(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】核磁気共鳴イメージング装置、核磁気共鳴イメージング方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20240105BHJP
G01N 24/08 20060101ALI20240105BHJP
G01R 33/54 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
A61B5/055 311
A61B5/055 370
G01N24/08 510D
G01N24/08 510Y
G01R33/54
(21)【出願番号】P 2021520776
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2020019524
(87)【国際公開番号】W WO2020235505
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2019093569
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、医療分野研究成果展開事業・先端計測分析技術・機器開発プログラム「多彩な解析情報を得る機能的NMRの生組織への展開と生体の所望部位を可視化するMRIの開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】拝師 智之
(72)【発明者】
【氏名】忰田 亮平
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 進
【審査官】相川 俊
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-178070(JP,A)
【文献】特開平03-231632(JP,A)
【文献】特開2014-210175(JP,A)
【文献】特開平06-181914(JP,A)
【文献】特開昭60-029685(JP,A)
【文献】特開平06-090921(JP,A)
【文献】国際公開第2013/094582(WO,A1)
【文献】GREISER, A, et al.,Fast 3D 23Na Gradient Echo MRI of the Human Heart,Proceedings of International Society for Magnetic Resonance in Medicine,1999年,pp.1308
【文献】BOTTOMLEY, P. A.,Sodium MRI in human heart: a review,NMR IN BIOMEDICINE,2016年,Vol.29,pp.187-196
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/08
G01R 33/20 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁場を形成する静磁場形成部と、
前記静磁場内に対象を保持する対象保持部と、
前記静磁場内の前記対象に、励起パルス、位相エンコード勾配磁場、及び周波数エンコード勾配磁場を含むパルスシークエンスを印加し、前記励起パルスの印加により前記対象からNMR信号を生じさせ、前記周波数エンコード勾配磁場の印加により当該NMR信号をディフェーズさせた後にリフェーズさせるパルス印加部と、
異なる振幅の前記位相エンコード勾配磁場により位相エンコードされた前記NMR信号のそれぞれを、前記パルス印加部により前記周波数エンコード勾配磁場を印加して前記NMR信号をリフェーズさせている最中に検出する検出部と、
前記検出部が検出した前記NMR信号から画像を生成する画像生成部と、
を備え、
前記パルス印加部は、前記NMR信号をリフェーズさせるための前記周波数エンコード勾配磁場の印加から信号取得時間の半分より前、かつ、前記励起パルスの印加から測定対象の原子の複数のT2緩和時間のうち最長でないものに等しい時間が経過するまでにエコーピークがくるような前記パルスシークエンスを前記対象に印加し、
前記検出部は、前記NMR信号をリフェーズさせるための前記周波数エンコード勾配磁場の印加から前記信号取得時間経過までの全域に渡って前記NMR信号を検出し、
前記画像生成部は、前記全域に渡って検出された前記NMR信号全体から前記画像を生成し、
前記パルスシークエンスに、極性が交互に反転する連続180°パルスを含む前置RFパルスを敷設することによって、コントラスト画像を生成する、
ことを特徴とする、核磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記測定対象の原子が、スピン量子数3/2の原子核である、請求項1に記載の核磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記測定対象の原子が、
23Naである、請求項2に記載の核磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記測定対象の原子が
23Naであり、
繰り返し時間が30ms未満であり、
前記画像が密度分布画像である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の核磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記パルス印加部は、前記位相エンコードが同じ前記パルスシークエンスを複数回にわたり前記対象に印加し、
前記画像生成部は、前記位相エンコードが同じ複数回の前記パルスシークエンスから得られた前記NMR信号を積算し、積算された前記NMR信号に基づいて前記画像を生成する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の核磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記パルス印加部は、2種類の原子に対応した異なる周波数の2種類以上の前記励起パルスを印加可能である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の核磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
静磁場内の対象に、励起パルス、位相エンコード勾配磁場、及び周波数エンコード勾配磁場を含むパルスシークエンスを印加し、前記励起パルスの印加により前記対象からNMR信号を生じさせ、前記周波数エンコード勾配磁場の印加により当該NMR信号をディフェーズさせた後にリフェーズさせるパルス印加工程と、
異なる振幅の前記位相エンコード勾配磁場により位相エンコードされた前記NMR信号のそれぞれを、前記パルス印加工程により前記周波数エンコード勾配磁場を印加して前記NMR信号をリフェーズさせている最中に検出する検出工程と、
前記検出工程で検出した前記NMR信号から画像を生成する画像生成工程と、
を備え、
前記パルス印加工程では、前記NMR信号をリフェーズさせるための前記周波数エンコード勾配磁場の印加から信号取得時間の半分より前、かつ、前記励起パルスの印加から測定対象の原子の複数のT2緩和時間のうち最長でないものに等しい時間が経過するまでにエコーピークがくるような前記パルスシークエンスを前記対象に印加し、
