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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】二酸化塩素発生装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 11/02 20060101AFI20240105BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20240105BHJP
   A61L 9/12 20060101ALI20240105BHJP
   A61L 2/20 20060101ALI20240105BHJP
   A61L 101/06 20060101ALN20240105BHJP
【FI】
C01B11/02 F
A61L9/01 F
A61L9/12
A61L2/20
A61L101:06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020550425
(86)(22)【出願日】2019-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2019038549
(87)【国際公開番号】W WO2020071324
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2018186772
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391003392
【氏名又は名称】大幸薬品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】奥山 麻依子
(72)【発明者】
【氏名】米田 裕治
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/128022(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0241065(US,A1)
【文献】特開2011-230956(JP,A)
【文献】特開2006-335447(JP,A)
【文献】特開2017-202346(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0101978(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 11/02
A61L 9/01
A61L 9/12
A61L 2/20
A61L 101/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一成分である亜塩素酸塩と、当該亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素ガスを発生する第二成分と、を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生装置において、
外力を加えることにより変形可能であり、液体を排液可能に構成してある外側容器と、
前記外側容器の内部に収容され、亜塩素酸塩水溶液を密封した易破壊性の内側容器と、
前記第二成分を含有する固体組成物および前記外側容器を収容し、通気性を有する通気部を設けた袋状体と、を備え、
前記外側容器および前記内側容器を管状に構成し、前記外側容器の両端部に外側容器蓋部を備え、前記内側容器の両端部のそれぞれを、前記外側容器の両端部に備えた前記外側容器蓋部のそれぞれの内面に当接して支持してあり、
前記袋状体を上面視で矩形状に構成し、前記通気部を面状に構成してある二酸化塩素発生装置。
【請求項2】
第一成分である亜塩素酸塩と、当該亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素ガスを発生する第二成分と、を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生装置において、
外力を加えることにより変形可能であり、液体を排液可能に構成してある外側容器と、
前記外側容器の内部に収容され、前記第二成分の水溶液を密封した易破壊性の内側容器と、
前記亜塩素酸塩を含有する固体組成物および前記外側容器を収容し、通気性を有する通気部を設けた袋状体と、を備え、
前記外側容器および前記内側容器を管状に構成し、前記外側容器の両端部に外側容器蓋部を備え、前記内側容器の両端部のそれぞれを、前記外側容器の両端部に備えた前記外側容器蓋部のそれぞれの内面に当接して支持してあり、
前記袋状体を上面視で矩形状に構成し、前記通気部を面状に構成してある二酸化塩素発生装置。
【請求項3】
