(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】太陽光発電パネル、融雪装置および太陽光発電パネルの制御方法
(51)【国際特許分類】
H02S 40/12 20140101AFI20240105BHJP
【FI】
H02S40/12
(21)【出願番号】P 2020007801
(22)【出願日】2020-01-21
【審査請求日】2021-03-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】506142794
【氏名又は名称】MIRAI-LABO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】平塚 利男
(72)【発明者】
【氏名】平塚 雷太
【合議体】
【審判長】波多江 進
【審判官】松川 直樹
【審判官】吉野 三寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-332610(JP,A)
【文献】特開2001-53326(JP,A)
【文献】特開2004-363381(JP,A)
【文献】特表2001-500993(JP,A)
【文献】特開平11-054781(JP,A)
【文献】登録実用新案第3218018(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2002/0053220(US,A1)
【文献】中国実用新案第207003180(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L31/04-31/056
H02S40/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面上に敷設される融雪装置であって、
光入射面に照射された光を電力に変換する光発電モジュールと、
前記光を透過し、一面に前記光発電モジュールが貼り付けられる透光性支持部材と、
電気エネルギーを熱エネルギーに変換する加熱モジュールと、
前記光発電モジュールの温度Tを測定するとともに、前記温度Tに基づいて前記加熱モジュールを制御する加熱制御部とを備え、
前記透光性支持部材は、前記光発電モジュールの前記光入射面側に配置され、
前記加熱モジュールは、前記光発電モジュールの前記光入射面とは反対側に配置され、
前記加熱制御部は、前記温度Tが20℃未満で前記加熱モジュールによる加熱を開始し、30℃以上で前記加熱モジュールによる加熱を停止することを特徴とする融雪装置。
【請求項2】
請求項1に記載の融雪装置であって、
前記透光性支持部材の他面上に形成され、前記光を透過する表面被覆層を備え、
前記表面被覆層は、前記光を散乱する微粒子が少なくとも表面に露出していることを特徴とする融雪装置。
【請求項3】
請求項2に記載の融雪装置であって、
前記透光性支持部材はポリカーボネートからなることを特徴とする融雪装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の融雪装置であって、
前記光発電モジュールは、可撓性を有しアモルファスシリコンからなる発電セルを備えることを特徴とする融雪装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一つに記載の融雪装置であって、
前記加熱モジュールの前記光発電モジュールとは反対側に設けられた断熱材層を備えることを特徴とする融雪装置。
【請求項6】
請求項5に記載の融雪装置であって、
前記加熱モジュールと前記断熱材層は別体で構成され、前記断熱材層は交換可能とされていることを特徴とする融雪装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一つに記載の融雪装置であって、
前記光発電モジュールで発電した電力を二次電池に供給して充電し、
前記加熱モジュールは、前記二次電池から供給される電流で駆動されることを特徴とする融雪装置。
【請求項8】
路面上に敷設される融雪装置の制御方法であって、
前記融雪装置は、光を透過する透光性支持部材の一面に光発電モジュールが貼り付けられ、
前記透光性支持部材は、前記光発電モジュールの光入射面側に配置され、
前記光発電モジュールで
前記光入射面に照射された前記光を電力に変換し、
