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特許7412865基板搬送ロボット、基板搬送システムおよび基板搬送方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】基板搬送ロボット、基板搬送システムおよび基板搬送方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20240105BHJP
   B65G 49/07 20060101ALI20240105BHJP
   B25J 9/06 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B65G49/07 C
B25J9/06 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021540710
(86)(22)【出願日】2020-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2020029834
(87)【国際公開番号】W WO2021033534
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】16/548,041
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517340611
【氏名又は名称】カワサキロボティクス(ユーエスエー),インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 淳一
(72)【発明者】
【氏名】倉田 伊織
(72)【発明者】
【氏名】在田 智一
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-135630(JP,A)
【文献】国際公開第2017/037976(WO,A1)
【文献】特開2017-074644(JP,A)
【文献】特開2000-133690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B65G 49/07
B25J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送室内に設置される基台と、
水平面内で回動する少なくとも3つのリンクを有し、前記基台に連結されるアームと、
前記アームの先端部に鉛直のハンド軸周りに回転可能に連結され、基板を支持する第1ハンドおよび第2ハンドと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1ハンドを前記搬送室から前記搬送室と開口を介して連通された収容室内に進入させ、前記収容室内で前記基板を載置する載置部と前記第1ハンドとの間で前記基板を移載する第1移載処理と、
前記第1ハンドを前記収容室から前記搬送室へ退出させる退出処理と、
前記第2ハンドを前記搬送室から前記収容室内に進入させ、前記載置部と前記第2ハンドとの間で前記基板を移載する第2移載処理と、を実行するように構成され、
前記少なくとも3つのリンクのうちの前記基台に接続される第1リンクにおける基端側の第1回転軸が、前記開口に垂直な前記開口の中心線から離れた位置に配置され、
前記退出処理において、前記制御装置は、
前記ハンド軸が、前記第1ハンドの基準位置と比べ、前記中心線から離れていくように、前記アームおよび前記第1ハンドの動作を制御し、
前記ハンド軸が、前記第1回転軸と、前記少なくとも3つのリンクのうちの前記第1ハンドおよび前記第2ハンドと連結される第2リンクにおける基端側の第2回転軸とに対して、前記中心線を基準として反対側に位置するように、前記アームの動作を制御し、
前記少なくとも3つのリンクのうちの前記第1リンク以外の前記リンクそれぞれの基端側の回転軸と、前記ハンド軸と、前記第1ハンドの前記基準位置と、前記第2ハンドの基準位置とが、前記第1回転軸から前記中心線に向かう第1方向に前記第1回転軸に対して位置するように、前記アーム、前記第1ハンドおよび前記第2ハンドの動作を制御するように構成されている、
基板搬送ロボット。
【請求項2】
前記搬送室が、前記中心線の延在方向に延びる前壁部および後壁部と、前記前壁部および前記後壁部を連結する側壁部とにより形成され、前記開口が前記側壁部に開放され、
前記退出処理において、前記制御装置は、前記ハンド軸を前記延在方向に移動させながら前記前壁部および前記後壁部の一方に近づけるようにして、前記アームおよび前記第1ハンドの動作を制御するように構成されている、
請求項に記載の基板搬送ロボット。
【請求項3】
前記前壁部および前記後壁部が、前記側壁部よりも長尺である、
請求項に記載の基板搬送ロボット。
【請求項4】
前記退出処理において、前記制御装置は、前記第1ハンドと前記第2ハンドとの間の角度が小さくなるように、前記第2ハンドの動作を制御するように構成されている、
請求項1~のいずれか一項に記載の基板搬送ロボット。
【請求項5】
