(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】電磁弁ユニット
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20240105BHJP
F16K 7/17 20060101ALI20240105BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240105BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20240105BHJP
【FI】
F16K31/06 305Z
F16K7/17 Z
H01M8/04 N
H01M8/0438
(21)【出願番号】P 2019192520
(22)【出願日】2019-10-23
【審査請求日】2022-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000108557
【氏名又は名称】タイム技研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古川 実明
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-89772(JP,A)
【文献】特開2007-35582(JP,A)
【文献】特開2018-123868(JP,A)
【文献】特開2020-187925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06-31/11,7/17
H01M 8/04-8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを供給する上流配管と該ガスを吸気するポンプを備える下流配管との間のガス通路に配置され、
該
ガス通路を開閉する電磁弁と、
前記
ガス通路において、前記電磁弁の流入側或いは流出側に配置された負圧閉止弁と、
前記電磁弁および前記負圧閉止弁の流出側に配された流量センサと、を備え
た電磁弁ユニットであって、
前記負圧閉止弁は、弁体と、弁座と、該弁体を弁座方向に付勢する付勢部材と、前記弁体に固着し、前記弁座上方部を閉塞する
肉薄の弾性部材で成形されたダイアフラムとから構成され、
ガスの供給が停止して、前記
ガス通路内の圧力が所定の圧力を超えて低下すると
、前記弁体が前記弁座に着座して前記
ガス通路を閉止
し、さらに、前記流量センサの出力信号により前記電磁弁を閉弁して前記ガス通路を閉止維持して前記上流配管内の負圧化を抑止することを特徴とする電磁弁ユニット。
【請求項2】
前記負圧閉止弁には、前記付勢部材による付勢力を調整して前記負圧閉止弁が閉弁する 圧力を調整する圧力調整部を備えたことを特徴とする請求項
1に記載の電磁弁ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に開示の技術は、電磁弁を用いた電磁弁ユニットに関し、特に燃料電池システムなどに採用される電磁弁ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムの運転中において様々な事情により、燃料ガスの元圧側の異常が発生するおそれがある。このようなおそれとしては、例えば、ガス源の故障、ガス源側の配管損傷、ガス源と燃料電池システムとの間に存在する元圧弁が過誤で閉鎖されること等を例示できる。このような場合、燃料源から元圧弁を介して燃料ガス通路に供給される燃料ガスの流量が急激に減少または消失するおそれがある。この場合、燃料電池に繋がる燃料ガス通路が負圧化され、燃料ガス通路に対して並列に繋がる他のガス機器にも影響を与えるおそれがある。
【0003】
特許文献1には、燃料電池と、燃料電池のカソードにカソードガス(一般的は空気)を供給するカソードガス通路と、燃料電池のアノードに燃料ガスとしての燃料ガスを供給する燃料ガス通路と、燃料ガス通路に設けられたガス搬送源としての燃料ポンプおよび制御部とを備え、運転中において、ガス搬送源に入力される電気入力量に関する物理量が正常値に対して上昇する時間の継続時間から制御部により燃料ガスの元圧異常を判定する燃料電池システムの開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、上述のような燃料ガスの元圧異常を早期に検知する方法が開示されているが、燃料ガスの元圧異常が発生した場合、速やかに燃料ガス通路を遮断して、燃料ガス通路における過剰な負圧化を抑制することが肝要である。そのため、従来、遮断弁の下流側に圧力センサを配置し、圧力センサの出力信号により遮断弁を駆動させて燃料ガス通路を遮断し、燃料電池に繋がる燃料ガス通路の過剰な負圧化を抑止する方法が採られてきた。
