(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】光給電コンバータ
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0232 20140101AFI20240105BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
H01L31/02 C
H01L31/10 A
(21)【出願番号】P 2023544122
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 JP2022023117
【審査請求日】2023-07-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000161862
【氏名又は名称】株式会社京都セミコンダクター
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】磯村 尚友
(72)【発明者】
【氏名】大村 悦司
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0108081(US,A1)
【文献】特開2015-072251(JP,A)
【文献】特開平02-224375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/20
H04B 10/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバケーブルから入力される入射光を半導体受光素子により光電流に変換して出力する光給電コンバータにおいて、
前記半導体受光素子は円形受光部を備え、
前記円形受光部は、
その外周に沿って形成された外周アイソレーション溝の内側がこの円形受光部と同心の複数の円環状アイソレーション溝及び前記円形受光部の中心に対して放射状に形成された複数の放射状アイソレーション溝によって分割されて、前記円形受光部の中央部の円形フォトダイオードと、この円形フォトダイオードの外側で周方向に並ぶ複数の放射状フォトダイオードと、前記円形フォトダイオードの外周を仕切る円環状アイソレーション溝の外側で複数の前記放射状アイソレーション溝が周方向に連なる
光電変換できない無効領域の形成を防ぐ1つ以上の円環状フォトダイオードを有し、
前記円形フォトダイオードと前記円環状フォトダイオードと前記放射状フォトダイオードは、前記入射光の光軸から離隔するほど光強度が低下すると共にこの光軸に対して回転対称の光強度分布と、前記円形受光部の分割数とに基づいて受光量が互いに等しくなるように受光面積が夫々設定され、
前記円形フォトダイオードと前記円環状フォトダイオードと複数の前記放射状フォトダイオードが複数の導電性部材によって直列に接続されたことを特徴とする光給電コンバータ。
【請求項2】
複数の前記放射状フォトダイオードは、前記円形受光部の中心を通る中心軸に対して回転対称状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の光給電コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルを介して入力される光を電力に変換して給電する光給電コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
給電設備がない遠隔地、給電による微弱な電磁界がノイズとなる環境、防爆を必要とする環境、電気的相互影響がある超高電圧設備内等、特殊な環境では電源ケーブルを介して電子機器類を作動させる電力を供給できない場合がある。そのため、電子機器類の傍まで光ファイバケーブルを介して送られる光を受けて、光電変換によって光電流を生成して給電する光給電コンバータが利用されている。
【0003】
光給電コンバータは光電変換用の半導体受光素子を有する。この半導体受光素子の出力電圧は、通常1V未満である。光給電コンバータからの給電を受ける機器が高い入力電圧を必要とする場合には、出力電圧を高くした光給電コンバータが利用される。例えば特許文献1のように、半導体受光素子の円形受光部をアイソレーション溝によって複数の扇形のフォトダイオードに分割し、これらを直列に接続することによって出力電圧を高くすることが可能である。
【0004】
分割されて直列に接続された複数のフォトダイオードによって構成された半導体受光素子の出力電圧は、フォトダイオードが多いほど高くなる。一方、その出力電流は、分割されない場合よりも小さくなり、分割数が多いほど小さくなる。その上、この出力電流は、光電変換により生成される光電流が最小のフォトダイオードによって制限される。それ故、複数のフォトダイオードの光電流を互いに等しくするために、これら複数のフォトダイオードが同形状且つ同面積となるように円形受光部が等分される。
