(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】表面応力センサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/84 20060101AFI20240105BHJP
G01L 1/00 20060101ALI20240105BHJP
G01L 1/18 20060101ALI20240105BHJP
G01N 19/00 20060101ALI20240105BHJP
H10N 30/30 20230101ALI20240105BHJP
H10N 30/853 20230101ALI20240105BHJP
【FI】
H01L29/84 B
G01L1/00 D
G01L1/18 A
G01N19/00 H
H10N30/30
H10N30/853
(21)【出願番号】P 2021570042
(86)(22)【出願日】2021-01-04
(86)【国際出願番号】 JP2021000037
(87)【国際公開番号】W WO2021141007
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2020002329
(32)【優先日】2020-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】村上 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】辻本 浩行
(72)【発明者】
【氏名】奥野 健二郎
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/059326(WO,A1)
【文献】特開2017-181435(JP,A)
【文献】特開2009-174960(JP,A)
【文献】特開2006-220546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/84
G01N 19/00
G01L 1/00
G01L 1/18
H10N 30/30
H10N 30/853
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着した物質に応じた変形を生じる受容体と、
印加された表面応力によって撓むメンブレンと、を有する表面応力センサであって、
前記メンブレンよりも外側に配置された保持部材と、
前記メンブレンと前記保持部材とを連結する少なくとも一対の連結部と、
前記連結部に起きた撓みに応じて抵抗値が変化する可撓性抵抗と、
前記メンブレンの表面に形成され、且つ複数の凸部又は複数の凹部が連続したパターンで形成されている形成領域側凹凸パターンと、を備え、
前記メンブレンは、前記表面の中心を含む領域である第一表面領域と、前記第一表面領域よりも前記保持部材に近い領域である第二表面領域と、を有し、
前記形成領域側凹凸パターンは、前記第一表面領域に形成され、
前記受容体は、前記形成領域側凹凸パターンを形成する複数の凸部又は複数の凹部の隙間に存在
し、
前記第二表面領域に形成され、且つ複数の凸部又は複数の凹部が連続したパターンで形成されている外部領域側凹凸パターンをさらに備え、
前記外部領域側凹凸パターンは、前記外部領域側凹凸パターンを形成する複数の凸部又は複数の凹部の隙間への溶液の進入を防止することが可能な粗度を有するパターンであり、
前記形成領域側凹凸パターンに形成される凹部の深さは、前記外部領域側凹凸パターンに形成される凹部の深さよりも大きい表面応力センサ。
【請求項2】
前記第二表面領域は、平滑な面である請求項1に記載した表面応力センサ。
【請求項3】
前記外部領域側凹凸パターンは、前記受容体の物性に応じた形状に形成されている請求項
1又は請求項2に記載した表面応力センサ。
【請求項4】
前記外部領域側凹凸パターンを形成する前記凸部又は前記凹部は、前記メンブレンの厚さ方向から見て円形に形成されている請求項
1から請求項3のうちいずれか1項に記載した表面応力センサ。
【請求項5】
前記形成領域側凹凸パターンの粗度は、前記外部領域側凹凸パターンの粗度よりも低い請求項
1から請求項
4のうちいずれか1項に記載した表面応力センサ。
【請求項6】
前記メンブレンの厚さ方向から見た前記形成領域側凹凸パターンを形成する隣り合う前記凸部又は隣り合う前記凹部のピッチは、前記メンブレンの厚さ方向から見た前記外部領域側凹凸パターンを形成する隣り合う前記凸部又は隣り合う前記凹部のピッチよりも大きい請求項1から請求項
5のうちいずれか1項に記載した表面応力センサ。
【請求項7】
前記メンブレンの厚さ方向から見た前記形成領域側凹凸パターンの総面積に対する凹部の面積の割合が、前記メンブレンの厚さ方向から見た前記外部領域側凹凸パターンの総面積に対する凹部の面積の割合よりも大きい請求項1から請求項
6のうちいずれか1項に記載した表面応力センサ。
【請求項8】
前記形成領域側凹凸パターンは、前記受容体の物性に応じた形状に形成されている請求項1から請求項
7のうちいずれか1項に記載した表面応力センサ。
【請求項9】
前記形成領域側凹凸パターンを形成する前記凸部又は前記凹部は、前記メンブレンの厚さ方向から見て円形に形成されている請求項1から請求項
8のうちいずれか1項に記載した表面応力センサ。
【請求項10】
検出基材の表面の中心を含む予め設定した領域である第一表面領域に、複数の凸部又は複数の凹部が連続したパターンで形成された形成領域側凹凸パターンを形成する形成領域側凹凸パターン形成工程
と、
前記表面のうち前記第一表面領域の周囲を取り囲む領域である第二表面領域に複数の凸部又は複数の凹部が連続したパターンで形成された外部領域側凹凸パターンを形成する外部領域側凹凸パターン形成工程と、を備え、
前記形成領域側凹凸パターン形成工程では、前記形成領域側凹凸パターンを形成する複数の凸部又は複数の凹部の隙間に溶液が存在することが可能な粗度を有するように形成領域側凹凸パターンを形成
し、
前記外部領域側凹凸パターン形成工程では、前記外部領域側凹凸パターンを形成する複数の凸部又は複数の凹部の隙間への溶液の進入を防止することが可能な粗度を有するように外部領域側凹凸パターンを形成し、
前記形成領域側凹凸パターン形成工程及び前記外部領域側凹凸パターン形成工程では、前記形成領域側凹凸パターンに形成される凹部の深さが、前記外部領域側凹凸パターンに形成される凹部の深さよりも大きくなるように、前記形成領域側凹凸パターンと前記外部領域側凹凸パターンを形成する表面応力センサの製造方法。
【請求項11】
前記検出基材のうち前記形成領域側凹凸パターンを形成した領域の周囲を除去することで、印加された表面応力によって撓むメンブレン、前記メンブレンの中心よりも外側に配置された保持部材、前記メンブレンと前記保持部材とを連結する少なくとも一対の連結部、及び前記連結部に起きた撓みに応じて抵抗値が変化する可撓性抵抗、を形成する除去工程をさらに備え、
前記形成領域側凹凸パターン形成工程と前記除去工程とを、同時に行う請求項
10に記載した表面応力センサの製造方法。
【請求項12】
前記形成領域側凹凸パターン形成工程と前記外部領域側凹凸パターン形成工程とを、同時に行う請求項
10又は請求項11に記載した表面応力センサの製造方法。
【請求項13】
前記検出基材のうち前記形成領域側凹凸パターンを形成した領域の周囲を除去することで、印加された表面応力によって撓むメンブレン、前記メンブレンの中心よりも外側に配置された保持部材、前記メンブレンと前記保持部材とを連結する少なくとも一対の連結部、及び前記連結部に起きた撓みに応じて抵抗値が変化する可撓性抵抗、を形成する除去工程をさらに備え、
前記外部領域側凹凸パターン形成工程と前記除去工程とを、同時に行う請求項
10から請求項12のうちいずれか1項に記載した表面応力センサの製造方法。
【請求項14】
前記形成領域側凹凸パターン形成工程及び前記外部領域側凹凸パターン形成工程では、前記形成領域側凹凸パターンの粗度が前記外部領域側凹凸パターンの粗度よりも低くなるように前記形成領域側凹凸パターンと前記外部領域側凹凸パターンとを形成する請求項
10から請求項
13のうちいずれか1項に記載した表面応力センサの製造方法。
【請求項15】
前記形成領域側凹凸パターン形成工程及び前記外部領域側凹凸パターン形成工程では、前記検出基材の厚さ方向から見た前記形成領域側凹凸パターンを形成する隣り合う前記凸部又は隣り合う前記凹部のピッチが、前記検出基材の厚さ方向から見た前記外部領域側凹凸パターンを形成する隣り合う前記凸部又は隣り合う前記凹部のピッチよりも大きくなるように、前記形成領域側凹凸パターンと前記外部領域側凹凸パターンを形成する請求項
10から請求項
14のうちいずれか1項に記載した表面応力センサの製造方法。
【請求項16】
前記形成領域側凹凸パターン形成工程及び前記外部領域側凹凸パターン形成工程では、前記検出基材の厚さ方向から見た前記形成領域側凹凸パターンの総面積に対する凹部の面積の割合が、前記検出基材の厚さ方向から見た前記外部領域側凹凸パターンの総面積に対する凹部の面積の割合よりも大きくなるように、前記形成領域側凹凸パターンと前記外部領域側凹凸パターンを形成する請求項
10から請求項
15のうちいずれか1項に記載した表面応力センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面応力センサ、特に、ピエゾ抵抗カンチレバー型センサと比較して高い感度を有する膜型の表面応力センサ(MSS)と、表面応力センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の五感に相当する情報を収集するセンサ、特に、人間が化学物質を受容して感じる味覚や嗅覚のセンサに用いる技術として、例えば、特許文献1に開示されているピエゾ抵抗部材を有する表面応力センサの技術がある。
特許文献1に開示されている技術では、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)溶液を、インクジェットスポッティング技術によって、平坦部材の上(表面)に塗布、乾燥することで溶質の層を形成し、検体を吸着する受容体(レセプター)を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているように、平坦部材の表面における、受容体が形成される受容体形成領域と、受容体形成領域よりも外側の領域(外部領域)が、共に、溶液との親和性が等しい。このため、受容体形成領域に塗布した溶液の一部が、受容体形成領域から外部領域へ逸脱することとなり、受容体の形状を、所望の形状(例えば、正円柱)に制御することが困難であるという問題が発生する可能性がある。
本発明は、従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、受容体を所望の形状に制御する制御性を向上させることが可能な表面応力センサと、表面応力センサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る表面応力センサは、メンブレンと、保持部材と、少なくとも一対の連結部と、可撓性抵抗と、受容体と、形成領域側凹凸パターンを備える。メンブレンは、印加された表面応力によって撓む。保持部材は、メンブレンよりも外側に配置されている。連結部は、メンブレンと保持部材とを連結する。可撓性抵抗は、連結部に起きた撓みに応じて抵抗値が変化する。形成領域側凹凸パターンは、メンブレンの表面に形成され、且つ複数の凸部又は複数の凹部が連続したパターンで形成されている。また、メンブレンの表面は、表面の中心を含む領域である第一表面領域と、第一表面領域よりも保持部材に近い領域である第二表面領域を有する。そして、形成領域側凹凸パターンは、メンブレンの表面のうち第一表面領域に形成され、且つ形成領域側凹凸パターンを形成する複数の凸部又は複数の凹部の隙間に溶液が存在することが可能な粗度を有するパターンである。
【0006】
また、本発明の他の態様に係る表面応力センサの製造方法は、形成領域側凹凸パターン形成工程を備える。形成領域側凹凸パターン形成工程は、検出基材の一方の面である表面の中心を含む予め設定した領域である第一表面領域に、複数の凸部又は複数の凹部が連続したパターンで形成された形成領域側凹凸パターンを形成する工程である。そして、形成領域側凹凸パターン形成工程では、形成領域側凹凸パターンを形成する複数の凸部又は複数の凹部の隙間に溶液が存在することが可能な粗度を有するように、形成領域側凹凸パターンを形成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、メンブレンの表面のうち第一表面領域に形成領域側凹凸パターンを形成することで、第一表面領域の溶液との親和性が、第二表面領域の溶液との親和性よりも高くなる。
これにより、第一表面領域に塗布した溶液が第二表面領域へ逸脱することを抑制することが可能となるため、受容体を所望の形状に制御する制御性を向上させることが可能な表面応力センサと、表面応力センサの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る表面応力センサの構成を表す側面図である。
【
図6】
図1のII線矢視図と同様の矢視図であり、メンブレンの平面図である。
【
図8】
図7において破線で囲んだ範囲VIIIの斜視図である。
【
図9】形成領域側凹凸パターンの形状と親液性との関係を表す図である。
【
図10】形成領域側凹凸パターンの形状と親液性との関係を表す図である。
【
図11】形成領域側凹凸パターンの形状と親液性との関係を表す図である。
【
図12】親液性の実証及び検討に用いるサンプルのメンブレンの構成を表す図である。
【
図14】メンブレン及び外部領域側凹凸パターンの構成の変形例を表す図である。
【
図15】メンブレン及び外部領域側凹凸パターンの構成の変形例を表す図である。
【
図16】メンブレン及び外部領域側凹凸パターンの構成の変形例を表す図である。