前記光発電モジュールの前記光入射面とは反対側に配置された加熱モジュールで電気エネルギーを熱エネルギーに変換して、
前記光発電モジュールの温度Tを測定し、
前記温度Tが20℃未満で前記加熱モジュールによる加熱を開始し、30℃以上で前記加熱モジュールによる加熱を停止することを特徴とする融雪装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電パネル、融雪装置および太陽光発電パネルの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年になって、火力発電や原子力発電とは異なり再生可能エネルギーを用いた発電が重要視されるようになってきた。再生可能エネルギーの中でも、太陽光発電はソーラーパネルの大量生産が可能であり、太陽光が照射され得る地上の至る所で発電可能なために有望視されている。また、世界各国の政府による導入政策も実施され、大規模な太陽光発電施設も運用されて総発電量も増加し、長期間の運用にも耐えうる実績を上げている。
【0003】
電力を売却することを目的とした太陽光発電施設は、広い面積に大量のソーラーパネルを設置する必要があるため、山林や空き地などの広大な敷地を確保する必要がある。一方、小規模な発電設備であっても、ある一定以上の日照面積を確保する必要があるため、住宅やビルの屋上に設置されることが多い。しかし建築物の向きや形状などの状況によっては、屋上にソーラーパネルを設置することが困難なことや、必要な発電量が得られない場合もある。
【0004】
そこで、設置面積を確保するために、道路の路面上にソーラーパネルを配置することも提案されている。例えば特許文献1には、内部に空洞を設け内部に太陽電池を弾性体で保持した道路敷設用タイルが記載されている。また特許文献2には、可撓性基板の表面に可撓性を有する太陽電池セルを貼りつけて太陽電池モジュールを構成し、路面上に接着剤で太陽電池モジュールを貼り付けることが記載されている。しかし特許文献1,2の従来技術では、耐荷重性能や大面積化、長期信頼性に課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-118279号公報
【文献】特開2013-038228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、太陽光発電パネルを用いた発電では、路面での発電に限らず発電量が天候に左右されやすく、特に積雪時には太陽光発電パネルの表面が雪で覆われて発電が不可能になるという問題があった。特に、太陽光発電パネルを屋根や山間部などに設置している場合には、太陽光発電パネル上に積もった雪を除去する作業は困難であるため、実質的に冬季の発電継続が保証されないことになる。
【0007】
また、路面上に太陽光発電パネルを敷設した場合にも、同様に発電の継続が困難になるうえに、車両や歩行者が通行するために除雪作業を行う際に、太陽光発電パネルの表面を除雪器具によって損傷するリスクが高くなるという問題もあった。
【0008】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、冬季の積雪時にも発電を継続することが可能な太陽光発電パネル、融雪装置および太陽光発電パネルの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の融雪装置は、路面上に敷設される融雪装置であって、光入射面に照射された光を電力に変換する光発電モジュールと、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する加熱モジュールと、前記光発電モジュールの温度Tに基づいて前記加熱モジュールを制御する加熱制御部とを備え、前記加熱モジュールは、前記光発電モジュールの前記光入射面とは反対側に配置され、前記加熱制御部は、前記温度Tが20℃未満で前記加熱モジュールによる加熱を開始し、30℃以上で前記加熱モジュールによる加熱を停止することを特徴とする。
【0010】
このような本発明の融雪装置では、太陽光発電パネルの表面温度が氷点下にならないように加熱モジュールで加熱を行い、表面に付着した雪を溶かすことができるため、冬季の積雪時にも発電を継続することが可能となる。
【0011】
