(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】ロボットの末端経路輪郭誤差の制御方法
(51)【国際特許分類】
B25J 15/02 20060101AFI20240105BHJP
G05B 13/04 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
B25J15/02
G05B13/04
(21)【出願番号】P 2022147924
(22)【出願日】2022-09-16
【審査請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】202210076416.6
(32)【優先日】2022-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514283423
【氏名又は名称】河北工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】韓旭
(72)【発明者】
【氏名】張建寧
(72)【発明者】
【氏名】李珊瑚
(72)【発明者】
【氏名】陶友瑞
(72)【発明者】
【氏名】段書用
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/009986(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/001320(WO,A1)
【文献】特開2006-287520(JP,A)
【文献】特表2015-528713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
G05B 13/00 ~ 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットが末端アクチュエータ及び前記末端アクチュエータを制御するための制御モジュールを含み、前記制御モジュール内に前記末端アクチュエータを制御するためのサーボ制御ユニットが設けられ、前記サーボ制御ユニットの入力端が起動信号を受信し、制御信号を前記末端アクチュエータに出力して、前記末端アクチュエータを駆動して移動させ、前記制御モジュール内に前記サーボ制御ユニットに接続された外部演算モジュールをさらに含む、ロボットの末端経路輪郭誤差の制御方法であって、前記制御方法は、
初期信号を取得するステップS10と、
前記初期信号を前記外部演算モジュールに入力して、前記末端アクチュエータのプリセット軌跡を取得するステップS20と、
等価予測モデルを構築するステップS30と、
前記プリセット軌跡を前記等価予測モデルに入力して、等価予測軌跡を取得するステップS40と、
前記プリセット軌跡と前記等価予測軌跡との差を求めて、プリセット追従誤差軌跡を取得するステップS50と、
前記プリセット軌跡と前記プリセット追従誤差軌跡を重ね合わせて、第1軌跡を取得するステップS60と、
前記第1軌跡を前記起動信号として、前記サーボ制御ユニットの入力端に入力するステップS70とを含
み、
周波数領域において、前記等価予測モデルは下式のとおりであり、
ここで、
は位置ループの比例係数であり、
は速度ループの比例係数であり、
は速度ループの積分係数であり、
は推力定数であり、mはリニアモータの質量であり、Bはモータの粘性摩擦係数であり、sは複素変数を表すことを特徴とするロボットの末端経路輪郭誤差の制御方法。
【請求項2】
前記ロボットはXY軸2軸ロボットであり、X軸に対応する第1末端アクチュエータ及びY軸に対応する第2末端アクチュエータを含み、前記第1末端アクチュエータと前記第2末端アクチュエータとの間に結合関係があり、前記制御方法は、
前記第1末端アクチュエータの第1初期信号及び前記第2末端アクチュエータの第2初期信号をそれぞれ取得するステップと、
