(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】圧電素子駆動式バルブ、圧力式流量制御装置及び気化供給装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/02 20060101AFI20240105BHJP
G05D 7/06 20060101ALI20240105BHJP
H02N 2/04 20060101ALN20240105BHJP
【FI】
F16K31/02 A
G05D7/06 Z
H02N2/04
(21)【出願番号】P 2020013150
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】土肥 亮介
(72)【発明者】
【氏名】平田 薫
(72)【発明者】
【氏名】杉田 勝幸
(72)【発明者】
【氏名】川田 幸司
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
(72)【発明者】
【氏名】池田 信一
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-50645(JP,A)
【文献】特開平08-116102(JP,A)
【文献】国際公開第2019/021949(WO,A1)
【文献】米国特許第6265810(US,B1)
【文献】特表2009-540779(JP,A)
【文献】特開2003-97418(JP,A)
【文献】特開2018-153077(JP,A)
【文献】特開昭60-113673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00-31/05
G05D 7/00- 7/06
H02N 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路及び弁座を有する本体と、前記弁座に当離座して前記流体通路を開閉する弁体と、圧電素子の伸長を利用して前記弁体を開閉駆動する圧電アクチュエータと、を備えた圧電素子駆動式バルブであって、
前記本体に設けられ、直列状に配置された複数の筒状のアクチュエータボックスと、
隣接する前記アクチュエータボックス間に設けられ、隣接する前記アクチュエータボックスを着脱自在に連結すると共に、配線を引き出せる開口部を有する筒状の外側接続治具と、
前記各アクチュエータボックス内にそれぞれ同じ向きで収容され、先端部が前記弁体側を向くと共に、端子を設けた基端部が前記先端部と反対側を向く直列状に配置された複数の圧電アクチュエータと、
前記外側接続治具内に摺動自在に収容され、隣接する前記圧電アクチュエータの基端部と先端部を位置決めすると共に、配線を引き出せる開口部を有する筒状の内側接続治具と、
を備えていることを特徴とする圧電素子駆動式バルブ。
【請求項2】
前記内側接続治具は、複数本のOリングを介して前記外側接続治具の内周面に摺動自在に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電素子駆動式バルブ。
【請求項3】
前記内側接続治具の外周面
及び前記外側接続治具の内周面の少なくとも何れか一方に、前記Oリングが嵌め込まれる複数の環状のOリング溝を形成し、前記各Oリング溝に前記Oリング
がそれぞれ嵌め込
まれていることを特徴とする請求項2に記載の圧電素子駆動式バルブ。
【請求項4】
前記外側接続治具は、その両端部が隣接する前記アクチュエータボックスの端部に着脱自在にねじ込まれると共に、その外周面にスパナが係合される平行な係合面を備えていることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の圧電素子駆動式バルブ。
【請求項5】
前記外側接続治具は、配線を引き出せる開口部を円周方向に複数有していることを特徴する請求項1に記載の圧電素子駆動式バルブ。
【請求項6】
前記内側接続治具は、配線を引き出せる開口部を円周方向に複数有していることを特徴する請求項1に記載の圧電素子駆動式バルブ。
【請求項7】
前記内側接続治具は、その一端部が閉塞されており、閉塞された外側端面の中心部に圧電アクチュエータの先端部に設けた半球状の変位部が位置決めされた状態で嵌合される円錐状の受け溝を有することを特徴する請求項1に記載の圧電素子駆動式バルブ。
【請求項8】
複数の前記圧電アクチュエータに対して、並列状に配線を接続することで、複数の前記圧電アクチュエータを同一の印加電圧で駆動させることを特徴とする請求項1に記載の圧電素子駆動式バルブ。
【請求項9】
前記請求項1~8の何れかに記載の圧電素子駆動式バルブと、前記圧電素子駆動式バルブの下流側に設けた絞り部と、前記圧電素子駆動式バルブと前記絞り部の間の流体通路の圧力を測定する圧力センサとを備え、前記圧力センサからの検出圧力に基づいて流量を制御することを特徴とする圧力式流量制御装置。
【請求項10】
前記請求項9に記載の圧力式流量制御装置と、前記圧力式流量制御装置の上流側にあって液体原料を気化する気化器と、前記気化器に気化対象となる液体原料を供給する供給手段とを備え、前記供給手段で前記気化器内に前記液体原料を供給し、前記気化器で気化した気体を前記圧力式流量制御装置で下流に流量を制御しながら供給することを特徴とする気化供給装置。
【請求項11】
前記供給手段として、前記気化器へ液体原料を供給することを制御する制御弁を有することを特徴とする請求項10に記載の気化供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造設備や化学プラント等において用いられ、流体の流量制御を行う圧電素子駆動式バルブ、圧力式流量制御装置及び気化供給装置の改良に係り、特に、圧電アクチュエータを直列状に配置して弁体のストロークを大きくして大きい流量が得られるようにした圧電素子駆動式バルブ、該圧電素子駆動式バルブを備えた圧力式流量制御装置及び該圧力式流量制御装置を備えた気化供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体製造設備や化学プラント等においては、材料ガスやエッチングガスの流量を制御するために、種々のタイプの流量制御装置が用いられている。例えば、流量制御装置には、圧電素子駆動式バルブと絞り部(オリフィスプレートや臨界ノズル、音速ノズル)とを組み合わせた比較的簡単な機構によって各種流体の質量流量を高精度で制御することができる圧力式流量制御装置がある(例えば、特許文献1~5参照)。
【0003】