【
図17】外部領域側凹凸パターンの変形例を表す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のb-b線断面図である。
【
図18】外部領域側凹凸パターンの変形例を表す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のb-b線断面図である。
【
図19】外部領域側凹凸パターンの変形例を表す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のb-b線断面図である。
【
図20】形成領域側凹凸パターン及び外部領域側凹凸パターンの変形例を表す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のb-b線断面図である。
【
図21】形成領域側凹凸パターン及び外部領域側凹凸パターンの変形例を表す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のb-b線断面図である。
【
図22】形成領域側凹凸パターン及び外部領域側凹凸パターンの変形例を表す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のb-b線断面図である。
【
図23】形成領域側凹凸パターン及び外部領域側凹凸パターンの変形例を表す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のb-b線断面図である。
【
図25】第一イオン注入工程及び第二イオン注入工程を表す図である。
【
図31】
図2のY‐Y断面図であり、形成領域側凹凸パターン形成工程、外部領域側凹凸パターン形成工程、除去工程を表す図である。
【
図32】第一実施形態の変形例を表す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のb-b線断面図である。
【
図33】第一実施形態の変形例を表す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のb-b線断面図である。
【
図34】第一実施形態の変形例を表す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のb-b線断面図である。
【
図35】第一実施形態の変形例を表す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のb-b線断面図である。
【
図41】本発明の第二実施形態に係る表面応力センサの構成を表す側面図である。
【
図46】本発明の第三実施形態に係る表面応力センサの構成を表す平面図である。
【
図49】形成領域側凹凸パターン及び外部領域側凹凸パターンの詳細な構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、本発明の実施形態を以下において説明する。以下の説明で参照する図面の記載において、同一、又は類似の部分には、同一、又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、厚さの比率等は、現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚さや寸法は、以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0010】
さらに、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質や、それらの形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」に、「右」が「左」になることは勿論である。
【0011】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1から
図23を用いて、第一実施形態の構成を説明する。
図1から
図8に表す表面応力センサ1は、例えば、味覚や嗅覚を検出するセンサに用いられており、パッケージ基板2と、接続部4と、検出基材20と、支持基材10とを備える。なお、
図2中では、説明のために、パッケージ基板2及び接続部4の図示を省略している。
【0012】
(パッケージ基板)
パッケージ基板2は、例えば、金属、ポリマー、セラミック材等を用いて形成されており、例えば、ミリメートルオーダーの厚さで形成されている。
【0013】
(接続部)
接続部4は、パッケージ基板2の一方の面(
図1中では、上側の面)に配置されており、例えば、接着剤や半田等を用いて形成されている。
第一実施形態では、一例として、接続部4の形状を、円形に形成した場合について説明する。
【0014】
(検出基材)
検出基材20は、支持基材10の一方の面(
図1中では、上側の面)に積層されており、メンブレン22と、保持部材24と、連結部26とが一体となって形成されている。
第一実施形態では、一例として、検出基材20を形成する材料に、ケイ素を用いた場合について説明する。
また、検出基材20を形成する材料は、支持基材10の線膨張係数と、検出基材20の線膨張係数との差が、1.2×10
-5/℃以下となる材料を用いる。
第一実施形態では、検出基材20を形成する材料と、支持基材10を形成する材料とを、同一の材料とした場合について説明する。
【0015】
(メンブレン)
メンブレン22は、板状に形成されている。
第一実施形態では、一例として、メンブレン22を、円板状に形成した場合について説明する。
また、メンブレン22はn型半導体層である。
また、メンブレン22の一方の面(
図1中では、上側の面)には、酸化膜SO(シリコン酸化膜)が形成されている。なお、以降の説明では、メンブレン22の一方の面を、「メンブレン22の表面」と記載する場合がある。
酸化膜SOは、受容体に対する濡れ性が高い材料であれば、シリコン酸化膜に限定するものではない。
【0016】
さらに、メンブレン22の表面は、
図6に表すように、受容体形成領域(第一表面領域)31と、外部領域(第二表面領域)32を有する。なお、
図6は、
図2と同様、表面応力センサ1の平面図であるが、説明のために、メンブレン22と連結部26のみを図示している。
受容体形成領域31は、メンブレン22の表面の中心を含む領域であり、予め設定する。また、受容体形成領域31は、後述する受容体30を形成する目安となる領域である。なお、受容体形成領域31のうち、受容体30が実際に形成される領域は、受容体形成領域31の全体の領域としてもよく、また、受容体形成領域31の一部のみの領域としてもよい。また、受容体形成領域31のうち、受容体30が実際に形成される領域は、受容体形成領域31の全体に加え、外部領域32の一部を含む領域としてもよい。
第一実施形態では、一例として、受容体形成領域31を、メンブレン22の厚さ方向から見て、真円となる領域に設定した場合について説明する。
【0017】
外部領域32は、受容体形成領域31よりも保持部材24に近い領域であり、予め設定する。
第一実施形態では、一例として、外部領域32を、メンブレン22の厚さ方向から見て、真円の領域である受容体形成領域31の周囲を、全周に亘って同心円状に包囲する領域に設定した場合について説明する。
【0018】
図7に示すように、受容体形成領域31には、形成領域側凹凸パターン52aが形成されており、外部領域32には、外部領域側凹凸パターン52bが形成されている。また、図示を省略するが、形成領域側凹凸パターン52a及び外部領域側凹凸パターン52bは、酸化膜SOの上に形成されている。なお、形成領域側凹凸パターン52a及び外部領域側凹凸パターン52bの説明は後述する。
また、受容体形成領域31には、受容体30(レセプター)が塗布されている。すなわち、受容体形成領域31は、メンブレン22の表面のうち、受容体30が形成される領域である。なお、受容体30を塗布する面積は、広いほうが好ましいため、受容体形成領域31は、広い方が好ましい。
【0019】
受容体30(レセプター)は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)等の樹脂が溶解された溶液(以降の説明では、「PEI溶液」と記載する場合がある)を塗布、乾燥させて形成されている。また、受容体30は、ガスの分子が受容体30に吸着することで歪みが発生する。受容体を溶解する溶液としては、受容体を溶解すれば特に限定されず、一般的な有機溶媒や水を用いることが可能である。
受容体30にガスの分子が吸着して、受容体30に歪みが発生すると、メンブレン22に表面応力が印加され、メンブレン22が撓む。したがって、メンブレン22は、受容体30にガスの分子が吸着すると、印加された表面応力によって撓む。
なお、受容体30の構成は、ガスの分子が吸着することで歪みが発生する構成に限定するものではなく、例えば、磁気によって歪みが発生する構成としてもよい。すなわち、受容体30の構成は、表面応力センサ1の検出対象に応じて、適宜変更してもよい。
【0020】
(保持部材)
保持部材24は、メンブレン22の中心よりも外側に配置されている。また、保持部材24は、四辺形(正方形)の枠状に形成されており、メンブレン22の厚さ方向から見て、隙間を空けてメンブレン22を包囲している。
メンブレン22の厚さ方向から見た視点とは、表面応力センサ1を上方から見た視点(
図1では、矢印IIの方向から見た視点)である。
メンブレン22の厚さ方向から見て、保持部材24の中心は、メンブレン22の中心と重なっている。
また、保持部材24は、接着等、各種の接合技術を用いて、支持基材10のうち、パッケージ基板2と対向する面と反対側の面(
図1中では、上側の面)に接続されている。
【0021】
第一実施形態では、一例として、保持部材24及び支持基材10の形状を、メンブレン22の厚さ方向から見て、支持基材10の外周面と保持部材24の外周面とが、面一である形状に形成した場合について説明する。
すなわち、保持部材24と支持基材10は、メンブレン22の厚さ方向から見て、同じ形状の四辺形である。これは、例えば、保持部材24と支持基材10とを接続した後に、保持部材24及び支持基材10に対してダイシング加工を行うことで実現する。すなわち、メンブレン22の厚さ方向から見て、保持部材24の中心は、支持基材10の中心と重なっている。
【0022】
したがって、支持基材10は、メンブレン22の厚さ方向から見て、メンブレン22及び保持部材24と重なっている。
さらに、接続部4は、メンブレン22の厚さ方向から見て、メンブレン22の少なくとも一部と重なる位置に配置されている。
また、メンブレン22の厚さ方向から見て、接続部4の面積は、メンブレン22の面積よりも小さい。
また、パッケージ基板2は、支持基材10のメンブレン22と対向する面と反対側の面(
図1中では、下側の面)に接続されている。
【0023】
(連結部)
連結部26は、メンブレン22の厚さ方向から見て、帯状に形成されている。
また、連結部26は、メンブレン22の厚さ方向から見て、メンブレン22の中心を通過する仮想的な直線VL1及びVL2と重なる位置に配置されており、メンブレン22と保持部材24とを連結している。
第一実施形態では、一例として、メンブレン22と保持部材24とが、二対である四つの連結部26a~26dで連結されている場合について説明する。
四つの連結部26a~26dは、直線VL1と重なる位置に配置されている一対の連結部26a及び連結部26bと、直線VL1と直交する直線VL2と重なる位置に配置されている一対の連結部26c及び連結部26dを含む。
すなわち、一対の連結部26a及び連結部26bと、一対の連結部26c及び連結部26dは、メンブレン22の厚さ方向から見て、メンブレン22を挟む位置に配置されており、メンブレン22と保持部材24とを連結する。したがって、保持部材24は、連結部26を介して、メンブレン22を保持している。
【0024】
第一実施形態では、一例として、連結部26a及び連結部26bの幅が、連結部26c及び連結部26dの幅よりも狭い場合について説明する。
メンブレン22及び四つの連結部26a~26dと、支持基材10との間には、空隙部40が設けられている。
したがって、支持基材10は、保持部材24に接続されてメンブレン22及び連結部26との間に空隙(空隙部40)を設けて配置されている。これに加え、支持基材10は、メンブレン22の厚さ方向から見て、メンブレン22及び連結部26と重なる。
なお、表面応力センサ1を溶液中で使用する場合には、空隙部40が溶液で満たされてもよい。
空隙部40は、検出基材20の加工途中においてメンブレン22が支持基材10の側へ撓む際に、メンブレン22が支持基材10に張り付くことを防ぐ空間として機能する。
四つの連結部26a~26dには、それぞれ、可撓性抵抗50a~50dが備えられている。
【0025】
(可撓性抵抗)
各可撓性抵抗50は、連結部26に起きた撓みに応じて抵抗値が変化する。
第一実施形態では、一例として、可撓性抵抗50を、ピエゾ抵抗で形成した場合について説明する。
ピエゾ抵抗は、例えば、連結部26へのイオンの注入によって形成されており、メンブレン22が撓むことで連結部26に起きた撓みに応じて変化する抵抗値を有している。
また、可撓性抵抗50は、p型半導体層である。
四つの可撓性抵抗50a~50dは、例えば、
図5に表すように、互いに隣接する可撓性抵抗50(連結部26aと連結部26c及び連結部26d、連結部26bと連結部26c及び連結部26d)が接続されている。これにより、四つの可撓性抵抗50a~50dは、
図5に表すフルホイートストンブリッジを形成している。
【0026】
(ピエゾ抵抗)
以下、ピエゾ抵抗の詳細な構成について説明する。
ピエゾ抵抗の抵抗値(R)と、ピエゾ抵抗の抵抗値の相対抵抗変化(ΔR/R)は、以下の式(1)から(3)で与えられる。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