前記ステップS20を実行して、前記第1末端アクチュエータの第1プリセット軌跡及び前記第2末端アクチュエータの第2プリセット軌跡を取得するステップと、
前記第1プリセット軌跡を前記起動信号として、前記第1末端アクチュエータの前記サーボ制御ユニットに入力して、第1出力軌跡を取得し、前記第2プリセット軌跡を前記起動信号として、前記第2末端アクチュエータの前記サーボ制御ユニットに入力して、第2出力軌跡を取得するステップと、
前記第1プリセット軌跡と前記第1出力軌跡との差を求めて、第1出力誤差軌跡を取得し、前記第2プリセット軌跡と前記第2出力軌跡との差を求めて、第2出力誤差軌跡を取得するステップと、
前記第1出力誤差軌跡及び前記第2出力誤差軌跡で前記末端経路輪郭誤差に関連する相関関数を構築して、前記第1出力誤差軌跡に対応する第1相関係数及び前記第2出力誤差軌跡に対応する第2相関係数を取得するステップと、
前記ステップS30~
前記ステップS50を実行して、前記第1末端アクチュエータの第1プリセット追従誤差軌跡及び前記第2末端アクチュエータの第2プリセット追従誤差軌跡を取得するステップと、
前記第1相関係数と前記第2相関係数の大きさを判断し、前記第1相関係数が前記第2相関係数より大きい場合、前記第1末端アクチュエータに関連する、前記第1プリセット追従誤差軌跡とプリセットゲインとの和である第1ゲインを構築し、第2末端アクチュエータに関連する、前記第2プリセット追従誤差軌跡と前記プリセットゲインとの差である第2ゲインを構築するステップと、
前記第1相関係数が前記第2相関係数より小さい場合、第1末端アクチュエータに関連する、前記第1プリセット追従誤差軌跡と前記プリセットゲインとの差である前記第1ゲインを構築し、前記第2末端アクチュエータに関連する、前記第2プリセット追従誤差軌跡と前記プリセットゲインとの和である前記第2ゲインを構築するステップと、
前記第1ゲインと前記第1プリセット軌跡を重ね合わせて、第2軌跡を取得するステップと、
前記第2ゲインと前記第2プリセット軌跡を重ね合わせて、第3軌跡を取得するステップと、
前記第2軌跡を前記起動信号として、第1末端アクチュエータの前記サーボ制御ユニットの入力端に入力し、前記第3軌跡を前記起動信号として、第2末端アクチュエータの前記サーボ制御ユニットの入力端に入力するステップとを含むことを特徴とする請求項1に記載のロボットの末端経路輪郭誤差の制御方法。
【請求項3】
前記初期信号を取得する
前記ステップS10は、
前記末端アクチュエータの振動周波数を取得するステップと、
前記振動周波数を除去するための畳み込み関数を構築して、畳み込みゲインを取得するステップと、
元の信号を取得するステップと、
前記元の信号と前記畳み込みゲインとの積を計算して、前記初期信号を取得するステップとを含むことを特徴とする請求項1に記載のロボットの末端経路輪郭誤差の制御方法。
【請求項4】
円弧輪郭誤差によって前記相関関数を構築し、前記相関関数は下式のとおりであり、
ここで、
は前記末端経路輪郭誤差を表し、
は前記第1出力誤差軌跡を表し、
は前記第2出力誤差軌跡を表し、α、Rはそれぞれ前記ロボットのX軸又はY軸の軌跡参照点での円弧接線と該軸の正方向との間の角度及び円弧半径を表し、
前記第1相関係数を
に、前記第2相関係数を
に設定すると、
とすることを特徴とする請求項2に記載のロボットの末端経路輪郭誤差の制御方法。
【請求項5】
周波数領域において、前記畳み込み関数は下式のように設計され、
ここで、
