(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】回路基板用電気コネクタ及び回路基板付電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6594 20110101AFI20240105BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20240105BHJP
H01R 12/57 20110101ALI20240105BHJP
【FI】
H01R13/6594
H05K1/18 H
H01R12/57
(21)【出願番号】P 2020183909
(22)【出願日】2020-11-02
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【氏名又は名称】藤岡 努
(74)【代理人】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和正
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-117692(JP,A)
【文献】特開2003-115337(JP,A)
【文献】特開2015-076340(JP,A)
【文献】実開平06-050267(JP,U)
【文献】特開2000-077119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00-12/91
H01R13/56-13/72
H01R24/00-24/86
H05K1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板の面に平行な一方向をなす前後方向で該回路基板の前縁部に配され、前方へ向けた嵌合部を備えるハウジングを有し、上記回路基板の面に平行で前後方向に直角な方向をコネクタ幅方向とする回路基板用電気コネクタにおいて、
上記ハウジングに金属板部材が取り付けられ、該金属板部材は、
回路基板へ向け延びる部分と前方へ向け板厚方向に屈曲され前後方向に延びる部分とが形成された延出部を有し、
上記延出部は、回路基板上に載置される載置部を有し、
上記載置部は
、上記延出部の屈曲位置に対して前方で、上記延出部の上記前後方向に延びる部分に形成されており、主部と副部とを有し、該副部はコネクタ幅方向で主部よりも小さく形成され、該主部
の前縁から前方へ突出し、
回路基板用電気コネクタは、回路基板上に配置されたときに、前後方向に離間する接面前域と接面後域とで回路基板に接面し、上記嵌合部の少なくとも一部が上記接面前域より前方に位置し、該接面前域が上記載置部により形成され、上記接面後域がコネクタの他部により形成され、前後方向で上記接面前域と上記接面後域との中間位置から上記接面前域の前端位置にわたる範囲内に回路基板用電気コネクタの重心が位置しており、
少なくとも上記主部が回路基板に設けられた半田用パッドに接面可能となっていることを特徴とする回路基板用電気コネクタ。
【請求項2】
回路基板用電気コネクタの重心が前後方向での上記接面前域の範囲内に位置していることとする請求項1に記載の回路基板用電気コネクタ。
【請求項3】
上記金属板部材はシールド部材であることとする請求項1
又は請求項
2に記載の回路基板用電気コネクタ。
【請求項4】
回路基板の面に平行な一方向をなす前後方向で該回路基板の前縁部に配され、前方へ向けた嵌合部を備えるハウジングを有し、上記回路基板の面に平行で前後方向に直角な方向をコネクタ幅方向とする回路基板用電気コネクタが回路基板に実装された回路基板付電気コネクタにおいて、
上記ハウジングに金属板部材が取り付けられ、該金属板部材は、回路基板上に載置される載置部を有し、
上記載置部は主部と副部とを有し、該副部はコネクタ幅方向で主部よりも小さく形成され、該主部から前方へ突出し、
回路基板用電気コネクタは、回路基板上に配置されたときに、前後方向に離間する接面前域と接面後域とで回路基板に接面し、上記嵌合部の少なくとも一部が上記接面前域より前方に位置し、該接面前域が上記載置部により形成され、上記接面後域がコネクタの他部により形成され、
上記載置部が上記主部で回路基板の半田用パッドに対し半田固定されており、上記副部の少なくとも突出先端部が上記半田用パッドの前端よりも前方に位置していることを特徴とする回路基板付電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板用電気コネクタ及び該回路基板用電気コネクタが回路基板上に配された回路基板付電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板上に配され回路基板の面に平行な前後方向で相手コネクタが嵌合される嵌合部を有する電気コネクタは、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1のコネクタ(特許文献1では「雌型コネクタ」)は、ハウジング(絶縁体)の前部に嵌合部(接続口部)を、後部に端子を保持する保持部を有している。保持部は回路基板に接面するが、嵌合部は回路基板との間に間隔を形成しており、嵌合部へ取り付けられるキャップの下壁部分が上記間隔に進入するようになっている。
【0004】
コネクタは、回路基板への実装直前にあっては、後部となる保持部でのみ回路基板に接面して支持されているが、前部となる嵌合部は回路基板との間に間隔があって浮いている状態にある。特許文献1では、コネクタ全体としては、保持部より嵌合部の方が重くなっている。すなわち、コネクタの重心が前後方向で嵌合部の範囲に位置している。したがって、コネクタの実装時には、前方へ転倒しやすく、半田実装に支障をきたす。そこで、特許文献1では、キャップを嵌合部に装着し、キャップの下壁部分が上記間隔に進入することで、かかる転倒を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のコネクタにあっては、実装時におけるコネクタの転倒防止のために、キャップを用意せねばならず、キャップを製造するための費用が嵩み、また、キャップの装着そして取外しのための手間を要する。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑み、キャップのような付加的部品を要せずに、コネクタ自体でコネクタの転倒防止を可能とする回路基板用電気コネクタ及び回路基板付電気コネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上述の課題は、次の回路基板用電気コネクタ及び回路基板付電気コネクタにより解決される。
【0009】
<回路基板用電気コネクタ>
本発明に係る回路基板用電気コネクタは、回路基板の面に平行な一方向をなす前後方向で該回路基板の前縁部に配され、前方へ向けた嵌合部を備えるハウジングを有し、上記回路基板の面に平行で前後方向に直角な方向をコネクタ幅方向とする回路基板用電気コネクタである。
【0010】
