(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】ハイブリッドろ過シート、原反ロール及び飲料抽出バッグ
(51)【国際特許分類】
B65D 85/808 20060101AFI20240105BHJP
B65D 77/00 20060101ALI20240105BHJP
B65D 65/00 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
B65D85/808
B65D77/00 F
B65D65/00 A
(21)【出願番号】P 2019144975
(22)【出願日】2019-08-06
【審査請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000178882
【氏名又は名称】山中産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119091
【氏名又は名称】豊山 おぎ
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 基伸
(72)【発明者】
【氏名】元村 正
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-255924(JP,A)
【文献】特開2011-104471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/808
B65D 77/00
B65D 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布
の端部とメッシュシート
の端部とが
重ね合わされてつなぎ目とされ、前記つなぎ目以外では前記不織布及び前記メッシュシートは互いに重ならずにろ過シートを構成し、
前記不織布の厚さ寸法が前記メッシュシートの厚さ寸法よりも厚く形成されている
飲料抽出バッグ作製用ハイブリッドろ過シート。
【請求項2】
前記不織布の厚さ寸法は、前記メッシュシートの厚さ寸法の101%以上300%以下に形成されている請求項1に記載のハイブリッドろ過シート。
【請求項3】
前記不織布の厚さ寸法は、前記メッシュシートの厚さ寸法の120%以上250%以下に形成されている請求項1に記載のハイブリッドろ過シート。
【請求項4】
前記不織布の長手方向の一定毎の領域における面積が同領域における全体の面積の50%以上90%以下である請求項1から3のいずれか一項に記載のハイブリッドろ過シート。
【請求項5】
前記不織布及び前記メッシュシートがそれぞれ一定の幅寸法で形成され、
前記不織布の幅寸法が全体の幅寸法の50%以上90%以下である請求項1から3のいずれか一項に記載のハイブリッドろ過シート。
【請求項6】
前記不織布の端部と前記メッシュシートの端部とが面同士を重ねて貼着している請求項1から4のいずれか一項に記載のハイブリッドろ過シート。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載のハイブリッドろ過シートがロール状に巻かれた原反ロール。
【請求項8】
請求項7に記載の原反ロールを用いて作成された飲料抽出バッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッドろ過シート、原反ロール及び飲料抽出バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
不織布単体、メッシュシート単体、又は不織布及びメッシュシートを組み合わせたものなど様々なシートを用いたティーバッグが開示されている(例えば、下記特許文献1)。
特許文献1のティーバッグは、不織布とメッシュシートとを組み合わせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の不織布及びメッシュシートのように異なる素材を組み合わせたシートを用いた場合、機械生産においてティーバッグの形状が粗悪になったり、シートの封止部分に皺が生じたりすることがあり、製品の質が大幅に低下するという課題があった。
そこで、本発明は、機械生産においてもティーバッグの形状を美しく形成することができるハイブリッドろ過シート、その原反ロール及び本発明のハイブリッドろ過シートにより形成された飲料抽出バッグを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のハイブリッドろ過シートは、不織布とメッシュシートとがつなぎ合わされ、前記不織布の厚さ寸法が前記メッシュシートの厚さ寸法よりも厚く形成されている。
この構成によれば、ハイブリッドろ過シートを歪みなく原反ロールにすることができるため、ハイブリッドろ過シートを歪みなく機械上に繰り出することができる。
【0006】
本発明のハイブリッドろ過シートの前記不織布の厚さ寸法は、前記メッシュシートの厚さ寸法の101%以上300%以下に形成されていてもよい。
この構成によれば、ハイブリッドろ過シートの繰り出しをより的確に行うことができる。
【0007】
本発明のハイブリッドろ過シートの前記不織布の厚さ寸法は、前記メッシュシートの厚さ寸法の120%以上250%以下に形成されていてもよい。
この構成によれば、ハイブリッドろ過シートの繰り出しをより的確に行うことができる。
【0008】
本発明のハイブリッドろ過シートの前記不織布の長手方向の一定毎の領域における面積が同領域における全体の面積の50%以上90%以下であってもよい。
この構成によれば、ハイブリッドろ過シートの繰り出しをより的確に行うことができる。
【0009】
本発明のハイブリッドろ過シートの前記不織布及び前記メッシュシートがそれぞれ一定の幅寸法で形成され、前記不織布の幅寸法が全体の幅寸法の50%以上90%以下であってもよい。
この構成によれば、ハイブリッドろ過シートの繰り出しをより的確に行うことができる。
