(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】インプラントの修復方法に用いられるインプラント及びドリル
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
(21)【出願番号】P 2020098188
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】512272889
【氏名又は名称】医療法人社団アイ・ティー
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】飯島 俊一
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2009-0090898(KR,A)
【文献】米国特許第05201656(US,A)
【文献】特表2015-523893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面の少なくとも一部に雄ねじを有して植設されたインプラントを修復する方法に用いられるインプラント及びドリルであって、前記インプラントは、前記雄ねじの螺条間に位置する部分の外径がそれぞれ略同一であり、前記ドリルは植設された状態の前記インプラントの外方から外嵌するための筒状部とこの筒状部を回動して前記雄ねじの所定部分を切削する切削部とを有し、
前記切削部は、前記筒状部の下端に形成され、複数の鋸歯が尖った下向き先端部を有する鋸歯形状を呈することを特徴とするインプラント及びドリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプラントの修復方法に用いられるインプラント及びドリルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図11に示すように、従来の歯科インプラント治療では、歯牙の欠損部にある歯槽骨51に形成したドリル孔52内にインプラント(フィクスチャー)53を埋入し、そのインプラント53の後端部に、アバットメント54を介して上部補綴物55を装着するのが一般的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の歯科インプラント治療では、爾後の骨量減少により、インプラント53が露出してしまうという問題がある(
図3の破線参照)。この場合、インプラント53を埋入しなおすことが考えられるが、そのための一連の再手術は患者への負担が大きいものとなる。
【0004】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、患者に掛かる負担を抑えながら爾後の骨量減少への対応を図ることができるインプラントの修復方法に用いられるインプラント及びドリルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
【0006】
本発明は、外周面の少なくとも一部に雄ねじを有して植設されたインプラントを修復する方法に用いられるインプラント及びドリルであって、前記インプラントは、前記雄ねじの螺条間に位置する部分の外径がそれぞれ略同一であり、前記ドリルは植設された状態の前記インプラントの外方から外嵌するための筒状部とこの筒状部を回動して前記雄ねじの所定部分を切削する切削部とを有し、前記切削部は、前記筒状部の下端に形成され、複数の鋸歯が尖った下向き先端部を有する鋸歯形状を呈することを特徴とするインプラント及びドリルを提供する(請求項1)。
【0007】
【発明の効果】
【0008】
本発明では、外周面の少なくとも一部に雄ねじを有するインプラントにおいて、患者に掛かる負担を抑えながら爾後の骨量減少への対応を図ることができるインプラントの修復方法に用いられるインプラント及びドリルが得られる。
【0009】
すなわち、歯科インプラント治療が施された
図7(B)に示す状態から、爾後の骨量減少により歯槽骨が痩せてきて、インプラントの雄ねじ部分が歯槽骨51に覆われなくなって露出してきた場合、本願の請求項1に係る発明のインプラントの修復方法では、インプラントを歯槽骨に形成されたドリル孔52内に埋入した状態のまま〔
図2(A)参照〕、インプラントの外方から、ドリル10〔
図3(A)参照〕の筒状部11〔
図4(A)参照〕を外嵌し、筒状部を回動して筒状部の先端の切削部12で雄ねじの所定部分(露出した上部の前記雄ねじ部分)を切削して、インプラントを
図5(A)に示す状態に修復することができるので、植設された状態(埋入状態)のインプラントを引き抜き、新たなインプラントを植設(埋入)するためのドリル孔をあけなおす、といった手術は不要となるので、患者に掛かる負担を軽減することができる。
【0010】
そして、インプラントの修復にあたり、本願の請求項2に係る発明のインプラント及びドリルにおいては、インプラントの前記雄ねじの螺条間に位置する部分の外径A〔
図1(A)参照〕をそれぞれ略同一に設定する一方、前記ドリル〔
図8参照〕は、植設された状態の前記インプラントの外方から外嵌する〔
図4(A)参照〕ための筒状部11とこの筒状部を回動して前記雄ねじの所定部分(露出した前記雄ねじ部分)5a〔
図3(A)参照〕を切削する切削部12〔
図8参照〕とを有しているので、インプラントが前記ドリルのガイドをしながら効率よく前記雄ねじの所定部分(露出した前記雄ねじ部分)を切削することができる。すなわち、歯槽骨から露出している前記雄ねじ部分5aを、
図3(A)、
図4(A)及び
図5(A)に示す順に前記ドリルを操作させることにより切削できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(A)は、本発明の一実施の形態に係るインプラントの修復方法に用いるインプラントを示す構成説明図である。(B)は、骨量減少前の歯槽骨に植設された(埋入された)状態のインプラントを示す構成説明図である。
【
図2】(A)は、骨量減少後のインプラントの植設状態を示す構成説明図である。(B)は、
図1(B)に示す状態から後部にアバットメントが取付けられたインプラントを示す構成説明図である。
【
図3】(A)は、上記実施の形態において、
図2(A)に示すインプラントの直上にドリルを位置させている状態を示す構成説明図である。(B)は、