かかる回路基板用電気コネクタにおいて、本発明では、上記ハウジングに金属板部材が取り付けられ、該金属板部材は、回路基板上に載置される載置部を有し、上記載置部は主部と副部とを有し、該副部はコネクタ幅方向で主部よりも小さく形成され、該主部から前方へ突出し、回路基板用電気コネクタは、回路基板上に配置されたときに、前後方向に離間する接面前域と接面後域とで回路基板に接面し、上記嵌合部の少なくとも一部が上記接面前域より前方に位置し、該接面前域が上記載置部により形成され、上記接面後域がコネクタの他部により形成され、前後方向で上記接面前域と上記接面後域との中間位置から上記接面前域の前端位置にわたる範囲内に回路基板用電気コネクタの重心が位置しており、少なくとも上記主部が回路基板に設けられた半田用パッドに接面可能となっていることを特徴としている。
【0011】
このような構成の本発明のコネクタは、回路基板への半田実装に備え、回路基板の所定位置に配されると、回路基板により、接面前域と接面後域で支持される。本発明では、金属板部材の載置部が主部と副部とを有し、上記副部が上記主部よりも前方に突出している。したがって、副部の前端が主部よりも前方へ及ぶこととなり、接面前域の前後方向範囲が前方へ向け拡大されるので、好ましくは接面前域と接面後域の前後方向での中間位置に設定すべき回路基板用電気コネクタの重心を、接面前域寄りに設定することができ、さらには、接面前域の範囲内に位置させることも可能となる。その結果、実装直前において、コネクタは、従来のようなキャップ等の付加的部品を用いなくても、コネクタ自体で安定した姿勢を維持して回路基板上に位置する。それ故、コネクタは転倒することなく、容易に回路基板へ半田実装される。
【0012】
本発明において、回路基板用電気コネクタの重心が前後方向での上記接面前域の範囲内に位置していることとしてもよい。上記重心が接面前域の範囲内が位置していることにより、回路基板用電気コネクタは、より転倒しにくくなる。
【0013】
本発明において、上記金属板部材は、回路基板へ向け延びる部分と板厚方向に屈曲され前後方向に延びる部分とが形成された延出部を有し、上記載置部は、上記延出部の上記前後方向に延びる部分に形成されていてもよい。このように金属板部材の延出部をその板厚方向に屈曲するだけで、載置部を簡単に形成できる。
【0014】
本発明において、上記延出部は、前方へ向け屈曲されており、上記載置部は、上記延出部の屈曲位置に対して前方部分で形成され、上記副部は、上記載置部における上記主部の前縁から前方へ向け突出形成されていてもよい。
【0015】
また、本発明において、上記延出部は、後方へ向け屈曲されており、上記主部は、上記延出部の屈曲位置に対して後方部分で形成され、上記副部は、上記主部の一部に形成された切込み溝同士間で前方に向け突出形成されていてもよい。
【0016】
本発明において、上記金属板部材はシールド部材とすることができる。
【0017】
<回路基板付電気コネクタ>
本発明に係る回路基板付電気コネクタは、回路基板の面に平行な一方向をなす前後方向で該回路基板の前縁部に配され、前方へ向けた嵌合部を備えるハウジングを有し、上記回路基板の面に平行で前後方向に直角な方向をコネクタ幅方向とする回路基板用電気コネクタが回路基板に実装されている。
【0018】
本発明において、回路基板付電気コネクタは回路基板における半田のためのパッドの大きさ、位置との関係で、適宜選定して用いられる。
【0019】
まず、上記ハウジングに金属板部材が取り付けられ、該金属板部材は、回路基板上に載置される載置部を有し、記載置部は主部と副部とを有し、該副部はコネクタ幅方向で主部よりも小さく形成され、該主部から前方へ突出し、路基板用電気コネクタは、回路基板上に配置されたときに、前後方向に離間する接面前域と接面後域とで回路基板に接面し、上記嵌合部の少なくとも一部が上記接面前域より前方に位置し、該接面前域が上記載置部により形成され、上記接面後域がコネクタの他部により形成され、記載置部の上記副部の前端が前後方向で上記半田用パッドの前端と同位置にあり、上記載置部が全域で回路基板の半田用パッドに対し半田固定されていることを特徴とする形態である。
【0020】
次に、上記ハウジングに金属板部材が取り付けられ、該金属板部材は、回路基板上に載置される載置部を有し、上記載置部は主部と副部とを有し、該副部はコネクタ幅方向で主部よりも小さく形成され、該主部から前方へ突出し、回路基板用電気コネクタは、回路基板上に配置されたときに、前後方向に離間する接面前域と接面後域とで回路基板に接面し、上記嵌合部の少なくとも一部が上記接面前域より前方に位置し、該接面前域が上記載置部により形成され、上記接面後域がコネクタの他部により形成され、上記載置部が上記主部で回路基板の半田用パッドに対し半田固定されており、上記副部の少なくとも突出先端部が上記半田用パッドの前端よりも前方に位置していることを特徴とする形態である。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、コネクタは、回路基板に接面する接面前域と接面後域のうち接面前域が上記載置部で形成され、該載置部における副部が主部よりも前方に突出しているので、突出部の前端が主部よりも前方へ及ぶこととなり、したがって、実装直前において、従来のようなキャップ等の付加的部品を用いなくても、コネクタは、それ自体で安定した姿勢を維持して回路基板に接面して位置するので、転倒することなく、容易に回路基板へ半田実装できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第一実施形態としてのプラグコネクタを示し、(A)は斜視図、(B)はコネクタ幅方向における下側シールド板の載置部の位置での断面図である。
【
図2】
図1のプラグコネクタの各部材を分離して示す斜視図である。
【
図3】
図1のプラグコネクタの下側シールド板の斜視図であり、(A)は後方側から見た図、(B)は(A)の下側シールド板を上下反転させて前方側から見た図である。
【
図4】載置部とパッドとの位置関係の一例を示し、(A)は斜視図、(B)は(A)のIVB-IVB断面を半田フィレットとともに示した断面図である。
【
図5】載置部とパッドとの位置関係の他の例を示し、(A)は斜視図、(B)は(A)のVB-VB断面を半田フィレットとともに示した断面図である。
【
図6】本発明の第二実施形態としてのレセプタクルコネクタを示し、(A)は斜視図、(B)はコネクタ幅方向における下側シールド板の載置部の位置での断面図である。
【
図7】
図6のレセプタクルコネクタの各部材を分離して示す斜視図である。
【
図8】
図6のレセプタクルコネクタの下側シールド板の斜視図であり、(A)は前方かつ下方から見た図、(B)は(A)の下側シールド板を上下反転させて前方かつ上方から見た図である。
【
図9】載置部とパッドとの位置関係の一例を示し、(A)は斜視図、(B)は(A)のIXB-IXB断面を半田フィレットとともに示した断面図である。
【
図10】載置部とパッドとの位置関係の他の例を示し、(A)は斜視図、(B)は(A)のXB-XB断面を半田フィレットとともに示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態について説明する。