【0005】
円形受光部を等分するために、一定幅の直線状の複数のアイソレーション溝が、円形受光部の中心から径方向に放射状に形成されているので、複数のアイソレーション溝が円形受光部の中心近傍に集中する。そして、円形受光部の分割数が多いほど、即ちアイソレーション溝が多いほど、隣り合うアイソレーション溝が近づくので、円形受光部の中心から離隔した位置で複数のアイソレーション溝が夫々幅方向に連なることにより周方向に連なる。アイソレーション溝では光電変換をすることができないので、円形受光部の分割数が多いほど、この円形受光部の中心近傍に複数のアイソレーション溝が周方向に連なって形成される光電変換できない無効領域が大きくなる。
【0006】
ここで、光ファイバケーブルを介して入力される光の強度分布は、一般的にはガウス分布であり、光軸から離隔するほど光強度が低下すると共に、光軸に対して回転対称状の光強度分布である。それ故、この光の光軸が円形受光部の中心をこの円形受光部に対して垂直に通るように入射させることによって、円形受光部の複数のフォトダイオードが均等に受光することができる。
【0007】
このとき、入射光の光軸近傍の光強度が高い部分が、円形受光部の中心近傍の無効領域に入射して光電流に変換されず無駄になるので、光給電コンバータの出力を大きくすることができない。そこで、特許文献2のように、円形受光部の中央部に円形のフォトダイオードを設け、この円形のフォトダイオードの外周側を放射状のアイソレーション溝によって周方向に分割して複数のフォトダイオードを設け、これらフォトダイオードを直列に接続した光給電コンバータが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第5342451号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0108081号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2のように円形受光部を円形のフォトダイオードとその周囲の周方向に並ぶ複数のフォトダイオードに分割する場合には、光軸近傍の光強度が高い部分も光電変換され、分割数を増やして出力電圧を高くすることができる。しかし、複数のフォトダイオードで生成される光電流が等しくなるように、円形受光部の分割数が多くなるほど、円形のフォトダイオードの直径が小さくなると共に、その外側において放射状のアイソレーション溝同士が近づいて重なり合うようになる。
【0010】
そのため、円形受光部の分割数が多い場合には、複数の放射状のアイソレーション溝が周方向に連なって、円形のフォトダイオードを囲むように無効領域が形成されてしまう。それ故、光軸近傍の光強度が高い部分の一部が円形のフォトダイオードの外側の無効領域に入射することになり、光ファイバケーブルを介して入力される光を十分に利用することができなかった。
【0011】
そこで、本発明は、出力電圧を高くするために分割された円形受光部における光ファイバケーブルからの光の利用効率の向上により、出力を向上させた光給電コンバータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明の光給電コンバータは、光ファイバケーブルから入力される入射光を半導体受光素子により光電流に変換して出力する光給電コンバータにおいて、前記半導体受光素子は円形受光部を備え、前記円形受光部は、その外周に沿って形成された外周アイソレーション溝の内側がこの円形受光部と同心の複数の円環状アイソレーション溝及び前記円形受光部の中心に対して放射状に形成された複数の放射状アイソレーション溝によって分割されて、前記円形受光部の中央部の円形フォトダイオードと、この円形フォトダイオードの外側で周方向に並ぶ複数の放射状フォトダイオードと、前記円形フォトダイオードの外周を仕切る円環状アイソレーション溝の外側で複数の前記放射状アイソレーション溝が周方向に連なる光電変換できない無効領域の形成を防ぐ1つ以上の円環状フォトダイオードを有し、前記円形フォトダイオードと前記円環状フォトダイオードと前記放射状フォトダイオードは、前記入射光の光軸から離隔するほど光強度が低下すると共にこの光軸に対して回転対称の光強度分布と、前記円形受光部の分割数とに基づいて受光量が互いに等しくなるように受光面積が夫々設定され、前記円形フォトダイオードと前記円環状フォトダイオードと複数の前記放射状フォトダイオードが複数の導電性部材によって直列に接続されたことを特徴としている。
【0013】
