IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エムケー精工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両処理装置および物体検出方法 図1
  • 特許-車両処理装置および物体検出方法 図2
  • 特許-車両処理装置および物体検出方法 図3
  • 特許-車両処理装置および物体検出方法 図4
  • 特許-車両処理装置および物体検出方法 図5
  • 特許-車両処理装置および物体検出方法 図6
  • 特許-車両処理装置および物体検出方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】車両処理装置および物体検出方法
(51)【国際特許分類】
   B60S 3/06 20060101AFI20240105BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
B60S3/06
G01B11/24 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020023867
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021127048
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000103138
【氏名又は名称】エムケー精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 良平
(72)【発明者】
【氏名】境澤 孝宣
【審査官】松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-098218(JP,A)
【文献】特開2010-023777(JP,A)
【文献】特開2018-020654(JP,A)
【文献】特許第4035379(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 3/06
G01B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項5】
対向する発光部と受光部との間での通光、遮光により物体を検出する物体検出方法であって、
(a1)前記受光部が有する第1受光素子に、前記発光部の発光の有無による受光量から第1校正値を設定する工程と、
(a2)前記第1受光素子と所定方向に沿って並ぶ前記受光部が有する第2受光素子に、前記発光部の発光の有無による受光量から第2校正値を設定する工程と、
(b)前記所定方向で異なる第1および第2比率を設定する工程と、
(c1)前記第1比率を参照して前記第1校正値から前記第1受光素子に第1閾値を設定する工程と、
(c2)前記第2比率を参照して前記第2校正値から前記第2受光素子に第2閾値を設定する工程と、
(d1)前記発光部の発光による前記第1受光素子の受光量から前記第1閾値を基準として、通光、遮光を判定する工程と、
(d2)前記発光部の発光による前記第2受光素子の受光量から前記第2閾値を基準として、通光、遮光を判定する工程と、
を含む、物体検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検出技術に関し、特に、物体として車両を検出処理し、その形状(車形)に合わせて処理を行う機能を備える車両処理装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第4035379号(特許文献1)には、対向した発光素子の発光に伴う受光素子での受光量の増加分が所定の閾値以下と認められるときに車体を検出したと判断する技術が記載されている。その閾値は実行しようとする洗車内容に応じて各素子に算出・設定されるが、閾値を設定する際の比率は共通(同じ)とされている。すなわち、比率は洗車内容により適宜設定されるが、各素子の基礎データ(校正値)に対して同じ比率が参照(乗算)され、それぞれに閾値が設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4035379号(特に、請求項1、段落0038~0040)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、各受光素子の閾値を設定する際に同じ比率を参照すると、検出する際の環境や車両(物体)によって正確に検出できないおそれが生じてしまう。
