(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】難水溶性活性化合物とビニルピロリドンコポリマーとを含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20240105BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240105BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20240105BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240105BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20240105BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20240105BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20240105BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20240105BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20240105BHJP
A61K 31/37 20060101ALI20240105BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20240105BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240105BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240105BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240105BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/34
A61K8/36
A61K8/49
A61K8/60
A61K31/05
A61K31/192
A61K31/352
A61K31/353
A61K31/37
A61K31/7048
A61K47/32
A61P17/00
A61Q19/00
A61Q19/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018194879
(22)【出願日】2018-10-16
【審査請求日】2021-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2017227706
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】飯間 雄介
(72)【発明者】
【氏名】白谷 俊史
【審査官】▲高▼橋 明日香
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-048354(JP,A)
【文献】特開2010-024204(JP,A)
【文献】特開2018-095597(JP,A)
【文献】特開2017-114772(JP,A)
【文献】特開2012-188406(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0136771(US,A1)
【文献】米国特許第06287545(US,B1)
【文献】欧州特許出願公開第01779893(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007061970(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 31/00-31/80
A61K 47/32
A61P 17/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種の難水溶性化合物と、
(b)少なくとも1種のカチオン性ビニルピロリドンコポリマーと、
(c)水と
を含み、
(a)難水溶性化合物が、エラグ酸、カテキン、ルテオリン、フェルラ酸
、バイカリン、ジオスミン、グルコシルヘスペリジン及びそれらの混合物からなる群から選択され、
(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーが、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-16及びそれらの混合物からなる群から選択され、
(a)難水溶性化合物の量が、組成物の総質量に対して、0.01~20質量%であり、
(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーの量が、組成物の総質量に対して、0.01~30質量%であり、
pHが、7.0未満である組成物。
【請求項2】
(a)難水溶性化合物が、(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーなしで、室温において、1質量%未満の水溶性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物中の(a)難水溶性化合物の量が、組成物の総質量に対して、0.03~10質量%である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物中の(a)難水溶性化合物の量が、組成物の総質量に対して、0.05~3質量%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物中の(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーの量が、組成物の総質量に対して、0.1~20質量%である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物中の(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーの量が、組成物の総質量に対して、1~10質量%である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマー/(a)難水溶性化合物の質量比が、50以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマー/(a)難水溶性化合物の質量比が、30以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマー/(a)難水溶性化合物の質量比が、10以下である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物中の(c)水の量が、組成物の総質量に対して、50~99質量%である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
