(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】地面設置アンカー型固定具の先端部材
(51)【国際特許分類】
E02D 5/80 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
E02D5/80 101
(21)【出願番号】P 2023008437
(22)【出願日】2023-01-24
【審査請求日】2023-11-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516067346
【氏名又は名称】株式会社三共
(74)【代理人】
【識別番号】100128794
【氏名又は名称】小林 庸悟
(72)【発明者】
【氏名】川端 義幸
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-044367(JP,A)
【文献】特開2013-136913(JP,A)
【文献】登録実用新案第3135921(JP,U)
【文献】特開2001-073364(JP,A)
【文献】特開2009-091808(JP,A)
【文献】特開平11-293669(JP,A)
【文献】特開2003-119776(JP,A)
【文献】米国特許第05881978(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0309665(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯を中心に回転させることで地面に食い込んで設置されるように、断面円形の長尺状本体の外周面に地面に食い込むための実質的に螺旋状に形成された地面食い込み用部が設けられた地面設置アンカー型固定具の先端部を形成するように固着される地面設置アンカー型固定具の先端部材であって、
前記断面円形の長尺状本体に連続状態に固着される円形の基部と、
該円形の基部から先端方向へ尖った円錐形本体部と、
該円錐形本体部の外面に、円錐形の最大外径部から円錐形の頂部への間で外側へ突起された形態であると共に円錐の母線に沿って直線的に延長された形態で一体的に設けられた筋状突起部とを備えることを特徴とする地面設置アンカー型固定具の先端部材。
【請求項2】
前記筋状突起部の前記円錐形の最大外径部の側であって外側へ最も突起する部分である肩部が、前記断面円形の長尺状本体の外周面よりも外側へ突起されると共に前記地面食い込み用部の外径部よりも外側へ突起しないように設けられていることを特徴とする請求項1記載の地面設置アンカー型固定具の先端部材。
【請求項3】
前記筋状突起部が前記円錐形本体部の外面から外側へ突起する高さが、前記円錐形本体部の前記円錐形の最大外径部から前記円錐形の頂部へ向かってテーパ状に徐々に低くなるように設けられていることを特徴とする請求項2記載の地面設置アンカー型固定具の先端部材。
【請求項4】
前記筋状突起部が、前記円錐
形本体部の外面の円周等分位置の3箇所に設けられていることを特徴とする請求項3記載の地面設置アンカー型固定具の先端部材。
【請求項5】
前記断面円形の長尺状本体が棒状体を挿入できる中空部を備えるように筒状に設けられ、該断面円形の長尺状本体の先端に前記中空部を塞ぐように固着されることを特徴とする請求項4記載の地面設置アンカー型固定具の先端部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸芯を中心に回転させることで地面に食い込んで設置されるように、断面円形の長尺状本体の外周面に地面に食い込むための実質的に螺旋状に形成された地面食い込み用部が設けられた地面設置アンカー型固定具の先端部を形成するように固着される地面設置アンカー型固定具の先端部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地面設置アンカー型固定具に類する技術分野の杭としては、少なくとも1つの螺旋翼が先端付近の外周に螺旋状に突設された鋼管製の軸管と、この軸管の内径より外径が少し小さい鋼管製で、少なくとも1つの掘削片を一面側に突設した底板の他面側が先端に固着され、軸管内に掘削片を軸管の先端側に向けて挿入された内管とを備えた鋼管杭(特許文献1)が提案されている。
【0003】
