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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】真空開閉装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/662 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
H01H33/662 E
H01H33/662 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018097557
(22)【出願日】2018-05-22
(65)【公開番号】P2019204620
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-04-07
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】浅利 直紀
(72)【発明者】
【氏名】竪山 智博
(72)【発明者】
【氏名】近藤 淳一
(72)【発明者】
【氏名】髭右近 陽介
(72)【発明者】
【氏名】水出 隆
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】平城 俊雅
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-128536(JP,U)
【文献】実開昭57-41231(JP,U)
【文献】特開2004-362918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/662
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に開口部を有する円筒形状の筒状筐体と、前記筒状筐体の一方の開口部を封止する第1の封着板、および前記筒状筐体の他方の開口部を封止する第2の封着板により負圧に封止された真空絶縁容器と、
前記真空絶縁容器の第1の封着板に、固定して配置された固定電極と、
前記真空絶縁容器の第2の封着板に、前記固定電極と接触または離間するように可動に配置された可動電極と、を有し、
前記第1の封着板および前記第2の封着板は、ろう付けにより前記筒状筐体に接合しており、
前記第1の封着板は、絶縁材料により構成され、前記真空絶縁容器の外部方向に突出する延伸部を有し、
前記第2の封着板は、金属材料により構成され、
前記延伸部は前記第1の封着板を構成する絶縁材料と同一の材料から成り、
前記延伸部と前記第1の封着板は、間に他の部材が介在することなく繋がっている、
真空開閉装置。
【請求項2】
前記第1の封着板の前記延伸部は、前記固定電極の周囲であって前記真空絶縁容器の外部方向に円錐状に突出して形成された、
請求項1に記載の真空開閉装置。
【請求項3】
前記第1の封着板の前記延伸部は、前記固定電極の周囲であって前記真空絶縁容器の外
部方向に円筒状に突出して形成された、
請求項1に記載の真空開閉装置。
【請求項4】
前記第1の封着板の前記延伸部は、前記真空絶縁容器の外部方向に複数の柱が突出して
形成された、
請求項1に記載の真空開閉装置。
【請求項5】
前記第1の封着板の誘電率は、前記筒状筐体の誘電率より大きい、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の真空開閉装置。
【請求項6】
前記固定電極は、円板状の固定電極接点と、前記固定電極接点を支持する固定軸とを有
し、前記固定軸は前記第1の封着板との接合部分の外周に凹部を有し、
前記固定電極は、前記固定軸の凹部により、前記第1の封着板と接合された、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の真空開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、電力系統において電流遮断を行う真空開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統の電力供給線に流れる電流を遮断するために真空開閉装置が使用されている。真空開閉装置は、負荷に供給される電流を遮断するために電力供給線に配置される。
