(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】2,5-ジホルミルフランに富むモリンガ・ペレグリナ種子抽出物、それを得るための方法、及び美容用品組成物におけるその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20240105BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20240105BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240105BHJP
A61K 31/341 20060101ALI20240105BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240105BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240105BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/185
A61P17/00
A61K31/341
A61Q19/00
A61Q19/08
A61Q17/04
(21)【出願番号】P 2022571149
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2021063690
(87)【国際公開番号】W WO2021234159
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-12-14
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522452190
【氏名又は名称】アジャンス フランセーズ プール ル デヴロプマン ダル ウラ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ドディネ エリザベート
(72)【発明者】
【氏名】ブールジェトー ヴァンサン
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/138182(WO,A1)
【文献】Free Radicals and Antioxidants(2011),Vol.1,Issue 2,p.48-60
【文献】Int.J.Pharmacol.(2019),Vol.15,No.1,p.151-155
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K36/00
CAplus/MEDLINE/KOSMET/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリンガ・ペレグリナ種子抽出物であって、
前記モリンガ・ペレグリナ種子抽出物は、
殻付き種子固形物の固液抽出を、
アルコール
溶媒中
で、使用される総重量に対して固体物が
25重量%
±2.5重量%~5重量%となる割合で、16℃から30℃の温度で
2時間
±12~24分間撹拌しながら行い、
ただし前記アルコール溶媒は、エタノール又はメタノールから選択されたアルコールを、当該アルコール溶媒の総重量に対して70重量%~100重量%の割合で含むものであり、
固相を除去して
、化合物2,5-ジホルミルフランの含有量が他の全ての成分の含有量より多いモリンガ・ペレグリナ種子固形物の液体抽出物であるモリンガ・ペレグリナ種子の
前記抽出物を回収するように
、液相と固相の分離を行うことによって、得られるものであ
る、
モリンガ・ペレグリナ種子抽出物。
【請求項2】
請求項1に記載の液体
のモリンガ・ペレグリナ種子抽出物を乾燥させて、乾燥物の総重量に対して50重量%を超える量の2,5-ジホルミルフランを含有する前記モリンガ
・ペレグリナ種子固形物の乾燥抽出物
であるモリンガ・ペレグリナ種子の前記抽出物が得
られる、モリンガ・ペレグリナ種子抽出物。
【請求項3】
前記アルコール溶媒は、ポリオール及び亜臨界水から選択された共溶媒を含む、
請求項1又は2に記載のモリンガ・ペレグリナ種子抽出物。
【請求項4】
モリンガ・ペレグリナ種子抽出物を得るための方法であって、
殻付き種子固形物を得る工程と、
殻付き種子固形物の固液抽出を、アルコール溶媒中で、使用される総重量に対して固体物が25重量%±2.5重量%~5重量%となる割合で、16℃から30℃の温度で2時間±12~24分間撹拌しながら行う工程と、ただし前記アルコール溶媒は、エタノール又はメタノールから選択されたアルコールを、当該アルコール溶媒の総重量に対して70重量%~100重量%の割合で含むものであり、
固相を除去して、化合物2,5-ジホルミルフランの含有量が他の全ての成分の含有量より多いモリンガ・ペレグリナ種子の液体抽出物を回収するように、液相と固相の分離を行う工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項5】
得られた液体の前記モリンガ・ペレグリナ種子抽出物を乾燥させて、乾燥物の総重量に対して50重量%を超える量の2,5-ジホルミルフランを含有する前記モリンガ・ペレグリナ種子固形物の乾燥抽出物を得る、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
a)モリンガ・ペレグリナの殻付き種子を収集し、乾燥させて、内部水分含量を8%未満とする工程と、
b)乾燥させた前記種子をプレスして、油を前記種子の残りの部分から分離させて固形物を得る工程と、
c)前記工程b)で得られた前記固形物を粉砕する工程と、
d)前記工程c)で得られた粉砕された物質を、
前記アルコール
溶媒中に、使用される総重量に対して固体物が
25重量%
±2.5重量%~5重量%となる割合で分散させる工程
と、
e)16℃から30℃の温度で
2時間
±12~24分間、撹拌しながら
前記固液抽出を行う工程と、
f)固相を除去して液体モリンガ・ペレグリナ固形物抽出物を回収するように、液相と固相を分離させる工程と、
を含む、
請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記アルコールはエタノールであり、
前記方法は、
g)前記液体モリンガ・ペレグリナ抽出物を、固体モリンガ・ペレグリナ抽出物が得られるように乾燥させる工程
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アルコール溶媒は、ポリオール及び亜臨界水から選択された共溶媒を含む、
請求項4~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記主にアルコールを含む溶媒は、96°純粋エタノール溶媒である、請求項
6に記載の方法。
【請求項10】
前記液体モリンガ・ペレグリナ抽出物を、蒸留、マイクロろ過、限外ろ過及び/又はナノろ過によって精製して、前記抽出物の前記2,5-ジホルミルフランを、同様に抽出された有機物質に対して濃縮する、請求項
6に記載の方法。
【請求項11】
活性剤として有効量の請求項1又は2に記載のモリンガ・ペレグリナ種子抽出物と、生理学的に許容される添加剤と、を含有する、美容用品組成物又はニュートリコスメティクス組成物。
【請求項12】
前記組成物は、皮膚への局所適用のために製剤化された美容用品組成物であり、
前記モリンガ・ペレグリナ種子抽出物は、前記美容用品組成物の総重量に対して0.002重量%から20重量%、優先的には0.01重量%から10重量%の濃度で前記美容用品組成物中に存在する、請求項
11に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、経口摂取用に製剤化されたニュートリコスメティクス組成物であり、
前記モリンガ・ペレグリナ種子抽出物が、前記ニュートリコスメティクス組成物の総重量に対して0.01重量%から100重量%の濃度で前記ニュートリコスメティクス組成物中に存在する、請求項
11に記載の組成物。
【請求項14】
請求項
11~
13のいずれか1項に記載の組成物の美容用品又はニュートリコスメティクスにおける使用であって、当該使用は、皮膚、粘膜又は外皮の外観の改善、皮膚のリラクゼーション、鎮静及びストレス除去、並びに皮膚の老化及び/又は光老化のサインの予防及び/又は対処、並びに老化斑の予防のための、使用。
【請求項15】
組成物を得るための方法であって、
活性剤として有効量の請求項1又は2に記載のモリンガ・ペレグリナ種子抽出物を設けることと、
生理学的に許容される添加剤を設けることと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記組成物を、皮膚への局所適用のために製剤化する工程を含み、
前記モリンガ・ペレグリナ種子抽出物は、前記美容用品組成物の総重量に対して0.002重量%から20重量%、優先的には0.01重量%から10重量%の濃度で前記美容用品組成物中に存在する、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物を、経口摂取用に製剤化する工程を含み、
前記モリンガ・ペレグリナ種子抽出物が、前記ニュートリコスメティクス組成物の総重量に対して0.01重量%から100重量%の濃度で前記ニュートリコスメティクス組成物中に存在する、
請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容用品及びニュートリコスメティクス分野に関し、より詳細には、スキンケア組成物からなる製剤に含まれる活性成分の分野に関する。本発明は、化合物2,5-ジホルミルフラン(DFF)に富むモリンガ・ペレグリナ(Moringa peregrina)種子の抽出物に関する。本発明はまた、モリンガ・ペレグリナ種子の特定の抽出物を得るための方法、このような抽出物を含む美容用品組成物、そして最後に、皮膚、頭皮及び外皮をケアするためのこのような組成物の美容用品又はニュートリコスメティクスにおける使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ワサビノキ科(Moringaceae)は、Saharo-Sindian地域の植物相の要素である単属の科(属が1つのみ、Moringa adans)であり、著者らによると、12種から14種で構成され、東アフリカからアジアに分布している。本属は、慣用的には3つのセクションに分けられるが、系統解析により単系統であることは確認されていない。むしろこの解析により、パシコール(「瓶の木」)、「塊茎の木」、及び瓶の木でも塊茎の木でもないもの(「細長い木」)という、特定の形態学的特徴を中心とするクレードが明らかとなった。モリンガ・ペレグリナ(Forssk.)Fiori種は第3群に属する。属又は科に関するスパースな遺伝学的研究により、特にインドモリンガ、モリンガ・オレイフェラ(Moringa oleifera Lam.)に関して、属中の他の種に対する種の実体が確かめられる(特に以下の論文参照。OLSON, M.E. 2002, Combining Data from DNA Sequences and Morphology for a Phylogeny of Moringaceae (Brassicales), Systematic Botany 27(1): 55-73; HASSANEIN, A.M.A. AND AL-SOQEE, A.A., 2018, Morphological and genetic diversity of Moringa oleifera and Moringa peregrina genotypes, Horticulture, Environment and Biotechnology 59(2): 251-261)。サウジアラビアの様々な場所でサンプリングしたモリンガ・ペレグリナに関する最近の論文では、ITSマーカーを用いることにより同種の遺伝的安定性が認められたが(ALAKLABI, A., 2015, Genetic diversity of Moringa peregrina species in Saudi Arabia with ITS sequences, Saudi Journal of Biological Sciences 22: 186-190)、但し、集団内の遺伝的変異は高いレベルであると結論づけられた。
【0003】