搬送室内に設置される基台と、水平面内で回動する少なくとも3つのリンクを有し、前記基台に連結されるアームと、前記アームの先端部に鉛直のハンド軸周りに回転可能に連結され、基板を支持する第1ハンドおよび第2ハンドと、制御装置と、を備える基板搬送ロボットと、
前記搬送室と、
容室を形成し、前記収容室内に載置部を有する収容室形成部と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1ハンドを前記搬送室から前記搬送室と開口を介して連通された前記収容室内に進入させ、前記収容室内で前記基板を載置する前記載置部と前記第1ハンドとの間で前記基板を移載する第1移載処理と、
前記第1ハンドを前記収容室から前記搬送室へ退出させる退出処理と、
前記第2ハンドを前記搬送室から前記収容室内に進入させ、前記載置部と前記第2ハンドとの間で前記基板を移載する第2移載処理と、を実行するように構成され、
前記少なくとも3つのリンクのうちの前記基台に接続される第1リンクにおける基端側の第1回転軸が、前記開口に垂直な前記開口の中心線から離れた位置に配置され、
前記退出処理において、前記制御装置は、
前記ハンド軸が、前記第1ハンドの基準位置と比べ、前記中心線から離れていくように、前記アームおよび前記第1ハンドの動作を制御し、
前記ハンド軸が、前記第1回転軸と、前記少なくとも3つのリンクのうちの前記第1ハンドおよび前記第2ハンドと連結される第2リンクにおける基端側の第2回転軸とに対して、前記中心線を基準として反対側に位置するように、前記アームの動作を制御し、
前記少なくとも3つのリンクのうちの前記第1リンク以外の前記リンクそれぞれの基端側の回転軸と、前記ハンド軸と、前記第1ハンドの前記基準位置と、前記第2ハンドの基準位置とが、前記第1回転軸から前記中心線に向かう第1方向に前記第1回転軸に対して位置するように、前記アーム、前記第1ハンドおよび前記第2ハンドの動作を制御するように構成されている、
基板搬送システム。
【請求項6】
搬送室内に設置される基台と、水平面内で回動する少なくとも3つのリンクを有し、前記基台に連結されるアームと、前記アームの先端部に鉛直のハンド軸周りに回転可能に連結され、基板を支持する第1ハンドおよび第2ハンドと、制御装置と、を備える基板搬送ロボットで基板を搬送する方法であって、
前記第1ハンドを前記搬送室から前記搬送室と開口を介して連通された収容室内に進入させ、前記収容室内で前記基板を載置する載置部と前記第1ハンドとの間で前記基板を移載する第1移載工程と、
前記ハンド軸が、前記第1ハンドの基準位置と比べ、前記開口に垂直な前記開口の中心線から離れていくようにして、前記第1ハンドを前記収容室から前記搬送室へ退出させる退出工程と、
前記第2ハンドを前記搬送室から前記収容室内に進入させ、前記載置部と前記第2ハンドとの間で前記基板を移載する第2移載工程と、を備え、
前記少なくとも3つのリンクのうちの前記基台に接続される第1リンクにおける基端側の第1回転軸が、前記中心線から離れた位置に配置され、
前記退出工程では、
前記ハンド軸が、前記第1回転軸と、前記少なくとも3つのリンクのうちの前記第1ハンドおよび前記第2ハンドと連結される第2リンクにおける基端側の第2回転軸とに対して、前記中心線を基準として反対側に位置するように、前記アームの動作を制御し、
前記少なくとも3つのリンクのうちの前記第1リンク以外の前記リンクそれぞれの基端側の回転軸と、前記ハンド軸と、前記第1ハンドの前記基準位置と、前記第2ハンドの基準位置とが、前記第1回転軸から前記中心線に向かう第1方向に前記第1回転軸に対して位置するように、前記アーム、前記第1ハンドおよび前記第2ハンドの動作を制御する、
基板搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板搬送ロボット、基板搬送システムおよび基板搬送方法に関する。詳細には、本開示は、搬送室内で基板を搬送し、また、搬送室と開口を介して連通された収容室内の載置部とハンドとの間で基板を移載する基板搬送ロボットに関する。特に、本開示は、基板を支持する第1および第2ハンドを備えた基板搬送ロボットに関する。本開示は、基板搬送ロボットを備えた基板搬送システム、および、基板搬送ロボットで基板を搬送する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、搬送室内で半導体ウェハのような基板を搬送する基板搬送ロボットを開示している。この基板搬送ロボットは、水平多関節型のアームと、基板を支持する1または2つのハンドとを備える。ハンドを収容室から搬送室へ退出させるとき、ハンドおよびその回動中心が、収容室の開口に垂直な方向へ真っ直ぐ移動する。ハンドの退出後、当該ハンドを搬送室内で移動させたり、別のハンドを収容室へ進入させたりするため、1または2つのハンドを回動させる必要がある。回動中にハンドが搬送室を区画する壁と干渉するのを防ぐため、退出後回動前にアームを複雑に動作させると、スループットが低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-228627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板搬送ロボットのスループット向上を目的とする。
【0005】