【0003】
真空開閉装置は、真空に封止された真空絶縁容器内に、対向して配置された一対の電極を有する。これらの一対の電極が、真空開閉装置の外部に配置された駆動装置により駆動されて開閉する。
【0004】
真空開閉装置が開状態とされる時には、この一対の電極が、真空開閉装置の外部に配置された駆動装置により駆動され、機械的に切り離される。交流の電力系統に設置される真空開閉装置は、一対の電極が機械的に切り離された後も、次の交流電流の電流零点まではアーク電流が流れ続ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-258523公報
【文献】特開2009-193734公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
真空開閉装置は、前述のとおり真空に封止された真空絶縁容器内に、対向して配置された一対の電極を有する。真空開閉装置が確実に機能するために、一対の電極と真空絶縁容器の絶縁性を確保することが必要とされる。一対の電極と真空絶縁容器の絶縁性を確保するためには、沿面距離を稼ぎ電位勾配を緩和するように、一対の電極と真空絶縁容器の距離を離間して配置することが考えられる。しかしながら一対の電極と真空絶縁容器の距離を離間させた場合、真空開閉装置の容積が大きくなり、配置スペースが制約される等の問題点が発生し望ましくない。近年、真空開閉装置は、高電圧にて使用される傾向にあり、真空開閉装置を大型化することは、一層望ましくない。
【0007】
真空開閉装置の絶縁性能を向上させるために、真空開閉装置の真空絶縁容器の周囲を絶縁部材であるエポキシ等でモールドすることが考えられる。しかしながら、真空絶縁容器の端部は、電界強度が高くなり、モールド用の材料、真空絶縁容器の材料、真空絶縁容器を封止するために用いられる銀ろう等の封止材料のトリプルジャンクションにより、真空開閉装置の絶縁性能が低下することが懸念される。真空絶縁容器の周囲にモールドを設けた場合、電界強度が高くなることに起因した、材料のトリプルジャンクションにより、真空開閉装置の絶縁性能が低下することが懸念されるとの問題点があった。
【0008】
さらに、真空開閉装置の絶縁性能の低下を軽減するために、真空絶縁容器の端部の周囲であってモールドの内側に電界緩和用のシールドを設けることが考えられる。しかしながら、真空絶縁容器の端部の電界強度が高くなることで、真空絶縁容器からシールドが剥離するような欠陥が発生しやすくなる。真空絶縁容器の周囲にシールドを設けた場合、電界強度が高くなることに起因した剥離等の欠陥により、真空開閉装置の絶縁性能が低下することが懸念されるとの問題点があった。
【0009】
本実施形態は、真空絶縁容器の端部における電位勾配を緩和し、絶縁低下を軽減することができる、より小型な真空開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態の真空開閉装置は次のような構成を有することを特徴とする。
(1)両端に開口部を有する円筒形状の筒状筐体と、前記筒状筐体の一方の開口部を封止する第1の封着板、および前記筒状筐体の他方の開口部を封止する第2の封着板により負圧に封止された真空絶縁容器。
(2)前記真空絶縁容器の第1の封着板に、固定して配置された固定電極。
(3)前記真空絶縁容器の第2の封着板に、前記固定電極と接触または離間するように可動に配置された可動電極。
(4)前記第1の封着板および前記第2の封着板は、ろう付けにより前記筒状筐体に接合している。
)前記第1の封着板は、絶縁材料により構成され、前記真空絶縁容器の外部方向に突出する延伸部を有する。
)前記第2の封着板は、金属材料により構成される。
)前記延伸部が前記第1の封着板を構成する絶縁材料と同一の材料から成る。
)前記延伸部と前記第1の封着板は、間に他の部材が介在することなく繋がっている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態にかかる真空開閉装置の構成を示す図
図2】第1実施形態にかかる真空開閉装置の封着部部分を示す拡大図
図3】第1実施形態にかかる真空開閉装置の電位勾配を示す図
図4】第2実施形態にかかる真空開閉装置の構成を示す図
図5】第2実施形態にかかる真空開閉装置の封着板を示す斜視図
図6】第2実施形態にかかる真空開閉装置の第1の変形例にかかる封着板を示す斜視図