式(1)から式(3)において、ρはピエゾ抵抗の抵抗率、lはピエゾ抵抗の長さ、wはピエゾ抵抗の幅、tはピエゾ抵抗の厚さであり、σはピエゾ抵抗に誘起される応力、εはピエゾ抵抗に誘起される歪、πはピエゾ抵抗定数である。
また、式(1)から式(3)において、xはカンチレバーの長手方向、yはカンチレバーの横方向、zはカンチレバーの法線方向に対応する。
歪と応力の関係は、一般化されたHookeの法則から導くことが可能である。
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
式(4)から式(6)において、EはカンチレバーのYoung率であり、νはカンチレバーのPoisson比である。したがって、平面応力である(すなわちσz=0)と仮定すれば、相対抵抗変化は、以下の式(7)で記述することが可能である。
【0035】
【0036】
ここで、大きな信号を獲得し、シリコンが有する高いピエゾ係数を最大限利用するために、単結晶Si(100)を用いて形成されることで、p型半導体層を形成するピエゾ抵抗を検討する。ピエゾ抵抗係数は、以下の式(8)及び式(9)で表す関係によって決定される。
【0037】
【0038】
【0039】
式(8)及び式(9)において、π11、π12及びπ44は、結晶の基本ピエゾ抵抗係数である。x方向が[110]に整列したp型Si(100)であり、y方向が[1-10]に整列したp型Si(100)である場合は、π11が、10-11Pa-1を単位として+6.6である。これに加え、π12が、10-11Pa-1を単位として-1.1であり、π44が、10-11Pa-1を単位として+138.1である。
したがって、ピエゾ抵抗係数πxは、71.8×10-11Pa-1と計算され、ピエゾ抵抗係数πyは、-66.3×10-11Pa-1と計算される。また、Eは1.70×1011Paであり、νは0.28である。そして、πx>>(1+2ν)/Eであり、πy>>-1/Eであり、πx≒-πy≒π44/2であるので、式(7)は、以下の式(10)で示すように近似することが可能である。
【0040】
【0041】
したがって、ピエゾ抵抗の信号(すなわち、ΔR/R)は、主にσxとσyの差によって決まる。
【0042】
(形成領域側凹凸パターン)
形成領域側凹凸パターン52aは、メンブレン22の表面のうち、受容体形成領域31に形成されている。
また、形成領域側凹凸パターン52aは、複数の凸部(突起、ピラー)、又は、複数の凹部(孔、ホール)が連続して繰り返されたパターンで形成されている。第一実施形態では、一例として、凸部を円柱状に形成し、凹部を円形の孔で形成した場合について説明する。なお、凸部は、例えば、角柱状やピラミッド形状に形成してもよい。また、凹部は、例えば、多角形の孔や、溝で形成してもよい。
【0043】
第一実施形態では、一例として、形成領域側凹凸パターン52aを、複数の凸部(ピラー)で形成した場合について説明する。
さらに、第一実施形態では、一例として、形成領域側凹凸パターン52aを形成する複数の凸部(ピラー)を、同じ形状(外径及び高さ)で形成した場合について説明する。
また、第一実施形態では、一例として、形成領域側凹凸パターン52aを形成する凸部が、メンブレン22の厚さ方向から見て、円形に形成されている場合について説明する。なお、形成領域側凹凸パターン52aを形成する凸部の「円形」とは、真円に限定するものではなく、楕円等、真円以外の円形状としてもよい。
【0044】
なお、
図7には、説明のために、形成領域側凹凸パターン52aの断面のうち、
図2に表すVII‐VII線の部分のみ断面図を図示することで、形成領域側凹凸パターン52aの断面を、複数の凸部が形成されている構成として図示している。しかしながら、形成領域側凹凸パターン52aの実際の構造は、
図8及び
図9に表すように、複数の凸部が間隔を空けてアレイ状に配置されている構造である。
【0045】
次に、形成領域側凹凸パターン52aの具体的な構成について説明する。
図7に表すように、形成領域側凹凸パターン52aの断面は、凸部が並んだ形状である。
また、形成領域側凹凸パターン52aを形成する凸部の高さHは、例えば、以下の式(11)及び式(12)を用いて設定する。
【0046】
【0047】
【0048】
式(11)及び式(12)において、「P
L」はラプラス圧であり、「γ
L」は気液海面の表面張力である。また、式(11)及び式(12)において、「p」は、
図9及び
図10に表すように、隣り合う凸部のピッチであり、「D」は、凸部の外径である。
また、式(11)及び式(12)における「R」は、
図11に表すように、受容体形成領域31に塗布した溶液の、凸部に対する接触角である。さらに、式(11)及び式(12)における「δ」は、
図11に表すように、隣り合う凸部の間に塗布した溶液の表面のうち、凸部との高さが最も異なる部分(最も凹んだ部分)の、凸部との高さの差(凹みの厚さ)である。
【0049】
式(11)より、凹みの厚さδを小さくするためには、隣り合う凸部のピッチpを狭くすることが好ましく、また、凸部の高さHが高いほど、隣り合う凸部の間に塗布した溶液は、隣り合う凸部の間に形成された空間に侵入しにくくなる。
したがって、式(11)において、δ>Hの関係式が成立するように、形成領域側凹凸パターン52aを形成することで、形成領域側凹凸パターン52aを形成した受容体形成領域31の撥液性を低下させることが可能となる。すなわち、式(11)において、δ>Hの関係式が成立するように、形成領域側凹凸パターン52aを形成することで、形成領域側凹凸パターン52aを形成した受容体形成領域31の親液性を向上させることが可能となる。
【0050】
また、式(12)より、隣り合う凸部のピッチpと凸部の外径Dとの差分が大きくなるほど(隣り合う凸部の間隔を広げるほど)、凹みの厚さδを増大させることが可能となる。さらに、溶液の液量に対して凸部の高さHが低いほど、形成領域側凹凸パターン52aを形成した受容体形成領域31は、撥液性を示すことなく親液性に寄与することとなる。
以上により、形成領域側凹凸パターン52aは、上記の式(11)及び式(12)を用いて、形成領域側凹凸パターン52aを形成した受容体形成領域31が、溶液に対する親液性を有するように形成する。
【0051】
なお、第一実施形態では、一例として、形成領域側凹凸パターン52aを、隣り合う凸部のピッチpを3[μm]、凸部の外径Dを2[μm]、凸部の高さHを0.05[μm]として形成した場合について説明する。これにより、第一実施形態では、受容体形成領域31の親液性を向上させることが可能となる。
また、形成領域側凹凸パターン52aのピッチp、凸部の外径D、凸部の高さHは、受容体30の物性(受容体30形成する溶液の物性)に応じた値に設定する。すなわち、形成領域側凹凸パターン52aは、受容体30の物性に応じた形状に形成されている。
【0052】
ピッチと、高さと、外径を、上述した関係に応じて設定した複数の凸部で形成されるパターンは、親液性を示すことが知られている。これは、公知であるWanzelの式(以下の式(13))で示される表面荒れ(ラフネス)の増加によって親液性が向上するという、物理的にも説明されている現象である。
【0053】
【0054】
以上により、形成領域側凹凸パターン52aは、形成領域側凹凸パターン52aを形成する複数の凸部又は複数の凹部の隙間に、受容体30を形成する溶液が存在することが可能な粗度を有するパターンである。
これは、形成領域側凹凸パターン52aを形成する複数の凸部又は複数の凹部の深さが、溶液の液滴から見て十分に小さい場合は、溶液が複数の凸部又は複数の凹部の全体を被覆することが可能となる。これにより、形成領域側凹凸パターン52aを単一面とみなすことが可能となるため、上述したWanzelの式が成立することに起因する。
【0055】
(外部領域側凹凸パターン)
外部領域側凹凸パターン52bは、メンブレン22の表面のうち、外部領域32に形成されている。
また、外部領域側凹凸パターン52bは、形成領域側凹凸パターン52aと同様、複数の凸部、又は、複数の凹部が連続して繰り返されたパターンで形成されている。第一実施形態では、一例として、凸部を円柱状に形成し、凹部を円形の孔で形成した場合について説明する。なお、凸部は、例えば、角柱状やピラミッド形状に形成してもよい。また、凹部は、例えば、多角形の孔や、溝で形成してもよい。
【0056】
第一実施形態では、一例として、外部領域側凹凸パターン52bを、複数の凹部(ホール)で形成した場合について説明する。
また、第一実施形態では、一例として、外部領域側凹凸パターン52bを形成する凹部が、メンブレン22の厚さ方向から見て、円形に形成されている場合について説明する。なお、外部領域側凹凸パターン52bを形成する凹部の「円形」とは、真円に限定するものではなく、楕円等、真円以外の円形状としてもよい。
【0057】
図7に表すように、外部領域側凹凸パターン52bの断面は、凹部が並んだ形状である。外部領域側凹凸パターン52bが形成する溝の深さは、メンブレン22を厚さ方向へ貫通しない程度の深さである。このように、凹部が並んだ形状で形成されるパターンの表面は、撥液性を示すことが知られており、一般的にロータス効果と呼ばれている。これは、公知であるカッシーの式によって、物理的にも説明されている現象である。
また、外部領域側凹凸パターン52bは、上記の式(11)及び式(12)を用いて、外部領域側凹凸パターン52bを形成した外部領域32が、溶液に対する撥液性を有するように形成する。
【0058】
第一実施形態では、一例として、外部領域側凹凸パターン52bを、隣り合う凹部のピッチを1[μm]、凹部の内径を1[μm]、凹部の深さを1[μm]として形成した場合について説明する。なお、凹部の深さは、例えば、1[μm]以上1.5[μm]以下の範囲内に設定する。
また、外部領域側凹凸パターン52bのピッチ、凹部の内径、凹部の深さは、受容体30の物性(受容体30形成する溶液の物性)に応じた値に設定する。すなわち、外部領域側凹凸パターン52bは、受容体30の物性に応じた形状に形成されている。
【0059】
なお、
図7には、説明のために、外部領域側凹凸パターン52bの断面のうち、
図2に表すVII‐VII線の部分のみ断面図を図示することで、外部領域側凹凸パターン52bの断面を、複数の溝が形成されている構成として図示している。しかしながら、外部領域側凹凸パターン52bの実際の構造は、複数の凹部が間隔を空けてアレイ状に配置されている構造である。
また、外部領域側凹凸パターン52bには、凸部及び凹部のどちらを用いて形成した場合であっても、ロータス効果が発現するが、一般的に、空隙部分が多い方が発現する効果は大きい。このため、凸部を用いて外部領域側凹凸パターン52bを形成すると、凹部を用いて外部領域側凹凸パターン52bを形成した場合と比較して、撥液性はより強くなる。
【0060】
したがって、外部領域側凹凸パターン52bは、外部領域側凹凸パターン52bを形成する複数の凸部又は複数の凹部の隙間への、受容体30を形成する溶液の進入を防止することが可能な粗度を有するパターンである。
これは、外部領域側凹凸パターン52bを形成する複数の凸部又は複数の凹部の深さが、溶液の液滴から見て十分に大きい場合は、溶液が複数の凸部又は複数の凹部に液が浸み込まない。このため、外部領域側凹凸パターン52bを複合面とみなすことが可能となるため、公知であるCassie-Baxterの式が成立することで、上述したロータス効果により溶液が撥液することに起因する。
【0061】
以上により、形成領域側凹凸パターン52aは、受容体形成領域31の粗度が、外部領域32の粗度よりも低くなるパターンで形成されている。これに加え、外部領域側凹凸パターン52bは、外部領域32の粗度が、受容体形成領域31の粗度よりも高くなるパターンで形成されている。すなわち、形成領域側凹凸パターン52aの粗度は、外部領域側凹凸パターン52bの粗度よりも低い。
したがって、形成領域側凹凸パターン52aは、受容体形成領域31の親液性が外部領域32の親液性よりも高くなるパターンである。
【0062】
上述したように、受容体30は、メンブレン22の中心付近に対し、インクジェットスポッティング等によってPEI溶液等を塗布することで形成される。
このため、メンブレン22の最表層に形成された酸化膜SOは濡れ性が高いために、メンブレン22の表面に塗布されたPEI溶液は、メンブレン22の表面に密着性良く分布する。
【0063】
これに加え、メンブレン22の表面に塗布されたPEI溶液は、酸化膜SOが有する高い濡れ性と、形成領域側凹凸パターン52aが有する親液性により、受容体形成領域31の内部において、効率的に拡張する。
一方、メンブレン22の表面に塗布されたPEI溶液は、酸化膜SOが有する高い濡れ性と、形成領域側凹凸パターン52aが有する親液性により、メンブレン22の外周に向かって流出しやすくなる。しかしながら、メンブレン22の外周に向かうPEI溶液は、外部領域側凹凸パターン52bが有する撥液性によって流出が遮られることとなる。これにより、受容体形成領域31に対し、受容体30を効率良く塗布することが可能となる。
【0064】
(親液性の実証及び検討)
以下、
図12及び
図13を用いて、形成領域側凹凸パターン52aを形成した受容体形成領域31が有する親液性を実証及び検討した結果について説明する。
親液性の実証及び検討には、サンプルのメンブレンと、比較対象のメンブレンを用いた。
サンプルのメンブレンは、
図12及び
図13に示すように、受容体形成領域31に、複数の凸部(ピラー)が連続して繰り返されたパターンの形成領域側凹凸パターン52aを形成した。これに加え、サンプルのメンブレンは、
図12及び
図13に示すように、外部領域32に、複数の凹部(ホール)が連続して繰り返されたパターンの外部領域側凹凸パターン52bを形成した。
【0065】
なお、凸部の外径は2[μm]に設定し、凹部の内径は1[μm]に設定し、凸部の高さ及び凹部の深さは50[μm]に設定した。