はタイムラグであり、sは複素変数を表すことを特徴とする請求項3に記載のロボットの末端経路輪郭誤差の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ロボットの技術分野に関し、具体的には、ロボットの末端経路輪郭誤差の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットの末端経路輪郭誤差は、ロボットによる操作タスクの完了において重要な性能指標となる。ロボットの応用場面がますます複雑になり、ロボットの機能がますます完全になるにつれて、ロボットの末端経路輪郭誤差に対する要求もますます高くなっている。ロボットの応用場面が複雑になるため、ロボットの耐干渉性を向上させるために、通常、コントローラ、即ちサーボループの帯域幅を小さく設計する。したがって、サーボループの帯域幅によるタイムラグ及びロボットの可撓性末端又はサーボループの高ゲインによる振動は、単軸追従誤差に影響を与えると同時に、ロボットの末端経路輪郭誤差にも影響を与える。
【0003】
単軸追従精度を改善するための従来の方法は、通常、末端の残留振動の影響のみを考慮するが、実際には、サーボループの帯域幅の制限による影響は無視できない。サーボループの帯域幅に対する従来の改善方式は、通常、システムの帯域幅を増やすことによるものであり、機械的構造及びハードウェア構造が決定された後の効果改善には限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術における上記欠陥又は不足に鑑み、本出願は、ロボットの末端経路輪郭誤差の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ロボットが末端アクチュエータ及び前記末端アクチュエータを制御するための制御モジュールを含み、前記制御モジュール内に前記末端アクチュエータを制御するためのサーボ制御ユニットが設けられ、前記サーボ制御ユニットの入力端が起動信号を受信し、制御信号を前記末端アクチュエータに出力して、前記末端アクチュエータを駆動して移動させ、前記制御モジュール内に前記サーボ制御ユニットに接続された外部演算モジュールをさらに含む、ロボットの末端経路輪郭誤差の制御方法であって、前記制御方法は、
初期信号を取得するステップS10と、
前記初期信号を前記外部演算モジュールに入力して、前記末端アクチュエータのプリセット軌跡を取得するステップS20と、
等価予測モデルを構築するステップS30と、
前記プリセット軌跡を前記等価予測モデルに入力して、等価予測軌跡を取得するステップS40と、
前記プリセット軌跡と前記等価予測軌跡との差を求めて、プリセット追従誤差軌跡を取得するステップS50と、
前記プリセット軌跡と前記プリセット追従誤差軌跡を重ね合わせて、第1軌跡を取得するステップS60と、
前記第1軌跡を前記起動信号として、前記サーボ制御ユニットの入力端に入力するステップS70とを含むことを特徴とする。
【0006】
さらに、前記ロボットはXY軸2軸ロボットであり、X軸に対応する第1末端アクチュエータ及びY軸に対応する第2末端アクチュエータを含み、前記第1末端アクチュエータと前記第2末端アクチュエータとの間に結合関係があり、前記制御方法は、
ステップS20を実行して、前記第1末端アクチュエータの第1プリセット軌跡及び前記第2末端アクチュエータの第2プリセット軌跡を取得するステップと、
前記第1プリセット軌跡を前記起動信号として、前記第1末端アクチュエータの前記サーボ制御ユニットに入力して第1出力軌跡を取得し、前記第2プリセット軌跡を前記起動信号として、前記第2末端アクチュエータの前記サーボ制御ユニットに入力して第2出力軌跡を取得するステップと、
前記第1プリセット軌跡と前記第1出力軌跡との差を求めて、第1出力誤差軌跡を取得し、前記第2プリセット軌跡と前記第2出力軌跡との差を求めて、第2出力誤差軌跡を取得するステップと、
前記第1出力誤差軌跡及び前記第2出力誤差軌跡で前記末端経路輪郭誤差に関連する相関関数を構築して、前記第1出力誤差軌跡に対応する第1相関係数及び前記第2出力誤差軌跡に対応する第2相関係数を取得するステップと、
ステップS30~S50を実行して、前記第1末端アクチュエータの第1プリセット追従誤差軌跡及び前記第2末端アクチュエータの第2プリセット追従誤差軌跡を取得するステップと、