図7】第2実施形態にかかる真空開閉装置の第2の変形例にかかる封着板を示す斜視図
図8】他の実施形態にかかる真空開閉装置の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
[1-1.概略構成]
以下では、図1図3を参照しつつ、本実施形態の真空開閉装置1の全体構成を説明する。本実施形態の真空開閉装置1の全体構成の断面図を図1に示す。図1は、真空開閉装置1が開路状態である時の内部構造を示している。真空開閉装置1は、工場やビルの配電室等に設置される。
【0013】
真空開閉装置1は、固定電極2、可動電極3、ベローズ4、真空絶縁容器5を有する。固定電極2は、電源側の電力供給線(図中不示)に、可動電極3は、負荷側の電力供給線(図中不示)に接続される。可動電極3は外部の駆動装置9に機械的に接続される。
【0014】
可動電極3が駆動装置9により駆動されて固定電極2と接触および離間し、真空開閉装置1が開路状態、閉路状態となる。以下では、各部材の位置関係及び方向を説明するにあたり、真空絶縁容器5における可動電極3側の方向を駆動方向と、その反対側の固定電極2側の方向を反駆動方向と呼ぶものとする。
【0015】
固定電極2、可動電極3は、導電性の材料により構成された略円柱状の部材であり、それぞれの中心軸が同一軸上に位置するように、真空絶縁容器5に配置される。固定電極2、可動電極3は、真空絶縁容器5と同心円を描くように真空絶縁容器5に配置される。
【0016】
(固定電極2)
固定電極2は、固定電極接点21、固定軸22を有する。固定電極2は、真空絶縁容器5と同心円を描くように真空絶縁容器5に固定され、配置される。固定電極2は、可動電極3と対向するように配置される。固定電極2は、真空絶縁容器5の外部で電源側の電力供給線に接続される。固定電極2は、真空開閉装置1の閉路状態時に、可動電極3と接触し、電源側の電力供給線と負荷側の電力供給線を電気的に導通させる。一方、固定電極2は、真空開閉装置1の開路状態時に、可動電極3と離間し、電源側の電力供給線と負荷側の電力供給線を電気的に遮断する。
【0017】
(固定電極接点21)
固定電極接点21は、CuCr合金等の金属導体により構成された円板状の電極である。固定電極接点21は、固定軸22より大きい径を有する円板状に構成される。固定電極接点21は、固定軸22と同心円を描くように固定電極2の駆動方向に、固定軸22に接合して固定される。固定電極接点21は、可動電極3との接触面となる円板の外周端面が、削り出し加工等により曲面状に構成される。
【0018】
固定電極接点21は、真空開閉装置1の閉路状態時に、可動電極3と接触し、電源側の電力供給線と負荷側の電力供給線を電気的に導通させる。一方、固定電極接点21は、真空開閉装置1の開路状態時に、可動電極3と離間し、電源側の電力供給線と負荷側の電力供給線を電気的に遮断する。
【0019】
(固定軸22)
固定軸22は、無酸素銅等の金属導体により構成された円柱状の部材である。固定軸22は、固定電極接点21より小さい径を有する円柱状に構成される。固定軸22は、固定電極接点21と同心円を描くように固定電極2の反駆動方向に、固定電極接点21に接合して配置される。
【0020】
固定軸22は、真空絶縁容器5の反駆動方向に固定され、固定電極接点21を支持する。また固定軸22は、電源側の電力供給線に接続され、固定電極接点21と電源側の電力供給線とを電気的に導通させる。
【0021】
(可動電極3)
可動電極3は、可動電極接点31、可動軸32を有する。可動電極3は、ベローズ4を貫通し、真空絶縁容器5と同心円を描くように真空絶縁容器5に配置される。可動電極3は、固定電極2と接触または離間するように可動に配置される。可動電極3は、固定電極2と対向するように配置される。可動電極3は、真空絶縁容器5の外部で負荷側の電力供給線に接続される。可動電極3は、駆動装置9に駆動され、真空開閉装置1の閉路状態時に、固定電極2と接触し、電源側の電力供給線と負荷側の電力供給線を電気的に導通させる。一方、可動電極3は、駆動装置9に駆動され、真空開閉装置1の開路状態時に、固定電極2と離間し、電源側の電力供給線と負荷側の電力供給線を電気的に遮断する。
【0022】
(可動電極接点31)
