(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】液はけ機能付き抽出栓
(51)【国際特許分類】
B65D 47/40 20060101AFI20240105BHJP
B65D 47/36 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
B65D47/40
B65D47/36
(21)【出願番号】P 2023062467
(22)【出願日】2023-04-07
【審査請求日】2023-04-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000134372
【氏名又は名称】株式会社トーヨー工芸工業
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】小平 孝一郎
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-108799(JP,A)
【文献】登録実用新案第3023787(JP,U)
【文献】特開2001-097432(JP,A)
【文献】特開2019-031331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/40
B65D 47/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部内に嵌合する内嵌筒と、内嵌筒を閉塞する閉塞板と、閉塞板に
長孔状の抽出口を開口する切取片とを備えた抽出栓において、
閉塞板の上面より切取片の上面が低くなる段差を形成すると共に、この段差の上面角部を曲面に形成した曲面段差を設け、
切取片を切り離す薄肉状の破断部から下方に向けて突出した液切壁を抽出口に沿って形成すると共に、
抽出口の長手端部側の液切壁と内嵌筒とに隙間を形成し、この隙間に毛細管現象が生じるように構成したことを特徴とする液はけ機能付き抽出栓。
【請求項2】
前記液切壁は平面長孔状を成す前記抽出口に沿って形成され、長手両端部のいずれか一方又は両方が前記内嵌筒の内側面に近接するように構成した請求項1記載の液はけ機能付き抽出栓。
【請求項3】
前記液切壁は、上部より下部が次第に薄くなるように形成された請求項1記載の液はけ機能付き抽出栓。
【請求項4】
前記液切壁は、下端部の向きが鉛直下方から前記内嵌筒方向に向けて傾斜するように形成された請求項1又は3記載の液はけ機能付き抽出栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に食用油やドレッシング等の液状調味料などを保存する容器に装着する液はけ機能付き抽出栓に関する。
【背景技術】
【0002】
当出願人は抽出口の開口操作が容易で、使用後における抽出栓内の残留液の液切れを促進するように構成した液切部を備えた抽出栓を提案している(特許文献1)。
【0003】
この抽出栓は、閉塞板5に抽出口11を形成する切取片7を菱形状にすることで、切取片7の引き離し作業を容易にするものである。更に、抽出口11の底面周囲から下方に液切片12を突設し、抽出口11周辺の液を液切片12から容器1内に戻すように構成している。
【0004】
このとき、抽出口11を形成するために切取片7を閉塞板5から切り離すと、開口した抽出口11の切り離し部分から引き延ばされたかえり部が発生することが知られている。発生したかえり部が大きいと、このかえり部で残留液が滞留するおそれがある。
【0005】
一方、このかえり部を利用して抽出栓内の液を容器に戻すキャップが提案されている(特許文献2)。このキャップによると、隔壁9に抽出口を形成する菱形の除去壁9の中央部分に薄肉状の破断部13と、破断部13より厚肉のリブ形状部14とを形成することで、除去壁9の中央部分にかえり部20が形成されずに切欠き部21が形成されるように構成している。そして、除去壁9の他の切り離し部に形成されたかえり部20を液誘導溝として利用し、残留液を抽出口の中央部の切欠き部21に誘導する構成である。
【0006】
更にこのキャップでは、抽出口の中央部に一対の液垂れリブ16を垂設し、中央部に誘導した残留液が切欠き部21から液垂れリブ16に伝って容器内に滴下するように設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実公昭63-18596号公報