また本発明の一態様では、前記光を透過し、一面に前記光発電モジュールが貼り付けられる透光性支持部材と、前記透光性支持部材の他面上に形成され、前記光を透過する表面被覆層を備え、前記表面被覆層は、前記光を散乱する微粒子が少なくとも表面に露出している。
【0012】
また本発明の一態様では、前記透光性支持部材はポリカーボネートからなる。
【0013】
また本発明の一態様では、前記光発電モジュールは、可撓性を有しアモルファスシリコンからなる発電セルを備える。
【0014】
また本発明の一態様では、前記加熱モジュールの前記光発電モジュールとは反対側に設けられた断熱材層を備える。
【0015】
また本発明の一態様では、前記加熱モジュールと前記断熱材層は別体で構成され、前記断熱材層は交換可能とされている。
【0016】
また本発明の一態様では、前記光発電モジュールで発電した電力を二次電池に供給して充電し、前記加熱モジュールは、前記二次電池から供給される電流で駆動される。
【0017】
また本発明の融雪装置は、上記何れか一つの太陽光発電パネルを用いることを特徴とする。
【0018】
また本発明の融雪装置の制御方法は、路面上に敷設される融雪装置の制御方法であって、光発電モジュールで光入射面に照射された光を電力に変換し、前記光発電モジュールの前記光入射面とは反対側に配置された加熱モジュールで電気エネルギーを熱エネルギーに変換して、前記光発電モジュールの温度Tが20℃未満で前記加熱モジュールによる加熱を開始し、30℃以上で前記加熱モジュールによる加熱を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、冬季の積雪時にも発電を継続することが可能な太陽光発電パネル、融雪装置および太陽光発電パネルの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る太陽光発電パネル10の構造例を示す模式断面図である。
【
図2】
図2(a)は加熱モジュール13の構造例を示す模式断面図であり、
図2(b)は光発電モジュール15の構造例を示す模式断面図であり、
図2(c)は表面保護層18の構造例を示す模式断面図である。
【
図3】加熱モジュール13の構造例を示す図であり、
図3(a)は平面図であり、
図3(b)は側面図である。
【
図4】光発電モジュール15の構造例を示す図であり、
図4(a)は平面図であり、
図4(b)は側面図である。
【
図5】太陽光発電パネル10に含まれる電気回路の一例を示す図であり、
図5(a)は光発電モジュール15を含む回路図であり、
図5(b)は加熱モジュール13を含む回路図である。
【
図6】太陽光発電パネル10の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】太陽光発電パネル10およびそれを用いた融雪装置の利用例を模式的に示す図であり、
図7(a)は車両が走行する路面上に配置した例を示し、
図7(b)は歩行者が通行する歩道面上に配置した例を示し、
図7(c)は建造物の屋根に配置した例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る太陽光発電パネル10の構造例を示す模式断面図である。
図2(a)は加熱モジュール13の構造例を示す模式断面図であり、
図2(b)は光発電モジュール15の構造例を示す模式断面図であり、
図2(c)は表面保護層18の構造例を示す模式断面図である。
【0022】
図1に示すように、太陽光発電パネル10は、断熱材層11上に、接着剤層12と、加熱モジュール13と、接着剤層14と、光発電モジュール15と、接着剤層16と、透光性支持部材17と、表面保護層18が積層された構造を有している。以下の説明において、透光性とは全ての波長範囲の光を透過することを意味せず、発電に必要な光の波長を良好に透過することを意味している。例えば、可視光の一部を遮り着色されたように視認されるが、赤外光や赤色光を良好に透過するようなものであってもよい。
【0023】
断熱材層11は、熱伝導率の低い材料で構成された層であり、加熱モジュール13で発生した熱が太陽光発電パネル10の裏面側から放熱されることを抑制する。断熱材層11を構成する材料は限定されないが、軽量で耐久性が高いものが好ましく、例えばグラスウールやウレタンフォームなどの繊維系断熱材や発泡プラスチック系断熱材等を用いることができる。断熱材層11の厚みは、加熱モジュール13の熱を良好に遮るとともに、歩行者や車両の通行に耐えうるように、10mm以上の厚みを有することが好ましい。