可動電極接点31は、CuCr合金等の金属導体により構成された円板状の電極である。可動電極接点31は、可動軸32より大きい径を有する円板状に構成される。可動電極接点31は、可動軸32と同心円を描くように可動電極3の反駆動方向に、可動軸32に接合し固定される。可動電極接点31は、固定電極2との接触面となる円板の外周端面が、削り出し加工等により曲面状に構成される。
【0023】
可動電極接点31は、真空開閉装置1の閉路状態時に、固定電極2と接触し、電源側の電力供給線と負荷側の電力供給線を電気的に導通させる。一方、可動電極接点31は、真空開閉装置1の開路状態時に、固定電極2と離間し、電源側の電力供給線と負荷側の電力供給線を電気的に遮断する。
【0024】
(可動軸32)
可動軸32は、無酸素銅等の金属導体により構成された円柱状の部材である。可動軸32は、可動電極接点31より小さい径を有する円柱状に構成される。可動軸32は、可動電極接点31と同心円を描くように可動電極3の駆動方向に、可動電極接点31に接合して配置される。
【0025】
可動軸32は、真空絶縁容器5の駆動方向に配置され、可動電極接点31を支持する。また可動軸32は、負荷側の電力供給線に接続され、可動電極接点31と負荷側の電力供給線とを電気的に導通させる。また、可動軸32は、駆動装置9に機械的に接続され、駆動装置9により駆動されることにより、固定電極2と接触または離間するように真空絶縁容器5内を移動する。
【0026】
(真空絶縁容器5)
真空絶縁容器5は、アルミナセラミックや碍子等の材料からなる円筒状の密閉容器であり、内部が負圧となるように封止される。真空絶縁容器5は、内部を10-2Pa以下の真空に保つ。また、真空絶縁容器5は、固定電極2および可動電極3を支持する。真空絶縁容器5は、筒状筐体51、封着板52、封着板53、封着部54、封着部55、アークシールド56を有する。封着板52が請求項における第1の封着板に、封着板53が請求項における第2の封着板に相当する。
【0027】
従来は、真空絶縁容器5内に、絶縁性ガスである六フッ化硫黄ガス(SF6ガス)を充填することにより開閉装置の絶縁性能を確保する場合が多かった。しかしながら、六フッ化硫黄ガス(SF6ガス)は地球温暖化ガスであるため、近年、真空絶縁容器5内を真空にすることにより開閉装置の絶縁性能を確保している。
【0028】
(筒状筐体51)
筒状筐体51は、アルミナセラミックや碍子等の材料からなる円筒状の筐体である。筒状筐体51の外周はエポキシ樹脂のような絶縁材料でモールドされている。筒状筐体51の反駆動方向の開口部には、封着部54を介し封着板52が装着される。筒状筐体51の駆動方向の開口部には、封着部55を介し封着板53が装着される。封着板52には、固定電極2が配置され、封着板53には、ベローズ4を介し可動電極3が配置される。
【0029】
筒状筐体51は、アークシールド56を支持する。アークシールド56は、固定電極2の固定電極接点21、可動電極3の可動電極接点31を覆う、筒状筐体51の円筒内の位置に配置される。
【0030】
(封着板52)
封着板52は、中心部に貫通穴を有する円板状の部材である。封着板52は、アルミナセラミック等の絶縁材料により構成される。封着板52は、封着部54を介し筒状筐体51の反駆動方向の開口部に装着される。封着部54は、銅等の金属材料により構成されたリング状の部材である。封着部54は封着板52と銀ろう付けされ、また封着部54は筒状筐体51と銀ろう付けされ、真空絶縁容器5内を負圧に保つ。
【0031】
封着板52には、固定電極2が固定される。封着板52は、固定電極2を固定軸22により支持するとともに、封着板52と固定軸22との間の気密を保つ。封着板52の誘電率は、筒状筐体51の誘電率より大きいことが望ましい。
【0032】
(封着板53)
封着板53は、中心部に貫通穴を有する円板状の部材である。封着板53は、銅等の金属材料により構成される。封着板53は、封着部55を介し筒状筐体51の駆動方向の開口部に装着される。封着部55は、銅等の金属材料により構成されたリング状の部材である。封着部55は封着板53と銀ろう付けされ、また封着部55は筒状筐体51と銀ろう付けされ、真空絶縁容器5内を負圧に保つ。
【0033】
封着板53には、ベローズ4を介し可動電極3が配置される。封着板53は、可動電極3を可動軸32により支持するとともに、封着板53とベローズ4との間の気密を保つ。
【0034】
(アークシールド56)