また、従来、地面設置アンカー型固定具に類する技術分野の杭としては、杭体に、その先端に向かうほど軸径が小さくなる第1テーパ部を形成するとともに、この第1テーパ部の先端側に、この第1テーパ部との間で軸径が連続しつつ、より大きなテーパ角度を有し、その先端に向かうほど軸径が小さくなる第2テーパ部を形成する。さらに、上記第1テーパ部に螺旋状の回転翼を形成するとともに、上記第2テーパ部に掘削刃を形成する。この回転貫入杭で地面を掘削した際に、土砂中の転石は上記掘削刃及び第2テーパ部への当接により、上記回転翼の先端近傍から排除されるため、上記掘削が上記転石によって阻害されない。また、上記第1テーパ部によって翼間の土砂の一部が軸心径方向の外側に押し出されるので、上記土砂が上記翼間に詰まりにくく、掘削効率が低下しない(特許文献2)回転貫入杭が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-176535号公報(第1頁)
【文献】特開2009-91807号公報(第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地面設置アンカー型固定具の先端部材に関して解決しようとする問題点は、従来の杭の先端部を構成する部材に比して、地面により食い込み易く容易に設置でき、地面にアンカーとしてより適切に固定できるものが提案されていないことにある。
ことにある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、地面により食い込み易く容易に設置でき、地面にアンカーとしてより適切に固定できる地面設置アンカー型固定具の先端部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係る地面設置アンカー型固定具の先端部材の一形態によれば、軸芯を中心に回転させることで地面に食い込んで設置されるように、断面円形の長尺状本体の外周面に地面に食い込むための実質的に螺旋状に形成された地面食い込み用部が設けられた地面設置アンカー型固定具の先端部を形成するように固着される地面設置アンカー型固定具の先端部材であって、前記断面円形の長尺状本体に連続状態に固着される円形の基部と、該円形の基部から先端方向へ尖った円錐形本体部と、該円錐形本体部の外面に、円錐形の最大外径部から円錐形の頂部への間で外側へ突起された形態であると共に円錐の母線に沿って直線的に延長された形態で一体的に設けられた筋状突起部とを備える。
【0008】
本発明に係る地面設置アンカー型固定具の先端部材の一形態によれば、前記筋状突起部の前記円錐形の最大外径部の側であって外側へ最も突起する部分である肩部が、前記断面円形の長尺状本体の外周面よりも外側へ突起されると共に前記地面食い込み用部の外径部よりも外側へ突起しないように設けられていることを特徴とすることができる。
【0009】
本発明に係る地面設置アンカー型固定具の先端部材の一形態によれば、前記筋状突起部が前記円錐形本体部の外面から外側へ突起する高さが、前記円錐形本体部の前記円錐形の最大外径部から前記円錐形の頂部へ向かってテーパ状に徐々に低くなるように設けられていることを特徴とすることができる。
【0010】
本発明に係る地面設置アンカー型固定具の先端部材の一形態によれば、前記筋状突起部が、前記円錐形本体部の外面の円周等分位置の3箇所に設けられていることを特徴とすることができる。
【0011】
本発明に係る地面設置アンカー型固定具の先端部材の一形態によれば、前記断面円形の長尺状本体が棒状体を挿入できる中空部を備えるように筒状に設けられ、該断面円形の長尺状本体の先端に前記中空部を塞ぐように固着されることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る地面設置アンカー型固定具の先端部材によれば、地面により食い込み易く容易に設置でき、地面にアンカーとしてより適切に固定できるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る地面設置アンカー型固定具の先端部材の形態例を示す正面図である。
【
図7】
図1の形態例の使用状態を説明する地面設置アンカー型固定具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る地面設置アンカー型固定具の先端部材の形態例を、図面(
図1~10)に基づいて詳細に説明する。
【0015】
本発明に係る地面設置アンカー型固定具の先端部材20は、軸芯を中心に回転させることで地面に食い込んで設置されるように、断面円形の長尺状本体10の外周面11に地面に食い込むための実質的に螺旋状に形成された地面食い込み用部13が設けられた地面設置アンカー型固定具の先端部を形成するように固着される部材として設けられている。なお、