前記検出工程では、前記NMR信号をリフェーズさせるための前記周波数エンコード勾配磁場の印加から前記信号取得時間経過までの全域に渡って前記NMR信号を検出し、
前記画像生成工程では、前記全域に渡って検出された前記NMR信号全体から前記画像を生成し、
前記パルスシークエンスに、極性が交互に反転する連続180°パルスを含む前置RFパルスを敷設することによって、コントラスト画像を生成する、
ことを特徴とする、核磁気共鳴イメージング方法。
【請求項8】
コンピュータを、
パルス印加部に、静磁場内の対象に、励起パルス、位相エンコード勾配磁場、及び周波数エンコード勾配磁場を含むパルスシークエンスを印加させ、前記励起パルスの印加により前記対象からNMR信号を生じさせ、前記周波数エンコード勾配磁場の印加により当該NMR信号をディフェーズさせた後にリフェーズさせるパルス印加手段であって、前記NMR信号をリフェーズさせるための前記周波数エンコード勾配磁場の印加から信号取得時間の半分より前、かつ、前記励起パルスの印加から測定対象の原子の複数のT2緩和時間のうち最長でないものに等しい時間が経過するまでにエコーピークがくるような前記パルスシークエンスを前記対象に印加させ、前記パルスシークエンスに、極性が交互に反転する連続180°パルスを含む前置RFパルスを敷設することによって、コントラスト画像を生成するパルス印加手段、
検出部に、異なる振幅の前記位相エンコード勾配磁場により位相エンコードされた前記NMR信号のそれぞれを、前記パルス印加部により前記周波数エンコード勾配磁場を印加して前記NMR信号をリフェーズさせている最中に検出させる検出手段であって、前記NMR信号をリフェーズさせるための前記周波数エンコード勾配磁場の印加から前記信号取得時間経過までの全域に渡って前記NMR信号を検出させる検出手段、
画像生成部に、前記検出部で検出した前記NMR信号から画像を生成させる画像生成手段であって、前記全域に渡って検出された前記NMR信号全体から前記画像を生成させる、画像生成手段、
として機能させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核磁気共鳴イメージング装置、核磁気共鳴イメージング方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴イメージング(MRI)とは、静磁場内の被写体に特定の勾配磁場を印加しつつ特定のRF(Radio Frequency)パルス(励起パルス)を照射し被写体内の特定原子を核磁気共鳴させることで受信コイルに生じた誘導電流を核磁気共鳴(NMR)信号として取得し、この信号から被写体の画像(例えば、二次元画像(即ち、断面画像)、三次元画像)を生成する方法である。MRIで測定される勾配磁場の印加などにより位置情報が付加されているNMR信号は特にMRI信号とも呼ばれる。また、NMR信号を取得するために特定の強度及びタイミングで印加されるRFパルス及び勾配磁場のセットはパルスシークエンスと呼ばれる。
【0003】
前述の勾配磁場により、被写体の置かれている実空間と被写体の空間周波数空間(k空間)とが、フーリエ変換の関係で結びつけられており、前述のMRI信号は被写体のk空間の情報を反映している。そこで、MRIでは、MRI信号から被写体のk空間の情報を離散的に収集し、得られた離散的なデータに離散逆フーリエ変換を施すことで実空間での被写体の画像を再構成する。
【0004】
MRI信号からのk空間のデータの収集法としては、三軸傾斜磁場(X軸、Y軸、Z軸)を三軸勾配磁場コイルによって制御することで、被写体のk空間のデカルト座標系の格子点上のデータを一列ずつ抽出する方法(ラインスキャン)、被写体のk空間の極座標系上のデータを原点を通る複数の放射状の直線又は螺旋状の曲線に沿って順番に抽出する方法(ラジアルスキャン/スパイラルスキャン)などが実用化されている。
【0005】
MRI信号には、設計されたパルスシークエンスによる勾配磁場の操作によって発生する凸状の信号強度の強い部分があり、これをエコーと呼ぶ。エコー及びその前後の信号変化が被写体の空間情報を含んでいる。勾配磁場の印加に起因するエコーは、勾配エコー(gradient echo)と呼ばれる。高周波磁場の連続印加(例えば、励起パルスの印加後の反転パルスの印加)に起因するエコーは、スピンエコー(spin echo)と呼ばれる。エコーの原因によらず、励起パルスの印加からエコーの発生までの時間は、エコー時間(TE)と呼ばれる。
【0006】
被写体内の標的のNMR原子核は、置かれている状況によって、分布、密度、及び緩和時間が異なるため、標的に適したMRI信号集積法(特に、パルスシークエンス)の研究開発が日進月歩で進められている。
【0007】
例えば、こうした方法のひとつとして、部分エコー(partial echo)法が知られている。部分エコー法では、勾配エコー(GRE)法、TEを短くして、TEから信号収集時間t
aの半分の時間が経過するまでMRI信号を取得しすることでk空間のおよそ半分に相当するデータを収集し、k空間のデータの残りの部分に適宜補正(例えば、0フィル(ぜろふぃる)、エルミート対称性に基づく複製による補完)をした後に、逆フーリエ変換を行うことで、MRI画像を生成する。GRE法において部分エコー法を適用する場合のパルスシークエンスを
図5に示す。例えば、0フィルで補正を行う例が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のMRIでは、生体などの被写体内に豊富に存在する1H(プロトン)の在否に基づいて生体の断面画像を生成する。しかし、診断精度の向上や研究対象の拡大を狙い、他のNMR原子核を標的とするMRI装置の開発が望まれている。例えば、生体内のナトリウムを可視化し、特に脳や腎臓に関連する病状を早期に発見することなどを期待し、23Na-MRI装置の開発の試みが始まっている。
【0010】
しかし、
23NaのNMR信号は
1H(プロトン)のNMR信号に比べて低感度であることが知られている。例えば、
図7に示すように、生理食塩水(0.9%NaCl水溶液、2ml)を測定したところ、
23NaのNMR信号は
1HのNMR信号の20000分の1程度であった。
【0011】
また、生体を含む多くの被写体で1H以外のNMR原子核の存在量が1Hに比べて少ないため、画像の取得に必要な信号強度を有するMRI信号を取得することが困難であった。
【0012】
1H以外の原子を標的としたMRIで実用的な信号強度のMRI信号を得るためには、単純には、同一画像に対応するMRI信号を複数回取得し積算することで得られた積算信号から画像を生成することが考えられるが、23Naのように信号強度が低い場合、静磁場強度が高い磁石を選択してNMR信号強度を稼ぎ、さらには信号収集の繰り返し回数を大きく増やす必要があり、これでは患者が耐えられる測定時間を超えてしまうおそれがある。そのため、繰り返し回数を稼ぎつつ測定時間を許容限度に収めるために、一回のMRI信号の取得に掛かる繰り返し時間(TR)、特に、励起パルスの印加からMRI信号のエコーの発生までに掛かるエコー時間(TE)を極力短くする必要がある。
【0013】
しかし、特許文献1のような部分エコー法では、半分の撮像データからk空間を構成しているため、偽像アーチファクトがしばしば混入する恐れがあった。特に、勾配エコー法によるMRI撮像の場合は、空間的な静磁場の不均一性などによって、エルミート対称性が不完全となり、偽像アーチファクトの問題が顕著であった。
【0014】