アークシールド56は、ステンレス等の材料により構成された円筒状の部材である。アークシールド56は、固定電極2の固定電極接点21、可動電極3の可動電極接点31を覆う、筒状筐体51の円筒内の位置に配置される。アークシールド56は、電流遮断時に発生した金属蒸気が拡散し、筒状筐体51を構成するセラミック碍管内面に付着することを防止する。
【0035】
(ベローズ4)
ベローズ4は、SUS、インコネル等の材料により伸縮自在に構成された蛇腹状の円筒形状の部材である。ベローズ4は、可動電極3が貫通されて封着板53に配置される。ベローズ4は、ベローズ4と封着板53との間、およびベローズ4と可動電極3の可動軸32との間の気密を保つ。これにより、真空絶縁容器5の内部が負圧となるように保たれる。真空絶縁容器5は、内部を10-2Pa以下の真空に保つ。
【0036】
以上が、真空開閉装置1の構成である。
【0037】
[1-2.作用]
次に、本実施形態の真空開閉装置1の作用を、図1~3に基づき説明する。
【0038】
[A.真空開閉装置1が閉路状態の場合]
最初に、本実施形態の真空開閉装置1が閉路状態である場合について説明する。真空開閉装置1が閉路状態である場合、固定電極2と可動電極3は電気的に接続される。その結果、固定電極2に接続された電源側の電力供給線と、可動電極3に接続された負荷側の電力供給線は、電気的に導通状態となる。
【0039】
この状態において、固定電極2と可動電極3との間に、アークは発生していない。真空絶縁容器5は接地電位に接続されているため、固定電極2、可動電極3と真空絶縁容器5の間には電位差が発生する。しかしながら、固定電極2と可動電極3との間に、アークは発生しておらず、また、真空絶縁容器5の内部は10-2Pa以下の真空に保たれているため、固定電極2、可動電極3と真空絶縁容器5の間にアークによる放電は発生しにくい。
【0040】
[B.真空開閉装置1が開路状態となる場合]
次に、本実施形態の真空開閉装置1が開路状態となる場合について説明する。真空開閉装置1が開路状態となる場合、固定電極2と可動電極3は離間される。その結果、固定電極2に接続された電源側の電力供給線と、可動電極3に接続された負荷側の電力供給線は、電気的に遮断状態となる。
【0041】
真空開閉装置1を開路状態とする遮断動作は、電源側の電力供給線と負荷側の電力供給線との電流遮断時に行われる。真空開閉装置1を開路状態とする遮断動作は、負荷として接続された機器のメンテナンス、交換、事故発生時等、電流の遮断を要する場合に行われる。
【0042】
真空開閉装置1を閉路状態から開路状態とする動作は、可動電極3が駆動装置9により駆動されることにより行われる。駆動装置9に駆動されることにより、可動電極3が、真空絶縁容器5内を駆動方向に移動させられる。これにより、固定電極2に対して可動電極3が開離する。駆動装置9は、電動機により可動電極3を駆動するものであってもよいし、作業者の力を利用し可動電極3を駆動するものであってもよい。
【0043】
可動電極3は、真空絶縁容器5の駆動方向の一端に設けられた封着板53の貫通孔内を移動する。ベローズ4は可動電極3の可動軸32に密着しており、またベローズ4は封着板53に密着しており、真空絶縁容器5内の真空状態は保たれる。
【0044】
固定電極2と可動電極3が開離することにより、固定電極2と可動電極3の間にアークが発生する。このアークは、固定電極2、可動電極3間のみならず、固定電極2、可動電極3周辺部分に放電しやすい。アークは、固定電極2、可動電極3から真空絶縁容器5に放電する場合もある。
【0045】
[C.封着板52の作用]
次に、封着板52の作用について説明する。前述の通り、封着板52は、中心部に貫通穴を有する円板状の部材であり、アルミナセラミック等の絶縁材料により構成される。
【0046】
封着板52は、封着部54を介し筒状筐体51の反駆動方向の開口部に装着される。封着部54は、銅等の金属材料により構成されたリング状の部材である。封着部54の反駆動方向の端部は、封着板52と銀ろう付け等により接合される。また封着部54の駆動方向の端部は、図2に示すように銀ろう付け部54aにて、筒状筐体51と銀ろう付け等により接合される。封着板52は、真空絶縁容器5内を真空に保つ。
【0047】
封着板52には、固定電極2が固定される。封着板52は、固定電極2を固定軸22により支持するとともに、封着板52と固定軸22との間の気密を保つ。