【0024】
本実施形態に係る回路基板用電気コネクタは、第一実施形態ではプラグコネクタ、第二実施形態ではレセプタクルコネクタとして示されている。第一実施形態ではプラグコネクタは相手コネクタたるレセプタクルコネクタ(図示せず)に嵌合接続され、第二実施形態ではレセプタクルコネクタは相手コネクタたるプラグコネクタ(図示せず)に嵌合接続される。本発明はプラグコネクタにもレセプタクルコネクタにも適用できるので別形態として示してある。
【0025】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態のプラグコネクタ1が、回路基板B1の実装面上に配された状態を示し、
図1(A)は斜視図、
図1(B)はコネクタ幅方向における後述の下側シールド板の載置部の位置での断面図である。
【0026】
プラグコネクタ1は、
図1(A),(B)において、回路基板B1の実装面に上方から配置されて実装されるようになっているとともに、回路基板B1の実装面に沿う一方向をなす前後方向Xをコネクタ挿抜方向として前方側(X1側)から相手側コネクタ(図示しないレセプタクルコネクタ)が嵌合接続されるようになっている。プラグコネクタ1は、回路基板B1に実装される方向(上下方向Z)とコネクタ挿抜方向(前後方向X)とが直角をなす、いわゆるL型電気コネクタ(ライトアングル電気コネクタ)である。以下、プラグコネクタ1については、前後方向Xにおいて、X1方向を「前方」とし、X2方向を「後方」とする。
【0027】
プラグコネクタ1は、電気絶縁材製で略直方体外形に作られたハウジング10と、前後方向Xおよび上下方向Zの両方向に対して直角なコネクタ幅方向Yを端子配列方向としてハウジング10に配列保持される複数の金属製の上側端子20および金属製の下側端子30と、ハウジング10に取り付けられる金属製の上側外シールド板50、上側内シールド板60および下側シールド板70とを有している。以下、上側端子20と下側端子30とを区別する必要がない場合には、これらを「端子20,30」と総称する。
【0028】
ハウジング10は、
図1(A)に見られるように、前後方向Xでの前部(X1方向に向く側の部分)が相手側コネクタとの嵌合のための嵌合部11として形成され、同方向での後部(X2側の部分)が端子20,30を保持するための端子保持部12として形成されている。嵌合部11は、コネクタ幅方向Yを長手方向とする直方体外形の嵌合周壁13と、嵌合周壁13の内部空間内でコネクタ幅方向Yに延びる板状の二つの端子配列部14とを有している。
【0029】
嵌合周壁13は、コネクタ幅方向Yに延び上下方向Zで対向する一対の側壁(上壁13Aおよび下壁13B)と、嵌合周壁13のコネクタ幅方向Yでの両端位置で上下方向に延び上記一対の側壁の端部同士を連結する一対の端壁13Cとを有している。また、嵌合周壁13で囲まれた空間は、相手側コネクタを受け入れるために前方(X1方向)に開口された受入凹部15として形成されている。
【0030】
上壁13Aには、
図1(A)および
図2に見られるように、コネクタ幅方向Yでの複数箇所(本実施形態では6箇所)にて、上壁13Aの前端部(受入凹部15の開口縁部を形成する部分)の下面から没した上側取付溝13A-1が形成されている。上側取付溝13A-1は、下方および前方へ開放されており、後述するように前方から圧入された上側内シールド板60の取付片64(
図1(A)及び
図2参照)を保持するようになっている。
【0031】
また、下壁13Bには、
図1(A)および
図2に見られるように、コネクタ幅方向Yでの複数箇所(本実施形態では6箇所)にて、下壁13Bの前端部(受入凹部15の開口縁部を形成する部分)の上面から没した下側取付溝13B-1が形成されている。下側取付溝13B-1は、上方および前方へ開放されており、後述するように前方から圧入された下側シールド板70の取付片73(
図1(A)、
図2、
図3(B)参照)を保持するようになっている。
【0032】
端子配列部14は、上下方向(コネクタ幅方向)で間隔をもって二つ設けられており、それぞれ端子保持部12の前面から前方X1に向け突出するとともに、コネクタ幅方向Yで端子配列範囲にわたって延び、上壁13Aおよび下壁13Bのそれぞれの壁面に対して平行な板面をもつ板状をなしている。端子配列部14の両方の板面、すなわち上面および下面のそれぞれには、前後方向Xに延びる複数の端子溝14Aがコネクタ幅方向Yに配列形成されている。それぞれの端子溝14Aには、対応する端子20,30の後述の接触片21,31が配置される。
【0033】
端子保持部12は、スリット状の端子保持溝16を有している(
図1(B)参照)。端子保持溝16の形状の説明に先立って、まず、端子保持溝16で保持される端子20,30の形状を説明する。端子20,30は、金属板部材を打ち抜くとともに板厚方向に屈曲した屈曲形状をなして作られている。端子20,30は、コネクタ幅方向Yに見たときに全体が略L字状をなしている(
図1(B)参照)。端子20,30のうち、上側端子20は、
図2に見られるように、一端側に形成された一対の接触片21と、他端側に形成された接続部22と、一対の接触片21を連結する連結部23と、連結部23から接続部22へ向けてL字状に延びる延長部24とを有している。
【0034】
一対の接触片21は、レセプタクルコネクタの相手側端子(図示せず)と接触可能となっている。それぞれの接触片21は、前後方向Xにて同一の長さをもって直状に延びる帯状片をなしている。また、それぞれの接触片21は、上下方向Zに対して直角な板面(板厚面に対して直角な面)を有しており、上下方向Zで板面同士が対面している。一対の接触片21のうち、上方に位置する接触片21は、ハウジング10の上側の端子配列部14の上面に形成された端子溝14A内に配置される(
図1(B)参照)。一方、下方に位置する接触片21は、ハウジング10の上側の端子配列部14の下面に形成された端子溝14A内に配置される(
図1(B)参照)。
【0035】
連結部23は、コネクタ幅方向Yに対して直角なZX面に平行な板面を有しており(
図1(B)参照)、一対の接触片21の後部の側縁同士を連結している。
【0036】
延長部24は、
図2に見られるように、コネクタ幅方向Yに対して直角なZX面に平行な板面をもち、連結部23の後端縁から後方X2へ直状に延びる横部24Aと、該横部24Aの後端部から下方Z2へ向けて直状に延びる縦部24Bとを有している。横部24Aは連結部23の後端縁に連結されている。接続部22は、縦部24Bの下端から下方Z2延びており、ハウジング10の端子保持部12の下面(底面)から突出し、その下端が上下方向Zで回路基板B1の実装面と同じ高さに位置している(
図1(B)参照)。接続部22は、その下端で回路基板B1の実装面上の対応回路部(図示せず)に半田接続にされて電気的に導通可能となっている。
【0037】
