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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】トナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20240105BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20240105BHJP
   G03G 9/093 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
G03G9/08 381
G03G9/097 365
G03G9/08 384
G03G9/097 368
G03G9/093
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019108356
(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公開番号】P2020201391
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】野地 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】芝原 昇平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 祐
(72)【発明者】
【氏名】松下 修
(72)【発明者】
【氏名】桝本 茜
(72)【発明者】
【氏名】鏑木 武志
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/093521(WO,A1)
【文献】特開平03-202855(JP,A)
【文献】特開2005-201985(JP,A)
【文献】特開2017-173814(JP,A)
【文献】特開2016-066048(JP,A)
【文献】特開2006-316261(JP,A)
【文献】特開2013-228679(JP,A)
【文献】特開2007-333779(JP,A)
【文献】特開2018-010125(JP,A)
【文献】特開平01-167764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性単量体及び脂肪酸金属塩を含有する重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系媒体中に分散させて、懸濁液を調製する工程、
該懸濁液に、水溶性金属塩を添加する工程、
該水溶性金属塩が添加された該懸濁液中の懸濁粒子に含まれる該重合性単量体を重合させ、該重合で生じる重合体を含有する重合体粒子を生成させ、該重合体粒子が分散された分散液を得る工程、及び、
該分散液を、該重合体粒子に含有される重合体のガラス転移点以上の温度に加熱し、かつ、該分散液のpHを7.5以上10.0以下の条件下で保持するアルカリ処理工程、
を有するトナーの製造方法であって、
該水溶性金属塩が、2価以上の金属の塩であり、
該水溶性金属塩を添加する前の該懸濁液のpHが、4.0以上6.5未満である、
ことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項2】
結着樹脂、脂肪酸金属塩及び有機溶媒を混合して調製された混合液を、分散安定剤を含有する水系媒体中に分散させて、懸濁液を調製する工程、
該懸濁液に、水溶性金属塩を添加する工程、
該水溶性金属塩が添加された該懸濁液中の懸濁粒子に含まれる該有機溶媒を除去して、該結着樹脂を含有する重合体粒子を生成させ、該重合体粒子が分散された分散液を得る工程、及び、
該分散液を、該結着樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱し、かつ、該分散液のpHを7.5以上10.0以下の条件下で保持するアルカリ処理工程、
を有するトナーの製造方法であって、
該水溶性金属塩が、2価以上の金属の塩であり、
該水溶性金属塩を添加する前の該懸濁液のpHが、4.0以上6.5未満である、
ことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項3】
結着樹脂、脂肪酸金属塩及び有機溶媒を混合して調製された混合液を、分散安定剤を含有する水系媒体中に分散させて、懸濁液を調製する工程、
該懸濁液に、水溶性金属塩を添加する工程、及び、
該水溶性金属塩が添加された該懸濁液を、該結着樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱し、かつ、該懸濁液のpHを7.5以上10.0以下の条件下で保持するアルカリ処理工程を行いつつ、該懸濁液中の懸濁粒子に含まれる該有機溶媒を除去して、該結着樹脂を含有する重合体粒子を生成させ、該重合体粒子が分散された分散液を得る工程、
を有するトナーの製造方法であって、
該水溶性金属塩が、2価以上の金属の塩であり、
該水溶性金属塩を添加する前の該懸濁液のpHが、4.0以上6.5未満である、
ことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項4】
結着樹脂、脂肪酸金属塩及び有機溶媒を混合して調製された混合液を、分散安定剤を含有する水系媒体中に分散させて、懸濁液を調製する工程、
該懸濁液に、水溶性金属塩を添加する工程、
該水溶性金属塩が添加された該懸濁液を、該結着樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱し、かつ、該懸濁液のpHを7.5以上10.0以下の条件下で保持するアルカリ処理工程、及び、
該結着樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱し、かつ、該懸濁液のpHを7.5以上10.0以下の条件下で保持する工程の後、該懸濁液中の懸濁粒子に含まれる該有機溶媒を除去して、該結着樹脂を含有する重合体粒子を生成させ、該重合体粒子が分散された分散液を得る工程、
を有するトナーの製造方法であって、
該水溶性金属塩が、2価以上の金属の塩であり、
該水溶性金属塩を添加する前の該懸濁液のpHが、4.0以上6.5未満である、
ことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項5】
前記有機溶媒が、前記結着樹脂及び脂肪酸金属塩を溶解することができる有機溶媒である、請求項2~4のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
【請求項6】
前記脂肪酸金属塩が、2価以上の多価金属を含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
【請求項7】
前記2価以上の多価金属が、3価以上の金属である、請求項6に記載のトナーの製造方法。
【請求項8】
前記2価以上の多価金属が、Cu、Al及びFeからなる群より選択される金属である、請求項6又は7に記載のトナーの製造方法。
【請求項9】
前記懸濁液に添加される前記水溶性金属塩の量が、前記脂肪酸金属塩100モル部に対して、150モル部以上850モル部以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
【請求項10】