【0048】
真空絶縁容器5は、接地電位に接続されている。真空開閉装置1が閉路状態であるとき、開路状態であるときとも、固定電極2は、真空絶縁容器5に対し高電位となる。封着板52は、アルミナセラミック等の絶縁材料により構成されている。図3(a)に、銀ろう付け部54aの厚さを0.5mmとした場合の封着板52の周辺の電位勾配を示す。図3(a)は、コンピュータによりシミュレーションを行った解析結果である。
【0049】
また、図3(b)に、仮に封着板52が、銅等の導電性の金属材料により構成された場合の、封着板52の周辺の電位勾配を示す。図3(b)は、コンピュータによりシミュレーションを行った解析結果である。
【0050】
封着板52は、アルミナセラミック等の絶縁材料により構成されているため、図3(a)に示すように封着板52と封着部54の接合部分周辺、筒状筐体51と封着部54の接合部周辺の電位勾配が緩やかになる。封着板52と封着部54の接合部分周辺、筒状筐体51と封着部54の接合部周辺の電界強度を緩和することができる。
【0051】
一方、仮に封着板52が、銅等の導電性金属材料により構成された場合、図3(a)に示すように封着板52と封着部54の接合部分周辺、筒状筐体51と封着部54の接合部周辺の電位勾配が急となり、電界強度は高いものとなる。
【0052】
封着板52がアルミナセラミック等の絶縁材料により構成されているため、封着板52と封着部54の接合部分周辺、筒状筐体51と封着部54の接合部周辺の電界強度は、封着板52が金属等の導電材料により構成された場合に比べ、1/5程度となる。
【0053】
封着板52と封着部54の接合部分周辺、筒状筐体51と封着部54の接合部周辺の電界強度が高い場合、絶縁破壊が発生しやすく、真空開閉装置1の絶縁性能を低下させることになり望ましくない。特に真空開閉装置1が閉路状態から開路状態とされる時におけるアークの発生時に、この高い電界強度に助長され固定電極2から真空絶縁容器5に放電することが懸念される。
【0054】
封着板52が、アルミナセラミック等の絶縁材料により構成されることにより、封着板52と封着部54の接合部分周辺、筒状筐体51と封着部54の接合部周辺の電位勾配が緩和され絶縁破壊による真空開閉装置1の絶縁性能の低下を軽減することができる。
【0055】
封着板52の誘電率は、筒状筐体51の誘電率より大きいことが望ましい。封着板52の誘電率が、筒状筐体51の誘電率より大きいことにより、さらに封着板52と封着部54の接合部分周辺、筒状筐体51と封着部54の接合部周辺の電位勾配が緩やかになる。さらに封着板52と封着部54の接合部分周辺、筒状筐体51と封着部54の接合部周辺の電界強度を緩和することができ、絶縁破壊による真空開閉装置1の絶縁性能の低下を軽減することができる。
【0056】
[1-3.効果]
(1)本実施形態によれば、真空開閉装置1は、円筒形状の筒状筐体51と、筒状筐体51の一方の端部を封止する第1の封着板52、および筒状筐体51の他方の端部を封止する第2の封着板53により負圧に封止された真空絶縁容器5と、真空絶縁容器5の第1の封着板52に、固定して配置された固定電極2と、真空絶縁容器5の第2の封着板53に、固定電極2と接触または離間するように可動に配置された可動電極3とを有し、第1の封着板52は、絶縁材料により構成されるので、真空絶縁容器の端部における電位勾配を緩和し、絶縁低下を軽減することができる、より小型な真空開閉装置を提供することができる。
【0057】
封着板52は、アルミナセラミック等の絶縁材料により構成されている。このため封着板52と筒状筐体51の接合部周辺の電位勾配が緩やかになる。封着板52と筒状筐体51の接合部周辺の電界強度が緩和され、絶縁破壊による真空開閉装置1の絶縁性能の低下を軽減することができる。
【0058】
(2)本実施形態によれば、封着板52の誘電率は、筒状筐体51の誘電率より大きい。封着板52の誘電率が、筒状筐体51の誘電率より大きいことにより、さらに封着板52と筒状筐体51の接合部周辺の電位勾配が緩やかになる。さらに封着板52と筒状筐体51の接合部周辺の電界強度が緩和され、より絶縁破壊による真空開閉装置1の絶縁性能の低下を軽減することができる。
【0059】