ケラチン物質の美白用である、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
pHが、3.0以上である、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
ケラチン物質のための、美容方法であって、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物をケラチン物質へ適用する工程を含む方法。
【請求項14】
(a)少なくとも1種の難水溶性化合物と(c)水とを含む、7.0未満のpHを有する組成物における、組成物中の(a)難水溶性化合物の安定性を増大させるための、(b)少なくとも1種のカチオン性ビニルピロリドンコポリマーの使用であって、
(a)難水溶性化合物が、エラグ酸、カテキン、ルテオリン、フェルラ酸
、バイカリン、ジオスミン、グルコシルヘスペリジン及びそれらの混合物からなる群から選択され、
(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーが、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-16及びそれらの混合物からなる群から選択され、
(a)難水溶性化合物の量が、組成物の総質量に対して、0.01~20質量%であり、
(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーの量が、組成物の総質量に対して、0.01~30質量%である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは皮膚等のケラチン物質のための、難水溶性化合物を含む組成物、詳細には化粧用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
難水溶性活性化合物を含む化粧料又は皮膚科用製品等の組成物は、その組成物が水性である場合、活性化合物の安定性及び生物学的利用能が不良であるという点で課題を有する。今日に至るまで、これらの課題を解決するために、いくつかの先行技術が、難水溶性活性化合物の水溶性を増大させるための方法を記載している。
【0003】
例えば、WO2013/106,433は、セルロースエステル及び難水溶性薬物を含む組成物を開示しており、この組成物では、セルロースエステルが、薬物単独と比べて、薬物の溶解性を増大させることができる。
【0004】
加えて、WO2013/158992は、高度に分枝状のα-D-グルカン又はその改質された形態、及び高度に分枝状のα-D-グルカンの非存在下における溶質化合物の水溶解度よりも高い水溶解度を有する溶質化合物を含む、溶質化合物の溶解性を増大させるための組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2013/106,433
【文献】WO2013/158992
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水と難水溶性化合物とを含む組成物中の難水溶性化合物の安定性を増大させるための新たなアプローチが、依然として必要とされている。この必要性はまた、美白剤等の美容的又は皮膚科学的に活性な化合物として使用されうる難水溶性化合物にも該当する。
【0007】
特に、水を含み酸性pHを有する組成物中の難水溶性化合物の安定性を改善することが望ましい。
【0008】
したがって、本発明の目的は、組成物が酸性pHを有する場合でさえ難水溶性化合物の安定性が増大した、難水溶性化合物と水とを含む組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、
(a)少なくとも1種の難水溶性化合物と、
(b)少なくとも1種のカチオン性ビニルピロリドンコポリマーと、
(c)水と
を含み、
pHが、7.0未満、好ましくは6.5未満、より好ましくは6.0未満、更により好ましくは5.5未満である組成物によって実現することができる。
【0010】
(a)難水溶性化合物は、(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーなしで、室温において、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満の水溶性を有することができる。
【0011】
(a)難水溶性化合物は、エラグ酸であってよい。
【0012】
(a)難水溶性化合物は、フラボノイド、フラボノイドグリコシド、フラバノン、フラバノングリコシド及びケイ皮酸誘導体から選択することができ、特に、(a)難水溶性化合物は、カテキン、ルテオリン、フェルラ酸、コーヒー酸、バイカリン、ジオスミン及びグルコシルヘスペリジンからなる群から選択することができる。
【0013】
組成物中の(a)難水溶性化合物の量は、組成物の総質量に対して、0.01~20質量%、好ましくは0.03~10質量%、より好ましくは0.05~3質量%であってよい。
【0014】
(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーは、架橋されなくてよい。
【0015】
(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーは、ビニルピロリドンと、好ましくはカチオン性ビニルモノマーから選択される、少なくとも1つのカチオン性モノマーとのコポリマーから選択されてよい。
【0016】
本発明による組成物中の(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01~30質量%、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは1~10質量%であってよい。
【0017】
本発明による組成物中の(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマー/(a)難水溶性化合物の質量比は、50以下、好ましくは30以下、より好ましくは10以下であってよい。
【0018】
本発明による組成物中の(c)水の量は、組成物の総質量に対して、50~99質量%、好ましくは60~97質量%、より好ましくは70~95質量%であってよい。
【0019】
本発明による組成物は、3.0以上、好ましくは4.0以上、より好ましくは5.0以上のpHを有してよい。
【0020】
本発明による組成物は、ケラチン物質、好ましくは皮膚の美白における使用のためであってよい。
【0021】
本発明はまた、ケラチン物質、好ましくは皮膚のための、美容方法、好ましくは美白方法であって、本発明による組成物をケラチン物質へ適用する工程を含む方法に関する。
【0022】
本発明の別の態様は、(a)少なくとも1種の難水溶性化合物と(c)水とを含む、7.0未満、好ましくは6.5未満、より好ましくは6.0未満、更により好ましくは5.5未満のpHを有する組成物における、組成物中の(a)難水溶性化合物の安定性を増大させるための、(b)少なくとも1種のカチオン性ビニルピロリドンコポリマーの使用である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
