシドミン(molsidomin)、ベラパミル(verapamil)、ニフェジピン(nifedipine)、アスピリン(aspirin)、イミダゾール(imidazole)、インドメタシン(indomethacin)などがある。これらの薬物はcAMPとcGMPの生成を促進してCa2+の動員を抑制するか、トロンボキサンA2の生成を阻害すると知られている。しかし、これらの薬物は、出血性副作用、胃膓障害、不妊、過敏反応などの副作用のため、その使用が制限されている実情である。
【0007】
したがって、血栓生成を効果的に阻害することができながらも人体に対する副作用を最小化した優れた抗血栓剤が要求されている。
【0008】
抗血栓効果を有する代表的な漢方薬材組成物としては、強心丸(Cardiotonic Pills)が知られている。強心丸は冠状動脈硬化症の予防及び治療剤であり、血管拡張、鎮静、陣痛作用を有し、昔から使われて来た丹参、消炎作用がある田七人参、及び中樞神経興奮と抗菌作用を有する竜脳から構成されている。
【0009】
一方、ニワヤナギ科に属する多年生草本植物であるイタドリ(Polygonum cuspidatum Sieb. et Zucc. = Reynoutria japonica Hou.)はイタドリ及び同属近縁植物の根又は根茎を言うものであり、韓国語で、コザン、サンザン、バンザン、サントンスン、バンザンクン、オブダップ、サンカン、バンクン、ウンファンヨン、トジユとも呼ばれる。イタドリは、韓国、日本、台湾、中国などに分布し、我が国では全国の山野の谷で育つ。イタドリは高さが1m以上であり、根茎は地下で横に伸び、黄褐色の木質であり、節が明らかである。幹は真っ直ぐに育ち、円桂形に中が空いている。表面には毛がなく、赤色又は紫色の斑点が多くある。このような根、根茎と葉の部位が昔から薬剤として使われて来た。イタドリの薬理作用としては、緩和、利尿、通経、鎮咳鎭静剤として知られており、抗菌作用及び抗ウイルス作用の薬理作用がある。
【0010】
クスノキ科に属する常緑喬木であるシナニッケイ(Cinnamomum cassia Blume)は肉桂又はその他の同属近縁植物の幹皮であり、主皮と1次皮層を除去したものである。長い板状又は円筒状であり、長さは10~20cmであり、厚さは均一でない。外側面と内側面はいずれも赤褐色であり、よく折れ曲がる。折れ曲がった面は赤褐色であり、油が豊かである。独特な芳香があり、味は辛くて甘い。シナニッケイの薬理作用は強心剤として血液循環を促進して心臓衰弱に良く、興奮、健胃整腸、温中保養、温通経脈、陽痿、体温調節、虚弱体質改善、駆風に良いと知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】韓国特許公開第10-2017-0086120号公報
【文献】韓国特許公開第10-2016-0058212号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】Yang YY et al., Screening of antioxidative, anti-platelet aggregation and anti-thrombotic effects of Clove extracts. Korean J Oriental Physiology & Pathology. 25(3):471-481, 2011
【文献】Lee HS. How safe is the readministration of streptokinase, Drug Safety 13, 76-80. 1995
【文献】Ross R. Atherosclerosis-an inflammatory disease. New Engl J Med. 340(2):115-126, 1999
【文献】Yang SA. et al., Effect of methanolic extract from Salvia miltiorrhiza Bunge on in vitro antithrombotic and antioxidative activities. Korean J. Food Sci. Technol. 39, 83-87. 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は生薬材であるイタドリとシナニッケイとを使用して血栓阻害能に優れた抗血栓用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明は、
イタドリとシナニッケイとを有効成分として含む抗血栓用組成物を提供する。
【0015】