前記第1相関係数と前記第2相関係数の大きさを判断し、前記第1相関係数が前記第2相関係数より大きい場合、前記第1末端アクチュエータに関連する、前記第1プリセット追従誤差軌跡とプリセットゲインとの和である第1ゲインを構築し、第2末端アクチュエータに関連する、前記第2プリセット追従誤差軌跡と前記プリセットゲインとの差である第2ゲインを構築するステップと、
前記第1相関係数が前記第2相関係数より小さい場合、第1末端アクチュエータに関連する、前記第1プリセット追従誤差軌跡と前記プリセットゲインとの差である前記第1ゲインを構築し、前記第2末端アクチュエータに関連する、前記第2プリセット追従誤差軌跡と前記プリセットゲインとの和である前記第2ゲインを構築するステップと、
前記第1ゲインと前記第1プリセット軌跡を重ね合わせて、第2軌跡を取得するステップと、
前記第2ゲインと前記第2プリセット軌跡を重ね合わせて、第3軌跡を取得するステップと、
前記第2軌跡を前記起動信号として、第1末端アクチュエータの前記サーボ制御ユニットの入力端に入力し、前記第3軌跡を前記起動信号として、第2末端アクチュエータの前記サーボ制御ユニットの入力端に入力するステップとを含む。
【0007】
さらに、初期信号を取得するステップは、
前記末端アクチュエータの振動周波数を取得するステップと、
前記振動周波数を除去するための畳み込み関数を構築して、畳み込みゲインを取得するステップと、
元の信号を取得するステップと、
前記元の信号と前記畳み込みゲインとの積を計算して、前記初期信号を取得するステップとを含む。
【0008】
さらに、周波数領域において、前記等価予測モデルは下式のとおりであり、
ここで、
は位置ループの比例係数であり、
は速度ループの比例係数であり、
は速度ループの積分係数であり、
は推力定数であり、mはリニアモータの質量であり、Bはモータの粘性摩擦係数であり、sは複素変数を表す。
【0009】
さらに、円弧輪郭誤差によって前記相関関数を構築し、前記相関関数は下式のとおりであり、
ここで、
は前記末端経路輪郭誤差を表し、
は前記第1出力誤差軌跡を表し、
は前記第2出力誤差軌跡を表し、α、Rはそれぞれ前記ロボットのX軸又はY軸の軌跡参照点での円弧接線と該軸の正方向との間の角度及び円弧半径を表し、
前記第1相関係数を
に、前記第2相関係数を
に設定すると、
とする。
【0010】
さらに、周波数領域において、前記畳み込み関数は下式のように設計され、
ここで、
はタイムラグであり、sは複素変数を表す。
【発明の効果】
【0011】
要約すると、本出願は、ロボットの末端経路輪郭誤差の制御方法を提供し、初期信号を外部演算モジュールに入力することによって末端アクチュエータのプリセット軌跡を取得し、プリセット軌跡を等価予測モデルに入力して、等価予測軌跡を取得し、等価予測軌跡とプリセット軌跡との差を求めて、プリセット追従誤差軌跡を取得し、プリセット軌跡とプリセット追従誤差軌跡を重ね合わせて、第1軌跡を取得し、第1軌跡を起動信号として、ロボットの末端アクチュエータを制御するサーボ制御ユニットの入力端に入力し、ここでプリセット追従誤差軌跡は初期信号の補償量と見なすことができ、補償ポリシーを用いてサーボ帯域幅による誤差を補償することにより、末端輪郭の誤差が減少し、また、多軸ロボットの各軸の協調性が最適化され、ロボットの末端経路輪郭の精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本出願の実施例が提供するロボットの末端経路輪郭誤差の制御方法のフローチャートである。
【
図2】本出願の実施例が提供するXY軸ロボットの輪郭誤差の制御方法のフローチャートである。
【
図3】本出願の実施例が提供する振動抑制前後の元のプリセット軌跡及び初期プリセット軌跡の概略図である。
【
図4】本出願の実施例が提供する振動抑制前後の元の信号及び初期信号の概略図である。
【
図5】本出願の実施例が提供する補償前と補償後の末端アクチュエータの出力軌跡、補償軌跡及びプリセット軌跡の概略図である。