前記製造方法が、前記アルカリ処理工程において樹脂粒子を添加する工程、及び、前記重合体粒子の表面に該樹脂粒子を固着させる工程、を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
【請求項11】
前記樹脂粒子が、下記式(1)で示される1価の基aを有する重合体Aを含有する粒子である、請求項10に記載のトナーの製造方法。
【化1】
(式(1)中、R1は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1以上18以下のアルキル基、又は、炭素数1以上18以下のアルコキシ基を表し、R2は、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1以上18以下のアルキル基、又は、炭素数1以上18以下のアルコキシ基を表し、gは、1以上3以下の整数を表し、hは、0以上3以下の整数を表す。hが2又は3である場合、h個のR1は、同一であっても異なっていてもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法や静電記録法に用いられるトナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真法など静電潜像を経て画像情報を可視化する方法は、様々な分野で利用されており、さらなる高画質化、高速化に加え、複写機やプリンターの小型化、省エネルギー化、長寿命化が求められている。
懸濁重合法や、溶解懸濁法といった水系媒体中にトナー粒子組成物を投入し、機械的せん断により造粒するトナーの製造方法は、トナーの粒径及びその分布のコントロールがしやすく、高画質化に有利であるため、その製法が検討されてきた。一方で、トナー粒子形状の制御は難しく、トナー粒子が真球に近い形状となるため、転写性に優れる反面、クリーニング性に劣るという課題がある。
それに対して、特許文献1では、懸濁重合法において分散安定剤の溶解―再付着を制御することによってトナー粒子を異形化する方法が検討されている。
この方法ではクリーニング性の改善は認められるが、造粒工程もしくは懸濁重合工程初期での異形化手法であるため、トナーの粒度分布が乱れやすい傾向にあり、現在の高速長寿命というトナーの耐久性への要求を満たすためには、改善の余地が残されていることが分かってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-155154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、現像時のクリーニング性に改善は認められるものの、粒度分布が乱れやすくトナーの耐久性の面で課題があった。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、トナーの粒度分布を良好に揃えトナーの耐久性を維持したまま、トナー表面を異形化させ、クリーニング性に優れたトナーの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、以下のトナー粒子の製造方法により解決することができることを見出した。
すなわち、本発明は、重合性単量体及び脂肪酸金属塩を含有する重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系媒体中に分散させて、懸濁液を調製する工程、
該懸濁液に、水溶性金属塩を添加する工程、
該水溶性金属塩が添加された懸濁液中の懸濁粒子に含まれる該重合性単量体を重合させ、該重合で生じる重合体を含有する重合体粒子を生成させ、該重合体粒子が分散された分散液を得る工程、
該分散液を、該重合体粒子に含有される重合体のガラス転移点以上の温度に加熱し、かつ該分散液のpHを7.5以上10.0以下の条件下で保持するアルカリ処理工程、
を有するトナーの製造方法であって、
該水溶性金属塩が、2価以上の金属の塩であり、
該水溶性金属塩を添加する前の該懸濁液のpHが4.0以上6.5未満である
ことを特徴とするトナーの製造方法に関する。
また、別の形態としては、結着樹脂、脂肪酸金属塩及び有機溶媒を混合して調製された混合液を、分散安定剤を含有する水系媒体中に分散させて、懸濁液を調製する工程、
該懸濁液に、水溶性金属塩を添加する工程、
該水溶性金属塩が添加された懸濁液中の懸濁粒子に含まれる該有機溶媒を除去して、該結着樹脂を含有する重合体粒子を生成させ、該重合体粒子が分散された分散液を得る工程、
該分散液を、該結着樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱し、かつ該分散液のpHを7.5以上10.0以下の条件下で保持するアルカリ処理工程、
を有するトナーの製造方法であって、
該水溶性金属塩が、2価以上の金属の塩であり、
該水溶性金属塩を添加する前の該懸濁液のpHが4.0以上6.5未満である
ことを特徴とするトナーの製造方法に関する。
さらに別の形態としては、結着樹脂、脂肪酸金属塩及び有機溶媒を混合して調製された混合液を、分散安定剤を含有する水系媒体中に分散させて、懸濁液を調製する工程、
該懸濁液に、水溶性金属塩を添加する工程、
該水溶性金属塩が添加された懸濁液を、該結着樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱し、かつ該懸濁液のpHを7.5以上10.0以下の条件下で保持するアルカリ処理工程を行いつつ、該懸濁液中の懸濁粒子に含まれる該有機溶媒を除去して、該結着樹脂を含有する重合体粒子を生成させ、該重合体粒子が分散された分散液を得る工程、
を有するトナーの製造方法であって、
該水溶性金属塩が、2価以上の金属の塩であり、
該水溶性金属塩を添加する前の該懸濁液のpHが4.0以上6.5未満である
ことを特徴とするトナーの製造方法に関する。
さらに別の形態としては、結着樹脂、脂肪酸金属塩及び有機溶媒を混合して調製された混合液を、分散安定剤を含有する水系媒体中に分散させて、懸濁液を調製する工程、
該懸濁液に、水溶性金属塩を添加する工程、
該水溶性金属塩が添加された懸濁液を、該結着樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱し、かつ該懸濁液のpHを7.5以上10.0以下の条件下で保持するアルカリ処理工程、
該結着樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱し、かつ該懸濁液のpHを7.5以上10.0以下の条件下で保持する工程の後、懸濁液中の懸濁粒子に含まれる該有機溶媒を除去して、該結着樹脂を含有する重合体粒子を生成させ、該重合体粒子が分散された分散液を得る工程、
を有するトナーの製造方法であって、
該水溶性金属塩が、2価以上の金属の塩であり、
該水溶性金属塩を添加する前の該懸濁液のpHが4.0以上6.5未満である
ことを特徴とするトナーの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、トナーの粒度分布を良好に揃えトナーの耐久性を維持したまま、トナー表面を異形化させ、クリーニング性に優れたトナーの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0008】
本発明の第一の形態は、重合性単量体及び脂肪酸金属塩を含有する重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系媒体中に分散させて、懸濁液を調製する工程、