本開示の一態様に係る基板搬送ロボットは、搬送室内に設置される基台と、水平面内で回動する複数のリンクを有し、前記基台に連結されるアームと、前記アームの先端部に鉛直のハンド軸周りに回転可能に連結され、基板を支持する第1ハンドおよび第2ハンドと、制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記第1ハンドを前記搬送室から前記搬送室と開口を介して連通された収容室内に進入させ、前記収容室内で前記基板を載置する載置部と前記第1ハンドとの間で前記基板を移載する第1移載処理と、前記第1ハンドを前記収容室から前記搬送室へ退出させる退出処理と、前記第2ハンドを前記搬送室から前記収容室内に進入させ、前記載置部と前記第2ハンドとの間で前記基板を移載する第2移載処理と、を実行するように構成されている。前記退出処理において、前記制御装置は、前記ハンド軸が、前記第1ハンドの基準位置と比べて、前記開口に垂直な前記開口の中心線から離れていくように、前記アームおよび前記第1ハンドの動作を制御するように構成されている。
【0006】
上記構成によれば、第1ハンドの退出中、当該ハンドは開口の中心線に近い状態を保つ。よって、当該ハンドが収容室の内面あるいは開口の縁と干渉するのを抑止できる。他方、ハンド軸は開口の中心線から離れていく。搬送室を区画する壁のうち、中心線の延在方向に延びる壁から、ハンド軸が大きく遠ざかる。よって、退出後、第1ハンドおよび第2ハンドは当該壁と干渉することなくハンド軸周りに回転できる。退出後のアームの動作を省略あるいは簡略化でき、退出処理から第2移載処理へと速やかに移行できる。したがって、基板搬送ロボットのスループットが向上する。
【0007】
本開示の一態様に係る基板搬送システムは、基板が搬送される搬送室と、前記搬送室と開口を介して連通する収容室を形成し、前記収容室内に前記基板を載置する載置部を有する収容室形成部と、本開示の一態様に係る基板搬送ロボットと、を備える。
【0008】
本開示の一態様に係る基板搬送方法は、基板搬送ロボットで基板を搬送する方法であって、前記基板搬送ロボットが、搬送室内に設置される基台と、水平面内で回動する複数のリンクを有し、前記基台に連結されるアームと、前記アームの先端部に鉛直のハンド軸周りに回転可能に連結され、基板を支持する第1ハンドおよび第2ハンドと、を備える。前記方法が、前記第1ハンドを前記搬送室から前記搬送室と開口を介して連通された収容室内に進入させ、前記収容室内で前記基板を載置する載置部と前記第1ハンドとの間で前記基板を移載する第1移載工程と、前記ハンド軸が、前記第1ハンドの基準位置と比べ、前記開口に垂直な前記開口の中心線から離れていくようにして、前記第1ハンドを前記収容室から前記搬送室へ退出させる退出工程と、前記第2ハンドを前記搬送室から前記収容室内に進入させ、前記載置部と前記第2ハンドとの間で前記基板を移載する第2移載工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る基板搬送システムを示す平面図である。
図2図2は、実施形態に係る第1および第2ハンドを示す平面図である。
図3図3は、実施形態に係る基板搬送ロボットを示すブロック図である。
図4図4は、実施形態に係る基板搬送方法の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、実施形態に係る退出処理を示す平面図である。
図6図6は、実施形態に係る退出処理を示す概念図である。
図7図7は、参考例に係る退出処理を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の便宜上、図1の上下方向を、水平な「第1方向」の一例として「前後方向X」と称することがある。図1の左右方向を、第1方向に垂直でありかつ水平な「第2方向」の一例として「左右方向Y」と称することがある。
【0011】
図1は、実施形態に係る基板搬送システム100を示す平面図である。図1に示すように、基板搬送システム100は、搬送室1と、搬送室1と連通する複数の収容室2-4を形成する収容室形成部5-7と、搬送室1内に設置される基板搬送ロボット20とを備えている。
【0012】
基板搬送ロボット20は、搬送室1内で基板90を搬送する。基板90は、例えば、円盤状の半導体ウェハであり、搬送室1および収容室2-4はクリーン化される。収容室2-4は、収容室形成部5-7によって形成され、基板90を収容する。「収容室」は、基板90を収容して保管するための空間でもよいし、基板90を収容して基板90に処理を施すためあるいは処理の準備のための空間でもよい。保管目的の場合、収容室形成部としてFOUP(Front Opening Unified Pod)を例示できる。処理目的の場合、収容室形成部は、洗浄処理、成膜処理、リソグラフィー処理、不純物注入処理、熱処理または平坦化処理のような、基板工程の各種処理を行う処理装置である。参照符号8は、搬送室1内に設置され、基板90の位置合わせを行うアライナである。
【0013】