下側端子30は、既述した上側端子20と同様に、接触片31、接続部32、連結部33および延長部34を有しているが、延長部34の横部34Aと縦部34Bがそれぞれ上側端子20の横部24A、縦部24Bよりも短くなっている点で上側端子20と異なっている。
【0038】
ハウジング10の説明に戻る。上述した端子20,30を保持するハウジング10の端子保持溝16は、
図1(B)に見られるように、上側端子20の一対の接触片21の後部、連結部23および横部24Aを収容する上溝部16Aと、下側端子30の一対の接触片31の後部、連結部33および横部34Aを収容する下溝部16Bと、上溝部16Aおよび下溝部16Bよりも後方の領域で端子保持部12の後端そして下端まで拡がる後溝部16Cとを有している。
【0039】
図1(B)に見られるように、上溝部16Aは、端子保持部12の上部で前後方向Xに延びており、前端が受入凹部15へ向けて開口して該受入凹部15に連通しているとともに、後端が後溝部16Cに連通している。下溝部16Bは、上溝部16Aより下方に位置して前後方向Xに延びており、上溝部16Aよりも前後方向Xで短く形成されている。下溝部16Bは、その前端が上溝部16Aの前端と同位置で受入凹部15へ向けて開口して該受入凹部15に連通しており、後端が上溝部16Aの後端よりも前方X1側に位置し後溝部16Cに連通している。後溝部16Cは、既述したように端子保持部12の後端そして下端まで拡がっており、後方X2そして下方Z2へ開放されて外部と連通している。
【0040】
本実施形態では、ハウジング10に、シールド部材として、金属板部材の一部を屈曲して形成された上側外シールド板50、上側内シールド板60、下側シールド板70が取り付けられている。
【0041】
端子保持部12の後部には、後述する上側外シールド板50の被保持片52A(
図2参照)と対応する位置に、端子保持部12の後面から没した保持孔(図示せず)が形成されている。該保持孔は、後述するように、上側外シールド板50の被保持片52Aが前方X1へ向け圧入されこれを保持するようになっている。
【0042】
ハウジング10の上部では、
図1(B)に見られるように、端子保持部12の上面が嵌合部11の上面よりも下方Z2側に位置しており、嵌合部11と端子保持部12との境界域に段部10Aが形成されている。段部10Aには、嵌合部11の後部を前後方向Xに貫通する上側貫通孔10A-1が形成されている。上側貫通孔10A-1は、後述する上側内シールド板60の内接続部63に対応してコネクタ幅方向Yでの複数箇所(本実施形態では6箇所)に形成されており、内接続部63が前方から挿入されるようになっている。
【0043】
ハウジング10の下部では、
図1(B)に見られるように、端子保持部12の下面が嵌合部11の下面よりも上方Z1側に位置しており、嵌合部11と端子保持部12との境界域に段部10Bが形成されている。端子保持部12の下部の前端部から段部10Bにわたる範囲には、受入凹部15から端子保持部12の底面まで延び前方そして下方に開口する下側貫通孔10B-1が形成されている。下側貫通孔10B-1は、後述する下側シールド板70の延出部72に対応してコネクタ幅方向Yでの複数箇所(6箇所)に形成されており、延出部72を前方から受け入れるようになっている。
【0044】
上側外シールド板50は、
図1(B)および
図2に見られるように、コネクタ幅方向Yに見たときの全体形状が略L字状をなすように金属板部材を板厚方向に屈曲して作られている。上側外シールド板50は、端子保持部12の上面に沿って延びる上板部51と、端子保持部12の後面に沿って延びる後板部52と、後板部52の下端から後方X2へ屈曲されて形成された後方載置部53とを有している。上側外シールド板50は、上板部51で端子保持部12の上面のほぼ全域を覆っているとともに、後板部52で端子保持部12の後面のほぼ全域を覆っている。
【0045】
上板部51は、
図2に見られるように、コネクタ幅方向Yでハウジング10の上側貫通孔10A-1(
図1(B)参照)に対応する複数箇所(
図2では6箇所)で、コネクタ幅方向Yに見たときに上板部51の前端部でクランク状をなすように板厚方向に屈曲された外接続部51Aを有している。外接続部51Aは、上板部51における他部よりも上方に位置しており、端子保持部12の上面との間に、上側内シールド板60の後述する内接続部63を前方から受け入れるための隙間を形成している。外接続部51Aは、その下面で内接続部63の上面と接触するようになっており(
図1(B)参照)、それによって、上側外シールド板50と上側内シールド板60との電気的な導通が図られる。
【0046】
後板部52は、
図2に見られるように、コネクタ幅方向Yでハウジング10の端子保持部12の保持孔(図示せず)に対応する複数箇所(
図2では6箇所)で、後板部52の下部が前方へ向けて切り起こされて被保持片52Aが形成されている。被保持片52Aは、上側外シールド板50を端子保持部12に対して後方から取り付ける際に端子保持部12の上記保持孔に後方から圧入されて保持される。
【0047】
後方載置部53は、コネクタ幅方向Yで外接続部51Aと対応する位置のそれぞれに設けられており、
図1(B)に見られるように、後板部52の下端で後方へ向けて屈曲されて形成されている。後方載置部53は、
図1(B)に見られるように、端子20,30の接続部22,32と同じ高さに位置しており、回路基板B1の実装面の対応回路部としてのパッドに対して半田接続されて接地可能となっている。
【0048】
上側内シールド板60は、上側外シールド板50とは別体をなし、金属板部材を板厚方向に屈曲して作られている。上側内シールド板60は、
図1(B)に見られるように、ハウジング10の受入凹部15内で、該受入凹部15を形成する内壁面のうち上側の内壁面に沿って位置し、該内壁面のほぼ全域を覆っている。
【0049】
上側内シールド板60は、コネクタ幅方向Yに交互に配列した状態で形成された複数の上側長シールド接触片61および複数の上側短シールド接触片62(以下、必要に応じて「上側シールド接触片61,62」と総称する)と、上側内シールド板60の後端部に形成された複数の内接続部63と、上側内シールド板60の前端部に形成された複数の取付片64および案内部65とを有している。
【0050】
上側シールド接触片61,62は、上側内シールド板60を切り起こして形成されている。上側短シールド接触片62は、上側長シールド接触片61よりも前後方向Xで短く形成されている。上側シールド接触片61,62は、前方X1へ向かうにつれて若干下方へ傾斜するように延び、上下方向Zに弾性変位可能な片持ち梁状の弾性片として形成されており(
図1(B)参照)、その前端部で、相手側コネクタに設けられた上側シールド板(図示せず)と接触可能となっている。
【0051】
内接続部63は、
図2に見られるように、コネクタ幅方向Yでハウジング10の上側貫通孔10A-1(