【
図7】本出願の実施例が提供する末端アクチュエータのプリセット軌跡及び補償されていない出力軌跡の概略図である。
【
図8】
図7のプリセット軌跡と補償されていない出力軌跡との間の誤差の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では図面及び実施例を参照しながら本出願をさらに詳細に説明する。ただし、ここで説明した具体的な実施例は、かかる発明を説明するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではないと理解されるべきである。また、説明の便宜上、図面には本発明に関連する部分のみを示す。
【0014】
なお、矛盾しない状況で、本出願の実施例及び実施例の特徴は互いに組み合わせることができる。以下では図面を参照しながら実施例に合わせて本出願を詳細に説明する。
【0015】
<実施例1>
背景技術で言及したように、従来技術の問題に対して、本出願は、ロボットの末端経路輪郭誤差の制御方法を提供し、前記ロボットは、末端アクチュエータ及び前記末端アクチュエータを制御するための制御モジュールを含み、前記制御モジュール内に前記末端アクチュエータを制御するためのサーボ制御ユニットが設けられ、前記サーボ制御ユニットの入力端が起動信号を受信し、制御信号を前記末端アクチュエータに出力して、前記末端アクチュエータを駆動して移動させ、前記制御モジュール内に前記サーボ制御ユニットに接続された外部演算モジュールをさらに含み、
図1に示すように、前記制御方法は、
初期信号を取得するステップS10と、
前記初期信号を前記外部演算モジュールに入力して、前記末端アクチュエータのプリセット軌跡を取得するステップS20と、
等価予測モデルを構築するステップS30と、
前記プリセット軌跡を前記等価予測モデルに入力して、等価予測軌跡を取得するステップS40と、
前記プリセット軌跡と前記等価予測軌跡との差を求めて、プリセット追従誤差軌跡を取得するステップS50と、
前記プリセット軌跡と前記プリセット追従誤差軌跡を重ね合わせて、第1軌跡を取得するステップS60と、
前記第1軌跡を前記サーボ制御ユニットの入力端に入力して、補償軌跡を取得するステップS70とを含むことを特徴とし、
前記ステップS10において、前記初期信号は、前記末端アクチュエータの初期状態及び目標状態の分析により得られた形状であってもよく、前記初期信号はさらに、前記末端アクチュエータのプリセット経路形状であってもよく、具体的には、前記経路は円形、四角形等のプリセット形状であってもよい。
前記ステップS20において、本実施例における前記外部演算モジュールはシングルチップマイクロコンピュータであってもよく、その型番は市販されている任意の型番であってもよく、前記初期信号を前記外部演算モジュールに入力して、前記末端アクチュエータが移動過程をシミュレートするように駆動できることにより得られた軌跡はプリセット軌跡として設定することができる。
前記ステップS30において、本実施例における前記等価予測モデルは二次モデルである。
前記ステップS50において、軌跡と経路との相違点は、時間の概念が追加され、複数の時刻の位置を前記末端アクチュエータの軌跡に組み合わせるため、前記プリセット軌跡と前記等価予測軌跡との差を求めると、各対応する時刻の前記プリセット軌跡の位置と前記等価予測軌跡の位置との差を求めて、複数の時刻の位置誤差点を取得し、複数の前記位置誤差点を接続すると、プリセット追従誤差軌跡が形成される。
前記ステップS60において、同様に、対応する時刻の前記プリセット軌跡及び前記プリセット追従誤差軌跡の位置を加算して、複数の時刻の補償位置を取得し、複数の前記補償位置を接続すると、前記第1軌跡が形成される。
前記ステップS70において、この時に、前記サーボ制御ユニットの入力は補償されたプリセット軌跡である。
図5に示すように、