(3)本実施形態によれば、封着板52は、アルミナセラミック等の絶縁材料により構成されている。このため、真空絶縁容器5の周囲にモールドを設けることが必要とされない。真空絶縁容器5の周囲にモールドを設けた場合、モールド用の材料、真空絶縁容器の材料、真空絶縁容器を封止するために用いられる銀ろう等の封止材料のトリプルジャンクションにより、真空開閉装置の絶縁性能が低下することが懸念される。本実施形態によれば、封着板52は、アルミナセラミック等の絶縁材料により構成されており、真空絶縁容器5の周囲にモールドを設けることが必要とされず、材料のトリプルジャンクションによる、真空開閉装置1の絶縁性能の低下を軽減することができる。
【0060】
[1-4.変形例]
上記実施形態では、封着板53は、銅等の金属材料により構成されるものとしたが、封着板53は、アルミナセラミック等の絶縁材料により構成されるものであってもよい。このように構成することで、封着板53と筒状筐体51の接合部周辺の電位勾配が緩やかになる。封着板53と筒状筐体51の接合部周辺の電界強度が緩和され、絶縁破壊による真空開閉装置1の絶縁性能の低下を軽減することができる。
【0061】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
第2実施形態にかかる真空開閉装置1について図4図5を参照して説明する。なお、この第2実施形態の真空開閉装置1の構成において、図1図3に示す第1実施形態と同一部分は同一符号で示す。
【0062】
第1実施形態にかかる真空開閉装置1の封着板52は、アルミナセラミック等の絶縁材料により構成された円板状の部材であるものとしたが、第2実施形態にかかる真空開閉装置1の封着板52aは、アルミナセラミック等の絶縁材料により構成された、絶縁距離を確保する円錐状の延伸部6aを有する部材である点が相違する。
【0063】
図4図5に示すように、真空開閉装置1の封着板52aは、アルミナセラミック等の絶縁材料により構成された円錐状の延伸部6aを有する。
【0064】
[2-2.作用]
封着板52aがアルミナセラミック等の絶縁材料により構成された場合、真空絶縁容器5内部と封着板52aとの境界面において電界が発生する。このため、真空絶縁容器5の外部であって封着板52aの近傍に、接地電位となる物体が配置されると、電位勾配が急峻になり電界強度が高くなる。その結果、真空開閉装置1の絶縁性能の低下を招くことが懸念される。
【0065】
図4図5に示すように、真空開閉装置1の封着板52aは、アルミナセラミック等の絶縁材料により構成された円錐状の延伸部6aを有する。延伸部6aは、絶縁距離を確保する。真空開閉装置1の封着板52aが円錐状の延伸部6aを有することにより、真空絶縁容器5の外部であって封着板52aの近傍に、接地電位となる物体が配置されることが防止される。封着板52aの延伸部6aは、真空絶縁容器5内部と封着板52aとの境界面において発生する電位勾配が急峻になることを抑制する。その結果、電界強度が高くなることを抑制することができ、真空開閉装置1の絶縁性能の低下を軽減することができる。
【0066】
[2-3.効果]
(1)本実施形態によれば、第1の封着板52aは、真空絶縁容器5の外部方向に延伸部6aを有するので、絶縁距離が確保される。真空絶縁容器5の外部であって封着板52aの近傍に、接地電位となる物体を配置されることが防止される。これにより、真空絶縁容器5内部と封着板52aとの境界面において発生する電位勾配が急峻になることを抑制することができる。その結果、電界強度が高くなることを抑制することができ、真空開閉装置1の絶縁性能の低下を軽減することができる。
【0067】
(2)本実施形態によれば、第1の封着板52aの延伸部6は、固定電極2の周囲であって真空絶縁容器5の外部方向に円錐状に突出して形成されているので、アルミナセラミック等の絶縁材料により容易に構成することができる。
【0068】
[2-4.変形例]
(1)第1の変形例
真空開閉装置1の封着板52aは、アルミナセラミック等の絶縁材料により構成された円錐状の延伸部6aを有するものとしたが、延伸部6の構成はこれに限られない。図6に示すように、真空開閉装置1の封着板52bの延伸部6bは、固定電極2の周囲であって真空絶縁容器5の外部方向に円筒状に突出して形成されたものであってもよい。延伸部6bは、絶縁距離を確保する。
【0069】