【0005】
本発明の一目的は、検出精度を向上することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一解決手段に係る車両処理装置は、対向する発光部および受光部と、前記発光部と前記受光部との間において受光量の閾値を基準とした通光、遮光により車両を検出する検出部と、を備える。前記受光部は、鉛直方向に沿って並んだ複数の受光素子を有する。前記検出部は、車両を検出する前段階において、前記複数の受光素子のそれぞれに前記発光部の発光の有無による受光量から校正値を設定し、鉛直方向で異なる比率を参照して前記校正値から前記閾値を設定する機能を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一解決手段によれば、検出精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る車両処理装置の正面視からの概略図である。
図2図1に示す車両処理装置の側面視からの概略図である。
図3図1に示す車両処理装置の制御系の概略図である。
図4図1に示す車両処理装置の車形検出フロー図である。
図5図4に示す車形検出フロー中の閾値設定フロー図である。
図6】車形データの説明図であり、(a)は閾値の比率が高いもの、(b)は閾値の比率が低いもの、(c)は閾値の比率を組み合わせたものである。
図7】種々の環境下における閾値の比率を示す表である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明に係る車両処理装置および物体検出方法の実施形態について説明する。本発明の実施形態では、車両処理装置として、車両(物体)を検出し、その形状に合わせて洗浄処理を行う機能を備える洗車装置に適用した場合について説明する。なお、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0010】
(洗車装置の構成)
まず、洗車装置10の構成について図面を参照して説明する。図1および図2はそれぞれに正面視および側面視からの洗車装置10の概略図である。また、図3は洗車装置10の制御系のブロック図である。
【0011】
洗車装置10は、地面G(敷設面)に起立して設けられた本体部11(本体機ともいう)を備えている。本体部11は、処理対象となる車両Cを跨ぐように門型状のフレーム(筐体)で構成されている。このため、本体部11は、地面Gから起立する一対の脚フレーム11Aと、この一対の脚フレーム11Aにかかる梁フレーム11Bとを有している。
【0012】
また、洗車装置10は、レール12と、車輪13、14とを備えている。一対のレール12は、互いが平行となるように延在して地面Gに設けられている。車輪13、14は、一対の脚フレーム11Aの底部のそれぞれに設けられている。洗車装置10では、車輪13を駆動輪、車輪14を従動輪としている。洗車装置10では、この一対のレール12間に車両Cが停車(図2では車両Cの前端を本体部11に向けて停車)した状態で、一対のレール12上を車輪13、14(計4輪)を介して本体部11が前後に移動(往復走行)することとなる。なお、図2の右方向が本体部11の前方向、左方向が後方向となる。
【0013】
また、洗車装置10は、モータ15と、エンコーダ16とを備えている。モータ15は、地面Gに対して車輪13よりも高い位置から車輪13と接続されるように本体部11の一対の脚フレーム11Aのそれぞれに設けられている。このモータ15は、正逆転可能に構成されており、車輪13(駆動輪)を介して本体部11を前後に移動させる。エンコーダ16は、本体部11の脚フレーム11Aの一方に設けられ、その一方側のモータ15の出力軸に連結されている。エンコーダ16は、レール12上における本体部11の走行位置を検出する。すなわち、エンコーダ16は、モータ15の回転方向すなわち車輪13の回転方向を検出しながら単位角度回転ごとにパルス信号を出力することで、レール12上における本体部11の位置を与えることができる。
【0014】