前記通気部が、合成樹脂材を不織布に加工して構成してある請求項1または2に記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項4】
前記固体組成物が多孔性物質を担体として含む請求項1~の何れか一項に記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項5】
前記固体組成物が粒状である請求項1~の何れか一項に記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項6】
前記第二成分が酸性物質である請求項1~の何れか一項に記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項7】
前記酸性物質が硫酸であり、前記亜塩素酸塩が亜塩素酸ナトリウムまたは亜塩素酸カリウムである請求項に記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項8】
前記酸性物質の濃度が30重量%以下であり、前記亜塩素酸塩の濃度が0.1~30重量%である請求項6または7に記載の二酸化塩素発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一成分である亜塩素酸塩と、当該亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素ガスを発生する第二成分と、を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、亜塩素酸塩の溶液と酸性物質を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる器具や装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-145654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の二酸化塩素発生装置は、持ち運ぶことを念頭に開発されたものではなく、デスクや床の上に載置するタイプのものであったり、あるいは大がかりなものが多かった。また、単に小型化して持ち運び(携帯)できるようにしても、装置内部からの液ダレの虞があるなどの問題があった。液ダレは容器の密閉性を確保することにより達成されるものの、容器の密閉性を確保すればその反面、二酸化塩素ガスの放出に滞りが生じるといった新たな問題が発生した。
【0005】
また、例えば、部屋・室内またはその他の同様の空間を二酸化塩素ガスで燻蒸したい場合、ある程度、高濃度の二酸化塩素ガスを大量かつ迅速に発生させる必要がある。発生する二酸化塩素ガスの濃度を高めるには、例えば、使用する酸性物質の濃度を上げることが考えられる。しかし、高濃度の酸性物質、例えば高濃度の硫酸は劇物であるなど取扱いに注意を必要とし危険が伴う。その危険性を回避すべく酸性物質の濃度を下げると、二酸化塩素ガスの発生効率が低下し、満足な燻蒸処理ができない、といった問題があった。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置を小型化し、二酸化塩素ガスの発生源を安全に持ち運び(携帯)できるようにし、大量の二酸化塩素ガスを迅速に発生させることができる二酸化塩素発生装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る二酸化塩素発生装置の第一特徴構成は、第一成分である亜塩素酸塩と、当該亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素ガスを発生する第二成分と、を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生装置において、外力を加えることにより変形可能であり、液体を排液可能に構成してある外側容器と、前記外側容器の内部に収容され、亜塩素酸塩水溶液を密封した易破壊性の内側容器と、前記第二成分を含有する固体組成物および前記外側容器を収容し、通気性を有する通気部を設けた袋状体と、を備え、前記外側容器および前記内側容器を管状に構成し、前記外側容器の両端部に外側容器蓋部を備え、前記内側容器の両端部のそれぞれを、前記外側容器の両端部に備えた前記外側容器蓋部のそれぞれの内面に当接して支持してあり、前記袋状体を上面視で矩形状に構成し、前記通気部を面状に構成した点にある。
【0008】
本構成によれば、二酸化塩素発生装置を、内側容器を収容した外側容器や固体組成物を袋状体に封入することで構成できるため、装置を小型化することができる。
【0009】