また、有機金属気相成長法により成膜を行う半導体製造設備においては、プロセスチャンバに原料ガスを供給するために気化供給装置が用いられている。例えば、気化供給装置には、液体原料を加熱して気化させる気化部と気化部から送出されたガスの流量を制御する圧力式流量制御装置とを備えた気化供給装置がある(例えば、特許文献6~8参照)。
【0004】
圧力式流量制御装置に用いる圧電素子駆動式バルブには、圧電アクチュエータによって金属製のダイヤフラム弁体を開閉させるように構成されたものが知られている(例えば、特許文献1~5参照)。
【0005】
前記圧電素子駆動式バルブに用いる圧電アクチュエータは、金属製の円筒状のケーシング内に積層型の圧電素子を密封状に収容したものであり、推力が大きくて応答性やコントロール特性に優れている反面、圧電素子の変位量が非常に小さく、ストロークを大きくできないという問題がある。そのため、前記圧電素子駆動式バルブを備えた圧力式流量制御装置や該圧力式流量制御装置を備えた気化供給装置においては、大きい流量が得られないという問題がある。
【0006】
尚、圧電アクチュエータを長くすれば、ストロークを大きくすることができるが、圧電素子を積層するタイプの圧電アクチュエータにおいては、圧電素子を長尺化すると、圧電素子全体が反ったりすることがあり、精度の良い長尺状の圧電アクチュエータを作製することができないという問題がある。また、圧電素子を長尺化すると、横方向(軸線に直交する方向)からの外力に対して弱くなり、横方向からの衝撃により圧電素子が破損し易いという問題がある。更に、圧電素子の開発や耐久試験等が大変になるという問題が発生する。
【0007】
一方、圧力式流量制御装置に用いる圧電素子駆動式バルブにおいては、二つの圧電アクチュエータを直列状に配置することによって、弁体のストロークを大きくして大きい流量が得られるようにした圧電素子駆動式バルブが開発されている(例えば、特許文献9参照)。
【0008】
即ち、前記圧電素子駆動式バルブ50は、
図12に示す如く、半導体製造装置等の流体供給ラインに介設される圧力式流量制御装置に組み込まれており、流体通路51a及び弁座51bを有する本体51と、金属ダイヤフラム製の弁体52と、押えアダプター53と、割りベース54と、ベース押え55と、アクチュエータボックス56(第1筒部56A、第2筒部56B及び筒状の連結体56Cから成る)と、ダイヤフラム押え57と、弾性体58と、下部受台59と、上下二段の二つの圧電アクチュエータ60,60と、筒状のスペーサ61と、上部受台62と、スラストベアリング63と、調整用袋ナット64と、ロックナット65等を備えており、電圧の印加によって二つの圧電アクチュエータ
60,
60が伸長すると、アクチュエータボックス56がベース押え55に支持された状態で弾性体58の弾性力に抗して上昇し、これに伴って弁体
52がその弾性力により弁座51bから離座して流体通路51aを開放し、また、二つの圧電アクチュエータ60,60への印加電圧を解除すると、二つの圧電アクチュエータ60,60が伸長状態から元の長さ寸法に復帰すると共に、アクチュエータボックス56が弾性体58の弾性力により押し下げられ、これに伴って弁体
52がダイヤフラム押え57により下方へ押圧されて弁座51bへ当座して流体通路51aを閉鎖するノーマルクローズ型の圧電素子駆動式バルブ50に構成されている。
【0009】
尚、
図12において、66は入口側ブロック、66aは入口側流体通路、67は出口側ブロック、67aは出口側流体通路、68はガスケット、69はオリフィス、70は圧力センサである。
【0010】
前記圧電素子駆動式バルブ50は、二つの圧電アクチュエータ60,60を、配線を引き出し可能な筒状のスペーサ61を介して直列状に配置する構成としているため、圧電アクチュエータを一つだけ使用した圧電素子駆動式バルブに比較して圧電素子の変位量を大きくすることができ、その結果、弁体52のストロークが大きくなって大流量の流体を制御することができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2003-120832号公報
【文献】特開2005-149075号公報
【文献】特開2008-249002号公報
【文献】国際公開第2018/123852号
【文献】国際公開第2019/107215号
【文献】特開2009-252760号公報
【文献】特開2010-180429号公報
【文献】国際公開第2019/021949号
【文献】特開2016-050645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述した圧電素子駆動式バルブ50は、基端部にリード端子60aを設けた二つの圧電アクチュエータ60,60を反対向きに且つ直列状に配置する構成としているため、圧電アクチュエータ60を筒状のスペーサ61を用いて三つ以上積み重ねるのが難しく、ストロークを更に大きくすることができないという問題がある。
【0013】
また、前記圧電素子駆動式バルブ50は、アクチュエータボックス56の内周面と筒状のスペーサ61の外周面との間にクリアランスがあるため、積み重ねた圧電アクチュエータ60,60にがたつきが生じ、二つの圧電アクチュエータ60,60の軸線が合致せず、精度が悪くなるという問題がある。
【0014】
更に、前記圧電素子駆動式バルブ50は、アクチュエータボックス56を形成する第1筒部56Aと連結体56C、同じくアクチュエータボックス56を形成する第2筒部56Bと連結体56Cがそれぞれネジ構造により着脱自在に連結されているが、第1筒部56Aと連結体56C、第2筒部56Bと連結体56Cがそれぞれ逆ネジ構造となっているため、圧電アクチュエータ60を収容した状態で第1筒部56Aと連結体56C、第2筒部56Bと連結体56Cをそれぞれ連結するのに、二人係で組み立てなければならず、組立が難しいという問題もあった。
【0015】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、ストロークを更に大きくして大きい流量が得られるようにすると共に、直列状に配置した複数の圧電アクチュエータの軸線を合致させることができ、更に、組立を一人で簡単に行えるようにした圧電素子駆動式バルブ、該圧電素子駆動式バルブを備えた圧力式流量制御装置及び該圧力式流量制御装置を備えた気化供給装置を提供することをその主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明に係る圧電素子駆動式バルブは、流体通路及び弁座を有する本体と、前記弁座に当離座して前記流体通路を開閉する弁体と、圧電素子の伸長を利用して前記弁体を開閉駆動する圧電アクチュエータと、を備えた圧電素子駆動式バルブであって、前記本体に設けられ、直列状に配置された複数の筒状のアクチュエータボックスと、隣接する前記アクチュエータボックス間に設けられ、隣接する前記アクチュエータボックスを着脱自在に連結すると共に、配線を引き出せる開口部を有する筒状の外側接続治具と、前記各アクチュエータボックス内にそれぞれ同じ向きで収容され、先端部が前記弁体側を向くと共に、端子を設けた基端部が前記先端部と反対側を向く直列状に配置された複数の圧電アクチュエータと、前記外側接続治具内に摺動自在に収容され、隣接する前記圧電アクチュエータの基端部と先端部を位置決めすると共に、配線を引き出せる開口部を有する筒状の内側接続治具と、を備えていることに特徴がある。