【0006】
しかしながら、圧力センサは比較的高価であることから、コスト面において負担となるという問題があった。また、圧力センサの出力信号により、圧力低下を検知して、燃料遮断弁を遮断するため、原燃料ガスの供給が不具合により停止してから燃料遮断弁を遮断するまでにタイムラグが生じることから、適切に負圧による不具合を抑止できないおそれがあった。
【0007】
本願に開示される技術は、上記の課題に鑑み提案されたものであって、ダイアフラムを用いた負圧閉止弁を配置することにより、原燃料ガスの供給が不具合により停止して負圧発生した場合に、的確に流路を閉止して負圧による不具合を効果的に防止可能な電磁弁ユニットを低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため請求項1に係る電磁弁ユニットは、ガスを供給する上流配管とガスを吸気するポンプを備える下流配管との間のガス通路に配置され、ガス通路を開閉する電磁弁と、ガス通路において、電磁弁の流入側或いは流出側に配置された負圧閉止弁と、電磁弁および負圧閉止弁の流出側に配された流量センサと、を備えた電磁弁ユニットであって、負圧閉止弁は、弁体と、弁座と、弁体を弁座方向に付勢する付勢部材と、弁体に固着し、弁座上方部を閉塞する肉薄の弾性部材で成形されたダイアフラムとから構成され、ガスの供給が停止して、ガス通路内の圧力が所定の圧力を超えて低下すると、弁体が弁座に着座してガス通路を閉止し、さらに、流量センサの出力信号により電磁弁を閉弁してガス通路を閉止維持して上流配管内の負圧化を抑止することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る電磁弁ユニットは、請求項1に記載の電磁弁ユニットにおいて、負圧閉止弁には、付勢部材による付勢力を調整して負圧閉止弁が閉弁する圧力を調整する圧力調整部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る電磁弁ユニットでは、従来配置された圧力センサの代わりに、弁体、弁座、弁体を弁座方向に付勢する付勢部材および弁体に固着し弁座上方部を閉塞する肉薄の弾性部材で成形されたダイアフラムとから構成された負圧閉止弁を流体通路に配置する。採用する負圧閉止弁は簡易な構成なため、圧力センサに比べ、安価なことから、電磁弁ユニットのコストが低減できる。また、ガスの供給が停止して、ガス通路内の圧力が所定の圧力を超えて低下すると、弁体が弁座に着座して負圧閉止弁自体でガス通路を閉止することができるため、電磁弁を制御することなくガス通路を閉止することができる。これにより、確実にガス通路の過度な圧力低下を防止することができる。さらに、肉薄の弾性部材で成形されたダイアフラムを用いた負圧閉止弁を採用することで、従来の課題である、ガス通路を閉止するまでに生じるタイムラグも抑止することができるため、ガス通路の過度な圧力低下を、より的確に抑止できる。
【0012】
また、電磁弁および負圧閉止弁の流出側(下流側)に流量センサを備え、流体通路の流量を検知して、流体通路の過度な圧力低下を検知すると電磁弁を閉弁制御することにより、流体通路を完全に閉止することができる。これにより、負圧閉止弁が開弁しても流体通路の閉止を維持することができる。
【0013】
請求項2に係る電磁弁ユニットでは、負圧閉止弁が閉弁する圧力を調整する圧力調整部を備えることにより、負圧閉止弁が閉弁する圧力を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明にかかる一実施形態である電磁弁ユニットを組み込んだ燃料電池ユニットのブロック図である。
【
図2】本発明にかかる一実施形態である電磁弁ユニットの、(A)上面図、(B)正面図、(C)下面図である。
【
図5】
図4において、電磁弁ユニットの開弁状態を説明する図である。