また、23Na-MRIの実用化のため、23NaのNMR信号におけるS/N比の一層の改善が望まれていた。23Naナトリウムはスピン量子数が3/2のNMR原子核である。また、1H(プロトン)の場合にはH2Oの水素結合に起因して実行的に大きな分子や錯体となることが多いが、23Naは生体内でもほぼ単一のイオンとして存在していると考えられる。このため、23NaのT2緩和時間が数ms(ミリ秒)から約30msと短いものが混在している。この2点の特徴により、23Na-MRIの場合には、生体の水と脂質に含まれる1H(プロトン)(スピン量子数1/2、おもなT2緩和時間は数十ms~数百ms)の撮像理論のうち画像コントラスト生成の方法論を単純に当てはめることが困難であった。
【0015】
以上を鑑み、本発明は、好適にMRI画像を撮影できる核磁気共鳴イメージング装置、核磁気共鳴イメージング方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の観点に係る核磁気共鳴イメージング装置は、
静磁場を形成する静磁場形成部と、
前記静磁場内に対象を保持する対象保持部と、
前記静磁場内の前記対象に、励起パルス、位相エンコード勾配磁場、及び周波数エンコード勾配磁場を含むパルスシークエンスを印加し、前記励起パルスの印加により前記対象からNMR信号を生じさせ、前記周波数エンコード勾配磁場の印加により当該NMR信号をディフェーズさせた後にリフェーズさせるパルス印加部と、
異なる振幅の前記位相エンコード勾配磁場により位相エンコードされた前記NMR信号のそれぞれを、前記パルス印加部により前記周波数エンコード勾配磁場を印加して前記NMR信号をリフェーズさせている最中に検出する検出部と、
前記検出部が検出した前記NMR信号から画像を生成する画像生成部と、
を備え、
前記パルス印加部は、前記NMR信号をリフェーズさせるための前記周波数エンコード勾配磁場の印加から信号取得時間の半分より前にエコーピークがくるような前記パルスシークエンスを前記対象に印加し、
前記検出部は、前記NMR信号をリフェーズさせるための前記周波数エンコード勾配磁場の印加から前記信号取得時間経過までの全域に渡って前記NMR信号を検出し、
前記画像生成部は、前記全域に渡って検出された前記NMR信号全体から前記画像を生成する、
ことを特徴とする。
【0017】
本発明の第2の観点に係る核磁気共鳴イメージング方法は、
静磁場内の対象に、励起パルス、位相エンコード勾配磁場、及び周波数エンコード勾配磁場を含むパルスシークエンスを印加し、前記励起パルスの印加により前記対象からNMR信号を生じさせ、前記周波数エンコード勾配磁場の印加により当該NMR信号をディフェーズさせた後にリフェーズさせるパルス印加工程と、
異なる振幅の前記位相エンコード勾配磁場により位相エンコードされた前記NMR信号のそれぞれを、前記パルス印加工程により前記周波数エンコード勾配磁場を印加して前記NMR信号をリフェーズさせている最中に検出する検出工程と、
前記検出工程で検出した前記NMR信号から画像を生成する画像生成工程と、
を備え、
前記パルス印加工程では、前記NMR信号をリフェーズさせるための前記周波数エンコード勾配磁場の印加から信号取得時間の半分より前にエコーピークがくるような前記パルスシークエンスを前記対象に印加し、
前記検出工程では、前記NMR信号をリフェーズさせるための前記周波数エンコード勾配磁場の印加から前記信号取得時間経過までの全域に渡って前記NMR信号を検出し、
前記画像生成工程では、前記全域に渡って検出された前記NMR信号全体から前記画像を生成する、
ことを特徴とする。
【0018】
本発明の第3の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
パルス印加部に、静磁場内の対象に、励起パルス、位相エンコード勾配磁場、及び周波数エンコード勾配磁場を含むパルスシークエンスを印加させ、前記励起パルスの印加により前記対象からNMR信号を生じさせ、前記周波数エンコード勾配磁場の印加により当該NMR信号をディフェーズさせた後にリフェーズさせるパルス印加手段であって、前記NMR信号をリフェーズさせるための前記周波数エンコード勾配磁場の印加から信号取得時間の半分より前にエコーピークがくるような前記パルスシークエンスを前記対象に印加させるパルス印加手段、
検出部に、異なる振幅の前記位相エンコード勾配磁場により位相エンコードされた前記NMR信号のそれぞれを、前記パルス印加部により前記周波数エンコード勾配磁場を印加して前記NMR信号をリフェーズさせている最中に検出させる検出手段であって、前記NMR信号をリフェーズさせるための前記周波数エンコード勾配磁場の印加から前記信号取得時間経過までの全域に渡って前記NMR信号を検出させる検出手段、
画像生成部に、前記検出部で検出した前記NMR信号から画像を生成させる画像生成手段であって、前記全域に渡って検出された前記NMR信号全体から前記画像を生成させる、画像生成手段、
として機能させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、好適にMRI画像を撮影できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るMRI装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るパルスシークエンスを示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る画像生成処理のフローチャートである。
【
図4】従来のGRE法のパルスシークエンスを示す模式図である。
【
図5】部分エコー法のパルスシークエンスを示す模式図である。
【
図7】食塩水の
1H-NMR信号と
23Na-NMR信号との強度を、繰り返し時間に対して示すグラフである。
【
図8】
23Na-MRIによるマウスの腎臓付近の横断面画像である。(a)は手術群、(b)は対照群の横断面画像を示す。
【
図9】同一測定時間で測定した食塩水の
1H-NMR信号と
23Na-NMR信号との強度を、繰り返し時間に対して示すグラフである。
【
図10】
1H/
23Na-デュアルMRI装置の測定台の写真である。(a)は、測定台を上から撮った写真、(b)は底板を測定台から取り外し裏側から撮った写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
(MRI装置100の構成)
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るMRI装置100は、静磁場コイル10と、勾配磁場発生部20と、RFパルス印加部30と、受信部40と、制御装置50と、表示部60と、操作部70と、を備える。
【0023】
静磁場コイル10と、勾配磁場発生部20が有する勾配磁場コイル21と、RFパルス印加部30が有するRF(Radio Frequency)コイル31とは、例えば、同軸(Z軸)を中心に配置されるとともに、図示しない筐体内に設けられている。
【0024】
撮影対象である対象1は、保持部2により筐体内のボア3(検査空間)内に保持される。例えば、対象1がヒトであれば、保持部2は寝台であってもよい。保持部2は、例えば、ボア3内で撮影部位に応じて対象1を移動させる(例えば、水平移動、垂直移動、又は回転移動させる)、又は、ボア3外からボア3内に対象1を移動させる搬送手段を備えてもよい。また、対象1は、全体ではなく一部でもよく、例えば、ヒトの全身のみならず、その一部(例えば、頭部又は腹部など)でもよい。MRI装置100の形状、特に、ボア3周辺の構造、例えば、勾配磁場コイル21、RF(Radio Frequency)コイル31は、対象1の形状に最適化されていることが好ましい。