【0017】
前記内側接続治具は、複数本のOリングを介して前記外側接続治具の内周面に摺動自在に支持されていることが好ましい。
【0018】
前記内側接続治具の外周面及び前記外側接続治具の内周面の少なくとも何れか一方に、前記Oリングが嵌め込まれる複数の環状のOリング溝を形成し、前記各Oリング溝に前記Oリングがそれぞれ嵌め込まれていることが好ましい。
【0019】
前記外側接続治具は、その両端部が隣接する前記アクチュエータボックスの端部に着脱自在にねじ込まれると共に、その外周面にスパナが係合される平行な係合面を備えていることが好ましい。
【0020】
前記外側接続治具は、配線を引き出せる開口部を円周方向に複数有していることが好ましい。
【0021】
前記内側接続治具は、配線を引き出せる開口部を円周方向に複数有していることが好ましい。
【0022】
前記内側接続治具は、その一端部が閉塞されており、閉塞された外側端面の中心部に圧電アクチュエータの先端部に設けた半球状の変位部が位置決めされた状態で嵌合される円錐状の受け溝を有することが好ましい。
【0023】
複数の前記圧電アクチュエータに対して、並列状に配線を接続することで、複数の前記圧電アクチュエータを同一の印加電圧で駆動させることが好ましい。
【0024】
本発明に係る圧力式流量制御装置は、前記請求項1~8の何れかに記載の圧電素子駆動式バルブと、前記圧電素子駆動式バルブの下流側に設けた絞り部と、前記圧電素子駆動式バルブと前記絞り部の間の流体通路の圧力を測定する圧力センサとを備え、前記圧力センサからの検出圧力に基づいて流量を制御することに特徴がある。
【0025】
本発明に係る気化供給装置は、前記請求項9に記載の圧力式流量制御装置と、前記圧力式流量制御装置の上流側にあって液体原料を気化する気化器と、前記気化器に気化対象となる液体原料を供給する供給手段とを備え、前記供給手段で前記気化器内に前記液体原料を供給し、前記気化器で気化した気体を前記圧力式流量制御装置で下流に流量を制御しながら供給することに特徴がある。
【0026】
前記供給手段として、前記気化器へ液体原料を供給することを制御する制御弁を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る圧電素子駆動式バルブは、直列状に配置した複数のアクチュエータボックス内に圧電アクチュエータをそれぞれ同じ向きで直列状に収容し、隣接するアクチュエータボックスを外側接続治具で連結すると共に、外側接続治具内に収容した内側接続治具で隣接する圧電アクチュエータを位置決めするようにしているため、圧電アクチュエータを三つ以上積み重ねることができ、ストロークを更に大きくして大きい流量が得られる。
【0028】
また、本発明に係る圧電素子駆動式バルブは、隣接する圧電アクチュエータを外側接続治具内に摺動自在に収容した内側接続治具で位置決めするようにしているため、直列状に配置した複数の圧電アクチュエータの軸線を合致させることができ、大流量の流体を高精度で制御することができる。
【0029】
更に、本発明に係る圧電素子駆動式バルブは、複数のアクチュエータボックス内にそれぞれ圧電アクチュエータを同じ向きで収容するようにしているため、組立時に各部材を順番に組み立てて接続するだけで良く、組立を一人で簡単に行うことができる。
【0030】
本発明に係る圧力式流量制御装置は、上述の圧電素子駆動式バルブを備えているため、大流量の流体を高精度で制御することができる。
【0031】
本発明に係る気化供給装置は、上述の圧力式流量制御装置と、液体原料を気化して圧力式流量制御装置に供給する気化器と、気化器に液体原料を供給する供給手段とを備えているため、大流量の気体を半導体製造装置等に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施形態に係る圧電素子駆動式バルブを備えた流量制御装置の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る圧電素子駆動式バルブの縦断面図である。
【
図3】圧電素子駆動式バルブに用いる外側接続治具の正面図である。
【
図5】圧電素子駆動式バルブに用いる内側接続治具の正面図である。
【
図7】本願発明の実施形態に係る圧電素子駆動式バルブ(
図2に示す圧電素子駆動式バルブ)の流量とアクチュエータボックスの変位量と設定電圧との関係を示すグラフである。
【
図8】(A)及び(B)は圧電アクチュエータが1段の従来の圧電素子駆動式バルブを2台使用し、各圧電素子駆動式バルブの流量とアクチュエータボックスの変位量と設定電圧との関係を示すグラフである。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る圧電素子駆動式バルブの縦断面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る圧力式流量制御装置の一例を示す概略図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る気化供給装置の一例を示す概略正面図である。
【
図12】従来の圧電素子駆動式バルブを備えた流量制御装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0034】
図1は本発明の実施形態に係る圧電素子駆動式バルブ1を備えた流量制御装置2の一例を示し、当該流量制御装置2は、半導体製造設備に用いるガスGの流入側の流路3に設けた圧力制御バルブ4と、圧力制御バルブ4の下流側に設けられ、ガスGの流量を制御する二つの圧電アクチュエータ23A,23Bを有する圧電素子駆動式バルブ1(2段ピエゾバルブ)と、圧力制御バルブ4の下流側で且つ圧電素子駆動式バルブ1の上流側の圧力P1を検出する第1圧力センサ5と、圧力制御バルブ4の下流側に配置された絞り部6(例えば、オリフィスプレート)と、第1圧力センサ5の出力に基づいて圧力制御バルブ4の開閉動作を制御する第1制御回路7と、圧電素子駆動式バルブ1を制御する第2制御回路8と、圧力制御バルブ4の上流側の供給圧力P0を検出する流入圧力センサ9と、圧電素子駆動式バルブ1の下流側の下流圧力P2を測定する第2圧力センサ10と、を備えている。