鋭意検討の結果、本発明者らは、組成物が酸性pHを有する場合でさえ難水溶性化合物の安定性が増大した、難水溶性化合物と水とを含む組成物を提供することが可能であることを発見した。
【0024】
したがって、本発明による組成物は、
(a)少なくとも1種の難水溶性化合物と、
(b)少なくとも1種のカチオン性ビニルピロリドンコポリマーと、
(c)水と
を含み、
組成物のpHは、7.0未満、好ましくは6.5未満、より好ましくは6.0未満、更により好ましくは5.5未満である。
【0025】
本発明による組成物は、難水溶性化合物の水中安定性を増大させることができる。換言すれば、本発明による組成物は、水中に均質化された難水溶性化合物の量を増大させることができる。したがって、本発明による組成物は、難水溶性化合物が、該化合物の量が増大する場合でさえ沈殿することなく組成物中に均質化されうるため、長期にわたり安定であることができる。
【0026】
本明細書における「安定」という用語は、難水溶性化合物が組成物中に均質化された状態を維持することができ、組成物中に沈殿しないことを意味する。安定な組成物は、均一又は透明であることができ、又はコロイド状溶液の形態であることができ、一方、不安定な組成物は、不均一でありうる。
【0027】
加えて、本発明による組成物は、難水溶性化合物の改善された生物学的利用能を提供することができる。
【0028】
難水溶性化合物の安定性の増大とは、該化合物の水中安定性が、カチオン性ビニルピロリドンコポリマー及び塩基性アミノ酸の非存在下における化合物の水中安定性と比べ、増大することを指す。
【0029】
加えて、本発明による組成物は、べたつきにくさ及びみずみずしさ等の優れたテクスチャを有することができ、これは、化粧料及び/又は皮膚科用製品に有用となりうる。
【0030】
また、本発明による使用は、水と難水溶性化合物とを含む組成物中の、難水溶性化合物の安定性を増大させることができる。
【0031】
以下に、本発明による組成物、使用等を詳細に説明する。
【0032】
[組成物]
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種の難水溶性化合物と、(b)少なくとも1種のカチオン性ビニルピロリドンコポリマーと、(c)水とを含む。
【0033】
本発明による組成物は、化粧用又は皮膚科用の組成物であることが好ましく、より好ましくは化粧用組成物、更により好ましくは皮膚等のケラチン物質のための化粧用ケア組成物である。特に、本発明による組成物は、皮膚等のケラチン物質の美白のための化粧料又は皮膚科用製品として使用することができる。
【0034】
(a)難水溶性化合物、(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマー、及び(c)水、並びに本発明による組成物の他の特徴を、以下に説明する。
【0035】
(難水溶性活性化合物)
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種の難水溶性化合物を含む。2種以上の(a)難水溶性化合物を組み合わせて使用してよい。したがって、単一の種類の難水溶性化合物、又は異なる種類の難水溶性化合物の組合せを使用することができる。
【0036】
本明細書における「難水溶性」という用語は、不良な水中溶解性を意味する。したがって、本明細書で使用される難水溶性化合物は、水に溶解しにくい。そのため、「難水溶性」化合物は、後に説明される(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーなしで、pH7で、室温(20~25℃、好ましくは25℃)において、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満の水溶性を有する化合物であってよい。換言すれば、「難水溶性」化合物は、pH7で、室温(20~25℃、好ましくは25℃)において、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満の純水溶解性を有してよい。
【0037】
本発明において使用される(a)難水溶性化合物は、1つの分子中に少なくとも1つのフェノールヒドロキシル基を有する難水溶性フェノール化合物であってよく、又は1つの分子中に2つ以上のフェノールヒドロキシル基を有する難水溶性ポリフェノール化合物であってよい。
【0038】
(a)難水溶性化合物は、例えば化合物のグリコシド型、塩、酸型及び還元型等などの誘導体を含む。
【0039】
(a)難水溶性化合物は、化粧料又は皮膚科用製品中の活性成分又は活性化合物であってよい。本明細書で使用される「活性」化合物という用語は、抗酸化効果、美白効果、UVフィルター効果及び抗菌効果等の、化粧用又は皮膚科用の活性特性を有する化合物を意味する。好ましくは、本発明で使用される(a)難水溶性化合物は、美白剤であってよく、したがって、本発明による組成物は、美白製品として、又は皮膚等のケラチン物質を美白するための化粧用組成物として使用することができる。更に、本発明で使用される(a)難水溶性化合物は、UVフィルターであってよく、したがって、本発明による組成物は、UV防御製品として、又は皮膚等のケラチン物質をUV線から防御するための化粧用組成物として使用することができる。
【0040】
本発明において使用されうる(a)難水溶性化合物は、フラボノイド及び非フラボノイドから選択することができる。
【0041】
フラボノイドは、カルコン、フラボン、例えばルテオリン、バイカレイン及びジオスメチン、フラバノン、例えばヘスペレチン、フラバノール、フラボノール、ジヒドロフラボノール、イソフラボノイド、ネオフラボノイド、カテキン、アントシアニジン、タンニン、及びこれらの誘導体からなる群から選択することができる。
【0042】
フラボノイドは、フラボノイドグリコシドの形態であってよい。フラボノイドグリコシドの例として、バイカリン及びジオスミンを挙げることができる。
【0043】
フラバノンは、フラバノングリコシドの形態であってよい。フラバノングリコシドの例として、グルコシルヘスペリジンを挙げることができる。
【0044】
非フラボノイドは、リグナン、オーロン、クルクミノイド、及び他のフェニルプロパノイド、並びにこれらの誘導体、例えばレゾルシノール誘導体からなる群から選択することができる。
【0045】
本発明において使用されうる(a)難水溶性化合物は、ケイ皮酸誘導体から選択することができる。
【0046】
ケイ皮酸誘導体は、以下の化学式(I)で表すことができ:
【0047】
【0048】
式中、
Aは、OR3基(式中、R3は、水素原子、フィチル基、ベンジル基、直鎖状又は分枝状C1~C18アルキル基、C3~C8シクロアルキル基、C3~C8シクロアルキル-C1~C5アルキル基、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン及びアンモニウムイオンから選ばれる)、
及び
NHR4基(式中、R4は、水素原子、フィチル基、ベンジル基、及び直鎖状又は分枝状C1~C18アルキル基、C3~C8シクロアルキル基、C3~C8シクロアルキル-C1~C5アルキル基から選ばれる)から選ばれ、
