(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20240105BHJP
B60N 2/58 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/58
(21)【出願番号】P 2018074598
(22)【出願日】2018-04-09
【審査請求日】2021-01-07
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 仁志
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】八木 誠
【審判官】中村 則夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-268873(JP,A)
【文献】実開平2-88569(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00- 2/90
B68G 7/05- 7/052
A47C31/02, 7/00- 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と第2の面が接続されて形成された凸状角部を備え、
前記凸状角部は、
パッドと、
前記パッドの表面を覆う表面カバーであって、前記凸状角部の前記第1の面に対応する第1の表面カバー片と、前記凸状角部の前記第2の面に対応する第2の表面カバー片とを有し、前記凸状角部の頂部において、前記第1の表面カバー片の縁部と前記第2の表面カバー片の一方の縁部が互いに固定されている、前記表面カバーと、
前記凸状角部の前記第2の面に対応する前記第2の表面カバー片の裏面に設けられ、前記凸状角部の外形を規定する外形規定板と、を有
する車両用シートであって、
前記外形規定板は、前記凸状角部の頂部における前記第2の表面カバー片の前記一方の縁部に沿って配置される第1の縁部と、前記第2の表面カバー片の他方の縁部に沿って配置され、前記凸状角部の頂部から離れ、前記第1の縁部の反対側にある第2の縁部と、を有し、当該第1の縁部において前記第2の表面カバー片の前記一方の縁部に固定されず、前記第2の縁部において前記第2の表面カバー片の前記他方の縁部に固定され、
当該車両用シートは、前記第2の面と第3の面が接続されて形成された凹状角部をさらに備え、
前記凹状角部は、前記凹状角部の前記第3の面に対応する第3の表面カバー片をさらに備え、
前記外形規定板の前記第2の縁部は、前記第2の表面カバー片の前記他方の縁部に加えて、前記第3の表面カバー片にも固定されている、車両用シート。
【請求項2】
前記外形規定板は、樹脂製であり、
前記第2の縁部における、前記第2の表面カバー片の前記他方の縁部との固定、及び、前記第3の表面カバー片との固定は、縫合によるものである、請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記凸状角部は、車両用シートの背凭れ部の側面に設けられている、請求項1または2に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートには、意匠性や機能性の観点から凸状の角部を含む立体形状を有するものがある(特許文献1参照)。このような車両用シートの立体形状は、パッドを所望の立体形状に成型し、そのパットに表面カバーを被せることによって実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような車両用シートでは、パッドに表面カバーを被せた際に、パッドの凸状角部が表面カバーによりつぶれてしまい、メリハリのある所望の立体形状を実現することは難しい。
【0005】
本出願はかかる点に鑑みてなされたものであり、凸状角部を有する所望の立体形状を実現できる車両用シートを提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る車両用シートは、第1の面と第2の面が接続されて形成された凸状角部を備え、前記凸状角部は、パッドと、前記パッドの表面を覆う表面カバーと、前記凸状角部の第2の面に対応する表面カバーの裏面に設けられ、前記凸状角部の外形を規定する外形規定板と、を有し、前記外形規定板は、前記凸状角部の頂部に沿って配置される第1の縁部と、前記第1の縁部とは別の第2の縁部を有し、当該第1の縁部において表面カバーに固定されず、前記第2の縁部において表面カバーに固定されているものである。
【0007】
本態様によれば、凸状角部の第2の面に対応する表面カバーの裏面に外形規定板を設け、外形規定板は、前記凸状角部の頂部に沿って配置された第1の縁部において固定されず、第1の縁部と別の第2の縁部において表面カバーに固定されている。これにより、外形規定板が凸状角部の頂部においてパッドや表面カバーに影響されずメリハリのある凸状角部を形成でき、この結果所望の立体形状を実現できる。