搬送室1は、一例として、平面視で長方形状に形成されている。基板搬送システム100は、搬送室1を区画する壁として、前壁部11、後壁部12、第1側壁部13および第2側壁部14を備えている。前壁部11および後壁部12は、互いに前後方向Xに離れ、それぞれ左右方向Yに延びる。第1側壁部13および第2側壁部14は、互いに左右方向Yに離れ、それぞれ前後方向Xに延びる。第1側壁部13は、前壁部11および後壁部12の一端同士を連結し、第2側壁部14は、前壁部11および後壁部12の他端同士を連結する。
【0014】
収容室形成部5-7は、搬送室1を区画する壁11-14の外面に取り付けられている。収容室2-4は、壁11-14に形成される開口を介し、搬送室1と連通する。本実施形態では、前壁部11に4つの収容室形成部7が設けられ、後壁部12に2つの収容室形成部6が設けられ、第1側壁部13に1つの収容室形成部5が設けられ、第2側壁部14に1つの収容室形成部5が設けられており、各壁11-14に収容室形成部の個数と対応する1以上の開口が形成されている。前壁部11に設けられた収容室形成部7はFOUPでもよい。FOUPの個数は、4の他、2、3または5以上でもよい。後壁部12に設けられた収容室形成部6の個数も、1以上であればよく、適宜変更可能である。
【0015】
第1側壁部13と第2側壁部14には、同種同形状の収容室形成部5が設けられている。収容室形成部5の収容室2の各々は、対応する側壁部13,14に形成された開口15を介し、搬送室1と連通する。平面視において、第1側壁部13の開口15の中心線C15は、第2側壁部14の開口15の中心線C15と同軸状であり、左右方向Yに延在する。中心線C15に垂直な水平方向が、「第1方向」としての前後方向Xである。本実施形態では、開口15の中心線C15が、前後方向Xにおいて前壁部11と後壁部12との中央部を通過し、搬送室1の中心線も兼ねている。
【0016】
詳細図示を省略するが、収容室形成部5は、収容室2内で、複数の基板90を上下方向に並べた状態で収容できる。そのために、収容室形成部5は、上下方向に並ぶ複数の載置部を有する。例えば、各載置部は、収容室2内で上下方向に同位置にあり且つ周方向に離れて配置される複数の爪で構成される。基板90の周縁部が載置部を構成する複数の爪に載置されることで、1枚の基板90が1つの載置部に支持される。他の収容室3,4の各々にも1以上の載置部が設けられている。載置部の構成は、特に限定されない。
【0017】
基板搬送ロボット20は、基台21と、昇降軸22と、アーム23と、第1ハンド31と、第2ハンド32とを備えている。基台21は、搬送室1内に設置される。昇降軸22は基台21から上方に延びる。アーム23は、複数のリンク24-26を有し、昇降軸22を介して基台21に連結される。本実施形態では、一例として、リンク24-26の個数が3である。基端リンク24の基端部が、昇降軸22に第1アーム軸L1周りに回転可能に連結される。中間リンク25の基端部が、基端リンク24の先端部に第2アーム軸L2周りに回転可能に連結される。先端リンク26の基端部が、中間リンク25の先端部に第3アーム軸L3周りに回転可能に連結される。基端リンク24の基端部および先端リンク26の先端部は、アーム23全体の基端部および先端部をそれぞれ構成する。2つのハンド31,32は、アーム23の先端部に、ハンド軸LH周りに回転可能に連結されている。
【0018】
基板搬送ロボット20あるいはそのアーム23は、水平多関節型である。アーム軸L1-L3およびハンド軸LHが鉛直に向けられており、リンク24-26およびハンド31,32が水平面内で回動する。2つのハンド31,32の回転軸は同軸状である一方、2つのハンド31,32は互いに独立して回転可能である。2つのハンド31,32は、先端リンク26上で上下に積み重ねられているので、回転角によらず互いに干渉しない。
【0019】
前壁部11および後壁部12は、第1および第2側壁部13,14よりも長尺である。搬送室1は、左右方向Yに相対的に長く、前後方向Xに相対的に短い。前壁部11および後壁部12が搬送室1の長手方向に延びる一対の長辺壁であり、側壁部13,14が搬送室1の短手方向に延びる一対の短辺壁である。前壁部11と後壁部12との間の距離は、800mm以下、700mm以下、600mm以下または550mm以下である。前壁部11の収容室形成部7がFOUPである場合、前壁部11にはFOUPを開閉するためのFOUPオープナが設けられる。この場合、後壁部12とFOUPオープナとの間の距離の最小値が、800mm以下、700mm以下、600mm以下または550mm以下であってもよい。なお、後壁部12とFOUPオープナとの間の距離は、FOUPオープナの動作中に変化する場合がある。
【0020】
基台21は、搬送室1内で左右方向Yにおいて中央部に配置されている。基台21は、搬送室1内で開口15(および搬送室1)の中心線C15を基準にして、前後方向Xの一方に偏在している。本実施形態では、一例として、基台21は、後方に偏在し、後壁部12に近接している。別の言い方では、昇降軸22、第1アーム軸L1およびアーム23の基端部が、中心線C15を基準に前後方向Xの一方に偏在している。平面視において、基端リンク24の一部と第1アーム軸L1との間の距離が、後壁部12のうち第1アーム軸L1に最も近い点と第1アーム軸L1との間の距離よりも大きい程度に、基台21が前壁部11および後壁部12の一方寄り(本例では、後壁部12寄り)に配置されている。また、アーム23を構成する各リンク24-26、および、基板90を保持した状態でのハンド31,32の長さ(長手方向寸法)は、前壁部11と後壁部12との間の距離よりも短い一方、どの収容室2-4にもハンド31,32を進入させることができる程度に十分に長い。これにより、搬送室1が前後方向Xに短尺であっても、リンク24-26を前壁部11あるいは後壁部12と干渉させない範囲で各リンク24-26を極力長くすることができ、ハンド31,32の可動範囲が左右方向Yに広くなる。