【0025】
静磁場コイル10は、ボア3内に数ppmレベルでの均一な静磁場(例えば、1.5テスラから21テスラ)を形成する。例えば、静磁場コイル10は、静磁場コイル10の中心軸又は磁束の中心軸がボア3内を(特に、ボア3の中心軸を)通るように形成されてもよい。形成される静磁場は、概ねZ方向に平行な水平磁場である。静磁場コイル10は、例えば、超電導コイルや常電導コイルから構成され、図示しない静磁場コイル駆動部を介して、制御装置50の制御の下で駆動される。なお、静磁場コイル10は、制御装置50と独立した制御系統によって駆動制御されてもよい。また、当該静磁場を発生させる構成としては、超電導コイルや常電導コイルに限られず、例えば、永久磁石(例えば、1テスラ以下)を用いてもよい。静磁場コイル10は、静磁場均一度を補正するためのシムコイル群(図示せず)を有してもよく、こうしたシムコイル群によって静磁場をさらに均一にすることができる。なお、均一な静磁場を形成できるのであれば、静磁場コイル10の代わりに、任意の静磁場形成部を採用できる。
【0026】
勾配磁場発生部20は、ボア3内に画像化に必要な独立した3軸の勾配磁場を発生させるものであり、勾配磁場コイル21と、勾配磁場コイル21を駆動する勾配磁場コイル駆動部22と、を有する。
【0027】
勾配磁場コイル21は、互いに直交する3軸方向において、静磁場コイル10によって形成された静磁場強度に勾配を持たせる勾配磁場を発生させる。このため、勾配磁場コイル21は、3系統のコイルを有する。互いに直交する3軸方向の勾配磁場は、それぞれ、撮像に用いられるパルスシークエンスに応じて、例えば、スライス軸方向のスライス勾配磁場、位相軸方向の位相エンコード勾配磁場、又は周波数軸方向の周波数エンコード勾配磁場として使用される。スライス勾配磁場は、スライス選択用の勾配磁場である。位相エンコード勾配磁場及び周波数エンコード勾配磁場は、共鳴元素の空間分布を測定するための勾配磁場である。なお、一方向の勾配磁場が同じパルスシークエンス内で2個以上の役割を担当する場合もある。
【0028】
勾配磁場コイル駆動部22は、制御装置50の制御の下で、勾配磁場コイル21に駆動信号を供給して勾配磁場を発生させる。勾配磁場コイル駆動部22は、勾配磁場コイル21が有する3系統のコイルに対応して、図示しない3系統の駆動回路を有する。
【0029】
なお、
図1では、紙面左右方向をX軸方向、紙面上下方向をY軸方向、紙面法線方向をZ軸方向とし、上述の勾配磁場の勾配軸がこれらX、Y、Z軸に平行に印加されるものとして描いているが、3つの勾配磁場の勾配軸(例えば、スライス軸、位相軸、周波数軸)は、互いに直交性を保っていれば、上述のX、Y、Z軸に限定されず、これらの一部又は全てと一致しなくともよい。
【0030】
RFパルス印加部30は、核磁気共鳴を発生させるためのRFパルスを対象1に印加するためのものであり、RFコイル31と、RFコイル31を駆動するRFコイル駆動部32と、を有する。
【0031】
RFコイル31は、対象1内の標的としているNMR原子核の核スピンを励起するための高周波磁場を静磁場空間に形成する。このように高周波磁場を形成することをRFパルスの印加又は送信とも言う。RFコイル31は、RFパルスを送信する機能とともに、励起された核スピンによって生じる電磁波である核磁気共鳴(NMR:Nuclear Magnetic Resonance)信号を受信する機能も有する。なお、MRIで測定される勾配磁場の印加などにより位置情報が付加されたNMR信号のことをMRI信号と言う。なお、RFコイル31の代わりに、RFパルス送信用コイルと、MRI信号受信用コイルとを別々に構成することもできる。
【0032】
また、RFコイル31又はRFパルス送信用コイルは大きいことが,MRI信号受信用コイルは小さいことが望ましく、必要最小限の大きさであることが望ましい。RFコイル31又はRFパルス送信用コイルは、小さいほど、励起パワーを小さく抑える(繰り返し回数を増やして比較的短時間で連続して印加される場合などのRFパルスの比吸収率(SAR:Specific Absorption Rate)を下げる)ことができる。RFコイル31又はRFパルス受信用コイルは、小さいほど、不要な部分(例えば、対象1において撮像しない部位)からのMRI信号を受け取らないようにすることができる。特に、繰り返し時間とエコー時間を短くできるように、これらの受信コイルの受信領域を狭くして、選択励起パルスを不要にすることが望ましい。
【0033】
RFコイル駆動部32は、制御装置50の制御の下で、RFコイル31に駆動信号を供給してRFコイル31を駆動する。具体的には、RFコイル駆動部32は、標的の原子の種類及び磁場強度で定まるラーモア周波数に対応するRFパルスを励起パルスとしてRFコイル31に発生させる。励起パルスは、ハードパルス、ガウス型パルス、又は断熱(adiabatic型)パルスであってもよいが、特に、エコー時間(TE)を短くできるのでハードパルスを採用することが望ましい。また、いわゆるT1画像コントラストを生成するために核磁化を反転させる180°パルス(通称、Inversion Recoveryパルス)を前置してさらに待ち時間としてIR時間の数msを配置してもよい。このことで特定のT1時間を持つ核磁化の信号を削減することができる(図示せず)。
【0034】
受信部(検出部)40は、RFコイル31に接続され、RFコイル31が受信したMRI信号を検出する。受信部40は、検出したMRI信号をデジタル変換して制御装置50へと送信する。画像の再構成に必要なMRI信号の外側にある不要な信号は、受信部40又は制御装置50において、アナログ式又はデジタル式の周波数フィルタで除去されることが望ましい。例えば、アナログ式の周波数フィルタとして、急峻なバンドパスフィルタが用いられてもよい。
【0035】
制御装置50は、制御部51と、記憶部52と、を備え、例えば、MRI装置100の全体動作を制御するコンピュータや、RFコイル駆動部32や勾配磁場コイル駆動部22をパルスシークエンスで駆動するシーケンサーから構成される。
【0036】
制御部51は、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等から構成され、記憶部52に格納されている動作プログラムを実行して、MRI装置100の各部の動作を制御する。
【0037】
記憶部52は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等から構成され、必要に応じてCPUを保持し、各種の動作プログラム(後述の画像生成処理を実行するためのプログラムPGを含む)のデータ、後述のテーブルデータなどが予め記憶されている。記憶部52のRAMは、各種演算結果を示すデータや、判別結果を示すデータなどを一時的に記憶し、演算する。記憶部52をインターネット上に配置することもできる。
【0038】
制御部51は、機能部として、パルス制御部51aと、画像生成部51bとを備える。
【0039】