【0024】
接着剤層12は、断熱材層11の表面上に塗布された接着剤の層であり、加熱モジュール13を断熱材層11上に固定するための部材である。接着剤層12を構成する材料としては、電気的絶縁性を有し施工が容易な樹脂製材料を用いることが好ましく、例えばエポキシ樹脂を用いることができる。接着剤層12の厚みは、断熱材層11と加熱モジュール13を強固に接着して機械的強度を確保する必要があるため、1μm~10mmの範囲が好ましく、より好ましくは5μm~5mmの範囲である。
【0025】
加熱モジュール13は、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する部分であり、接着剤層12により断熱材層11の上面に固定される。また、加熱モジュール13は外部から電流が供給される電気配線を備えており(図示省略)、外部から供給された電流が電気抵抗によって消費されて加熱モジュール13が発熱する。加熱モジュール13の構造は限定されないが、太陽光発電パネル10を路面等に敷設して、車両や歩行者が太陽光発電パネル10上を通行する場合には、可撓性を有する材料と構造を用いることが好ましい。
【0026】
可撓性を有する加熱モジュール13の構造としては、例えば
図2(a)に模式断面図で示すように、発熱層13aの両面を封止材13b,13cで被覆したものが挙げられる。発熱層13aは、電気抵抗値が高い材料で構成されており、例えばカーボンナノファイバーやニッケルクロム系材料、鉄クロム系材料などを用いることができる。封止材13b,13cは電気的絶縁性を有し、発熱層13aの表裏面および側面を封止して発熱層13aへの水分や空気の侵入を防止する部材である。封止材13b,13cを構成する材料としては、例えばシリコーン樹脂やエポキシ樹脂を用いることができる。発熱層13aは、加熱モジュール13の略全域にわたってシート状に形成されることが好ましいが、網目状に形成するとしてもよい。
【0027】
接着剤層14は、加熱モジュール13の表面上に塗布された接着剤の層であり、光発電モジュール15を加熱モジュール13上に固定するための部材である。接着剤層14を構成する材料としては、電気的絶縁性を有し施工が容易な樹脂製材料を用いることが好ましく、例えばエポキシ樹脂を用いることができる。接着剤層14の厚みは、加熱モジュール13と光発電モジュール15を強固に接着して機械的強度を確保する必要があるため、1μm~10mmの範囲が好ましく、より好ましくは5μm~5mmの範囲である。
【0028】
光発電モジュール15は、光入射面と裏面を有して光入射面側に入射した光を電気エネルギーに変換する部材であり、裏面側が接着剤層12により加熱モジュール13に固定される。また、光発電モジュール15は発電により生じた電流を外部に取り出す電気配線を備えており(図示省略)、電気配線は太陽光発電パネル10の外部にまで延長されている。光発電モジュール15の構造は限定されないが、太陽光発電パネル10を路面等に敷設して、車両や歩行者が太陽光発電パネル10上を通行する場合には、可撓性を有する材料と構造を用いることが好ましい。
【0029】
可撓性を有する光発電モジュール15の構造としては、例えば
図2(b)に模式断面図で示すように、発電セル15aの両面を封止材15b,15cで被覆したものが挙げられる。発電セル15aは、光を電気に変換する半導体材料と配線層により構成された部材であり、複数領域に形成された半導体材料を配線層で直列および/または並列に接続した構造を有している。発電セル15aの具体的な材料は限定されず、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、微結晶シリコン、ペロブスカイト結晶、化合物半導体、有機半導体等を用いることができる。また、発電セル15aの構造として、多接合型(タンデム型)や量子ドット型等の構造を用いてもよい。封止材15b,15cは、透光性と電気的絶縁性を有し、発電セル15aの表裏面および側面を封止して発電セル15aへの水分や空気の侵入を防止する部材である。封止材15b,15cを構成する材料としては、例えばシリコーン樹脂やエポキシ樹脂を用いることができる。光発電モジュール15に可撓性をもたせるためには、発電セル15aとしてアモルファスシリコンを用い、封止材15b,15cとしてシリコーン樹脂を用いることが好ましい。