R1は、水素原子、ヒドロキシル基、C1~C6アルコキシ基、直鎖状又は分枝状C1~C18アルキル基、C3~C8シクロアルキル基、C3~C8シクロアルキル-C1~C5アルキル基から選ばれ、
R2は、水素原子、ヒドロキシル基及びC1~C6アルコキシ基から選ばれる。
【0049】
直鎖状又は分枝状C1~C18アルキル基、好ましくはC1~C12アルキル基、より好ましくはC1~C6アルキル基として、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基及び1-エチルブチル基を挙げることができる。
【0050】
C3~C8シクロアルキル基として、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基を挙げることができる。
【0051】
C3~C8シクロアルキル-C1~C5アルキル基として、例えばシクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基及びシクロヘキシルメチル基を挙げることができる。
【0052】
C1~C6アルコキシ基として、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、1-エチルプロポキシ基、ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基及び1-エチルブトキシ基を挙げることができる。メトキシ基が好ましい。
【0053】
R1がヒドロキシル基であること、並びにR2が、ヒドロキシル基及びC1~C6アルコキシ基、より好ましくはメトキシ基から選ばれることが好ましい場合がある。
【0054】
ケイ皮酸誘導体として、例えばメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、メトキシケイ皮酸イソプロピル、メトキシケイ皮酸イソアミル、メトキシケイ皮酸ジイソプロピル、コーヒー酸、フェルラ酸を挙げることができる。コーヒー酸及びフェルラ酸が好ましい場合があり、フェルラ酸がより好ましい場合がある。
【0055】
エラグ酸が美白効果を有するため、本発明は、特に、(a)難水溶性化合物としてエラグ酸を好ましくは使用することができる。
【0056】
エラグ酸は、以下の化学式によって表される。エラグ酸は、例えばMinasolve社から得ることができる(製品名:Minacare Elage)。
【0057】
【0058】
レスベラトロール等が美白効果を有するため、本発明は、(a)難水溶性化合物としてレスベラトロール等のスチルベノイドを好ましくは使用することができる。
【0059】
レスベラトロールは、以下の化学式によって表される。レスベラトロールは、例えばSymrise Corp社から得ることができる。
【0060】
【0061】
レゾルシノール誘導体が美白効果を有するため、本発明は、(a)難水溶性化合物としてレゾルシノール誘導体を好ましくは使用することができる。
【0062】
レゾルシノール誘導体は、好ましくは4位で置換された誘導体、例えば4-アルキルレゾルシノール、より好ましくはフェニルエチルレゾルシノール、4-n-ブチルレゾルシノール及び4-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ベンゼン-1,3-ジオールであってよく、特定すると、その美白効果ゆえにフェニルエチルレゾルシノールであってよい。フェニルエチルレゾルシノールはまた、4-(1-フェニルエチル)-1,3-ベンゼンジオールとも称され、以下の化学式によって表される。フェニルエチルレゾルシノールは、例えばSymrise Corp社から得ることができる(製品名:Symwhite 377(登録商標))。
【0063】
【0064】
レゾルシノール誘導体の他の例として、以下を挙げることができる:2-メチルレゾルシノール、5-メチルレゾルシノール、4-メチルレゾルシノール、4-エチルレゾルシノール、2,5-ジメチルレゾルシノール、4,5-ジメチルレゾルシノール、2,4-ジメチル-1,3-ベンゼンジオール、3,5-ジヒドロキシベンジルアミン、5-メトキシレゾルシノール、3,5-ジヒドロキシベンジルアルコール、2-メトキシレゾルシノール、4-メトキシレゾルシノール、3,5-ジヒドロキシトルエン一水和物、4-クロロレゾルシノール、2-クロロレゾルシノール、2',4'-ジヒドロキシアセトフェノン、3',5'-ジヒドロキシアセトフェノン、2,6-ジヒドロキシ-4-メチルベンズアルデヒド、4-プロピルレゾルシノール、2,4-ジヒドロキシ-1,3,5-トリメチルベンゼン、3,5-ジヒドロキシベンズアミド、2,6-ジヒドロキシベンズアミド、2,4-ジヒドロキシベンズアミド、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ-4-メチルベンジルアルコール、3,5-ジヒドロキシアニソール水和物、4-アミノレゾルシノール塩酸塩、2-アミノレゾルシノール塩酸塩、5-アミノベンゼン-1,3-ジオール塩酸塩、2',4'-ジヒドロキシプロピオフェノン、2',4'-ジヒドロキシ-3'-メチルアセトフェノン、(2,4-ジヒドロキシフェニル)アセトン、(3,5-ジヒドロキシフェニル)アセトン、2,6-ジヒドロキシ-4'-メチルアセトフェノン、4-n-ブチルレゾルシノール、2,4-ジエチル-1,3-ベンゼンジオール、3,5-ジヒドロキシ-4-メチル安息香酸、2,6-ジヒドロキシ-4-メチル安息香酸、2,4-ジヒドロキシ-6-メチル安息香酸、3,5-ジヒドロキシフェニル酢酸、2-エチル-5-メトキシベンゼン-1,3-ジオール、4-アミノ-3,5-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシアセトフェノン一水和物、3,5-ジヒドロキシベンジルアミン塩酸塩、4,6-ジクロロレゾルシノール、2',4'-ジヒドロキシ-3'-メチルプロピオフェノン、1-(3-エチル-2,6-ジヒドロキシフェニル)エタン-1-オン、2',6'-ジヒドロキシ-4'-メトキシアセトフェノン、1-(2,6-ジヒドロキシ-3-メトキシフェニル)エタン-1-オン、3(2,4-ジヒドロキシフェニルプロピオン酸及び2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチル安息香酸。
【0065】
(a)難水溶性化合物の塩として、該化合物の従来型の非毒性塩、例えば酸又は塩基から形成されるものが挙げられる。
【0066】
(a)難水溶性化合物の塩の例として、次のものが挙げられる:
a)化合物に、鉱酸を、より具体的には塩酸、ホウ酸、臭化水素酸、ヒドロン酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸及びテトラフルオロホウ酸から選択される鉱酸を添加することにより得られる塩、又は、
b)化合物に、有機酸を、より具体的には酢酸、プロピオン酸、コハク酸、フマル酸、乳酸、グリコール酸、クエン酸、グルコン酸、サリチル酸、酒石酸、テレフタル酸、メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸及びトリフル酸から選択される有機酸を添加することにより得られる塩。