パルス制御部51aは、RFパルス、位相エンコード勾配磁場Gp1、Gp2、及び周波数エンコード勾配磁場Grのパルスシークエンスを示す後述のパルスシークエンス300のデータに基づいて、勾配磁場発生部20及びRFパルス印加部30の駆動制御を行う。パルスシークエンス300のデータは、予め記憶部52に記憶されていてもよいし、後述の操作部70を介してのユーザ操作により入力や再設定が可能であってもよい。
【0040】
画像生成部51bは、受信部40が収集したデジタル変換後のMR信号のデータを記憶部52に記憶する。当該データは、位相エンコード勾配磁場Gp1、Gp2及び周波数エンコード勾配磁場Grの勾配により、3次元フーリエ空間(k空間)を構成している。画像生成部51bは、このk空間のデータを三次元逆フーリエ変換して対象1の三次元画像を生成する。
【0041】
表示部60は、k空間をスキャンしている最中のエコーピーク位置を確認できるMRI信号の強度を経時的に示した波形、画像生成部51bが生成したMRI画像、及びその他の各種の情報を表示し、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescent Display)等から構成される。なお、MRI装置100を遠隔作業可能に構成する場合、表示部60及び後述する操作部70としてパーソナルコンピュータ(例えば、ノートパソコンなど)又はその他の携帯電子端末を用いてもよい。
【0042】
操作部70は、ユーザによる操作を受け付け、受け付けた操作に応じた操作信号を制御装置50に供給する。操作部70は、例えば、ポインティングデバイスを備えたキーボード、マウスや、表示部60と一体のタッチパネル等で構成される。例えば、MRI装置100は、ユーザが、操作部70からの操作によって、パルスシークエンス300のデータの入力などを行うことができるように構成される。
【0043】
(画像生成処理)
画像生成処理について、
図3を参照しつつ説明する。画像生成処理は、例えば、ユーザによる操作部70から開始操作に応じて、制御部51によって実行される。なお、画像生成処理の開始前には、保持部2に載せられた対象1は、ボア3内にセッティングされているものとする。
【0044】
画像生成処理を開始すると、まず、制御部51は、図示しない静磁場コイル駆動部を介して、静磁場コイル10を駆動し、ボア3内に均一な静磁場を形成する(ステップS11)。なお、画像生成処理の前に予めボア3内に静磁場を形成しておいてもよい。静磁場の均一度は、対象1の組成や形状の影響を受ける。そこで、静磁場コイル10に静磁場均一度を補正するためのシムコイル群(図示せず)を設け、静磁場をさらに均一にすることとしてもよい。
【0045】
次に、制御部51は、以下のパルスシークエンス300に従って、勾配磁場発生部20及びRFパルス印加部30を駆動制御し(パルス印加工程)、受信部40を介して対象1のk空間のデータを取得し(検出工程)、記憶部52に記憶する(全体で、ステップS12)。
【0046】
(パルスシークエンス300)
本実施形態で用いるパルスシークエンス300を
図2に示す。パルスシークエンス300は、TE(エコー時間)の位置を除けば、勾配エコー(GRE:Gradient Echo)法のパルスシークエンスと同様である。
図2において、「RF」は励起パルスであるα°パルス311のシークエンス、「Gp1」は第1の位相エンコード勾配磁場、「Gp2」は第2の位相エンコード勾配磁場、「Gr」は周波数エンコード勾配磁場(リードアウト勾配磁場)、「S」はMRI信号を示す。第1の位相エンコード勾配磁場、第2の位相エンコード勾配磁場、及び周波数エンコード勾配磁場は、互いに直交しており、例えば、それぞれ、X軸、Y軸、及びZ軸に平行である。信号収集時間t
aは、画像再構成に使用するデータを選択する時間幅である。信号収集時間t
aは、周波数エンコード勾配磁場342の印加時間と同じか、短い時間が使用される。
【0047】
まず、α°パルス311により、スピンのα°励起が行われる。フリップアングルα°は90°以下である。
【0048】
α°励起後、自由誘導減衰(FID:free induction decay)信号351が発生している間に、位相エンコード及び周波数エンコードが行われる。
【0049】
位相エンコードは、α°パルス311の印加(信号積算を行うなら一連のα°パルス311の印加)毎に順次に振幅を変動させつつ第1及び第2の位相エンコード勾配磁場321及び331を印加することにより行われる。例えば、第1の位相エンコード勾配磁場321をN1段階(例えば、128段階)とし、第2の位相エンコード勾配磁場331をN2段階(例えば、32段階)とし、繰り返し回数(信号積算回数)をN回(Nは1以上)とする場合、α°パルスを信号積算のためにN回印加し、各印加毎に同じ位相エンコード及び周波数エンコードを行うという一連のパルスシークエンスをN1×N2回繰り返すこととなり、繰り返し時間(TR)1回で1回の測定と数えれば、測定をN×N1×N2回繰り返すこととなる。信号積算はN1×N2の計測をN回繰り返す順序でもよい。
【0050】
それぞれの位相エンコードに並行して、周波数エンコード勾配磁場341の印加により、巨視的な核磁化をディフェーズ(フライバック)し、その後、周波数エンコード勾配磁場342の印加により、スピンをリフェーズ(リフォーカス)して、グラディエント勾配エコーのMRI信号352を発生させる。α°励起からTE後の時点で信号強度が最大となる。
【0051】
ディフェーズ用の周波数エンコード勾配磁場341の積分値(
図2の周波数エンコード勾配磁場341の点描面積)は、周波数エンコード勾配磁場342の印加からTEまでの積分値(
図2の周波数エンコード勾配磁場342の点描面積)と等しくなる。このため、周波数エンコード勾配磁場342を変更せずに、ディフェーズ用の周波数エンコード勾配磁場341の積分値を(例えば、印加期間、強度、及び/又は波形により)変更することで、TEの発生時期を調節できる。従来は、
図4に示すように、TEが周波数エンコード勾配磁場342の信号収集時間t
aの中央にくるように周波数エンコード勾配磁場343は調節されるが、本実施形態では、
図2に示すように、TE(即ち、エコーピーク)が、周波数エンコード勾配磁場342の印加から信号取得時間t
aの半分より前に、特に、信号収集時間t
aの開始の十分の一から三分の一までの間にくるように、周波数エンコード勾配磁場341は調節される。
図2では周波数エンコード342の印加の開始時間と信号収集時間t
aの開始時間は同一になっているが、周波数エンコード342の電流値が設定値にまで立ち上がったあるいは立ち下がった時間タイミングを意図している。この立ち上がり(立ち下がり)遅延は勾配磁場コイル駆動部22の特性によるもので多くの場合で固定的に50μ秒から500μ秒に調整される。理想的には遅延がないことが期待されているため、記載を省略する。なお、
図2、4では、周波数エンコード342の印加終了時間は、対象1に周波数エンコードを施す幅に基づいて定まる信号収集時間t
aと同一としているが、周波数エンコード342の印加開始から印加終了までの印加時間は信号収集時間t
a以上であれば任意である。信号収集時間t
a後に印加される周波数エンコード342は、被写体の核磁化信号の緩和回復を促進する効果がある。
【0052】
こうして得られたMRI信号352は、受信部40を介してデジタル化される。制御部51は、繰り返し時間毎にデジタル化されたMRI信号352から周波数エンコード勾配磁場342の信号収集時間taの全幅に渡ってM点(例えば、128点)のデータを取得し、記憶部52に記憶する。その後、制御部51は、当該データのうち対象1の同じ位置に相当する(例えば、第1及び第2の位相エンコード勾配磁場321、331の振幅と周波数エンコード勾配磁場342の信号収集時間ta内の位置の組み合わせが同じ)N個の信号強度を積算し、当該位置での積算信号強度を算出し、記憶部52に記憶する。