上記構成によれば、半導体受光素子の円形受光部は、その外周に沿って形成された外周アイソレーション溝の内側が複数の円環状アイソレーション溝と複数の放射状アイソレーション溝によって分割され、円形フォトダイオードと1つ以上の円環状フォトダイオードと複数の放射状フォトダイオードが形成されている。そして、これら複数のフォトダイオードが直列に接続されている。この円形受光部が有する円形フォトダイオードと、円環状フォトダイオードと、放射状フォトダイオードの受光面積は、光ファイバケーブルから入力される入射光の光軸から離隔するほど光強度が低下すると共にこの光軸に対して回転対称の光強度分布と円形受光部の分割数とに基づいて、受光量が互いに等しくなるように夫々設定されている。それ故、円形受光部の複数のフォトダイオードで夫々生成される光電流のばらつきが抑制され、これら複数のフォトダイオードが直列に接続された場合に光電流のばらつきに起因する半導体受光素子の出力低下が抑制される。従って、この半導体受光素子を有する光給電コンバータの出力低下が抑制される。そして、円形受光部の分割数が多い場合でも、円形受光部の中央部の円形フォトダイオードの外側において、複数の放射状アイソレーション溝が集中して周方向に連なって形成される光電変換できない無効領域の形成を防ぐ1つ以上の円環状フォトダイオードが、円形フォトダイオードを囲んでいるので、光電流を生成できない無効領域が形成されない。従って、円形受光部の中央部で入射光の光強度が高い部分を光電流に変換することができ、円形受光部における光の利用効率を向上させることができるので、光給電コンバータの出力を向上させることができる。
【0014】
請求項2の発明の光給電コンバータは、請求項1の発明において、複数の前記放射状アイソレーション溝は、前記円形受光部の中心を通る中心軸に対して回転対称状に形成されたことを特徴としている。
上記構成によれば、円環状フォトダイオードの外側が、回転対称状に形成された放射状アイソレーション溝によって周方向に等分されるので、複数の放射状フォトダイオードの受光面積を容易に等しくすることができる。また、光ファイバケーブルから入力される入射光は光軸に対して回転対称の光強度分布である。それ故、入射光の光軸が円形受光部の中心をこの円形受光部に対して垂直に通るように光を入射させて、即ち入射光の光軸を円形受光部の中心軸と一致させて、円形受光部の各フォトダイオードの受光量を互いに等しくすることができる。従って、円形受光部が有する複数のフォトダイオードで夫々生成される光電流のばらつきが抑制され、光給電コンバータの出力の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光給電コンバータによれば、出力電圧を高くするために分割された円形受光部において、光ファイバケーブルからの光の利用効率を向上させて、光給電コンバータの出力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例1に係る光給電コンバータの斜視図である。
【
図2】
図1の光給電コンバータが有する半導体受光素子への光の入射の説明図である。
【
図3】
図2の半導体受光素子を光の入射側から見た平面図である。
【
図5】光ファイバケーブルを介して入力される光の光強度分布図である。
【
図6】円形受光部の分割数に応じた円形フォトダイオードの直径と円環状フォトダイオードの外径の例を示すグラフである。
【
図7】円形受光部の分割態様に応じた出力の比較例を示すグラフである。
【
図9】本発明の実施例2に係る裏面入射型の半導体素子を光の入射側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0018】
図1、
図2に示すように、光給電コンバータ1は、例えばシングルモードの光ファイバケーブルOCを介して入力される光(入射光)Lを光電流に変換し、この光電流を外部に給電するための1対の出力端子部2a,2bを有する。1対の出力端子部2a,2bが装備された基台3には、受光した光から光電変換により光電流を生成するための半導体受光素子10と、この半導体受光素子10の保護及び遮光のためのカバー5が、例えば接着剤によって夫々固定されている。半導体受光素子10の1対の電極10a,10bは、対応する出力端子部2a,2bに接続された配線部3a,3bに、例えば導電性ワイヤ11a,11bによって接続されている。
【0019】
光ファイバケーブルOCは、カバー5を貫通する挿入孔5aに差し込まれ、その出射端Eが半導体受光素子10から所定の距離だけ離隔した位置となるように固定される。光ファイバケーブルOCの出射端Eの位置決め機構が、カバー5に装備されていてもよい。
【0020】
光ファイバケーブルOCを介して入力される光Lは、波長が例えば1.5μm程度の赤外光である。この光Lは、出射端Eから出射された後は、進行するほど照射範囲が広がる円錐状のビームである。半導体受光素子10は、光電変換によって光Lから光電流を生成する円形受光部12を有する。出射端Eから出射される光Lの光軸OAが円形受光部12の中心Cをこの円形受光部12に対して垂直に通るように、即ち光軸OAと円形受光部12の中心軸が一致するように、出射端Eが位置決めされる。