【
図6】電磁弁ユニットに採用した一実施形態であるダイアフラムを用いた負圧閉止弁を構成する部品と組み付け方法を説明する図である。
【
図7】負圧閉止弁を構成する弁蓋の(A)上面図、(B)側面図である。
【
図8】負圧閉止弁を構成する弁ボディの(A)上面図、(B)側面図である。
【
図9】負圧閉止弁を構成するダイアフラムの(A)上面図、(B)側面図である。
【
図10】負圧閉止弁を構成するバネ座の(A)上面図、(B)側面図、および、バネの(C)上面図、(D)側面図である。
【
図11】負圧状態時の負圧閉止弁の作動を説明する図である。
【
図12】本発明にかかる他の実施形態(その1)の電磁弁ユニットの断面図である。
【
図13】本発明にかかる他の実施形態(その2)の電磁弁ユニットの断面図である。
【
図14】本発明にかかる他の実施形態(その3)の電磁弁ユニットの断面図である。
【
図15】本発明にかかる他の実施形態(その4)の電磁弁ユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、本発明にかかる一実施形態である電磁弁ユニット2を組み込んだ燃料電池ユニット1について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明にかかる一実施形態である電磁弁ユニット2を組み込んだ燃料電池ユニット1のブロック図である。
【0017】
燃料電池ユニット1は、(図示しない)他のガス機器などと共にガス配管3に、接続管4を介して接続されている。そして、上流側から下流側に向けて第1電磁弁5、第2電磁弁6、負圧閉止弁7、流量センサ8、負圧ガバナ9およびポンプ10などが配置されている。また、燃料電池ユニット1には、第1電磁弁5、第2電磁弁6および流量センサ8などを制御する制御部20が配置されている。ここで、第1電磁弁5、第2電磁弁6および負圧閉止弁7は電磁弁ユニット2として一体的に組み付けられている。
【0018】
図2は、本発明にかかる一実施形態である電磁弁ユニット2の、(A)上面図、(B)正面図、(C)下面図である。電磁弁ユニット2は、アルミニウムなどの金属で成形されたボディ13と、第1電磁弁5と、第2電磁弁6と、樹脂などで成形された負圧閉止弁7とから構成されている。第1電磁弁5および第2電磁弁6は(金属製の)ボディ13に直接取り付けられている。ガス配管3から供給されるガスは流入口11から電磁弁ユニット2に流入し、第1電磁弁5、第2電磁弁6および負圧閉止弁7を介して流出口12から流出するようになっている。
【0019】
図3は、
図2の(C)のA-A断面図である。流入口11には、流入口11に対して開口する円柱状の第1開口部34が設けられている。そして、第1開口部34に連続して、開口径が第1開口部34の開口径よりやや小さい円柱形状の第2開口部35が設けられ、さらに連続して、開口径が第2開口部35の開口径より小さい円柱形状の第3開口部36が設けられ、第1電磁弁5の第1弁室40に接続されている。
【0020】
第1弁室40には第1電磁弁5の第1弁体42が着座する第1弁座33が設けられており、第1弁座33を端部として、第1開口部34、第2開口部35および第3開口部36からなる連通路に対して垂直方向に開口し、第2電磁弁6の第2弁室41に接続する円柱形状の第1連絡開口部37が設けられている。
【0021】
第2弁室41には第2電磁弁6の第2弁体43が着座する第2弁座32が設けられており、第2弁座32を端部として、第1連絡開口部37に対して垂直方向に開口し、負圧閉止弁7の負圧弁室38と連通する第1連通路30まで伸長する円柱形状の第2連絡開口部31が設けられている。
【0022】
負圧閉止弁7には、第2連絡開口部31と同軸に、流出口12に対して開口する円柱形状の第4開口部23が設けられ、その端部には負圧閉止弁7の負圧弁室38と連通する第3連通路29が設けられている。なお、第1電磁弁5および第2電磁弁6の第1弁体42および第2弁体43は、それぞれ第1電磁弁バネ44および第2電磁弁バネ45により第1弁座33および第2弁座32の方向に付勢されている。また、第1電磁弁5および第2電磁弁6の第1弁室40および第2弁室41は、それぞれOリング46および47によりシール状態で保持されている。
【0023】
図4は、
図2の(B)のB-B断面図である。また、