【0053】
最後に、制御部51は、以上のようにして得られた対象1のk空間のデータ(例えば、N1×N2×M個のデータからなる対象1のk空間のデータ)から、画像を生成する(ステップS13)。具体的には、このk空間のデータに三次元離散逆フーリエ変換を施し、対象1の三次元画像を再構成する。昨今の情報技術の発展によって、MRIの画像再構成が、逆フーリエ変換ではなく、人工知能AIや、深層学習によって実施される場合がある。これらを対象1の三次元画像の再構成に適用してもよい。
【0054】
(本実施形態の効果)
従来のGRE法では、
図4に示すように、MRI信号のピークが信号収集時間t
aの中心にあるが、低感度のNMR原子核(例えば、
23Na)を標的としたMRIでは、MRI信号の強度はT2およびT2
*減衰により小さくなり、ノイズに紛れやすく、検出が困難であった。
【0055】
一方、本実施形態に係るMRI装置100では、大まかな画像輪郭情報を有するエコーピークを優先して信号を取り込むことができ、特に、23NaをMRIの標的とする場合、23Naの信号成分のうち、T2減衰時間が2~3ms以下の本当に速い信号成分を画像生成に使用できる。このため、本実施形態によれば、低感度の原子を標的としたMRIにおいても、好適にMRI画像を生成することができる。
【0056】
また、部分エコー法では、
図5に示すように、TEと測定時間を短縮できるものの、kスペースの構成にともなう偽像アーチファクトの混入の問題があった。また、GRE法で信号収集を行う場合、T2
*減衰による位相のばらつきが発生するので、部分エコー法の適用が困難であった。さらに、部分エコー法は、原理的な問題で他のMRI測定方法(例えば、圧縮センシング法)と組み合わせることができなかった。
【0057】
一方、本実施形態では、
図2に示すようにMRI信号のピークが信号収集時間t
aの前半(特に、信号収集時間t
aの十分の一から三分の一の間)に存在し、MRI信号強度の減衰が大きい信号収集時間t
aの後半に信号強度が高周波数成分に比べて高い低周波成分が存在するため、画像生成を優先しつつ、画素帯域幅を狭くして低ノイズ化を実現できている。位相エンコードを削除したホモダイン再構成は行わないので偽像アーチファクトの発生は低減される。このため、本実施形態によれば、部分エコー法と比べて、好適にMRI画像を生成することができる。また、本実施形態に係る画像生成処理方法は、以下の変形例でも示すように、種々のMRI測定方法と組み合わせることができる。
【0058】
(変形例)
本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。また、本明細書では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【0059】
(変形例1)
上述の実施形態では、GRE法を採用したが、前置RFパルスをさらに敷設してもよい。これにより、前置RFパルスの種類に応じたコントラストを持つ画像を得ることができる。緩和時間の短いNMR原子核(例えば、23Na)の場合、励起パルス毎に前置RFパルスを敷設することが望ましい。また、緩和時間の長いNMR原子核(例えば、1H)の場合、前置RFパルスは、励起パルス毎に敷設されてもよいし、複数の励起パルス毎に(例えば、信号をN回積算する場合なら、N回の励起パルスの最初の1回の前に)敷設されてもよい。
【0060】
例えば、23NaをNMR原子核とする場合、緩和時間内に信号を取得すると、密度強調画像が得られるが、前置RFパルスを敷設することで、密度強調以外のコントラストが付与された画像を得られる。23NaをNMR原子核とする場合、実施例1でも説明したように、1HをNMR原子核とする場合のように、繰り返し時間を単純に変えることで密度強調以外のコントラストが得られるわけではないので、前置RFパルスの敷設によるコントラストの付与は有利である。
【0061】
また、このとき、
図5に示すような、前置RFパルスとして量子パルスを印加することとしてもよい。こうした量子パルスによれば、スピンエネルギーの遷移により、組織特異的なコントラストが得られると期待される。従来の
1H-MRIであれば、緩和時間が数十msから数百msと長いので、緩和時間の違いやケミカルシフト励起を利用した組織の弁別が可能であった。しかし、緩和時間が短いNMR原子核の場合(例えば、緩和時間が20ms以下と短い
23Naの場合)、こうした弁別が不可能である。量子パルスによれば、こうした緩和時間が短いNMR原子核においても、スピンエネルギーの遷移により、信号減衰する前に組織差異を強調することが可能となる。
【0062】
量子パルスでは、90°パルス(+X方向)を印加した後、時間τ経過後に180°パルスを印加し、その後、時間2τおきに180°パルスを連続して印加する。このとき、連続180°パルスは、第2個目から、
図5に示すように、反対極性(―X方向)の180°パルスを連続して印加するパルス列(APCP(Alternating Polarity Carr Purcell)と呼称される。S.Watanabe and S.Sasaki.J.Jpn.Appl.Phys.Express Lett.(2003))でもよいし、同じ極性の180°パルス(+Y方向)を連続して印加するパルス列((CPMG(Carr-Purcell-Meiboom-Gill)と呼ばれるパルス列)でもよい。
【0063】
なお、MRI信号生成のためには、前置RFパルスとそれに続く励起パルスによって生成されるNMR信号は、自由誘導減衰(FID)信号でもスピンエコー信号でもよい。また、前置RFパルスによって生成されるNMR信号には、励起パルスの印加前には、位相エンコード及び周波数エンコードにより位置情報が付加されず、上述したパルスシークエンス300又は他の変形例に係るパルスシークエンスにより、励起パルスの印加後に、位相エンコード及び周波数エンコードにより位置情報が付加される。
【0064】
(変形例2)
上述の実施形態では、3次元フーリエ変換を行っているが、Y方向の位相エンコードを割愛し、代わりに、Y方向に沿ってスライス選択を行い、各スライスについて、2次元フーリエ変換によりMRI画像を生成してもよい。また、このMRI画像の再構成を、逆フーリエ変換ではなく、人工知能AIや、深層学習によって実施してもよい。
【0065】
(変形例3)
エコーピークが周波数エンコード342の信号収集時間taの開始時間に近すぎると、信号収集時間taの起点と終点とで測定したMRI信号の信号強度が大きく食い違い、同一波形が周期的に連続しているという離散逆フーリエ変換の前提が崩れてしまうおそれもある。この場合、例えば、MRI画像にギプスリンギング偽像(縁に縁が多重にできる)などの偽像アーチファクトが生じてしまう。そこで、エコーピークは、こうした偽像アーチファクトが生じない程度に周波数エンコード勾配磁場342の信号収集時間taの開始時間から離れていることが好ましい。偽像アーチファクトの有無は、できあがったMRI画像を人間が目視することで確認できるし、同じ対象1の同じ部位について、上述の実施形態に従って生成したMRI画像と、エコーピークの位置を従来法と同様に信号収集時間taの中心とした基準画像とを、相関係数(例えば、ZNCC(Zero-mean Normalized Cross-Correlation)により求めた正規化相互相関係数)により比較して、相関係数が一定値(例えば、ZNCCにより求めた正規化相互相関係数なら、0.7)を超えるか否かでも判定できる。また、対象1又は対象1と同種の基準対象を用いた事前実験の結果に基づいて、画像生成処理のステップS12でのエコーピークの位置が、目視により偽像アーチファクトが確認されない又は前述の相関係数が一定値以上となるように、調整されることが好ましい。人工知能AIや深層学習によって偽像を除去してもよい。