また、洗車装置10は、前後スイッチ17およびドック18A、18Bを備えている。前後スイッチ17は、一方の脚フレーム11Aの底部に設けられている。また、ドック18Aは、一方のレール12の一端側(本体部11の前後方向前側)に設けられ、ドック18Bは、同じレール12の他端側(前後方向後側)に設けられている。前後スイッチ17は、本体部11の移動によりドック18A、18Bでスイッチングし、ドック18Aとドック18Bとの間で本体部11の移動限界を検出する。このため、洗車装置10では、本体部11が停車した車両Cを跨いで車長方向に通過するように移動限界の範囲内で移動することができる。
【0015】
また、洗車装置10は、本体部11に設けられたトップブラシ20および一対のサイドブラシ21を備えている。トップブラシ20(回転ブラシ)は、待機時に門型状の本体部11の開口上部側(梁フレーム11B側)に収容されている。このトップブラシ20は、可動部として本体部11の移動に伴って回転しながら上下に昇降し、主に車両Cの上面をブラッシングすることができる。また、一対のサイドブラシ21(回転ブラシ)は、それぞれ待機時に門型状の本体部11の開口側部側(一対の脚フレーム11A側)に収容されている。一対のサイドブラシ21は、可動部として本体部11の移動に伴って回転しながら開閉動作(互いが近づいたり離れたりする動作)し、主に車両Cの前面、側面および後面をブラッシングすることができる。
【0016】
また、洗車装置10は、本体部11に設けられるトップスプレー22および一対のサイドスプレー23を備えている。トップスプレー22は、門型状の本体部11の開口上部側(梁フレーム11B側)に収容されている。トップスプレー22は、本体部11の移動に伴ってパイプに設けられた複数の噴射ノズル(不図示)から水などの洗浄液を噴射し、主に車両Cの上面を洗浄することができる。また、一対のサイドスプレー23は、それぞれ門型状の本体部11の開口側部側(一対の脚フレーム11A側)に収容されている。一対のサイドスプレー23は、本体部11の移動に伴ってパイプに設けられた複数の噴射ノズル(不図示)から水などの洗浄液を噴射し、主に車両Cの側面を洗浄することができる。
【0017】
また、洗車装置10は、本体部11に設けられるトップノズル24(ブロワノズル)および一対のサイドノズル25(ブロワノズル)を備えている。トップノズル24は、待機時に門型状の本体部11の開口上部側(梁フレーム11B側)に収容されている。トップノズル24は、可動部として本体部11の移動に伴って送風しながら車両Cと接触せずに上下に昇降し、主に車両Cの上面を乾燥することができる。また、一対のサイドノズル25は、それぞれ待機時に門型状の本体部11の開口側部側(一対の脚フレーム11A側)に収容されている。一対のサイドノズル25は、可動部として本体部11の移動に伴って送風しながら車両Cと接触せずに開閉動作(互いが近づいたり離れたりする動作)し、主に車両Cの側面を乾燥することができる。
【0018】
また、洗車装置10は、本体部11に設けられ、車両Cを検出するセンサ部26を備えている。センサ部26は、例えば透過型の光電センサとして、一対の脚フレーム11Aのそれぞれに設けられた発光部EUおよび受光部RUを備え、発光部EUと受光部RUとの間で車両Cを検出するよう構成されている。発光部EUと受光部RUとが対向するように設けられている。発光部EUは、門型状の本体部11の開口右側部側(一方の脚フレーム11A側)に設けられ、受光部RUは、門型状の本体部11の開口左側部側(他方の脚フレーム11A側)に設けられている。洗車装置10は、対向する発光部EUと受光部RUとの間での通光、遮光により車両C(物体)を検出することができる。
【0019】
センサ部26は、発光部EUが有する複数(m個)の発光素子E(例えば、LED)と、受光部RUが有する複数(m個)の受光素子R(例えば、フォトダイオード)とを備えている。複数の発光素子Eは、本体部11の起立方向(鉛直方向)に沿って等間隔に並んで設けられている。また、複数の受光素子Rは、本体部11の起立方向(鉛直方向)に沿って等間隔に並んで設けられている。例えば、図1に示すように、地面Gから同じ高さに設置されて対向している発光素子Eと受光素子Rとの間で光信号(例えば、赤外線)の授受を行うことで、地面Gに水平な光軸Bが形成される。この光軸Bの通光/遮光を基に、洗車装置10は車両Cの有無を検出し、種々のデータを取得することができる。
【0020】