また、本構成によれば、袋状体に、第二成分を含有する固体組成物および外側容器を収容してあるため、第二成分を含有する固体組成物および亜塩素酸塩水溶液を非接触状態で収納することができる。この状態で、外側容器に外力を加えて変形させることにより、内部に収納した易破壊性の内側容器を容易に破壊することができる。このとき、内側容器から亜塩素酸塩水溶液が外側容器の内部に流出する。外側容器は液体を排液可能に構成してあるため、亜塩素酸塩水溶液は外側容器から排出されて第二成分を含有する固体組成物と接触し、これにより二酸化塩素ガスが発生する。袋状体内で発生した二酸化塩素ガスは、通気性を有する通気部から袋状体の外部に放出される。
【0010】
通気部からの二酸化塩素ガスの放出に伴って、燻蒸室内の二酸化塩素ガスの濃度が高まり、当該燻蒸室内にて被処理物への二酸化塩素処理(細菌・真菌の殺菌処理、ウイルス不活化処理、害虫駆除処理など)を所定時間実施することが可能となる。このときの二酸化塩素ガスは大量かつ迅速に発生させることができる。即ち、短時間で大量の二酸化塩素ガスが発生したのち、暫くすると発生する二酸化塩素ガスの量は減少する。そのため、燻蒸室内の空間の燻蒸処理時間(人の待避時間)を短くすることができ、換気後、人が直ぐに燻蒸室内に立ち入ることができる。
【0011】
本構成の二酸化塩素発生装置において、大量の二酸化塩素ガスが一過性に発生する理由は、第二成分が固体組成物に含有されているため、反応系での遊離水を減少させることができる。即ち、固体組成物中における当該第二成分のみかけの濃度より濃い状態で第二成分を反応させることができる。そのため、亜塩素酸塩および第二成分の接触面積(反応機会)が多くなって反応速度が高まり、これにより反応が劇的となって二酸化塩素ガスが一過性に(迅速に)発生すると考えられる。
【0012】
また、本構成によれば、袋状体は、二酸化塩素ガスの放出を、通気性を有する通気部とすることができる。
また、本構成によれば、内側容器の両端部を一対の外側容器蓋部で挟むようにして保持することができるため、外側容器の内部において内側容器が移動するのを防ぐことができる。これにより、二酸化塩素発生装置の持ち運び等の際に外側容器の内部で内側容器が移動して外側容器の内面に当った衝撃で内側容器が破損するのを未然に防止できる。
さらに、本構成によれば、通気部を袋状体の裏表面の少なくとも片面側に形成することができる。これにより、袋状体の内部で発生した二酸化塩素を、袋状体の少なくとも片面側の全面から放出することができるため、大量に発生した二酸化塩素ガスを迅速に袋状体の外部に放出することができる。
【0013】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第二特徴構成は、第一成分である亜塩素酸塩と、当該亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素ガスを発生する第二成分と、を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生装置において、外力を加えることにより変形可能であり、液体を排液可能に構成してある外側容器と、前記外側容器の内部に収容され、前記第二成分の水溶液を密封した易破壊性の内側容器と、前記亜塩素酸塩を含有する固体組成物および前記外側容器を収容し、通気性を有する通気部を設けた袋状体と、を備え、前記外側容器および前記内側容器を管状に構成し、前記外側容器の両端部に外側容器蓋部を備え、前記内側容器の両端部のそれぞれを、前記外側容器の両端部に備えた前記外側容器蓋部のそれぞれの内面に当接して支持してあり、前記袋状体を上面視で矩形状に構成し、前記通気部を面状に構成した点にある。
【0014】
本構成によれば、二酸化塩素発生装置を、内側容器を収容した外側容器や固体組成物を袋状体に封入することで構成できるため、装置を小型化することができる。
【0015】
また、本構成によれば、袋状体に、亜塩素酸塩を含有する固体組成物および外側容器を収容してあるため、亜塩素酸塩を含有する固体組成物および第二成分の水溶液を非接触状態で収納することができる。この状態で、外側容器に外力を加えて変形させることにより、内部に収納した易破壊性の内側容器を容易に破壊することができる。このとき、内側容器から第二成分の水溶液が外側容器の内部に流出する。外側容器は液体を排液可能に構成してあるため、第二成分の水溶液は外側容器から排出されて亜塩素酸塩を含有する固体組成物と接触し、これにより二酸化塩素ガスが発生する。袋状体内で発生した二酸化塩素ガスは、通気性を有する通気部から袋状体の外部に放出される。
【0016】
また、本構成によれば、袋状体は、二酸化塩素ガスの放出を、通気性を有する通気部とすることができる。
また、本構成によれば、内側容器の両端部を一対の外側容器蓋部で挟むようにして保持することができるため、外側容器の内部において内側容器が移動するのを防ぐことができる。これにより、二酸化塩素発生装置の持ち運び等の際に外側容器の内部で内側容器が移動して外側容器の内面に当った衝撃で内側容器が破損するのを未然に防止できる。