該懸濁液に、水溶性金属塩を添加する工程、
該水溶性金属塩が添加された懸濁液中の懸濁粒子に含まれる該重合性単量体を重合し、該重合で生じる重合体を含有する重合体粒子を生成させ、該重合体粒子が分散された分散液を得る工程、および
該分散液を、該重合体粒子に含有される重合体のガラス転移点以上の温度に加熱し、かつ該分散液のpHを7.5以上10.0以下の条件下で保持する工程、
を有するトナーの製造方法であって、
該水溶性金属塩が、2価以上の金属の塩であり、
該水溶性金属塩を添加する前の該懸濁液のpHが4.0以上6.5未満であることを特徴とするトナーの製造方法である。
【0009】
また、第二の形態としては、結着樹脂、脂肪酸金属塩、有機溶媒とを混合した混合液を、分散安定剤を含有する水系媒体中に分散させて、懸濁液を調製する工程、
該懸濁液に、水溶性金属塩を添加する工程、
該水溶性金属塩が添加された懸濁液中の懸濁粒子に含まれる該有機溶媒を除去して、該結着樹脂を含有する重合体粒子を生成させ、該重合体粒子が分散された分散液を得る工程、および
該分散液を、該結着樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱し、かつ該分散液のpHを7.5以上10.0以下の条件下で保持する工程、
を有するトナーの製造方法であって、
該水溶性金属塩が、2価以上の金属の塩であり、
該水溶性金属塩を添加する前の該懸濁液のpHが4.0以上6.5未満であることを特徴とするトナーの製造方法である。
【0010】
さらに第三の形態としては、結着樹脂、脂肪酸金属塩、有機溶媒とを混合した混合液を、分散安定剤を含有する水系媒体中に分散させて、懸濁液を調製する工程、
該懸濁液に、水溶性金属塩を添加する工程、および
該水溶性金属塩が添加された懸濁液を、該結着樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱し、かつ該懸濁液のpHを7.5以上10.0以下の条件下で保持しつつ、該懸濁液中の懸濁粒子に含まれる該有機溶媒を除去して、該結着樹脂を含有する重合体粒子を生成させ、該重合体粒子が分散された分散液を得る工程、
を有するトナーの製造方法であって、
該水溶性金属塩が、2価以上の金属の塩であり、
該水溶性金属塩を添加する前の該懸濁液のpHが4.0以上6.5未満であることを特徴とするトナーの製造方法である。
【0011】
さらに第四の形態としては、結着樹脂、脂肪酸金属塩、有機溶媒とを混合した混合液を、分散安定剤を含有する水系媒体中に分散させて、懸濁液を調製する工程、
該懸濁液に、水溶性金属塩を添加する工程、
該水溶性金属塩が添加された懸濁液を、該結着樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱し、かつ該懸濁液のpHを7.5以上10.0以下の条件下で保持する工程、および
該結着樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱し、かつ該懸濁液のpHを7.5以上10.0以下の条件下で保持する工程の後、懸濁液中の懸濁粒子に含まれる該有機溶媒を除去して、該結着樹脂を含有する重合体粒子を生成させ、該重合体粒子が分散された分散液を得る工程、
を有するトナーの製造方法であって、
該水溶性金属塩が、2価以上の金属の塩であり、
該水溶性金属塩を添加する前の該懸濁液のpHが4.0以上6.5未満であることを特徴とするトナーの製造方法である。
【0012】
これらの形態によって得られるトナー(トナー粒子)は粒度分布が良好であり、かつ表面異形化によりクリーニング性に優れるため、トナーの現像性に対する高い要求を満たすことができる。
【0013】
本発明より得られるトナー粒子に、このような効果が得られる詳細な理由は明確ではないが、本発明者らは次のように考えている。
【0014】
代表的な形態である、第一の形態を用いて説明するが、第二乃至四の形態においても同様のメカニズムで効果が発現していると考えている。
【0015】
一般に、重合性単量体組成物中に含有される脂肪酸金属塩は極性が高いため、分散安定剤を含有する水系媒体中に分散させ懸濁液とした際、懸濁粒子表面に偏在する傾向にある。この懸濁粒子の表面に偏在した該脂肪酸金属塩の一部は、水系媒体側に配向し脂肪酸イオンと金属イオンへと解離する。該脂肪酸イオンと分散安定剤が相互作用することにより、分散安定剤が懸濁粒子に吸着され、懸濁液が安定化さる。
【0016】
本発明のトナー粒子の製造方法では、トナー粒子の製造工程において、水溶性金属塩を懸濁液中に添加することで、脂肪酸金属塩の解離が抑制される。該水溶性金属塩が添加された懸濁液中の懸濁粒子に含まれる該重合性単量体を重合し、該重合で生じる重合体を含有する重合体粒子を生成させ、該重合体粒子が分散された分散液を得た後、該分散液を、該重合体粒子に含有される重合体のガラス転移点以上の温度に加熱し、かつ該分散液のpHをアルカリ側に変化させる(以下、アルカリ処理と呼ぶ)。このアルカリ処理により、脂肪酸金属塩の解離が一気に促進され、該重合体粒子と分散安定剤との吸着力を急激に向上させることで、分散剤の吸着にムラができ、それによってトナー粒子表面が異形化すると、筆者らは考えている。
【0017】
本発明のトナー粒子の製造方法においては、懸濁液に水溶性金属塩を添加する工程が必須である。該水溶性金属塩が該懸濁液の水系媒体中で電離することで、水系媒体中のイオン濃度が上昇し、上記脂肪酸金属塩の解離平衡を非解離側へと偏らせ、分散安定剤との吸着力を抑制することができる。これにより、後工程でアルカリ処理を行った場合の分散安定剤との吸着力変化が大きくなり、表面を異形化することができる。
【0018】
該水溶性金属塩の投入形態は、水系媒体中で十分に溶解し、イオン化できる形態であれば特に制限はなく、顆粒状、粉末状で直接水系媒体中に投入してもよく、水などの溶媒に溶解した後に、水系媒体中に添加してもよい。
【0019】
本発明のトナー粒子の製造方法においては、該水溶性金属塩を添加する前の懸濁液のpHが4.0以上6.5未満であることが必須である。該懸濁液のpHが4.0未満の場合、該水溶性金属塩を添加した際に、分散安定剤の吸着力が低くなりすぎるため、懸濁粒子の合一が起きやすく粒度分布が広がってしまう。該懸濁液のpHが6.5以上の場合、すでに該脂肪酸金属塩の大半が解離している状態であるため、後工程でアルカリ処理をしても分散安定剤との吸着力変化が起きず、表面が異形化しない。水溶性金属塩の添加タイミングとしては、上記のpH範囲の懸濁液に投入すること以外の制限はなく、後述の造粒工程、重合工程、蒸留工程、脱溶媒工程のいずれのタイミングで加えてもよい。
【0020】
本発明に用いられる該水溶性金属塩は、2価以上の金属の塩であることが必須である。1価の金属の塩を用いた場合には、上記解離平衡の非解離側へと偏りが小さくなり、本発明の表面異形化の効果が得られない。また、2価以上の金属の塩を用いた場合、該金属のイオンが該懸濁粒子表面の極性材料と架橋構造を構成することにより、該懸濁粒子の強度が増し、表面を異形化させることができる。同様の理由から、3価の金属の塩を用いることがより好ましい。
【0021】