また、洗車装置10(図3)は、発光部EU用の走査駆動部30と、受光部RU用の走査駆動部31とを備えている。走査駆動部30は、本体部11の起立方向(行方向)に並ぶ発光素子Eを下から上(もしくは上から下)へ順次点灯する。また、走査駆動部31は、発光素子Eの走査に向かい合う受光素子Rを順次受光状態とする。これにより、対応する発光素子Eと受光素子Rとの間で光信号の授受がなされ、地面Gに水平な光軸Bが形成される。なお、水平光軸ごとに光信号の授受を行う水平検出動作に加えて、例えば、発光素子E2からの発光をそれと水平に対向する受光素子R2の上下の受光素子R1、R2で光信号の授受(傾斜光軸)を検出する傾斜検出動作を行うことで、配列した素子数(m個)よりも多い分解能で車両を検出するようにしてもよい。
【0021】
また、洗車装置10は、車形制御部32を備えている。車形制御部32(例えば、制御装置)は、CPU、RAM、ROMなどの電子部品から構成され、種々の処理機能(プログラムを実行する手段)を有している。このため、洗車装置10(車形制御部32)は、処理機能として、走行位置検出部33と、受光検出部34と、閾値設定部35と、車両検出部36と、多数決判定部37と、車形データ作成部38と、画像処理部40と、データ記憶部41とを備えている。車形制御部32は、本体部11に内蔵されている。
【0022】
走行位置検出部33は、走行エンコーダ16からのパルス信号により本体部11の走行位置を検出する。また、受光検出部34は、各受光素子Rでの受光量(受光レベル)を検出する。また、閾値設定部35は、車両を検出する前段階(車両Cが存在しない状態)において、複数の受光素子Rのそれぞれに発光部EUの発光の有無による受光量から校正値を設定し、比率hを参照して校正値から閾値を設定する。
【0023】
ここで、閾値とは、発光部EU(発光素子E)が発光したことによって対応する受光素子Rで受ける受光量の増加分と対比される数値である。洗車装置10は、発光部EUと受光部RUとの間において受光量の閾値を基準とした通光/遮光により車両C(物体)を検出することができる。より具体的には、発光により受光量が閾値以上増加すればその光軸Bは通光しているとして車両非検出と判定し、閾値に達しなければその光軸Bは遮光されているとして車両検出と判定される。
【0024】
また、車両検出部36は、走行エンコーダ16からのパルス信号をトリガとして走査駆動部30、31を動作させ、受光検出部34で検出される各受光素子Rの受光量を、閾値設定部35で設定した閾値と比較して各光軸Bの通光/遮光を判定する。この際、車両検出部36は、本体部11の走行位置に関して同一位置で複数回(例えば、5回)の走査を行い、1回の走査で判定される各光軸Bの判定結果をその回毎にまとめて車形データとしてデータ記憶部41に記憶させる。また、多数判決部37は、走査で行った回数分の車形データを用いて各光軸Bの判定結果を多数決判決する。多数決で判定された各光軸Bの通光/遮光の結果は1走査分の車両データとして確定し、車形データ作成部38に送られる。
【0025】
また、車形データ作成部38は、走行位置検出部33から与えられる本体部11の走行位置と車両検出部36および多数判決部37で検出した各光軸Bの通光/遮光から2値画像データを作成する。画像処理部40は、車形データ作成部38で作成した2値画像データを解析処理し、洗車用データを作成する。データ記憶部41は、走行位置検出部33で検出される本体部11の走行位置データ、閾値設定部35で設定される閾値、車形データ作成部38で作成される2値画像データや、画像処理部40で抽出される洗車用データなどが記憶される。
【0026】
また、洗車装置10は、洗車制御部42と、洗車駆動部43と、操作パネル44とを備えている。洗車制御部42(例えば、制御装置)は、洗車処理プロブラムに従って洗車駆動部43を介してトップブラシ20、トップノズル24などの処理装置(可動部)や本体部11のモータ15などを駆動し、本体部11を移動させつつ、車両Cの洗浄、乾燥といった洗車処理を行わせる。例えば、洗車制御部42は、作成された洗車用車形データに基づいてトップブラシ20およびトップノズル24を昇降制御し、車体面を忠実にトレースするよう操作する。操作パネル44は、本体部11とは別設される洗車受付装置(図示しない)に設けられ、ユーザによって洗車内容の選択入力や洗車開始入力が行われる。
【0027】
(車形検出方法)