【0021】
図2は、第1および第2ハンド31,32を示す平面図である。第1ハンド31は、基部33および基板保持部34を備えている。基部33は、中空のケーシングにより形成されている。基部33の基端部が、ハンド軸LH周りに回転可能にアーム23に連結される。基板保持部34は、基部33の先端部に結合される。基板保持部34は、先端側が二股に分かれたY状に形成された薄板である。基板保持部34は線対称に形成されている。その対称軸が、第1ハンド31の中心線C31を成し、ハンド軸LHを通過する。基板90は、基板保持部34上に載置された状態で、第1ハンド31に保持される。
【0022】
基板90が第1ハンド31に保持されると、理想的には基板90の中心が第1ハンド31の中心線C31上に位置づけられる。以下では、第1ハンド31での保持時に基板90の中心が位置すると想定される中心線C31上の位置を、第1ハンド31の「基準位置P31」とする。第2ハンド32も第1ハンド31と同様に構成されている。参照符号C32は、第2ハンド32の中心線である。参照符号P32(図1を参照)は、第2ハンド32の基準位置である。
【0023】
図3は、基板搬送ロボット20を示すブロック図である。図3に示すように、基板搬送ロボット20は、制御装置40を備えている。制御装置40は、基板90を搬送する作業の実行に係るプログラムを格納したメモリと、メモリに記憶されているプログラムを実行するCPUと、当該プログラムの実行により制御される各種アクチュエータと接続されるインターフェイスとを備えている。
【0024】
各種アクチュエータには、ハンド31,32それぞれに設けられた2つの保持アクチュエータ38が含まれる。各保持アクチュエータ38は、対応するハンド31,32に載置された基板90を保持し、または解放する。さらに、各種アクチュエータには、昇降アクチュエータ41と、第1-第3アームアクチュエータ42-44と、第1および第2ハンドアクチュエータ46,47とが含まれる。昇降アクチュエータ41は、昇降軸22を動作させてアーム23およびハンド31,32を基台21に対して昇降させる。第1アームアクチュエータ42は、基端リンク24を昇降軸22および基台21に対して第1アーム軸L1周りに回転させる。第2アームアクチュエータ43は、中間リンク25を基端リンク24に対して第2アーム軸L2周りに回転させる。第3アームアクチュエータ44は、先端リンク26を中間リンク25に対して第3アーム軸L3周りに回転させる。第1ハンドアクチュエータ46は、第1ハンド31をアーム23に対してハンド軸LH周りに回転させる。第2ハンドアクチュエータ47は、第2ハンド32をアーム23に対してハンド軸LH周りに回転させる。これらアクチュエータ41-44,46,47により、アーム23およびハンド31,32の位置および姿勢が変わり、ハンド31,32が移動する。アクチュエータ41-44,46,47は、一例として、電気モータである。昇降アクチュエータ41は、シリンダでもよい。
【0025】
図4は、制御装置40により実行される基板搬送方法の一例を示すフローチャートである。ここでは、基板搬送方法として、次の工程(1)-(6)からなる一連の搬送処理を例示する。つまり、工程(1):第1ハンド31を搬送室1から第1側壁部13に設けられた収容室形成部5の収容室2内に進入させ、工程(2):第1ハンド31と収容室2内の載置部との間で基板90を移載し、工程(3):第1ハンド31を収容室2から搬送室1へ退出させ、工程(4):第2ハンド32を搬送室1から同じ収容室2に進入させ、工程(5):第2ハンド32と収容室2内の載置部との間で基板90を移載し、工程(6):第2ハンド32を収容室2から搬送室1へ退出させる。本実施形態では、工程(3)の直後に工程(4)を行い、工程(3)と工程(4)との間に、第1ハンド31あるいは第2ハンド32を第1側壁部13の収容室2とは別の収容室に対して進入/退出させる処理を挟まないものとする。
【0026】
工程(2)に関し、第1ハンド31と載置部との間の移載とは、動作(a):第1ハンド31に保持されている基板90を収容室2内で解放し、解放された基板90をある載置部に載置し、第1ハンド31を空の状態にする動作と、動作(b):ある載置部に載置されている基板90を第1ハンド31に載置し、当該載置部を空の状態にし、第1ハンド31で基板90を保持する動作とのうちのいずれか一方の動作を行うことをいう。工程(5)に関し、第2ハンド32と載置部との間の移載も、これと同様である。
【0027】