【0008】
前記外形規定板の第2の縁部は、前記凸状角部の頂部から離れた、前記第1の縁部の反対側にあってもよい。
【0009】
車両用シートは、前記第2の面と第3の面が接続されて形成された凹状角部をさらに備え、前記外形規定板の第2の縁部は、前記凹状角部の底部に沿って配置され、前記凹状角部の底部において表面カバーに固定されていてもよい。
【0010】
前記外形規定板は、樹脂製であり、前記表面カバーに縫合されて固定されていてもよい。
【0011】
前記凸状角部は、車両用シートの背凭れ部の側面に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、凸状角部を有する所望の立体形状を実現できる車両用シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】車両用シートの構成の一例を示す斜視図である。
【
図5】背凭れ部の肩口の張出部を示す説明図である。
【
図10】座部の側面の前面部の断面構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る車両用シート1の構成の一例を示す斜視図である。例えば車両用シート1は、着座者が座る座部10と、着座者が背中を凭れかける背凭れ部11と、ヘッドレスト12等を備えている。
【0016】
座部10、背凭れ部11及びヘッドレスト12は、内部に設けられたパッド20と、表面に設けられた表面カバー21を有している。パッド20は、例えば発泡樹脂等により形成され、表面カバー21は、布帛や皮革等により形成されている。
【0017】
車両用シート1は、単数又は複数箇所に、外側に凸に突出した凸状角部を備えている。例えば背凭れ部11は、
図2及び
図3に示すように第1の面30と第2の面31が接続されて形成された凸状角部32を備えている。さらに背凭れ部11は、第2の面31と第3の面33が接続されて形成された凹状角部34を備えている。凸状角部32と凹状角部34は連続している。なお、凸状角部32及び凹状角部34の内角は、0°を超える180°未満であればよく、例えば120°以下であっても90°以下であってもよい。凸状角部32や凹状角部34の形状は特に限定されることなく、例えば凸条角部32の頂部が僅かに湾曲していてもよいし、凹状角部34の底部に小さな溝が形成されていてもよい。
【0018】
図3に示すように例えば第1の面30と第2の面31が接続された頂部40は、背凭れ部11の側面から見て上に凸の湾曲形状を有している。また、第2の面31と第3の面33が接続された底部41は、上の凸の湾曲形状を有している。底部41は、頂部40の内側に設けられ、頂部40と底部41で二重の円弧を形成している。
【0019】
図2乃至
図4に示すように表面カバー21は、複数の表皮片が互いに縫合されて形成されており、第1の面30、第2の面31及び第3の面33には、それぞれ表皮片21a、21b、21cが対応している。表皮片21aと表皮片21bは、頂部40において互いに縫合され、表皮片21bと表皮片21cは、底部41において互いに縫合されている。
【0020】
図3及び
図4に示すように凸状角部32は、表面カバー21の裏面に凸状角部32の外形を規定する外形規定板50を備えている。外形規定板50は、凸状角部32の第2の面31に対応する表面カバー21(表皮片21b)の裏面に設けられている。
【0021】
外形規定板50は、例えば剛性のある樹脂製である。なお、外形規定板50の材質は、表面カバー21よりも剛性のあるものであれば、特に限定されるものではなく、フェルトや布帛、金属などであってもよい。外形規定板50は、第2の面31に沿った幅のある湾曲形状を有している。
【0022】
外形規定板50は、上側に凸状角部32の頂部40に沿って配置された第1の縁部60を有し、下側に凹状角部34の底部41に沿って配置された第2の縁部61を有している。外形規定板50は、第2の縁部61、すなわち凸状角部32の頂部40から離れた、第1の縁部60と反対側の凹状角部34の底部41付近において表面カバー21に縫合されている。この縫合線70は、底部41に沿って上に凸の湾曲形状に形成されている。また、外形規定板50、表皮片21b及び表皮片21cはまとめて縫合されている。外形規定板50は、凸状角部32の頂部40側の第1の縁部60において表面カバー21に固定されておらず自由になっている。
【0023】
本実施の形態によれば、凸状角部32の第2の面31に対応する表面カバー21の裏面に外形規定板50を設け、外形規定板50は、凸状角部32の頂部40に沿って配置された第1の縁部60において固定されず、第1の縁部60と反対側の第2の縁部61において表面カバー21に固定されている。外形規定板50は、凸状角部32の頂部40付近において、パッド20にも表面カバー21にも影響されずに、凸状角部32の形を規定できる。よって、車両用シート1にメリハリのある凸状角部32を形成することができ、この結果所望の立体形状の車両用シート1を実現できる。