前記組成物で、イタドリとシナニッケイとは1:2~2:1の重量比で混合して抽出した抽出物であることが好ましい。より好ましくは、前記イタドリとシナニッケイは1:1の重量比で混合して抽出した抽出物である。
【0016】
前記組成物で、前記抽出物は、
イタドリ及びシナニッケイの混合物の重量を基準にして、150~250倍(体積)の抽出溶媒を加え、50~70℃で22~26時間浸漬させた後、抽出液を得、得られた抽出液を濾過、減圧濃縮及び乾燥させて得たものであることが好ましい。
【0017】
前記組成物で、前記溶媒は70%エタノールであることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、前記組成物を有効成分として含む血栓予防及び治療剤を提供する。
【0019】
また、本発明は、前記組成物を含む抗血栓用健康食品を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によるイタドリとシナニッケイを含む抗血栓用組成物は、血小板凝集阻害効果、血栓生成阻害効果、血栓形成遅延効果などとして確認された抗血栓効果が現在抗血栓用漢方薬材組成物として商用化している強心丸に比べてもかなり優秀である。本発明の抗血栓用組成物は、血栓によって発生し得る心血管系疾患である動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞、脳卒中、肺動脈塞栓症などの予防及び治療効果を有するので、漢方薬ベースの効果の優れた血栓予防及び治療剤、抗血栓用健康食品などに使われることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明のイタドリ及びシナニッケイの混合抽出物の抽出成分を確認したGC-MS分析結果を示した図である。
【
図2】コラーゲンによって誘導される血小板凝集において本発明の組成物の阻害効能を確認した結果を示す図である。
【
図3】血栓誘発動物モデルにおいて本発明の組成物の血栓形成遅延効果を確認した結果を示す図である。
【
図4】血栓誘発動物モデルにおいて本発明の組成物の血栓形成遅延効果を確認した結果を示す図である。
【
図5】血栓誘発動物モデルにおいて血管の組職学的変化を確認した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の抗血栓用組成物は有効成分としてイタドリとシナニッケイとを含み、好ましくはイタドリとシナニッケイとを1:2~2:1の重量比で混合して抽出した抽出物を含む。特に好ましくは、イタドリとシナニッケイとを1:1の重量比で混合して抽出した抽出物を含む。
【0023】
抽出の際、溶媒としては水又はエタノールを使うことが好ましい。抽出溶媒としては70%エタノールを使うことが特に好ましい。70%エタノールを抽出溶媒として使えば、水を抽出溶媒として使用した場合に比べてより多い成分が抽出される(
図1参照)。
【0024】
また、イタドリとシナニッケイとを混合して抽出した抽出物はイタドリ及びシナニッケイのそれぞれを抽出した抽出物が有する成分を全部含むとともに追加的に他の成分も抽出されて含まれる(
図1参照)。
【0025】
イタドリ及びシナニッケイの混合物の抽出には通常の抽出方法を使うことができ、好適な抽出方法の例は次のようである。
【0026】
イタドリ及びシナニッケイの混合物の重量を基準にして、150~250倍(体積)の抽出溶媒を加え、50~70℃で22~26時間浸漬させた後、室温で抽出液を収得する。この過程は2~3回繰り返すことができる。抽出液を濾過した後、減圧濃縮及び乾燥させてイタドリ及びシナニッケイの混合抽出物を得る。
【0027】
本発明の抗血栓用組成物は、血小板凝集阻害効果、血栓生成阻害効果、血栓形成遅延効果などから確認されたように、抗血栓効果が非常に優秀である。特に、イタドリとシナニッケイとをそれぞれ使用する場合に比べて効果が大きく優れ、現在抗血栓用漢方薬材組成物として商用化している強心丸に比べても血栓形成遅延効果が2倍程度大きく優れる。よって、本発明の抗血栓用組成物は、漢方薬ベースの効果の優れた血栓予防及び治療剤、抗血栓用健康食品などに使われることができる。
【0028】
本発明の抗血栓用組成物は、イタドリとシナニッケイとの乾燥抽出物を基準にして、血栓予防用に使用する場合には、体重60kgの大人を基準にして1日100~1,000mgを使うことが好ましく、血栓治療用に使用する場合には、1日500~5,000mgの範囲で使うことが好ましい。
【0029】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は本発明を例示するものであり、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0030】