図4に示すように、制御装置40は、基板搬送方法の一例として、第1移載処理S1、退出処理S2、第2移載処理S3および退出処理S4を順に実行するように構成されている。第1移載処理S1が上記工程(1)および工程(2)と対応し、退出処理S2が上記工程(3)と対応し、第2移載処理S3が上記工程(4)および工程(5)と対応し、退出処理S4が上記工程(6)と対応する。
【0028】
第1移載処理S1は、進入準備処理S11、進入処理S12および移載処理S13を含み、これら処理S11-S13が順に実行される。
【0029】
進入準備処理S11では、第1ハンド31を収容室2に進入させやすいように、また、第2ハンド32が搬送室1を区画する壁11-14と干渉しないように、ハンド31,32の回転位置を調整する。この調整のために、ハンドアクチュエータ46,47の動作が制御される。追加的に、第1ハンド31の高さを調整するため、昇降アクチュエータ41の動作が制御されてもよい。進入処理S12では、第1ハンド31を搬送室1から開口15を介して収容室2内に進入させる。第1ハンド31の移動のために、少なくともアームアクチュエータ42-44の動作が制御される。追加的に第1ハンドアクチュエータ46の動作が制御されてもよい。移載処理S13では、第1ハンド31と載置部との間で基板90を移載する。移載のために、第1ハンド31の保持アクチュエータ38および昇降アクチュエータ41の動作が制御される。
【0030】
図5は、退出処理S2の開始時点から終了時点までの7つの時点で第1ハンド31および第2ハンド32を平面視で示している。丸形プロットマークは第1ハンド31の基準位置P31を表し、三角形プロットマークは第2ハンド32の基準位置P32を表し、クロス形プロットマークはハンド軸LHを表している。図6は、退出処理S2の開始時点および終了時点の2つの時点で、基準位置P31,P32およびハンド軸LHを示している。ハンド31,32、中心線C31,C32、基準位置P31,P32、第1ハンド31と第2ハンド32とが成す角度α、およびハンド軸LHに関し、参照符号に付記される添字(s)は退出処理S2の開始時点を表し、添字(e)は退出処理S2の終了時点を表す。なお、ハンド31,32が成す角度αは、典型的には、中心線C31,C32が成す角度である。参照符号T31は、退出処理S2における基準位置P31の軌跡であり、参照符号T32は、退出処理S2における基準位置P32の軌跡であり、参照符号TLHは、退出処理S2におけるハンド軸LHの軌跡である。本実施形態では、3つの軌跡T31,T32,TLHが全て直線で表されているが、これは単なる一例であり、1以上の軌跡の全部または一部が曲線であってもよい。参照符号D31は、退出処理S2における基準位置P31の第1方向Xの移動量であり、参照符号DLHは、退出処理S2におけるハンド軸LHの第1方向Xの移動量である。なお、本実施形態では、退出処理S2の実行中、制御装置40は昇降軸22を駆動しないように構成され、アーム23およびハンド31,32は上下方向に移動しないものとする。
【0031】
図5および図6に示すように、退出処理S2の開始時点では、第1ハンド31(s)の基板保持部34が収容室2内に位置する。第1ハンド31(s)の基部33、ハンド軸LH(s)、および第2ハンド32(s)の全体が搬送室1内に位置する。角度α(s)は、第1移載処理S1の進入準備処理S11を実行した結果として、第2ハンド32を後壁部12あるいは第1側壁部13と干渉させないために大きい値になっている。基準位置P31(s)は、開口15の中心線C15上に位置する。ハンド軸LH(s)は、開口15の中心線C15から僅かに前後方向Xの一方(前方)に離れている。中心線C31(s)は、若干前後方向Xに傾きながら左右方向Yに延びており、中心線C15,C31(s)が成す角度は小さい。そのため、第1ハンド31が収容室2および開口15の縁と干渉するのを抑止できる。
【0032】
退出処理S2の実行中、制御装置40は、ハンド軸LHが第1ハンド31(より詳細には、第1ハンド31の基準位置P31)と比べ、開口15の中心線C15から前後方向Xに離れていくように、アーム23および第1ハンド31の動作を制御する。ハンド軸LHの位置あるいは軌跡TLHは、リンク24-26の姿勢によって制御される。第1ハンド31の基準位置P31の位置あるいは軌跡T31は、第1ハンド31の姿勢(ハンド軸LH周りの回転角)によって制御される。退出処理S2の開始時点において、既にハンド軸LH(s)は基準位置P31(s)に対して開口15の中心線C15からの離隔量が大きい(基準位置P31(s)の離隔量はゼロ)。そして、移動量DLHが、移動量D31よりも大きい。その結果として、終了時点において、ハンド軸LH(e)は第1ハンド31の基準位置P31(e)よりも中心線C15から前後方向Xに大きく離れている。ハンド軸LH(e)から後壁部12までの距離は、ハンド軸LH(e)から第2ハンド32の先端までの距離よりも長い。よって、第2ハンド32が回転しても後壁部12と干渉しない(円弧R参照)。
【0033】