封着板52bは、真空絶縁容器5の外部方向に延伸部6bを有するので、絶縁距離が確保される。真空絶縁容器5の外部であって封着板52bの近傍に、接地電位となる物体を配置されることが防止される。これにより、真空絶縁容器5内部と封着板52bとの境界面において発生する電位勾配が急峻になることを抑制することができる。その結果、電界強度が高くなることを抑制することができ、真空開閉装置1の絶縁性能の低下を軽減することができる。
【0070】
封着板52bの延伸部6bは、固定電極2の周囲であって真空絶縁容器5の外部方向に円筒状に突出して形成されたものであるので、真空絶縁容器5の外部に配置される物体の形状に、フレキシブルに対応することができる。
【0071】
(2)第2の変形例
真空開閉装置1の封着板52aは、アルミナセラミック等の絶縁材料により構成された円錐状の延伸部6aを有するものとしたが、延伸部6の構成はこれに限られない。図7に示すように、真空開閉装置1の封着板52cの延伸部6cは、真空絶縁容器5の外部方向に複数の柱が突出して形成されたものであってもよい。複数の柱は円柱であってもよいし、角柱であってもよい。延伸部6cは、絶縁距離を確保する。
【0072】
封着板52cは、真空絶縁容器5の外部方向に延伸部6cを有するので、絶縁距離が確保される。真空絶縁容器5の外部であって封着板52cの近傍に、接地電位となる物体を配置されることが防止される。これにより、真空絶縁容器5内部と封着板52cとの境界面において発生する電位勾配が急峻になることを抑制することができる。その結果、電界強度が高くなることを抑制することができ、真空開閉装置1の絶縁性能の低下を軽減することができる。
【0073】
封着板52cの延伸部6cは、真空絶縁容器5の外部方向に複数の柱が突出して形成されたものであるので、真空絶縁容器5の外部に配置される物体の形状に、フレキシブルに対応することができる。
【0074】
[3.他の実施形態]
変形例を含めた実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。以下は、その一例である。
【0075】
(1)上記実施形態では、封着板52は中心部に貫通穴を有し、固定電極2は封着板52の貫通穴に固定されるものとした。固定電極2は、封着板52の貫通穴に固定軸22が貫通されて支持されるものとした。
【0076】
図8に示すように、固定軸22は封着板52との接合部分の外周に凹部25を有し、固定電極2は、固定電極2を構成する固定軸22の凹部25により、封着板52と接合されるようにしてもよい。固定電極2の固定軸22と封着板52は、インサート成型等により、一体に形成される。
【0077】
封着板52がアルミナセラミック等の絶縁材料により構成されているため、高電界が印加された場合、固定軸22と封着板52の接続部にトリプルジャンクションが発生することが懸念される。
【0078】
固定軸22は、封着板52との接合部分の外周に凹部25を有し、封着板52は、固定軸22の直径よりも小さい部分において固定電極2と接合されるので、封着板52と固定電極2との境界面において発生する電位勾配が急峻になることを抑制することができる。その結果、電界強度が高くなることを抑制することができ、真空開閉装置1の絶縁性能の低下を軽減することができる。
【0079】
(2)上記実施形態では、固定電極2の固定電極接点21は、固定軸22に接合して構成されるものとしたが、固定電極接点21と固定軸22は、削り出し加工等により一体に形成されるものであってもよい。また、上記実施形態では、可動電極3の可動電極接点31は、可動軸32に接合して構成されるものとしたが、可動電極接点31と可動軸32は、削り出し加工等により一体に形成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0080】
1・・・真空開閉装置
2・・・固定電極
3・・・可動電極
4・・・ベローズ
5・・・真空絶縁容器
6,6a,6b,6c・・・延伸部
9・・・駆動装置
21・・・固定電極接点
22・・・固定軸
25・・・凹部
31・・・可動電極接点
32・・・可動軸
33・・・ガード部
51・・・筒状筐体
52,52a,52b,52c,53・・・封着板
54,55・・・封着部
54a・・・銀ろう付け部
56・・・アークシールド

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8