図1(B)参照)に対応する複数箇所(本実施形態では6箇所)で、コネクタ幅方向Yに見たときに上側内シールド板60の後端部をクランク状に屈曲させることにより形成されている。内接続部63は、上側内シールド板60の他部よりも下方Z2に位置しており、ハウジング10の上側貫通孔10A-1を前方から貫通しているとともに、上側外シールド板50の外接続部51Aと端子保持部12の上面との間の隙間へ前方から進入している。上記隙間内に位置する内接続部63は、該内接続部63の上面で外接続部51Aの下面と接触するようになっている(
図1(B)参照)。
【0052】
取付片64は、
図2に見られるように、コネクタ幅方向Yでハウジング10の上側取付溝13A-1に対応する複数箇所(本実施形態では6箇所)にて、隣接し合う案内部65間に設けられており、上側内シールド板60の前端部をクランク状に屈曲させることにより形成されている。取付片64は、上方へ延びてから前方へ屈曲されて延びており、前方へ延びる部分で上側取付溝13A-1に前方から圧入されて保持される。
【0053】
案内部65は、上側内シールド板60の前端部を、前方X1へ向かうにつれて上方Z1へ傾斜するように屈曲させることにより形成されている。案内部65は、
図1(B)に見られるように、上壁13Aの前端側に位置しており、コネクタ嵌合の際、該案内部65の下面で相手側コネクタを受入凹部15内へ案内するようになっている。
【0054】
下側シールド板70は、
図1(B)、
図2、
図3(A),(B)に見られるように、金属板部材を板厚方向に屈曲して作られている。この下側シールド板70は、
図2では前方X1かつ上方Z1から見た斜視図として、
図3(A)は後方X2かつ上方Z1から見た斜視図、
図3(B)は、
図3(A)の下側シールド板70を上下反転し、前方X1かつ下方Z2から見た斜視図として示されている。下側シールド板70は、ハウジング10の受入凹部15内で該受入凹部15の下側の内壁面に沿って位置し該内壁面のほぼ全域を覆う下側内シールド部71と、下側内シールド部71の後端縁からクランク状に屈曲して後方へ延びる複数の状の延出部72と、下側内シールド部71の前端縁から屈曲して延びる複数の取付片73および案内部74とを有している。
【0055】
下側シールド板70は、既述した上側内シールド板60の上側シールド接触片61,62を上下反転させたような形状をなしている接触片を有している。つまり、下側内シールド部71には、上下方向に弾性変位可能な弾性片としての下側長シールド接触片75および下側短シールド接触片76(以下、必要に応じて「下側シールド接触片75,76」と総称する)がコネクタ幅方向Yに交互に位置して配列形成されている。下側シールド接触片75,76は、それらの前端部で、相手側コネクタに設けられた下側シールド板(図示せず)と弾性接触が可能となっている。
【0056】
取付片73は、コネクタ幅方向Yでハウジング10の下側取付溝13B-1に対応する複数箇所(本実施形態では6箇所)にて、隣接し合う案内部74の間に設けられており、コネクタ幅方向Yに見たときに下側内シールド部71の前端縁からクランク状をなすように屈曲して形成されている。取付片73は、上側内シールド板60の取付片64を上下反転させたような形状をなしており、下方Z2へ延びてから前方X1へ屈曲されて延びており、前方へ延びる部分で下側取付溝13B-1に前方から圧入されて保持される。
【0057】
案内部74は、既述した上側内シールド板60の案内部65を上下反転させた形状をなしており、下壁13Bの前端側に位置し、相手コネクタとの嵌合の際、該案内部74の上面で相手コネクタを受入凹部15内へ案内するようになっている。
【0058】
延出部72は、コネクタ幅方向Yでハウジング10の下側貫通孔10B-1に対応する複数箇所(本実施形態では6箇所)に設けられている。延出部72は、コネクタ幅方向Yに見たときに下側シールド板70の後端部をクランク状に屈曲させることにより形成されている。また、延出部72には、クランク状の屈曲部分に、コネクタ幅方向Yでの中央域で板厚方向に貫通する窓部77が形成されている。延出部72は、後方X2へ向けて延びてから下方Z2へ屈曲されて回路基板B1側へ向けて延び、さらに先端部で後方X2へ屈曲されて延びている。この先端部で後方X2へ延びる部分は、端子保持部12の前部位置で回路基板B1の実装面に接面可能な前方載置部72Aとして形成されている。
【0059】
プラグコネクタ1が回路基板B1上に配されたとき、プラグコネクタ1は下側シールド板70の前方載置部72Aと上側外シールド板50の後方載置部53で回路基板B1に接面し支持されることとなる。プラグコネクタ1全体としては、回路基板B1に対する接面域として、前方では前方載置部72Aで接面前域が形成され、後方載置部53で接面後域が形成される。
【0060】
本実施形態では、接面前域が下側シールド板70の前方載置部72Aで形成されることとしたが、前方載置部72Aに替えて、あるいは前方載置部72Aとともに、金属板部材である端子の一部によって接面前域が形成されてもよい。また、本実施形態では、接面後域が上側外シールド板50の後方載置部53で形成されることとしたが、後方載置部53に替えて、あるいは後方載置部53とともに、端子の一部あるいはハウジングの一部によって接面後域が形成されてもよい。
【0061】
本実施形態では、
図3(A),(B)に見られるように、下側シールド板70の前方載置部72Aは、主部72A-1と副部72A-2とを有している。主部72A-1は、延出部72の屈曲位置(延出部72における上下方向に延びる部分と前方載置部72Aとの境界位置)に対して後方部分で形成されている。主部72A-1は、コネクタ幅方向Yにて前方載置部72Aの最大幅寸法をもって形成されている。主部72A-1の前縁、すなわち窓部77の後方内縁の位置には、前方に向け開いた2つの切込み溝77Aが形成されている。副部72A-2は、2つの切込み溝77Aの間で主部72A-1の前端縁から突出して延出部72の屈曲位置よりも前方へ延びている。副部72A-2は、コネクタ幅方向Yで主部72A-1よりも小さく形成され、窓部77の範囲内に位置している。
【0062】
このように、主部72A-1から前方へ向け副部72A-2を突出形成することで、接面前域を形成する前方載置部72Aの前端がより前方へ及ぶこととなり、接面前域の前後方向範囲が前方へ向け拡大されるので、好ましくは前方載置部72Aと後方載置部53の前後方向Xでの中間位置に設定すべきプラグコネクタ1の重心を、前方載置部72A寄りに設定することができ、さらには、前方載置部72Aの接面前域の範囲内に位置させることも可能となる。この結果、プラグコネクタ1は、従来のようなキャップ等の付加的部品を用いなくても、プラグコネクタ1自体で安定した姿勢を維持して回路基板上に位置する。それ故、回路基板への実装直前において、プラグコネクタ1は転倒することなく、リフローにより容易に回路基板へ半田実装される。本実施形態によれば、プラグコネクタ1の重心を従来よりも前方に位置させることが可能となるので、プラグコネクタ1を従来よりも回路基板の前端縁に近づいた位置に載置して実装することができる。
【0063】
次に、前方載置部72Aにおける回路基板B1の実装面としてのパッドB1-1への半田固定の要領の具体例を説明する。
図4(A)は前方載置部72AとパッドB1-1を拡大して示す斜視図であり、