図2(B)相当図である。
【
図4】(A)は、上記実施の形態において、
図3(A)に示すインプラントの端部、及び露出している雄ねじの所定部分の両方にドリルの筒状部を外嵌し、筒状部を回動してドリルの切削部で雄ねじの前記所定部分を切削している状態を示す構成説明図である。(B)は、
図2(B)、
図3(B)相当図である。
【
図5】(A)は、上記実施の形態において、
図4(A)に示すインプラントから前記ドリルを外して前記所定部分を切削した後の状態を示すインプラントの構成説明図である。(B)は、
図2(B)、
図3(B)、
図4(B)相当図である。
【
図6】(A)は、上記実施の形態において、
図5(A)に示すインプラントの後部に新たなアバットメントが取付けられた状態を示す構成説明図である。(B)は、
図2(B)、
図3(B)、
図4(B)、
図5(B)相当図である。
【
図7】(A)は、上記実施の形態において、
図6(A)に示すアバットメントを介して上部補綴物が装着された修復後の状態を示す構成説明図である。(B)は、
図2(B)、
図3(B)、
図4(B)、
図5(B)のアバットメントを介して上部補綴物が装着されている修復前の状態を示す構成説明図である。
【
図8】上記実施の形態で用いられるドリルを示す外観図である。
【
図9】上記実施の形態で用いられるドリルを示す縦断面図である。
【
図10】ドリルの別実施例を説明するための正面図である。
【
図11】従来の歯科インプラント治療の方法を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら以下に説明する。なお、それによって本発明は限定されるものではない。
【0013】
この実施形態で用いられる修復前のインプラントDは、
図1に示すように、歯槽骨51(
図10参照)に形成されたドリル孔52(
図10参照)に植設(埋入)されているもので、略円柱状の前部3とアバットメント取付け用の後部4a(及び4b)〔
図3(A)、
図5(A)参照〕を有する。
【0014】
図1、
図2に示すように、前部3の外周面には雄ねじ5が形成されているとともに、雄ねじ5の螺条間に位置する部分の外径Aは前部3のいずれの位置においてもそれぞれ略同一に設定されている。
【0015】
ドリル孔52に埋入したインプラントDの後部4b及び4aには、例えば
図6(A)及び
図6(B)並びに
図7(A)及び(B)に示すように、アバットメント6a及び6bを介して上部補綴物7a及び7bがそれぞれ装着される。
【0016】
ここで、後部4b及び4aに対するアバットメント6a及び6bの取付は適宜の公知の手段を用いて行われる。例えばこの実施形態では、両者をねじ結合によって結合している。
【0017】
要するに、インプラントDに結合したアバットメント6a及び6bをインプラントDから素手で引き抜くことは極めて困難な状態で、且つインプラントDに対するアバットメント6a及び6bの回転が規制された状態となるよう適宜の手段を用いて行われる。
【0018】
また、アバットメント6a及び6bに対する上部補綴物7a及び7bの装着は、公知の方法によって行われる。
【0019】
インプラントDは上述したように、略円柱状の前部3の外周面に雄ねじ5を有して植設されているとともに、雄ねじ5の螺条間に位置する部分の外径Aがそれぞれ略同一である一方、ドリル10は、植設された状態のインプラントDの外方から外嵌するための筒状部11とこの筒状部11を回動して雄ねじ5の所定部分5a〔
図3(A)参照〕を切削する切削部12とを有している。
【0020】
雄ねじ5の所定部分とは、
図2等に示したように、高さ1から高さ2に至る箇所のことである。
【0021】
なお、この実施形態では、
図6(A)のアバットメント6aは
図6(B)のアバットメント6bよりも、切削された雄ねじ部分5aの長さ分だけ長く設定されている。また、アバットメント6a上面とアバットメント6b上面は同一高さになるよう長さが設定されている。また、
図7(A)の上部補綴物7aは
図7(B)の上部補綴物7bよりも、切削された雄ねじ部分5aの長さ分だけ長く設定されている。また、上部補綴物7a,7bの上面は同一高さになるよう長さが設定されている。
【0022】
また、前記筒状部11の内周面13の横断面形状は円形である。この実施形態では、雄ねじ5の螺条間に位置する部分の外径Aと筒状部11の前記円形の内径aの寸法設定は、以下の通りである。
【0023】
A≒a
【0024】
一方、前記切削部12は、筒状部11の下端に形成された鋸歯形状を呈する。すなわち、複数の鋸歯12a…は尖った下向き先端部t…を有して筒状部11に連設形成されている。
【0025】
さらに、ドリル10は、
図8、
図9に示すようにモータ等のドリル駆動手段に連結される連結部14を有する。この連結部14は筒状部11の上端に一体的に形成されている。なお、
図3(A)、
図4(A)、
図5(A)においては、この連結部14の図示を省略してある。
【0026】
而して、
図7(B)に示す歯科インプラントにおいて、骨量の減少により、やがて外周面に雄ねじ5が形成された前部3の上部分、すなわち、所定部分5aが歯槽骨51に覆われなくなって露出〔
図2(A)参照〕した場合には、切削部12により所定部分5aを削り取る。この削り取りの際、ドリル10は雄ねじ5のねじの巻き方向とは逆方向(たとえば雄ねじ5が右ねじの場合はその逆の方向)に回転させて雄ねじ5をゆっくりと削り、たとえばスレッド1つを5分程度で削り取る。その後、削り取った分だけ長いアバットメント6aを後部4bに取り付ける。
【0027】
続いて、アバットメント6aに、上面が上部補綴物7bと同一になるような大きさの上部補綴物7aを取り付ければ、所定部分5aが露出しない状態に戻すことができる。従って、インプラントDを引き抜き、ドリル孔52をあけなおす、といった手術は不要となるので、患者に掛かる負担を軽減することができる。
【0028】
図10にドリル10の別実施例を示す。このドリル10では、筒状部11の上部にある柱状部13に、筒状部11内部と連通する開口14が設けられ、ドリル10の切削部12に削り取られた切削屑はこの開口14から排出される。
【符号の説明】
【0029】
D インプラント
A 外径
5 雄ねじ
5a 雄ねじの所定部分
10 ドリル
11 筒状部
12 切削部