【0021】
図3に示すように、円形受光部12は、例えば光吸収層を備えた円形のPIN型フォトダイオードが、一定幅のアイソレーション溝によって複数のフォトダイオードに分割され、これら複数のフォトダイオードが直列に接続されて形成されている。尚、アイソレーション溝では光電流が生成されないので、出力を大きくするために円形受光部12の面積に占めるアイソレーション溝の面積を小さくすることが好ましい。
【0022】
円形受光部12の中央部には、円形受光部12と同心の第1円環状アイソレーション溝13aによって円形フォトダイオード14aが形成されている。また、円形受光部12と同心且つ直径が第1円環状アイソレーション溝13aよりも大きい第2円環状アイソレーション溝13bと第1円環状アイソレーション溝13aの間には、円環状フォトダイオード14bが形成されている。
【0023】
第2円環状アイソレーション溝13bと、円形受光部12の外周に沿って形成された外周アイソレーション溝13nとの間には、円形受光部12の中心Cに対して放射状に複数(ここでは30本)の直線状の放射状アイソレーション溝15が形成されている。これら複数の放射状アイソレーション溝15は、円形受光部12の中心Cを通る中心軸に対して回転対称状に形成され、円環状フォトダイオード14bの外側を周方向に等分し、且つ第2円環状アイソレーション溝13bと外周アイソレーション溝13nを接続している。尚、
図3では放射状アイソレーション溝15の符号を一部省略している。
【0024】
こうして円環状フォトダイオード14bの外側には、複数の放射状アイソレーション溝15によって複数(ここでは30個)の放射状フォトダイオード16が形成されている。これら放射状フォトダイオード16は、円環状フォトダイオード14bを囲むように周方向に並んでいる。以下では、円形受光部12が分割されて形成された円形、円環状及び放射状の各フォトダイオードを区別せずにPDと記載する場合がある。尚、
図3では放射状フォトダイオード16の符号を一部省略している。
【0025】
円形受光部12の各PD(円形フォトダイオード14a、円環状フォトダイオード14b、放射状フォトダイオード16)は、例えば
図4に示すように、半絶縁性の半導体基板20上に積層されたn型半導体層21と光吸収層22とp型半導体層23を有する。半導体基板20は例えばInP基板であり、n型半導体層21は例えばn-InP層であり、光吸収層22は例えばInGaAs層であり、p型半導体層23は例えばp-InP層であるが、これに限定されるものではなく、円形受光部12はPIN型に限定されるものではない。尚、n型半導体層21、光吸収層22、p型半導体層23の厚さは適宜設定することができ、0.5~10μm程度の厚さに形成される場合が多い。
【0026】
アイソレーション溝(第1、第2円環状アイソレーション溝13a,13b、外周アイソレーション溝13n、複数の放射状アイソレーション溝15)は、n型半導体層21と光吸収層22とp型半導体層23が積層された半導体基板20をp型半導体層23側から、半導体基板20に到達するまで選択的にエッチングすることにより形成される。これにより電気的に分離された複数のPDが形成される。尚、アイソレーション溝は、例えば半導体基板20側ほど幅が狭くなるように側壁が傾斜していてもよい。
【0027】
複数のPDは、p型半導体層23と光吸収層22を貫通してn型半導体層21に到達する貫通孔17を夫々有する。そして、絶縁性の保護膜24が、複数のPDの表面とこれらPDの貫通孔17の内壁を覆い且つアイソレーション溝を埋め込むように形成されている。保護膜24は、入射する光Lの反射防止機能を備えていることが好ましいが、図示外の反射防止膜を形成してもよい。
【0028】
各PDにおいて、p型半導体層23上及び貫通孔17の内部の保護膜24が部分的に除去されて、p型半導体層23及び貫通孔17底部でn型半導体層21が露出する。そして、
図3、
図4のように、複数の導電性部材25によって複数のPDを直列に接続するために、アイソレーション溝を介して隣り合うPD間で、露出した一方のp型半導体層23と他方のn型半導体層21とが導電性部材25によって接続される。尚、
図3では複数の導電性部材25の符号を一部省略している。
【0029】
導電性部材25は、例えばリフトオフ法を用いて金属積層膜を選択的に堆積させることによって形成される。金属積層膜は、例えばチタン、クロムのような密着層と、例えば金、銀、アルミニウムのような低抵抗率層によって構成されている。アイソレーション溝は、保護膜24によって埋め込まれて段差が小さくなっているので、導電性部材25の形成が容易になる。
【0030】