【0030】
接着剤層16は、光発電モジュール15の光入射面上に塗布された接着剤の層であり、光発電モジュール15と透光性支持部材17を接着するための部材である。接着剤層16を構成する材料としては、光を透過し電気的絶縁性を有するものであれば特に限定されず、例えばエポキシ樹脂を用いることができる。接着剤層16の厚みは、光発電モジュール15と透光性支持部材17を強固に接着して機械的強度を確保する必要があるため、1μm~10mmの範囲が好ましく、より好ましくは5μm~5mmの範囲である。
【0031】
透光性支持部材17は、透光性を有する略平板状の部材であり、裏面側が接着剤層16により光発電モジュール15の光入射面に固定され、光発電モジュール15を支持して剛性を確保する。透光性支持部材17を構成する材料は限定されず、公知の樹脂やガラスを用いることができ、エポキシ樹脂やアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。太陽光発電パネル10を路面等に敷設して、車両や歩行者が太陽光発電パネル10上を通行する場合には、耐候性や耐久性、耐衝撃性の観点から透光性支持部材17としてポリカーボネート樹脂を用いることが好ましい。また、透光性支持部材17の厚みは、機械的強度を確保するために0.5~10mm程度の厚みを有することが好ましく、1~8mm程度の厚みを有することがさらに好ましい。
【0032】
表面保護層18は、透光性支持部材17の表面側に形成された透光性を有する層であり、太陽光発電パネル10の最表面で光入射面を構成する層である。表面保護層18は、
図2(c)に示すように母材樹脂18aに微粒子18bが混入された構造を有しており、微粒子18bの少なくとも一部は母材樹脂18aの表面に露出されている。母材樹脂18aを構成する材料としては、透光性、耐久性、耐候性、耐油性が良好なものが好ましく、例えばエポキシ樹脂を用いることができる。微粒子18bは、光を散乱する材料と粒径で構成されており、公知のガラスやセラミック等を用いることができる。表面保護層18に微粒子18bが含まれており、少なくとも一部が母材樹脂18aの表面に露出されているため、太陽光発電パネル10を道路上に敷設して車両や歩行者が通行する場合には適切な摩擦係数を実現することができる。
【0033】
図1では、加熱モジュール13、光発電モジュール15および接着剤層14,16が同じ面積で形成された例を示しているが、加熱モジュール13と光発電モジュール15の面積を断熱材層11よりも小さくし、光発電モジュール15の側面を含む周縁部を接着剤層14,16で覆うとしてもよい。光発電モジュール15の側面部を接着剤層14,16で覆うことで、太陽光発電パネル10全体の接着をより強固にすることができ、光発電モジュール15を密封して水分の侵入を防止することもできる。
【0034】
図3は、加熱モジュール13の構造例を示す図であり、
図3(a)は平面図であり、
図3(b)は側面図である。
図3(a)に示すように、加熱モジュール13は2つの領域に分離して形成されており、それぞれの領域において発熱層13a、封止材13b,13c、端子部13d、電気配線13e、加熱制御部13fを備えている。
図3(a)において端子部13dから伸びる一点鎖線は、封止材13b,13c内に形成された配線層を示している。
図3(a)では2つの領域に分離された加熱モジュール13の例を示したが、大面積の1つの領域で構成してもよく、さらに多数の領域に分離されていてもよい。
【0035】
端子部13dは、外部から接続された電気配線13eが接続されるとともに、配線層と電気的に接続され、配線層を介して発熱層13aに電流を供給する。
図3で示した例では、端子部13dも封止材13b,13c内に収容されている。電気配線13eは、端子部13dに電気的に接続されるとともに、封止材13b,13cの外側に引き出されて、太陽光発電パネル10の外部にまで延伸されている。電気配線13eの端子部13dとは反対側の端部は、太陽光発電パネル10の外部に設けられた二次電池や負荷に接続されている。
【0036】