【0067】
更に、(a)難水溶性化合物に、無機塩基を、例えば水性の水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム、水酸化リチウム、並びに例えばナトリウム、カリウム若しくはカルシウムの炭酸塩又は炭酸水素塩を、又は有機塩基を、例えば第一級、第二級若しくは第三級アルキルアミン、例えばトリエチルアミン若しくはブチルアミンを添加することによって得られる塩も含まれる。
【0068】
(a)難水溶性化合物の塩は、有利には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩、並びにアンモニウム塩等のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩から選択することができる。
【0069】
(a)難水溶性化合物が、フラボノイド、フラボノイドグリコシド、フラバノン、フラバノングリコシド及びケイ皮酸誘導体から選択されることが好ましい場合がある。(a)難水溶性化合物が、カテキン、ルテオリン、フェルラ酸、コーヒー酸、バイカリン、ジオスミン及びグルコシルヘスペリジンから選択されることがより好ましい場合がある。
【0070】
(a)難水溶性化合物がエラグ酸であることもまた好ましい場合がある。
【0071】
或いは、(a)難水溶性化合物が、レスベラトロール等のスチルベノイド、及びフェニルエチルレゾルシノール等のレゾルシノール誘導体から選択されることが好ましい場合がある。
【0072】
本発明による組成物中の(a)難水溶性化合物の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であってよい。本発明による組成物中の(a)難水溶性化合物の量が、組成物の総質量に対して0.2質量%以上であることが、更により好ましい場合がある。
【0073】
その一方で、本発明による組成物中の(a)難水溶性化合物の量は、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは3質量%以下であってよい。本発明による組成物中の(a)難水溶性化合物の量が、組成物の総質量に対して2質量%以下であることが、更により好ましい場合がある。
【0074】
本発明による組成物中の(a)難水溶性化合物の量は、組成物の総質量に対して、0.01~20質量%、好ましくは0.03~10質量%、より好ましくは0.05~3質量%の範囲であってよい。本発明による組成物中の(a)難水溶性化合物の量が、組成物の総質量に対して0.2質量%~2質量%であることが、更により好ましい場合がある。
【0075】
(カチオン性ビニルピロリドンコポリマー)
本発明による組成物は、(b)少なくとも1種のカチオン性ビニルピロリドンコポリマーを含む。2種以上の(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーを、組み合わせて使用してよい。したがって、単一の種類のカチオン性ビニルピロリドンコポリマー、又は異なる種類のカチオン性ビニルピロリドンコポリマーの組合せを使用することができる。
【0076】
(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーとして、任意の種類のカチオン性ビニルピロリドンコポリマーを使用することができる。しかし、(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーが架橋されていないことが好ましい。
【0077】
本明細書における「コポリマー」という用語には、ビニルピロリドンと、ビニルピロリドン以外の1つのコモノマーとの共重合によって得られるポリマー、並びにビニルピロリドンと、ビニルピロリドン以外の2つ以上のコモノマーとの共重合によって得られるポリマーが含まれる。(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーが、ビニルピロリドンと1つのコモノマーとのコポリマーであることが好ましい場合がある。(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーは、ビニルピロリドンのホモポリマーではない。
【0078】
(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーは、ビニルピロリドンに由来する少なくとも1種のペンダント環構造を有する。その一方で、(b)カチオン性ビニルピロリドンポリマーは、ポリマーの主鎖中に環構造を含まないことが好ましい。
【0079】
(a)難水溶性化合物と(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーとは複合材を形成することができる。本明細書で使用される「複合材」という用語は、(a)難水溶性化合物と(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーとを組み合わせた結果として分子間相互作用が起こる物質又は配合物を指す。複合材は、例えば、付加物、付随物、凝集物又は包接化合物であってよい。
【0080】
複合材の形成という点では、(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーがランダムコポリマーであり、ブロックコポリマーではないことが好ましい場合がある。
【0081】
(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーは、ビニルピロリドンと、カチオン性ビニルモノマーから選択されてよい、少なくとも1つのカチオン性モノマーとのコポリマーから選択されてよい。
【0082】
換言すれば、(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーは、ビニルピロリドンと、カチオン性ビニルモノマーから選択される、少なくとも1つのカチオン性コモノマーとの共重合によって得ることができる。
【0083】
カチオン性ビニルモノマーの例として、カチオン性アクリレート及びカチオン性メタクリレート等のカチオン性(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0084】
カチオン性アクリレート又はカチオン性メタクリレートの例として、アクリル酸ジメチルアミノメチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、四級化アクリル酸ジメチルアミノメチル、四級化アクリル酸ジメチルアミノエチル、四級化メタクリル酸ジメチルアミノメチル、四級化メタクリル酸ジメチルアミノエチル及びメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムを挙げることができる。
【0085】
カチオン性ビニルモノマーの例として、四級化ビニルイミダゾール(例えば3-メチル-1-ビニルイミダゾリウム)等のカチオン性ビニルイミダゾールを挙げることができる。
【0086】
カチオン性ビニルピロリドンコポリマーの例として、以下を挙げることができる:
- メタクリル酸ジメチルアミノエチル単位を含むビニルピロリドンコポリマー、
- メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム単位を含むビニルピロリドンコポリマー、
- メチルビニルイミダゾリウム単位を含むビニルピロリドンコポリマー、及び
- これらの混合物。
【0087】
メタクリル酸ジメチルアミノエチル単位を含むカチオン性ビニルピロリドンコポリマーは、以下から選ぶことができる:
- ビニルピロリドン/メタクリル酸ジメチルアミノエチルコポリマー、例えば、I.S.P.社により商品名Copolymer 845で販売されているビニルピロリドン/メタクリル酸ジメチルアミノエチルコポリマー(質量により20/80)、
- 硫酸ジエチルで四級化されたビニルピロリドン/メタクリル酸ジメチルアミノエチルコポリマー、例えば、I.S.P.社により商品名Gafquat 734、755、755S及び755Lで販売されている、硫酸ジエチルで四級化されたビニルピロリドン/メタクリル酸ジメチルアミノエチルコポリマー、
- ビニルピロリドン/メタクリル酸ジメチルアミノエチル/親水性ポリウレタンコポリマー、例えば、U.C.I.B.社により商品名Pecogel GC-310で、又はBlagden Chemicals社により商品名Aquamere C1031及びC1511で販売されている、ビニルピロリドン/メタクリル酸ジメチルアミノエチル/親水性ポリウレタンコポリマー、
- 四級化されている又は四級化されていないビニルピロリドン/メタクリル酸ジメチルアミノエチル/C8~C16オレフィンコポリマー、例えば、I.S.P.社により商品名Ganex ACP1050~1057、1062~1069、及び1079~1086で販売されているビニルピロリドン/メタクリル酸ジメチルアミノエチル/C8~C16オレフィンコポリマー、
並びに
- ビニルピロリドン/メタクリル酸ジメチルアミノエチル/ビニルカプロラクタムコポリマー、例えば、I.S.P.社により商品名Gaffix VC713で販売されているビニルピロリドン/メタクリル酸ジメチルアミノエチル/ビニルカプロラクタムコポリマー。
【0088】
メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム(MAPTAC)単位を含むカチオン性ビニルピロリドンコポリマーは、以下から選ぶことができる:
- ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムコポリマー、例えば、I.S.P.社により商品名Gafquat ACP1011及びGafquat HS100で販売されているビニルピロリドン/MAPTACコポリマー、
並びに
- ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム/ビニルカプロラクタムターポリマー、例えば、I.S.P.社により商品名Polymer ACP 1059、1060及び1156で販売されているビニルピロリドン/MAPTAC/ビニルカプロラクタムターポリマー。
【0089】
メチルビニルイミダゾリウム単位を含むカチオン性ビニルピロリドンコポリマーは、以下から選ぶことができる:
- ビニルピロリドン/メチルビニルイミダゾリウムクロリドコポリマー、例えば、BASF社により商品名Luviquat FC370、FC550、FC905及びHM552で販売されているビニルピロリドン/メチルビニルイミダゾリウムクロリドコポリマー、
- ビニルピロリドン/メチルビニルイミダゾリウムクロリド/ビニルイミダゾールコポリマー、例えば、BASF社により商品名Luviquat 8155で販売されているビニルピロリドン/メチルビニルイミダゾリウムクロリド/ビニルイミダゾールコポリマー、
- ビニルピロリドン/ビニルカプロラクタム/ビニルイミダゾリウムコポリマー、例えば、BASF社により商品名Luviquat Holdで販売されているビニルピロリドン/ビニルカプロラクタム/ビニルイミダゾリウムメトスルフェートコポリマー、
並びに
- ビニルピロリドン/メト硫酸メチルビニルイミダゾリウムコポリマー、例えば、BASF社により商品名Luviquat MS370で販売されているビニルピロリドン/メト硫酸メチルビニルイミダゾリウムコポリマー。
【0090】
カチオン性ビニルピロリドンコポリマーが、メタクリル酸ジメチルアミノエチル単位を含むビニルピロリドンポリマーから選ばれることが好ましい場合があり、より好ましくは、ビニルピロリドン/メタクリル酸ジメチルアミノエチルコポリマー、例えば、ASHLAND社により名称COPOLYMER 845-Oで販売されているものから選ばれる。
【0091】
カチオン性ビニルピロリドンコポリマーが、メチルビニルイミダゾリウム単位を含むビニルピロリドンポリマーから選ばれることが好ましい場合があり、より好ましくは、ビニルピロリドン/メチルビニルイミダゾリウムコポリマーから選ばれ、更により好ましくは、ポリクオタニウム-16、例えばBASF社により商品名LUVIQUAT FC 550で販売されているものから選ばれる。
【0092】
カチオン性ビニルピロリドンコポリマーが、四級化メタクリル酸ジメチルアミノエチル単位を含むビニルピロリドンポリマーから選ばれることが好ましい場合があり、より好ましくは、ポリクオタニウム-11、例えば、ASHLAND社により商品名GAFQUAT 755 Nで販売されているものである。
【0093】
カチオン性ビニルピロリドンコポリマーが、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム単位を含むビニルピロリドンポリマーから選ばれることが好ましい場合があり、より好ましくはポリクオタニウム-28である。
【0094】
カチオン性ビニルピロリドンコポリマーが、ビニルカプロラクタム及び四級化ビニルイミダゾール単位を含むビニルピロリドンポリマーから選ばれることが好ましい場合があり、より好ましくはポリクオタニウム-46である。
【0095】
(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーは、コポリマー主鎖中に、又はコポリマーのペンダント基中に、少なくとも1つのカチオン性部分若しくは基を有する。
【0096】
(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーが、コポリマー主鎖中に、又はコポリマーのペンダント基中に、アニオン性部分若しくは基を有していないことが好ましい。
【0097】
その一方で、(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーが、コポリマー主鎖中に、又はコポリマーのペンダント基中に、少なくとも1つの非イオン性部分若しくは基を有していることが可能である。
【0098】
したがって、(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーは、ビニルピロリドンと上で説明した少なくとも1つのカチオン性モノマーと少なくとも1つの非イオン性モノマーとのコポリマーから選択されてよく、該非イオン性モノマーは、非イオン性(メタ)アクリレート、非イオン性不飽和炭化水素、非イオン性ビニルモノマー及びこれらの混合物からなる群から選択されてよい。