本実施形態では、基台21が中心線C15から前後方向Xの一方(図1および5の上方)に離れている。また、アーム23が3つのリンク24-26を有し、3つのリンク24-26を折り畳んでハンド軸LHを搬送室1の左右方向Yの中央部に近づけた状態で、ハンド軸LHは中心線C15から前後方向Xの他方(図1および5の下方)に位置する。退出処理S2の実行中、制御装置40は、ハンド軸LHが左右方向Yにおいて開口15から遠位側の方向(図1および5の右方)に移動しながら前後方向Xの当該他方に移動するように、アーム23の動作を制御するように構成されている。これにより、ハンド軸LHは、開口15の中心線C15から前後方向Xに離れていき、後壁部12から遠ざかり前壁部11に近づけられる。
【0034】
仮に第1ハンド31の姿勢が変更されなければ、第1ハンド31の基準位置P31はハンド軸LHと平行移動する。本実施形態では、退出処理S2の実行中、制御装置40が、基準位置P31の前後方向Xへの移動量がハンド軸LHの前後方向Xへの移動量よりも小さくなるように、第1ハンド31の動作を制御するように構成されている。具体的には、ハンド軸LHを上記のように移動させながら、第1ハンド31の先端部を前後方向Xの前記一方(ハンド軸LHの移動方向と逆方向、つまり図1および5の上方)に向けるような回転方向(図1および5の時計回り)に、第1ハンド31を回転させる。
【0035】
第2ハンド32の基準位置P32の位置あるいは軌跡T32は、第2ハンド32の姿勢(ハンド軸LH周りの回転角)によって制御される。仮に第2ハンド32の姿勢が変更されなければ、第2ハンド32の基準位置P32はハンド軸LHと平行移動する。本実施形態では、退出処理S2の実行中、制御装置40が、第1ハンド31と第2ハンド32との間の角度αが小さくなるように、第2ハンド32の動作を制御するように構成されている。具体的には、ハンド軸LHおよび第1ハンド31の基準位置P31を上記のように移動させながら、第2ハンド32を第1ハンド31に近づける回転方向(図1および5の反時計回り)に、第2ハンド32を回転させる。なお、第2ハンド32は第1ハンド31と同じ回転方向に回転しても、その回転角が第1ハンド31よりも小さければ、終了時点の角度α(e)は開始時点の角度α(s)よりも小さくなる。本実施形態では、第1ハンド31と第2ハンド32とを互いに向き合う方向に回転させるので、開始時点の角度α(s)と終了時点の角度α(e)との差が大きくなり、終了時点の角度α(e)が小さくなる。
【0036】
図4に戻り、退出処理S2が完了すると、第2移載処理S3が実行される。第2移載処理S3でも、第1移載処理S1と同様にして、進入準備処理S31、進入処理S32および移載処理S33が順に実行される。
【0037】
進入準備処理S31では、第2ハンド32を収容室2に進入させやすいように、また、第1ハンド31が搬送室1を区画する壁11-14と干渉しないように、第1ハンド31および第2ハンド32の回転位置および高さを調整する。この調整のために、第1ハンドアクチュエータ46、第2ハンドアクチュエータ47および昇降アクチュエータ41の動作が制御される。進入準備処理S31において、退出処理S2の終了時点におけるハンド軸LHに対する第1ハンド31の姿勢と同じになるまで、第2ハンド32を回転させる。また、退出処理S2の終了時点におけるハンド軸LHに対する第2ハンド32の姿勢と同じになるまで第1ハンド31を回転させる。
【0038】
図7は、参考例に係る退出処理を示す平面図である。参考例を参照しながら、本実施形態に係る退出処理S2およびその後の進入準備処理S31および進入処理S32について説明する。参考例において、搬送室1、収容室2および基板搬送ロボット20は、本実施形態と同じである。退出処理の開始時点におけるアーム23およびハンド31,32の姿勢は、本実施形態と同じである。第1ハンド31の基準位置P31の軌跡T31は、本実施形態と同じである。他方、退出処理の実行中、第1ハンド31も第2ハンド32もハンド軸LH周りに回転しない。よって、ハンド軸LHおよび基準位置P32の軌跡TLH´,T32´は基準位置P31の軌跡T31と平行であり、ハンド軸LHおよび2つの基準位置P31,P32は平行移動する。退出処理中のハンド軸LHの前後方向Xにおける移動量は、基準位置P31の移動量と同じである。退出処理の前後で第1ハンド31と第2ハンド32との間の角度が変化しない。
【0039】
この場合、第1ハンド31の基準位置P31が、本実施形態の退出処理S2の終了時点での基準位置P31(e)と同じ位置まで移動した時点において、ハンド軸LH´(e)および基準位置P32´(e)は、後壁部12から十分に遠ざけられていない。そのため、第2ハンド32を回転させると、図7に円弧R´で示されるとおり、第2ハンド32は後壁部12と干渉する。なお、円弧R´の中心はハンド軸LH´(e)であり、円弧R´の半径は、当該中心から第2ハンド32の中心線と第2ハンド32上の基板90の周縁との遠位側の交点までの距離であり、円弧R´は第2ハンド32上の基板90の軌跡を表す。干渉を避けるためには、ハンド軸LHを前壁部11に近づけるように移動しなおさないといけない。なお、図7に示す参照符号LH(e)は、図5に示した本実施形態に係る退出処理S2の終了時点におけるハンド軸LHの位置である。ここまでハンド軸LHを移動させれば、第2ハンド32を後壁部12と干渉させずに回転させることができる。参考例では、第1ハンド31を収容室2から退出させた後に、ハンド軸LHを前後方向Xに移動させる工程を要し、その分基板搬送ロボット20のスループットが低下する。