モリンガ・ペレグリナ種はイエメン、オマーン、サウジアラビア、東アフリカ、スーダン、エチオピア、エリトリア、ソマリア、ジブチの岩の多い環境で見られる。イランにおけるその存在は南東部地方に限られているように見えるが、これには確認が必要である(PROTA14 = MUNYANZIZA E. AND YONGABI K.A., Vegetable oils/Oleaginous plants, Moringa peregrina (Forssk.) Fiori, http://database.prota.org/protahtml/moringa peregrina_fr.htm、2019年10月23日にアクセス)。中東及びエジプトでは、現在、この種は、主にスーダン地域のセクターにおいて、希少な分散した遺存種ステーション(高地でのわずかな個体群を除く)によってのみ代表される。モリンガ・ペレグリナは今日、スーダンとイエメンでも珍しく、危機に直面していえると考えられている。モリンガ・ペレグリナは、そのグレードの他の種と比較して最も乾燥し荒れた生息地を占めている。モリンガ・ペレグリナは、熱帯及び亜熱帯地域で大規模に商業的に植栽されているモリンガ・オレイフェラよりも明らかに耐乾性が高い。最近の研究では、種子の大きさと太さが発芽時間並びに若い個体の成長速度及び速度に好影響を与えることが示されており(GOMAA N.H. AND PICO F.X., 2011, Seed germination, seedling traits, and seed bank of the tree Moringa peregrina (Moringaceae) in a hyper-arid environment, American Journal of Botany 98(6): 1024-1030)、このことは数よりも種子品質に関する資源の割り当てにおいて調整がされることを示しており、これにより、モリンガ・ペレグリナは極端な(超乾燥)非生物環境において効率的に繁殖することが可能となる。モリンガ・ペレグリナ種子は、モリンガ・オレイフェラよりも細胞層に関して厚い中層を有する。
【0004】
モリンガ・ペレグリナ油がウラーの地域のイスラムの始まりにおいて活発に取り引きされたことを示すのに役立ついくつかの過去の報告が存在する(NASEEF, A.A.S.,1995, Al-‘Ula, A study of Cultural and Social Heritage)。地元でモリンガ・ペレグリナから生産される油は、現在では主に個人消費又は地元市場向けである。サウジアラビアでは、葉が、糖尿病、腸疾患、眼疾患及び貧血の治療のための内服用煎剤として伝統的に使用されており(ABDEL-KADER, M.S., HAZAZI A.M. A., ELMAKKI O.A. AND ALQASOUMI S.I., 2018, A survey on the traditional plants used in Al Kobah village, Saudi Pharmaceutical Journal 26(6): 817-821)、利尿薬、発赤剤及び収れん薬として使用されている(サウジアラビアのリヤドにあるサウジアラビア国立科学技術センターに提出された報告書である、AQEEL A.A.M., TARIQ M., MOSSA J.S., AL-YAHYA M.A. AND AL-SAID M.S., 1984, “Plants used in Arabian Folk medicine”)。オマーンでは、夏の終わりに女性によって抽出された油は、片頭痛、発熱、熱傷、裂傷、骨折、便秘及び胃の痛みに対処するため、また、筋肉痛、毛髪の乾燥及び労働による痛みに対処するために使用される(GHAZANFAR S.A., 1994, Handbook of Arabian Medicinal Plants, 1st ed., CRC Press, Boca Raton, Ann Arbor, U.S.; GHAZANFAR S.A., 1998, Plants of Economic Importance, cap. 15, in GHAZANFAR, S.A. AND FISHER, M. (ed.) Vegetation of the Arabian Peninsula. Geobotany 25, pages 241-264, Kluwer Academic Publishers, table 11.1, page 247 and 11.7 page 251)。また、これは、香料組成物(GHAZANFAR S.A., 1998, page 259)において使用され、またオマーンとイエメンではフェースローションとしても使用された(GHAZANFAR S.A. AND RECHINGER B., 1996, Two multi-purpose seed oils from Oman. Plants for Food and Medicine。この論文は1996年7月1日から7日にロンドンで開催されたEconomic Botany and International Society for Ethnopharmacologyの合同会議で発表された)。
【0005】
モリンガ・オレイフェラ種子に由来する抽出物は美容用品分野で知られている。例えば、FR296879には、油(トリグリセリド、脂肪酸及び極性脂質を含む)及びポリフェノールを含有するモリンガ・オレイフェラのホールシード(graines entieres、形を崩していない種子)の抽出物(テグメントを含む)、並びに皮膚の老化に対処するための美容用品組成物におけるその使用が開示されている。上記文献では、モリンガ・オレイフェラ種子の無極性部分、より具体的には油性部分が活性とみられる。また、FR2776519から、濁水をきれいにする効果で知られているモリンガ・オレイフェラ種子からのタンパク質抽出物が、皮膚及び粘膜に対する軟化、生理学的コンディショニング、保湿、再構築及び修復効果、並びに抗汚染活性剤としての効果を有することも知られている。上記文献では、活性成分は、モリンガ・オレイフェラの固形物(tourteau)の水抽出によって得られる、6500Daから8800Daの分子量を有するタンパク質である。FR3076460も知られており、この文献は、敏感な、感作された、高反応性の、脆弱な及び/又は脆化された皮膚及び/若しくは粘膜を治療するための、並びに/又は、紅斑、特に乳児のおむつかぶれの治療及び/若しくは予防における非発芽及び脱油モリンガ・オレイフェラ種子のタンパク質抽出物の使用に関する。上記文献の抽出方法は、分子量が約8800Daのタンパク質の主要な画分の生産を可能とする。また、KR2013/0088224には、特に超臨界流体を使用する抽出によって得られる発芽したモリンガ・オレイフェラのホールシードの抽出物の美容用品における使用が開示されている。この方法は、ホワイトニング美容用品用途のための活性剤として記載されている無極性アミノ酸及びカロチノイドを分離することを可能にする。上に示した文献はすべてモリンガ・オレイフェラ種の使用に関するものであり、美容用品分野におけるモリンガ・ペレグリナ種の使用については記載されていない。KolheilらによるXP055753955(2011年)には、モリンガ・ペレグリナのホールシードから、生体活性ポリフェノール化合物、タンニン、フラボノイド、サポニン、不飽和ステロール及び/又はトリテルペンをエタノールで抽出することが開示されている。得られた抽出物は4℃で保存され、抗酸化活性を有する。Abbas AlbaらによるXP055753970(2018年)には、モリンガ・ペレグリナのホールシードについて3日間以上行ったエタノール抽出が開示されている。ろ液は45℃から50℃の温度にて減圧下で濃縮される。Abou-HashemらによるXP055754018(2019年)には、モリンガ・ペレグリナのホールシードについて3×72時間行われるエタノール抽出が開示されている。次いで、得られた抽出物はろ過され、約45℃の温度にてロータリーエバポレータで濃縮される。Majali IbrahimらによるXP055754048(2015年)には、モリンガ・ペレグリナのホールシードについて、30分間撹拌しながらエタノール抽出を行い、続いて72時間にわたって沈殿させることが開示されている。上に示した文献のいずれにも、殻付きのモリンガ・ペレグリナ種子の固形物についてのエタノール抽出は開示されていない。
【0006】
より具体的には、モリンガ・ペレグリナ種に関しては、モリンガ・ペレグリナの葉又はホールシードから得た特定のフェノール性及びフラボノイド化合物が抗酸化活性を有することが知られている(AL-DABBAS M., 2017, Antioxidant activity of different extracts from the aerial part of Moringa peregrina (Forssk.) Fiori, from Jordan, Pakistan Journal of Pharmaceutical Sciences, 30(6): 2151-2157)。これらの化合物は、葉又はホールシードからメタノール、酢酸エチル又はヘキサンなどの溶媒で抽出される。最大量の活性化合物を有するのは葉であるとみられる。
【0007】
したがって、モリンガ属において使用される種に応じて、植物の部位(葉又は種子)、種子の部位(ホールシード、あるいはそうでなければ殻が剥かれた又は殻付き)及び行われる抽出方法(特に溶媒の選択)によって、抽出される分子が異なることが分かる。抽出物の組成により、生理活性、そして結果的に美容用品効力が調整される。
【0008】
上記を鑑みて、本発明が解決しようとする課題の1つは、美容用品に使用可能で且つ使用が容易である、モリンガ属のモリンガ・ペレグリナ種の抽出物をベースとする新規の製品を開発することである。
【0009】
したがって、出願人は、種子から、より具体的にはモリンガ・ペレグリナ種の種子の固形物から得られる新規の抽出物を明らかにし、これは特に、皮膚に対するリラクゼーション及び抗ストレス活性、アンチエイジング活性、並びに老化斑に対する予防活性を示す。本発明による抽出物は、2,5-フランジカルボキシアルデヒドとしても知られる2,5-ジホルミルフラン(DFF)に富む。抽出物は、具体的には種子から、又はより具体的にはモリンガ・ペレグリナの殻付き種子の固形物から、特にアルコール抽出を介して得られる。本発明による抽出物は従来技術の抽出物と比較して、第1に、使用される特定の出発種、第2に、その特定の化合物含有量という2つの点で、美容用品分野において新規である。
【0010】
2018年4月10日のフランス共和国政府とサウジアラビア王国との間の政府間合意により、出願人アジャンス フランセーズ プール ル デヴロプマン ダル ウラ(AFALULA)と、Commission Royale pour AlUlA(RCU)は、特に、先住植物に由来する天然産物の地元生産のため、並びに生物多様性及びサウジアラビア王国のウラー地域の権利を保護するために、持続可能な農業及び地元経済を開発する共同プロジェクトを有する。サウジアラビア王国は2020年10月8日以降、名古屋議定書のメンバーである。本特許の起案時において、名古屋議定書が関連する地方法の側面に統合される施行規則が検討中である。したがってこの段階では、サウジアラビア王国は本特許出願及び名古屋議定書に関して特定の要件を定めていない。したがって、本特許出願の出願日において、遺伝資源へのアクセスに関するコンプライアンス要件の証明はない。
【発明の概要】
【0011】
本発明の第1の主題は、化合物2,5-ジホルミルフランに富むモリンガ・ペレグリナ種子の抽出物である。化合物2,5-ジホルミルフランは植物界ではレアであり、5-ヒドロキシメチルフルフラールの中間体合成を介してフルフラールから合成されるサッカリドの性質の化合物である。
【0012】
高濃度の2,5-ジホルミルフランを有するというその特定の特徴により、本発明による抽出物はモリンガ属においてユニークである。モリンガ・ペレグリナ種は、属の他の種、特にモリンガ・オレイフェラの種とは異なる特定の分子プロファイルを有することが以下において実証され、これは出願人により明らかにすることができたものである。
【0013】
本発明の第2の主題は、本発明によるモリンガ・ペレグリナ種子の抽出物を得るための方法であり、この方法は、
a)モリンガ・ペレグリナの殻付き種子を収集し、乾燥させて、内部水分含量を8%未満とする工程と、
b)乾燥させた種子をプレスして、油を種子の残りの部分から分離させて固形物を得る工程と、
c)工程b)で得られた固形物を粉砕する工程と、