【0010】
本発明のハイブリッドろ過シートの前記不織布の端部と前記メッシュシートの端部とが面同士を重ねて貼着していてもよい。
この構成によれば、貼着ラインを面上に平坦に表すことができ、テトラ等の立体形状の外形が崩れることを防止することができる。
【0011】
本発明の原反ロールは、上記いずれかに記載のハイブリッドろ過シートがロール状に巻かれたものであってもよい。
この構成によれば、ロールが崩れにくい。
【0012】
本発明の飲料抽出バッグは、上記いずれかに記載のハイブリッドろ過シートを用いて形成されていてもよい。
この構成によれば、メッシュシートにより飲料の抽出を良好に行いつつ、飲料抽出原料の粉などの漏れを有効に防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のハイブリッドろ過シートは、機械生産において飲料抽出バッグの形状を美しく形成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るハイブリッドろ過シートを示した平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るハイブリッドろ過シートを用いて飲料抽出バッグを作成する過程を示した模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るハイブリッドろ過シートを用いて作成された飲料抽出バッグを示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るハイブリッドろ過シートの他の例を示した平面図である。
【
図5】
図4に示すハイブリッドろ過シートを用いて作成された飲料抽出バッグを示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るハイブリッドろ過シートの他の例を示した平面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るハイブリッドろ過シートの他の例を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、各図面を参照して、本発明のハイブリッドろ過シート、飲料抽出バッグの実施形態について説明する。なお、以下の説明で用いる図の各部分の寸法は実際のものと同一とは限らず、適宜変更することができる。
【0016】
図1に示すように、本発明の一実施形態のハイブリッドろ過シート1は、不織布2と、メッシュシート3とを備えている。
不織布2は、一定の幅寸法の帯状に形成されている。
不織布2の厚さは、特に限定されないが、0.1mm以上0.3mm以下であればよい。
【0017】
不織布2は、熱融着可能なものであれば特に限定されないが、ろ過性能に優れ、微粉末又は無用な成分等を抽出液中に排出し難い特徴を持つシートであることが好ましい。好適な不織布2の例としては、例えばサーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布の単体及びそれらを貼り合わせた2層以上の構成の不織布が挙げられる。
【0018】
不織布2の素材には、特に限定されないが、綿、麻等の天然繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、アセテート繊維等の半合成繊維、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリアクリル、ポリ乳酸繊維等の合成繊維、又はこれらを混合した繊維が使用される。これらの繊維は長繊維であってもよく短繊維であってもよい。
【0019】
不織布2の目付は、12g/m2以上40 g/m2以下であればよく、メッシュシート3の目を考慮すると、20g/m2以上30g/m2以下であることが好ましい。
【0020】
メッシュシート3は、一定の幅寸法で帯状に形成されている。
メッシュシート3に用いる生地としては、合成繊維を用いた織物生地又は編物生地を好適に用いることができる。合成繊維は、熱融着性を有しているものがよい。
【0021】
本発明のメッシュシートに用いることができる熱融着性を有する合成繊維としては、熱可塑性を有する樹脂ならば広範囲に使用することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ポリ乳酸等よりなる合成繊維が使用可能であり、特に、ナイロン、ポリエステル、ポリ乳酸等の合繊フィラメントを好適に使用することができる。
【0022】
これらの樹脂は、単体での使用のみならず、複合されていてもよい。また、本発明に用いられる合成繊維としては、融点の異なる2成分を用いており、芯側の成分が鞘側の成分よりも高融点である芯鞘型の複合繊維などを用いることもできる
メッシュシート3の繊維は、太さを15dtex以上40dtex以下とし、繊維密度を1インチ当たり70本以上140本以下とするとよい。
【0023】
メッシュシート3との重なり部分すなわちつなぎ目4を含めた不織布2の幅寸法のハイブリッドろ過シート全体の幅寸法に対する比率は、50%以上90%以下であればよく、70%以上80%以下であることが好ましい。言い換えると、メッシュシート3とのつなぎ目4を含めた不織布2の幅寸法と、不織布2との重なりを除くメッシュシート3単体の幅寸法との寸法比は、1:1以上9:1以下であればよく、7:3以上8:2以下であることがより好ましい。
【0024】
不織布2とメッシュシート3とのつなぎ目4は、不織布2の端部2aの面とメッシュシート3の端部3aの面とを対向させて重ね合わせ、溶着により貼り付けられている。
また、不織布2とメッシュシート3とのつなぎ目4の幅寸法は、ハイブリッドろ過シート1の全体の幅寸法の1mm以上10mm以下であればよい。
【0025】