本発明における水溶性金属塩の添加量としては、前記脂肪酸金属塩100モル部に対して、150モル部以上850モル部以下であることが好ましい。該水溶性金属塩の添加量を該脂肪酸金属塩100モル部に対して、150モル部以上とすることで解離平衡が十分に非解離側へと偏り、効率的な表面異形化を行うことができる。また、水溶性金属塩の添加量を前記脂肪酸金属塩100モル部に対して、850モル部以下とすることで、水溶性金属塩添加の凝集剤としての作用が抑制でき、製造工程での懸濁液の合一を抑制できる。
【0022】
本発明のトナー粒子の製造方法においては、前述のとおり脂肪酸金属塩の解離状態を制御することで、トナー粒子の表面異形化を実現している。該脂肪酸金属塩は脂肪酸と金属なる難水溶性の脂肪酸金属塩であれば、特段の制限なく、従来公知の脂肪酸金属塩を用いることができる。具体的には、脂肪酸としては、ノナン酸やラウリン酸、ステアリン酸、セロチン酸などの直鎖飽和脂肪酸や、オレイン酸やリノール酸などの直鎖不飽和脂肪酸、15-メチルヘキサデカン酸などの分岐構造をもった脂肪酸、2-ヒドロキシドデカン酸、12-ヒドロキシステアリン酸のように他の官能基を有する脂肪酸など、公知のものを使用できる。
【0023】
該脂肪酸金属塩を構成する金属としては、公知のものを使用できる。具体的にはNa、Al、Ba、Ca、Mg、Zn、Fe、In、Cu、Ti、Co、Zrなどがあげられる。中でも2価以上の多価金属であることが、懸濁粒子表面の架橋といった観点から好ましい。より好ましくは3価以上の多価金属である。
【0024】
また、脂肪酸との錯体安定性の観点からはAl、Fe、Cuが好ましい。
【0025】
該脂肪酸金属塩の添加量は、第一の形態における重合性単量体、もしくは第二乃至第四の形態における結着樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上1.5質量部未満であることが好ましい。脂肪酸金属塩の添加量が0.05質量部以上であることで表面異形化が促進され、1.5質量部未満であることにより、過剰な脂肪酸によるトナー粒子の可塑が抑制され、耐久性が向上する。
【0026】
本発明のトナー粒子の製造方法においては、前述のとおり表面異形化のトリガーとして、該重合体粒子に含有される重合体のガラス転移点以上の温度に加熱し、かつ該分散液のpHを7.5以上10.0以下の条件下で保持する工程(アルカリ処理)が必須である。
【0027】
重合体のガラス転移点以下でアルカリ処理を行った場合は、重合体がガラス状態として存在しているため、分散剤との吸着力という弱い力による表面異形化は起きない。
【0028】
またアルカリ処理時の分散液のpHが7.5未満である場合は、分散剤との吸着力変化が小さく、表面異形化が起こりづらい。一方、アルカリ処理時の分散液のpHが10.0超である場合、トナー粒子中の各種重合体の加水分解が起こり、出来上がったトナー粒子が脆弱なものとなってしまう懸念がある。
【0029】
本発明のトナー粒子の製造方法において、アルカリ処理工程において樹脂粒子を添加してトナー母粒子(重合体粒子)の表面に樹脂粒子を固着させる工程を行うことが好ましい。重合体粒子の表面に樹脂粒子を固着させることで、トナーの現像耐久性を向上させることができる。
【0030】
また、固着させる樹脂粒子が、下記式(1)で示される1価の基aを有する重合体Aを含有することがより好ましい。
【0031】
【化1】
(式(1)中、R1は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1以上18以下のアルキル基、または、炭素数1以上18以下のアルコキシ基を表し、R2は、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1以上18以下のアルキル基、または、炭素数1以上18以下のアルコキシ基を表し、gは1以上3以下の整数を表し、hは0以上3以下の整数を表す。hが2または3である場合、h個のR1は、同一であっても異なっていてもよい。)
【0032】
樹脂粒子が、上記式(1)で示される1価の基aを有する重合体Aを含有することで、トナー粒子の帯電均一性が向上し、転写性が良好となる。
【0033】
<第一の形態の詳細説明>
本発明の製造方法の第一の形態は、以下の製造工程を有する。
・分散安定剤を含有する水系媒体を調製する水系媒体調製工程。
・該水系媒体に、重合性単量体と、脂肪酸金属塩とを含有する重合性単量体組成物を加えて、前記重合性単量体組成物の懸濁粒子を水系媒体中で形成し懸濁液を得る造粒工程。
・前記懸濁粒子に含有される前記重合性単量体を重合し、該重合で生じる重合体を含有する重合体粒子を生成させ、該重合体粒子が分散された分散液を得る懸濁重合工程。
・該懸濁液もしくは分散液に水溶性金属塩を添加する工程。
・該分散液の温度を該重合体粒子に含有される重合体のTg以上で、かつpHを7.5以上10.0以下にするアルカリ処理工程。
【0034】
さらに、本発明の製造方法は、例えば、造粒工程の前に、下記組成物調製工程を有することができる。
・重合性単量体、脂肪酸金属塩を混合して重合性単量体組成物を調製する組成物調製工程。
【0035】
しかしながら、本発明では、この組成物調製工程を別途設けなくても良い。造粒工程の際に、水系媒体中に、重合性単量体組成物を構成する成分(重合性単量体、脂肪酸金属塩等)を一度に添加しても良い(その際、一部の成分を予め別途混合していても良い)。また、例えば、これらの成分のうちの1つまたは複数の成分(その際、一部の成分を予め別途混合していても良い)を、温度条件や撹拌条件等を適宜変えて段階的に懸濁液中に添加しても良い。なお、重合性単量体組成物の一部(例えば、後述する重合開始剤)は、重合性単量体組成物粒子に含有されずに、水系媒体中に溶解していても良い。このため、重合性単量体組成物のうち、重合開始剤等の水系媒体中に溶解可能な成分は、造粒工程後(重合性単量体組成物の粒子が形成された後)かつ重合工程終了前(重合反応が完結してトナー粒子が形成される前)に、懸濁液中(または反応系中)に添加しても良い。
【0036】
即ち、本発明では、結果的に(トナー粒子が形成される前に)、懸濁液中(または反応系中)に、重合性単量体組成物の各成分が添加(含有)されていれば良い。
【0037】
なお、組成物調製工程を別途設ける場合は、造粒工程は、調製した重合性単量体組成物を上記水系媒体中に分散させることにより、この重合性単量体組成物の懸濁粒子を造粒する工程であることができる。
【0038】
また、本発明の製造方法は、懸濁重合工程より得られた重合体粒子を含む分散液に対し、以下の蒸留工程と、洗浄、濾過及び乾燥工程とを行うことができる。さらに、これらの工程より得られたトナー粒子に対して、以下の外添工程を行うこともできる。即ち、本発明のトナー粒子の製造方法は、水系媒体調製工程と、組成物調製工程と、造粒工程と、懸濁重合工程と、蒸留工程と、洗浄、濾過及び乾燥工程と、外添工程とを含むことができる。
・得られた重合体粒子を含む分散液に対して、蒸留操作を行い、トナー粒子等の重合体粒子を含有する分散液を得る蒸留工程。
・得られたトナー粒子等の重合体粒子を含有する分散液に対して、洗浄、濾過及び乾燥を行いトナー粒子を得る、洗浄、濾過及び乾燥工程。
・得られたトナー粒子に外添剤(例えば、無機微粉体)を添加する外添工程。
【0039】
次に、各工程を詳しく説明する。
【0040】
[水系媒体調製工程]
まず、分散安定剤を含有する水系媒体を調製する。
【0041】
(水系媒体)