【0040】
これに対し、図5および図6に示すように、本実施形態では、第1ハンド31を収容室2から退出させる最中に、ハンド軸LHを開口15の中心線C15から離れていくように移動させ、ハンド軸LHを前壁部11に近づけて後壁部12から遠ざける。そのため、退出処理S2の完了後、第2ハンド32を開口15に近づけるように回転させても、図5に円弧Rで示されるとおり、第2ハンド32が後壁部12と干渉するのを抑止できる。なお、円弧Rの中心はハンド軸LH(e)であり、円弧Rの半径は当該中心から第2ハンド32の中心線と第2ハンド32上の基板90の周縁との遠位側の交点までの距離であり、円弧Rは第2ハンド32上の基板90の軌跡を表す。ハンド軸LH(e)は、当該半径と同距離もしくはこれよりも僅かに大きな距離だけ、後壁部12から離れている。参考例と対比して、第1ハンド31の退出開始から第2ハンド32の回転開始までに要するハンド軸LHの移動距離および時間を短縮でき、スループットを改善できる。ハンド軸LHが中心線C15から遠ざかる一方、第1ハンド31の基準位置P31は中心線C15に沿って移動する。このため、第1ハンド31およびもしあればこれに保持されている基板90が、収容室2の内面や開口15の縁と干渉することを抑止できる。
【0041】
退出処理S2の実行中に、第1ハンド31と第2ハンド32との間の角度αが小さくなるので、進入準備処理S31で必要な第2ハンド32の回転量は小さくなる。換言すれば、退出処理S2の実行中にも実質的な進入準備が先立って行われている。その分、退出処理S2の完了後に実行される進入準備処理S31の所要時間を短縮できる。
【0042】
進入準備処理S31では、第1ハンド31を回転させる。第2ハンド32と同様、第1ハンド31が後壁部12と干渉することも抑止できる。本実施形態では、第1ハンド31は、退出処理S2の終了時点における第2ハンド32の姿勢と同じ姿勢となるように回転する。進入準備処理S31における第1ハンド31の回転量(回転角絶対値)と第2ハンド32の回転量(回転角絶対値)とが等しく、2つのハンド31,32の回転を同時に開始しても同速であれば同時に終了でき、進入準備処理S31において、一方のハンドが他方のハンドの回転終了を待機するような無駄時間がない。また、進入準備処理S31では、昇降アクチュエータ41を動作させ、第2ハンド32の高さを調整してもよい。
【0043】
進入処理S32の実行中、制御装置40は、ハンド軸LHおよび基準位置P31,P32が退出処理S2と同様の軌跡に沿って退出処理S2と逆向きに移動するように、アーム23およびハンド31,32の動作を制御する。第2ハンド32の基準位置P32は、退出処理S2における第1ハンド31の基準位置P31の軌跡T31(図6参照)に沿って、基準位置P31とは逆向きに移動する。第1ハンド31の基準位置P31は、退出処理S2における第2ハンド32の基準位置P32の軌跡T32(図6参照)に沿って、基準位置P32とは逆向きに移動する。これにより、進入処理S32でも、ハンド軸LHの移動距離および移動時間を短縮でき、スループットを改善できる。第1ハンド31と第2ハンド32との間の角度αは広がっていき、第2ハンド32が収容室2に進入したときに第1ハンド31が後壁部12と干渉するのを抑止できる。進入準備処理S31では、第1ハンド31は回転するが、進入処理S32の終了時点で必要とされる位置まで回転させず、その途中で回転を止める。進入処理S32の最中に残りの回転を継続し、それにより干渉防止に十分な位置まで第1ハンド31が回転する。換言すれば、進入処理S32の実行中にも、進入準備処理S31で残した進入準備を継続している。これにより、上記した無駄時間を省いて、進入準備処理S31の所要時間を短縮できる。
【0044】
第2ハンド32を対象とする退出処理S4は、第1ハンド31を対象とした退出処理S2と同じでもよいし、異なっていてもよい。第1ハンド31を対象とする進入処理S12は、第2ハンド32を対象とした進入処理S32と同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0045】
これまで実施形態について説明したが、上記構成は一例であり、本開示の範囲内で変更、追加および/または削除可能である。アーム23を構成するリンクの個数は3に限らず、2あるいは4以上であってもよい。第1側壁部13を介して搬送室1と連続する収容室2に対するハンド31,32の進入/退出を例示したが、その他の壁、特に第2側壁部14を介して連続する収容室2に対するハンド31,32の進入/退出にも適用できる。基準位置P31,P32は上述の例に限定されない。第1ハンド31の基準位置P31は、ハンド軸LHよりも先端側の任意の位置に設定できる。第2ハンド32の基準位置P32についても同様である。基台21が前後方向Xの一方(後方)に偏在し、退出処理S2でハンド軸LHを基台21とは反対側となる前後方向Xの他方(前方)に移動させたが、退出処理S2でハンド軸LHを基台21と同じ側に移動させてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7