さらに、本構成によれば、通気部を袋状体の裏表面の少なくとも片面側に形成することができる。これにより、袋状体の内部で発生した二酸化塩素を、袋状体の少なくとも片面側の全面から放出することができるため、大量に発生した二酸化塩素ガスを迅速に袋状体の外部に放出することができる。
【0019】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第三特徴構成は、前記通気部が、合成樹脂材を不織布に加工して構成した点にある。
【0020】
本構成によれば、通気部を気体透過性および液体不透過性とすることができる。
【0021】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第四特徴構成は、前記固体組成物が多孔性物質を担体として含む点にある。
【0022】
本構成によれば、多孔性物質が第一成分または第二成分を担持する担体となるため、第一成分または第二成分を袋状体の内部で安定して保持することができる。
【0023】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第五特徴構成は、前記固体組成物を粒状とした点にある。
【0024】
本構成によれば、固体組成物を粒状とすることで、固体組成物が袋状体の内部で自由に動き易くなる。そのため、例えば亜塩素酸塩水溶液が第二成分を含有する固体組成物と接触しているときに、袋状体を左右に動かす等して固体組成物が自由に動くようにすれば、亜塩素酸塩水溶液と第二成分との反応が効率よく行われ、反応の理論値通りの二酸化塩素ガスを発生させることができる。
【0027】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第六特徴構成は、前記第二成分を酸性物質とした点にある。
【0028】
本構成によれば、亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素ガスを発生する第二成分を酸性物質とすることで、亜塩素酸塩と酸性物質とを反応させて容易に二酸化塩素ガスを発生させることができる。
【0029】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第七特徴構成は、前記酸性物質を硫酸とし、前記亜塩素酸塩を亜塩素酸ナトリウムまたは亜塩素酸カリウムとした点にある。
【0030】
本構成によれば、酸性物質としての硫酸は、保存安定性に優れ、腐食性ガスを発生せず、多孔質物質に担持させたあとも濃度変化が生じないため、取り扱いに優れる。また、亜塩素酸塩としての亜塩素酸ナトリウムまたは亜塩素酸カリウムは、入手が容易であるため、本発明を容易に実施できる。
【0031】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第八特徴構成は、前記酸性物質の濃度が30重量%以下であり、前記亜塩素酸塩の濃度が0.1~30重量%とした点にある。
【0032】
本構成によれば、酸性物質の濃度が30重量%を超える場合は、溶液の粘度が高くなって分散し難くなり、調製された酸性物質のばらつきが大きくなって好ましくない。また、亜塩素酸塩の濃度が0.1重量%未満の場合は、二酸化塩素ガスの発生において亜塩素酸塩が不足するという問題が生じる可能性があり、30重量%を超える場合は、亜塩素酸塩が飽和して結晶が析出しやすいという問題が生じる可能性がある。よって、安全性や安定性、二酸化塩素ガスの発生効率などを鑑みた場合、0.1~30重量%とするのがよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の二酸化塩素発生装置を示す概略図である。
図2】二酸化塩素ガスを捕集する装置を示す概略図である。
図3】二酸化塩素ガスの捕集時間と捕集量の関係を示したグラフである。
図4】亜塩素酸ナトリウムの量と二酸化塩素ガスの捕集量の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明の二酸化塩素発生装置は、第一成分である亜塩素酸塩と、当該亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素ガスを発生する第二成分と、を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる。
【0035】
図1に示したように、本発明の二酸化塩素発生装置Xは、外力を加えることにより変形可能であり、液体を排液可能に構成してある外側容器10と、外側容器10の内部に収容され、亜塩素酸塩水溶液1を密封した易破壊性の内側容器20と、第二成分2を含有する固体組成物30および外側容器10を収容し、通気性を有する通気部41を設けた袋状体40と、を備える。
【0036】