d)工程c)で得られた粉砕された物質を、主にアルコールを含む溶媒中に、使用される総重量に対して固体物が約25重量%となる割合で分散させる工程であって、ここで、アルコールは、ポリオール又は亜臨界水などの共溶媒をオプションで含むエタノール又はメタノールから選択され、溶媒の総重量に対してアルコールが80重量%から100重量%の割合である、工程と、
e)16℃から30℃の温度で約2時間、撹拌しながら固液抽出を行う工程と、
f)固相を除去して液体モリンガ・ペレグリナ固形物抽出物を回収するように、液相と固相を分離させる工程と、
g)オプションで、得られた液体モリンガ・ペレグリナ抽出物を、固体モリンガ・ペレグリナ抽出物が得られるように乾燥させる工程と、を含む。
【0014】
本発明の第3の主題は、活性剤として有効量の本発明によるモリンガ種子の抽出物と、生理学的に許容される添加剤と、を含有する美容用品組成物又はニュートリコスメティクス組成物である。
【0015】
最後に、本発明の第4の主題は、本発明の組成物の美容用品又はニュートリコスメティクスにおける使用であって、当該使用は、皮膚、粘膜又は外皮の外観の改善、皮膚のリラクゼーション、鎮静及びストレス除去、並びに皮膚の老化及び/又は光老化のサインの予防及び/又は対処、並びに老化斑の予防のための使用である。
【0016】
説明のみを目的として非限定的に示される本発明のいくつかの特定の実施形態についての以下の記載から、本発明はより良く理解され、そのさらなる目的、詳細、特徴及び利点がより明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において、別段の定めがない限り、ある範囲を示す場合にはその範囲の上限及び下限が含まれるものとする。
【0018】
本発明において、以下の略語は以下に示す意味を有する。
・MTT:3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT試験は生細胞をカウントするための迅速な方法である)
・SDS:ドデシル硫酸ナトリウム
・PBS:リン酸緩衝生理食塩水
・ELISA:酵素免疫測定法
・PCR:ポリメラーゼ連鎖反応
・ANOVA:分散分析
・MSH:メラノサイト刺激ホルモン
【0019】
本発明においては、以下の定義が適用される。
・「化合物2,5-ジホルミルフランに富む抽出物」:化合物2,5-ジホルミルフランの量が、他の同定された成分の量よりも多い、すなわち、全抽出物の乾燥物に関して50%を超える量である抽出物。
・「有効量」:所望の結果を得るため、すなわち、特に皮膚の細胞外マトリックスの保護を可能にするために必要な活性分子の量。
・「局所適用」:本発明による活性成分又はこれを含有する組成物を、皮膚、粘膜又は外皮の表面上に適用する又は広げること。
・「生理学的に許容される」:毒性、不適合性、不安定性又はアレルギー反応のリスクなしに、ヒトの皮膚と接触させる局所的使用、又は他の投与経路を介する使用、例えば経口又は皮膚への注入に適している。
・「固形物(tourteau)」:プレス後の種子の脱油部分。これは、種子から油を抽出した際の固体残留物である。これは、油を生産する工程である粉砕作業の副産物である。これは通常は種子の質量の50%から75%である。
・「殻付き種子」:採取した種子の殻又は果皮が実の周囲に維持されていることを意味する。
・「果実が熟したとき」:果実が熟していることを意味し、優先的には、鞘が裂開の開始時にあって暗いベージュ色から茶色に変わり、鞘の下側4分の1が180°ねじれることで弁が開こうとするときを意味する。
・「主にアルコールを含む溶媒」:96°純粋エタノールが最も適したアルコール溶媒であるとみられることを考慮し、アルコールタイプの溶媒が、活性成分を抽出するのに十分な特性を有する共溶媒を含んでもよいことを意味する。
・「約」:所与の情報(持続時間、パーセンテージなど)に対するプラス又はマイナス10%から20%のマージン。
・「活性分子」(「活性成分」とも呼ばれる):モリンガ・ペレグリナ種子から本発明の方法にしたがって抽出された2,5-ジホルミルフラン分子。この分子は、本発明に記載される生理活性の原因となる。
・「活性剤」:記載される生理活性を得るのに十分な量の本発明による抽出物。抽出物が液体であるか又は乾燥されたものであるか、濃縮されたものであるか又はその他であるかに応じて、活性剤の量は、組成物の総重量に対して0.002重量%から20重量%の割合で変わり得る。
・「皮膚の老化のサイン」:老化による皮膚及び外皮の外観のあらゆる変化、例えば、しわや細かい線、しなびた皮膚、たるんだ皮膚、薄くなった皮膚、皮膚の弾力性及び/若しくはトーンの欠如、鈍くつやのない皮膚、皮膚の色素沈着斑、毛髪の変色、又は爪のステイン、並びに変化した外観によって組織的に反映されない皮膚のあらゆる内部変化、例えば、紫外線(UV)照射への暴露後の皮膚のあらゆる内部劣化。
【0020】
本発明の第1の主題は、化合物2,5-ジホルミルフランに富むモリンガ・ペレグリナ種子の抽出物に関する。2,5-フランジカルボキシアルデヒドとしても知られる2,5-ジホルミルフラン分子は、これまで、モリンガ属の種の種子の抽出物として特徴付けられたことはない。モリンガ・ペレグリナ種は非常に乾燥した気候で育つ。したがって、モリンガ・ペレグリナ種は、乾燥に耐えるその能力により独特の特徴を獲得することが可能となり、出願人はこれを、ホールシード、又は優先的には種子固形物に適合した抽出方法を使用することにより特定することができた。
【0021】
本発明の文脈において、選択される植物部分はモリンガ・ペレグリナ種子である。モリンガ・ペレグリナ種子は、ペレグリナ油(INCI名:「Moringa peregrina seed oil」)として知られる油の抽出に使用されることが知られており、これは、個人消費のために又は種々の伝統的な医薬指示において地域的に使用される。種子の脱油後に得られる固形物は、現在、特に動物用飼料に使用されている廃棄物である。
【0022】
本発明の第1の目的によれば、モリンガ・ペレグリナ抽出物は、殻付き種子固形物の固液抽出を、主にアルコールを含む溶媒中に、使用される総重量に対して固体物が約25重量%となる割合で、16℃から30℃の温度で約2時間撹拌しながら行い、そして、固相を除去してモリンガ・ペレグリナ種子の液体抽出物を回収するように液相と固相の分離を行うことによって、得られるものであり、前記アルコールは、ポリオール又は亜臨界水などの共溶媒をオプションで含むエタノール又はメタノールから選択され、溶媒の総重量に対してアルコールが70重量%から100重量%の割合であり、前記抽出物は、化合物2,5-ジホルミルフランに富む。好ましくは、本発明による抽出物は、モリンガ・ペレグリナ果実が熟したときに採取された種子の固形物から、ペレグリナ油(INCI名:「Moringa peregrina seed oil」)の抽出後に得られる。
【0023】
本発明による抽出物の活性成分、すなわち2,5-ジホルミルフランは、ある程度の脆弱性を有する混合極性の分子であることに注目すべきである。したがって、殻付きのホールシードから得られる抽出物は、適切な溶媒及び共溶媒と30℃を超えない温度とを用いて、高濃度の活性成分を得るために選択的抽出を経るべきである。
【0024】
共溶媒は、例えば、グリコールエーテル(モノプロピレン若しくはジプロピレングリコール、プロパンジオール、及び他のプロピレングリコール誘導体、エチレン若しくはジエチレングリコール誘導体)、グリセロール、ジメチルエーテルイソソルビド、脂肪酸のメチル若しくはエチル若しくはプロピルエステル;ジグリルカーボネート、ジグリルエーテル、酢酸アルキル若しくはプロピオン酸アルキル、アセトン、メチル若しくはエチルケトン、及びα-ピネン若しくはリモネンなどのモノテルペンであってもよい。これらの共溶媒は、一次溶媒(例えば、エタノール又はメタノール)と0%から30%(V/V)の割合で混合されてもよい。
【0025】
抽出条件は、大気圧下又は真空下又は不活性雰囲気下としてもよいが、優先的には16℃から30℃の温度で暗所内である。
【0026】
本発明による優先的な実施形態では、抽出物は、殻付き種子固形物から、96°エタノールであるアルコール溶媒を用いる固液抽出によって得られる。
【0027】
さらに別の実施形態では、得られた液体抽出物は乾燥され、これにより、乾燥物の総重量に対して50重量%を超える量の2,5-ジホルミルフランを含有するモリンガ・ペレグリナ種子固形物の乾燥抽出物が得られる。
【0028】
モリンガ・ペレグリナ種子固形物の乾燥抽出物は、より正確には、乾燥物の総重量に対して、約55重量%の2,5-ジホルミルフラン、2.5重量%のフルフラール、1.2重量%のミリスチン酸イソプロピル、4.7重量%のパルミチン酸、11.1重量%のオレイン酸、及び25.8重量%のトリグリセリドを含有する。
【0029】
本発明の第2の主題は、本発明によるモリンガ・ペレグリナ種子固形物の抽出物を得るための方法であって、この方法は、
a)モリンガ・ペレグリナの殻付き種子を収集し、乾燥させて、内部水分含量を8%未満とする工程と、
b)乾燥させた種子をプレスして、油を種子の残りの部分から分離させて固形物を得る工程と、
c)工程b)で得られた固形物を粉砕する工程と、
d)工程c)で得られた粉砕された物質を、主にアルコールを含む溶媒中に、使用される総重量に対して固体材物質が約25重量%となる割合で分散させる工程であって、アルコールは、ポリオール又は亜臨界水などの共溶媒をオプションで含むエタノール又はメタノールから選択され、溶媒の総重量に対してアルコールが70重量%から100重量%となる割合である、工程と、
e)16℃から30℃の温度で約2時間、撹拌しながら固液抽出を行う工程と、
f)固相を除去して液体モリンガ・ペレグリナ固形物抽出物を回収するように、液相と固相を分離させる工程と、
g)オプションで、アルコールがエタノールである場合、得られた液体モリンガ・ペレグリナ抽出物を、固体モリンガ・ペレグリナ抽出物が得られるように乾燥させる工程と、を含む。
【0030】
優先的な実施形態では、果実が熟したとき及び優先的には鞘が裂開の開始時にあるときに、殻付き種子が収集される(すなわち、その種子の殻は保たれる)。
【0031】
優先的な実施形態では、種子は内部水分含量約6%となるよう乾燥され、この乾燥は、優先的には、太陽光から遮蔽された、好ましくは外気中の日陰下で、通気されたラック上で行われる。
【0032】
次いで、乾燥させた種子をすぐに冷間プレスしながら粉砕し、これにより、ペレグリナ油(INCI名:「Moringa peregrina seed oil」)を、圧縮された種子の残りの部分、すなわち固形物から、機械的に分離させることが可能となる。
【0033】
次いで、固形物は、ハンマーミル、フレイルミル、ナイフミル、又は破砕/細断ミルなどの任意のタイプの機械ミルで機械的に粉砕される。
【0034】
抽出は、有利には常に撹拌しながら行われ、したがって液体中における固体の分散及び均等化が可能となり、溶媒中の溶質の拡散が向上する。
【0035】
目的の化合物である2,5-ジホルミルフランを主に抽出するためには96°エタノールなどのアルコール溶媒が好ましいが、メタノールも使用されてもよく、ポリオール又は亜臨界水などの共溶媒を含んでもよい。抽出の終わりにおいて、目的の化合物がなくなった残りの植物材料は、有利には浄化ろ過によって液相から分離される。さらにより好ましくは、溶媒は96°エタノールである。有利には、0.5%から1.6%の間の乾燥物を含む液体抽出物がモリンガ・ペレグリナ種子固形物から得られ、この乾燥物は、少なくとも50%が2,5-ジホルミルフランであり、これは、液体抽出物の総重量の約0.25重量%から0.8重量%の間に相当する。
【0036】
本発明による生産方法の一実施形態では、得られた液体モリンガ・ペレグリナ抽出物を、蒸留、マイクロろ過、限外ろ過及び/又はナノろ過によって精製して、抽出物の目的の化合物である2,5-ジホルミルフランを、同様に抽出された有機物質に対して、特に、同様に抽出された脂肪物質及び派生物などの抽出物質の残りの部分に対して、濃縮する。この精製工程により、上に記載したような他の抽出された化合物及び溶媒を使って目的の化合物を濃縮することが可能となる。
【0037】
本発明による生産方法の別の実施形態では、得られた液体抽出物を乾燥させて、抽出された乾燥物の総重量に対して50重量%を超える量の目的の化合物である2,5-ジホルミルフランを含有するモリンガ・ペレグリナ種子固形物の乾燥抽出物を得る。
【0038】