【0035】
前記流量制御装置2は、第1制御回路7及び第2制御回路8を用いて、第1圧力センサ5が出力する上流圧力が設定値になるように圧力制御バルブ4を制御すると共に、圧電素子駆動式バルブ1の圧電アクチュエータ23A,23Bの駆動を制御することによって、圧電素子駆動式バルブ1の下流側に流れる流体の流量を制御するように構成されている。
【0036】
本発明の実施形態に係る圧電素子駆動式バルブ1(2段ピエゾバルブ)は、
図2に示す如く、流体通路11a及び弁座11bを有する本体11と、本体11の上流側端面に連結固定された入口側ブロック12と、本体11の下流側端面に連結固定された出口側ブロック13と、本体11と入口側ブロック12との間に介設されたシール用のガスケット14と、本体11と出口側ブロック13との間に介設されたシール用のガスケット15と、本体11の弁座11bに当離座して流体通路11aを開閉する弁体16と、弁体16の外周縁部を本体11側へ押圧固定する押えアダプター17と、押えアダプター17を本体11側へ押圧する半割り構造の割りベース18と、押えアダプター17及び割りベース18を本体11側へ押圧するベース押え19と、上下方向に直列状に配置された二つのアクチュエータボックス20A,20Bと、隣接するアクチュエータボックス20A,20B間に設けられ、隣接するアクチュエータボックス20A,20Bを着脱自在に連結すると共に、配線を引き出せる開口部21eを有する筒状の外側接続治具21と、外側接続治具21をロックするロックナット22と、各アクチュエータボックス20A,20B内にそれぞれ同じ向きで収容され、先端部が弁体16側を向くと共に、端子23cを設けた基端部が先端部と反対側を向く直列状に配置された上下二つの圧電アクチュエータ23A,23Bと、外側接続治具21内に摺動自在に収容され、隣接する圧電アクチュエータ23A,23Bの基端部と先端部を位置決めすると共に、配線を引き出せる開口部24dを有する筒状の内側接続治具24と、下方(下段)のアクチュエータボックス20Aに設けたダイヤフラム押え25と、下方(下段)のアクチュエータボックス20A内に収容され、下方(下段)の圧電アクチュエータ23Aを支持するボール受け26と、下方(下段)のアクチュエータボックス20A内に収容され、下方(下段)のアクチュエータボックス20Aを下方へ付勢する弾性体27と、上方(上段)の圧電アクチュエータ23Bの基端部に当接するベアリング受け28と、ベアリング受け28に当接するスラストベアリング29と、ベアリング受け28及びスラストベアリング29を上方(上段)の圧電アクチュエータ23B側へ押圧する調整用袋ナット30と、調整用袋ナット30をロックするロックナット31と、を備えている。
【0037】
前記圧電素子駆動式バルブ1(2段ピエゾバルブ)は、電圧の印加によって二つの圧電アクチュエータ23A,23Bが伸長すると、下方(下段)のアクチュエータボックス20Aがベース押え19に支持された状態で下方(下段)のアクチュエータボックス20A、外側接続治具21及び上方(上段)のアクチュエータボックス20Bが弾性体27の弾性力に抗して上昇し、これに伴って弁体16がその弾性力により弁座11bから離座して流体通路11aを開放し、また、二つの圧電アクチュエータ23A,23Bへの印加電圧を解除すると、二つの圧電アクチュエータ23A,23Bが伸長状態から元の長さ寸法に復帰すると共に、下方(下段)のアクチュエータボックス20A、外側接続治具21及び上方(上段)のアクチュエータボックス20Bが弾性体27の弾性力により押し下げられ、これに伴って弁体16がダイヤフラム押え25により下方へ押圧されて弁座11b7cへ当座して流体通路11aを閉鎖するノーマルクローズ型の圧電素子駆動式バルブ1に構成されている。
【0038】
尚、本実施形態においては、圧電素子駆動式バルブ1を縦向き姿勢(鉛直姿勢)に配置して使用しているが、他の実施形態においては、圧電素子駆動式バルブ1を横向き姿勢(水平姿勢)に配置して使用しても良い。この場合、二つの圧電アクチュエータ23A,23Bは、内側接続治具24を介して前後又は左右に一直線上に配設されることになる。
【0039】
前記本体11は、
図2に示す如く、ステンレス鋼等の金属材によりブロック状に形成されており、流体通路11aと、流体通路11aに連通する上方が開放された凹部11cと、凹部11cの底面に形成された環状の弁座11bと、凹部11cの内周面に形成されてベース押え19が螺着される雌ネジ11dと、を備えている。
【0040】
前記入口側ブロック12は、
図2に示す如く、本体11と同じ金属材によりブロック状に形成されており、本体11の流体通路11aに連通する入口側流体通路12aを備えている。この入口側ブロック12は、本体11の上流側端面にボルト(図示省略)により固定されており、入口側ブロック12と本体11との間には、シール用のガスケット14が介設されている。
【0041】
前記出口側ブロック13は、
図2に示す如く、本体11と同じ金属材によりブロック状に形成されており、本体11の流体通路11aに連通する出口側流体通路13aを備えている。この出口側ブロック13は、本体11の下流側端面にボルト(図示省略)により固定されており、出口側ブロック13と本体11との間には、シール用のガスケット15が介設されている。
【0042】
前記弁体16は、耐久性、耐食性、耐熱性に優れた金属材により中央部が僅かに上方へ膨出した逆皿型に形成された自己弾性復帰型の金属ダイヤフラムから成り、弁座11bと対向するように凹部11c内へ配置されてその外周縁部が押えアダプター17等により本体11側へ気密状に保持固定され、下方への押圧により弁座11bへ当座すると共に、押圧力の喪失時にその弾性力により弁座11bから離座するようになっている。また、弁体16を形成する金属ダイヤフラムは、フッ素樹脂(例えば、PFA)によりコーティングされていることもある。
【0043】
尚、金属ダイヤフラムの材質は、ステンレス鋼やインコネル、その他の合金鋼であっても良く、また、金属ダイヤフラムは、1枚の金属ダイヤフラムを使用するか、或いは、複数枚のダイヤフラムを積層した金属ダイヤフラムであっても良く、更に、金属ダイヤフラムの形状は、平板状であっても良い。
【0044】
前記押えアダプター17は、