次に、洗車装置10における車両検出方法(物体検出方法)について図面を参照して説明する。図4は、洗車装置10の車形検出フロー図である。また、図5は、車形検出フロー中の閾値設定フロー図である。車形検出処理は、閾値設定処理(工程S10)、車両検出処理(工程S30)、判定処理(工程S50)、車形データ作成処理(工程S70)、画像処理(工程S90)を含み、この順に行われる。
【0028】
<閾値設定処理(工程S10)>
閾値設定部35では、車両Cを検出する前段階において、複数の受光素子Rのそれぞれに、対応する複数の発光素子E(発光部EU)の発光の有無による受光量から校正値を設定し、鉛直方向で異なる比率hを参照して校正値から閾値を設定する。この閾値は、各発光素子Eや受光素子Rの個々の性能や精度に応じて通光/遮光を判別する基準値となるため、汚れの付着等による受光量低下も許容できるように車両検出前には必ず個々の受光素子R毎に設定される。
【0029】
より具体的には、まず、受光部RUの走査駆動部31のみを駆動し(工程S11)、発光部EUを発光させる前の受光素子R1の受光レベルra1(受光量)を取り込む(工程S12)。次いで、発光部EUの走査駆動部30と受光部RUの走査駆動部31を同期駆動させ(工程S13)、発光素子E1を発光させた時の受光素子R1の受光レベルrb1(受光量)を取り込む(工程S14)。次いで、受光レベルra1と、受光レベルrb1との差を取ることで、汚れの付着等による受光量を校正した差分受光レベルrc1(校正値となる)を算出する(工程S15)。次いで、発光部EUと受光部RUとの間の環境などによって鉛直方向で異なって設定される比率hを参照して、差分受光レベルrc1(校正値)から閾値S1を設定する(工程S16)。次いで、受光素子R1の閾値S1としてデータ記憶部41に記憶する(工程S17)。同様にして工程S11~S17を繰り返すことで、複数(m個)の受光素子R1~Rmのそれぞれに閾値S1~Smを設定する(工程S18)。
【0030】
本実施形態では、閾値Sを設定するにあたり、鉛直方向で異なる比率hを参照している。例えば、鉛直方向上側の比率h1と、これよりも低い鉛直方向下側の比率h2とを参照している。後の車形検出処理とあわせてトップスプレー22から洗浄液が噴射される洗浄処理が行われることで、発光部EUと受光部RUとの間の環境によって、比率h1、h2が鉛直方向で異なって設定される。なお、異なった比率hを参照して閾値Sを設定すると、これを基に検出される車形データも異なる(図6(a)は比率h1、図6(b)は比率h2の場合の車形データ)。閾値設定で参照される比率h1、h2については後述する。
【0031】
<車両検出処理(工程S30)>
車両検出部36では、まず、受光部RUの走査駆動部31を駆動し、発光素子Eを発光させる前の受光素子Rの受光レベルra’の取り込みが行われる。次いで、発光部EUの走査駆動部30と受光部RUの走査駆動部31とを同期駆動し、発光素子Eを発光させた時の受光素子Rの受光レベルrb’の取り込みが行われる。その後、受光レベルra’と受光レベルrb’との差分受光レベルrc’を算出する。
【0032】
次いで、閾値設定処理によってデータ記憶部41に記憶された閾値Sを読み出して、算出した差分受光量レベルrc’と比較する。差分受光レベルrc’が閾値Sよりも低ければ光軸Bを「遮光」と判定し、閾値Sよりも高ければ光軸Bを「通光」と判定する。そして、一走査分の検出が終わると、それを車両データとしてデータ記憶部41に記憶する。同様にして、車両検出処理で行う車両走査は、停車している車両Cに対して本体部11が移動する中で、車両Cの同一位置で複数回実行される。なお、車両Cの同一位置で行う車両走査の回数は、例えば、本体部11の走行速度に応じて決定される。
【0033】
<判定処理(工程S50)>
多数決判定部37では、データ記憶部41に記憶された車両データに関して各光軸Bの判定結果について多数決判定を行う。例えば、車両Cの同一位置において5回走査された場合、発光素子E1と受光素子R1とで形成される光軸B1では通光が3回、遮光が2回のとき、最終的な同一位置の光軸Bでは「通光」と多数決判定する。以上のようにして、全ての光軸B1~Bmについて判定結果が確定されると、一走査分の車両データとして車形データ作成部38に送られる。
【0034】
<車形データ作成(工程S70)>