本発明における水系媒体は、分散安定剤と、水とを含む水系媒体である。また、この水系媒体は、この他に、分散安定剤を生成する際に生じる対イオンや、pH調整用に添加する酸(例えば、塩酸及び硫酸)やアルカリ(例えば、水酸化ナトリウム及び、炭酸ナトリウム)等を含むことができる。なお、分散液は分散安定剤と水とからなることもできる。
【0042】
・水
水系媒体の調製に用いる水(分散媒)は、例えば、イオン交換水を用いることができる。なお、水系媒体は、重合性単量体100質量部に対して、100質量部以上の水を用いて調製することが好ましい。水の使用量が100質量部以上であれば、油水反転を起こすことなく油滴(重合性単量体組成物粒子)を容易に形成できる。
【0043】
・分散安定剤
分散安定剤は、造粒工程において、懸濁液中に存在する重合性単量体組成物の分散安定化剤としての役割を果たす。分散安定剤として使用する無機化合物の種類としては、ヒドロキシアパタイト、第三リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナなどが挙げられる。分散安定剤として使用する有機化合物の種類としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリアクリル酸及びその塩、デンプンなどが挙げられる。また、これら分散安定剤の微細な分散のために、界面活性剤を使用してもよい。分散安定剤の初期の作用を促進するためのものである。界面活性剤の種類としては、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムなどが挙げられる。分散安定剤として、無機化合物を用いる場合、市販のものをそのまま用いてもよいが、より細かい粒子を得るために、水系媒体中にて上記無機化合物を生成させて用いてもよい。例えば、ヒドロキシアパタイトや第三リン酸カルシウムなどのリン酸カルシウム類の場合、高撹拌下において、リン酸塩水溶液とカルシウム塩水溶液を混合するとよい。
【0044】
[造粒工程]
該水系媒体に、重合性単量体、脂肪酸金属塩を含む重合性単量体組成物を分散させて、懸濁液を調製する工程、即ち造粒工程により、分散安定剤と、重合性単量体組成物粒子とを含む懸濁液を得ることができる。なお、上述したように、懸濁液中に添加された重合性単量体組成物全てが、懸濁粒子を構成しなくても良く、添加された重合性単量体組成物の一部(例えば、重合開始剤)が、水系媒体中に含まれていても良い。
【0045】
このため、重合性単量体や重合性単量体組成物を基準とした、分散安定剤や重合性単量体組成物の各成分の相対使用量は、仕込みの重合性単量体量や重合性単量体組成物量に基づくものである。
【0046】
なおまた上述したように、予め、重合性単量体、および脂肪酸金属塩等を混合して重合性単量体組成物を調製して(組成物調製工程)、その調製した重合性単量体組成物を水系媒体に分散させ、懸濁粒子を作製しても良い。
【0047】
懸濁粒子を造粒する際には、TK式ホモミキサー(商品名、特殊機化工業製)等の撹拌装置を用いることができる。
【0048】
(重合性単量体組成物)
重合性単量体組成物は、重合性単量体、および脂肪酸金属塩を含み、必要に応じて、その他に、着色剤、極性樹脂、重合開始剤、架橋剤、離型剤、荷電制御剤、連鎖移動剤、および重合禁止剤等の添加剤を含むことができる。重合性単量体組成物は、重合性単量体、および脂肪酸金属塩と、これらの添加剤とを混合することにより得ることができる。
【0049】
・重合性単量体
重合性単量体は、作製するトナー粒子に応じて適宜設定することができるが、例えば、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体を用いることができる。
【0050】
ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体または多官能性重合性単量体を使用することができる。
【0051】
単官能性重合性単量体としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
【0052】
スチレン;α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレン等のスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、iso-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2-ベンゾイルオキシエチルアクリレート等のアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、iso-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、iso-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、n-ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレート等のメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニル等のビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトン等のビニルケトン。
【0053】
多官能性重合性単量体としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
【0054】
ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’-ビス(4-(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’-ビス(4-(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル等。
【0055】
なお、重合性単量体は、1種類を単独で用いても良いし、複数種類を併用しても良い。
【0056】
重合性単量体の使用量は、定着の観点から、全重合性単量体組成物のうち50質量%以上を占めることが好ましい。
【0057】
・着色剤
着色剤は、色相角、彩度、明度、耐侯性、OHT透明性、トナー中への分散性等の観点を考慮して、トナー分野で公知の着色剤から適宜選択して用いることができる。具体的には、例えば、後述するブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの顔料、ならびに、必要に応じて染料等の着色剤を用いることができる。
【0058】
また、着色剤は、1種を単独で用いても良いし、また、複数種を混合して用いても良い。さらに、着色剤は、固溶体の状態で用いることもできる。
【0059】
着色剤の添加量は、重合性単量体100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。着色剤を1質量部以上添加することで着色力を容易に付与することができ、20質量部以下添加することで粒度分布をよりシャープにすることができる。なお、トナー粒子中に顔料等の着色剤を分散させるために、着色剤を溶剤に分散させた状態で用いることができ、重合性単量体(例えばスチレン)をこの溶剤として用いることもできる。
【0060】
i)ブラック着色剤
ブラック着色剤としては、トナーの分野で、公知のブラック着色剤を用いることができる。ブラック着色剤としては、具体的には、カーボンブラックが挙げられ、さらに、以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を混合させて、ブラックに調節したものも挙げることができる。