【0066】
(変形例4)
対象1が、厚み方向に均一な試料又は厚み方向の均一性が高い試料である場合(例えば、対象1が薄膜材料である場合)、当該厚み方向(例えば、薄膜に垂直な方向)に周波数エンコード勾配磁場、厚み方向に垂直で且つ互いに直行する方向(例えば、薄膜と平行な方向)に第1及び第2の位相エンコード勾配磁場を印加して当該試料の厚み方向の断面の二次元MRI画像を生成してもよく、この場合、エコーピーク位置は、信号収集開始と同時か、信号収集開始前でも差し支えない。こうした試料で、厚み方向に周波数エンコード勾配磁場を印加する(即ち、厚み方向に信号読み出し軸を設定する)場合、MR信号のピーク周辺は非常に緩い山型を描くので、信号収集時間taに対するエコーピーク位置の重要性は相対的に低い。
【0067】
(変形例5)
上述の実施形態において、信号の減衰を抑制するため、繰り返し時間は、T2緩和時間以下であることが望ましい。例えば、NMR原子核が23Naの場合、繰り返し時間は、30ms、20ms、10ms、又は6ms以下であることが望ましい。
【0068】
また、上述の実施形態において、信号収集時間taの長さとは無関係に、エコーピークの位置は、励起パルスの印加から観測できる主成分であるT2緩和時間経過までの間(T2緩和時間が複数成分からなる場合であれば、励起パルスの印加から、最長のT2緩和時間、最短のT2緩和時間、若しくはこれらの間のT2緩和時間の経過までの間)に生じることが好ましく、特に、励起パルスの印加からT2緩和時間(T2緩和時間が複数成分からなる場合であれば、それらのT2緩和時間のいずれか)の二分の一、三分の一、若しくは十分の一の経過までに生じることが好ましい。前置励起パルスの印加によって意図的に、短い緩和時間成分の信号の寿命が延長された場合は、見かけ上で長くなったT2緩和時間を参照する。
【0069】
(変形例6)
上述の実施形態で、NMR原子核は、任意であり、スピン量子数が3/2の原子核でもよいし、23Naでもよい。
【0070】
(変形例7)
上述の実施形態に、任意の他のMRI技術を組み合わせることができる。例えば、圧縮センシング法や、多量子(マルチ・クオンタム)コヒーレンス法を採用してもよい。特に、圧縮センシング法は、位相エンコードをガウシアンランダム(Gaussian-random)に選択するので、部分エコー法には適用できない。
【0071】
(変形例8)
対象1に、上述したパルスシークエンス300又は上述の変形例に係るパルスシークエンスを印加することができれば、MRI装置100の構成は任意であり、種々の構成を採用することができる。
【0072】
(変形例9)
画像生成処理を実行するプログラムPGは、記憶部52に予め記憶されているものとしたが、着脱自在の記録媒体により配布・提供されてもよい。また、プログラムPGは、MRI装置100と接続された他の機器からダウンロードされるものであってもよい。また、MRI装置100は、他の機器と電気通信ネットワークなどを介して各種データの交換を行うことによりプログラムPGに従う各処理を実行してもよい。
【0073】
(変形例10)
2種類以上の原子由来の信号(例えば、1H-NMR信号及び23Na-NMR信号)を取得するために、例えば、これにより2種類の原子の同時撮影を可能とするために、RFコイル31として、2種類以上の原子に対応した異なる周波数の2種類以上のRFパルスを送受信可能なコイルを採用してもよい。例えば、こうしたコイルとして、2種類以上の原子のラーモア周波数に同調された単一の送受信コイル、例えば、二重同調鳥かご型コイル、二重同調表面コイル、二重同調鞍型コイル、二重同調蝶型コイル、二重同調ソレノイドコイルなどを用いてもよいし、2種類以上の原子のラーモア周波数にそれぞれ個別に同調された2つ以上の送受信コイルを用いてもよい。
【0074】
さらに、RFコイル31の代わりに、RFパルス送信用コイルと、MRI信号受信用コイルとを別々に構成する場合、RFパルス送信用コイルとして、2種類以上の原子のラーモア周波数に同調された単一の送信コイル又は2種類以上の原子のラーモア周波数にそれぞれ個別に同調された2つ以上の送信コイルを用いてもよく、また、MRI信号受信用コイルとして、2種類以上の原子のラーモア周波数に同調された単一の受信コイル又は2種類以上の原子のラーモア周波数にそれぞれ個別に同調された2つ以上の受信コイルを用いてもよい。
【0075】
RFコイル31又はMRI信号受信用コイルとして、上述のコイルを用いる場合、異なる原子用のRF受信ケーブル間で干渉が抑制され、コンパクトな空間内で高いS/N比を得られるように、異なる原子用のコイル並びに付随する共振回路及びRF受信ケーブル(同軸ケーブル)は配置されるとよい。例えば、測定対象の原子が2種類の場合、一方の原子用の共振回路(ただし、コイルを除く部分)及びRF受信ケーブルは、他方の原子用の共振回路(ただし、コイルを除く部分)及びRF受信ケーブルと重ならないように配置され、例えば、単一のコイル又は近接して(例えば、重ねて又は同軸に)配置されたインダクタンスの異なる2つコイルから、
図10に示すように、反対方向に延びるように、配置されるのが好ましい。
【0076】
(実施例)
(実施例1:
1H-NMR信号と
23Na-NMR信号の感度の比較)
NMR信号強度の比較では、直径及び形状の似た、
1H用(9.4テスラ)又は
23Na用(9.4テスラ)のRFコイル(内径φ15mm、ギャップ10mm、2巻x2のヘルムホルツ型)を備えたNMR装置を用い、コイル内に食塩水(0.9w/v%)2mlの入ったプラスチック試験管を配置し、当該食塩水に励起パルスを印加して、FID信号をそれぞれ計測した。NMR信号の絶対強度の計測のために、別途用意した高周波発信機から強度-120dBm~0dBmの連続サイン波を疑似信号として前置増幅器に入力して、事前に収集したNMR信号の強度になるように高周波発信機の出力を調整することで、
1Hと
23NaのNMR信号のRFコイル以降の信号強度(dBm)をそれぞれ計測した。測定結果を
図7に示す。この試料由来の
1H-NMR信号の強度は、同試料由来の
23Na-NMR信号の強度のおよそ20,000倍であった。
【0077】
速い繰返しTRによるT1飽和によって、
図7の左の方(TR<50ms)の
23Na-NMR信号が落ち込んでいることがわかるが、
23Naは単原子で存在しており、他の原子分子とも結合していないので周辺との緩和エネルギーの授受は、
1H(プロトン)ほどには頻繁に起こらないので、
図7の左で生じているのはT1強調ではなく、全体としての信号落ち込みと考えるのが妥当である。従って、TR<50ms(例えば、TRが20ms程度の)のパルスシークエンスで得られる
23Na-NMR信号は、Na密度分布を反映したものと考えられる。
【0078】
(実施例2:T1緩和時間及びT2緩和時間)