比較対象のメンブレンは、受容体形成領域31に形成領域側凹凸パターン52aを形成せず、受容体形成領域31を、外部領域側凹凸パターン52bを形成する凹部の外縁と同じ高さの均一な面で形成した。
そして、サンプルのメンブレンと比較対象のメンブレンに対し、受容体形成領域31に2滴の溶液を1回のみ塗布したところ、サンプルのメンブレンでは、比較対象のメンブレンに比べ、溶液が広範囲に拡張することが確認された。
【0066】
(接触角Rと形成領域側凹凸パターン52aとの関係)
接触角Rと形成領域側凹凸パターン52aとの関係は、形成領域側凹凸パターン52aを複数の凸部で形成する場合、例えば、形成領域側凹凸パターン52aのフラットな面(底面)に対して、接触角Rを1/2倍(10[°]以下)とする。一方、形成領域側凹凸パターン52aを複数の凹部で形成する場合、例えば、形成領域側凹凸パターン52aのフラットな面(外縁面)に対して、接触角Rを2倍以上2.5倍以下の範囲内(40[°]以上)とする。
【0067】
(メンブレン、形成領域側凹凸パターン、外部領域側凹凸パターンの変形例)
したがって、メンブレン22及び外部領域側凹凸パターン52bの構成の変形例としては、例えば、
図14から
図16に表す構成がある。
すなわち、
図14(a)に表すように、外部領域側凹凸パターン52bが、全周に亘って配置されず、一部に切れ目がある構成としてもよく、
図14(b)に表すように、外部領域側凹凸パターン52bを四角形に配置してもよい。また、
図14(c)に表すように、四角形に配置した外部領域側凹凸パターン52bの一部に、切れ目がある構成としてもよい。
【0068】
外部領域側凹凸パターン52bの一部に切れ目がある構成は、例えば、受容体30を形成するPEI溶液の粘度により、必ずしも全周に亘って外部領域側凹凸パターン52bを配置する必要がない場合に適用することが可能である。なお、外部領域側凹凸パターン52bの一部に切れ目がある構成では、切れ目がある部分において、隣り合う凸部又は凹部の間隔が、切れ目が無い部分と比べて十分に大きいことにより、巨視的には、外部領域側凹凸パターン52bに切れ目があるように見える。
【0069】
また、
図15(a)から
図15(c)に表すように、形成領域側凹凸パターン52a及び外部領域側凹凸パターン52bの形状を工夫することにより、受容体30が特定の形状に形成されるようにしてもよい。
例えば、
図15(a)に表すように、形成領域側凹凸パターン52aを、メンブレン22の中心部を含む十字の領域を有する形状に形成してもよい。これに加え、外部領域側凹凸パターン52bを、外周がメンブレン22の外周に沿った円形状に形成してもよい。ここで、
図15(a)では、十字の端部が、四つの連結部26近傍に向かって形成された例を示している。この場合、受容体30は、形成領域側凹凸パターン52aを形成した十字の受容体形成領域31上に、例えば、十字形状に形成される。このため、可撓性抵抗50a~50dが形成された連結部26の近傍に、受容体30を選択的に形成することが可能となり、メンブレン22の撓みを効率的に可撓性抵抗50に伝えることが可能となる。これにより、塗布する受容体30の量を減らすことも可能である。
【0070】
また、
図15(b)に表すように、十字の端部が、四つの連結部26間において、メンブレン22が有する円弧状の外周に向かって形成された例を示している。この場合、受容体30は、形成領域側凹凸パターン52aを形成した十字の受容体形成領域31上に、例えば、十字形状に形成される。
図15(b)に表す形成領域側凹凸パターン52a及び外部領域側凹凸パターン52bを形成した場合、受容体30を、可撓性抵抗50a~50dが形成された連結部26から離れた領域へ、選択的に形成することが可能となる。これにより、表面応力センサ1の感度バラつきを低減することが可能となる。
【0071】
また、
図15(c)に表すように、円環状の形成領域側凹凸パターン52aを形成してもよい。これに加え、形成領域側凹凸パターン52aよりも外側に円環状の外部領域側凹凸パターン52bを形成し、メンブレン22の中心を含む領域に円形状の外部領域側凹凸パターン52bを形成してもよい。
図15(c)の場合、受容体30は、形成領域側凹凸パターン52aを形成した円環状の受容体形成領域31上に形成される。
図15(c)に表す形成領域側凹凸パターン52a及び外部領域側凹凸パターン52bを形成した場合、可撓性抵抗50a~50dが形成された連結部26の近傍に、受容体30を選択的に形成することが可能となる。これにより、表面応力センサ1の検出精度を向上させることが可能となる。これに加え、検出精度のバラつきを低減させることが可能となる。
【0072】
なお、外部領域側凹凸パターン52bは、外周がメンブレン22の外周に沿った円形状であり、メンブレン22の中心部において形成領域側凹凸パターン52aを形成する受容体形成領域31の形状は、上述した形状に限られない。また、受容体形成領域31の形状は、例えば、多角形状や、メンブレン22の中心から外周に向け放射状に広がる形状等、表面応力センサ1のセンサ感度を十分に維持することが可能であれば、いずれの形状としてもよい。
【0073】
また、
図16(a)から
図16(c)に表すように、メンブレン22の形状を四角形としてもよい。この場合で、
図16(a)に表すように、外部領域側凹凸パターン52bを四角形に配置してもよく、
図16(b)に表すように、四角形に配置した外部領域側凹凸パターン52bの一部に、切れ目がある構成としてもよい。また、
図16(c)に表すように、外部領域側凹凸パターン52bを、全周に亘って同心円状に配置してもよい。なお、特に図示しないが、
図16(c)に表すような外部領域側凹凸パターン52bの一部に、切れ目がある構成としてもよい。
【0074】
外部領域側凹凸パターン52bの一部に切れ目がある構成を採用する場合は、
図14(a)、
図14(c)及び
図16(b)に表すように、切れ目の位置を、メンブレン22の中心と連結部26との間に配置しないことが好適である。この構成であれば、例えば、受容体30を形成するPEI溶液が、切れ目から外へ出た場合であっても、PEI溶液が可撓性抵抗50に接触する可能性を低減させることが可能となる。
また、
図14(b)、
図14(c)、
図16(a)、
図16(b)に表すように、受容体30の形状を四角形としてもよい。
なお、
図14から
図16には、メンブレン22の厚さ方向から見て、メンブレン22と、保持部材24と、連結部26とに囲まれた空隙部となっている領域から、検出基材20の下方に配置されている支持基材10が見えている状態を図示している。
【0075】
また、外部領域側凹凸パターン52bは、外部領域32の粗度が、受容体形成領域31の粗度よりも高くなるパターンであれば、
図17に表すように、複数の凸部で形成してもよい。この場合、
図17(b)に表すように、外部領域側凹凸パターン52bを形成する凸部は、形成領域側凹凸パターン52aを形成する凸部よりも高くする。
また、形成領域側凹凸パターン52aを複数の凹部で形成した場合、外部領域側凹凸パターン52bは、外部領域32の粗度が、受容体形成領域31の粗度よりも高くなるパターンであれば、
図18に表すように、複数の凹部で形成してもよい。この場合、
図18(b)に表すように、外部領域側凹凸パターン52bを形成する凹部は、形成領域側凹凸パターン52aを形成する凹部よりも深くする。
【0076】
また、形成領域側凹凸パターン52aを複数の凹部で形成した場合、外部領域側凹凸パターン52bは、外部領域32の粗度が、受容体形成領域31の粗度よりも高くなるパターンであれば、
図19に表すように、複数の凸部で形成してもよい。この場合、
図19(b)に表すように、外部領域側凹凸パターン52bを形成する凸部の高さは、形成領域側凹凸パターン52aを形成する凹部の深さよりも大きくする。
なお、第一実施形態で説明した形成領域側凹凸パターン52a及び外部領域側凹凸パターン52bは、メンブレン22の表面が酸化膜SOに覆われており、親水性の溶液で形成される受容体30に対しての濡れ性が高い構成である。なお、親水性の溶液とは、例えば、エタノールやイソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、アセトン、DMF等、水と相溶する溶媒である。
【0077】
しかしながら、疎水性の溶液(例えば、1,1,2,2-テトラクロロエタンやジクロロメタン、トルエン、ヘキサン等)で受容体30を形成する場合では、例えば、シリコンの方が酸化膜SOよりも濡れ性が高い。このため、メンブレン22の表面には、
図20から
図23に表すように、シリコンが露出していることが好ましい。なお、
図20は、
図8に表す構成に対し、形成領域側凹凸パターン52a及び外部領域側凹凸パターン52bを酸化膜で覆わずに、シリコンを露出させた構成を表す。同様に、
図21から
図23は、
図17から
図19に表す構成に対し、形成領域側凹凸パターン52a及び外部領域側凹凸パターン52bを酸化膜で覆わずに、シリコンを露出させた構成を表す。
【0078】
(支持基材)
支持基材10は、パッケージ基板2の一方の面に配置されており、接続部4を介して、パッケージ基板2に取り付けられている。
第一実施形態では、一例として、支持基材10の中心が、接続部4を配置する位置と重なる場合について説明する。
支持基材10の面積(
図1中では、支持基材10を上下方向から見た支持基材10の面積)は、接続部4の面積よりも大きい。
支持基材10の厚さ(
図1中では、支持基材10の上下方向への長さ)は、80[μm]以上に設定されている。なお、支持基材10の厚さは、80[μm]以上750[μm]以下の範囲内に設定してもよい。
支持基材10を形成する材料としては、例えば、ケイ素(Si:シリコン)、サファイア、ガリウムヒ素、ガラス、石英のうちいずれかを含む材料を用いることが可能である。
【0079】
第一実施形態では、一例として、支持基材10を形成する材料として、ケイ素を用いた場合について説明する。
これにより、第一実施形態では、支持基材10の線膨張係数を、5.0×10-6/℃以下としている。
以下に、支持基材10を形成する材料として用いることが可能な材料の、線膨張係数を記載する。
【0080】
ケイ素の線膨張係数は、常温以上1000℃以下の環境下で、3.9×10
-6/℃以下である。
サファイアの線膨張係数は、0℃以上1000℃以下の環境下で、9.0×10
-6/℃以下である。
ガリウムヒ素(GaAs)の線膨張係数は、0K以上300K以下の環境下で、6.0×10
-6/℃以下である。
ガラス(フロートガラス)の線膨張係数は、0℃以上300℃以下の環境下で、8.5×10
-6/℃以下~9.0×10
-6/℃以下である。
石英の線膨張係数は、0℃以上300℃以下の環境下で、0.59×10
-6/℃以下である。なお、石英の線膨張係数は、300℃の近辺にピークが有る。
また、支持基材10のうち、検出基材20と対向する面と、空隙部40と対向する面には、
図3及び
図4に示すように、酸化膜SOが形成されている。
【0081】
(表面応力センサの製造方法)
図1から
図23を参照しつつ、
図24から
図31を用いて、表面応力センサ1の製造方法を説明する。なお、
図24から
図30の断面図は、
図5のX-X線断面図に対応する。また、
図31の断面図は、
図2のY-Y断面図に対応する。
表面応力センサ1の製造方法は、積層体形成工程と、第一イオン注入工程と、第二イオン注入工程と、熱処理工程と、配線層形成工程と、酸化膜形成工程を備える。これに加え、表面応力センサ1の製造方法は、形成領域側凹凸パターン形成工程と、外部領域側凹凸パターン形成工程と、除去工程と、受容体形成工程を備える。
【0082】
(積層体形成工程)
積層体形成工程では、まず、
図24(a)に表すように、支持基材10の材料となる第一シリコン基板60の一方の面に、リソグラフィー及びエッチング技術を用いて凹部62(トレンチ)を形成する。凹部62の深さは、例えば、7[μm]に設定する。その後、熱酸化により、凹部62を含む第一シリコン基板60の一方の面に、酸化膜SO(シリコン酸化膜)を形成する。酸化膜SOの厚さは、例えば、1[μm]に設定する。
次に、凹部62と酸化膜SOを形成した第一シリコン基板60に対し、検出基材20の材料となる第二シリコン基板64を、接着等、各種の接合技術を用いて貼り合わせることで、
図24(b)に表すように、積層体66(Cavityウェーハ)を形成する。
上記のように、積層体形成工程を行うことで、積層体66の所定の位置には、上下左右をシリコン(第一シリコン基板60、第二シリコン基板64)によって囲まれた空隙部40が形成される。
以上により、積層体形成工程では、支持基材10の一方の面に凹部62を形成し、さらに、支持基材10へ凹部62を覆うように検出基材20を貼り合わせることで、支持基材10と検出基材20との間に空隙部40が設けられた積層体66を形成する。
【0083】
(第一イオン注入工程)
第一イオン注入工程では、まず、
図25に表すように、第二シリコン基板64の上側の面を酸化させて第一のシリコン酸化膜68aを形成し、フォトレジストのパターン(図示せず)を用いて、可撓性抵抗領域70に対し、選択的に第一のイオンを注入する。
以上により、第一イオン注入工程では、検出基材20の支持基材10と対向する面と反対側の面のうち、検出基材20の中心を含む予め設定した領域よりも外側の選択した一部の領域(可撓性抵抗領域70)に、第一のイオンを注入する。
【0084】
(第二イオン注入工程)
第二イオン注入工程では、第一イオン注入工程で用いたフォトレジストを除去し、さらに、第一イオン注入工程で用いたものとは異なるフォトレジストのパターン(図示せず)を形成し、
図25に表すように、低抵抗領域72に第二のイオンを注入する。
以上により、第二イオン注入工程では、検出基材20の第一のイオンを注入した領域(可撓性抵抗領域70)よりも外側の選択した領域に、第二のイオンを注入する。