本発明の有利な実施形態では、溶媒がエタノールである場合、得られた液体モリンガ・ペレグリナ種子抽出物は、優先的には、例えば霧化、凍結乾燥又はゼオ化によって乾燥され、これにより、エタノールが蒸発除去された固体モリンガ・ペレグリナ種子固形物抽出物が得られる。乾燥は、マルトデキストリン、シクロデキストリン又はイヌリンなどの有機支持体の存在下で、あるいはフィロケイ酸塩、ケイ酸マグネシウム又は炭酸塩などの鉱物支持体及びそれらの塩の存在下で行うことができる。
【0039】
本発明はまた、本発明による生産方法を介して得ることができるモリンガ・ペレグリナ種子の抽出物に関する。
【0040】
本発明の第3の主題は、活性剤として有効量の本発明によるモリンガ・ペレグリナ種子の抽出物と、生理学的に許容される添加剤と、を含む美容用品組成物又はニュートリコスメティクス組成物である。
【0041】
本発明による組成物は、局所投与又は経口投与に適した種々の製剤の形態に製剤化することができる。
【0042】
第1の変形例によれば、種々の製剤は局所投与に適しており、クリーム、水中油型及び油中水型エマルジョン、ミルク、軟膏、ローション、オイル、バルム、水性若しくは水性-アルコール性若しくはグリコール性溶液、血清、粉末、パッチ、スプレー、又は外部適用のためのその他の任意の製品、例えば医療デバイス若しくは美容テキスタイル製品を含む。
【0043】
第2の変形例によれば、種々の製剤は経口投与に適しており、植物抽出物は、食品組成物中又は食品サプリメント中に含まれ得る活性化合物2,5-ジホルミルフランを含む。食品サプリメントは、本発明の文脈において、硬質ゲルカプセル又は軟質ゼラチン又は植物カプセルの形態であってもよい。前記食品サプリメントは、植物抽出物を0.01重量%から100重量%含有してもよい。より優先的には、植物抽出物の量は、組成物の総重量に対して0.02重量%から40重量%、特に0.2重量%から20重量%である。
【0044】
食品用途に関して、栄養又は美容(美容食品又はニュートリコスメティクス)目的のために、組成物は、有利には経口投与に適した製剤の形態で製剤化される。この組成物は添加剤を含まなくてもよく、その全体が、活性化合物2,5-ジホルミルフランを含む植物抽出物から構成されてもよい。
【0045】
優先的な実施形態では、本発明による組成物は、より具体的には局所投与を目的とする。したがって、この組成物は、美容用品として許容される媒体、すなわち、皮膚及び外皮に適合する媒体を含有しなければならず、すべての美容用品形態をカバーしなければならない。これらの組成物は、特に、クリーム、水中油型若しくは油中水型エマルジョン又は複数のエマルジョン、血清、溶液、懸濁液、ゲル、ミルク、ローション、スティック、又は粉末の形態であってもよく、皮膚、唇及び/又は外皮への適用に適していてもよい。これらの組成物はこれを製剤化するのに必要な添加剤を含み、添加剤は例えば、溶媒、皮膚軟化剤、増粘剤、希釈剤、界面活性剤、抗酸化剤、生物活性剤、染料、保存剤及び芳香剤などである。これらは、皮膚ケア製品及び/又は皮膚メイクアップ製品として使用されてもよい。
【0046】
本発明による組成物は、具体的にヘアケア組成物から構成されてもよく、特に、シャンプー、ヘアコンディショナー、トリートメントローション、スタイリングクリーム又はゲル、ヘア再構築ローション、マスクなどから構成されてもよい。本発明による美容用品組成物は、特に、後にすすぎが続いても続かなくてもよい適用を含むトリートメントにおいて使用されてもよく、又は代替的にシャンプーの形態で使用されてもよい。本発明による組成物は、有利には、ふけ防止トリートメントに使用されてもよい。また、ブラシ又はくしで、特にまつ毛、眉毛又は髪に適用される染料又はマスカラの形態であってもよい。
【0047】
また、本発明による組成物は、想定される適用分野において一般的に使用される任意の添加剤及びその製剤化に必要とされる補助剤、例えば、溶媒、増粘剤、希釈剤、酸化防止剤、染料、日焼け止め剤、自己日焼け剤、顔料、充填剤、保存剤、芳香剤、臭気吸収剤、美容又は医薬活性剤、精油、ビタミン、必須脂肪酸、界面活性剤、フィルム形成ポリマーなども含む。
【0048】
INCI Dictionary & Handbook(ワシントンD.C.にある米国パーソナルケア製品評議会によって発行された「International Nomenclature of Cosmetic Ingredients」(第13版、2010年))には、スキンケア産業において一般的に使用される多種多様な美容及び医薬成分(これらに限定されない)が記載されており、これらは本発明による組成物における追加の成分として使用されるのに適している。
【0049】
いずれの場合にも、当業者は、これらの補助剤及びその割合の選択を、本発明による組成物の所望の有利な特性に確実に悪影響を及ぼさないようにするよう注意を払うであろう。
【0050】
本発明の1つの有利な実施形態では、本発明による組成物中の植物抽出物の量は、組成物の総重量に対して0.002重量%から20重量%、特に0.001重量%から10重量%である。
【0051】
最後に、本発明の第4の主題は、本発明の組成物の美容用品又はニュートリコスメティクスにおける使用であって、当該使用は、皮膚、粘膜及び外皮の外観の改善、皮膚のリラクゼーション、鎮静及びストレス除去、並びに皮膚の老化及び/又は光老化のサインの予防及び/又は対処、並びに老化斑の予防のための使用である。
【0052】
一実施形態では、本発明による使用の目的は、より具体的には、皮膚のリラクゼーション、鎮静及びストレス除去、並びに皮膚の老化のサインへの対処である。
【0053】
別の実施形態では、本発明による使用の目的は老化斑の出現を防止することである。
【0054】
本発明についていくつかの特定の実施形態に関連して記載されるが、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の文脈内に入る場合には記載される手段の全ての技術的均等物及びその組み合わせも包含することは明らかである。
【0055】
動詞「含有する」、「備える」又は「含む」の使用は、特許請求の範囲に記載のもの以外の要素又は工程の存在を除外するものではない。
【0056】
特許請求の範囲において、括弧内の参照符号は特許請求の範囲の限定と解釈してはならない。
【0057】
<例>
【0058】
[例1]モリンガ・ペレグリナ固形物からの植物抽出物の調製
【0059】
果実が熟したときに採取されたモリンガ・ペレグリナ(Forssk.)Fioriの殻付き種子を乾燥させて内部水分含量を8%未満とし、優先的には約6%とし、その後、機械エンドレススクリュープレスでプレスして、一方でバージン油を、他方で固形物を得るために、油を種子の残りの部分から分離させる。次いで、固形物を、1cmから2cmの断片の事前にカットされた筒状片の形に分離させる。55℃で10分間予熱した固形物に対し、55℃で10分間予熱した96℃エタノールを用いてマセレーション及び抽出を25%/75%(m/m)の比で行い、混合物をブレンダーで15分間剪断し、次いで、16℃から30℃の温度で2時間、インペラーによって撹拌したままにする。次いで、生成物を、真空下でブフナー漏斗によりろ過して、乾燥物を1.15%含有する淡黄色のろ液を得る。得られた液体抽出物は、以下、「本発明によるペレグリナ抽出物」又は「ペレグリナ抽出物」又は「ペレグリナ固形物抽出物」と称する。この液体抽出物は、その後、種々の効率試験で使用される。
【0060】
本発明によるこのペレグリナ抽出物は、それ自体を含めて乾燥物を1.15%含有する(結果は乾燥物(dry matter,DM)に対して表される)。
【0061】
【0062】
上記乾燥抽出物は、液体抽出物中に存在する蒸発前後の塊に基づき重量測定法を介して得られる。
【0063】
この抽出物の活性成分は、2,5-フランジカルボキシアルデヒド、又は2,5-ジホルミルフランである。これはクロマトグラフィー法により、より正確には水素炎イオン化検出器に結合したガスクロマトグラフィーにより測定された。
【0064】
フルフラールは、同一の方法によって測定された。
【0065】
ミリスチン酸イソプロピルは、同一の方法によって測定された。
【0066】
パルミチン酸及びオレイン酸は、同一の方法によって測定された。
【0067】
トリグリセリドは、超遠心分離により分離された。
【0068】
[例2]抗酸化剤としての本発明によるペレグリナ抽出物の効果
【0069】
この研究の目的は、DPPH(2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル)ラジカルと、さらに参照抗酸化剤としてアスコルビン酸とを用いる無細胞in vitro比色分析モデルにおいて、ペレグリナ抽出物による抗酸化活性の調節を評価することである。用いられる方法は阻害法として知られている。これは、参照抗酸化剤としてアスコルビン酸を用いる、540nmで吸収する紫色の酸化ラジカルDPPHの消去に基づく。この反応は陽性対照の役割を果たし、無色、あるいは淡黄色でもあるDPPH化合物の形成をもたらす。本発明によるペレグリナ抽出物及び参照製品「アスコルビン酸」を、40℃で30分間、DPPH溶液と接触させる。次いで、抗酸化活性を、540nmでの吸光度を測定することによって評価する。この活性の調節は、アスコルビン酸(T+)の存在下で得られる最大抗酸化活性を参照用に用いて、試験活性剤による抗酸化活性の活性化のパーセンテージとして表される。
【0070】
・プロトコル
DPPH溶液を、本発明によるペレグリナ抽出物(T+)の非存在下(対照)又は存在下で、そして試験サンプルの濃度を減少させて、40℃で30分間インキュベートする。インキュベーション期間の終わりにおいて、参照製品の存在下と、ペレグリナ抽出物の存在下若しくは非存在下とでの抗酸化活性が、40℃で30分後に染色することによって明らかにされた。したがってそれは、540nmでの反応媒体の吸光度を測定することによって評価された。試験された各濃度について、試験製品による抗酸化活性の調節が、以下の式にしたがって計算された。
【0071】
[数式1]
抗酸化活性のパーセンテージ調節=100×[(OD540対照-OD540試験製品)/OD540参照製品]
【0072】
結果が陰性の場合、試験製品は酸化するとみなされ、結果が陽性の場合、パーセンテージはフリーラジカル捕捉活性の活性化として表される。得られた結果を以下に示す。
【0073】
【0074】
・結論
本発明によるペレグリナ抽出物は、フリーラジカルからの保護が可能であり、1%以上の濃度で有意な抗酸化特性を有する。
【0075】
[例3]メタロプロテアーゼ阻害剤としての本発明によるペレグリナ抽出物の効果
【0076】
この研究の目的は、I型コラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼと基質複合体と発色団であるニンヒドリンとを使用するin vitro無細胞モデルにおいて、本発明によるペレグリナ抽出物によるメタロプロテアーゼ阻害活性の調節を評価することである。I型コラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼの緩衝溶液は特定の基質複合体と反応し、これを変換して、80℃で15分間のインキュベーションにより発色団を活性化できる化合物を形成する。したがって、コラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼ活性は、565nmでの吸光度を測定することによって評価され得る。サンプルを、酵素基質複合体と一緒にコラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼ溶液と37℃で5分間接触させる。酵素で変換された基質は、80℃で15分間インキュベートすることによって発色団を活性化することができる。次いで、サンプルの存在下/非存在下でのコラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼ活性を565nmでの吸光度を測定することによって評価する。この活性の調節は、活性剤の非存在下で、すなわち酵素基質の存在下でのみ、コラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼ活性の阻害又は活性化のパーセンテージとして表される。
【0077】
・プロトコル