図6は、負圧閉止弁7を構成する部品と組み付け方法を説明する図である。そして、
図7から
図10は、負圧閉止弁7を構成する各部品の詳細を説明する図である。これら
図4、
図6および
図7から
図10を用いて、本発明の特徴である負圧閉止弁7を説明する。
【0024】
図6に示すように、負圧閉止弁7は、弁ボディ21と、弁蓋22と、ダイアフラム25と、バネ座26と、弁バネ27とから構成されている。弁ボディ21に対し、ダイアフラム25、バネ座26、弁バネ27、弁蓋22の順に組み込んで、(図示しない)ネジにより弁ボディ21に弁蓋22を取り付けて負圧閉止弁7は組み付けられる。後述するが、ダイアフラム25の外周部はシール部となっており、ダイアフラム25のシール部により、弁ボディ21と弁蓋22とをシール状態で保持するようになっている。
【0025】
図4に示すように、弁ボディ21と弁蓋22とからなる空間は、ダイアフラム25により、負圧弁室38と背圧室39とに隔離されている。ダイアフラム25の中央部の厚みは厚くなっており、さらに中心部は円錐台状になっている。ダイアフラム25の中央部が、弁ボディ21に設けられた負圧弁座24に着座する弁体として機能する。ダイアフラム25の中央部には、バネ座26が置かれ、弁バネ27がバネ座26を介してダイアフラム25の中央部を負圧弁座24方向に付勢している。上述のように、負圧弁座24の中央には、負圧閉止弁7の負圧弁室38と第4開口部23とを連通する第3連通路29が設けられ、負圧弁室38の端部には、負圧弁室38と第2連絡開口部31とを連通する第1連通路30が設けられている。
【0026】
組み付けられた負圧閉止弁7は、(図示しない)ネジによりボディ13に組み付けられる。第1連通路30の外周にはOリング48が配置され、負圧閉止弁7とボディ13とをシール状態で保持するようになっている。また、負圧閉止弁7の弁蓋22の上面中央部にはオリフィス孔28が設けられ、オリフィス孔28により、負圧閉止弁7の背圧室39は大気と連通している。
【0027】
ここで、負圧閉止弁7を構成する各部品について、その詳細を説明する。
【0028】
図7は、弁蓋22の(A)上面図、(B)側面図である。
図7に示すように、弁蓋22は、側面図において上から、上半分が円台柱状で下半分が円柱状となっている弁蓋上部22c、円柱状の弁蓋台部22b、および、上面が略正方形である直方体形状のベース部22aから形成されている。弁蓋上部22cの上面中心部には、上半分が円柱状で下半分が円台柱状のオリフィス開口部22dがあり、その下面にはオリフィス孔28が設けられている。弁蓋上部22cの内部には、ベース部22aの上部に至る円柱状の第1弁蓋開口部22gが設けられ、ベース部22aには、第1弁蓋開口部22gに連続し、下方に開口する、第1弁蓋開口部22gの開口径より大きな開口径の円柱状の第2弁蓋開口部22fが設けられている。第1弁蓋開口部22gの開口径は、下述する弁バネ27の外径よりやや大きくなっている。ベース部22aの四隅には、(図示しない)ネジが貫通する弁蓋貫通穴22e、22e、22e、22eが設けられている。
【0029】
図8は、弁ボディ21の(A)上面図、(B)側面図である。
図8に示すように、弁ボディ21は、側面図において、上部には上面が略正方形の直方体形状のベース受部21cと、(側面図から見て)下部左側には直方体状の連通部21bと、流出口12を有し、連続した複数の異なった径の円柱形状から構成された接続部21aとから形成されている。接続部21aには、例えば、本実施形態では上述のように流量センサ8が接続される。
【0030】
ベース受部21cの上面には、下述するダイアフラム25のシール部25cが挿入可能な凹溝21jがリング状に設けられている。そして、その中央部には、上述した負圧弁座24が設けられ、負圧弁座24の中心には(側面図から見て)下方に伸長し、接続部21aおよび連通部21bに設けられた第4開口部23に連通する(上述した)第3連通路29が設けられている。また、ベース受部21cの上面の四方端には(側面図から見て)上方に伸長した長方形状のガイド部21d、21d、21d、21dが形成されている。ガイド部21dは、弁ボディ21のベース受部21cに弁蓋22を取り付けた際に、弁蓋22の位置決めとして機能する。
【0031】