【0024】
外形規定板50の第2の縁部61は、凸状角部32の頂部40から離れた、第1の縁部60の反対側にあるので、外形規定板50の第1の縁部60側が拘束されず凸状角部32の形状が好適に規定される。
【0025】
車両用シート1は、第2の面31と第3の面33が接続されて形成された凹状角部34をさらに備え、外形規定板50の第2の縁部61は、凹状角部34の底部41に沿って配置され、凹状角部34の底部41において表面カバー21に固定されている。これにより、凸状角部32及び凹状角部34を有する所望の立体形状を適正に実現できる。
【0026】
外形規定板50は樹脂製であり、表面カバー21に縫合されて固定されているので、外形規定板50の固定を好適に行うことができる。
【0027】
本実施の形態では、車両用シート1の背凭れ部11の側面に凸状角部32を設けた例を説明したが、車両用シートの他の部分に凸状角部が設けられていてもよい。
【0028】
例えば
図5に示すように背凭れ部11の肩口に形成された張出部に凸状角部が設けられていてもよい。この場合、例えば張出部は、
図5及び
図6に示すように第1の面80と第2の面81が接続されて形成された凸状角部82と、第2の面81と第3の面83が接続されて形成された凹状角部84を備えている。外形規定板90は、第2の面81に対応する表面カバー21の裏面に取り付けられている。外形規定板90は、凸状角部82の頂部110に沿って配置された第1の縁部100と、凹状角部84の底部111に沿って配置された第2の縁部101を有している。外形規定板90は、第2の縁部101、すなわち凸状角部82の頂部110から離れた、第1の縁部100と反対側の凹状角部84の底部111付近において表面カバー21に縫合されている。外形規定板90は、凸状角部82の頂部110側の第1の縁部100において表面カバー21に固定されていない。
【0029】
例えば
図7に示すように座部10の前部の側面に形成された突出部に凸状角部が設けられていてもよい。この場合、例えば突出部は、
図7及び
図8に示すように第1の面120と第2の面121が接続されて形成された凸状角部122と、第2の面121と第3の面123が接続されて形成された凹状角部124を備えている。外形規定板130は、第2の面121に対応する表面カバー21の裏面に取り付けられている。外形規定板130は、凸状角部122の頂部150に沿って配置された第1の縁部140と、凹状角部124の底部151に沿って配置された第2の縁部141を有している。外形規定板130は、第2の縁部141、すなわち凸状角部122の頂部150から離れた、第1の縁部140と反対側の凹状角部124の底部151付近において表面カバー21に縫合されている。外形規定板130は、凸状角部122の頂部150側の第1の縁部140において表面カバー21に固定されていない。
【0030】
例えば
図9に示すように座部10の側面の前面部に凸状角部が設けられていてもよい。この場合、例えば前面部は、
図9及び
図10に示すように第1の面160と第2の面161が接続されて形成された凸状角部162を備えている。外形規定板170は、第2の面161に対応する表面カバー21の裏面に取り付けられている。外形規定板170は、凸状角部162の円弧状の頂部190に沿って配置された第1の縁部180と、円弧状の頂部190の弦の位置に配置された第2の縁部181を有している。外形規定板170は、第2の縁部181において表面カバー21に縫合されている。外形規定板170は、凸状角部162の頂部190側の第1の縁部180において表面カバー21に固定されていない。
【0031】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0032】
例えば車両用シートにおける凸状角部の位置や数は、上記実施の形態に限定されるものではない。また、凸状角部に設けられる外形規定板の形も、上記実施の形態に限定されるものではない。外形規定板を表面カバーに固定する手段は、縫製である必要はなく、公知の他の手段を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、凸状角部を有する所望の立体形状を実現できる車両用シートを提供する際に有用である。
【符号の説明】
【0034】
1 車両用シート
10 座部
11 背凭れ部
20 パッド
21 表面カバー
30 第1の面
31 第2の面
32 凸状角部
33 第3の面
34 凹状角部
40 頂部
41 底部
50 外形規定板
60 第1の縁部
61 第2の縁部