図2に示す如く、ステンレス鋼等の金属材により環状に形成されており、本体11の凹部11c内に挿入されて弁体16(金属ダイヤフラム)の外周縁部を本体11側へ気密状に押圧固定するものである。
【0045】
前記割りベース18は、特許文献6(特開2016-050645号公報)に記載された割りベースと同じような構造に構成されており、ステンレス鋼等の金属材により形成された半割り状の一対の割りベース片から成る。この割りベース18は、各割りベース片を下方(下段)のアクチュエータボックス20Aの下端部に両側から対向状に組み付け、この状態で各割りベース片とアクチュエータボックス20Aの下端部とを本体11の凹部11c内に挿入すると共に、当該凹部11c内にベース押え19の下端部をねじ込み固定することによって、押えアダプター17を押圧しつつ本体11の凹部11cに保持固定されている。
【0046】
また、割りベース18を構成する二つの割りベース片は、下方(下段)のアクチュエータボックス20Aの下端部周壁に形成したガイド穴(図示省略)に挿通され、下方(下段)のアクチュエータボックス20Aの底壁20c上面に対向する嵌合部18aをそれぞれ備えており、前記嵌合部18aと下方(下段)のアクチュエータボックス20Aの底壁20cとの間には、下方(下段)のアクチュエータボックス20Aを下方へ押圧付勢してダイヤフラム押え25を介して弁体16の中央部分を弁座11bへ当座させる複数枚の皿バネから成る弾性体27が介設されている(
図2参照)。
【0047】
前記ベース押え19は、
図2に示す如く、ステンレス鋼等の金属材により筒状に形成されており、下端部外周面には、本体11の雌ネジ11dに着脱自在に螺着される雄ネジ19aが形成されている。また、ベース押え19の周壁には、ベース押え19の軽量化を図ると共に、下方(下段)の圧電アクチュエータ23Aの熱を逃がすための開口部19bが円周方向に沿って複数設けられている。このベース押え19は、本体11に起立姿勢で螺着されており、下方(下段)のアクチュエータボックス20Aを本体11側へ昇降自在に支持すると共に、弁体16の外周縁部、押えアダプター17及び割りベース18を本体11側へ押圧固定するためのものである。
【0048】
上下方向に直列状に配置された前記二つのアクチュエータボックス20A,20Bは、ステンレス鋼やインバー材(インバー、スーパーインバー、ステンレスインバー等)等の金属材により形成されており、下方(下段)のアクチュエータボックス20Aには、下方(下段)の圧電アクチュエータ23A、弾性体27及びボール受け26が収容され、また、上方(上段)のアクチュエータボックス20Bには、上方(上段)の圧電アクチュエータ23Bが収容されている。
【0049】
即ち、下方(下段)のアクチュエータボックス20Aは、
図2に示す如く、ステンレス鋼や熱膨張係数の小さいインバー材(好ましくは、熱膨張係数が2×10
-6/K以下のインバー材)等の金属材により有底筒状に形成されており、下方(下段)の圧電アクチュエータ23Aを収容し且つベース押え19内に複数本のOリング32を介して上下方向へ摺動自在に挿入された筒状の大径部20aと、大径部20aの下端に一体的に形成され、弾性体27及びボール受け26を収容する大径部20aよりも小径の筒状の小径部20bと、小径部20bに一体的に形成され、小径部20bの下端部を閉塞する底壁20cと、大径部20aと小径部20bの境界部分の周壁に対向状に形成され、割りベース18の嵌合部18aが挿入される縦長のガイド穴(図示省略)と、大径部20aの上端部外周面に形成され、外側接続治具21が着脱自在に螺着される雄ネジ20dと、大径部20aの周壁に円周方向に沿って複数形成され、下方(下段)のアクチュエータボックス20Aの軽量化を図ると共に、下方(下段)の圧電アクチュエータ23Aの熱を逃がすための開口部20eと、を備えている。
【0050】
また、下方(下段)のアクチュエータボックス20Aの底壁20cの底面には、合成樹脂材により形成された円盤状のダイヤフラム押え25が嵌め込み固定されている。
【0051】
一方、上方(上段)のアクチュエータボックス20Bは、
図2に示す如く、ステンレス鋼や熱膨張係数の小さいインバー材(好ましくは、熱膨張係数が2×10
-6/K以下のインバー材)等の金属材により筒状に形成されており、下端部内周面には、外側接続治具21が着脱自在に螺着される雌ネジ20fが形成されていると共に、上端部外周面には、調整用袋ナット30及びロックナット31が上下方向へ移動調整自在に螺着される雄ネジ20gが形成されている。また、上方(上段)のアクチュエータボックス20Bの周壁には、上方(上段)のアクチュエータボックス20Bの軽量化を図ると共に、上方(上段)の圧電アクチュエータ23Bの熱を逃がすための開口部20hが円周方向に沿って複数設けられている。
【0052】
前記外側接続治具21は、ステンレス鋼や熱膨張係数の小さいインバー材(好ましくは、熱膨張係数が2×10-6/K以下のインバー材)等の金属材により筒状に形成されており、下方(下段)のアクチュエータボックス20Aと上方(上段)のアクチュエータボックス20Bとを着脱自在に連結して内方に内側接続治具24等を収容するものである。
【0053】
即ち、前記外側接続治具21は、
図2~
図4に示す如く、下方(下段)のアクチュエータボックス20Aの上端部に連結される筒状の大径部21aと、大径部21aの上端に一体的に設けられ、上方(上段)のアクチュエータボックス20Bの下端部に連結される大径部21aよりも小径の筒状の小径部21bと、大径部21aの内周面に形成され、下方(下段)のアクチュエータボックス20Aの雄ネジ20dに着脱自在に螺着される雌ネジ21cと、小径部21bの外周面に形成され、上方(上段)のアクチュエータボックス20Bの雌ネジ20fに着脱自在に螺着される雄ネジ21dと、大径部21aと小径部21bの境界部分の周壁に対向状に形成され、配線を引き出せる円形の開口部21eと、大径部21aの外周面に形成され、スパナ(図示省略)が係合される平行な係合面21fと、を備えている。
【0054】
尚、上記の実施形態においては、外側接続治具21に円形の開口部21eを対向状に二つ形成するようにしたが、他の実施形態においては、外側接続治具21に開口部21eを一つだけ形成しても良く、或いは、外側接続治具21に円周方向に沿って開口部21eを所定の間隔で三つ以上形成するようにしても良い。外側接続治具21に複数の開口部21eを形成した場合、配線を外側接続治具21のどの方向へも引き出すことができる。また、開口部21eの形状も、円形に限定されるものではなく、矩形状の開口部(図示省略)やその他の形状の開口部(図示省略)であっても良い。