さらに、(上面図から見て)負圧弁座24の左側には、負圧弁座24と凹溝21jとの間に略円柱形状のベース受け開口部21hが設けられており、(上面図から見て)負圧弁座24の右側には、凹溝21jと接する位置に(上述した)第1連通路30が設けられている。第1連通路30はベース受部21cの下方に突出した略円柱形状の凸部21fの中心を(側面図から見て)上下方向に貫通する。また、(側面図から見て)負圧弁座24の手前にはベース受部21cの下方に突出した略円柱形状の位置決めピン21eが形成されている。位置決めピン21eによりボディ13に取り付けた負圧閉止弁7を位置決めされる。そして、ベース受部21cの四隅には、弁蓋22の弁蓋貫通穴22e、22e、22e、22eと、それぞれ同軸位置に、弁ボディ貫通穴21g、21g、21g、21gが設けられている。
【0032】
上述したように、接続部21aから連通部21bに亘って、流出口12を開口端に第4開口部23が設けられている。
【0033】
図9は、ダイアフラム25の(A)上面図、(B)側面図である。ダイアフラム25は、NBRゴムなど弾性部材で成形されており、
図9に示すように、側面図において、中央部には略円柱状で全体的に厚みが大きく、中心部が円錐台状の凸部を有する弁体部25aと、弁体部25aの周囲を囲う円形状の肉薄のダイアフラム部25bと、さらにダイアフラム部25bの周囲を囲うリング状の肉厚のシール部25cとから形成されている。弁体部25aは厚みが大きいため負圧閉止弁7の弁体として機能する。また、シール部25cは、弁ボディ21の凹溝21jに嵌合し、弁ボディ21と弁蓋22とを組み付けた際にシール部25cにより、弁ボディ21と弁蓋22とシール状態を保持可能になっている。このように、弁体部とダイアフラム部とシール部を一体的に成形加工することにより、部品点数の削減が可能になり、製造コストを低減することができる。
【0034】
図10は、バネ座26の(A)上面図、(B)側面図、および、弁バネ27の(C)上面図、(D)側面図である。
【0035】
図10の(A)および(B)に示すように、バネ座26は、例えば、アルミニウムなどの金属製で円盤状に形成されている。
図10の(B)の側面図に示すように、中央部26bは、外周部26aに対して円錐台状に下方に突出して成形されている。中央部26bの円形状の突出部の径は下述する弁バネ27の外径よりやや大きくなっている。中央部26bの中心部にはバネ座貫通穴26cが設けられている。バネ座貫通穴26cの開口径はダイアフラム25の弁体部25aの円錐台状の凸部の最下部の最大径よりやや大きく、負圧閉止弁7の組み付ける際には、弁体部25aの円錐台状の凸部がバネ座貫通穴26cを貫通して、ダイアフラム25上でバネ座26が位置決めされるようになっている。
【0036】
図10の(C)および(D)に示すように、本実施形態では、弁バネ27は、鋼などの金属製の圧縮コイルバネを採用している。上述のように弁バネ27の径は弁蓋22の第1弁蓋開口部22gの開口径よりやや小さく設定されている。
【0037】
上記のように構成された電磁弁ユニット2の動作について
図3から
図5を参照して説明する。電磁弁ユニット2が動作していない場合は、
図3および
図4に示すように、第1電磁弁5、第2電磁弁6および負圧閉止弁7はいずれも閉弁状態となっており、ガス配管3から燃料電池ユニット1にガスは供給されない。
【0038】
ガス配管3から燃料電池ユニット1へガスを供給する際は、制御部20により、第1電磁弁5、第2電磁弁6およびポンプ10を駆動させる。すると、第1電磁弁5および第2電磁弁6が開弁し(
図5の矢印(1))、電磁弁ユニット2の流入口11からガスが流入する。流入したガスは流入口11から第2開口部35、第1開口部37、第2連絡開口部31、第1連通路30を介してして負圧閉止弁7の負圧弁室38に流入する。負圧弁室38にガスが流入すると負圧弁室38の内圧が高くなり、弁バネ27の付勢力に抗してダイアフラム25の弁体部25aが負圧弁座24から離れて(
図5の矢印(2))負圧閉止弁7が開弁して、ガス配管3から供給されたガスは流出口12から燃料電池ユニット1内に流入する。燃料電池ユニット1内に流入するガスの流量は、流量センサ8、負圧ガバナ9およびポンプ10などにより所定の流量に制御される。
【0039】
次に、燃料電池ユニット1が運転中に、ガス配管3の元圧側の異常にガスの供給が停止した場合について