発明の実施のための形態
【0031】
<実施例1>
【0032】
イタドリ及びシナニッケイの混合抽出物の製造
【0033】
(株)ヒューマンハーブ(http://www.humanherb.co.kr/)から購入したイタドリ100gとシナニッケイ100gとに70%エタノール20リットルを加え、60℃で24時間浸漬させた後、室温で抽出液を収得した。また、70%エタノール20リットルを加えて抽出する過程を2回もう繰り返して抽出液を収集した。
【0034】
前記各抽出液を濾過した濾過物を減圧回転濃縮機(Vacuum rotary evaporator;日本NihonSeiko社、VR-205c)で溶媒を蒸発させて減圧濃縮し、乾燥させることでイタドリ及びシナニッケイの混合抽出物41.8g(収率:20.9%)を収得した。
【0035】
<実施例2>
【0036】
イタドリ及びシナニッケイの混合抽出物の製造
【0037】
イタドリ66.7gとシナニッケイ133.3gとを使ったことを除き、実施例1と同様な方法でイタドリとシナニッケイとの1:2混合抽出物を得た。
【0038】
<実施例3>
【0039】
イタドリ及びシナニッケイの混合抽出物の製造
【0040】
イタドリ133.3gとシナニッケイ66.7gとを使ったことを除き、実施例1と同様な方法でイタドリとシナニッケイとの2:1混合抽出物を得た。
【0041】
<実験例1>
【0042】
血小板凝集阻害能実験
【0043】
コラーゲンを用いてラット血小板の凝集を誘導し、本発明の組成物においてイタドリ及びシナニッケイの混合比による血小板凝集阻害能を次のように比較した。
【0044】
実験にはコアテクから分譲されたSDラット(Sprague-Dawley rat、male、220g)を使った。
【0045】
SDラットは、1週間の適応期を有した後、腹大動脈から血液を採取した。採取された血液5mLに甲状腺緩衝液(thyroid buffer;137mM NaCl、12mM NaHCO3、5.5mMグルコース、1M MgCl2、1M KCl及び1M Na2HPO4、pH7.4)2mLを添加し、1,000rpmで10分間遠心分離した。
【0046】
血球が除去された上澄み液(多血小板血漿、PRP、Platelet rich plasma)を800×gで15分間遠心分離し、沈澱した血小板を洗浄緩衝液(washing buffer;137mM NaCl、2.9mM KCl、1mM MgCl2、5mMグルコース、12mM NaHCO3、0.34mM Na2HPO4、1mM EDTA、20mM HEPES及び0.25%BSA、pH7.4)で2回洗浄した後、懸濁緩衝液(suspension buffer;137mM NaCl、2.9mM KCl、1mM MgCl2、5mMグルコース、12mM NaHCO3、0.34mM Na2HPO4、20mM HEPES及び0.25%BSA、pH7.4)に懸濁させることで最終洗浄血小板を得た。得られた洗浄血小板を3×108platelet/mLとなるように希釈して分析に用いた。
【0047】
血小板は37℃で3分間インキュベーションした後、CaCl21mMを入れ、実施例1の試料(イタドリとシナニッケイとの1:1混合抽出物)、実施例2の試料(イタドリとシナニッケイとの1:2混合抽出物)及び実施例3の試料(イタドリとシナニッケイとの2:1混合抽出物)を100μg/mL添加し、2分間インキュベーションした。
【0048】
インキュベーションの後、血小板凝集誘導物質であるコラーゲン2.5μg/mLを添加し、5分間血小板の凝集程度を測定した。ラット(Rat)血小板凝集抑制能は凝集測定器(Aggregometer;Chrono-Log Co.,Ltd.,Havertown,PA.USA)を用いた濁度測定法で確認した。その結果を
図2に示した。
【0049】
図2の結果から分かるように、実施例1~3の試料はいずれも63%以上の優れた血小板凝集阻害能を示した。特に、イタドリとシナニッケイとの1:1混合抽出物である実施例1の試料(92.8±5.9%)は1:2混合抽出物である実施例2の試料(63.3±3.1%)と2:1混合抽出物である実施例3の試料(72.0±4.4%)に比べても非常に高い血小板凝集阻害能を示した。
【0050】
<実験例2>
【0051】
頸動脈血栓誘発動物モデルにおいて血流変化に及ぶ影響確認
【0052】
塩化鉄(Ferric chloride、FeCl3)で誘導した頸動脈血栓誘発動物モデルにおいてイタドリ抽出物、シナニッケイ抽出物及びイタドリ及びシナニッケイの混合抽出物が血流変化に及ぶ影響を次のように測定した。