【0085】
(熱処理工程)
熱処理工程では、第二イオン注入工程で用いたフォトレジストを除去し、さらに、第一のイオン及び第二のイオンの活性化を目的として、積層体66に熱処理(アニール処理)を施す。積層体66に熱処理を施した後は、第一のシリコン酸化膜68aを除去する。
以上により、熱処理工程では、第一のイオン及び第二のイオンを注入した積層体66を熱処理することで、第一のイオンを注入した領域に可撓性抵抗領域70を形成するとともに、第二のイオンを注入した領域に低抵抗領域72を形成する。
【0086】
(配線層形成工程、酸化膜形成工程)
配線層形成工程では、
図26(a)に表すように、第二シリコン基板64の上側の面に対し、シリコン窒化膜74と第二のシリコン酸化膜68bとを順に積層する。そして、通常のリソグラフィー及び酸化膜エッチングにより、
図26(b)に表すように、第二のシリコン酸化膜68b及びシリコン窒化膜74へ、ホール76を形成する。
次に、
図27(a)に表すように、第二のシリコン酸化膜68bの上へ、Ti及びTiNで形成した積層膜78をスパッタリングによって形成し、熱処理を施す。積層膜78は、Al等の金属膜がSiへ異常拡散することを防止する役割を持つ、いわゆるバリアメタルであり、熱処理を施すことによって、ホール76の底部に存在するSiとTiの界面がシリサイド化して、低抵抗な接続を形成することが可能となる。
さらに、
図27(b)に表すように、積層膜78の上へ、スパッタリングによって、Al等の金属膜80を積層する。
【0087】
次に、フォトリソグラフィー及びエッチング技術を用いて金属膜80をパターニングすることにより、
図28(a)に表すような配線層82を形成する。さらに、
図28(b)に表すように、絶縁層として第三のシリコン酸化膜68cを積層する。
その後、
図29(a)に表すように、可撓性抵抗領域70及び検出基材の中心を含む予め設定した領域(後にメンブレンとなる領域)であるメンブレン設定領域84以外を覆うようなフォトレジストのパターン(図示せず)を形成する。さらに、エッチング技術によって、可撓性抵抗領域70及びメンブレン設定領域84に形成されている第三のシリコン酸化膜68c及び第二のシリコン酸化膜68bを除去する。そして、メンブレン設定領域84以外を覆うようなフォトレジストのパターン(図示せず)を形成して、
図29(b)に表すように、メンブレン設定領域84のシリコン窒化膜74を除去する。
【0088】
その後、酸化膜形成工程として、
図30(a)に表すように、第三のシリコン酸化膜68c及び可撓性抵抗領域70及びメンブレン設定領域84の上へ、第四のシリコン酸化膜68dを積層する。
酸化膜形成工程では、受容体形成領域31及び外部領域32に、酸化膜を形成する。なお、受容体形成領域31及び外部領域32を形成する領域の一方のみに、酸化膜を形成してもよい。
次に、
図30(b)に表すように、可撓性抵抗50からの出力を得るためのPAD86を、通常のフォトリソグラフィー及びエッチング技術によって形成する。
以上により、配線層形成工程では、可撓性抵抗50と電気的に接続された配線層82を形成する。
【0089】
(形成領域側凹凸パターン形成工程、外部領域側凹凸パターン形成工程、除去工程)
形成領域側凹凸パターン形成工程では、受容体形成領域31に、形成領域側凹凸パターン52aを形成する。
外部領域側凹凸パターン形成工程では、外部領域32に、外部領域側凹凸パターン52bを形成する。
除去工程では、メンブレン設定領域84の一部をエッチングにて切り取ることで、二対である四つの連結部26a~26dをパターニングする。
第一実施形態では、一例として、形成領域側凹凸パターン形成工程と、外部領域側凹凸パターン形成工程と、除去工程とを、同時に行う場合について説明する。
【0090】
以下、形成領域側凹凸パターン形成工程、外部領域側凹凸パターン形成工程、除去工程の詳細を、
図24から
図30を参照しつつ、
図31を用いて説明する。なお、
図31では、説明のために、
図24から
図30までに図示していた構成のうち、第一シリコン基板60、第二シリコン基板64、第四のシリコン酸化膜68d以外の図示を省略する。
まず、
図31(a)に表すように、第四のシリコン酸化膜68dの上に、さらに、第5のシリコン酸化膜68eを積層する。
第5のシリコン酸化膜68eの厚さは、例えば、50[nm]に設定する。
【0091】
次に、メンブレン設定領域84の周囲であって、低抵抗領域72及び可撓性抵抗領域70(後に連結部26となる領域)以外の領域(以下、除去領域85とする)が露出するような、フォトレジストのパターン(図示せず)を形成する。
これに加え、受容体形成領域31のうち、形成領域側凹凸パターン52aを形成する凸部以外の領域(以下、平面領域87とする)が露出するような、フォトレジストのパターン(図示せず)を形成する。第一実施形態では、平面領域87が露出するようなフォトレジストのパターンを、形成領域側凹凸パターン52aを形成する凸部の外径が2[μm]となるように形成する。
【0092】
なお、除去領域85が露出するようなフォトレジストのパターンとして形成する開口部は、平面領域87が露出するようなフォトレジストのパターンとして形成する開口部よりも、開口面積が大きい。また、除去領域85が露出するようなフォトレジストのパターンと、平面領域87が露出するようなフォトレジストのパターンは、例えば、同一のマスクによって同時に形成する。
その後、
図31(b)に表すように、エッチング技術によって、除去領域85の第四のシリコン酸化膜68d及び第5のシリコン酸化膜68eと、平面領域87の第四のシリコン酸化膜68d及び第5のシリコン酸化膜68eを除去する。
【0093】
次に、外部領域32のうち、除去領域85が露出するようなフォトレジストのパターンと、外部領域側凹凸パターン52bを形成する凹部の領域(以下、凹部領域88とする)が露出するような、フォトレジストのパターン(図示せず)を形成する。
第一実施形態では、凹部領域88が露出するようなフォトレジストのパターンを、外部領域側凹凸パターン52bを形成する凹部の内径が1[μm]となるように形成する。
なお、除去領域85が露出するようなフォトレジストのパターンとして形成する開口部は、凹部領域88が露出するようなフォトレジストのパターンとして形成する開口部よりも、開口面積が大きい。また、除去領域85が露出するようなフォトレジストのパターンと、凹部領域88が露出するようなフォトレジストのパターンは、例えば、同一のマスクによって同時に形成する。
【0094】
続いて、例えば、反応性イオンエッチングによって、
図31(c)に表すように、除去領域85の第二シリコン基板64が貫通するまでエッチングを施すと共に、エッチングを施す。このとき、開口面積の大小関係と、シリコンに比べてシリコン酸化膜のドライエッチングの速度が遅いことから、受容体形成領域31は、第二シリコン基板64の途中までしかエッチングが進まない。
最後に、アッシング等によってフォトレジストを除去することで、受容体形成領域31に形成領域側凹凸パターン52aを形成するとともに、外部領域32に外部領域側凹凸パターン52bを形成する。
【0095】
以上により、形成領域側凹凸パターン形成工程及び外部領域側凹凸パターン形成工程では、形成領域側凹凸パターン52aの粗度が外部領域側凹凸パターン52bの粗度よりも低くなるように、形成領域側凹凸パターン52aと外部領域側凹凸パターン52bとを形成する。
したがって、形成領域側凹凸パターン形成工程では、形成領域側凹凸パターン52aを形成する複数の凸部又は複数の凹部の隙間に、受容体30を形成する溶液が存在することが可能な粗度を有するように、形成領域側凹凸パターン52aを形成する。すなわち、形成領域側凹凸パターン形成工程では、受容体形成領域31の親液性が外部領域32の親液性よりも高くなるように、形成領域側凹凸パターン52aを形成する。
【0096】
さらに、外部領域側凹凸パターン形成工程では、外部領域32の粗度が受容体形成領域31の粗度よりも高くなるように、外部領域側凹凸パターン52bを形成する。これにより、外部領域側凹凸パターン形成工程では、外部領域側凹凸パターン52bを形成する複数の凸部又は複数の凹部の隙間への、受容体30を形成する溶液の進入を防止することが可能な粗度を有するように、外部領域側凹凸パターン52bを形成する。
また、形成領域側凹凸パターン形成工程と、外部領域側凹凸パターン形成工程と、除去工程とを、同時に行う。
【0097】
(受容体形成工程)
受容体形成工程では、外部領域側凹凸パターン52bを形成した外部領域32に囲まれているとともに、形成領域側凹凸パターン52aを形成した受容体形成領域31に、PEI溶液等を塗布し、乾燥させる。これにより、吸着した物質に応じた変形を生じる受容体30を形成する。
【0098】
(動作・作用)
図1から
図31を参照して、第一実施形態の動作と作用を説明する。
表面応力センサ1を、例えば、嗅覚センサとして用いる際には、匂い成分を含んだガスの雰囲気中に受容体30を配置し、ガスが含む匂い成分を、受容体30に吸着させる。
受容体30にガスの分子が吸着して、受容体30に歪みが発生すると、メンブレン22に表面応力が印加され、メンブレン22が撓む。
保持部材24は四辺形に形成されてメンブレン22を包囲しており、連結部26は、メンブレン22と保持部材24を両端部で連結している。このため、連結部26のうち、メンブレン22に連結している端部は自由端となっており、保持部材24に連結している端部は固定端となっている。
【0099】
したがって、メンブレン22が撓むと、連結部26に、受容体30に発生した歪みに応じた撓みが起きる。そして、連結部26に起きた撓みに応じて、可撓性抵抗50が有する抵抗値が変化し、抵抗値の変化に応じた電圧又は電流の変化がPAD86から出力され、コンピュータ等におけるデータ検出に用いられる。
ここで、従来の構成を備える表面応力センサ、すなわち、受容体形成領域31と外部領域32が、共に、溶液との親和性が等しい構成のメンブレン22に受容体30を形成する場合には、以下の問題が発生する。
【0100】
受容体形成領域31に塗布した溶液の一部が、受容体形成領域31から外部領域32へ逸脱する可能性があるため、受容体の形状を、所望の形状(例えば、正円柱)に制御することが困難であり、受容体の形状が、所望の形状から崩れた形状となる可能性がある。
受容体の形状が、所望の形状から崩れた形状となった場合、ガスの分子が吸着して受容体30に発生する歪みが、設計値等の想定していた値とは異なることとなる。このため、嗅覚センサとして用いる際に、受容体30にガスの分子が吸着すると、受容体30に発生した歪みに応じて連結部26に起きる撓みが、想定していた撓みとは異なることとなり、可撓性抵抗50で発生する抵抗変化が、想定していた値と異なる。これは、センサとしての感度が落ちることを意味する。
したがって、従来の構成を備える表面応力センサでは、表面応力センサの感度が低下することが懸念される。
【0101】
これに対し、第一実施形態の表面応力センサ1であれば、受容体形成領域31に、形成領域側凹凸パターン52aが形成されている。そして、形成領域側凹凸パターン52aは、受容体形成領域31の粗度が外部領域32の粗度よりも低くなるパターンである。すなわち、形成領域側凹凸パターン52aは、形成領域側凹凸パターン52aを形成する複数の凸部又は複数の凹部の隙間に、受容体30を形成する溶液が存在することが可能な粗度を有するパターンである。
これに加え、外部領域32に、外部領域側凹凸パターン52bがメンブレン22に対して同心円状に形成されている。そして、外部領域側凹凸パターン52bは、ロータス効果により撥液作用を有し、外部領域32の粗度が受容体形成領域31の粗度よりも高くなるパターンである。
このため、受容体30の形状を、所望の形状(例えば、正円柱)に制御する制御性を向上させることが可能となる。したがって、表面応力センサ1の感度が劣化することはない。
【0102】
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0103】
(第一実施形態の効果)
第一実施形態の表面応力センサ1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)印加された表面応力によって撓むメンブレン22と、メンブレン22よりも外側に配置された保持部材24と、メンブレン22と保持部材24とを連結する連結部26と、連結部26に起きた撓みに応じて抵抗値が変化する可撓性抵抗50を備える。
これに加え、メンブレン22の表面に形成され、且つ複数の凸部又は複数の凹部が連続したパターンで形成されている形成領域側凹凸パターン52aを備える。そして、形成領域側凹凸パターン52aは、メンブレン22の表面のうち受容体形成領域31に形成されている。また、形成領域側凹凸パターン52aは、形成領域側凹凸パターン52aを形成する複数の凸部又は複数の凹部の隙間に、受容体30を形成する溶液が存在することが可能な粗度を有するパターンである。
【0104】
このため、メンブレン22の表面のうち受容体形成領域31に形成領域側凹凸パターン52aを形成することで、受容体形成領域31の溶液との親和性が、外部領域32の溶液との親和性よりも高くなる。
これにより、受容体形成領域31に塗布した溶液が、形成領域側凹凸パターン52aにより向上した親液性(Wanzel効果)によって、受容体形成領域31において拡張しやすくなる。これに加え、外部領域32が有する撥液性により、受容体形成領域31に塗布した溶液が外部領域32へ逸脱することを抑制することが可能となる。
その結果、受容体30を所望の形状に制御する制御性を向上させることが可能な、表面応力センサ1を提供することが可能となる。
【0105】
また、受容体形成領域31の溶液との親和性が高いため、受容体形成領域31に塗布する溶液を追加した場合であっても、形成領域側凹凸パターン52aにより向上した親液性によって、受容体形成領域31において拡張しやすくなる。これに加え、外部領域32が有する撥液性により、受容体形成領域31に塗布した溶液が外部領域32へ逸脱することを抑制することが可能となる。