【0099】
換言すれば、(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーは、ビニルピロリドンと上で説明した少なくとも1つのカチオン性コモノマーと少なくとも1つの非イオン性コモノマーとの共重合によって得ることができ、該非イオン性コモノマーは、非イオン性アクリレート又はメタクリレート、非イオン性不飽和炭化水素、好ましくはアルケン、例えばスチレン、ブタジエン、ヘキサデセン、エイコセン、デセン及びトリアコンテン、非イオン性ビニルモノマー、及びこれらの混合物からなる群から選択されてよい。
【0100】
非イオン性アクリレート又はメタクリレートの例として、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0101】
非イオン性ビニルモノマーの例として、ビニルアルコール、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ネオデカン酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル、t-ブチル安息香酸ビニル、ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾール及び(メタ)アクリルアミドを挙げることができる。
【0102】
カチオン性ビニルピロリドンコポリマーが、メタクリルアミド、ビニルイミダゾール及び四級化ビニルイミダゾール単位を含むビニルピロリドンポリマーから選ばれることが好ましい場合があり、より好ましくはポリクオタニウム-68である。
【0103】
本発明による組成物中の(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であってよい。本発明による組成物中の(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーの量が、組成物の総質量に対して2質量%以上であることが、更により好ましい場合がある。
【0104】
その一方で、本発明による組成物中の(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーの量は、組成物の総質量に対して、30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってよい。本発明による組成物中の(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーの量が、組成物の総質量に対して5質量%以下であることが、更により好ましい場合がある。
【0105】
本発明による組成物中の(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01~30質量%、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは1~10質量%の範囲であってよい。本発明による組成物中の(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマーの量が、組成物の総質量に対して2質量%~5質量%であることが、更により好ましい場合がある。
【0106】
本発明による組成物中の、(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマー/(a)難水溶性化合物の質量比は、50以下、好ましくは30以下、より好ましくは10以下であってよい。
【0107】
(水)
本発明による組成物は、(c)水を含む。
【0108】
本発明による組成物中の(c)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であってよい。本発明による組成物中の(c)水の量が、組成物の総質量に対して80質量%以上であることが、更により好ましい場合がある。
【0109】
その一方で、本発明による組成物中の(c)水の量は、組成物の総質量に対して、99質量%以下、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下であってよい。本発明による組成物中の(c)水の量が、組成物の総質量に対して94質量%以下であることが、更により好ましい場合がある。
【0110】
本発明による組成物中の(c)水の量は、組成物の総質量に対して、50~99質量%、好ましくは60~97質量%、より好ましくは70~95質量%であってよい。本発明による組成物中の(c)水の量が、組成物の総質量に対して80質量%~94質量%であることが、更により好ましい場合がある。
【0111】
(pH)
本発明による組成物は、7.0未満、好ましくは6.5未満、より好ましくは6.0未満、更により好ましくは5.5未満のpHを有する。これは、本発明による組成物が酸性であることを意味する。
【0112】
本発明による組成物が、3.0以上、より好ましくは4.0以上、更により好ましくは5.0以上のpHを有することが好ましい場合がある。
【0113】
(他の任意選択の添加剤)
本発明による組成物はまた、例えば油、アニオン性、カチオン性、両性若しくは非イオン性界面活性剤、溶媒、ガム、樹脂、親水性増粘剤、疎水性増粘剤、分散剤、抗酸化剤、成膜剤、保存剤、芳香剤、中和剤、pH調整剤、防腐剤、UV遮蔽剤、成分(a)以外の化粧用活性剤、例えばビタミン、保湿剤、エモリエント、又はコラーゲン保護剤、及びこれらの混合物から選ばれる、化粧品の分野で通常使用される任意の他の任意選択の添加剤も含んでよい。
【0114】
pH調整剤として、少なくとも1種の酸性化剤及び/又は少なくとも1種の塩基性化剤(アルカリ剤)を使用することができる。
【0115】
酸性化剤は、例えば、鉱酸又は有機酸、例としては塩酸、リン酸、カルボン酸、例としては酒石酸、クエン酸及び乳酸、又はスルホン酸とすることができる。
【0116】
酸性化剤は、組成物の総質量に対して、5質量%未満、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下の範囲の量で存在してよい。
【0117】
塩基性化剤すなわちアルカリ剤は、例えば、化粧料中に一般に使用される任意の無機又は有機の塩基性剤、例えばアンモニア;アルカノールアミン、例えばモノ-、ジ-、及びトリ-エタノールアミン、イソプロパノールアミン;アルカリ金属水酸化物等の金属水酸化物(例えば水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム);尿素、グアニジン、及びこれらの誘導体;並びに以下の構造:
【0118】
【0119】
(式中、
Rは、ヒドロキシル又はC1~C4アルキル基で任意選択で置換されているプロピレン等のアルキレンを示し、R1、R2、R3及びR4は、独立に、水素原子、アルキル基、又はC1~C4ヒドロキシアルキル基を示し、これは、1,3-プロパンジアミン及びその誘導体によって例示することができる。水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましい場合がある)