図5の横座標は時間であり、単位は秒であり、縦座標は変位であり、単位はミリメートルである。
図6は、
図5の部分Aの拡大図である。
図6の横座標は時間であり、単位は秒であり、縦座標は変位であり、単位はミリメートルである。
図6から分かるように、出力軌跡は、補償されていない前記初期信号をサーボ制御ユニットに入力した後に得られた軌跡であり、この出力軌跡とプリセット軌跡との間の誤差が大きい。プリセット軌跡が補償された第1軌跡をサーボ制御ユニットに入力した後に得られた補償軌跡とプリセット軌跡との間の誤差は極めて小さい。
【0016】
さらに、前記等価予測モデルは下式のとおりであり、
ここで、
は位置ループの比例係数であり、
は速度ループの比例係数であり、
は速度ループの積分係数であり、
は推力定数であり、mはリニアモータの質量であり、Bはモータの粘性摩擦係数である。
【0017】
前記プリセット追従誤差軌跡を補償量として、前記サーボ制御ユニットの入力端に補償し、前記サーボ制御ユニットは電流ループ、速度ループ及び位置ループを含み、前記プリセット追従誤差軌跡をフィードフォワード補償により前記速度ループの所定位置に補償すると、補償後の前記起動信号は、前記プリセット追従誤差軌跡と前記プリセット軌跡との重ね合わせに等しい。
【0018】
<実施例2>
実施例1に基づいて、前記ロボットはXY軸2軸ロボットであり、X軸に対応する第1末端アクチュエータ及びY軸に対応する第2末端アクチュエータを含み、前記第1末端アクチュエータと前記第2末端アクチュエータとの間に結合関係があり、
図2に示すように、前記制御方法は、
前記第1末端アクチュエータの第1初期信号及び前記第2末端アクチュエータの第2初期信号をそれぞれ取得するステップS81と、
ステップS20を実行して、前記第1末端アクチュエータの第1プリセット軌跡及び前記第2末端アクチュエータの第2プリセット軌跡を取得するステップS82と、
前記第1プリセット軌跡を前記起動信号として、前記第1末端アクチュエータの前記サーボ制御ユニットに入力して第1出力軌跡を取得し、前記第2プリセット軌跡を前記起動信号として、前記第2末端アクチュエータの前記サーボ制御ユニットに入力して第2出力軌跡を取得するステップS83と、
前記第1プリセット軌跡と前記第1出力軌跡との差を求めて、第1出力誤差軌跡を取得し、前記第2プリセット軌跡と前記第2出力軌跡との差を求めて、第2出力誤差軌跡を取得するステップS84と、
前記第1出力誤差軌跡及び前記第2出力誤差軌跡で前記末端経路輪郭誤差に関連する相関関数を構築して、前記第1出力誤差軌跡に対応する第1相関係数及び前記第2出力誤差軌跡に対応する第2相関係数を取得するステップS85と、
ステップS30~S50を実行して、前記第1末端アクチュエータの第1プリセット追従誤差軌跡及び前記第2末端アクチュエータの第2プリセット追従誤差軌跡を取得するステップS86と、
前記第1相関係数と前記第2相関係数の大きさを判断し、前記第1相関係数が前記第2相関係数より大きい場合、前記第1末端アクチュエータに関連する、前記第1プリセット追従誤差軌跡とプリセットゲインとの和である第1ゲインを構築し、第2末端アクチュエータに関連する、前記第2プリセット追従誤差軌跡と前記プリセットゲインとの差である第2ゲインを構築するステップS87と、
前記第1相関係数が前記第2相関係数より小さい場合、第1末端アクチュエータに関連する、前記第1プリセット追従誤差軌跡と前記プリセットゲインとの差である前記第1ゲインを構築し、前記第2末端アクチュエータに関連する、前記第2プリセット追従誤差軌跡と前記プリセットゲインとの和である前記第2ゲインを構築するステップS88と、
前記第1ゲインと前記第1プリセット軌跡を重ね合わせて、第2軌跡を取得するステップS89と、
前記第2ゲイン及び前記第2プリセット軌跡を重ね合わせて、第3軌跡を取得するステップS90と、