【0055】
直列状に配置された上下二つの圧電アクチュエータ23A,23Bは、先端部(下端部)が閉塞された金属製のケーシング23a内に積層型の圧電素子(図示省略)を収容し、ケーシング23aの基端部(上端部)を段付きのベース23bで密封状に封止すると共に、当該ベース23bから複数本の端子23c(リード端子)が突出した状態となっており、圧電素子の伸縮に伴ってケーシング23aの先端部(下端部)に設けた半球状の変位部23dが圧電アクチュエータ23A,23Bの軸心に沿って変位する積層型の圧電アクチュエータ23A,23Bに構成されている。
【0056】
下方(下段)の圧電アクチュエータ23Aは、
図2に示す如く、その半球状の変位部23dが下を向く状態で下方(下段)のアクチュエータボックス20A内に収容されており、その先端部(変位部23d)が割りベース18の嵌合部18aにボール受け26を介して支持されていると共に、端子23c(リード端子)が内側接続治具24内に位置している。
【0057】
尚、ボール受け26は、
図2に示す如く、ステンレス材等の金属材により円盤状に形成されており、その上面中心部には、下段の圧電アクチュエータ23Aの半球状の変位部23dが位置決めされた状態で嵌合される円錐状の受溝26aが形成されている。また、ボール受け26は、ボール受け26の外周面に嵌め込んだOリング33を介して下方(下段)のアクチュエータボックス20Aの小径部20b内に収容されている。そのため、ボール受け26は、その外周面に嵌め込んだ弾力性のあるOリング33によって、がたつきや横方向(ボール受け26の軸線に直交する方向)へのぶれがなくなり、中心を出すことができる。
【0058】
一方、上方(上段)の圧電アクチュエータ23Bは、
図2に示す如く、その半球状の変位部23dが下を向く状態で上方(上段)のアクチュエータボックス20B内に収容されており、その先端部(変位部23d)が内側接続治具24を介して下方(下段)の圧電アクチュエータ23Aに積み重ねられていると共に、その基端部(段付きのベース23b)が上方(上段)のアクチュエータボックス20Bの上端部に上下方向へ移動調整自在に螺着した調整用袋ナット30にベアリング受け28及びスラストベアリング29を介して支持されている。
【0059】
また、上方(上段)の圧電アクチュエータ23Bの端子23c(リード端子)は、調整用袋ナット30から上方へ突出した状態となっている。
【0060】
尚、直列状に配置された上下二つの圧電アクチュエータ23A,23Bの各端子23c(リード端子)には、配線(図示省略)が並列状に接続されており、上下二つの圧電アクチュエータ23A,23Bを同一の印加電圧で駆動させることができるようになっている。
【0061】
而して、前記上下二段の圧電アクチュエータ23A,23Bは、電圧の印加により上方へ伸長して下方(下段)のアクチュエータボックス20Aと上方(上段)のアクチュエータボックス20Bと前記両アクチュエータボックス20A,20Bを連結する外側接続治具21等を弾性体27の弾性力に抗して上方へ押し上げるようになっている。
【0062】
前記内側接続治具24は、ステンレス鋼や熱膨張係数の小さいインバー材(好ましくは、熱膨張係数が2×10-6/K以下のインバー材)等の金属材により上端が閉塞された筒状に形成されており、外側接続治具21内に摺動自在に収容され、下方(下段)の圧電アクチュエータ23Aの基端部と上方(上段)の圧電アクチュエータ23Bの先端部を位置決めすると共に、配線を引き出せる構成としている。
【0063】
即ち、前記内側接続治具24は、
図2、
図5及び
図6に示す如く、外側接続治具21内に収容される筒部24aと、筒部24aの上端部に一体的に設けられ、筒部24aの上端開口を閉塞する上壁24bと、筒部24aの下端部外周面及び上壁24bの外周面に形成され、Oリング34が嵌め込まれる二つの環状のOリング溝24cと、筒部24aに対向状に形成され、配線を引き出せる円形の開口部24dと、上壁24bの上面中心部に形成され、上方(上段)の圧電アクチュエータ23Bの半球状の変位部23dが位置決めされた状態で嵌合される円錐状の受溝24eと、筒部24aの下端部に形成され、下方(下段)の圧電アクチュエータ23Aの段付きのベース23bが緊密に嵌合される段付き部24fと、を備えている。
【0064】
前記内側接続治具24は、上下二つのOリング溝24cにそれぞれOリング34を嵌め込み、この状態で外側接続治具21内に挿入することによって、外側接続治具21内に上下方向へ摺動自在に収容される。また、内側接続治具24の段付き部24fには、下方(下段)の圧電アクチュエータ23Aの段付きのベース23bが嵌合されていると共に、内側接続治具24の円錐状の受溝24eには、上方(上段)の圧電アクチュエータ23Bの半球状の変位部23dが位置決めされた状態で嵌合されている。
【0065】
前記内側接続治具24は、弾力性のある上下二本のOリング34で外側接続治具21内に上下方向へ摺動自在にガイドするようにしているため、内側接続治具24のがたつきがなくなると共に、横方向(内側接続治具24の軸線に直行する方向)へのブレがなくなり、内側接続治具24の中心を出すことができる。その結果、ボール受け26に支持された下方(下段)の圧電アクチュエータ23Aと内側接続治具24に支持された上方(上段)の圧電アクチュエータ23Bの軸線を合致させることができる。
【0066】
尚、上記の実施形態においては、内側接続治具24に円形の開口部24dを対向状に二つ形成するようにしたが、他の実施形態においては、内側接続治具24に開口部24dを一つだけ形成しても良く、或いは、内側接続治具24に円周方向に沿って開口部24dを所定の間隔で三つ以上形成するようにしても良い。内側接続治具24に複数の開口部24dを形成した場合、配線を内側接続治具24のどの方向へも引き出すことができる。また、開口部24dの形状も、円形に限定されるものではなく、矩形状の開口部(図示省略)やその他の形状の開口部(図示省略)であっても良い。
【0067】
また、上記の実施形態においては、内側接続治具24の外周面に複数のOリング溝24cを形成して各Oリング溝24cにOリング34を嵌め込み、内側接続治具24を外側接続治具21内にOリング34を介して摺動自在に収容するようにしたが、他の実施形態においては、図示していないが、外側接続治具21の内周面に複数のOリング溝を形成して各Oリング溝にOリングを嵌め込み、内側接続治具24を外側接続治具21内にOリングを介して摺動自在に収容するようにしても良い。
【0068】