で説明されるもの等のジアミンとすることができる。
【0120】
本発明による組成物は、1~5個の炭素原子を含有する低級モノアルコール、C3~C4ケトン、又はC3~C4アルデヒド等の少なくとも1種の水混和性溶媒を含んでよい。好ましく使用されうる水混和性溶媒は、エタノールである。水混和性溶媒の含有量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~15質量%、更に良好には1質量%~8質量%の範囲であってよい。
【0121】
本発明による組成物中に存在しうる上記の任意選択の添加剤の性質及び量を、所望の美容特性が該添加剤により影響を受けないよう調整することは、当業者にとって常法である。
【0122】
[調製]
本発明による組成物は、上述の必須成分及び任意選択の成分を、従来の方法で混合することによって調製することができる。
【0123】
例えば、本発明による組成物は、
(a)少なくとも1種の難水溶性化合物、
(b)少なくとも1種のカチオン性ビニルピロリドンコポリマー、及び
(c)水
を混合する工程と、
こうして得た混合物のpHを、7.0未満、好ましくは6.5未満、より好ましくは6.0未満、更により好ましくは5.5未満であるように調整する工程と
を含む方法によって調製することができる。
【0124】
任意選択の成分の任意のものを更に混合することが可能である。
【0125】
混合は、室温(例えば20~25℃、好ましくは25℃で)、好ましくは30℃以上の温度で、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上等の任意の温度で実施することができる。pH調整剤等の上述の任意選択の成分の任意のものと更に混合することが好ましい。
【0126】
本発明による組成物の形態は、特に限定されず、W/Oエマルション、O/Wエマルション、ゲル、溶液等の様々な形態を取ってよい。本発明による組成物が溶液の形態であることが好ましく、好ましくは水溶液、より好ましくは透明な水溶液である。
【0127】
[美容方法]
本発明による組成物は、化粧用又は皮膚科用組成物、好ましくは化粧用組成物、より好ましくはケラチン物質のための化粧用組成物として使用することができる。ケラチン物質として、皮膚、頭皮、毛髪、唇等の粘膜、及び爪を挙げることができる。
【0128】
本発明による組成物は、皮膚等のケラチン質物質のための抗酸化剤、美白製品又は抗菌製品として使用することができる。特に、本発明による組成物は、美白製品として使用することができる。
【0129】
本発明による組成物は、皮膚、頭皮及び/又は唇、好ましくは皮膚等のケラチン物質への適用のために企図されることが好ましい場合がある。
【0130】
したがって、本発明による組成物は、ケラチン物質、好ましくは皮膚のための美容方法で使用することができる。一実施形態では、本発明は、ケラチン物質、好ましくは皮膚のための、美容方法、好ましくは美白方法であって、本発明による組成物をケラチン物質へ適用する工程を含む方法に関する。
【0131】
本発明による組成物は、ローション、乳液、クリーム、ジェル、ペースト、セラム、泡状物質又はスプレーの形態における局所用の化粧用組成物として使用することができる。
【0132】
[使用]
本発明はまた、組成物中の(a)難水溶性化合物の安定性を増大させるための、(a)少なくとも1種の難水溶性化合物と(c)水とを含む、7.0未満、好ましくは6.5未満、より好ましくは6.0未満、更により好ましくは5.5未満のpHを有する組成物中の(b)少なくとも1種のカチオン性ビニルピロリドンコポリマーの使用にも関する。
【0133】
本発明による組成物についての、(b)カチオン性ビニルピロリドンコポリマー、(a)難水溶性化合物、及び(c)水に関する上記の説明は、本発明による使用において用いられるものに該当しうる。
【0134】
本組成物による使用に用いられる組成物は、本発明による組成物に関して上で説明された任意選択の成分の任意のものを含むことができる。
【実施例】
【0135】
本発明を、実施例によって、より詳細に説明する。しかし、これらの実施例が本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0136】
(実施例1~8及び比較例1~11)
[調製]
実施例1~8及び比較例1~11による組成物のそれぞれを、表1及び表2に示す成分を室温(20~25℃)で混合することによって調製した。成分の量についての数値は、全て活性原料の「質量%」に基づく。
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
表1及び表2は、実施例1~8及び比較例1~11による組成物に関する以下の情報を示す。
(1)「pH」の列に、組成物のpHの値
(2)「VP基の存在」の列に、「あり」又は「なし」として、組成物中のポリマーがビニルピロリドン基を有するかどうか
(3)「カチオン性コポリマーの存在」の列に、「あり」又は「なし」として、組成物中のポリマーがカチオン性コポリマーであるかどうか
【0141】
[評価]
(安定性)
実施例1~8及び比較例1~11による組成物のそれぞれの安定性を、1カ月にわたって室温(20~25℃)に保った組成物の外観の目視観測により、以下の基準に基づいて評価した。
良好:エラグ酸の結晶は見られなかった
不良:エラグ酸の結晶が見られた
【0142】
ここでの「良好」とは、エラグ酸が組成物中に均質化した状態で維持され、組成物中で沈殿しないことを意味する。その一方で、ここでの「不良」とは、エラグ酸が組成物中に均質化した状態で維持されず、その結果、エラグ酸が組成物中で沈殿又は析出したことを意味する。
【0143】
安定性評価の結果を表1及び表2に示す。
【0144】
実施例1~2は、それらのそれぞれがカチオン性VPコポリマーを含む実施例1~2による組成物が、エラグ酸を、長期にわたり均質化状態に維持可能であることを示している。室温におけるエラグ酸の純水溶解性が0.01質量%未満であるため、実施例1及び2は、組成物中のエラグ酸の安定性がその中で使用されたポリマーによって増大されたことを示している。
【0145】
比較例1及び2は、非イオン性VPコポリマーが、組成物中のエラグ酸を均質化することに寄与できないことを示している。
【0146】
比較例3及び4は、アニオン性VPコポリマーが、組成物中のエラグ酸を均質化することに寄与できないことを示している。
【0147】
比較例5は、PVP(VPホモポリマー)が、組成物中のエラグ酸を均質化することに寄与できないことを示している。
【0148】
比較例6及び7、8及び9、並びに10及び11は、非VPカチオン性ポリマー、非VP非イオン性ポリマー及び非VPアニオン性ポリマーが、それぞれ、組成物中のエラグ酸を均質化することに寄与できないことを示している。
【0149】
実施例3~8は、それらのそれぞれがカチオン性VPコポリマーを含む実施例3~8による組成物が、種々の難水溶性化合物を、長期にわたり均質化状態に維持可能であることを示している。室温におけるこれらの難水溶性化合物の純水溶解性もまた非常に低いため、実施例3~8は、組成物中の当該難水溶性化合物の安定性がその中で使用されたポリマーによって増大されたことを示している。