試験される本発明によるペレグリナ抽出物の非存在下又は存在下で、I型コラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼ酵素の溶液をその基質中で5分間インキュベートする。次いで、溶液を色原体ニンヒドリンと接触させ、続いて、80℃で15分間インキュベートする。インキュベーション期間の終わりにおいて、試験又は参照製品を含む及び含まないコラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼ酵素の活性が、565nmでの反応媒体の吸光度を測定することによって評価された。試験された各濃度について、コラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼ酵素活性の試験製品による調節が、以下の式にしたがって計算された。
【0078】
[数式2]
コラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼ酵素活性のパーセンテージ調節=100×[(OD試験又は参照製品-ODコラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼのみ)/ODコラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼのみ]
【0079】
結果が陰性の場合、パーセンテージは酵素阻害として表され、結果が陽性の場合、パーセンテージは酵素活性化として表される。本発明によるペレグリナ抽出物によるメタロプロテアーゼ阻害の結果を以下に示す。
【0080】
【0081】
・結論
本発明によるペレグリナ抽出物は、0.01%という非常に低いレベルで、62%という強力なメタロプロテアーゼ(コラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼ)阻害を引き起こす。本発明によるペレグリナ抽出物は、これらのメタロプロテアーゼを強力に阻害することができ、皮膚の細胞外マトリックスを大効率で保護するための良好な潜在能力を有し、そして、この阻害を介してアンチエイジング効果を示す。
【0082】
[例4]ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)及びサーチュインI酵素の阻害に対する本発明によるペレグリナ抽出物の効果
【0083】
この研究の目的は、本発明によるペレグリナ抽出物の、酵素HDAC及びサーチュインIに対する阻害活性を実証することである。HDAC及びサーチュインIの緩衝溶液は37℃で20分間基質と反応し、これを変換して、37℃での10分間のインキュベーション後に現像剤の存在下で染色される化合物を形成する。したがって、サーチュインの最大脱アセチル化活性は、405nmでの吸光度を測定することによって評価され得る。本発明によるペレグリナ抽出物又は参照製品「トリコスタチンA(STA)阻害剤1μM」を、37℃で20分間、酵素基質と共にサーチュインの溶液と接触させ、酵素で変換された基質を、現像剤を添加することによって染色する。次いで、活性剤の存在下でのHDAC及びサーチュインIの脱アセチル化活性を405nmでの吸光度を測定することによって評価する。この活性の調節は、活性剤の非存在下で、すなわち、HDAC及びサーチュインI酵素についての基質の存在下でのみ、HDAC及びサーチュインIの阻害又は最大活性の活性化のパーセンテージとして表される。
【0084】
・プロトコル
参照製品の非存在下(対照)若しくは存在下で、又は濃度を増加させた試験製品の非存在下若しくは存在下で、サーチュイン酵素の溶液をその基質中で20分間インキュベートする。本発明によるペレグリナ抽出物を、2%、1%、0.1%(V/V)の濃度で試験する。インキュベーション期間の終わりにおいて、試験又は参照製品を含む及び含まないサーチュイン酵素の活性が、現像剤溶液を用いて染色する(37℃で10分間)ことによって明らかにされ、405nmでの反応媒体の吸光度を測定することによって評価された。試験された各濃度について、ヒストン脱アセチル化酵素及びサーチュインI酵素の脱アセチル化活性の試験製品による調節が、以下の式にしたがって計算された。
【0085】
[数式3]
サーチュイン酵素活性のパーセンテージ調節=100×[(OD405試験又は参照製品)-(OD405HDAC及びサーチュインIのみ)]/OD405サーチュインのみ
【0086】
結果が陰性の場合、パーセンテージは酵素反応の阻害として表され、結果が陽性の場合、パーセンテージは酵素反応の活性化として表される。ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)酵素の阻害に関する結果を以下に示す。
【0087】
【0088】
・結論
本発明によるペレグリナ抽出物は、2%において有意なHDAC阻害を示し、この阻害は、特に老化プロセスに関連する遺伝的浮動に対する皮膚細胞の自己保護を促進する能力を反映する。このように、抽出物は皮膚表面の共通遺伝的浮動の1つ、すなわち「スキンタッグ」(線維性突起)の出現によって現れる線維症に対して有用であるとみられる。抽出物は、有利には、皮膚表面上の線維症を防ぎ、したがって、皮膚老化を防止することができる。
【0089】
[例5]ホスホリパーゼ-A2酵素の抗炎症活性の調節に対する本発明によるペレグリナ抽出物の効果
【0090】
この研究の目的は、「SPLA2(V型)阻害剤スクリーニング測定キット」を用いて、in vitro無細胞モデルにおいて1つ以上のサンプルによる酵素ホスホリパーゼA2の抗炎症活性の調節を評価することである。ホスホリパーゼA2は、アラキドン酸カスケードによってトリガされる炎症プロセスの上流において重要な酵素である。ホスホリパーゼA2の緩衝溶液は、特定の基質、ジヘプタノイルチオ-PCと反応し、これを、室温での撹拌により色原体DTNBに結合する化合物に変換する。したがって、ホスホリパーゼA2活性は、413nmでの吸光度を測定することによって評価され得る。本発明によるペレグリナ抽出物又は参照阻害製品「チオエーテルアミド-PC」を、酵素基質と同時にホスホリパーゼA2溶液と接触させる。酵素によって変換された基質は、室温での撹拌により色原体DTNBによって染色される。次いで、本発明によるペレグリナ抽出物又は参照製品の活性を413nmでの吸光度を測定することによって評価する。この活性の調節は、活性剤の非存在下で、すなわち酵素基質(ジヘプタノイルチオ-PC)の存在下でのみ、ホスホリパーゼA2活性の阻害又は活性化のパーセンテージとして表される。
【0091】
・プロトコル
酵素ホスホリパーゼA2の溶液を、その基質であるジヘプタノイルチオ-PC中で、参照阻害剤の存在下若しくは非存在下で、及び2%、1%、0.1%(V/V)の条件下で試験される本発明によるペレグリナ抽出物の存在下若しくは非存在下でインキュベートし、次いで、色原体DTNBを取り込み、その後25℃で15分間インキュベートし、インキュベーション期間の終わりにおいて、試験製品又は参照製品の存在下及び非存在下での酵素ホスホリパーゼA2の活性を、413nmで反応媒体の吸光度を測定することによって評価する。試験された各濃度について、試験製品によるホスホリパーゼA2酵素活性の調節が、以下の式にしたがって計算された。
【0092】
[数式4]
ホスホリパーゼA2酵素活性のパーセンテージ調節=100×[(OD405試験製品又は参照製品-OD405sPLA2のみ)/OD405sPLA2のみ]
【0093】
結果が陰性の場合、パーセンテージは酵素阻害として表され、結果が陽性の場合、パーセンテージは酵素活性化として表される。酵素ホスホリパーゼA2の抗炎症活性の調節に関する結果を以下に示す。
【0094】
【0095】
・結論
本発明によるペレグリナ抽出物は、0.1%以上、より好ましくは1%又は2%の投与量でPLA2のわずかな、安定した阻害を生じる。これは、本発明によるペレグリナ抽出物がアラキドン酸カスケード/炎症カスケードを非常に早期に減少させる能力を有することを意味し、したがって、この抽出物は、皮膚に対する良好な鎮静又はリラクゼーションの可能性を有する。
【0096】
[例6]エンドセリン-1の作用の阻害に対する本発明によるペレグリナ抽出物の効果
【0097】
エンドセリンは人体において知られている最も強力な血管収縮剤である。さらに、エンドセリン枯渇は、血管拡張効果を生じることも知られている(Hirata, Y. et al., 1988, Cellular mechanism of action by a novel vasoconstrictor endothelin in cultured rat vascular smooth muscle cells, Biochemical and Biophysical Research Communications, 154: 3, pages 868-875)、(Shalinkumar P. et al., 2018, H2S Mediates the Vasodilator Effect of Endothelin-1 in the Cerebral Circulation. American Journal of Physiology. Heart Circulatory Physiology, 315, pages 1759-1764)。
【0098】
目的は、ヒト微小血管内皮細胞中の1型エンドセリンを、本発明によるペレグリナ抽出物に24時間暴露させた後に測定することである。
【0099】
・プロトコル
ヒト微小血管内皮細胞はPELOBiotech社から提供され、サプライヤーの生成手順にしたがって96ウェルプレート中で培養される。抽出物は、80%コンフルエンス状態で24時間、種々の濃度で内皮細胞に作用させたままにし、次いで、細胞上清中のエンドセリン-1が、PicoKine ELISAキット(EDN1)を使用して定量化される。エンドセリン-1測定で使用する非毒性投与量を決めるために事前に生存率試験が行われる。陰性対照は培地中の細胞を処理せず用いて行われる。生存率試験における陽性対照は0.5%SDSである。全条件が培地中で準備され、続いて細胞が36.5℃、5%CO2で24時間インキュベートされる。
【0100】
a)内皮細胞への試験溶液の適用
試験製品を、96ウェルプレート内でサブコンフルエント状態の内皮細胞に接触させる。各濃度について、試験は3つのウェルで行う。プレートを36.5℃、5%CO2で24時間±1時間インキュベートする。
b)生存率試験
細胞生存性を、製品とともにインキュベートさせた後の細胞についてMTT法を用いて評価する。24時間のインキュベーション後、上清を回収し、測定用に-20℃で保存する。次いで、ウェルを200μLのPBSで1回洗浄する。0.5mg/mLのMTT溶液を各50μLウェルに加え、36.5℃、5%CO2で3時間インキュベートする。100μLのイソプロパノールを各ウェルに加える。均等化後、550nmでの吸光度読み取り値を取得する。各条件について、陰性対照の平均光学濃度値に対する細胞の平均光学濃度値の比によって、生存率が決定される。
c)エンドセリン-1測定
測定は、ELISAキットを用いて行う。
【0101】
【0102】
・結論
処理の終わりにおいて行われる生存率試験は、試験された濃度について、いかなる毒性効果も示さなかった。エンドセリン-1測定は細胞上清中において非毒性濃度で行う。各条件についてのエンドセリン-1の量はELISAキットを使用して測定される。陰性対照細胞については、値は134.94pg/mLのオーダーである。様々な濃度の抽出物で処理された細胞について、値は、63.14pg/mL(本発明による抽出物は5%)から101.06pg/mL(本発明による抽出物は0.1%)であり、これは、本発明による抽出物が0.1%以上のとき1型エンドセリン生成が約25%阻害されるという非常に有意な阻害を示し、本発明による抽出物が5%のときには最大53%阻害されることを示す。
【0103】
[例7]テロメラーゼ活性の活性化に対する本発明によるペレグリナ抽出物の効果
【0104】
テロメアは線状染色体の末端に位置するDNAを保護する複合体であり、染色体の安定性を促す。人間におけるテロメアの不足は、疾患のリスク及び進行、並びに多くのタイプの癌、特に乳癌、前立腺癌、結腸癌、膀胱癌、頭頸部癌、肺癌及び腎臓細胞癌における早期死亡の予測マーカーに発展している(Ornish D., 2008, Increased Telomerase Activity and Comprehensive Lifestyle Changes: a Pilot Study, Lancet Oncology 9, pages 1048-1057)。テロメア不足は細胞酵素テロメラーゼにより解消される。
【0105】
この研究の目的は、単層培養において低い継代レベルで成人ヒトケラチノサイトから構成されるモデルにおいて、「本発明によるペレグリナ抽出物」として知られる化合物がテロメラーゼ活性に及ぼす影響を評価することである。