実施例1の23Na-NMR装置を用いて、種々の食塩水を対象に、T1緩和時間及びT2緩和時間を測定した。飽和回復法に依って測定した様々な濃度(0.9w/v%~26.4w/v%)の食塩水(2ml)のT1緩和時間は100ms以下であった。90度パルスによる減衰曲線のフィッティングによって計測した種々の濃度のT2緩和時間は、20ms程度のものがほとんどであり、2~3ms程度の非常に速い緩和時間成分も観測された。
【0079】
(実施例3:マウスでのMRI画像撮影)
マウスの保持に適した保持部を備え、
図1で示した構成を備えた
23Na-MRI装置を用いマウスでのMRI画像撮影を行った。このMRI装置の構成は、
23NaからNMR信号を得られかつ励起RFパルスを送信できる送受信兼用RFコイルを用い、上述の画像生成処理を行う点以外は、従来の
1H-MRI装置と同様である。こうした装置の詳細は、特開2015-145853号明細書を参照されたい。パルスシークエンスとしては、三次元勾配エコー法を用い、420μm×420μmの撮影領域に対して、64ピクセル×64ピクセルの画素数で位相エンコード及び周波数エンコードを行い、繰り返し時間は20ms、信号収集時間t
aは5.12ms、積算回数は20回、撮像時間は7分とした。このとき、エコーピークが、リフェーズ用の周波数エンコード勾配磁場の印加開始から2ms未満のうちに生じるように、ディフェーズ用の周波数エンコード勾配磁場は調整した。また、マウスは、C57BL/6であり、腎阻血再還流術手術を施したもの(手術群)と、未手術のもの(対照群)とを用いた。手術群と対照群での腎臓付近の横断面画像を、
図8に示す。
【0080】
(実施例4:
23Na-NMR信号測定での同一計測時間における繰り返し時間と積算信号値の関係)
実施例1の
23Na-NMR装置及び1H-NMR装置を用いて、計測時間を100秒とし、繰り返し時間を様々に変えたときの、種々の食塩水試料での
23Na-NMR信号及び
1H-NMR信号の積算信号値を測定した。その結果を、
図9に示す。なお、
図9に示す指数回帰式(y=a×x
b)は、計測時間をx、繰り返し時間をyとしたときのものである。
【0081】
繰り返し時間をTR、積算回数をNとしたとき、計測時間t=TR×Nであるが、一般に、1H-MRIの場合、信号対ノイズ比(S/N比)は、√tに比例することが知られている。これは、信号強度は積算回数Nに比例して大きくなるものの、ノイズには冗長性があり√Nでしか減少しないためである。また、TRは1H-MRIにおいて被写体の画像コントラストを決定する重要な要素であるため、意図するTRから極端に長い又は短い設定をすることはできない。
【0082】
図9に示すように、
1H-NMR信号(
図9で一番上のグラフ)は、計測時間の約-0.5乗で減少する一方、ノイズ(
図9で一番下のグラフ)も、計測時間の約-0.5乗で減少している。従って、
1H-NMR信号対ノイズのS/N比は、計測時間が変化してもほぼ一定である。これは、繰り返し時間TRを減少させて信号積算回数Nを稼いでも、計測時間が一定であれば、S/N比が改善しないことを意味している。
【0083】
一方、
23Na-NMR信号(
図9で
1H-NMR信号のグラフとノイズのグラフトの間のグラフ)は、計測時間の約-0.7乗~約-0.9乗で減少する。このとき、
23Na-NMR信号対ノイズのS/N比は、計測時間に対して-0.2~-0.4乗で減少する(x
-0.7÷x
-0.5=x
-0.2~x
-0.9÷x
-0.5=x
-0.4)こととなる。これは、
23Na-NMR信号の場合、計測時間が一定であっても、繰り返し時間TRを減少させて信号積算回数Nを稼げば、S/N比が改善することを意味している。
【0084】
また、23Na-NMR信号では、指数回帰式の乗数と、Na濃度とは、負の相関関係にあるので、あらかじめ、種々の濃度のNaを含む試料(例えば、種々の濃度の食塩水)に対して同一計測時間で繰り返し時間を様々に変更して信号強度を測定し、各試料での指数回帰式の乗数を求め、Naの濃度と乗数との関係式(例えば、1次関数)を求めておけば、以降は、Na濃度が未知の試料で同一計測時間で繰り返し時間を様々に変更して信号強度を測定し、当該試料での指数回帰式の乗数を求め、当該乗数を前記関係式に当てはめることで、試料中のNa濃度を測定することができる。また、この濃度測定法は、Na以外の原子核(例えば、スピン量子数が3/2の原子核)にも適用できると考えられる。
【0085】
(実施例5:
1H/
23Na-デュアルMRI装置によるマウス体内でのNa動態の観察)
1H/
23Na-デュアルMRI装置は、400MHz超電磁マグネット(JASTEC社製、Narrow boreシリーズ、ボア径54ミリ)と、この超電磁マグネットのボア内に配置される、
図10に示すような測定台とを含む。測定台は、
図10(a)に示すように一側面の開いた筒状であり、この開いた部分から、
1H/
23Na測定用の送受信用表面コイルが取り付けられた底板をはめ込む。底板の表面には、
図10(a)に示すように、
1H用表面コイルと
23Na用表面コイルとが重ねて配置されており、測定時には、これらのコイルと底板との間にマウスが配置され、マウスの背中側で腎臓周辺にコイルが当たる。また、底板の裏面には、
図10(b)に示すように、
1H用表面コイルのための共振回路のうちコイルを除く部分及びRFケーブルと
23Na用表面コイルの共振回路のうちコイルを除く部分及びRFケーブルが、互いに反対方向に延びるように配置されている。その他の構成は、
23Naについて上述の実施形態に基づき信号取得を行う点を除けば、従来の多原子用MRI装置と同様である。
【0086】
上記の1H/23Na-デュアルMRI装置を用いて、フロセミド処理(1ミリccを注射器で腎臓に注入)後のマウス体内でのNa動態を観察した。1H/23Naの測定を同一断面で交互に繰り返すことで、同一期間での1H画像と23Naとを取得した。観察期間を通して、1H画像には、フロセミド処理による変化はみられなかった。一方、23Na画像では、フロセミド処理後約2分までは、腎臓でNa濃度が増加した(信号強度が増加した)が、それ以降は、腎臓でのNa濃度は減少し(信号強度が減少し)、代わりに、大腸でNa濃度が増加した。この結果は、フロセミド処理による従来の知見と整合するものであり、本装置がマウスの体内でのNa動態の経時的な観察に適していることを示した。
【0087】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0088】
なお、本願については、2019年5月17日に出願された日本国特許出願2019-093569号を基礎とする優先権を主張し、本明細書中に日本国特許出願2019-093569号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
【符号の説明】
【0089】
100…MRI装置
1…対象
2…保持部
3…ボア
10…静磁場コイル
20…勾配磁場発生部、21…勾配磁場コイル、22…勾配磁場コイル駆動部
30…RFパルス印加部、31…RFコイル、32…RFコイル駆動部
40…受信部
50…制御装置
51…制御部、51a…パルス制御部、51b…画像生成部
52…記憶部、PG…プログラム
60…表示部
70…操作部
300…パルスシークエンス
311…α°パルス
351…信号
352…MRI信号
321…第1の位相エンコード勾配磁場
331…第2の位相エンコード勾配磁場
341、342…周波数エンコード勾配磁場