車形データ作成部38では、多数決判定部37から受けた車両データに含まれる「通光」を「0」、「遮光」を「1」とした2値データを作成する。そして、この2値データを本体部11が所定距離走行するごとに作成し、例えば、本体部11が往行するまで実行して、横軸を本体部11の移動ピッチpx、縦軸を光軸B1~Bmの配列ピッチpyとした行列上に展開された車形データを形成する(例えば、図6(c)参照)。作成した車形データは、データ記憶部41に記憶され、画像処理部40で洗車用データに画像処理される。
【0035】
<画像処理(工程S90)>
画像処理部40では、2値化した車形データに論理フィルターをかけて輪郭線を抽出する。この処理は、車形データにおいて「1」が隣どうし連続して存在している連結成分の、最も下でかつ最も左に位置するセルを追跡開始点とし、この点を中心にその周りに隣接する8セルを右まわりに調べ、「0」から「1」に変わるセルを検出していき、検出したセルを輪郭線とするものである。実際には、本体部11の走行とともに車両Cの車体画像データが順次送られてきて展開されつつ輪郭線を追跡するため、車両全体の画像データ取り込みを完了した時点で全体の輪郭線が抽出される。こうして得られた車両Cの輪郭から、本体部11の前後方向に対する本体部11の起立方向のデータを決定した洗車用データを作成することができる。
【0036】
(洗車装置の動作)
次に、洗車装置10の動作(洗車方法)について説明する。洗車装置10は、ユーザによって操作パネル44(受付装置)で受付がなされると、所定の停車位置に車両Cを停車させるよう表示機などによってユーザに案内を出す。これにより、車両Cはセンサ部26で検出されない所定の停車位置に停車させられる。次いで、前述したように、車形検出処理が行われ、洗車用データが作成される。この洗車用データの作成は、本体部11が往路を走行する間継続して実行され、連続した車両Cの上面輪郭が得られる。
【0037】
車両Cの形状が検出されると、検出された車両Cの輪郭に基づいて洗浄動作が行われる。洗浄動作は、本体部11の走行に伴い、例えば、洗浄液の噴射を伴う車両Cへのブラッシング洗浄処理と、高速風の噴射によるブロー処理が順次実行される。このうち、トップブラシ20およびトップノズル24は、検出された車両Cの輪郭に沿って昇降制御される。洗車動作が終了すると、洗車装置10は表示機などによってユーザに車両Cの退出を促す。なお、一往行中に車形検出処理と洗浄処理を同時に行うことが可能である。
【0038】
(閾値設定の比率)
ここでは、閾値設定の際に参照される比率について説明する。図6は、車形データの説明図であり、(a)は閾値の比率h1が高いもの、(b)は閾値の比率h2が低いもの、(c)は閾値の比率h1、h2を組み合わせたものである。図7は、種々の環境下における閾値の比率を示す表である。
【0039】
従来技術(例えば、特許文献1)では、洗車動作ごとに閾値を設定する際には、同じ環境下にある(光信号の減衰が同じ)としてそれぞれの受光素子Rについて同じ比率hを参照していた。受光素子Rの受光レベルの減衰(例えば70%)が見込まれることを考慮し、閾値の比率(例えば10%)が設定される。例えば、最上部の受光素子Rmの差分受光レベルrcmを1000、最下部の受光素子R1の差分受光レベルrc1を300とした場合、閾値の比率h(例えば10%)を参照すると、最上部の閾値Smが100、最下部の閾値S1が30となる。このように、車両Cの同一位置で起立方向(鉛直方向)に走査駆動される複数の受光素子Rのそれぞれで設定される閾値の比率はすべて同じであった。
【0040】
しかしながら、車形検出を行いながら洗浄処理を行うような環境においては、次のような問題があることを発明者らは見いだした。すなわち、トップスプレー22が洗車装置10の本体部11の上側(梁フレーム11B側)から洗浄液を車両Cに噴射するため、鉛直方向下側(車両C側)に向かって洗浄液が広がってしまう。このため、車両Cのルーフ上(センサ部26の上部)よりもボンネット上(センサ部26の下部)での飛沫が多くなってしまう。また、センサ部26の上部よりも下部の方へ飛沫の飛び込みが多く、また付着する水滴も鉛直方向上側から下側へ流れ落ちるため、センサ部26の下部に水滴の影響が汚れとして生じてしまう。
【0041】