前記第2軌跡を前記起動信号として、第1末端アクチュエータの前記サーボ制御ユニットの入力端に入力し、前記第3軌跡を前記起動信号として、第2末端アクチュエータの前記サーボ制御ユニットの入力端に入力するステップS91とを含む。
【0019】
ここで、前記ロボットは多軸末端アクチュエータを含み、多軸の間に結合関係があり、ロボットの多軸の間に差異があり、例えば前記末端アクチュエータの固有周波数が異なり、各軸モータのタイプ選択及びサーボループパラメータが異なる等であるため、各軸で発生するタイムラグも異なり、この時、協調制御を行わないと軌跡がずれ、したがって、本実施例における方法は、各軸のサーボ帯域幅のフィードフォワード補償において補償量を各軸が一致するように調整することを総合的に考慮して、多軸協調の効果を達成し、前記ロボットの末端軌跡がずれるという問題を解消するために用いられる。
図7に示すように、ここで、
図7の横座標は変位であり、単位はセンチメートルであり、縦軸は変位を表し、単位はセンチメートルである。本実施例の前記ロボットの末端アクチュエータのモータのプリセット軌跡は円形であるが、X軸とY軸にタイムラグがあるため、プリセット軌跡がずれて円形ではなく、即ち補償が行われていない前に、前記プリセット軌跡を信号として、前記サーボ制御ユニットの入力端に入力すると、前記サーボ制御ユニットの出力軌跡は非円形であり、
図8は、前記プリセット軌跡と前記出力軌跡との間の誤差であり、ここで、横座標は時間を表し、単位は秒であり、縦座標は誤差値を表し、単位はセンチメートルであり、誤差が小さいため、
図7の前記プリセット軌跡と前記出力軌跡はほぼ重なっている。
【0020】
本実施例はXY2軸ロボットを例とし、X軸とY軸に結合関係がある場合、X軸に対応する前記第1出力誤差軌跡及びY軸に対応する前記第2出力誤差軌跡と前記末端経路輪郭誤差との間に相関性があり、前記第1出力誤差軌跡と前記第1相関係数との積と、前記第2出力誤差軌跡と前記第2相関係数との積との和は前記末端経路輪郭誤差であり、前記第1相関係数及び前記第2相関係数を決定する方法は多く、選択的に、本実施例は円弧輪郭誤差によって前記相関関数を構築し、前記相関関数は下式を参照し、
ここで、
は前記末端経路輪郭誤差を表し、
は前記第1出力誤差軌跡を表し、
は前記第2出力誤差軌跡を表し、α、Rはそれぞれ前記ロボットのX軸又はY軸の軌跡参照点での円弧接線と該軸の正方向との間の角度及び円弧半径を表し、
前記第1相関係数を
に、前記第2相関係数を
に設定すると、
とし、
式(2)から、前記第1出力誤差軌跡及び前記第2出力誤差軌跡と前記末端輪郭誤差との間の相関性を得ることができ、前記第1相関係数が前記第2相関係数より大きい場合、前記第1出力誤差軌跡は前記末端輪郭誤差に大きな影響を与え、逆に、前記第1相関係数が前記第2相関係数より小さい場合、前記第1出力誤差軌跡は前記末端輪郭誤差に小さな影響を与え、したがって、前記第1出力誤差軌跡及び前記第2出力誤差軌跡が前記末端輪郭誤差に与える影響をバランスさせるために、プリセットゲインを導入する。
【0021】
実施例1から分かるように、単軸ロボットの末端アクチュエータについては、補償量をプリセット軌跡に導入した後、その末端経路輪郭誤差が減少し、したがって、ロボットの末端経路輪郭の精度を向上させるために、2軸ロボットの各末端アクチュエータも補償量を導入する必要があり、2軸の協調性を満たすために、2軸の補償量をバランスさせる必要がある。
【0022】
前記プリセットゲインを導入することにより、前記第1出力誤差軌跡及び前記第2出力誤差軌跡が前記末端輪郭誤差に与える影響をバランスさせるために、前記第1相関係数が前記第2相関係数より大きい場合、前記第1プリセット軌跡に対して大きな補償を行い、前記第2プリセット軌跡に対して小さな補償を行い、前記第1相関係数が前記第2相関係数より小さい場合、前記第1プリセット軌跡に対して小さな補償を行い、前記第2プリセット軌跡に対して大きな補償を行い、その式は以下のとおりであり、