第二成分は、亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素ガスを発生する物質であればよく、例えば酸性物質、或いは、酸性物質を含有することなく単体で亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素を発生する物質とすることができる。本実施形態では、第二成分2が酸性物質である場合について説明する。当該酸性物質は水に溶解することにより酸性を示す酸性物質とするのがよい。
【0037】
(外側容器)
外側容器10は、外力を加えることにより変形可能であり、内部に、内側容器20を収容できる空間を有する態様であればよい。このような態様を呈する素材としては、例えば、可撓性素材が例示される。ここでいう可撓性とは、外力を加えると容易に、例えば円弧状に湾曲して変形させることができ、かつ加えた力を解除すると元の形状に戻り易い性質を有するものをいう。可撓性を持つ樹脂素材は具体的には、ポリエチレンやポリプロピレン、シリコンなどが挙げられる。
【0038】
外側容器10の形状としては、管状(試験管状)・スティック状・袋状・箱状などが例示されるが、これに限られるものではない。例えば外側容器10を袋状に構成した場合、当該袋状の外側容器10の内部に内側容器20を収容しておく。外力を加える際には当該内側容器20が破壊される程度に袋状の外側容器10を押圧して変形させるとよい。本実施形態では、外側容器10の形状を管状とした場合について説明する。
【0039】
外側容器10は、液体を排液可能に構成してある。本実施形態では、外側容器10の両端部に複数の小さな開口11a(例えば直径2mmの開口を5つ)を形成した外側容器蓋部11を備えた場合について説明する。即ち、外側容器蓋部11に形成した開口11aを介して液体を排液することができる。
【0040】
また、外側容器10の内部に内側容器20を保持する態様として、内側容器20の両端部のそれぞれを、外側容器10の両端部に備えた外側容器蓋部11のそれぞれの内面に当接して支持するとよい。本構成により、内側容器20の両端部を一対の外側容器蓋部11で挟むようにして保持することができるため、外側容器10の内部において内側容器20が移動するのを防ぐことができる。これにより、二酸化塩素発生装置Xの持ち運び等の際に外側容器10の内部で内側容器20が移動して外側容器10の内面に当った衝撃で内側容器20が破損するのを未然に防止できる。
【0041】
(内側容器)
内側容器20は、亜塩素酸塩水溶液1を密封可能であり、易破壊性の容器である。ここでいう易破壊性とは、外側から力を及ぼして変形させる、或いは、曲げる(あるいは曲げようとする)ことにより容易に亀裂が入ったり割れたりして破壊できる性質をいうが、搬送中や保存時における揺れや軽い衝撃によって破損するものであってはならない。易破壊性の封入体としては、例えばガラスアンプルや厚みが比較的薄いプラスチック容器が挙げられる。易破壊性の内側容器20としてプラスチック容器を使用する場合、当該容器に予め脆弱部を人為的に設けておき、外側から力を及ぼして曲げる(あるいは曲げようとする)ことにより、その脆弱部に亀裂が入ったり、割れたり(破損したり)するように構成することもできる。
【0042】
内側容器20の形状は、管状(試験管状)・スティック状・袋状・箱状などが例示されるが、これに限られるものではない。本実施形態では、内側容器20の形状を管状とした場合について説明する。
【0043】
(袋状体)
袋状体40は、通気性を有する通気部41を設けてある。本実施形態では、袋状体40を上面視で矩形状に構成し、通気部41を面状に構成してある態様について説明するが、これらに限定されるものではない。本構成では、通気部41を袋状体40の裏表面の少なくとも片面側の形成することができる。これにより、袋状体40の内部で発生した二酸化塩素を、袋状体40の少なくとも片面側の全面から放出することができるため、大量に発生した二酸化塩素ガスを迅速に袋状体40の外部に放出することができる。
【0044】
袋状体40は、表裏面の少なくとも何れか一面を気体透過性で液体不透過性としている。すなわち、袋状体40は、表面を気体透過性で液体不透過性とし裏面を気液不透過性としても、表面を気液不透過性とし裏面を気体透過性で液体不透過性としても、表裏面の両面とも気体透過性で液体不透過性としてもよい。このとき、袋状体40は、表裏面の少なくとも何れか一面を透光性とした態様とすることができる。
袋状体40の周縁部40aは、ヒートシール、超音波シール、接着剤などによって接着するとよい。
【0045】