【0053】
実験動物としては、雄SDラット(Sprague-Dawley rat、8週齢、230-250g、コアテク、韓国)を購入して1週間の順化期間を経て実験に使った。
【0054】
1.単一抽出物と混合抽出物の比較
【0055】
試料としては、実施例1のイタドリ及びシナニッケイの混合抽出物を使った。比較のための試料としてイタドリ抽出物及びシナニッケイ抽出物を使った。イタドリ抽出物とシナニッケイ抽出物はイタドリとシナニッケイをそれぞれ200g使ったことを除き、実施例1と同様な方法で抽出物を得た。
【0056】
実験動物に各試料を体重1kg当たり50mg、100mg及び200mgをそれぞれ3日間経口投与し、対照群は同量の緩衝液(saline)を投与した。試験期間の間に固形飼料と水は自由に取るようにし、飼育環境は、温度23±0.5℃、相対湿度50±5%、12時間の間隔の明暗(light-dark)サイクルで自動維持させた。
【0057】
実験動物の痲酔には、ロンプンとゾレチルとを2:3の比率で混合した痲酔剤を使った。
【0058】
実験動物の頸動脈血栓誘発は、頸動脈に30%塩化鉄溶液で濡らした濾過紙(filter paper)(2×2mm)を3分間接触させた後、濾過紙を除去し、生理食塩水で拭いた後、探針(Powerlab/8sp,ADInstruments Pty Ltd.,Castle Hill,NSW,Australia)を付けた血流測定器(Laser Doppler Flownetry(LDF;BFL21、Transonic Instrument,USA)を使って血流測定を施行した。
【0059】
塩化鉄処理の後、血栓生成は、血流測定値が0近くに落ちるときを基準にして測定し、正常群の場合は40分まで測定した。その結果を
図3に示した。
【0060】
正常群(C Basal)では、総40分の観察時間内で血栓が生成されず、塩化鉄処理群は塩化鉄処理17分後に血流量値が0に至ることが確認された。
【0061】
イタドリ抽出物を投与した群(PC)とシナニッケイ抽出物を投与した群(CC)は塩化鉄処理の後に40分が経過しても正常群の約40%に相当する血流量値を示した反面、イタドリ及びシナニッケイの混合抽出物を投与した群(Mix)の場合、正常群の約70%に相当する血流量値を維持した。
【0062】
このように、イタドリとシナニッケイとを混合して抽出した抽出物はイタドリ又はシナニッケイの単独抽出物に比べて抗血栓効果に著しく優れたことが分かった。
【0063】
2.混合抽出物と市販薬剤の比較
【0064】
イタドリ及びシナニッケイの混合抽出物が血流変化に及ぶ影響を市販薬剤と比較するために、次のように実験した。
【0065】
市販薬剤としては強心丸(Cardiotonic Pills;丹参17.5mg、田七人参3.4mg、竜脳0.2mg)を使った。
【0066】
実験動物に、イタドリ及びシナニッケイの混合抽出物と強心丸を体重1kg当たり200mgで経口投与したことを除き、前記と同様に実験した。その結果を
図4に示した。
【0067】
図4から確認されるように、イタドリ及びシナニッケイの混合抽出物を投与した群(Mix)と強心丸を投与した群ではいずれも明らかな血栓形成遅延効果を示した。特に、イタドリ及びシナニッケイの混合抽出物を投与した群(Mix)は強心丸を投与した群に比べても2倍程度の高い血栓形成遅延効果を示した。このようなイタドリ及びシナニッケイの混合抽出物の血栓形成阻害効果は正常群と類似の水準であることが確認された。
【0068】
<実験例3>
【0069】
血栓誘発動物モデルにおいて血管の組職学的変化確認
【0070】
血栓誘発動物モデルにおいて血管の組職学的変化を次のように確認した。
【0071】
前記実験例2で血栓生成を測定した後、血栓が生成された頸動脈部位を3~4mm摘出した。
【0072】
摘出された頸動脈部位を10%中性パラホルムアルデヒドで24時間固定させ、通常の組職処理過程を経てパラフィンに包埋した後、切片(厚さ4μm)を作った。作られた切片はヘマトキシリン-エオシン(hematoxylin-eosin)染色を実施して光学顕微鏡用組職標本を製作した。
【0073】
標本を光学顕微鏡で観察し、その結果を
図5に示した。
【0074】
図5から確認されるように、塩化鉄処理群(FeCl
3)は血管全体が血栓で満たされていた。一方、イタドリ及びシナニッケイの混合抽出物投与群(FeCl
3+Mix)はイタドリ抽出物を投与した群(FeCl
3+PC)又はシナニッケイ抽出物(FeCl
3+CC)を投与した群に比べて血栓形成が減少した。