【0106】
・プロトコル
49歳のドナーからヒトケラチノサイトを得た。実験を行うために、ケラチノサイトを低い継代レベル(すなわち、細胞単離継代数2回)にて使用した。細胞は、実験に使用される前に、約75%コンフルエント状態に達するまで単層として増殖させた。
【0107】
・参照製品
100ng/mLのFK228をテロメラーゼ1活性の参照誘導物質として使用した。
【0108】
・インキュベーションプロトコル
細胞は、参照製品の非存在下(対照)若しくは存在下で、又は、0.5%、1%及び5%(v/v)の増加させた濃度の本発明によるペレグリナ抽出物のような試験化合物の非存在下若しくは存在下で、24時間、インキュベートした。本発明によるペレグリナ抽出物をインキュベーション培地中で直接希釈して、上記の種々の濃度を達成する。
【0109】
・効果の評価
- 蛋白質測定
インキュベーション期間の終わりにおいて、細胞の総タンパク質を細胞から抽出し、分光比色法(Bradford法)によって測定した。この測定値を用いて、テロメラーゼ活性測定に用いる抽出物の正確な量を決定し、これにより、PCR工程で試験するすべての条件について同量のタンパク質(テロメラーゼを含む)を維持する。
- テロメラーゼ活性の測定
インキュベーション期間の終わりにおいて、細胞からテロメラーゼを抽出し、その活性を特定感受性キットによって決定した。テロメラーゼキットの原理は、テロメラーゼ伸長生産物の量を半定量的に測定するために、PCR工程(この工程においてテロメラーゼがその伸長作用に関して機能する)をELISA工程と結合することによってテロメラーゼ活性を測定するというものである。
- 統計
結果は、テロメラーゼ活性レベル(平均値±S.D)について任意の単位で表す。「賦形剤」と「参照製品」の間の有意水準はスチューデントt検定(*:p<0.05)によって評価した。なお、「対照」と「試験化合物」の間の有意水準は製品ごとに一元配置分散分析(一元配置ANOVA)の後、Holm-Sidak検定(*:p<0.05)を行って、それぞれ独立して評価した。
0.5%及び1%(v/v)で試験した本発明によるペレグリナ抽出物は、「対照」と比較して、テロメラーゼ活性を有意に調節しなかった。5%(v/v)で試験した場合、本発明によるペレグリナ抽出物は、「対照」と比較して、テロメラーゼ活性を18.9%有意に増加させた(p<0.001)。
100ng/mLで試験した「FK228」と称される参照製品は、テロメラーゼ活性を28.0%有意に増加させた(p<0.01)。この結果は予測されたものであり、実験を有効性のあるものとする。テロメラーゼ活性の活性化についての結果を以下に示す。
【0110】
【0111】
・結論
0.5%及び1%(v/v)で試験した本発明によるペレグリナ抽出物は、「対照」と比較して、テロメラーゼ活性を有意に調節しなかった。5%(v/v)で試験した場合、本発明によるペレグリナ抽出物は、「対照」と比較して、テロメラーゼ活性を18.9%有意に増加させた(p<0.001)。本発明による抽出物は、染色体の末端に保護テロメアを蓄積するこの酵素経路に直接作用し、遺伝物質の自然な老化を遅らせる。したがって、本発明による抽出物は染色体に対してアンチエイジング効果をもたらすことができる。
【0112】
例2から例7は、本発明によるペレグリナ抽出物がアンチエイジング、抗ストレス及びリラクゼーション特性を有することを示し、これは良好な皮膚保護剤の側面を示す。
【0113】
[例8]チロシナーゼ活性の活性化に対する本発明によるペレグリナ抽出物の効果
【0114】
この研究の目的は、真菌由来のチロシナーゼ酵素(Sigma-Aldrich T3824)、その基質であるL-チロシン(Sigma-Aldrich T3754)及び参照阻害剤であるヒドロキノン(Sigma-Aldrich H17902、阻害剤=ヒドロキノン2.5mM)を使用して、in vitro無細胞モデルにおいて、本発明によるペレグリナ抽出物の酵素チロシナーゼに対する作用を評価することである。チロシナーゼの緩衝溶液は、基質であるL-チロシン2.5mMと23℃で60分間反応し、これを変換して着色化合物を形成する。したがって、最大チロシナーゼ活性は475nmでの吸光度を測定することによって評価され得る。本発明によるペレグリナ抽出物又は参照製品「ヒドロキノン」を、23℃で60分間、酵素基質と一緒にチロシナーゼ溶液と接触させ、酵素で変換された基質が自然に着色される。次いで、活性剤の存在下でのチロシナーゼ活性が475nmでの吸光度を測定することによって評価する。この活性の調節は、活性剤の非存在下で、すなわち酵素基質(L-チロシン)の存在下でのみ、最大チロシナーゼ活性の阻害又は活性化のパーセンテージとして表される。
【0115】
・プロトコル
チロシナーゼ酵素の溶液を、その基材L-チロシン中で、参照製品の非存在下(対照)若しくは存在下で、又は増加する濃度(2%、1%、0.1%(V/V))の本発明によるペレグリナ抽出物の非存在下若しくは存在下で、60分間インキュベートする。インキュベーション期間の終わりにおいて、試験又は参照製品を含む及び含まないチロシナーゼ酵素の活性を475nmでの反応媒体の吸光度を測定することによって評価した。試験された各濃度について、試験製品によるチロシナーゼ酵素活性の調節が、以下の式にしたがって計算された。
【0116】
[数式5]
チロシナーゼ酵素活性のパーセンテージ調節=100×[(OD475試験製品又は参照製品)-(OD475チロシナーゼのみ)]/OD475チロシナーゼのみ
【0117】
結果が陰性の場合、パーセンテージは酵素阻害として表され、結果が陽性の場合、パーセンテージは酵素活性化として表される。チロシナーゼ活性の活性化についての結果を以下に示す。
【0118】
【0119】
・結論
本発明によるペレグリナ抽出物は、基礎チロシナーゼ活性を低下させることができ、これにより、この抽出物が、自然な形態の皮膚保護の1つ、つまり紫外線に対する保護を向上させる能力を有することを示すことができる。
【0120】
[例9]メラニン生成の阻害に対する本発明によるペレグリナ抽出物の効果
【0121】
ヒト細胞培養に関するこの研究の目的は、使用された全データ及び得られた結果を照合して、ヒトメラニン細胞に対するメラニン調節試験を、本発明によるペレグリナ抽出物に5日間暴露させた後に行うことである。
【0122】
・プロトコル
ヒトメラニン細胞を96ウェルプレート及び24ウェルプレートで培養する。
【0123】
本発明によるペレグリナ抽出物を、5日間、5%、2%、1%及び0.1%の濃度で、コンフルエント状態のメラニン細胞に作用させる。24時間後のMTTによる生存性の予備試験により、細胞毒性を評価して、メラニン調節試験のための濃度を選択することが可能となる。この調節は、細胞溶解物中のメラニンを抽出物への5日間の暴露後に測定することによって評価される。陰性対照は培地中の細胞を処理せず用いて行われる。生存率試験における陽性対照は0.5%SDSである。メラニン調節試験では陰性対照としてα-MSHが存在する培地及び存在しない培地を用いる。
【0124】
全ての条件を培地中で準備して、続いて、細胞毒性試験のために24時間、及びメラニン測定のために5日間、細胞を36.5℃、5%CO2でインキュベートする。
【0125】
a)試験溶液のメラニン細胞への適用
試験濃度を、96ウェルプレート(細胞毒性試験)及び24ウェルプレート(メラニン測定)中のコンフルエント状態のメラニン細胞と接触させる。各濃度について、試験は3つのウェルで行う。プレートを、36.5℃、5%CO2で24時間±1時間、5日間インキュベートする。
【0126】
b)生存率試験
細胞生存性を、製品を用いて24時間インキュベートした後の細胞についてMTT法で評価する。24時間のインキュベーション後、対象のウェルを200μLのPBSで1回洗浄する。0.5mg/mLのMTT溶液50μLを各ウェルに加え、36.5℃、5%CO2で3時間インキュベートする。150μLのイソプロパノールを各ウェルに加える。均等化後、550nmでの吸光度読み取り値を取得する。各条件について、陰性対照の平均光学濃度値に対する細胞の平均光学濃度値の比により、生存率が決定される。
【0127】
陰性対照値に対して70%である生存率カットオフ値を使用して、試験物質を細胞毒性又は非細胞毒性として分類する。in vitro結果について、生存率が70%超えの結果は「非細胞毒性」と分類し、生存率が70%以下の結果は「細胞毒性」と分類する。
【0128】
5%濃度の本発明による抽出物によって、試験条件下において5%で細胞毒性であることが実証された。したがって、2%、1%及び0.1%濃度をメラニン調節試験に使用する。細胞中に存在するメラニンの量が細胞溶解後に測定される。メラニン生成の阻害についての結果を以下に示す。
【0129】
【0130】
・結論
本発明によるペレグリナ抽出物によってセルロース中のメラニン生成が阻害され、このことは、本発明によるペレグリナ抽出物に皮膚保護特性を与える。この阻害はまた、基礎レート(basal rate)が対照よりも低い(培地中に本発明による抽出物が存在しない)ので、メラニン細胞に対するリラクゼーション効果を示し、ここで、メラニンの生成は細胞ストレスに対する応答であることが想起される。したがって、本発明によるペレグリナ抽出物は、これが老化斑を防止することができることを示す。
【0131】
[例10]同一抽出方法を用いるオレイフェラ抽出物に対する本発明によるペレグリナ抽出物の分析的特徴付け
【0132】
モリンガ・ペレグリナ固形物及びモリンガ・オレイフェラ固形物をベースにして、例1に記載の本発明による抽出方法を適用した。抽出された成分の比較組成を乾燥物ベースで以下に示す。
【0133】
【0134】
2つの抽出物は非常に異なる分子プロファイルを有することがみてとれる。モリンガ・オレイフェラの抽出物はDFFを1%未満含むが、モリンガ・ペレグリナの抽出物は50%以上含む。
【0135】
[例11]管内コラゲナーゼ試験に関するモリンガ・オレイフェラを用いる比較試験
【0136】
この研究の目的は、I型コラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼと基質複合体と発色団であるニンヒドリンとを使用するin vitro無細胞モデルにおいて、本発明によるペレグリナ抽出物によるメタロプロテアーゼ阻害活性の調節を評価することである。I型コラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼの緩衝溶液は、特定の基質複合体と反応し、これを変換して、80℃で15分間のインキュベーションによって発色団を活性化することができる化合物を形成する。したがって、コラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼ活性は565nmでの吸光度を測定することによって評価され得る。サンプルを、酵素基質複合体と一緒にコラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼ溶液と37℃で5分間接触させる。酵素で変換された基質は80℃で15分間インキュベートすることによって発色団を活性化することができる。次いで、サンプルの存在下/非存在下でのコラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼ活性を、565nmでの吸光度を測定することによって評価する。この活性の調節は、活性剤の非存在下で、すなわち酵素基質の存在下でのみ、コラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼ活性の阻害又は活性化のパーセンテージとして表される。
【0137】
・プロトコル
試験される本発明によるペレグリナ抽出物の非存在下又は存在下で、I型コラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼ酵素の溶液をその基質中で5分間インキュベートする。次いで、溶液を色原体ニンヒドリンと接触させ、続いて、80℃で15分間インキュベートする。インキュベーション期間の終わりにおいて、試験又は参照製品を含む及び含まないコラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼ酵素の活性が、565nmでの反応媒体の吸光度を測定することによって評価された。試験された各濃度について、コラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼ酵素活性の試験製品による調節が、以下の式にしたがって計算された。