加熱制御部13fは、加熱モジュール13上に配置されて光発電モジュール15の温度Tを測定するとともに、測定した温度Tに基づいて加熱モジュール13を制御する部分である。加熱制御部13fは、図示しない配線層等によって発熱層13aや電気配線13eと電気的に接続されており、加熱モジュール13の電気回路に含まれている。加熱制御部13fの例としては、サーモスタットや温度センサを加熱モジュール13と光発電モジュール15の間に配置したものが挙げられる。
【0037】
図4は、光発電モジュール15の構造例を示す図であり、
図4(a)は平面図であり、
図4(b)は側面図である。
図4(a)に示すように、光発電モジュール15は、発電セル15aと、封止材15b,15cと、端子部15dと、電気配線15eを備えている。端子部15dには電気配線15eが接続されており、発電セル15aと端子部15dとは図示しない配線層で電気的に接続されている。
図4(a)では、端子部15dを光発電モジュール15の中央に配置した例を示しているが、端子部15dを縁部近傍に配置するとしてもよい。
【0038】
図5は、太陽光発電パネル10に含まれる電気回路の一例を示す図であり、
図5(a)は光発電モジュール15を含む回路図であり、
図5(b)は加熱モジュール13を含む回路図である。光発電モジュール15では、発電セル15aは逆流防止ダイオード15fおよび外部に設けられた二次電池Bに接続されている。加熱モジュール13では、発熱層13aは端子部13dを介して外部に接続されており、端子部13dと発熱層13aの間には加熱制御部13fとしてサーモスタットが接続されている。加熱モジュール13の端子部13dは、電気配線13eによって外部回路に接続されており、外部から電流が供給される。加熱モジュール13に電流を供給する電源としては、光発電モジュール15によって発電した電力を貯蔵する二次電池Bを用いることが好ましい。二次電池Bの材料や構造は限定されないが、例えばリチウムイオン電池や全固体電池等を用いることができる。
【0039】
図5(b)では加熱モジュール13としてサーモスタットを用いた例を示したが、温度センサとマイクロコンピュータを用いて、予め設定した温度範囲で加熱モジュール13に供給される電流値を制御するとしてもよい。また、加熱モジュール13への電流制御として、単純なオン/オフの切り替えではなく、電流値のPWM(Pulth Width Modulation)制御で間欠的に電流を供給するとしてもよい。また、回路中に電流の通電と遮断を切り替えるスイッチを接続しておき、積雪の可能性が低い場合には加熱モジュール13による発熱を強制的にオフにする構成としてもよい。
【0040】
本実施形態の太陽光発電パネル10では、表面保護層18に入射した光は微粒子18bで一部が散乱されながら母材樹脂18a、透光性支持部材17、接着剤層16を透過して光発電モジュール15に入射する。光発電モジュール15では、入射した光を電気エネルギーに変換して、電気配線15eを介して外部に電力を供給する。太陽光発電パネル10の外部には、公知の二次電池Bが設けられており太陽光発電パネル10で発電された電力は二次電池Bに貯蔵される。二次電池Bは、出力部に外部回路等を接続され、外部回路に対して電力を供給して駆動することができる。
【0041】
また、二次電池Bの出力部に加熱モジュール13を接続することで、光発電モジュール15で発電した電力を一時的に二次電池Bに貯蔵しておき、二次電池Bに蓄えられた電力を消費して加熱モジュール13を駆動することができる。
図5(b)に示した例では、加熱制御部13fとしてサーモスタットを用いており、予め定めた閾値温度で発熱層13aへの電流供給がオン/オフ制御される。一例としては、光発電モジュール15の温度Tが20℃未満でオン制御して発熱層13aに電流を供給して加熱を行い、30℃以上ではオフ制御して発熱層13aへの電流を停止する。
【0042】
加熱制御部13fによる電流制御によって、光発電モジュール15の温度を20℃~30℃の範囲に保つことで、外気温が氷点下まで下がった環境においても、表面保護層18の表面温度を5℃~10℃程度に保つことができる。したがって、表面保護層18上に降雪があっても表面保護層18の温度によって融雪でき、太陽光発電パネル10上への着雪や積雪、凍結を防止することができる。これにより、太陽光発電パネル10への光入射が継続されるため、光発電モジュール15による発電および二次電池Bの充電が継続される。
【0043】