したがって、受容体形成領域31に塗布する溶液を追加した場合であっても、溶液が受容体形成領域31の中で円滑に拡張する。このため、受容体30に、膜厚が大きい部分と膜厚が小さい部分とが形成される場合であっても、膜厚が大きい部分と膜厚が小さい部分との厚さの差を制御することが可能となり、受容体30を所望の形状に制御する制御性を向上させることが可能となる。
【0106】
(2)外部領域32に形成され、且つ複数の凸部又は複数の凹部が連続したパターンで形成されている外部領域側凹凸パターン52bを備える。また、外部領域側凹凸パターン52bは、外部領域側凹凸パターン52bを形成する複数の凸部又は複数の凹部の隙間への、受容体30を形成する溶液の進入を防止することが可能な粗度を有するパターンである。
このため、メンブレン22の表面のうち外部領域32に、受容体形成領域31よりも粗度が高くなる外部領域側凹凸パターン52bを形成することで、外部領域32の溶液との親和性が、受容体形成領域31の溶液との親和性よりも低くなる。
【0107】
これにより、受容体形成領域31に塗布した溶液が、受容体形成領域31から外部領域32へ逸脱することを、外部領域側凹凸パターン52bにより向上した外部領域32の撥液性によって、抑制することが可能となる。
その結果、外部領域側凹凸パターン52bを形成しない構成と比較して、受容体30を所望の形状に制御する制御性をさらに向上させることが可能となる。
【0108】
(3)受容体形成領域31の上に形成され、吸着した物質に応じた変形を生じる受容体30を備え、外部領域側凹凸パターン52bが、受容体30の物性に応じた形状に形成されている。
その結果、外部領域側凹凸パターン52bの撥液性を、受容体30の物性に応じた値とすることが可能となる。
【0109】
(4)外部領域側凹凸パターン52bを形成する凸部又は凹部が、メンブレン22の厚さ方向から見て、円形に形成されている。
その結果、外部領域側凹凸パターン52bの形成が容易となる。
【0110】
(5)形成領域側凹凸パターン52aの粗度が、外部領域32の粗度よりも低い。
その結果、受容体形成領域31の溶液との親和性が、外部領域32の溶液との親和性よりも高くなるため、受容体30を所望の形状に制御する制御性を向上させることが可能となる。
【0111】
(6)受容体形成領域31の上に形成され、吸着した物質に応じた変形を生じる受容体30を備え、形成領域側凹凸パターン52aが、受容体30の物性に応じた形状に形成されている。
その結果、形成領域側凹凸パターン52aの親液性を、受容体30の物性に応じた値とすることが可能となる。
【0112】
(7)形成領域側凹凸パターン52aを形成する凸部又は凹部が、メンブレン22の厚さ方向から見て、円形に形成されている。
その結果、形成領域側凹凸パターン52aの形成が容易となる。
【0113】
また、第一実施形態の表面応力センサの製造方法であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(8)形成領域側凹凸パターン形成工程を備える。形成領域側凹凸パターン形成工程では、受容体形成領域31に、形成領域側凹凸パターン52aを、形成領域側凹凸パターン52aを形成する複数の凸部又は複数の凹部の隙間に溶液が存在することが可能な粗度を有するように形成する。
このため、メンブレン22の表面のうち受容体形成領域31に、外部領域32よりも親液性が高くなる形成領域側凹凸パターン52aを形成することで、受容体形成領域31の溶液との親和性が、外部領域32の溶液との親和性よりも高くなる。
【0114】
これにより、受容体形成領域31に塗布した溶液が、形成領域側凹凸パターン52aにより向上した親液性によって、受容体形成領域31において拡張しやすくなる。これに加え、外部領域32が有する撥液性により、受容体形成領域31に塗布した溶液が外部領域32へ逸脱することを抑制することが可能となる。
その結果、受容体30を所望の形状に制御する制御性を向上させることが可能な、表面応力センサの製造方法を提供することが可能となる。
【0115】
また、受容体形成領域31の溶液との親和性が高いため、受容体形成領域31に塗布する溶液を追加した場合であっても、形成領域側凹凸パターン52aにより向上した親液性によって、受容体形成領域31において拡張しやすくなる。これに加え、外部領域32が有する撥液性により、受容体形成領域31に塗布した溶液が外部領域32へ逸脱することを抑制することが可能となる。
したがって、受容体形成領域31に塗布する溶液を追加した場合であっても、溶液が受容体形成領域31の中で円滑に拡張するため、受容体30の膜厚に発生するムラを抑制して、受容体30を所望の形状に制御する制御性を向上させることが可能となる。
【0116】
(9)形成領域側凹凸パターン形成工程と除去工程とを、同時に行う。
その結果、表面応力センサ1の製造工程を簡略化することが可能となる。
【0117】
(10)外部領域32に複数の外部領域側凹凸パターン52bを形成する外部領域側凹凸パターン形成工程をさらに備える。これに加え、外部領域側凹凸パターン形成工程では、外部領域側凹凸パターン52bを形成する複数の凸部又は複数の凹部の隙間への溶液の進入を防止することが可能な粗度を有するように、外部領域側凹凸パターン52bを形成する。
これにより、受容体形成領域31に塗布した溶液が、受容体形成領域31から外部領域32へ逸脱することを、外部領域側凹凸パターン52bにより向上した外部領域32の撥液性によって、抑制することが可能となる。
その結果、外部領域側凹凸パターン52bを形成しない構成と比較して、受容体30を所望の形状に制御する制御性をさらに向上させることが可能となる。
【0118】
(11)形成領域側凹凸パターン形成工程と外部領域側凹凸パターン形成工程とを、同時に行う。
その結果、表面応力センサ1の製造工程を簡略化することが可能となる。
【0119】
(12)外部領域側凹凸パターン形成工程と除去工程とを、同時に行う。
その結果、表面応力センサ1の製造工程を簡略化することが可能となる。
【0120】
(13)形成領域側凹凸パターン形成工程及び外部領域側凹凸パターン形成工程では、形成領域側凹凸パターン52aの粗度が外部領域側凹凸パターン52bの粗度よりも低くなるように、形成領域側凹凸パターン52aと外部領域側凹凸パターン52bとを形成する。
その結果、受容体形成領域31の溶液との親和性が、外部領域32の溶液との親和性よりも高くなるため、受容体30を所望の形状に制御する制御性を向上させることが可能となる。
【0121】
(第一実施形態の変形例)
(1)第一実施形態では、支持基材10の材料となる第一シリコン基板60の一方の面に凹部62を形成することで、メンブレン22と支持基材10との間に空隙部40を形成したが、これに限定するものではない。すなわち、検出基材20の材料となる第二シリコン基板64の支持基材10と対向する面に凹部を形成することで、メンブレン22と支持基材10との間に空隙部40を形成してもよい。
【0122】
(2)第一実施形態では、二対である四つの連結部26a~26dに、それぞれ、可撓性抵抗50a~50dが備えられている構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、一対である二つの連結部26に、それぞれ、可撓性抵抗50が備えられている構成としてもよい。
【0123】
(3)第一実施形態では、四つの連結部26a~26dの全てに可撓性抵抗50が備えられている構成としたが、これに限定するものではなく、少なくとも一つの連結部26に可撓性抵抗50が備えられている構成としてもよい。
【0124】
(4)第一実施形態では、接続部4の面積を、メンブレン22の厚さ方向から見て、メンブレン22の面積よりも小さい値としたが、これに限定するものではなく、接続部4の面積を、メンブレン22の面積以上としてもよい。
【0125】
(5)第一実施形態では、接続部4の形状を円形としたが、これに限定するものではなく、接続部4の形状を、例えば、方形としてもよい。また、接続部4を、複数形成してもよい。
【0126】
(6)第一実施形態では、検出基材20を形成する材料と、支持基材10を形成する材料とを、同一の材料としたが、これに限定するものではなく、検出基材20を形成する材料と、支持基材10を形成する材料とを、異なる材料としてもよい。
この場合、検出基材20の線膨張係数と支持基材10の線膨張係数との差を、1.2×10-5/℃以下とすることで、パッケージ基板2の変形に応じた、検出基材20の変形量と支持基材10の変形量との差を減少させることが可能となる。これにより、メンブレン22の撓みを抑制することが可能となる。
【0127】
(7)第一実施形態では、支持基材10の線膨張係数が、5.0×10-6/℃以下としたが、これに限定するものではなく、支持基材10の線膨張係数を、1.0×10-5/℃以下としてもよい。
この場合であっても、支持基材10の剛性を向上させることが可能となり、温度変化等に起因するパッケージ基板2の変形に対する、検出基材20の変形量を減少させることが可能となる。
【0128】
(8)第一実施形態では、外部領域32に外部領域側凹凸パターン52bを形成したが、これに限定するものではない。
すなわち、例えば、外部領域32にローレット加工等を施すことにより、ロータス効果を有する粗さとすることで、外部領域32の粗度を、受容体形成領域31の粗度よりも高くしてもよい。
この構成であれば、メンブレン22に親水性の溶液を塗布すると、受容体形成領域31は濡れ性が高いために、メンブレン22との密着性の高い受容体30を形成することが可能となる。一方、外部領域32は、シリコンによる撥液性にロータス効果が加わるため、強い撥液機能を持つこととなり、溶液の流出を防ぐ作用を向上させることが可能となる。
【0129】
(9)第一実施形態では、形成領域側凹凸パターン52a及び外部領域側凹凸パターン52bを形成したが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、
図32に表すように、外部領域32に外部領域側凹凸パターン52bを形成せず、外部領域32を、凹部や凸部が形成されておらず、酸化膜SOを表面に形成した平面(平滑な面、平坦な面)としてもよい。すなわち、外部領域32(第二表面領域)を、平滑な面としてもよい。
この場合、例えば、
図33に表すように、シリコンが露出している構成としてもよい。また、例えば、
図34に表すように、形成領域側凹凸パターン52aを、複数の凹部で形成した構成としてもよい。また、例えば、
図35に表すように、シリコンが露出しているとともに、形成領域側凹凸パターン52aを、複数の凹部で形成した構成としてもよい。
【0130】
(10)第一実施形態では、形成領域側凹凸パターン52aを、複数のピラーによる凸部で形成したが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、
図36に表すように、形成領域側凹凸パターン52aを、複数の円筒による凸部で形成してもよい。なお、外部領域側凹凸パターン52bについても、同様である。
【0131】
(11)第一実施形態では、形成領域側凹凸パターン52aを形成する複数の凸部(ピラー)を、同じ形状(外径及び高さ)で形成したが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、
図37に表すように、形成領域側凹凸パターン52aを、外径が異なる複数の凸部で形成する等、形状が異なる複数の凸部で形成してもよい。また、形成領域側凹凸パターン52aを凹部で形成した場合についても、同様である。なお、外部領域側凹凸パターン52bについても、同様である。
【0132】
(12)第一実施形態では、形成領域側凹凸パターン52aを形成する凸部を、メンブレン22の厚さ方向から見て、円形に形成したが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、
図38に表すように、形成領域側凹凸パターン52aを形成する凸部を、メンブレン22の厚さ方向から見て、三角形を形成する線分を密集させたパターンで形成してもよい。また、例えば、
図39に表すように、形成領域側凹凸パターン52aを形成する凸部を、メンブレン22の厚さ方向から見て、三角形を形成する線分と、三角柱とを混在させて密集させたパターンで形成してもよい。さらに、例えば、
図40に表すように、形成領域側凹凸パターン52aを形成する凸部を、メンブレン22の厚さ方向から見て、三角形を形成する線分と、面積の異なる三角柱とを混在させて密集させたパターンで形成してもよい。なお、外部領域側凹凸パターン52bについても、同様である。
【0133】
(13)第一実施形態では、表面応力センサ1の構成を、パッケージ基板2と、接続部4と、検出基材20と、支持基材10とを備える構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、表面応力センサ1の構成を、パッケージ基板2と、接続部4と、検出基材20とを備える構成としてもよい。すなわち、表面応力センサ1の構成を、支持基材10を備えていない構成としてもよい。
【0134】
(14)第一実施形態では、保持部材24の構成を、四辺形(正方形)の枠状に形成されて、隙間を空けてメンブレン22を包囲している構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、保持部材24の構成を、例えば、菱形等の正方形以外の四辺形に形成した構成としてもよい。また、保持部材24の構成を、例えば、コの字状等、空隙部を有する不連続な形状に形成した構成としてもよい。すなわち、保持部材24の構成は、メンブレン22を外側から支持して固定することが可能な構成であればよい。