【0138】
[数式6]
コラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼ酵素活性のパーセンテージ調節=100×[(OD試験又は参照製品-ODコラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼのみ)/ODコラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼのみ]
【0139】
結果が陰性の場合、パーセンテージは酵素阻害として表され、結果が陽性の場合、パーセンテージは酵素活性化として表される。メタロプロテアーゼ阻害の結果を以下に示す。
【0140】
【0141】
・結論
本発明によるペレグリナ抽出物はメタロプロテアーゼ(コラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼ)の強力な阻害を引き起こす。本発明によるペレグリナ抽出物は、0.1%以上の濃度でこれらのメタロプロテアーゼに対して88%阻害を発揮することができ、皮膚の細胞外マトリックスを大効率で保護するための良好な潜在能力を有し、この阻害を介してアンチエイジング効果を示す。
【0142】
本発明によるペレグリナ抽出物はPierre Fabre特許FR2946879による抽出物と比較されるべきであり、その結果は、同じ試験により以下のとおりとなった。
【0143】
【0144】
・結論
Pierre Fabre特許による抽出物は、コラゲナーゼ活性に対して42%のピーク阻害(全ての濃度を一緒にしたとき)という、僅かな、逆投与量依存阻害活性を示し、これは、本発明によるペレグリナ抽出物についての100%のピーク阻害とは対照的である。
【0145】
このパラメータに関するアンチエイジング活性は、Pierre Fabre特許による抽出物でみられた効果と比較して異なっており新しいとみられる。
【0146】
[例12](PLA2の阻害による)抗ストレス活性についての比較試験
【0147】
アンチエイジング効果を有する鎮静/抗ストレス志向を与える、皮膚に対するPLA2の阻害による抗ストレス活性について、2つのさらなる管内PLA2試験を行った。1つは、オレイフェラ固形物について行われる本発明による方法を介して(抽出物は、ペレグリナについての本発明による方法と同じ方法で準備される)、1つは、Pierre Fabre特許FR2946879に対応する抽出物を用いて、もう1つは、製品Purisoft(登録商標)を有するBASF Beauty Care Solutions特許FR3076460に対応し、最後の1つはChuun&Thurot特許FR2825267を用いて行われた。
【0148】
この研究の目的は、「SPLA2(V型)阻害剤スクリーニング測定キット」を用いて、in vitro無細胞モデルにおいて、1つ以上のサンプルによる酵素ホスホリパーゼA2の抗炎症活性の調節を評価することである。
【0149】
ホスホリパーゼA2の緩衝溶液は、特定の基質、ジヘプタノイルチオ-PCと反応し、これを、室温での撹拌により色原体DTNBに結合する化合物に変換する。したがって、ホスホリパーゼA2活性は413nmでの吸光度を測定することによって評価され得る。
【0150】
製品「本発明によるペレグリナ抽出物」又は参照阻害製品「チオエーテルアミド-PC」を、酵素基質と同時にホスホリパーゼA2溶液と接触させる。酵素によって変換された基質は、室温での撹拌により色原体DTNBによって染色される。次いで、製品「本発明によるペレグリナ抽出物」又は参照製品の存在下及び非存在下でのホスホリパーゼA2の活性を、413nmでの吸光度を測定することによって評価する。
【0151】
この活性の調節は、活性剤の非存在下で、すなわち酵素基質(ジヘプタノイルチオ-PC)の存在下でのみ、ホスホリパーゼA2活性の阻害又は活性化のパーセンテージとして表される。
【0152】
100μL中1mgの濃度の阻害剤「チオエーテルアミド-PC」がこの試験における参照製品(活性対照)であり、この製品はPLA2活性を93%阻害し、したがって試験を有効性のあるものとする。
【0153】
参照阻害剤及び試験製品「本発明によるペレグリナ抽出物」の非存在下又は存在下で、酵素ホスホリパーゼA2の溶液をその基質であるジヘプタノイルチオ-PC中でインキュベートし、次いで、色原体DTNBが入れられ、その後25℃で15分間インキュベートする。
【0154】
インキュベーション期間の終わりにおいて、試験製品又は参照製品を含む及び含まない酵素ホスホリパーゼA2の活性が413nmでの反応媒体の吸光度を測定することによって明らかにされた。試験された各濃度について、試験製品によるホスホリパーゼA2酵素活性の調節が、以下の式にしたがって計算された。
【0155】
[数式7]
ホスホリパーゼA2酵素活性のパーセンテージ調節=100×[(OD405試験製品又は参照製品-OD405sPLA2のみ)/OD405sPLA2のみ]
【0156】
結果が陰性の場合、パーセンテージは酵素阻害として表され、結果が陽性の場合、パーセンテージは酵素活性化として表される。
【0157】
【0158】
PLA2阻害に対する本発明によるペレグリナ抽出物の一貫性及び実質的に投与量依存的な活性により、アラキドン酸カスケードの上流での強度を減少させることによる鎮静活性が明らかとなる。このようなアラキドン酸カスケードのはるか上流での鎮静活性は、基礎的な生理的ストレスの影響を減少させる。したがって、本発明によるペレグリナ抽出物は抗ストレス剤である。
【0159】
Pierre Fabre特許FR2946879からのプロトコル抽出物を用いると、以下の結果が得られる。
【0160】
【0161】
最小作用投与量に相当する1%では、抽出物は活性を示さない。希釈すると活性が現れるが、投与量依存的な効果がないため、この酵素の阻害に対する抽出物の特異的で信頼できる効果を検証することはできない。
【0162】
製品Purisoft(登録商標)LS9726を用いるBASF Beauty Care Solutions特許FR3076460からのプロトコル抽出物を用いると、以下の結果が得られる。
【0163】
【0164】
この抽出物は、本発明によるペレグリナ抽出物では1%で観察される最大量に達しないわずかな阻害活性を示し、すなわち、本発明による抽出物は19%阻害を示すが、これに対しこの抽出物は1%で10%阻害を示す。
【0165】
Chuun&Thurot特許FR2825267からのプロトコル抽出物を用いると、以下の結果がみられる。
【0166】
【0167】
この抽出物は、この酵素に対していかなる阻害活性も示さない。
【0168】
本発明による方法からのプロトコル抽出物を用いて、但しモリンガ・ペレグリナ固形物の代わりにモリンガ・オレイフェラ固形物に適用すると、以下の結果が観察される。
【0169】
【0170】
この抽出物は、この酵素に対して有意又は安定的な阻害活性をなにも示さない。
【0171】
・結論
本発明によるペレグリナ抽出物のみが酵素PLA2に対して有意な阻害活性を示す。
【0172】
[例13]メイクアップ製品組成
【0173】
【0174】
[例14]洗浄製品組成
【0175】
【0176】
[例15]ケア製品(抗ストレスアンチエイジングクリーム)の組成
【0177】
【0178】
[例16]ニュートリコスメティクス経口経路用組成
【0179】
鎮静/抗ストレス活性のための1g錠剤は、3%の本発明による乾燥抽出物(イヌリン支持体上に0.6%の2,5-ジホルミルフランを含有する)+200IUビタミンD+25%グルコン酸マグネシウム+22%イヌリン+3%ステアリン酸マグネシウムを含有する47%炭酸カルシウムを含む。
【0180】
[例17]本発明によるペレグリナ抽出物に関する毒性試験
【0181】
・例1によるペレグリナ抽出物の調製
果実が熟したときに採取されたモリンガ・ペレグリナ(Forssk.)Fioriの種子を乾燥させて内部水分含量を約6%とし、その後、機械的エンドレススクリュープレスでプレスし、これにより、一方でバージン油を、他方で固形物を得るために、油を種子の残りの部分から分離させる。次いで、固形物を、1cmから2cmの断片の事前にカットされた筒状片の形に分離させる。固形物に対し、55℃で10分間予熱した96℃エタノールを用いてマセレーション及び抽出を25%/75%(m/m)の比で行う。混合物をブレンダーで15分間剪断し、次いで、20℃で2時間、インペラーによって撹拌したままにする。次いで、生成物を、真空下でブフナー漏斗によりろ過して、乾燥物を1.15%含有する淡黄色のろ液を得る。このろ液は以下の試験に使用される。
【0182】
ネズミチフス菌(TA100)株に対する変異原活性の決定-細菌に関する復帰突然変異試験
【0183】
・試験は3つの主なフェーズで行った。
- 予備実験は、試験する要素の細胞毒性を評価し、次の実験のための投与量範囲を選択するために行う。
- 第1の遺伝毒性実験(試験1)は、代謝活性化の存在下及び非存在下で、試験系及び試験要素(又は対照物)を予備実験で定められた投与量範囲で最小限のアガー上に直接組み込む。
- 第2の実験(試験2)は、代謝活性化の存在下及び非存在下で、第1の実験の結果の分析後に試験責任者によって定められた投与量レベルを用いて、試験系及び試験要素(又は対照物)をプレインキュベーションする。この第2の実験は、特に、あいまいな結果又は陰性結果が得られた場合に、第1の実験の結果を確認する又は完成させるために行われた。
試験要素の希釈物は分析グレードの水中で準備された。
【0184】
細胞毒性試験は、ネズミチフス菌TA100株について、S9混合物の存在下及び非存在下で、5000、1600、500、160及び50μg/プレートの濃度で行われた。S9混合物の調製に使用される試薬は、以下の仕様にしたがって調製された。
【0185】
【0186】
細菌は、代謝活性化系の存在下及び非存在下で試験抽出物にさらされた。使用する代謝系は補酵素添加ポストミトコンドリア画分(S9)である。このS9画分、すなわち酵素誘導物質で処理されたSprague-Dawleyラット肝ホモジネートのミクロソーム画分は、Maron,D.M.及びAmes,B.N.(1983)にしたがって調製され、Moltox TMによって提供された。これは、-70℃未満の温度で保存される。S9ミクロソーム画分はS9混合物中において10%の濃度で使用された。適用したプロトコルは以下の通りであった。
【0187】
3本の溶血管に、以下を導入した。
- 代謝活性化非存在下での測定:
0.1mLの種々の濃度の試験要素
0.5mLの0.2MのpH7.4の滅菌リン酸緩衝液
2mLのネズミチフス菌用トップアガー
0.1mLの細菌種菌(TA100)
- 代謝活性化存在下での測定:
0.1mLの種々の濃度の試験要素
2mLのネズミチフス菌用トップアガー
0.1mLの細菌種菌(TA100)
0.5mLのS9混合物
【0188】
混合し、事前にペトリ皿に広げたボトムアガーの表面に注ぐ。
【0189】
37±2℃で48時間から72時間インキュベートする。
【0190】
これらの測定は、予備細胞毒性試験、試験1及び試験2の各試験について行った。プレインキュベーション法中に生成された未処理対照、陰性対照及び陽性対照を、トップアガーを注ぐ前に、37℃±2℃にて20分間から30分間インキュベートした。
【0191】
適用したプロトコルは以下の通りであった。
【0192】
4つのネズミチフス菌用トップアガー2mL画分に、以下を導入する。
0.1mLの0.2MのpH7.4のリン酸緩衝液
0.1mLの溶媒
0.1mLのS9混合物
0.1mLの最高濃度の試験要素調製物
【0193】
2mLのネズミチフス菌用トップアガー画分を、その無菌性をチェックするために使用する。
【0194】
混合し、事前にペトリ皿に広げたボトムアガーの表面に注ぐ。
【0195】
37±2℃にて48時間から72時間インキュベートする。
【0196】
試験は3回行われる。
【0197】
細菌の増殖は認めなれないべきである。
【0198】
試験抽出物の少なくとも5つの濃度について、代謝活性化を伴わない試験及び代謝活性化を伴う試験を行った。
【0199】
・結果の表現及び解釈
【0200】
多くの基準により結果が陽性であるか否かを決定することが可能であり、特に、代謝活性化の存在下及び非存在下での、試験アイテムの投与量に相関した復帰突然変異株数の増加、又は1つ若しくは複数の濃度での復帰突然変異株数の再現性を有する増加を決定することが可能である。