また、加熱制御部13fによる加熱モジュール13の駆動制御で光発電モジュール15の温度が20℃~30℃の範囲に保たれていることで、発電セル15aの温度も20℃~30℃の範囲に保たれ、加熱のしすぎによる温度上昇を抑制できる。これにより、発電セル15aの温度変化に伴う発電効率低下を抑制して、光発電モジュール15での発電を安定化することができる。また、外気温の上昇や発電時の発熱、太陽光照射等によって光発電モジュール15の温度が上昇した場合には、加熱モジュール13への電流供給が停止されるため、二次電池Bに貯蔵された電力消費を抑制することができる。
【0044】
また、加熱モジュール13の光発電モジュール15とは反対側には、断熱材層11が配置されているため、加熱モジュール13や光発電モジュール15で生じた熱が太陽光発電パネル10の裏面側から放熱することを抑制することができる。これにより、光発電モジュール15と表面保護層18の温度制御によって加熱モジュール13で消費されるエネルギーを抑制して、二次電池Bに貯蔵された電力消費を抑制することができる。
【0045】
また、二次電池Bを太陽光発電パネル10の近傍に配置することで、二次電池Bを独立電源として用いることも可能である。これにより、商用の電線が敷設されていない領域や遠隔地、定期メンテナンスが困難な地域等においても太陽光発電と電力の供給を継続することが可能となる。また、二次電池Bを交換可能としておくことで、二次電池Bの充電が完了した場合には未充電の二次電池Bと入れ替えて貯蔵可能な電力総量を増加させることもできる。また、別地域で商用電源等を用いて別途充電した二次電池Bに入れ替えて、加熱モジュール13による融雪機能を継続させることもできる。ここで、二次電池Bの配置位置は、太陽光発電パネル10の近傍における地中に埋設するとしてもよい。
【0046】
上述したように、本実施形態の太陽光発電パネル10では、光入射面に照射された光を電力に変換する光発電モジュール15と、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する加熱モジュール13を備え、加熱モジュール13は光発電モジュール15の光入射面とは反対側に配置されている。これにより、太陽光発電パネル10の表面温度が氷点下にならないように加熱モジュール13で加熱を行い、表面に付着した雪を溶かすことができるため、冬季の積雪時にも発電を継続することが可能となる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。第1実施形態では、加熱制御部13fとしてサーモスタットを用いたが、本実施形態では、温度センサとマイクロコンピュータを組み合わせて加熱制御部13fを構成した例について説明する。マイクロコンピュータは、予め記録媒体に記録されたプログラムによって動作し、温度センサが取得した温度Tの情報に基づいて、加熱モジュール13および光発電モジュール15の駆動を制御する。
【0048】
図6は、太陽光発電パネル10の制御方法の一例を示すフローチャートである。はじめにステップS1では、加熱制御部13fは温度センサを用いて光発電モジュール15の温度Tを測定して、マイクロコンピュータに温度情報を伝達する。次にステップS2では、マイクロコンピュータはプログラムにしたがって温度Tに基づいて加熱モジュール13の加熱方針を決定する。
【0049】
次にステップS3では、前のステップS2で決定された加熱方針に従って、加熱モジュール13の駆動が制御される。一例としては、光発電モジュール15の温度Tが20℃未満でオン制御して発熱層13aに電流を供給して加熱を行い、30℃以上ではオフ制御して発熱層13aへの電流を停止する。他の例としては、光発電モジュール15の温度Tが25℃となるように発熱層13aへの電流供給をフィードバック制御する。次に、ステップS4では、光発電モジュール15で発電した電力を二次電池Bに充電する動作を決定して充電制御を行う。その後、再びステップS1に戻り同様の制御を繰り返す。
【0050】
本実施形態の太陽光発電パネル10でも、太陽光発電パネル10の表面温度が氷点下にならないように加熱モジュール13で加熱を行い、表面に付着した雪を溶かすことができるため、冬季の積雪時にも発電を継続することが可能となる。加熱制御部13fとして温度センサとマイクロコンピュータの組み合わせを用いることで、より詳細に光発電モジュール15と表面保護層18の温度調整をすることができ、効率的な融雪と二次電池Bの電力消費抑制を図ることが可能となる。