【文献】特許第5692972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のごとく、抽出口11を菱形形状にすることで、切取片7の引き上げ作業を容易にすることが可能になった。ところが、切取片7の引き上げ作業の際に、抽出口11の内周縁に、かえり部が発生していた。このかえり部によって残留液の一部は抽出口11の周囲に残留し、抽出口11から下方に突設した液切片12への残留液の流れを妨げていた。抽出口11周辺の残留液は酸化等のおそれがあり、しかも使用後の残留液が多いと使用者に不快感を与えるおそれもある。
【0009】
一方、特許文献2のように、抽出口周辺のかえり部20を液誘導溝として利用し、残留液を抽出口の切欠き部21に誘導する構成では、切欠き部21から液垂れリブ16を介して容器内に滴下する液量が限定的になるといった課題がある。
【0010】
すなわち、抽出口の切欠き部21に誘導する残留液の量が多い状態では、液垂れリブ16の先端から順調に自然落下する。ところが、誘導する残留液が少なくなると、表面張力の作用によって液垂れリブ16の先端に液体が留まり、落下しなくなる現象が生じる。しかも、液垂れリブ16から液体が落下しなくなっても、抽出口の周辺に液体が残されていた。
【0011】
そこで本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、抽出栓内の残留液を短時間で戻すことが可能な液はけ機能付き抽出栓の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題を解決すべく本発明の第1の手段は、容器Pの口部P1内に嵌合する内嵌筒2と、内嵌筒2を閉塞する閉塞板3と、閉塞板3に長孔状の抽出口5を開口する切取片4とを備えた抽出栓1において、閉塞板3の上面より切取片4の上面が低くなる段差を形成すると共に、この段差の上面角部を曲面に形成した曲面段差6を設け、切取片4を切り離す薄肉状の破断部7から下方に向けて突出した液切壁8を抽出口5に沿って形成すると共に、抽出口5の長手端部側の液切壁8と内嵌筒2とに隙間を形成し、この隙間に毛細管現象が生じるように構成したものである。
【0013】
第2の手段において、前記液切壁8は平面長孔状を成す前記抽出口5に沿って形成され、長手両端部のいずれか一方又は両方が前記内嵌筒2の内側面に近接するように構成する。
【0014】
第3の手段の前記液切壁8は、上部より下部が次第に薄くなるように形成されている。
【0015】
第4の手段の前記液切壁8は、下端部の向きが鉛直下方から前記内嵌筒2方向に向けて傾斜するように形成されたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のごとく、閉塞板3の上面より切取片4の上面が低くなる段差を形成すると共に、この段差の上面角部を曲面に形成した曲面段差6を設け、切取片4を切り離す薄肉状の破断部7から下方に向けて突出した液切壁8を抽出口5に沿って形成すると共に、抽出口5の長手端部側の液切壁8と内嵌筒2とに隙間を形成し、この隙間に毛細管現象が生じるように構成したことにより、この隙間に生じる毛細管現象によって残留液が内嵌筒2に移動するので残留液を短時間で戻すことが可能である。
【0017】
すなわち、液切壁8の一部と内嵌筒2とが近接する隙間を設けているので、液切壁8に流れた残留液は、この隙間を伝って容器P内に流れる。
【0018】
しかも、切取片4を切り離した際にかえり部4Aが生じても、残留液が閉塞板3の曲面段差6を流れると、かえり部4Aに妨げられずに確実に液切壁8に到達する。
【0019】
更に、閉塞板3の上面に残留した液の量が少なくなっても液切壁8と内嵌筒2との隙間に生じる毛細管現象により、曲面段差6から液切壁8まで留まることなく流れるものである。
【0020】
このように、本発明によると、抽出栓内に残る残留液を短時間で戻すことが可能になるなどといった種々の効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明抽出栓の一実施例を示す断面図である。
【
図4】(イ)~(ハ)は閉塞板の切取片と液切壁を示す要部断面図である。
【
図5】本発明の液切壁を下側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明抽出栓は、例えば、食用油や醤油、ドレッシング等の液状調味料等を保存する容器Pの口部P1に装着する。
【0023】