また、放射状アイソレーション溝15を埋め込んだ保護膜24上に、例えば電極10aと円形フォトダイオード14aとの接続用及び円環状フォトダイオード14bと放射状フォトダイオード16との接続用の導電性部材25が夫々形成され、入射する光Lが遮られないようにしている。隣り合う放射状フォトダイオード16を接続する導電性部材25が円形受光部12の中心Cを通る中心軸に対して回転対称状に形成されることにより、各放射状フォトダイオード16において導電性部材25によって遮られる光量が等しくなることが好ましい。
【0031】
アイソレーション溝が保護膜24によって埋め込まれて段差が無い場合には、複数の導電性部材25を容易に形成することができる。保護膜24によるアイソレーション溝の埋め込みは、導電性部材25を形成できる程度に段差を小さくしていればよい。図示を省略するが、各PDにおいてp型半導体層23に接続するアノード電極とn型半導体層21に接続するカソード電極を形成し、上記と同様に隣り合うPD間で一方のアノード電極を他方のカソード電極に導電性部材25によって接続してもよい。また、導電性部材25として例えば金を主成分とする導電性ワイヤを使用してもよい。
【0032】
円形受光部12において、円形フォトダイオード14aと円環状フォトダイオード14bと複数の放射状フォトダイオード16が直列に接続されているので、半導体受光素子10が出力する光電流は小さくなるが、その出力電圧を高くすることができる。従って、光ファイバケーブルOCを介して入力される光を光電変換するために半導体受光素子10を備えた光給電コンバータ1は、高い電圧で給電することができる。
【0033】
光ファイバケーブルOCの出射端Eから出射された光Lは、
図2、
図5のように例えば頂角θ(全角)が14度の円錐状に広がって円形受光部12に入射する。この光Lの光強度分布はガウス分布であり、光軸OAから離隔するほど光強度が低下すると共に光軸OAに対して回転対称の光強度分布になる。この光強度分布に基づいて、円形受光部12の各PDが生成する光電流が等しくなるように、即ち受光量が等しくなるように、円形フォトダイオード14aと円環状フォトダイオード14bと放射状フォトダイオード16の受光面積が夫々設定されている。高強度の光を受ける円形フォトダイオード14aは面積が小さく、低強度の光を受ける放射状フォトダイオード16は円形フォトダイオード14a、円環状フォトダイオード14bよりも面積が大きくなる。尚、受光面積は、例えば円形受光部12の最外周部分に入射する光強度が中心Cに入射する光強度の1/e
2になる(円形受光部12に光Lの約90%が照射される)状況において、各PDの受光量が互いに等しくなるように設定される。
【0034】
光入力が一定の場合、円形受光部12が有するPDの個数に応じて、各PDが生成することができる光電流が変動する。それ故、光強度分布に基づいて各PDが生成する光電流が等しくなるように受光面積が設定される際に、円形受光部12が有するPDの個数に応じた円形フォトダイオード14aの直径及び円環状フォトダイオード14bの外径が設定される。
【0035】
例えば直径D0=1mmの円形受光部12が、幅10μmのアイソレーション溝によって、1つの円形フォトダイオード14aと1つの円環状フォトダイオード14bと複数の放射状フォトダイオード16に分割される場合について、
図6に円形フォトダイオード14aの直径D1と円環状フォトダイオード14bの外径D2の設定例を示す。
【0036】
円形受光部12が10個のPDに分割されて1つの円形フォトダイオード14aと1つの円環状フォトダイオード14bと8個の放射状フォトダイオード16を有する場合には、円形フォトダイオード14aの直径D1が230μm、円環状フォトダイオード14bの外径D2が340μmに設定される。また、円形受光部12が32個のPDに分割されて1つの円形フォトダイオード14aと1つの円環状フォトダイオード14bと30個の放射状フォトダイオード16を有する場合(
図3参照)には、円形フォトダイオード14aの直径D1が126μm、円環状フォトダイオード14bの外径D2が179μmに設定される。尚、円形受光部12の直径D0、PDの個数及びアイソレーション溝の幅は、適宜設定することができる。
【0037】
図7は、直径D0=1mmの円形受光部12を分割しないパターン#1の出力(電力)を1とした場合に、分割のパターン別の相対出力を示している。パターン#2は、円形受光部の中心から径方向に延びる直線状の複数のアイソレーション溝によって円形受光部が放射状に30等分されている。このパターン#2は、複数のアイソレーション溝が集中する円形受光部12の中心近傍に光電変換できない無効領域が形成され、相対出力は0.89である。つまり、パターン#2は、パターン#1と比べて円形受光部12に入射する光の利用効率が11%低く、光入力の無駄が大きい。
【0038】