【0051】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。第1実施形態では、断熱材層11と加熱モジュール13を接着剤層12で固定した例を示したが、断熱材層11と加熱モジュール13との間の接着剤層12を省略して、断熱材層11を太陽光発電パネル10と別体としてもよい。
【0052】
断熱材層11は、比較的柔らかい材料や構造を有しているため、その上に配置された加熱モジュール13、光発電モジュール15、透光性支持部材17および表面保護層18の荷重が加わることで劣化が進みやすく、断熱効果が低下する傾向にある。特に、太陽光発電パネル10を道路や歩道に配置して、車両や歩行者が通行する場合には機械的な負荷がかかりやすく、劣化が進行しやすい。したがって、断熱材層11を太陽光発電パネル10とは別体とすることで、劣化した断熱材層11のみを交換することができ、加熱モジュール13からの放熱防止効果を維持することができる。ここで、本実施形態のように断熱材層11を太陽光発電パネル10とは別体として、断熱材層11上に加熱モジュール13を載置するだけでも、断熱材層11による断熱の効果は十分に得られる。
【0053】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図7は、太陽光発電パネル10およびそれを用いた融雪装置の利用例を模式的に示す図であり、
図7(a)は車両が走行する路面上に配置した例を示し、
図7(b)は歩行者が通行する歩道面上に配置した例を示し、
図7(c)は建造物の屋根に配置した例を示している。
図7では、間隔を空けて複数の太陽光発電パネル10を配置した例を示しているが、複数の太陽光発電パネル10を隣接させて配置するとしてもよい。
【0054】
本発明の太陽光発電パネル10およびそれを用いた融雪装置では、
図7(a)に示したように車道20上に太陽光発電パネル10を配置し、太陽光発電パネル10上を車両30が走行することも可能である。また、
図7(b)に示したように歩道40上に太陽光発電パネル10を配置し、太陽光発電パネル10上を歩行者50が通行することも可能である。
【0055】
上述したように加熱モジュール13と光発電モジュール15として可撓性を有する構造を用いることで、太陽光発電パネル10上を車両30や歩行者50が通行しても、光発電モジュール15が破損せず発電を継続することができる。また、表面保護層18には微粒子18bが混入されており、微粒子18bの少なくとも一部は母材樹脂18aの表面に露出されているため、適切な摩擦係数を確保してスリップを防止することができる。
【0056】
また、加熱モジュール13で光発電モジュール15を加熱することで、太陽光発電パネル10は融雪装置としても機能するため、太陽光発電パネル10を配置した領域への積雪を防止して発電を継続することができる。また、二次電池Bへの充電と二次電池Bからの電力供給による発熱を利用することで、独立電源により融雪装置を継続使用することもでき、遠隔地や山間部、橋梁上、駅のホームなど、除雪作業に要する労力を低減するとともに、積雪や着氷を防止して通行の安全性を高めることもできる。
【0057】
また、
図7(c)に示したように、建造物の屋根60上に太陽光発電パネル10を配置することも可能である。この場合にも、加熱モジュール13を用いて太陽光発電パネル10上への積雪を防止して発電を継続することができる。これにより、屋根の雪下ろし作業を行わずとも発電を継続することができ、雪下ろし作業を軽減することもできる。また、豪雪地帯のように冬季の太陽光発電が困難な地域においても、本発明の太陽光発電パネル10では発電を継続することが可能である。
【0058】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
10…太陽光発電パネル
11…断熱材層
12,14,16…接着剤層
13…加熱モジュール
13a…発熱層
13b,13c,15b,15c…封止材
13d,15d…端子部
13e,15e…電気配線
13f…加熱制御部
15…光発電モジュール
15a…発電セル
15f…逆流防止ダイオード
17…透光性支持部材
18…表面保護層
18a…母材樹脂
18b…微粒子
20…車道
30…車両
40…歩道
50…歩行者
60…屋根