而して、上述した圧電素子駆動式バルブ11によれば、第2制御回路8から上下二段の圧電アクチュエータ23A,23Bに駆動電圧が印加されると、上下二段の圧電アクチュエータ23A,23Bは印加電圧に応じて設定値だけ上方へ伸長する。
【0069】
これにより、大きな押し上げ力が内側接続治具24、ベアリング受け28、スラストベアリング29及び調整用袋ナット30を介して上方(上段)のアクチュエータボックス20Bに働き、上方(上段)のアクチュエータボックス20Bと下方(下段)のアクチュエータボックス20Aと前記両アクチュエータボックス20A,20Bを連結する外側接続治具21とがベース押え19に支持された状態で弾性体27の弾性力に抗して上記設定値だけ上昇する。その結果、弁体16がその弾性力によって弁座11bから離座し、圧電素子駆動式バルブ1は開弁状態となる。
尚、圧電素子駆動式バルブ1の開度は、ピエゾ駆動素子への印加電圧を変動することにより調節されている。
【0070】
一方、上下二段の圧電アクチュエータ23A,23Bへの印加電圧を解除すると、上下二段の圧電アクチュエータ23A,23Bが伸長状態から元の長さ寸法に復帰すると共に、弾性体27の弾性力によりアクチュエータボックス20A,20Bが押し下げられ、アクチュエータボックス20A,20Bの下端に設けたダイヤフラム押え25により弁体16の中央部分が弁座11b側へ押し下げられて弁座11bへ当座し、圧電素子駆動式バルブ1は閉弁状態となる。
【0071】
図7は二つの圧電アクチュエータ23A,23Bを2段に積み重ねた本願発明の実施形態に係る圧電素子駆動式バルブ1(2段ピエゾバルブ)の流量とアクチュエータボックス20A,20Bの変位量と設定電圧との関係を示すグラフであり、実線は、ガス(N
2)の流量を示し、破線は、アクチュエータボックス20A,20Bの変位量を示す。このとき、一次側のガス(N
2)の供給圧力は、400torr、ガス(N
2)の温度は、21℃とした。
【0072】
また、
図8(A)及び(B)は圧電アクチュエータが1段の従来の圧電素子駆動式バルブ(ピエゾバルブ)を2台使用し、各圧電素子駆動式バルブ(ピエゾバルブ)の流量とアクチュエータボック
スの変位量と設定電圧との関係を示すグラフである。このとき、一次側のガス(N
2)の供給圧力は、400torr、ガス(N
2)の温度は、21℃及び40℃とした。尚、
図8(A)及び(B)のグラフにおいて、aはガスの温度が21℃のときのガスの流量を示し、bはガスの温度が40℃のときのガスの流量を示し、cはガスの温度が21℃のときのアクチュエータボックスの変位量を示し、dはガスの温度が40℃のときのアクチュエータボックスの変位量を示す。
【0073】
図7と
図8(A)及び(B)のグラフからも明らかなように、圧電アクチュエータ23A,23Bを2段にした本発明の実施形態に係る圧電素子駆動式バルブ1(2段ピエゾバルブ)の方が、圧電アクチュエータを1段にした従来の圧電素子駆動式バルブ(ピエゾバルブ)よりも流量が大幅に増加していることが判る。即ち、1段の圧電素子駆動式バルブは、ガスの供給圧力が400torrのとき、アクチュエータボックスの変位量が約65μm~68μm、最大流量が約5SLMになっている。これに対して、2段の圧電素子駆動式バルブ1は、ガスの供給圧力が400torrのとき、アクチュエータボックス20A,20Bの変位量が約170μm、最大流量が約14SLMになっており、1段の従来の圧電素子駆動式バルブに比較して2倍以上の流量を流すことができる。
【0074】
図9は本発明の他の実施形態に係る圧電素子駆動式バルブ1を示し、当該圧電素子駆動式バルブ1は、三つのアクチュエータボックス20A,20B,20Cを上下方向へ直列状に配置して隣接するアクチュエータボックス20A,20B,20C同士を外側接続治具21で接続すると共に、前記三つのアクチュエータボックス20A,20B,20C内にそれぞれ圧電アクチュエータ23A,23B,
23Cを同じ向きで収容して隣接する圧電アクチュエータ23A,23B,
23Cを各外側接続治具21内に摺動自在に収容した内側接続治具24でそれぞれ位置決めするようにしたものであり、圧電アクチュエータ23A,23B,
23Cを3段に積み重ねた3段ピエゾバルブに構成されている。
【0075】
3段目のアクチュエータボックス20Cは、2段目のアクチュエータボックス20Bと全く同じ形状及び同じ構造に形成され、また、2段目の外側接続治具21は、1段目の外側接続治具21と全く同じ形状及び同じ構造に構成され、更に、2段目の内側接続治具24は、1段目の内側接続治具24と全く同じ形状及び同じ構造に構成されている。
【0076】
尚、
図2に示す圧電素子駆動式バルブ1(2段ピエゾバルブ)と同じ部位・部材には、同一の参照番号を付し、その詳細な説明を省略する。
また、直列状に配置された上下三つの圧電アクチュエータ23A,23B,23Cの各端子23c(リード端子)には、配線(図示省略)が並列状に接続されており、上下三つの圧電アクチュエータ23A,23B,23Cを同一の印加電圧で駆動させることができるようになっている。
【0077】
図9に示す圧電素子駆動式バルブ1(3段ピエゾバルブ)は、圧電アクチュエータ23A,23B,
23Cを3段に積み重ねているため、ストロークをより大きくすることができ、更に大きい流量が得られる。即ち、
図9に示す3段の圧電素子駆動式バルブ1(3段ピエゾバルブ)は、ガスの供給圧力が400torrのとき、アクチュエータボックス20A,20B,20Cの変位量が約255μm、最大流量が約22SLMになっている。
【0078】
上述した本発明の実施形態に係る圧電素子駆動式バルブ1は、直列状に配置した複数のアクチュエータボックス20A,20B,20C内に圧電アクチュエータ23A,23B,23Cをそれぞれ同じ向きで直列状に収容し、隣接するアクチュエータボックス20A,20B,20Cを外側接続治具21で連結すると共に、外側接続治具21内に収容した内側接続治具24で隣接する圧電アクチュエータ23A,23B,23Cを位置決めするようにしているため、圧電アクチュエータ23A,23B,23Cを二つ又は三つ以上積み重ねることができ、ストロークを更に大きくして大きい流量が得られる。
【0079】
また、圧電素子駆動式バルブ1は、隣接する圧電アクチュエータ23A,23B,23Cを外側接続治具21内に摺動自在に収容した内側接続治具24で位置決めするようにしているため、直列状に配置した複数の圧電アクチュエータ23A,23B,23Cの軸線を合致させることができ、大流量の流体を高精度で制御することができる。
【0080】