本発明抽出栓の基本構成として、容器Pの口部P1内に嵌合する内嵌筒2と、内嵌筒2を閉塞する閉塞板3と、閉塞板3に抽出口5を開口する切取片4とを備えたものである(
図1参照)。
【0024】
そして、切取片4に形成したプルトップ10を引くと(
図2参照)、閉塞板3から切取片4が切り離されて抽出口5が形成されるタイプの抽出栓である(
図3参照)。図示例では、容器Pの口部P1外側に嵌合する外嵌筒11が内嵌筒2の周囲に形成され、この外嵌筒11にヒンジ12を介して蓋体13が形成されている(
図1参照)。
【0025】
切取片4の位置は、閉塞板3の上面より低い位置に設定している(
図4(イ)参照)。そして、閉塞板3の上面と切取片4の上面とで段差を形成すると共に、この段差の上面角部を曲面に形成した曲面段差6を設けている。図示の閉塞板3は、中央部が凹んだすり鉢状に形成し残留液が中央に集まるようにしている(
図1参照)。
【0026】
閉塞板3から切取片4を切り離すと、切取片4と閉塞板3との境界部分に形成した薄肉状の破断部7が切断されて抽出口5が形成される(
図4(ロ)参照)。このとき、破断部7に沿った抽出口5の内周縁に、破断部7が引き延ばされたかえり部4Aが生じる。そこで本発明では、切取片4上面に曲面段差6を形成することで、この曲面段差6を流れた液体が、かえり部4Aを越えて流れるように構成している(
図4(ハ)参照)。
【0027】
更に、この破断部7(抽出口5)の位置から下向きに突出する液切壁8を設けている(
図4参照)。図示の液切壁8は、破断部7の下面部から突出し抽出口5に沿って周設し、長孔状の抽出口5を下面側で囲むように形成している。図示の液切壁8は、抽出口5に沿って下向きに突設されており、この下端部が上部より次第に薄くなるように形成されている。更に、液切壁8の下端部の向きを、鉛直下方から内嵌筒2方向に向けて傾斜するように形成している
【0028】
このとき、すり鉢状の閉塞板3に形成した抽出口5の中央部は最も低い位置に形成され、抽出口5の長手端部は、抽出口5の中央部より高い位置に形成されている(
図5参照)。したがって、液切壁8の高さも抽出口5の位置によって異なるものである。
【0029】
図示例では、抽出口5の長手端部側に形成された液切壁8は内嵌筒2に最も近い位置に形成されている。そして、抽出口5の長手端部に最も低い液切壁8を形成し、この端部側の液切壁8が内嵌筒2に近接して毛細管現象が生じるように構成している(
図5参照)。この内嵌筒2と液切壁8との隙間に毛細管現象が生じると、液切壁8の液体が液切壁8から内嵌筒2に次々と流れる水はけ機能が働く(
図6参照)。
【0030】
実験によると、抽出口5周囲の残留液が液切壁8に沿って移動する際に、中央部の低い位置から高い位置の長手端部方向に移動することが確認されている(
図6参照)。
【0031】
毛細管現象による液体上昇の高さは、表面張力・壁面のぬれやすさ・液体の密度によって決まる。すなわち、表面張力によって液面は縮まろうとする方向に力が加わっており、液切壁8付近の傾きをもった液面が縮まろうとする作用で水面を持ち上げる。つまり、液体の上昇する力は液切壁8の壁面付近の表面張力の垂直成分に等しい。これら二つの力と持ち上げた液体の重さがつりあうまで液面は上昇する。したがって、液切壁8が内嵌筒2に近接する間隔が狭くなり、近接する間隔が長くなるほど液が上昇する高さは大きくなる。
【0032】
尚、本発明の構成は図示例に限定されるものではなく、閉塞板3や切取片4、あるいは破断部7や液切壁8等の各構成や位置、寸法等は、本発明の主旨を変更しない範囲で任意に変更することができる。
【符号の説明】
【0033】
P 容器
P1 口部
1 抽出栓
2 内嵌筒
3 閉塞板
4 切取片
4A かえり部
5 抽出口
6 曲面段差
7 破断部
8 液切壁
9 かえり部
10 プルトップ
11 外嵌筒
12 ヒンジ
13 蓋体
【要約】
【課題】抽出栓内に残る残留液を短時間で容器内に戻すことが可能な液はけ機能付き抽出栓を提供する。
【解決手段】容器Pの口部P1内に嵌合する内嵌筒2と内嵌筒2を閉塞する閉塞板3と有する。閉塞板3に抽出口5を開口する切取片4を備える。閉塞板3の上面より切取片4の上面が低くなる段差を形成する。段差の上面角部を曲面に形成した曲面段差6を設ける。切取片4を切り離す薄肉状の破断部7を設ける。破断部7から下方に向けて突出した液切壁8を破断部7に沿って形成する。液切壁8の一部が内嵌筒2の内側面に近接するように設ける。
【選択図】
図5