袋状体40の表面或いは裏面を気体透過性で液体不透過性とするには、表面或いは裏面に設けた通気部41を、合成樹脂材を不織布に加工して構成するとよい。当該不織布は、例えば高密度ポリエチレン不織布のシートを使用することができるが、これに限定されるものではない。当該不織布としては、例えばエクセポール(登録商標、三菱ケミカル社製)、タイベック(登録商標、デュポン社製)、ゴアテックス(登録商標、WLゴア&アソシエイツ社製)等を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0046】
袋状体40の表面或いは裏面を気液不透過性とするには、アクリルニトリルスチレン(AS)樹脂、アクリルニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、エチレンビニールアルコール(EVOH)樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロプレン樹脂、ポリオレフィン樹脂などの合成樹脂材からなるシートを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0047】
(亜塩素酸塩)
本発明で使用される亜塩素酸塩としては、例えば、亜塩素酸アルカリ金属塩や亜塩素酸アルカリ土類金属塩が挙げられる。亜塩素酸アルカリ金属塩としては、例えば亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸リチウムが挙げられ、亜塩素酸アルカリ土類金属塩としては、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸バリウムが挙げられる。なかでも、入手が容易という点から、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウムが好ましく、亜塩素酸ナトリウムが最も好ましい。これら亜塩素酸素アルカリは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0048】
亜塩素酸塩水溶液における亜塩素酸塩の割合は、0.1重量%~30重量%であることが好ましい。0.1重量%未満の場合は、二酸化塩素ガスの発生において亜塩素酸塩が不足するという問題が生じる可能性があり、30重量%を超える場合は、亜塩素酸塩が飽和して結晶が析出しやすいという問題が生じる可能性がある。安全性や安定性、二酸化塩素ガスの発生効率などを鑑みた場合、15重量%~25重量%が好ましく、さらに好ましい範囲は、20重量%~25重量%である。
【0049】
(酸性物質)
本発明で使用し得る酸性物質としては、無機酸や有機酸あるいはその塩であり、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、メタリン酸、ピロリン酸、スルファミン酸などの無機酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、ピルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、グリコール酸、フマル酸、マロン酸、マレイン酸、シュウ酸、コハク酸、アクリル酸、クロトン酸、シュウ酸、グルタル酸などの有機酸、あるいはこれらの塩が挙げられる。また、無機酸の塩としては、例えば、リン酸二水素の塩(ナトリウム塩やカリウム塩、以下同様)、リン酸二水素塩とリン酸一水素塩の混合物などが挙げられる。
なかでも、保存安定性に優れ、腐食性ガスを発生せず、多孔質物質に(含浸)担持させたあとも濃度変化が生じないなどの理由により、硫酸を使用することが好ましい。硫酸の濃度は、固体組成物30に含有された状態での最終濃度を30重量%以下とするのがよく、好ましくは10重量%以下とするのが安全性の観点で好ましい。酸性物質は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0050】
(固体組成物)
固体組成物30は、第二成分(酸性物質)を含有する態様であればよく、例えば、酸性物質の結晶や、酸性物質を含有する多孔性物質の態様等とすることができる。本実施形態では、固体組成物30が多孔性物質を担体として含む場合について説明する。即ち、上記の「第二成分2を含有する固体組成物30」は、水に溶解することにより酸性を示す酸性物質を含有する多孔性物質のこととなる。
【0051】
当該固体組成物30は粒状とするのがよい。固体組成物30を粒状とすることで、固体組成物30が袋状体40の内部で自由に動き易くなる。そのため、亜塩素酸塩水溶液が第二成分(酸性物質)を含有する固体組成物30と接触しているときに、袋状体40を左右に動かす等して固体組成物30が自由に動くようにすれば、亜塩素酸塩水溶液と酸性物質との反応が効率よく行われ、反応の理論値通りの二酸化塩素ガスを発生させることができる。
【0052】