ここで、
は前記第1ゲインであり、
は前記第2ゲインであり、
は前記第1プリセット追従誤差軌跡であり、
は前記第2プリセット追従誤差軌跡であり、Kは前記プリセットゲインである。
【0023】
<実施例3>
実施例1及び実施例2に基づいて、さらに、初期信号を取得するステップは、
前記末端アクチュエータの振動周波数を取得するステップS01と、
前記振動周波数を除去するための畳み込み関数を構築して、畳み込みゲインを取得するステップS02と、
元の信号を取得するステップS03と、
前記元の信号と畳み込みゲインとの積を計算して、初期信号を取得するステップS04とを含み、
前記ステップS01において、前記ロボットは可撓性末端であるため、末端に不可避的に振動が発生する可能性があり、各軸の軌跡計画に基づき、振動を発生させる前記振動周波数を時間領域解析と周波数領域解析の組み合わせにより判断し、ここで時間領域解析は、末端追従信号における2つの末端位置の極値点の時間差を選択することである。周波数領域解析は、末端追従信号に対してフーリエ解析を行うことである。
前記ステップS02において、前記振動周波数を除去する方法は振動抑制と呼ばれる。好ましくは、本実施例における畳み込み関数は下式のように設計され、
ここで、
はタイムラグであり、
は前記畳み込みゲインである。
前記ステップS03において、
図4に示すように、
を前記元の信号に設定し、この元の信号を入力として、前記外部演算モジュールに入力して、前記末端アクチュエータの元のプリセット軌跡を取得し、
図3に示すように、ここで、横座標は時間を表し、単位は秒であり、縦座標は変位を表し、単位はミリメートルである。
前記ステップS04において、前記元の信号と前記畳み込みゲインとの積は畳み込みパルス関数であり、
ここで、
は畳み込みゲインであり、
は振動抑制後の信号、即ち初期信号であり、
は前記元の信号である。
【0024】
図4に示すように、ここで、
図4の横座標は時間であり、単位は秒であり、縦座標は変位であり、単位はミリメートルであり、
図4から分かるように、振動抑制後の前記初期信号と前記元の信号を比較して、前記振動周波数が除去されていない元の信号の応答曲線は大きな振動を示し、振動抑制後の初期信号の応答曲線は該現象がない。振動抑制後の前記初期信号を入力とし、前記外部演算モジュールに入力して、前記末端アクチュエータの初期プリセット軌跡を取得し、
図3に示すように、前記初期プリセット軌跡は前記元のプリセット軌跡より滑らかである。
【0025】
さらに、前記ロボットが可撓性ロボットである場合、まず、前記畳み込み関数によって末端振動を引き起こす周波数を除去し、次に、振動周波数が除去された信号を前記外部演算モジュールに入力して経路計画を行ってプリセット軌跡を取得し、プリセット軌跡をプリセット等価モデルに入力して等価予測軌跡を取得し、プリセット軌跡と等価予測軌跡との差を求めて、プリセット追従誤差軌跡を取得し、プリセット追従誤差軌跡を補償量として、前記プリセット軌跡を補償して、前記起動信号を取得する。本実施例では、まず振動抑制を行い、次に補償を行い、前記振動抑制により低周波信号を除去するが、補償時に高周波成分であるため、高周波成分を補償する時に振動抑制に影響を与えない。
【0026】
本明細書では、具体的な例を用いて本出願の原理及び実施形態を説明したが、以上の実施例の説明は、本出願の方法及びその中核思想の理解を助けるためのものに過ぎない。以上は本出願の好ましい実施形態に過ぎず、指摘すべきこととして、文字表現の有限性を有する一方、客観的に無限の具体的な構造があるため、当業者であれば、本発明の原理から逸脱することなく、さらにいくつかの改良、潤色又は変化を行うことができ、上記技術的特徴を適切な方式で組み合わせることもできる。これらの改良、潤色、変化又は組み合わせ、又は改良せずに発明の構想及び技術的解決手段を他の場面に直接適用することは、いずれも本出願の保護範囲と見なされるべきである。