この点、従来技術では閾値の比率hが一律に同じであるので、ルーフ上のアンテナなどの装備品を車形データで検出可能な高い比率h1に設定した場合、センサ部26の下部からは、車両Cのボンネット上で飛沫を検出してしまう(図6(a)参照)。他方、この飛沫を検出しないような低い比率h2(h1より低い)に設定した場合、センサ部26の上部からは、車両Cのルーフ上のアンテナを検出できなくなってしまう(図6(b)参照)。
【0042】
そこで、本実施形態では、閾値Sを設定するにあたり、センサ部26を上下に2分割し、鉛直方向で異なる比率hを参照している。より具体的には、発光部EUと受光部RUとの間の環境や、車両の装備品を考慮して、鉛直方向上側の比率h1と、これよりも低い鉛直方向下側の比率h2とを設定し、これらを参照して閾値Sを設定している。鉛直方向上側(例えば、m個の半分上側)の各受光素子Rには、それぞれの差分受光レベルrc(校正値)に比率h1を乗算した閾値Sが設定される。また、鉛直方向下側(例えば、m個の半分下側)の各受光素子Rには、それぞれの差分受光レベルrc(校正値)に比率h2を乗算した閾値Sが設定される。なお、センサ部26を上下に分割する境界は、m個の半分に限るものではない。
【0043】
このように、センサ部26の上部と下部で異なる閾値の比率h(%)を設定することで、図6(c)に示すように、上部はアンテナなどの装備品を検出し、下部は飛沫を検出しない車形データを得ることができ、検出精度を向上することができる。例えば、最上部の受光素子Rmの差分受光レベルrcmを1000、最下部の受光素子R1の差分受光レベルrc1を300とした場合、閾値の比率h1(例えば30%)、h2(例えば10%)を参照すると、最上部の閾値Smが300、最下部の閾値S1が30となり、素子汚れにも、飛沫がある場合にも有効となる。
【0044】
ここで、最上部の閾値Sm、最下部の閾値S1が設定される手順について図5を参照して概略する。前述したように、最上部の受光素子Rmに、発光部EU(例えば発光素子Em)の発光の有無による受光量から差分受光レベルrcm(第1校正値)を算出する(工程S11~S15)。また、最下部の受光素子R1に、発光部EU(例えば発光素子E1)の発光の有無による受光量から差分受光レベルrc1(第2校正値)を算出する(工程S11~S15)。次いで、比率h1を参照して差分受光レベルrcmから受光素子Rmに閾値Smを設定する(工程S16)。また、比率h2を参照して差分受光レベルrc1から受光素子R1に閾値S2を設定する(工程S16)。
【0045】
また、閾値の比率hの設定は、洗車環境などに応じて行われる。図7に示すように、トップスプレー22から通常の圧力で洗浄液が噴射される場合は、比率h1を30%、比率h2を10%と設定する。また、トップスプレー22から高い圧力で洗浄液が噴射される場合は、比率h1を20%、比率h2を10%と設定する。また、湯気の発生が見込まれる寒冷時の場合は、比率h1を15%、比率h2を10%と設定する。これらは操作パネル44で選択された洗車内容に従って設定したり、温湿度計(不図示)からの温度、湿度に従って設定したりすることができる。
【0046】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0047】
前記実施形態では、地面に停車した車両に対して本体部が移動する両処理装置を説明した。これに限らず、例えば、車両の車長方向に移動可能なキャリア(コンベヤ)に車両を搭乗させて、地面に固定された本体部に対して車両が移動する場合や、車両および本体部が共に移動する場合であってもよい。このため、本発明には、処理対象となる車両に対して本体部が相対移動する関係が含まれる。
【0048】
また、前記実施形態では、センサ部の上部と下部とを2分割して、それぞれ異なる閾値の比率を設定する場合について説明した。これに限らず、発光部と受光部との間の環境や、車両の装備品などを考慮して、鉛直方向に3分割、4分割と多分割に閾値の比率を異ならせて設定してもよい。その際、鉛直方向上側より下側に分割されたものを低く設定したり、逆に鉛直方向上側より下側に分割されたものが高くなるよう設定したりすることもできる。
【符号の説明】
【0049】
10 洗車装置(車両処理装置)、 C 車両、 EU 発光部、 h 比率、 rc 差分受光レベル(校正値)、 RU 受光部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7