- 検証工程の結論として、試験要素が変異原性であると考えられるのは以下の場合であり、すなわち、代謝活性化の存在下及び非存在下で、5つの菌株のうち1つ以上で投与量と効果の間の関係が再現性よく得られた場合である。変異原性は、復帰突然変異株の数がTA98株、TA100株及びTA102株で自然復帰率の2倍以上(R≧2)である場合、並びにTA1535株及びTA1537株で自然復帰率の3倍以上(R≧3)である場合にのみ、所定の濃度について考慮される。
- 試験1及び試験2の結論として、試験要素が非変異原性であると考えられるのは以下の場合であり、すなわち、代謝活性化の存在下及び非存在下で、試験要素の全濃度について、復帰突然変異株の頻度が常に、TA98株、TA100株及びTA102株については自然復帰率の2倍未満(R<2)である場合、TA1535株及びTA1537株については自然復帰率の3倍未満(R<3)である場合であるが、但し、試験された濃度の毒性に変異原性作用の欠如が関係していないことを確認したことを条件とする。
【0201】
予備試験は試験要素の細胞毒性を示さなかった。したがって、この濃度範囲が遺伝毒性試験1に使用された。
【0202】
試験1について得られた結果に基づいて、試験2について同じ希釈範囲を使用することを決定した。復帰突然変異株の分析により以下のことが示される。
- 細胞毒性作用は認められない
- 試験抽出物のいずれの濃度も、代謝活性化の存在下及び非存在下で、TA98株、TA100株及びTA102株について自然復帰率の少なくとも2倍以上、又はTA1535株及びTA1537株について自然復帰率の3倍以上の比率Rを示さなかった
- 試験系又は試験条件に関係なく投与量応答は観察されなかった
【0203】
この研究で得られた結果に照らして、例1によるペレグリナ抽出物は変異原性又は前変異原性活性を有さないとみなすことができる。
【0204】
in vitro 3T3 NRU光毒性試験
【0205】
試験の原理は、培養中の細胞に対する、非細胞毒性照射量のUVAの存在下及び非存在下での、例1によるペレグリナ抽出物の細胞毒性の比較に基づく。細胞毒性は、参照要素及びモリンガ・ペレグリナの抽出物を用いる処理から24時間後に、UVAの照射下又は非照射下で、生体染色液ニュートラルレッドを使用して細胞生存性を決定することによって評価される。用いた細胞は、Balb/c 3T3クローン31系統(ATCC-CCL163)のマウス胚線維芽細胞である。陽性対照はクロルプロマジン溶液(CAS番号は69-09-0)である。陰性対照は試験抽出物希釈液及び参照希釈液(緩衝生理食塩水溶液±1%溶媒)である。ペレグリナ抽出物を、UVAの存在下又は非存在下で、8つの濃度で、試験される濃度当たり少なくとも4つの培養ウェル中で試験した。線維芽細胞をトリプシン処理し、2つの96ウェル培養プレートには、完全培地中に、細胞数2×105cells/mLを含む細胞懸濁液100μLが播種された(すなわち、ウェル当たりの細胞数2×106)。
【0206】
播種されたプレートは37℃、5%CO2で24時間インキュベートされた。インキュベーションの終わりにおいて、細胞芝地のセミコンフルエンス状態を確認した。希釈液は細胞上に置く直前に準備された。最高濃度のpHを測定したところ、6.5から8であった。培地を除去し、各ウェルを、室温に維持した150μLのPBSで注意深く予備洗浄し、次いで100μLの各抽出物又は参照希釈液で処理した。培養プレートを暗所で1時間±5分間、37℃、5%CO2でインキュベートした。照射はBio Sun太陽光照射装置(Vilber Lourmat RMX3W)を用いて行った。Bio Sun装置はプログラム可能なマイクロプロセッサによってUV照射を制御するシステムである。システムはUV発光に連続的に追従する。照射エネルギーがプログラムされたエネルギーと等しくなると照射は自動的に停止する。試験装置の分光放射照度は、キャリブレートされた分光放射計で250ナノメートルから700ナノメートルの波長範囲で測定した。2つのプレートのうちの一方のプレートがカバーを付けた状態で室温で照射され、照射中に、他方のプレートはUVAから保護され室温に維持された。照射後、処理媒体を吸引し、細胞をすすいだ。その後、μLの完全培地が注意深く加えられ、プレートは37℃、5%CO2で18時間から22時間インキュベートされた。翌日、細胞生存性(増殖、形態、単層完全性)を位相差顕微鏡を使用する観察により評価した。培地を除去し、各ウェルを予備洗浄し、室温に維持した後、100μLの染色液で処理した。プレートは同じ条件下で3時間インキュベーターに戻された。染色液を除去し、細胞を洗浄し、その後洗浄液を除去し、150μLの脱着溶液を各ウェルに加えた。結晶が完全に溶解するまでプレートを振動させた。吸光度値は450nmで測定された。
【0207】
・試験検証
細胞のUVA感受性は、増加する照射線量に細胞を曝露した後の細胞の生存性を評価することによって、約10回継代毎に確認される。細胞を試験に用いた密度で培養する。それらを2.5J/cm2及び9J/cm2の照射量で翌日に照射し、細胞生存性を1日後にNRU試験によって決定する。細胞は、5J/cm2のUVA照射後の生存性が暗所に維持された対照の生存性の80%以上である場合、品質基準を満たし、9J/cm2のUVAの最高照射量では、生存性は、暗所に維持された対照の生存性の少なくとも50%に等しくなければならない。
【0208】
・結果
陰性対照は0.4以上の吸光度を有する。陽性対照であるクロルプロマジンは、IC50値が、UVAの存在下で0.1μg/mLから2μg/mL、UVAの非存在下で7μg/mLから90μg/mLである。これらの結果により試験を有効性のあるものとすることができる。UVAの照射下又は非照射下で50%細胞死をもたらすペレグリナ固形物抽出物の濃度は推定できない。死亡率が50%に達することはなかった。UVAの照射下又は非照射下で50%細胞生存率をもたらすペレグリナ固形物抽出物の濃度は推定できない。生存率は常に50%を超える。
【0209】
・結論
適用された実験条件の下において、ペレグリナ固形物抽出物は非光毒性と考えることができる。
【0210】
SIRC細胞株に対するニュートラルレッド放出法を用いるin vitro細胞毒性試験による眼刺激性の評価
【0211】
このin vitro試験は、ニュートラルレッド放出法を用いて細胞単層に対して50%細胞死(IC50)をもたらす濃度を決定することによりペレグリナ固形物抽出物の細胞毒性を評価することに基づくものである。使用される細胞は、マイコプラズマを含まないSIRCウサギ角膜線維芽細胞(ATCC-CCL60)である。
【0212】
ペレグリナ抽出物を生理食塩水中で25%及び50%に希釈した。線維芽細胞をトリプシン処理し、2つの24ウェル培養プレートには、完全培地中に、細胞数2×105cells/mLを含む細胞懸濁液が1mLずつ播種された。播種されたプレートを37℃、5%CO2で一晩インキュベートした。インキュベーションの終わりにおいて、細胞芝生のコンフルエンス状態を確認した。染色液は、完全培地中で0.5mg/mLで準備した。培地を除去し、1mLの染色液を各ウェルに入れた。プレートを、37℃、5%CO2のインキュベーターに、3時間±15分間戻した。この接触時間の後、染色液を除去し、ウェル当たり1mLの完全培地と置き換えた。抽出物又は参照物との接触前に、系を安定化させるために、プレートを室温で少なくとも30分間維持した。各ウェルを2mLのPBSで洗浄し、室温に維持し、次いで、ペレグリナ抽出物又は参照物の希釈物500μLを各々、細胞芝生と接触させた。接触時間は60秒(陽性対照では30秒)であった。処理は、ウェル毎に、ペレグリナ抽出物又は参照物が置かれた時点でストップウォッチを開始させて行った。プレートは処理中、手動で振動させた。55秒後(又は陽性対照については25秒)に希釈液を吸引した。正確に60秒又は30秒にて、5回の連続洗浄を行った(室温に維持された2mLのPBS×5つ)。各洗浄の後と最終洗浄の後に上清を吸引し、ウェルは発現フェーズを待っている間、培地がないままであった。培養プレートを完全に処理した後に1mLの脱着溶液を各ウェルに置いた。均等な染色が得られるまでプレートを約15分間振動させた。各培養ウェルについて得られた溶液を吸い上げ、96ウェルプレートの2つのウェル内に分け、すなわち150μL/ウェルに分けた。
【0213】
・結果
50%細胞死をもたらすペレグリナ抽出物の濃度は50%超えと評価された。ペレグリナ抽出物50%での細胞死のパーセンテージは17%であると評価された。
【0214】
・結論
適用された実験条件下において、ペレグリナ固形物抽出物の細胞毒性は無視できる細胞毒性であると考えることができる。
【0215】
皮膚科学的管理下における48時間の密封包帯下での、単回適用後のペレグリナ抽出物の皮膚適合性の評価
【0216】
この研究の目的は、48時間、腕の前外側に対し行われる上皮試験によってペレグリナ抽出物の皮膚適合性の程度を評価することであり、概して、皮膚を良好な状態に保つペレグリナ抽出物の能力を評価することである。皮膚が乾燥肌でなく、敏感肌でもなく、処理される部位において皮膚病変がないもない18歳から65歳の健康な女性又は男性ボランティア10名をこの研究に含むこととした。例1によるペレグリナ抽出物5%とプロパンジオール/ソルビトール混合物95%とを含有するローションの形で準備したペレグリナ抽出物の皮膚適合性を、包帯を除去した後30分から40分の間に行われる最初の適用から48時間後に評価した。皮膚反応(紅斑及び浮腫)を、以下のスケールにしたがって0から3まででスコア化した。
【0217】
【0218】
他の皮膚反応(水疱、果肉、小胞、乾固、落屑、粗さ、石鹸作用など)を、以下のスケールにしたがって評価し、記述的に報告した。
0:反応なし
0.5:非常に軽度
1:軽度
2:中程度
3:顕著
【0219】
研究終了時に、平均刺激スコア(M.I.S.)が以下の式にしたがって計算された。
【0220】
[数式8]
M.I.S.=皮膚反応の和(紅斑+浮腫+水疱+丘疹+小水疱)/分析したボランティアの数
【0221】
得られたM.I.S.により、以下の表に示されるスケールにしたがって試験抽出物を分類することができた。
M.I.S.≦0.20 非刺激性
0.20<M.I.S.≦0.50 わずかに刺激性
0.50<M.I.S.≦2 中程度の刺激性
2<M.I.S.≦3 高度の刺激性
【0222】
・結果
ペレグリナ固形物抽出物の平均刺激スコア(M.I.S.)は0に等しい。
【0223】
・結論
ペレグリナ固形物抽出物は、12名のボランティアに48時間連続適用した後、非刺激性と考えられる。
【0224】
試験の全般的結論
上で行った試験の結果は疑う余地のないものであり、例1によるペレグリナ抽出物について、以下の点を実証するものである。
1)眼及び皮膚刺激性試験は陰性
2)光毒性試験は陰性
3)変異原性試験は陰性
本発明によるペレグリナ抽出物の安全性が実証され、ターゲット集団に関する制限なく大規模局所美容用品使用に理想的である。
【0225】
[例18]皮膚バリアにおける経表皮水分損失(TEWL)及び21日間にわたる使用後のその許容性の測定による評価
【0226】
この試験で試験された製品は、例15のクリーム形態のケア製品である。この製品は、目の周りの領域を避けて、優しくマッサージすることによって、朝晩、清潔な顔に適用される。測定は頬について行われる。
【0227】
評価基準は、以下のとおりである。
皮膚バリアに対する効果の評価:製品の適用前(D1)、そして適用21日後(D21)のTEWL値の比較
不快感に関するD21でのフィードバック
美容用品の許容性:D21にボランティアによって記入される質問表
全皮膚タイプを有する平均50歳(20歳から70歳)の女性ボランティア22名を試験した。皮膚バリアについて評価した製品により以下の結果が得られた(*はD1に対するD21の%変化、**は対応するデータについてのWilcoxon試験、Sは有意(p≦0.05)、NSは非有意(p>0.05))。
【0228】
【0229】
結果の分析は、TEWLがD1と比較してD21で安定したままであったことを示し、製品は適用21日後に「皮膚保護」効果を示した。D1と比較してD21でTEWL値の有意な減少がないことを考慮すると、試験製品の「栄養」効果は機器測定によって明らかにすることができなかった。ボランティアの81%が、D21での許容性アンケートの質問「皮膚に栄養を与える」に対しポジティブな回答をした。
【0230】
・結論
試験の条件下において、上記クリームはTEWL測定によって明らかにされた「皮膚保護」効果を示し、86%が好ましい意見であり良好な美容用品許容性を示した。