更に、圧電素子駆動式バルブ1は、複数のアクチュエータボックス20A,20B,20C内にそれぞれ圧電アクチュエータ23A,23B,23Cを同じ向きで収容するようにしているため、組立時に各部材を順番に接続するだけで良く、組立を一人で簡単に行うことができる。例えば、2段の圧電素子駆動式バルブ1(2段ピエゾバルブ)の組立においては、1段目の圧電アクチュエータ23Aを収容した1段目のアクチュエータボックス20Aに、内側接続治具24を収容した外側接続治具21を接続し、当該外側接続治具21に2段目のアクチュエータボックス20Bを接続して2段目のアクチュエータボックス20Bに2段目の圧電アクチュエータ23Bを収容すれば良い。また、3段の圧電素子駆動式バルブ1(3段ピエゾバルブ)の組立においても、各部材を順番に接続すれば良い。
【0081】
図10は上述した圧電素子駆動式バルブ1を備えた圧力式流量制御装置35の一例を示すものであり、当該圧力式流量制御装置35は、
図2(又は
図9)に示す圧電素子駆動式バルブ1と、圧電素子駆動式バルブ1の下流側に設けた絞り部36(例えば、オリフィスプレート)と、圧電素子駆動式バルブ1と絞り部36の間の流体通路37の圧力
P1を測定する圧力センサ38と、圧電素子駆動式バルブ1を制御する制御回路39とを備え、絞り部36の上流側の検出圧力
P1に基づいて絞り部36の通過流量を演算しながら圧電素子駆動式バルブ1の開閉制御により絞り部36の通過流量を制御するようにしている。
【0082】
前記圧力式流量制御装置35は、大きい流量が得られる圧電素子駆動式バルブ1を備えているため、大流量の流体を高精度で制御することができる。
【0083】
図11は
図10に示す圧力式流量制御装置35を備えた気化供給装置40の一例を示すものであり、当該気化供給装置40は、
図10に示す圧力式流量制御装置35と、圧力式流量制御装置35の上流側に設けられ、液体原料Lを気化する気化器41と、気化器41に気化対象となる液体原料Lを供給する供給手段42(例えば、液体原料Lの供給量を制御する空気駆動式の制御弁)と、気化器41の上流側に設けられ、気化器41に供給される液体原料Lを予加熱する予加熱部43と、圧力式流量制御装置35の下流側に設けられ、必要に応じて気化した気体Gの流れを遮断するストップ弁44(例えば、従来公知の空気駆動弁や電磁弁)と、予加熱部43と気化器41と圧力式流量制御装置35とをそれぞれ独立して加熱する複数のヒータ(図示省略)等を備えており、液体原料Lを予加熱部43で予加熱し、予加熱した液体原料Lを供給手段42により気化器41に供給して気化器41で気化し、生成した気体Gを圧力式流量制御装置35で流量制御するようにしたものである。
【0084】
尚、
図11において、液体原料が充填されている部分を斜線のハッチングで示し、気体が流れている部分をドットのハッチングで示している。
【0085】
前記気化供給装置40は、大流量の気体Gを高精度で制御できる圧力式流量制御装置35と、液体原料Lを気化して圧力式流量制御装置35に供給する気化器41と、気化器41に液体原料Lを供給する供給手段42とを備えているため、大流量の気体Gを半導体製造装置等に供給することができる。
【0086】
尚、上記の実施形態においては、圧電素子駆動式バルブ1を圧力制御バルブ4や絞り部6等と組み合わせて流量制御装置2を構成したが、他の実施形態においては、圧電素子駆動式バルブ1を単体で用い、高速サーボ型の流量制御装置を構成しても良い。
【0087】
また、上記の実施形態においては、二つ又は三つの圧電アクチュエータ23A,23B,23Cを2段又は3段に積み重ねた構造の圧電素子駆動式バルブ1としたが、他の実施形態においては、四つ以上の圧電アクチュエータ23A,23B,23C,…を4段以上に積み重ねた構造の圧電素子駆動式バルブ1としても良い。
【0088】
更に、上記の実施形態においては、圧電素子駆動式バルブ1をノーマルクローズ型の圧電素子駆動式バルブ1としたが、他の実施形態においては、圧電素子駆動式バルブ1をノーマルオープン型の圧電素子駆動式バルブ1としても良い。
【0089】
更に、上記の実施形態においては、同じ長さ、同じ形状及び同じ性能の圧電アクチュエータ23A,23B,23Cを積み重ねるようにしたが、上段に積み重ねる圧電アクチュエータ23B,23cは、下段にある圧電アクチュエータ23Aと必ずしも同じでならなければならないということは無く、下段の圧電アクチュエータ23Aと異なる形状や性能の圧電アクチュエータ23B,…を積み重ねても良い。
その際、上段の圧電アクチュエータ23B,…の長さや直径が下段の圧電アクチュエータ23Aと異なるのであれば、例えばアクチュエータボックス20B、内側接続治具24、外側接続治具21の何れか、若しくは全ての寸法を変更し、下段にあるアクチュエータボックス20Aの雄ネジ20dとは螺着可能な外側接続治具21の雌ネジ21cを有する構造とすれば良い。
また、上段の圧電アクチュエータ23B,…が下段の圧電アクチュエータ23Aよりも短い場合、アクチュエータボックス20B等の寸法を変更する代わりに、不足している長さ分だけスペーサを追加することで、足りない長さを補うようにしても良い。スペーサの材質は、使用状況に応じて変更すれば良く、例えばアクチュエータボックスに使用されているステンレス鋼やインバー材を使用することで、熱膨張係数が同じになるようにしても良いし、スペーサの材質として断熱材を使用したり、スペーサから放熱が出来るような形状にすることで、上段の圧電アクチュエータ23B,…に下段の圧電アクチュエータ23Aの熱が伝わらないようにしても良い。
【0090】
更に、上記の実施形態においては、内側接続治具24の上部にある円錐状の受溝24eは、圧電アクチュエータ23B,…の半円球の変位部23dの位置決めのために設けられているが、圧電アクチュエータ23Bの位置決めができればどのような形状でも良く、例えば半円球の変位部23dが収まる穴でも良く、また、圧電アクチュエータ23Bの外周径とほぼ同じ内径の穴を形成し、半円球の変位部23dごと内側接続治具24に形成した穴に圧電アクチュエータ23Bを嵌め込むような構造でも良い。
【符号の説明】
【0091】
1は圧電素子駆動式バルブ
11は本体
11aは流体通路
11bは弁座
16は弁体
20A,20B,20Cはアクチュエータボックス
23A,23B,23Cは圧電アクチュエータ
23cは端子
23dは半球状の変位部
21は外側接続治具
21fは係合面
21eは開口部
24は内側接続治具
24dは開口部
24cはOリング溝
24eは円錐状の受溝
34はOリング
35は圧力式流量制御装置
36は絞り部
37は流体通路
38は圧力センサ
40は気化供給装置
41は気化器
42は供給手段
Gは気体
Lは液体原料