図4(B)は
図4(A)のIVB-IVB断面を半田フィレットFとともに示した断面図である。ここで、
図4(B)は、前方載置部72AがパッドB1-1に半田固定された状態における、コネクタ幅方向YのIVB-IVB位置、すなわち、副部72A-2よりもY2側の位置での断面を示している。この
図4(B)では、半田のフィレットFについて、断面として示されている部分にはハッチングが付されている。
図4(A),(B)に見られるように、パッドB1-1は回路基板B1の前端縁B1-Aにまでは達していない。つまり、パッドB1-1は回路基板B1の前端縁B1-Aよりも若干後方に位置しており、パッドB1-1の前縁と回路基板B1の前端縁B1-Aとの間に位置する部分は、半田付けできない部分(以下、「半田不可部分」という)となっている。
【0064】
この
図4(A),(B)の例では、主部72A-1はその下面の全域がパッドB1-1に接面して半田固定され、副部72A-2はその突出先端部としての前部72A-2AがパッドB1-1の前縁から突出していて半田固定されず、副部72A-2の後部72A-2Bのみがその下面でパッドB1-1に接面して半田固定されている。また、副部72A-2の前部72A-2Aは、回路基板B1の前端縁B1-Aの位置にまで達している。
【0065】
例えば、回路基板B1の実装面のスペース上の問題からパッドB1-1を回路基板B1の前端縁B1-Aまで達する範囲に形成することができない場合、すなわち、回路基板B1の前端縁B1-AとパッドB1-1の前縁との間に半田不可部分が存在している場合であっても、
図4(A),(B)に示されるような位置関係で前方載置部72AをパッドB1-1に配置して、前方載置部72Aの副部72A-2の前部72A-2Aを上記半田不可部分の範囲に位置させることで、該半田不可部分を前部72A-2Aが接面可能な領域として有効利用できる。
【0066】
図4(A),(B)のように配置された前方載置部72AがパッドB1-1に半田固定されると、
図4(B)に見られるように、半田固定された前方載置部72AとパッドB1-1との間には、下面だけでなく端面に半田のフィレットFが形成される。具体的には、パッドB1-1と接面する主部72A-1と副部72A-2の後部72A-2Bのそれぞれの端面(板厚面)に、パッドB1-1の面から立ち上がるフィレットFが形成される。また、本実施形態では、副部72A-2はコネクタ幅方向Yで主部72A-1よりも小さく形成されているので、コネクタ幅方向Yでの副部72A-2のパッドB1-1上の両側にフィレットFが形成され、更に主部72A-1の前面72A-1A(板面)が位置しており、この主部72A-1の前面72A-1Aにも、
図4(B)に見られるように、十分な高さのフィレットFが形成される。このように主部72A-1の前面72A-1AにもフィレットFが形成されることにより、半田固定の強度が向上する。
【0067】
図4(A),(B)に示される例では、前方載置部72Aの副部72A-2はその後部72A-2BのみがパッドB1-1に半田固定されたが、
図5(A),(B)のごとく、パッドB1-1が前後方向で前方載置部72A全体を含む範囲に形成されている場合には、前方載置部72Aは主部72A-1のみならず副部72A-2も下面全域でパッドB1-1に半田固定され、主部72A-1、副部72A-2の全周にわたってフィレットFを形成することができる。
【0068】
図5(A)は前方載置部72AとパッドB1-1を拡大して示す斜視図であり、
図5(B)は
図5(A)のVB-VB断面を半田フィレットFとともに示した断面図である。ここで、
図5(B)は、前方載置部72AがパッドB1-1に半田固定された状態における、コネクタ幅方向YのIVB-IVB位置、すなわち、副部72A-2よりもY2側の位置での断面を示している。この
図5(B)では、半田のフィレットFについて、断面として示されている部分にはハッチングが付されている。
【0069】
図5(A),(B)に見られるように副部72A-2の前端が前後方向でパッドB1-1の前縁と同位置にある場合、副部72A-2の前端面に形成されるフィレットFは他部のフィレットFに比べて低くなるが(
図5(B)参照)、副部72A-2の両側縁の端面(板厚面)で前後方向Xの全長にわたる範囲に十分な高さのフィレットFを形成できるので、半田固定の強度は十分に確保される。ここで、上記「同位置」には、
図5(A),(B)のように副部72A-2の前端がパッドB1-1の前縁よりも若干後方に位置している場合のみならず、副部72A-2の前端の位置がパッドB1-1の前縁と一致する位置にある場合も含まれる。換言すると、前後方向にて副部72A-2の前端とパッドB1-1の前縁との間に十分な高さのフィレットFが形成されない、あるいはフィレットFが全く形成されないような位置関係が「同位置」である。
【0070】
本実施形態では、副部72A-2が前方載置部72Aに1つだけ形成されることとしたが、副部72A-2の数はこれに限られず、変形例として、コネクタ幅方向Yで間隔をもって複数の副部が形成されていてもよい。このように複数の副部を形成することにより、その分、副部の周縁が長くなるので、広い範囲でフィレットが形成されて前方載置部の半田固定の強度が向上する。
【0071】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態をレセプタクルコネクタの例として説明する。この第二実施形態のレセプタクルコネクタは、これに対応する相手方としてのプラグコネクタと嵌合接続されるもので、第一実施形態のプラグコネクタと嵌合接続されるものではない。
【0072】
本実施形態のレセプタクルコネクタ2は、
図6(A),(B)に見られるように、回路基板B2の実装面に上方から配置されて実装されるようになっているとともに、回路基板B2の実装面に沿う一方向をなす前後方向Xをコネクタ挿抜方向として前方側(X1側)から相手側コネクタ(図示しないプラグコネクタ)が嵌合接続されるようになっている。以下、レセプタクルコネクタ2については、前後方向Xにおいて、X1を「前方」とし、X2を「後方」とする。
【0073】
レセプタクルコネクタ2は、
図6(A),(B)に見られるように、電気絶縁材製で略直方体外形に作られたハウジング110と、ハウジング110に配列保持される複数の金属製の上側端子120および金属製の下側端子130と、ハウジング110に取り付けられる金属製の上側外シールド板150および上側内シールド板160、および下側シールド板170とを有している(
図7をも参照)。以下、必要に応じて、上側外シールド板150、上側内シールド板160および下側シールド板170を「シールド板150,160,170」と総称することがある。
【0074】
ハウジング110は、
図6(A)に見られるように、上下方向Zで対向してコネクタ幅方向Yに延びる一対の上壁111および下壁112と、コネクタ幅方向Yでのハウジング110の両端位置で上下方向Zに延び上壁111の端部と下壁112の端部とを連結する一対の端壁113とを有している。上壁111、下壁112および一対の端壁113によって、コネクタ嵌合状態にて相手方たるプラグコネクタの受入凹部(図示せず)内に嵌入する相手側嵌合周壁が形成されている。