上述した多孔性物質は、例えば多孔質材料あるいは焼成骨材を使用することができるが、これらに限られるものではない。多孔質材料としては、例えば多孔質シリカ、セピオライト、モンモリロナイト、ケイソウ土、タルク、ゼオライト、活性白土、モレキュラーシーブ、活性アルミナ等が挙げられる。なかでも、入手容易で多孔性に優れていて(多孔空間が広く)、酸性物質あるいは亜塩素酸塩を含ませやすいという点で多孔質シリカを使用することが好ましい。これら多孔質シリカなどの比表面積としては特に限定はない。
焼成骨材としては、例えば動物(哺乳類、魚類、鳥類含む)の骨、貝殻及びサンゴを焼成して破砕片状、粒子状あるいは粉状にしたものを用いることができる。
【0053】
このような多孔性物質の粒径は、例えば0.05~10mm程度とするのがよい。また、当該多孔性物質は、室温での水分吸着量が5%以上であるものを選択するのがよい。また、当該多孔性物質は、その安息角が50°以下、好ましくは45°以下、より好ましくは40°以下、さらに好ましくは30°以下であるものを選択するのがよい。例えば多孔質シリカの一種であるキャリアクトQ-10(富士シリシア化学社製)の安息角は、粒径1.7-4.0mm:19°、75-500μm:23°であり、キャリアクトG-10(富士シリシア化学社製)の安息角は、粒径0.35-1.7mm:35°である。
【0054】
このような構成の二酸化塩素発生装置Xにおいて、外側容器10に外力を加えて変形させることにより、内部に収納した易破壊性の内側容器20を容易に破壊することができる。このとき、内側容器20から亜塩素酸塩水溶液が外側容器10の内部に流出する。外側容器10は開口11aを介して液体を排液可能に構成してあるため、亜塩素酸塩水溶液は外側容器10から排出されて酸性物質(第二成分)を含有する固体組成物30と接触し、これにより二酸化塩素ガスが発生する。袋状体40内で発生した二酸化塩素ガスは、通気性を有する通気部41から袋状体40の外部に放出される。
【0055】
本発明の二酸化塩素発生装置Xを用いる場所(燻蒸場所)としては特に限定はなく、例えば一般家庭(リビングや玄関、お手洗いや台所など)に、また工業用(工場用)として、あるいは病院や診療所・介護施設などの医療現場、学校や駅舎・公衆トイレなどの公共施設などにと、あらゆる場面で使用することができる。また、人が居住し得る室内空間といった比較的広い空間だけでなく、冷蔵庫や下駄箱、車内(車、バス、電車)などの狭い空間においても使用することが可能である。このように、本発明の発生装置は適用可能な空間の広さは特に制限されるものではないが、閉鎖空間であることが望ましい。
【0056】
二酸化塩素ガスは非常に溶解性が大きいことから、反応させる場合には出来るだけ反応系で遊離水を減少させるために、ゼオライト、シリカゲルなどの多孔性物質を担体として利用する。反応系での遊離水を減少させることにより、硫酸などの酸性物質および亜塩素酸塩の反応速度を高めると共に、二酸化塩素ガス溶解量を減らすことができる。よって、実質的に二酸化塩素ガス量を短期間(一過性)に高濃度で発生させることが可能となる。
このように、本発明の二酸化塩素発生装置Xを使用すれば、二酸化塩素ガスを大量かつ迅速に発生させることができる。そのため、燻蒸室内の空間の燻蒸処理時間(人の待避時間)を短くすることができ、換気後、人が直ぐに燻蒸室内に立ち入ることができる。
【0057】
〔別実施の形態〕
上述した実施形態では、内側容器20に亜塩素酸塩水溶液1を密封し、酸性物質の第二成分2を含有する固体組成物30を使用した場合について説明した。これに対して、本実施形態では、内側容器20に酸性物質である第二成分2の水溶液を密封し、亜塩素酸塩を含有する固体組成物30を使用した場合について説明する。
【0058】
即ち、別実施の形態の二酸化塩素発生装置Xは、外力を加えることにより変形可能であり、液体を排液可能に構成してある外側容器10と、外側容器10の内部に収容され、第二成分(酸性物質)の水溶液を密封した易破壊性の内側容器20と、亜塩素酸塩を含有する固体組成物30および外側容器10を収容し、通気性を有する通気部41を設けた袋状体40と、を備える。
【0059】
このような構成の二酸化塩素発生装置Xにおいて、外側容器10に外力を加えて変形させることにより、内部に収納した易破壊性の内側容器20を容易に破壊することができる。このとき、内側容器20から酸性物質の水溶液が外側容器10の内部に流出する。外側容器10は開口11aを介して液体を排液可能に構成してあるため、酸性物質の水溶液は外側容器10から排出されて亜塩素酸塩を含有する固体組成物30と接触し、これにより二酸化塩素ガスが発生する。袋状体40内で発生した二酸化塩素ガスは、通気性を有する通気部41から袋状体40の外部に放出される。
【0060】
本形態において使用し得る酸性物質は、上述した酸性物質を使用することができる。酸性物質として硫酸を使用する場合は、その水溶液の濃度は30重量%以下とするのがよい。