【0135】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1から
図40を参照しつつ、
図41を用いて、第二実施形態の構成を説明する。
第二実施形態の構成は、
図41に表すように、保持部材24が、接続層90を介して、支持基材10のパッケージ基板2と対向する面と反対側の面(
図41中では、上側の面)に接続されている点を除き、上述した第一実施形態と同様である。
接続層90は、二酸化ケイ素(SiO
2)等を用いて形成されている。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0136】
(表面応力センサの製造方法)
図1から
図41を参照しつつ、
図42から
図45を用いて、表面応力センサ1の製造方法を説明する。なお、
図42から
図45の断面図は、
図5のX-X線断面図に対応する。
表面応力センサ1の製造方法は、積層体形成工程と、第一イオン注入工程と、第二イオン注入工程と、熱処理工程と、ホール形成工程と、空隙部形成工程と、ホール封止工程を備える。これに加え、表面応力センサ1の製造方法は、形成領域側凹凸パターン形成工程と、外部領域側凹凸パターン形成工程と、受容体形成工程と、除去工程と、配線層形成工程を備える。
【0137】
(積層体形成工程)
積層体形成工程では、まず、
図42に表すように、支持基材10の材料となる第一シリコン基板60へ、シリコン酸化膜を用いて形成した犠牲層92を積層する。さらに、犠牲層92へ、検出基材20の材料となる第二シリコン基板64を積層する。なお、犠牲層92としては、シリコン酸化膜の他に、シリコン窒化膜やアルミニウム、チタン、銅、タングステン等の金属膜を用いてもよい。
以上により、積層体形成工程では、支持基材10に犠牲層92を積層し、さらに、犠牲層92に検出基材20を積層して積層体66を形成する。
【0138】
(第一イオン注入工程)
第一イオン注入工程では、まず、
図42に表すように、第二シリコン基板64を酸化することで、第二シリコン基板64の上側の面を酸化させて第一のシリコン酸化膜68aを形成する。
次に、第一のシリコン酸化膜68aを形成した第二シリコン基板64に対して、フォトレジストのパターン(図示せず)を形成し、可撓性抵抗領域70に対して、選択的に第一のイオンを注入する。
以上により、第一イオン注入工程では、検出基材20の支持基材10と対向する面と反対側の面のうち、検出基材20の中心を含む予め設定した領域よりも外側の選択した一部の領域(可撓性抵抗領域70)に、第一のイオンを注入する。
【0139】
(第二イオン注入工程)
第二イオン注入工程では、第一イオン注入工程で用いたフォトレジストを除去し、さらに、第一イオン注入工程で用いたものとは異なるフォトレジストのパターン(図示せず)を形成し、低抵抗領域72に第二のイオンを注入する。
以上により、第二イオン注入工程では、検出基材20の第一のイオンを注入した領域(可撓性抵抗領域70)よりも外側の選択した領域に、第二のイオンを注入する。
【0140】
(熱処理工程)
熱処理工程では、第二イオン注入工程で用いたフォトレジストを除去し、さらに、第一のイオン及び第二のイオンの活性化を目的として、積層体66に熱処理(アニール処理)を施す。積層体66に熱処理を施した後は、第一のシリコン酸化膜68aを除去する。
以上により、熱処理工程では、第一のイオン及び第二のイオンを注入した積層体66を熱処理することで、第一のイオンを注入した領域に可撓性抵抗領域70を形成するとともに、第二のイオンを注入した領域に低抵抗領域72を形成する。
【0141】
(ホール形成工程)
ホール形成工程では、一般的なフォトリソグラフィーの技術により、第二シリコン基板64の上側の面に、ホールのパターン(図示せず)を形成する。
次に、ホールのパターンをマスクとしてドライエッチングを施し、
図43に表すように、第二シリコン基板64へホール76を形成する。ホール76の直径は、例えば、0.28[μm]に設定して、犠牲層92に到達する深さに設定する。
以上により、ホール形成工程では、検出基材20の可撓性抵抗領域70及び低抵抗領域72を形成した領域と隣接する領域に、犠牲層92まで貫通するホール76を形成する。
【0142】
(空隙部形成工程)
空隙部形成工程では、HFVaporを、ホール76を通して第一シリコン基板60の側に浸透させることで、犠牲層92のみを選択的にエッチングし、
図44に表すように、第一シリコン基板60と第二シリコン基板64との間に、空隙部40を形成する。
ここで、HFのWetエッチングを使わない理由は、空隙部40を形成した後の乾燥時に、純水等の表面張力で空隙部40が潰れる不具合(スティクションとも呼称される)の発生を回避するためである。
以上により、空隙部形成工程では、ホール76を介したエッチングにより、可撓性抵抗領域70と支持基材10との間に配置された犠牲層92を除去して、支持基材10と検出基材20との間に空隙部40を設ける。
【0143】
(ホール封止工程)
ホール封止工程では、
図45に表すように、酸化膜94によってホール76を封止する。
ホール76を封止する方法としては、例えば、熱酸化処理とCVD等を組み合わせることが有効であるが、ホール76の直径が小さい場合には、CVDのみを用いることも可能である。
以上により、ホール封止工程では、検出基材20の支持基材10と対向する面と反対側の面に、酸化膜94を形成してホール76を封止する。
【0144】
(配線層形成工程)
配線層形成工程は、上述した第一実施形態と同様の手順で行うため、その説明を省略する。
以上により、配線層形成工程では、可撓性抵抗50と電気的に接続された配線層82を形成する。
【0145】
(形成領域側凹凸パターン形成工程、外部領域側凹凸パターン形成工程、除去工程)
形成領域側凹凸パターン形成工程と、外部領域側凹凸パターン形成工程と、除去工程は、上述した第一実施形態と同様の手順で行うため、その説明を省略する。
【0146】
(受容体形成工程)
受容体形成工程では、受容体形成領域31に、PEI溶液等を塗布して、乾燥させることで、吸着した物質に応じた変形を生じる受容体30を形成する。
【0147】
(動作・作用)
第二実施形態の動作と作用は、上述した第一実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
なお、上述した第二実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第二実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0148】
(第二実施形態の効果)
第二実施形態の表面応力センサの製造方法であれば、第一実施形態と同様、受容体30を所望の形状に制御する制御性を向上させることが可能な、表面応力センサの製造方法を提供することが可能となる。
【0149】
(第三実施形態)
以下、本発明の第三実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1から
図45を参照しつつ、
図46から
図49を用いて、第三実施形態の構成を説明する。
第三実施形態の構成は、形成領域側凹凸パターン52aと外部領域側凹凸パターン52bの構成を除き、上述した第一実施形態と同様である。
形成領域側凹凸パターン52aは、メンブレン22の表面のうち、受容体形成領域31(第一表面領域)に形成されている。
【0150】
また、形成領域側凹凸パターン52aは、複数の凸部(突起、ピラー)、又は、複数の凹部(孔、ホール)が連続して繰り返されたパターンで形成されている。第三実施形態では、一例として、形成領域側凹凸パターン52aを、複数の凹部で形成した場合について説明する。
したがって、
図47及び
図48に表すように、形成領域側凹凸パターン52aの断面は、凹部が並んだ形状である。
【0151】
外部領域側凹凸パターン52bは、メンブレン22の表面のうち、外部領域32(第二表面領域)に形成されている。
また、外部領域側凹凸パターン52bは、形成領域側凹凸パターン52aと同様、複数の凸部、又は、複数の凹部が連続して繰り返されたパターンで形成されている。第三実施形態では、一例として、外部領域側凹凸パターン52bを、複数の凹部(ホール)で形成した場合について説明する。
したがって、
図47及び
図48に表すように、外部領域側凹凸パターン52bの断面は、凹部が並んだ形状である。
【0152】
また、外部領域側凹凸パターン52bは、上記の式(11)及び式(12)を用いて、外部領域側凹凸パターン52bを形成した外部領域32が、溶液に対する撥液性を有するように形成する。
また、外部領域側凹凸パターン52bのピッチ、凹部の内径、凹部の深さは、受容体30の物性(受容体30形成する溶液の物性)に応じた値に設定する。すなわち、外部領域側凹凸パターン52bは、受容体30の物性に応じた形状に形成されている。
上述したように、形成領域側凹凸パターン52aは、受容体形成領域31の親液性が外部領域32の親液性よりも高くなるパターンである。さらに、外部領域側凹凸パターン52bは、外部領域側凹凸パターン52bを形成する複数の凸部又は複数の凹部の隙間への、受容体30を形成する溶液の進入を防止することが可能な粗度を有するパターンである。
【0153】
次に、形成領域側凹凸パターン52a及び外部領域側凹凸パターン52bの、具体的な構成について説明する。
形成領域側凹凸パターン52a及び外部領域側凹凸パターン52bは、
図49に示すように、形成領域側凹凸パターン52aを形成する凹部の深さHpが、外部領域側凹凸パターン52bを形成する凹部の深さHhよりも大きくなるように形成する。
すなわち、形成領域側凹凸パターン52aを形成する凹部の深さHpと、外部領域側凹凸パターン52bを形成する凹部の深さHhとの関係は、以下の式(14)で示す関係となる。
Hh<Hp … (14)
【0154】
したがって、
図49に表すように、メンブレン22の厚さ方向と直交する方向から見て、形成領域側凹凸パターン52aに形成される天面Taと底面Baとの高さの差(「Hp」に相当)は、外部領域側凹凸パターン52bに形成される天面Tbと底面Bbとの高さの差(「Hh」に相当)よりも大きい。
なお、「メンブレン22の厚さ方向と直交する方向」とは、「表面応力センサ1を側面から見た方向」と同じ方向である。
また、「天面Ta」は、受容体形成領域31に形成した酸化膜SOの天面であり、「天面Tb」は、外部領域32に形成した酸化膜SOの天面である。
【0155】
また、第三実施形態では、式(12)に基づき、δp>δhの関係式が成立するように、形成領域側凹凸パターン52aと外部領域側凹凸パターン52bを形成する。
「δp」は、
図49に表すように、形成領域側凹凸パターン52aにおける、隣り合う凸部(天面Ta)の間に塗布した溶液の表面のうち、凸部との高さが最も異なる部分(最も凹んだ部分)の、凸部との高さの差(凹みの厚さ)である。
「δh」は、
図49に表すように、外部領域側凹凸パターン52bにおける、隣り合う凸部(天面Tb)の間に塗布した溶液の表面のうち、凸部との高さが最も異なる部分(最も凹んだ部分)の、凸部との高さの差(凹みの厚さ)である。
【0156】
また、
図47及び
図48に表すように、メンブレン22の厚さ方向から見て、形成領域側凹凸パターン52aを形成する隣り合う凹部のピッチpaは、外部領域側凹凸パターン52bを形成する隣り合う凹部のピッチpbよりも大きい。
さらに、メンブレン22の厚さ方向から見て、底面Baの総面積は、底面Bbの総面積よりも大きい。
すなわち、メンブレン22の厚さ方向から見て、形成領域側凹凸パターン52aの総面積に対する凹部(底面Ba)の面積の割合は、外部領域側凹凸パターン52bの総面積に対する凹部(底面Bb)の面積の割合よりも大きい。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0157】
(表面応力センサの製造方法)
図1から
図49を参照して、表面応力センサ1の製造方法を説明する。
表面応力センサ1の製造方法は、積層体形成工程と、第一イオン注入工程と、第二イオン注入工程と、熱処理工程と、配線層形成工程と、酸化膜形成工程を備える。これに加え、表面応力センサ1の製造方法は、形成領域側凹凸パターン形成工程と、外部領域側凹凸パターン形成工程と、除去工程と、受容体形成工程を備える。
なお、積層体形成工程、第一イオン注入工程、第二イオン注入工程、熱処理工程、配線層形成工程、酸化膜形成工程、除去工程、受容体形成工程は、上述した第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0158】
(形成領域側凹凸パターン形成工程、外部領域側凹凸パターン形成工程)
形成領域側凹凸パターン形成工程では、受容体形成領域31に、形成領域側凹凸パターン52aを形成する。
外部領域側凹凸パターン形成工程では、外部領域32に、外部領域側凹凸パターン52bを形成する。
第三実施形態では、検出基材20の厚さ方向と直交する方向から見て、天面Taと底面Baとの高さの差が、天面Tbと底面Bbとの高さの差よりも大きくなるように、形成領域側凹凸パターン52aと外部領域側凹凸パターン52bを形成する。
【0159】
なお、「検出基材20の厚さ方向」は、「メンブレン22の厚さ方向」と同じ方向である。したがって、「検出基材20の厚さ方向と直交する方向」は、「メンブレン22の厚さ方向と直交する方向」及び「表面応力センサ1を側面から見た方向」と同じ方向である。
したがって、第三実施形態では、形成領域側凹凸パターン52aに形成される凹部の深さが、外部領域側凹凸パターン52bに形成される凹部の深さよりも大きくなるように、形成領域側凹凸パターン52aと外部領域側凹凸パターン52bを形成する。
また、第三実施形態では、検出基材20の厚さ方向から見て、ピッチpaがピッチpbよりも大きくなるように、形成領域側凹凸パターン52aと外部領域側凹凸パターン52bを形成する。
【0160】