【0075】
また、ハウジング110は、上下方向Zでの中央位置にてコネクタ幅方向Yに延び端壁113の内壁面同士を連結する一つの隔壁114を有している。相手側嵌合周壁によって囲まれた空間は、上記一つの隔壁114によって上下方向Zで二つの小空間に仕切られている。それぞれの小空間は相手方たるプラグコネクタの端子配列部を受け入れるための受入空間115をなしている。
【0076】
受入空間115内には、複数の端子120,130がコネクタ幅方向Yに配列された状態で収容されている。受入空間115は、
図6(B)に見られるように、前後方向Xでハウジング110を貫通しており、後述するように、後方X2から端子120,130を圧入することが可能となっている。各受入空間115を形成する上側の内壁面および下側の内壁面、すなわち、上側の受入空間115については上壁111の下面および隔壁114の上面、下側の受入空間115については隔壁114の下面および下壁112の上面には、
図6(B)に見られるように、端子120,130の後述する接触片121,131を収容する端子溝115Aが前後方向Xに延びて形成されている。
【0077】
上壁111には、
図7に見られるように、コネクタ幅方向Yでの複数箇所(本実施形態では6箇所)にて、該上壁111の前端部(X1側の端部)の上面から没した上側取付溝111Aが形成されている。上側取付溝111Aは、上方Z1および前方X1へ開放されており、後述するように前方から圧入された上側内シールド板160の取付片162を保持するようになっている。また、上壁111の前端部の上面には、コネクタ幅方向Yで隣接し合う上側取付溝111Aの間に、前方へ向かうにつれて下方へ傾斜する上側傾斜面111Bが形成されている。
【0078】
ハウジング110の下壁112は、既述した上壁111を上下反転させたような形状をなしている。下壁112の形状は、上下反転している点を除いて上壁111と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0079】
ハウジング110で保持される上側端子120および下側端子130は、
図2に示された第一実施形態の上側端子20および下側端子30と基本的に同じ形状をなしている。本実施形態の端子120,130については、第一実施形態の端子20,30との相違する部分を中心に説明し、共通する部分については詳細な説明を省略する。端子120,130において端子20,30と対応する部分については、端子20,30の各部の符号に「100」を加えた符号で示す。
【0080】
端子120,130は、第一実施形態の端子20,30と同様に、金属板部材を打ち抜くとともに板厚方向に屈曲した形状をなして作られている。端子120,130は、それぞれ、コネクタ幅方向Yに見たときに全体が略L字状をなしている(
図7参照)。上側端子120は、
図7に見られるように、一端側に形成された一対の接触片121と、他端側に形成された接続部122と、一対の接触片121同士を連結する連結部123と、連結部123の後端から接続部122へ向けて上下方向で直状に延びる直状部124とを有している。また、下側端子130は、
図7に見られるように、一端側に形成された一対の接触片131と、他端側に形成された接続部132と、一対の接触片131同士を連結する連結部133と、連結部133の後端から接続部132へ向けて上下方向で直状に延びる直状部134とを有している。一対の接触片121および一対の接触片131は、それぞれ板厚方向、すなわち上下方向Zに弾性変位可能となっており、それらの前端部で、プラグコネクタに設けられた相手端子に弾性接触可能となっている。
【0081】
本実施形態では、ハウジング110に、金属板部材の一部を屈曲して形成された上側外シールド板150、上側内シールド板160、下側シールド板170が取り付けられている。
【0082】
上側外シールド板150は、第一実施形態における上側外シールド板50と同じ形態をなしているので、共通部分には第一実施形態における該当符号に「100」を加えた符号を付すことで、その説明を省略する。本実施形態では、後方載置部153で接面後域が形成されている。
【0083】
上側内シールド板160および下側シールド板170は、
図7および
図8(A),(B)に見られるように、後述の一部を除いて、互いに類似した形状をなしている。ここでは、上側内シールド板160の構成を中心に説明し、下側シールド板170については、上側内シールド板160との類似点に関して、上側内シールド板160での符号に「10」を加えた符号を付して説明を省略し、相違点について説明する。
【0084】
上側内シールド板160は、ハウジング110の上壁111の上面を覆うように取り付けられる。上側内シールド板160は、上壁111上面に対面するシールド面をもつシールド板本体部161と、シールド板本体部161の前縁部(X1側の縁部)に設けられた取付片162および被案内部163と、シールド板本体部161の後縁部(X2側の縁部)に設けられた内接続部164とを有している。
【0085】
シールド板本体部161は、
図6(A)に見られるように、コネクタ幅方向Yにて端子配列範囲全域にわたって延びる平板状をなしている。取付片162は、コネクタ幅方向Yでハウジング110の上側取付溝111Aに対応する複数箇所(本実施形態では6箇所)に設けられており、コネクタ幅方向Yに見たときにシールド板本体部161の前端縁からクランク状をなすように屈曲して形成されている。取付片162は、下方Z2へ延びてから前方X1へ屈曲されて延びており、前方X1へ延びる部分で上側取付溝111Aに前方から圧入されて保持される。
【0086】
被案内部163は、
図6(A)および
図7に見られるように、コネクタ幅方向Yでの隣接し合う取付片162の間に設けられており、シールド板本体部161の前端縁から、前方X1へ向かうにつれて下方Z2へ傾斜するように屈曲させることにより形成されている。被案内部163は、上壁111の上側傾斜面111Bに沿って延びている(
図6(B)参照)。被案内部163は、コネクタ嵌合の際、被案内部163の上面でコネクタの対応案内部(図示せず)によってプラグコネクタの対応受入凹部(図示せず)内へ案内されるようになっている。
【0087】
内接続部164は、コネクタ幅方向Yでの複数箇所(本実施形態では6箇所)、具体的にはコネクタ幅方向Yで取付片162と同位置に設けられており、シールド板本体部161の後端縁で後方へ向けて延びている。内接続部164は、既述の上側外シールド板150の外接続部151Aの内面と接触するようになっている。
【0088】
下側シールド板170は、上側内シールド板160の内接続部164以外で上側内シールド板160と同じ形状をなしており、上側内シールド板160に対して上下反転させた姿勢で、ハウジング110の下壁112の底面を覆うように取り付けられている。
【0089】
下側シールド板170は、上側内シールド板160を上下反転した形状との相違点は、
図7、