不織布2は、メッシュシート3に比べて摩擦力を有しているため、不織布2の割合を一定以上にすることによってハイブリッドろ過シート1の巻き上げ時の滑りを防止することが出来る。特に、ティーバッグ等の飲料抽出バッグ10に用いる原反ロールには、予めタグ5及び吊り糸6をハイブリッドろ過シート1の表面に取り付けておくことがあるため、ハイブリッドろ過シート1の表面に凹凸が生じメッシュシート3部分でずれ易くなることが防止される。
【0026】
具体的には、不織布2の幅寸法のハイブリッドろ過シート1全体の幅寸法に対する比率が50%以上であると不織布2の摩擦力によってロール時のシートのずれが生じ難くなる。しかし不織布2のハイブリッドろ過シート1全体に対する幅寸法の比率が50%未満の場合、ハイブリッドろ過シート1のロール時にずれが生じやすくなる。また、不織布2の幅寸法の全体の幅寸法に対する比率が90%よりも高い場合、飲料の抽出性に影響がでる。
【0027】
図1に示されたハイブリッドろ過シート1は、「不織布2の幅」:「メッシュシート3の幅」=約3:1の割合で構成されている。不織布2の側端部2bの近傍には、
図3に示すティーバッグ等の飲料抽出バッグ10にした際に袋体10aを吊り下げるタグ5が剥離可能に貼着している。タグ5には吊り糸6が連結しており、吊り糸6の端部がメッシュシート3に剥離し難いように貼着している。
なお、タグ5又は吊り糸6の先端を不織布2又はメッシュシート3のいずれに付けるかは、特に限定されるものではない。
【0028】
このようにして形成されたハイブリッドろ過シート1は、飲料抽出バッグ10の製造装置にロール状態で設置され、平らに展開した状態で繰り出される。そして、
図2に示すように、ハイブリッドろ過シート1の長手方向に延びる両側縁2b,3bを合わせてやや立体的な筒状に形成し、長手方向に延びる両側縁2b,3b近傍をカットアンドシールによって封止していく。筒状の底7側の端部7aを閉じた後、開口した上方側から袋内の底部7aに飲料の抽出原料を収容する。
【0029】
その上で、底部7aから所定の距離を空けた長手方向の位置で底部7aに対して直交する方向に筒状のハイブリッドろ過シート1を挟み込みカットアンドシールする。
【0030】
これにより、
図3に示すテトラ形状の飲料抽出バッグ10ができる。
図2に示すように、底部7aから所定の間隔を空けてカットアンドシールされた筒状のハイブリッドろ過シート1には、再び飲料の抽出原料を収容し、先にカットアンドシールにより形成された底部7aから所定の間隔を空けて底部7aに直交する方向に筒状のハイブリッドろ過シート1を挟み込み更にティーバッグ等の飲料抽出バッグ10を形成する。
【0031】
このようにして形成されたハイブリッドろ過シート1を用いた飲料抽出バッグ10は、表面積の略4分の1がメッシュシート3により形成されているため、メッシュシート3の部分で飲料の抽出が良好に行われ、4分の3の不織布2の部分で飲料の粉末等の濾過を有効に防止することができる。
【0032】
図4に示すハイブリッドろ過シート1は、つなぎ目4を除くハイブリッドろ過シート1の不織布2とメッシュシート3とが同じ幅寸法になるように構成されている。このハイブリッドろ過シート1を用いると、
図5に示すように不織布2及びメッシュシート3の面積がほぼ同じ飲料抽出バッグ10を作成することができる。
この場合、不織布2とメッシュシート3とのつなぎ目4にも不織布2が存在しているので、同つなぎ目4と不織布2単体の部分との幅寸法は、ハイブリッドろ過シート1全体の50%超になっている。
【0033】
図6に示すハイブリッドろ過シート1は、メッシュシート3を中間に挟んで幅方向の両側に不織布2が連結した構成となっている。メッシュシート3単体の幅寸法は、全体の5分の1で、つなぎ目4を含む不織布2の幅寸法は、全体の幅寸法の5分の4を示す構成となっている。なお、
図6に示すハイブリッドろ過シート1は、ハイブリッドろ過シート1の両端縁2b,2b同士を重ねて筒状にし、上述した方法と同様にして飲料抽出バッグ10を形成する。
【0034】
以上いずれのハイブリッドろ過シート1についても不織布2の割合が50%以上であるので、ロール状に巻かれた際にずれが生じるのを有効に防止して、自動生産機械上において歪みなく適切にハイブリッドろ過シート1を供給することが出来る。したがって、テトラ形状その他の形状の飲料抽出バッグ10の製造を好適に行うことが出来るという効果を奏する。
【0035】
また、つなぎ目4において不織布2の端部2aの面とメッシュシート3の端部3aの面とを重ね合わせて融着した構成であるので、つなぎ目4がきれいな平面を保ち易くすることができる。したがって、
図3及び
図5に示すように、飲料抽出バッグ10の抽出原料を収容する袋体10aでつなぎ目4が表れる面がきれいな平坦面となり、立体形状を美しく保つことができるという効果を奏する。
【0036】
上記実施形態では、不織布2とメッシュシート3のそれぞれの幅が一定で、各幅寸法の比がそれぞれの面積の比となる場合について説明したが、不織布2とメッシュシート3との面積比が長手方向の一定寸法ごと、すなわち一定の領域ごとに一定であればよい。
【0037】
具体的には例えば、
図7に示すように、不織布2とメッシュシート3とのつなぎ目4が波線等、パターン形状の繰り返しとなっていてもよい。この場合、不織布2とハイブリッドろ過シート1全体との面積比は、1つのパターン形状を成している領域内で50%以上90%以下であればよい。
【0038】
このようなハイブリッドろ過シート1であっても、上記実施形態で説明した本発明の機能及び効果を奏する。
また、飲料抽出バッグ10は、テトラ形状以外に偏平な矩形の袋体10aにより形成されていても、その他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 ハイブリッドろ過シート
2 不織布
2a 端部
3 メッシュシート
3a 端部
4 つなぎ目
5 タグ
6 吊り糸
7 底
7a 底部
10 飲料抽出バッグ