【0061】
カーボンブラックとしては、特に制限はないが、例えばサーマル法、アセチレン法、チャンネル法、ファーネス法、ランプブラック法等の製法により得られたカーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックは1種類を単独で用いても良く、また2種類以上を混合して用いても良い。カーボンブラックは粗製顔料であっても良く、顔料分散剤の効果を著しく阻害するものでなければ調製された顔料組成物であっても良い。
【0062】
カーボンブラックの一次粒子の平均粒径は、特に制限はないが、14nm以上80nm以下であることが好ましく、より好ましくは25nm以上50nm以下である。平均粒径が14nm以上の場合には、トナーは赤味を呈さず、フルカラー画像形成用のブラックとして好ましい。カーボンブラックの平均粒径が80nm以下の場合には、良好に分散し易く、かつ、着色力が低くなり過ぎず適度な着色力を付与し易く好ましい。
【0063】
なお、カーボンブラックの平均粒径の測定には、走査型電子顕微鏡を用いて撮影した拡大写真を用いる。拡大写真上で、一次粒子として観察されるカーボンブラック粒子について、最も長い軸(長軸)と最も短い軸(短軸)とを測定し、長軸と短軸の平均値を算出し、これを測定した粒子の粒径とする。粒径の測定を百個のカーボンブラック粒子について行い、それらを平均したものを平均粒径とする。尚、走査型電子顕微鏡の倍率は、カーボンブラックの一次粒子を確認できる程度の倍率とすればよい。
【0064】
ii)イエロー着色剤
イエロー着色剤としては、トナーの分野で、公知のイエロー着色剤を用いることができる。
【0065】
顔料系のイエロー着色剤としては、例えば、縮合多環系顔料、イソインドリノン化合物,アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物を用いることができる。具体的には、C.I.Pigment Yellow3、7、10、12、13、14、15、17、23、24、60、62、74、75、83、93、94、95、99、100、101、104、108、109、110、111、117、123、128、129、138、139、147、148、150、155、166、168、169、177、179、180、181、183、185、191:1、191、192、193、199が挙げられる。
【0066】
染料系のイエロー着色剤としては、例えば、C.I.solvent Yellow33、56、79、82、93、112、162、163、C.I.disperse Yellow42、64、201、211が挙げられる。
【0067】
iii)マゼンタ着色剤
マゼンタ着色剤としては、トナーの分野で、公知のマゼンタ着色剤を用いることができる。
【0068】
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合多環系顔料、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物を用いることができる。具体的には、C.I.Pigment Red 2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.Pigment Violet19が挙げられる。
【0069】
iv)シアン着色剤
シアン着色剤としては、トナーの分野で、公知のシアン着色剤を用いることができる。シアン着色剤としては、例えば、フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物,塩基染料レーキ化合物を用いることができる。具体的には、C.I.Pigment Blue1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が挙げられる。
【0070】
・極性樹脂
極性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、スチレンアクリル樹脂などを用いることができる。極性樹脂は、1種を単独で用いても良いし、複数種を併用しても良い。
【0071】
また、極性樹脂として用いるポリエステル樹脂は、非晶性であることが好ましい。非晶性であれば、耐熱保存性を付与することができる。なお、非晶性であるか否かはDSC測定装置で融点をもつか否かにより特定することができる。
【0072】
ポリエステル樹脂としては、多価アルコールと多価カルボン酸とを重縮合することにより得られたポリエステル樹脂であれば特に限定されない。
【0073】
多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ブテンジオール、オクテンジオール、シクロヘキセンジメタノール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0074】
多価カルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸等のベンゼンジカルボン酸またはその無水物:コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸または、その無水物が挙げられる。
【0075】
・重合開始剤
重合性単量体の重合の際に、油溶性開始剤及び水溶性開始剤のいずれか一方または両方の重合開始剤を用いることができる。
【0076】
油溶性開始剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル等のニトリル系開始剤;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、デカノニルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等のパーオキサイド系開始剤。
【0077】
水溶性開始剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチロアミジン)塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミノジノプロパン)塩酸塩、アゾビス(イソブチルアミジン)塩酸塩、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルスルホン酸ナトリウム、硫酸第一鉄又は過酸化水素。
【0078】
上記重合開始剤の使用量(濃度)は、重合性単量体100質量部に対して、重合効率と安全性の観点から、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上15質量部以下である。上記重合性開始剤は、10時間半減温度を参考に、1種類を単独で、または、2種類以上を混合して使用することができる。
【0079】
・架橋剤
更に、本発明においては、トナー粒子の耐ストレス性を高めると共に、トナー粒子の構成分子の分子量を制御するために、重合性単量体の重合時に架橋剤を用いることもできる。
【0080】