図11を参照して説明する。
図11は、負圧状態時の負圧閉止弁7の作動を説明する図である。
【0040】
上述のように、燃料電池ユニット1が運転中は、第1電磁弁5、第2電磁弁6および負圧閉止弁7が開弁状態となり、ポンプ10により燃料電池ユニット1内のガスが供給されている。もし、何らかの異常により運転中にガス配管3からのガスの供給が停止すると、ガス配管3からのガスの供給がないにもかかわらずポンプ10により吸気されるため、ガス配管3や電磁弁ユニット2の内圧が低下する。電磁弁ユニット2の内圧が低下すると負圧閉止弁7の負圧弁室38の内圧が低下して、
図11の矢印(1)のように、弁バネ27の付勢力によりダイアフラム25の負圧弁体部25aが負圧弁座24に着座して負圧閉止弁7が閉弁する。負圧閉止弁7が閉弁すると、燃料電池ユニット1内のガス供給が遮断されて、ポンプ10による吸気が抑止されるため、ガス配管3の過度な負圧化を抑止することができる。これにより、ガス配管3に並列に接続されている他のガス機器の負圧化も抑止し、他のガス機器への影響を抑止することができる。
【0041】
従来、何らかの異常によりガスの供給が停止した場合、圧力センサにより内圧の低下を検知し、検知した信号により制御部20にて第1電磁弁5および第2電磁弁を閉弁制御して、ポンプ10による吸気を遮断してガス配管3の過度な負圧化を抑止していた。しかしながら、圧力センサを用いた場合、ガスの供給の停止から第1電磁弁5および第2電磁弁6を閉弁制御させるまでにタイムラグが生じて、適切に負圧による不具合を抑止できないおそれがあった。本実施形態の負圧閉止弁7を採用した電磁弁ユニット2では、圧力センサを用いることなく、内圧の物理的な作用により負圧閉止弁7が閉弁してガス配管3からの流入通路を遮断できることから、ガスの供給の停止からガス配管3からの流入通路の遮断までに生じるタイムラグも抑止することができる。これにより、ガス配管3に並列に接続されている他のガス機器に対する負圧化を、より的確に抑止できる。また、本実施形態で採用した負圧閉止弁7は上記のように簡易な構成なため、比較的高価な圧力センサに比べ、製造コストを低減することができる。
【0042】
また、本実施形態の燃料電池ユニット1では、流量センサ8が設けられている。何らかの異常によりガスの供給が停止した場合、流量センサ8からの出力信号から燃料電池ユニット1へのガスの供給停止を検知し、制御部20により第1電磁弁5および第2電磁弁を閉弁制御させるとともに、ポンプ10も停止させることができる。これにより、負圧閉止弁7が仮に開弁してもガス配管3からの流入通路の遮断状態を維持することができる。このように、本発明にかかる電磁弁ユニットは、上記本実施形態の電磁弁ユニット2に流量センサを備えてもよい。
【0043】
図12は、本発明にかかる他の実施形態(その1)である電磁弁ユニット200の断面図である。電磁弁ユニット200では、上記実施形態である負圧閉止弁7の弁蓋22を変更して、弁バネ27の付勢力を調整可能にする一実施形態である負圧閉止弁50を採用したものである。
【0044】
負圧閉止弁50における弁蓋51は、弁蓋本体52と調圧ネジ53とから構成される。調圧ネジ53は円柱状に形成されており、その中心部には、大気と連通するオリフィス孔53aが設けられている。弁蓋本体52には、ダイアフラム25の上方に向けて開口する、調整ネジ53の外径と略同径である円柱形状の開口部52aが設けられ、開口部52aの内周面上部には、雌ネジ部52bが設けられている。調圧ネジ53の側面には、弁蓋本体52の雌ネジ部52bと嵌合する雄ネジ部53bが設けられている。調圧ネジ53を回転させることにより、調圧ネジ53が開口部52aに沿って移動可能になっている。そのため、調圧ネジ53の位置を調整することにより、負圧閉止弁50における弁バネ27の付勢力を調整することができる。このように、調圧ネジ53を備えた負圧閉止弁50を用いることにより、ガスの供給が停止した場合に負圧閉止弁50が閉弁する圧力の設定を容易に調整することができる。
【0045】
ここで、電磁弁ユニット2、200は電磁弁ユニットの一例であり、第1電磁弁5および第2電磁弁6は電磁弁の一例であり、負圧閉止弁7、50は負圧閉止弁の一例であり、弁体部25aは弁体の一例であり、負圧弁座24は弁座の一例であり、弁バネ27は付勢部材の一例であり、ダイアフラム部25bはダイアフラムの一例であり、流量センサ8は流量センサの一例であり、調圧ネジ53は圧力調整部の一例である。