パターン#3は、円形受光部の中央に円形受光部と同心状に直径が128μmの円形フォトダイオードを設け、円形フォトダイオードの周りを30等分して30個の放射状フォトダイオードを設けている。円形フォトダイオードによって無効領域がパターン#2よりも縮小しており、パターン#3の相対出力は0.93である。パターン#3は、パターン#2と比べて円形受光部12に入射する光の利用効率が向上している。
【0039】
図3の円形受光部12に相当するパターン#4は、円形受光部の中央部に、この円形受光部と同心状に直径が126μmの円形フォトダイオードと外径が179μmの円環状フォトダイオードを設け、円環状フォトダイオードの外側を30等分して30個の放射状フォトダイオードを設けている。このパターン#4は、円形フォトダイオードの外側にアイソレーション溝の集中によって形成されるはずの無効領域が、円環状フォトダイオードによって形成されない。それ故、パターン#4の相対出力は0.97になり、パターン#2,#3よりも出力を大きくすることができる。従って、パターン#4は、円形受光部12に入射する光の利用効率がパターン#3よりも向上し、無駄になる光入力をパターン#2,#3よりも減少させている。
【0040】
図6のように、円形受光部12が有するPDの数が多くなるほど、円環状フォトダイオード14bの外径D2が小さくなるので、円環状フォトダイオード14bの近傍に複数の放射状アイソレーション溝15が集中するようになる。そのため、円環状フォトダイオード14bの外側に、第2円環状アイソレーション溝13bだけでなく、複数の放射状アイソレーション溝15が夫々幅方向に連なることにより周方向に連なって、光電変換できない環状の無効領域が形成されることになる。
【0041】
このような無効領域の形成を防止するため、例えば
図8のように、円形受光部12は、円環状フォトダイオード14bの外側に、第2円環状アイソレーション溝13bと第3円環状アイソレーション溝13cの間に形成された第2の円環状フォトダイオード14cを有していてもよい。この場合も、円形受光部12の複数のPD(円形フォトダイオード14a、2つの円環状フォトダイオード14b,14c、複数の放射状フォトダイオード16)が生成する光電流が互いに等しくなるように、入力される光Lの光強度分布に基づいて各PDの受光面積が夫々設定される。円形受光部12は、3個以上の円環状フォトダイオードを有していてもよい。尚、
図8では、放射状アイソレーション溝15の符号及び放射状フォトダイオード16の符号を一部省略している。
【0042】
図示を省略するが、円環状フォトダイオードを増加させた場合でも、円形受光部12の複数のPDは、複数の導電性部材25によって直列に接続される。以上のように、円形受光部12が有するPDの数が多い場合でも、円形フォトダイオードと1つ以上の円環状フォトダイオードによって無効領域の形成を防いで、円形受光部12に入射する光の利用効率を高くすることができる。
【実施例2】
【0043】
光給電コンバータ1は、半導体受光素子10の代わりに、
図9、
図10に示すような裏面入射型の半導体受光素子10Aを用いて構成することができる。裏面入射型の半導体受光素子10Aは、半導体受光素子10の一部を変更した構造であり、半導体受光素子10と共通する部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0044】
半導体受光素子10Aの半導体基板20は、入射光に対して透明な材料で形成され、入射する光Lを吸収せずに透過させる。例えばInP基板は、波長が概ね1μm以上の赤外光に対して透明である。半導体基板20の光Lの入射面(裏面)には、光Lの反射を抑制する反射防止膜26が形成されていることが好ましい。円形受光部12は、上記と同様にアイソレーション溝によって分割され、複数のPD(円形フォトダイオード14aと円環状フォトダイオード14bと複数の放射状フォトダイオード16)を有する。
【0045】
複数のPDは、上記と同様に入射する光Lの光強度分布に基づいて、受光量が互いに等しくなるように受光面積が夫々設定されている。これら複数のPDは、p型半導体層23に接続されたアノード電極27と、n型半導体層21に接続されたカソード電極28を夫々備えている。尚、
図9では、放射状フォトダイオード16の符号を一部省略している。
【0046】
円形受光部12の複数のPDが基台3に形成された複数の導電性部材4によって直列に接続されるように、隣り合うPDのうちの一方のアノード電極27と他方のカソード電極28とが対応する導電性部材4に例えば導電性ペースト6によって固定されている。図示を省略するが、この円形受光部12で生成された光電流を出力端子部2a,2bから出力するために、直列接続された複数のPDの両端の導電性部材4が対応する配線部3a,3bに接続されている。複数の導電性部材4が円形受光部12に入射する光Lを遮らないので、複数のPD間の光電流のばらつきを一層小さくすることができる。
【0047】
上記光給電コンバータ1の作用、効果について説明する。