さらに、第三実施形態では、検出基材20の厚さ方向から見た底面Baの、検出基材20の厚さ方向から見た総面積が、検出基材20の厚さ方向から見た底面Bbの、検出基材20の厚さ方向から見た総面積よりも大きくなるように、形成領域側凹凸パターン52aと外部領域側凹凸パターン52bを形成する。
したがって、第三実施形態では、検出基材20の厚さ方向から見て、形成領域側凹凸パターン52aの総面積に対する凹部(底面Ba)の面積の割合が、外部領域側凹凸パターン52bの総面積に対する凹部(底面Bb)の面積の割合よりも大きくなるように、形成領域側凹凸パターン52aと外部領域側凹凸パターン52bを形成する。
【0161】
(動作・作用)
図1から
図49を参照して、第一実施形態の動作と作用を説明する。
表面応力センサ1を、例えば、嗅覚センサとして用いる際に、受容体30にガスの分子が吸着して、受容体30に歪みが発生すると、メンブレン22に表面応力が印加され、メンブレン22が撓む。
メンブレン22が撓むと、連結部26に、受容体30に発生した歪みに応じた撓みが起き、連結部26に起きた撓みに応じて、可撓性抵抗50が有する抵抗値が変化する。
【0162】
第三実施形態の表面応力センサ1では、天面Taと底面Baとの高さの差が、天面Tbと底面Bbとの高さの差よりも大きい。
このため、深さHpよりも深さHhが小さく、外部領域32の剛性が受容体形成領域31の合成よりも高くなる。これにより、メンブレン22に撓みが起きた際の、外部領域32の変形量が受容体形成領域31の変形量よりも小さくなり、深さHhが深さHp以上である場合と比較して、受容体30に発生した歪みに応じた撓みが連結部26に伝達されることとなる。
【0163】
したがって、メンブレン22に撓みが起きた際の、連結部26の変形量を増加させることが可能となり、可撓性抵抗50の変形量を増加させることが可能となるため、連結部26に起きた撓みに応じた抵抗値の変化量を増加させることが可能となる。これにより、メンブレン22に撓みが起きた際の、電気信号の変化量を増加させることが可能となるため、表面応力センサ1の感度を向上させることが可能となり、表面応力センサ1の検出精度を向上させることが可能となる。
【0164】
また、第三実施形態の表面応力センサ1では、天面Taと底面Baとの高さの差が、天面Tbと底面Bbとの高さの差よりも大きい。
このため、深さHhよりも深さHpが大きく、深さHpが深さHh以上である場合と比較して、受容体30を形成する溶液を保持することが可能な量を増加させることが可能となり、受容体30の体積を増加させることが可能となる。これにより、メンブレン22に撓みが起きた際の、受容体30に発生した歪みに応じた撓みを増加させることが可能となり、可撓性抵抗50の変形量を増加させることが可能となる。
【0165】
したがって、連結部26に起きた撓みに応じた抵抗値の変化量を増加させることが可能となる。これにより、メンブレン22に撓みが起きた際の、電気信号の変化量を増加させることが可能となるため、表面応力センサ1の感度を向上させることが可能となり、表面応力センサ1の検出精度を向上させることが可能となる。
なお、上述した第三実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第三実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0166】
(第三実施形態の効果)
第三実施形態の表面応力センサ1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)形成領域側凹凸パターン52aを形成する凹部の深さHpが、外部領域側凹凸パターン52bを形成する凹部の深さHhよりも大きい。
このため、メンブレン22に撓みが起きた際の、連結部26の変形量を増加させることが可能となり、可撓性抵抗50の変形量を増加させることが可能となるため、連結部26に起きた撓みに応じた抵抗値の変化量を増加させることが可能となる。
その結果、メンブレン22に撓みが起きた際の、電気信号の変化量を増加させることが可能となるため、表面応力センサ1の感度を向上させることが可能となり、表面応力センサ1の検出精度を向上させることが可能となる。
【0167】
(2)メンブレン22の厚さ方向から見た形成領域側凹凸パターン52aを形成する隣り合う凹部のピッチpaは、メンブレン22の厚さ方向から見た外部領域側凹凸パターン52bを形成する隣り合う凹部のピッチpbよりも大きい。
このため、外部領域32の剛性が受容体形成領域31の合成よりも高くなり、メンブレン22に撓みが起きた際の、連結部26の変形量を増加させることが可能となるため、可撓性抵抗50の変形量を増加させることが可能となる。
その結果、連結部26に起きた撓みに応じた抵抗値の変化量を増加させることが可能となり、メンブレン22に撓みが起きた際の、電気信号の変化量を増加させることが可能となる。これにより、表面応力センサ1の感度を向上させることが可能となり、表面応力センサ1の検出精度を向上させることが可能となる。
【0168】
また、受容体30を形成する溶液を保持することが可能な量を増加させることが可能となり、受容体30の体積を増加させることが可能となる。これにより、メンブレン22に撓みが起きた際の、受容体30に発生した歪みに応じた撓みを増加させることが可能となり、可撓性抵抗50の変形量を増加させることが可能となる。
その結果、連結部26に起きた撓みに応じた抵抗値の変化量を増加させることが可能となる。これにより、メンブレン22に撓みが起きた際の、電気信号の変化量を増加させることが可能となるため、表面応力センサ1の感度を向上させることが可能となり、表面応力センサ1の検出精度を向上させることが可能となる。
【0169】
(3)メンブレン22の厚さ方向から見た形成領域側凹凸パターン52aの総面積に対する凹部(底面Ba)の面積の割合が、メンブレン22の厚さ方向から見た外部領域側凹凸パターン52bの総面積に対する凹部(底面Bb)の面積の割合よりも大きい。
このため、外部領域32の剛性が受容体形成領域31の合成よりも高くなり、メンブレン22に撓みが起きた際の、連結部26の変形量を増加させることが可能となるため、可撓性抵抗50の変形量を増加させることが可能となる。
その結果、連結部26に起きた撓みに応じた抵抗値の変化量を増加させることが可能となり、メンブレン22に撓みが起きた際の、電気信号の変化量を増加させることが可能となる。これにより、表面応力センサ1の感度を向上させることが可能となり、表面応力センサ1の検出精度を向上させることが可能となる。
【0170】
また、受容体30を形成する溶液を保持することが可能な量を増加させることが可能となり、受容体30の体積を増加させることが可能となる。これにより、メンブレン22に撓みが起きた際の、受容体30に発生した歪みに応じた撓みを増加させることが可能となり、可撓性抵抗50の変形量を増加させることが可能となる。
その結果、連結部26に起きた撓みに応じた抵抗値の変化量を増加させることが可能となる。これにより、メンブレン22に撓みが起きた際の、電気信号の変化量を増加させることが可能となるため、表面応力センサ1の感度を向上させることが可能となり、表面応力センサ1の検出精度を向上させることが可能となる。
【0171】
また、第三実施形態の表面応力センサの製造方法であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(4)形成領域側凹凸パターン形成工程及び外部領域側凹凸パターン形成工程では、形成領域側凹凸パターン52aを形成する凹部の深さHpが、外部領域側凹凸パターン52bを形成する凹部の深さHhよりも大きくなるように、形成領域側凹凸パターン52aと外部領域側凹凸パターン52bを形成する。
このため、メンブレン22に撓みが起きた際の、連結部26の変形量を増加させることが可能となり、可撓性抵抗50の変形量を増加させることが可能となるため、連結部26に起きた撓みに応じた抵抗値の変化量を増加させることが可能となる。
その結果、メンブレン22に撓みが起きた際の、電気信号の変化量を増加させることが可能となるため、表面応力センサ1の感度を向上させることが可能となり、表面応力センサ1の検出精度を向上させることが可能となる。
【0172】
(5)形成領域側凹凸パターン形成工程及び外部領域側凹凸パターン形成工程では、検出基材20の厚さ方向から見た形成領域側凹凸パターン52aを形成する隣り合う凹部のピッチが、検出基材20の厚さ方向から見た外部領域側凹凸パターン52bを形成する隣り合う凹部のピッチよりも大きくなるように、形成領域側凹凸パターン52aと外部領域側凹凸パターン52bを形成する。
このため、外部領域32の剛性が受容体形成領域31の合成よりも高くなり、メンブレン22に撓みが起きた際の、連結部26の変形量を増加させることが可能となるため、可撓性抵抗50の変形量を増加させることが可能となる。
その結果、連結部26に起きた撓みに応じた抵抗値の変化量を増加させることが可能となり、メンブレン22に撓みが起きた際の、電気信号の変化量を増加させることが可能となる。これにより、表面応力センサ1の感度を向上させることが可能となり、表面応力センサ1の検出精度を向上させることが可能となる。
【0173】
また、受容体30を形成する溶液を保持することが可能な量を増加させることが可能となり、受容体30の体積を増加させることが可能となる。これにより、メンブレン22に撓みが起きた際の、受容体30に発生した歪みに応じた撓みを増加させることが可能となり、可撓性抵抗50の変形量を増加させることが可能となる。
その結果、連結部26に起きた撓みに応じた抵抗値の変化量を増加させることが可能となる。これにより、メンブレン22に撓みが起きた際の、電気信号の変化量を増加させることが可能となるため、表面応力センサ1の感度を向上させることが可能となり、表面応力センサ1の検出精度を向上させることが可能となる。
【0174】
(6)形成領域側凹凸パターン形成工程及び外部領域側凹凸パターン形成工程では、検出基材20の厚さ方向から見た形成領域側凹凸パターン52aの総面積に対する凹部(底面Ba)の面積の割合が、検出基材20の厚さ方向から見た外部領域側凹凸パターン52bの総面積に対する凹部(底面Bb)の面積の割合よりも大きくなるように、形成領域側凹凸パターン52aと外部領域側凹凸パターン52bを形成する。
このため、外部領域32の剛性が受容体形成領域31の合成よりも高くなり、メンブレン22に撓みが起きた際の、連結部26の変形量を増加させることが可能となるため、可撓性抵抗50の変形量を増加させることが可能となる。
その結果、連結部26に起きた撓みに応じた抵抗値の変化量を増加させることが可能となり、メンブレン22に撓みが起きた際の、電気信号の変化量を増加させることが可能となる。これにより、表面応力センサ1の感度を向上させることが可能となり、表面応力センサ1の検出精度を向上させることが可能となる。
【0175】
また、受容体30を形成する溶液を保持することが可能な量を増加させることが可能となり、受容体30の体積を増加させることが可能となる。これにより、メンブレン22に撓みが起きた際の、受容体30に発生した歪みに応じた撓みを増加させることが可能となり、可撓性抵抗50の変形量を増加させることが可能となる。
その結果、連結部26に起きた撓みに応じた抵抗値の変化量を増加させることが可能となる。これにより、メンブレン22に撓みが起きた際の、電気信号の変化量を増加させることが可能となるため、表面応力センサ1の感度を向上させることが可能となり、表面応力センサ1の検出精度を向上させることが可能となる。
【0176】
(第三実施形態の変形例)
(1)第三実施形態では、形成領域側凹凸パターン52aと外部領域側凹凸パターン52bを、複数の凹部で形成したが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、
図50及び
図51に示すように、形成領域側凹凸パターン52aと外部領域側凹凸パターン52bを、複数の凸部で形成してもよい。
図50及び
図51に示す構成であっても、メンブレン22に撓みが起きた際の、連結部26の変形量を増加させることが可能となり、可撓性抵抗50の変形量を増加させることが可能となる。これにより、連結部26に起きた撓みに応じた抵抗値の変化量を増加させることが可能となるため、メンブレン22に撓みが起きた際の、電気信号の変化量を増加させることが可能となり、表面応力センサ1の感度を向上させることが可能となり、表面応力センサ1の検出精度を向上させることが可能となる。
【0177】
(2)第三実施形態では、ピッチpaを、形成領域側凹凸パターン52aを形成する隣り合う凹部のピッチとしたが、これに限定するものではない。すなわち、ピッチpaを、形成領域側凹凸パターン52aを形成する隣り合う凸部のピッチとしてもよい。
【0178】
(3)第三実施形態では、ピッチpbを、外部領域側凹凸パターン52bを形成する隣り合う凹部のピッチとしたが、これに限定するものではない。すなわち、ピッチpbを、外部領域側凹凸パターン52bを形成する隣り合う凸部のピッチとしてもよい。
【符号の説明】
【0179】
1…表面応力センサ、2…パッケージ基板、4…接続部、10…支持基材、20…検出基材、22…メンブレン、24…保持部材、26…連結部、30…受容体、31…受容体形成領域、32…外部領域、40…空隙部、50…可撓性抵抗、52a…形成領域側凹凸パターン、52b…外部領域側凹凸パターン、60…第一シリコン基板、62…凹部、64…第二シリコン基板、66…積層体、68…シリコン酸化膜、70…可撓性抵抗領域、72…低抵抗領域、74…シリコン窒化膜、76…ホール、78…積層膜、80…金属膜、82…配線層、84…メンブレン設定領域、85…除去領域、86…PAD、87…平面領域、88…凹部領域、90…接続層、92…犠牲層、94…酸化膜、VL1…メンブレンの中心を通過する仮想的な直線、VL2…直線VL1と直交する直線、SO…シリコン酸化膜