図7、9~10の地面設置アンカー型固定具の形態例に点線で示した地面食い込み用部13は、螺旋状に連続した形態となっているが、これに限定されるものではなく、例えば螺旋状に断続的に形成されたものであってもよい。
【0016】
また、本発明に係る地面設置アンカー型固定具の先端部材20は、
図1~6に示すように、断面円形の長尺状本体10に連続状態に固着される円形の基部21と、その円形の基部21から先端方向へ尖った円錐形本体部22とを備えている。本形態例の円形の基部21では、断面円形の長尺状本体10と外径が実質的に同一で、軸芯の延長方向に所要の厚みがある形態であって、高さの低い円柱状に形成されている。また、本形態例では、この所要の厚みがある円形の基部21を用いて、断面円形の長尺状本体10の端部に溶接によって連続状態に固着されるが、本発明はこれに限定されるものではなく、断面円形の長尺状本体10の端部に螺子を用いて固定することも可能であり、既知の固着手段を適宜選択的に用いることができるのは勿論である。
【0017】
そして、本発明に係る地面設置アンカー型固定具の先端部材20は、
図1~6に示すように、円錐形本体部22の外面23(円錐形の側面)に、円錐形の最大外径部24(底面の外径)から円錐形の頂部25への間で外側へ突起された形態であると共に円錐の母線26(
図6参照)に沿って直線的に延長された形態で一体的に設けられた筋状突起部30を備えている。なお、本形態例では、筋状突起部30が、円錐先端の近傍の所要部分から途切れた形態になっている。これは、円錐先端の近傍部分に筋状突起部30が設けられても、地面をほぐす作用が小さいと共に、本形態例では筋状突起部30が溶接によって円錐形本体部22に一体的に固定された状態に形成されているが、円錐先端の近傍部分では溶接がしにくいためであり、この形態に特に限定されものでなく、その長さや厚さなどは適宜に設定すればよい。
【0018】
この地面設置アンカー型固定具の先端部材20によれば、地面設置アンカー型固定具を地面に食い込ませる際に、筋状突起部30が、地面に穴をあけるように所要の径範囲を適切にほぐすように作用し、その先端部材20に連続する断面円形の長尺状本体10を地中に潜り込めせることができる。すなわち、円錐形本体部22の外面23に、円錐の母線26に沿って直線的に延長された形態の筋状突起部30が設けられているため、地面設置アンカー型固定具をねじ込む力が、地面に穴をあけるための適切な抵抗を受けるように作用し、地面により食い込み易く容易に設置でき、地面にアンカーとしてより適切に固定できるという特別有利な効果を奏する。
【0019】
また、本形態例の地面設置アンカー型固定具の先端部材20では、筋状突起部30の円錐形の最大外径部24の側であって外側へ最も突起する部分である肩部31が、断面円形の長尺状本体10の外周面11よりも外側へ突起されると共に地面食い込み用部13の外径部14よりも外側へ突起しないように設けられている。
【0020】
すなわち、上記の肩部31が形成された筋状突起部30が、地面に適度の直径の範囲で地中をほぐすことで断面円形の長尺状本体10が進入できる穴をあけるように作用する一方、螺旋状の地面食い込み用部13が食い込んで固定される地中の部分を過度にほぐすことがないため、その螺旋状の地面食い込み用部13が地中で砂や土に強固に噛んだ状態となるように作用する。これによれば、地面設置アンカー型固定具を地面に設置し易いと共に、簡単には地面から抜き出ることのないように確実且つ強固にアンカーとして設置・固定することができる。
【0021】
また、本形態例の地面設置アンカー型固定具の先端部材20では、筋状突起部30が円錐形本体部22の外面23から外側へ突起する高さが、円錐形本体部22の円錐形の最大外径部24から円錐形の頂部25へ向かってテーパ状に徐々に低くなるように設けられている。
【0022】
これによれば、筋状突起部30によって地面に対して穴をあける力を、その筋状突起部30の先端側から円錐形本体部22の円錐形の底面(円錐形本体部22の円錐形の最大外径部24)の側へ向かって徐々に大きくなるように作用させることができる。すなわち、この筋状突起部30によれば、地面に対して穴をあける力が円錐形の先端側から徐々に大きくなるようにスムースに伝達されるため、地面に対して先端部材20に連続する断面円形の長尺状本体10をスムースに地中に潜り込めせることができ、地面設置アンカー型固定具を地面に設置し易くすることができる。
【0023】