また、本形態において固体組成物30に含有された状態での亜塩素酸塩は、最終濃度を30重量%以下とするのがよく、好ましくは20~25重量%とするのが安全性や安定性、二酸化塩素ガスの発生効率の観点で好ましい。
【実施例
【0061】
〔実施例1〕
本発明の二酸化塩素発生装置Xを使用して二酸化塩素を発生させ、発生した二酸化塩素のガス量を求めた。二酸化塩素発生装置Xは、外力を加えることにより変形可能なポリプロピレン製の樹脂筒(外側容器10:Φ20、全長150mm)と、亜塩素酸ナトリウム水溶液を密封した円筒状ガラスアンプル(内側容器20:Φ8、全長120mm)と、酸性物質として硫酸を従来公知の方法により含浸させたキャリアクトQ-10(粒径1.7-4.0mm、富士シリシア化学社製)(固体組成物30)および樹脂筒を収容した不織布袋(袋状体40:120mm×200mm)と、を備えたものを使用した。樹脂筒(外側容器10)の両端には、直径2mmの開口11aを各5個ずつ形成した外側容器蓋部11を装着した。不織布袋(袋状体40)は、表面をタイベック(登録商標、デュポン社製)、裏面を塩化ビニル樹脂からなるシートを使用し、周縁部40aのシール幅が10mmとなるように両者をヒートシールした。尚、亜塩素酸ナトリウム水溶液に含まれる亜塩素酸ナトリウムの量は890mg、固体組成物30に含まれる硫酸の量は260mgであり、発生する二酸化塩素ガスの理論値は330mgである。
【0062】
不織布袋(袋状体40)の外側より樹脂筒(外側容器10)を変形させて樹脂筒の内部に収容したガラスアンプル(内側容器20)を破壊した後、速やかに数回上下に振り、亜塩素酸ナトリウム水溶液と硫酸を含浸させたシリカゲル(固体組成物30)とを接触させることにより、二酸化塩素ガスを発生させた。図2に示したように、二酸化塩素ガスが発生している二酸化塩素発生装置Xを直ちに塩化ビニル製容器51の中に入れ、別の容器52に収容したヨウ化カリウム水溶液(200mL)に二酸化塩素ガスを溶解させて二酸化塩素ガスを捕集した。反応開始後の定める時間となった時点で捕集を終え、捕集した二酸化塩素ガス量を以下の滴定方法により求めた。結果は表1および図3に示した。
【0063】
滴定方法
二酸化塩素ガスが溶解したヨウ化カリウム水溶液5mLを採取し、酸性条件下、0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液を用いてヨウ素滴定を行った。下記の算出式に従い、ヨウ化カリウム水溶液中に捕集した二酸化塩素ガス量(mg)を算出した。
二酸化塩素(mg)=滴定量×F×1.349÷5×200(F:0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液のファクター)(1.349:0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液1mLは二酸化塩素1.349mgに対応)
【0064】
【表1】
【0065】
この結果、本発明の二酸化塩素発生装置Xより発生した二酸化塩素ガスは、発生から30分でピークに達し、その後、徐々に発生する二酸化塩素ガスの量は減少していくものと認められた。発生から30分後の二酸化塩素ガス量は、理論値の86%に達しているため、短時間で効率よく二酸化塩素ガスが発生していると認められた。
【0066】
〔実施例2〕
実施例1の二酸化塩素発生装置Xにおいて、亜塩素酸ナトリウム水溶液に含まれる亜塩素酸ナトリウムの量を400~1200mgに種々変更し、固体組成物30に含まれる硫酸の量を115~350mgに種々変更したものを使用して二酸化塩素を発生させ、捕集した二酸化塩素のガス量を求めた。結果は表2および図4に示した。
【0067】
【表2】
【0068】
この結果、二酸化塩素発生装置Xにおいて、亜塩素酸ナトリウム水溶液に含まれる亜塩素酸ナトリウムの量が増えるに従って捕集される二酸化塩素のガス量も一次関数的に増えることが判明した。また、反応効率はほぼ100%であるため、理論値通りに効率よく二酸化塩素ガスが発生していると認められた。従って、本発明の二酸化塩素発生装置Xにおいて、亜塩素酸ナトリウム水溶液に含まれる亜塩素酸ナトリウムの量を調節することで、発生させたい二酸化塩素のガス量を容易に調節できると認められた。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、第一成分である亜塩素酸塩と、当該亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素ガスを発生する第二成分と、を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生装置に利用できる。
【符号の説明】
【0070】
X 二酸化塩素発生装置
1 亜塩素酸塩水溶液
2 第二成分
10 外側容器
11 外側容器蓋部
20 内側容器
30 固体組成物
40 袋状体
41 通気部
図1
図2
図3
図4