【0046】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることが、理解されるべきである。
【0047】
例えば、上記実施形態の電磁弁ユニット2では、第1電磁弁5および第2電磁弁6の流出側に負圧閉止弁7を配置したが、負圧閉止弁7は第1電磁弁5および第2電磁弁6の流入側に配置してもよいし、第1電磁弁5と第2電磁弁6との間に配置してもよい。この場合、配置した負圧閉止弁7の作動により、第1電磁弁5或いは第2電磁弁6を含む負圧閉止弁7より手前のガス供給側の領域について過度な負圧化を抑止できるため、第1電磁弁5や第2電磁弁6についても過度な負圧化による不具合を抑止することができる。
【0048】
また、上記実施形態の電磁弁ユニット2では、第1電磁弁5と第2電磁弁6の2つの電磁弁を配置したが、電磁弁は1つでもよい。
【0049】
また、上記実施形態の電磁弁ユニット200では、調圧ネジ53を用いて、ガスの供給が停止した場合において負圧閉止弁50が閉弁する圧力を調整する構成を開示したが、負圧閉止弁が閉弁する圧力を調整する方法は、これに限定するものではない。
図13は、本発明にかかる他の実施形態(その2)である電磁弁ユニット210の断面図である。電磁弁ユニット210の負圧閉止弁60における弁蓋61は、弁蓋本体62と、調圧ボルト63と、ロックナット64とから構成される。調圧ボルト63の上端部中心には、大気と連通するオリフィス孔63aが設けられ、オリフィス孔63aの下方には背圧室39に連通する調圧ボルト開口部63aが設けられている。弁蓋本体62には、調圧ボルト63を上下方向に移動可能にする開口部62aと、調圧ボルト63が貫通する貫通開口62bが設けられている。貫通開口62bの内周面には、調圧ボルト63の側面に設けられた雄ネジ部63cと嵌合する雌ネジが設けられており、調圧ボルト63を回転することにより、弁蓋本体62に対して調圧ボルト63の位置を調整することができる。調圧ボルト63の位置を調整した後、調圧ボルト63の雄ネジ部63cと嵌合する雌ネジ部64aを設けたロックナット64により、調圧ボルト63の位置が保持される。このように、調圧ボルト63の位置を調整して、負圧閉止弁60における弁バネ65の付勢力を調整することができる。このように、調圧ボルト63を用いて負圧閉止弁60が閉弁する圧力を調整してもよい。
【0050】
さらに、
図14の本発明にかかる他の実施形態(その3)の電磁弁ユニット220に示すように、第2連絡開口部31から下方に向けて大気に連通するバイパス通路70を設けてもよい。バイパス通路70の大気側の内周面には封止ネジ71の雄ネジと嵌合する雌ネジ部72が設けれており、通常時は、バイパス通路70に封止ネジ71をねじ込んで、バイパス通路70と封止ネジ71との間に配設されたパッキン72によりシール状態が保持されるようになっている。負圧閉止弁7が閉弁している状態では、第1電磁弁5および第2電磁弁6の通過漏れ検査を実施することが難しいが、バイパス通路70を用いることにより、第1電磁弁5および第2電磁弁6の通過漏れ検査を実施することができる。
【0051】
図15は、弁蓋のオリフィス孔に背圧パイプを設けた負圧閉止弁80を備えた本発明にかかる他の実施形態(その4)の電磁弁ユニット230の断面図である。このように、弁蓋81に設けられたオリフィス孔83から突出して背圧パイプ82を設けてもよい。この場合、オリフィス孔83は大気以外に連通させることができる。
【0052】
図14に開示したバイパス通路70や
図15に開示した背圧パイプ82は、
図12に開示した電磁弁ユニット200や、
図13に開示した電磁弁ユニット210においても採用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1・・燃料電池システム
2、200、210、220、230・・電磁弁ユニット
5・・第1電磁弁
6・・第2電磁弁
7、50、60、80・・負圧閉止弁
8・・流量センサ
9・・負圧ガバナ
10・・ポンプ
13・・ボディ
21・・弁ボディ
22・・弁蓋
25・・ダイアフラム
26・・バネ座
27・・弁バネ
53・・調圧ネジ