架橋剤としては、2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物を用いることができる。具体的には、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンのような芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレートのような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物が挙げられる。これらの架橋剤は、1種を単独で用いても良いし、2種以上の混合物として用いても良い。
【0081】
これらの架橋剤は、トナーの定着性、耐オフセット性の観点から、上記重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上10質量部以下の範囲、より好ましくは0.10質量部以上5質量部以下の範囲で用いることが良い。
【0082】
・離型剤
さらに本発明においては離型剤としてワックスを含有してもよい。ワックスの種類としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス及びその誘導体;モンタンワックス及びその誘導体;フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス及びその誘導体;高級脂肪族アルコール;ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸;酸アミドワックス;エステルワックス;硬化ヒマシ油及びその誘導体;植物系ワックス;動物性ワックス等が挙げられる。この中で特に、離型性に優れるという観点からパラフィンワックス、エステルワックス及び炭化水素ワックスが好ましい。
【0083】
離型剤は、離型性能と造粒安定性の観点から、総量で、重合性単量体100質量部に対して、2.5質量部以上25.0質量部以下用いられることが好ましい。離型剤が2.5質量部以上であることによって定着時の離型が容易となる、25.0質量部以下であることによって粒度分布が乱されることなく均一な表層を形成し易い。
【0084】
・荷電制御剤
トナー粒子の帯電性を環境によらず安定に保つために、本発明では、重合性単量体組成物に荷電制御剤を含んでも良い。
【0085】
帯電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる帯電制御剤が好ましい。さらに、トナー粒子を直接重合法にて製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない帯電制御剤が特に好ましい。具体的な化合物としては、負帯電制御剤としては、例えば、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸等の芳香族カルボン酸の金属化合物、アゾ染料あるいはアゾ顔料の金属塩または金属錯体、ホウ素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。正帯電制御剤としては、例えば、四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、ニグロシン系化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。
【0086】
荷電制御剤は、1種類を単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0087】
樹脂系帯電制御剤以外の荷電制御剤としては、含金属サリチル酸系化合物が良く、特にその金属がアルミニウムもしくはジルコニウムのものが良い。特に好ましい制御剤は、サリチル酸アルミニウム化合物である。
【0088】
樹脂系帯電制御剤としては、スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基、サリチル酸部位、安息香酸部位を有する重合体又は共重合体を用いることが好ましい。
【0089】
荷電制御剤の好ましい配合量は、重合性単量体100.00質量部に対して0.01質量部以上20.00質量部以下、より好ましくは0.05質量部以上10.00質量部以下である。
【0090】
・連鎖移動剤、重合禁止剤
重合性単量体の重合度を制御する為に、連鎖移動剤、及び、重合禁止剤等を更に添加し用いることも可能である。
【0091】
連鎖移動剤としては、(例えば、α-メチルスチレンダイマー、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、四塩化炭素、四臭化炭素などを用いることができる。
【0092】
また、重合禁止剤としては、例えば、p-ペンゾキノン、クロルアニリル、アンスラキノン、フェナンスキノン、ジクロロベンゾキノン等のキノン化合物、フェノール、第3級ブチルカテコール、ハイドロキノン、カテコール、ハイドロキシモノメチルエーテル等のハイドロキシ有機化合物、ジニトロベンゼン、ジニトロトルエン、ジニトロフェノール等のニトロ化合物、ニトロソベンゼン、ニトロソナフトール等のニトロソ化合物、メチルアニリン、p-フェニレンジアミン、N,N’-テトラエチル-p-フェニレンジアミン、ジフェニルアミン等のアミノ化合物、テトラアルキルウラムジスルフィド、ジチオベンゾイルジスルフィド等の有機イオウ化合物などを用いることができる。
【0093】
本発明の水溶性金属塩は、この造粒工程で加えてもよい。
【0094】
〔懸濁重合工程〕
分散安定剤と、重合性単量体組成物粒子とを含む懸濁液中にて、重合性単量体組成物粒子中の重合性単量体を重合(懸濁重合)させて、重合体粒子が分散した分散液を得る。
【0095】
重合工程の途中で重合体粒子の安定性を向上させるため、分散安定剤を追加してもよい。また、水溶性金属塩は、この重合工程で加えてもよい。
【0096】
〔蒸留工程〕
未反応の重合性単量体や副生成物等の揮発性不純物を除去するために、重合終了後に、重合工程より得られる重合体粒子を含む分散液に対して、蒸留操作を行い、一部分散液を留去してもよい。蒸留工程は、常圧もしくは減圧下で行うことができる。
【0097】
本発明の水溶性金属塩は、この蒸留工程で加えてもよい。
【0098】
〔アルカリ処理工程〕
該水溶性金属塩の添加後、重合体粒子の表面異形化を目的として、該分散液の温度を該重合体粒子に含まれる重合体のTg以上かつ、pHを7.5以上10.0以下とするアルカリ処理工程を行う。このアルカリ処理工程は重合後半で行ってもよいし、蒸留時や蒸留終了後に行ってもよい。
【0099】
また、アルカリ処理工程において、樹脂粒子を添加してトナー母粒子の表面に樹脂粒子を固着させることが耐久性向上の観点から望ましい。転写性の観点から、固着させる樹脂粒子が、下記式(1)で示される1価の基aを有する重合体Aを含有することがより好ましい。
【0100】
【化2】
(式(1)中、R1は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1以上18以下のアルキル基、または、炭素数1以上18以下のアルコキシ基を表し、R2は、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1以上18以下のアルキル基、または、炭素数1以上18以下のアルコキシ基を表し、gは1以上3以下の整数を表し、hは0以上3以下の整数を表す。hが2または3である場合、h個のR1は、同一であっても異なっていてもよい。)
【0101】
〔洗浄、濾過及び乾燥工程〕