光給電コンバータ1は、光ファイバケーブルOCから入力される入射光Lを半導体受光素子10,10Aにより光電流に変換して出力する。半導体受光素子10,10Aは、光電変換により光電流を生成する円形受光部12を有する。円形受光部12は、その外周に沿って形成された外周アイソレーション溝13nの内側が、この円形受光部12と同心の複数の円環状アイソレーション溝13a,13bと複数の放射状アイソレーション溝15によって分割されている。これにより円形受光部12には、中央部の円形フォトダイオード14aと、その外側で周方向に並ぶ複数の放射状フォトダイオード16と、円形フォトダイオード14aの外周を仕切る円環状アイソレーション溝13aの外側で複数の放射状アイソレーション溝15が周方向に連なる光電変換できない無効領域の形成を防ぐために、1つ以上の円環状フォトダイオード14bが形成されている。これら円形フォトダイオード14aと円環状フォトダイオード14bと放射状フォトダイオード16は、入射光の光強度分布と円形受光部の分割数とに基づいて受光量が互いに等しくなるように受光面積が夫々設定され、複数の導電性部材25,4によって直列に接続されている。
【0048】
円形受光部12が有する複数のフォトダイオードの受光量が互いに等しくなるので、これらフォトダイオードで生成される光電流のばらつきを小さくすることができる。それ故、これらフォトダイオードを直列に接続した円形受光部12は、生成する光電流が小さいフォトダイオードによる出力の低下を防止することができる。従って、この円形受光部12を有する半導体受光素子10,10Aから外部に給電する光給電コンバータ1の出力低下を防止することができる。また、円環状及び放射状のアイソレーション溝では光電流が生成されないが、円形受光部12の中央部に形成された円形フォトダイオード14aと円環状フォトダイオード14bによって、入射光の光強度が大きい部分が光電流に変換されずに無駄になることを防止することができる。
【0049】
複数の放射状アイソレーション溝15は、円形受光部12の中心Cを通る中心軸に対して回転対称状に形成されている。円環状フォトダイオード14bの外側が複数の放射状アイソレーション溝15によって円形受光部12の周方向に等分されるので、複数の放射状フォトダイオード16の受光面積を容易に等しくすることができる。そして、光ファイバケーブルOCから入力される入射光は、光軸OAに対して回転対称の光強度分布なので、その光軸OAが円形受光部12の中心Cを通るように入射させることにより、円形フォトダイオード14aと円環状フォトダイオード14bと各放射状フォトダイオード16とで、受光量を互いに等しくすることができる。従って、これらフォトダイオードで生成される光電流のばらつきを小さくして、光給電コンバータ1の出力の低下を防ぐことができる。
【0050】
その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はその種の変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0051】
1 :光給電コンバータ
2a,2b:出力端子部
3 :基台
4 :導電性部材
5 :カバー
5a :挿入孔
10,10A:半導体受光素子
10a,10b:電極
11a,11b:導電性ワイヤ
12 :円形受光部
13a~13c:第1~第3円環状アイソレーション溝(円環状アイソレーション溝)
13n:外周アイソレーション溝
14a:円形フォトダイオード
14b:円環状フォトダイオード
14c:第2の円環状フォトダイオード
15 :放射状アイソレーション溝
16 :放射状フォトダイオード
17 :貫通孔
20 :半導体基板
21 :n型半導体層
22 :光吸収層
23 :p型半導体層
24 :保護膜
25 :導電性部材
26 :反射防止膜
27 :アノード電極
28 :カソード電極
OC :光ファイバケーブル
E :出射端
L :光(入射光)
【要約】
【課題】出力電圧を高くするために分割された円形受光部における光ファイバケーブルからの光の利用効率を向上させて出力を向上させた光給電コンバータを提供すること。
【解決手段】光ファイバケーブルからの光を半導体受光素子(10)により光電流に変換して出力する光給電コンバータは、半導体受光素子(10)の円形受光部(12)が、この円形受光部(12)と同心の複数の円環状アイソレーション溝により分割された円形フォトダイオード(14a)及び1つ以上の円環状フォトダイオード(14b)と、円環状フォトダイオード(14b)の外側に複数の放射状アイソレーション溝によって分割された複数の放射状フォトダイオード(16)を有し、円形フォトダイオード(14a)と円環状フォトダイオード(14b)と複数の放射状フォトダイオード(16)は、光の光強度分布に基づいて受光量が互いに等しくなるように受光面積が夫々設定されて複数の導電性部材(25)によって直列に接続された。