また、本形態例の地面設置アンカー型固定具の先端部材20では、筋状突起部30が、円錐形本体部22の外面23の円周等分位置の3箇所に設けられている。すなわち、複数の筋状突起部30が、円錐形本体部22の外面23に対称位置(本形態例では3箇所)に設けられ、地面に食い込む際に各筋状突起部30でなるべく実質的に均等に力を伝えて、地面設置アンカー型固定具の軸芯が立った状態で揺れることなく、地面に適切に食い込ませるように作用する。
【0024】
これによれば、3本の筋状突起部30によって、地面に対して穴をあける力をバランス良く伝達させることができるため、よりスムースに地面に穴をあけるようにほじることができ、地面設置アンカー型固定具を地面にねじ込むことによって差し込んだ状態に適切に設置・固定することができる。
【0025】
さらに、本形態例の地面設置アンカー型固定具の先端部材20では、
図7~
図10の形態例に示すように、断面円形の長尺状本体10が棒状体を挿入できる中空部12を備えるように筒状に設けられ、その断面円形の長尺状本体10の先端に中空部12を塞ぐように固着されている。なお、本形態例の断面円形の長尺状本体10は、円筒状の鋼管材(直管パイプ)によって構成されている。
【0026】
これによれば、旗、テントやタ―プなどの支柱を立てることができる地面設置アンカー型固定具を、合理的且つ適切に製作することができる。
【0027】
次に、本発明に係る地面設置アンカー型固定具の先端部材20が、先端に固着されて設けられた地面設置アンカー型固定具の形態例(
図7~10参照)に関する使用方法について説明する。
【0028】
この形態例の地面設置アンカー型固定具は、土の地面や砂浜などの砂の地面に設置され、テントやタ―プ或いはカヌーや小さなボートなどの対象物を、固定又は係留などするために多目的に用いることができる固定具である。また、この地面設置アンカー型固定具は、旗、テントやタ―プなどの支柱を立てるためにも用いることができ、前記支柱の下端部が挿入されて支持される筒状本体を(断面円形の長尺状本体10)備え、その筒状本体の上部に六角頭15のナット状螺子部が設けられており、前記筒状本体の外周には螺旋状の地面への食い込み部(地面食い込み用部13)が設けられている。
【0029】
そして、この地面設置アンカー型固定具では、六角頭15に上側からアダプタが嵌められ、そのアダプタが連結されたインパクトレンチ(電動工具)で、上から押さえ付けて地中へねじ込むようにして、地面に固定することができる。具体的な使用方法としては、例えば、砂浜の地面に固定することで、ロープやカラビナなどを介して小さなボートなどを係留することができる。また、テントやシートを張る際に、直接的に、又はロープやカラビナなどを介してテントやシートの飛散を防止することができる。なお、ロープやカラビナなどを介して対象物を固定又は係留する場合には、ワッシャー形状に形成された部分(ワッシャー状部16)及びその部分に設けることができる孔17を利用することができる。さらに、六角頭15のナット状螺子部を利用して、アイボルトを螺着させることができ、そのアイボルトを利用してロープを縛り付けることやカラビナを掛け止めることもできる。
【0030】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、地中に埋設する杭の先端部材としても用いることができるなど、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0031】
10 断面円形の長尺状本体
11 外周面
12 中空部
13 地面食い込み用部
14 外径部
15 六角頭
16 ワッシャー状部
17 孔
20 地面設置アンカー型固定具の先端部材
21 円形の基部
22 円錐形本体部
23 外面
24 円錐形の最大外径部
25 円錐形の頂部
26 円錐の母線
30 筋状突起部
31 肩部
【要約】
【課題】地面により食い込み易く容易に設置でき、地面にアンカーとしてより適切に固定できる地面設置アンカー型固定具の先端部材20を提供する。
【解決手段】軸芯を中心に回転させることで地面に食い込んで設置されるように、断面円形の長尺状本体10の外周面に地面に食い込むための実質的に螺旋状に形成された地面食い込み用部13が設けられた地面設置アンカー型固定具の先端部を形成するように固着される地面設置アンカー型固定具の先端部材20であって、断面円形の長尺状本体10に連続状態に固着される円形の基部21と、円形の基部21から先端方向へ尖った円錐形本体部22と、円錐形本体部22の外面に、円錐形の最大外径部24から円錐形の頂部25への間で外側へ突起された形態であると共に円錐の母線に沿って直線的に延長された形態で一体的に設けられた筋状突起部30とを備える。
【選択図】
図1