図8に見られるごとく、上側内シールド板160の内接続部164に替えて、後述の延出部174が設けられていることである。延出部174は、シールド板本体部171の後端から後方X2へ向けて延びてから下方Z2へ屈曲されて回路基板B1側へ向けて延び、さらに先端部で前方X1へ屈曲されて延びている。この先端部で前方X1へ延びる部分は、回路基板B2の実装面に接面可能な前方載置部174Aとして形成されている。この前方載置部174Aは、回路基板B2に接面し、レセプタクルコネクタ2にとっては、回路基板に接面する接面域のうち、接面前域を形成することとなる。
【0090】
前方載置部174Aは、
図8(A),(B)に見られるように、コネクタ幅方向Yに延びる主部174A-1と、コネクタ幅方向Yで主部174A-1よりも小さく形成され、コネクタ幅方向Yでの主部174A-1の中間部の前縁から前方へ突出しする副部174A-2とを有している。
【0091】
このように、主部174A-1からの前縁から前方へ向け副部174A-2を突出形成することで、接面前域を形成する前方載置部174Aの前端がより前方へ及ぶこととなり、接面前域の前後方向範囲が前方へ向け拡大されるので、好ましくは前方載置部174Aと後方載置部153の前後方向Xでの中間位置に設定すべきレセプタクルコネクタ2の重心を、前方載置部174A寄りに設定することができ、さらには、前方載置部174Aの接面前域の範囲内に位置させることも可能となる。この結果、レセプタクルコネクタ2は、従来のようなキャップ等の付加的部品を用いなくても、レセプタクルコネクタ2自体で安定した姿勢を維持して回路基板上に位置する。それ故、回路基板への実装直前において、レセプタクルコネクタ2は転倒することなく、リフローにより容易に回路基板へ半田実装される。本実施形態によれば、レセプタクルコネクタ2の重心を従来よりも前方に位置させることが可能となるので、レセプタクルコネクタ2を従来よりも回路基板の前端縁に近づいた位置に載置して実装することができる。
【0092】
次に、前方載置部174Aにおける回路基板B2の実装面としてのパッドB2-1への半田固定の要領の具体例を説明する。
図9(A)は前方載置部174AとパッドB2-1を拡大して示す斜視図であり、
図9(B)は
図9(A)のIXB-IXB断面を半田フィレットFとともに示した断面図である。ここで、
図9(B)は、前方載置部174AがパッドB2-1に半田固定された状態における、コネクタ幅方向YのIXB-IXB位置、すなわち、副部174A-2よりもY2側の位置での断面を示している。この
図9(B)では、半田のフィレットFについて、断面として示されている部分にはハッチングが付されている。
図9(A),(B)の例では、パッドB2-1は回路基板B2の前端縁B2-Aにまでは達していない。つまり、パッドB2-1は回路基板B2の前端縁B2-Aよりも若干後方に位置しており、パッドB2-1の前縁と回路基板B1の前端縁B2-Aとの間に位置する部分は、半田不可部分なっている。
【0093】
この
図9(A),(B)の例では、主部174A-1はその下面の全域がパッドB2-1に接面して半田固定され、副部174A-2は突出先端部としての前部174A-2AがパッドB2-1の前縁から突出していて半田固定されず、副部174A-2の後部174A-2Bのみがその下面でパッドB2-1に接面して半田固定されている。
【0094】
第一実施形態にて
図4(A),(B)に基づいて説明したのと同様に、
図9(A),(B)に示されるような位置関係で前方載置部174AをパッドB2-1に配置して、前方載置部174Aの副部174A-2の前部174A-2Aを上記半田不可部分の範囲に位置させることで、該半田不可部分を前部174A-2Aが接面可能な領域として有効利用できる。
【0095】
図9(A),(B)のように配置された前方載置部174AがパッドB2-1に半田固定されると、
図9(B)に見られるように、半田固定された前方載置部174AとパッドB2-1との間には、半田のフィレットFが形成される。具体的には、パッドB2-1と接面する主部174A-1と副部174A-2の後部174A-2Bのそれぞれの端面(板厚面)および主部174A-1の後面(板面)に、パッドB2-1の面から立ち上がるフィレットFが形成される。
【0096】
本実施形態では、副部174A-2はコネクタ幅方向Yで主部174A-1よりも小さく形成されているので、コネクタ幅方向Yでの副部174A-2の両側に主部174A-1の前端面174A-1A(板厚面)が位置している。この主部174A-1の前端面174A-1Aに十分な高さのフィレットFを形成することにより(
図9(B)参照)、半田固定の強度を向上させることができる。
【0097】
図9(A),(B)に示される例では、前方載置部174Aの副部174A-2はその後部174A-2BのみがパッドB2-1に半田固定されたが、
図10(A),(B)のごとく、パッドB2-1が前後方向で前方載置部174A全体を含む範囲に形成されている場合には、前方載置部174Aは主部174A-1のみならず副部174A-2も下面全域でパッドB2-1に半田固定され、主部174A-1、副部174A-2の全周にわたってフィレットFを形成することができる。
【0098】
図10(A)は前方載置部174AとパッドB2-1を拡大して示す斜視図であり、
図10(B)は
図10(A)のXB-XB断面を半田フィレットFとともに示した断面図である。ここで、
図10(B)は、前方載置部174Aを通常状態よりもパッドB2-1の前方に配置して半田固定された状態における、コネクタ幅方向YのXB-XB位置、すなわち、副部174A-2よりもY2側の位置での断面を示している。この
図10(B)では、半田のフィレットFについて、断面として示されている部分にはハッチングが付されている。
【0099】
図10(A),(B)に見られるように、副部174A-2の前端が前後方向でパッドB2-1の前縁と同位置にある場合、副部174A-2の前端面に形成されるフィレットFは他部のフィレットFに比べて低くなるが(
図10(B)参照)、副部174A-2のコネクタ幅方向Yでの両側縁の端面(板厚面)で前後方向Xの全長にわたる範囲に十分な高さのフィレットFを形成できるので、半田固定の強度は十分に確保される。ここで、上記「同位置」は、第一実施形態で説明した「同位置」と同様に定義される。
【0100】
本実施形態の変形例として、前方載置部に複数の副部を形成してもよいことは、第一実施形態について説明したのと同様である。
【符号の説明】
【0101】
1 プラグコネクタ(コネクタ)
2 レセプタクルコネクタ(コネクタ)
10 ハウジング
11 嵌合部
70 下側シールド板(金属板部材)
72 延出部
72A 前方載置部(載置部)
72A-1 主部
72A-2 副部
72A-2A 前部(突出先端部)
77A 切込み溝
110 ハウジング
170 下側シールド板(金属板部材)
174 延出部
174A 前方載置部
174A-1 主部
174A-2 副部
174A-2A 前部(突出先端部)
X 前後方向
Y コネクタ幅方向
Z 上下方向