重合体粒子表面に付着した分散安定剤を除去する目的で、蒸留工程等から得られたトナー粒子等の重合体粒子を含む分散液を、酸またはアルカリで処理をすることもできる。その際、一般的な固液分離法によりトナー粒子等の重合体粒子は液相へと分離されるが、酸またはアルカリおよびそれに溶解した分散安定化剤成分を完全に取り除くため、再度水を添加してトナー粒子等の重合体粒子を洗浄する。この洗浄工程を何度か繰り返し、十分な洗浄が行われた後に、再び固液分離してトナー粒子を得る。得られたトナー粒子は必要であれば公知の乾燥手段により乾燥することができる。
【0102】
〔外添工程〕
本発明の製造方法では、トナーへの各種特性付与を目的として、上述した工程より得られるトナー粒子の表面に、外添剤を付着させることができる。
【0103】
外添剤はトナー粒子に添加した時の耐久性の観点から、外添剤を付与する前のトナー粒子の平均粒径の1/10以下の粒径であることが好ましい。外添剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化錫、酸化亜鉛等の金属酸化物;窒化ケイ素等の窒化物;炭化物炭化ケイ素等の炭化物;硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機金属塩;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩;カーボンブラック、シリカ。
【0104】
これら外添剤は付着させるトナー粒子100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下用いることが好ましく、0.05質量部以上5質量部以下用いることがより好ましい。外添剤は1種類を単独で用いても良いし、また複数種類を併用しても良い。なお、これらの外添剤は、帯電安定性の観点から、表面を疎水化処理したものを用いることが好ましい。疎水化処理方法としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヘキサメチレンジシラザン等のシランカップリング剤を挙げることができる。
【0105】
・トナー粒子
本発明より得られるトナー粒子(トナー)は、公知の一成分現像方式、二成分現像方式を用いた画像形成方法に適用可能である。
【0106】
本発明より得られるトナー粒子(トナー)は、いかなるシステムにも用いることができる。例えば、高速システム用トナー、オイルレス定着用トナー、クリーナーレスシステム用トナー、長期使用によって劣化した現像器内のキャリアを順次回収し、フレッシュなキャリアを補給していく現像方式用トナー等、公知の一成分現像方式、二成分現像方式を用いた画像形成方法に適用可能である。
【0107】
<第二から四の形態の詳細説明>
本発明の製造方法の第二乃至第四の形態は、以下の製造工程を有する。
・結着樹脂、脂肪酸金属塩、有機溶媒を混合して混合液を調製する混合液調製工程。
・分散安定剤を含有する水系媒体を調製する水系媒体調製工程。
・該水系媒体に、該混合液を加えて、該水系媒体中で懸濁粒子を形成し懸濁液を得る造粒工程。
・該懸濁液に水溶性金属塩を添加する工程。
・該懸濁液中の懸濁粒子に含まれる該有機溶媒を除去して、該結着樹脂を含有する重合体粒子を生成させ、該重合体粒子が分散された分散液を得る工程(脱溶媒工程)。
・該分散液の温度を該結着樹脂のTg以上で、かつpHを7.5以上10.0以下にするアルカリ処理工程。
【0108】
また、本形態の製造方法は、上記脱溶媒工程より得られた重合体粒子を含む分散液に対し、以下の洗浄、濾過及び乾燥工程とを行うことができる。さらに、これらの工程より得られたトナー粒子に対して、以下の外添工程を行うこともできる。即ち、本形態のトナー粒子の製造方法は、水系媒体調製工程と、組成物調製工程と、造粒工程と、脱溶媒工程と、洗浄、濾過及び乾燥工程と、外添工程とを含むことができる。
・得られた重合体粒子を含む分散液に対して、洗浄、濾過及び乾燥を行う、洗浄、濾過及び乾燥工程。
・得られたトナー粒子に外添剤(例えば、無機微粉体)を添加する外添工程。
【0109】
なお、脱溶媒工程および、アルカリ処理工程を行う順番に特に制限はない。
【0110】
本発明第二の形態のように脱溶媒工程を行った後アルカリ処理工程を行ってもよい。
【0111】
本発明第三の形態のようにアルカリ処理工程を行いつつ、同時に脱溶媒工程を行ってもよい。
【0112】
本発明第四の形態のようにアルカリ処理工程を行った後、脱溶媒工程を行ってもよい。
【0113】
次に、各工程を詳しく説明する。
【0114】
[混合液調製工程]
まず、結着樹脂、脂肪酸金属塩、有機溶媒を含有する混合液を調製する。
【0115】
(混合液)
本形態における混合液は、結着樹脂、脂肪酸金属塩、有機溶媒とを含む混合液であることができる。また必要に応じて、その他に、着色剤、極性樹脂、離型剤、および荷電制御剤等の添加剤を含むことができる。
【0116】
・結着樹脂
本形態における結着樹脂は、有機溶媒に溶解する樹脂であれば、公知の樹脂を特に制限なく使用することができる。具体的にはビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等が好ましい。
【0117】
・有機溶媒
本形態における有機溶媒は、水と混和しにくく、かつ該結着樹脂、脂肪酸金属塩を溶解することができる有機溶媒であれば特に制限なく使用することができる。
【0118】
具体的にはキシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンの如き炭化水素系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロルエタンの如きハロゲン化炭化水素系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルの如きエステル系溶剤、ジエチルエーテルの如きエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤が挙げられる。
【0119】
・着色剤
着色剤は、第一の形態で例示した着色剤を、同様の手法で用いることができる。
【0120】
・極性樹脂
極性樹脂は、第一の形態で例示した極性樹脂を、同様の手法で用いることができる。
【0121】
・離型剤
離型剤は、第一の形態で例示した離型剤を、同様の手法で用いることができる。
【0122】
・荷電制御剤
荷電制御剤は、第一の形態で例示した荷電制御剤を、同様の手法で用いることができる。
【0123】
本形態においては、例えば、これらの成分のうちの1つまたは複数の成分(その際、一部の成分を予め別途混合していても良い)を、温度条件や撹拌条件等を適宜変えて段階的に懸濁液中に添加しても良い。即ち、本発明では、結果的に(トナー粒子が形成される前に)、懸濁液中(または反応系中)に、トナー粒子組成物の各成分が添加(含有)されていれば良い。
【0124】
[水系媒体調製工程]
まず、分散安定剤を含有する水系媒体を調製する。
【0125】
(水系媒体)
本発明における水系媒体は、分散安定剤と、水とを含む水系媒体である。また、この水系媒体は、この他に、分散安定剤を生成する際に生じる対イオンや、pH調整用に添加する酸(例えば、塩酸及び硫酸)やアルカリ(例えば、水酸化ナトリウム及び、炭酸ナトリウム)等を含むことができる。なお、分散液は分散安定剤と水とからなることもできる。
【0126】
・水
水系媒体の調製に用いる水(分散媒)は、例えば、イオン交換水を用いることができる。なお、分散液は、重合性単量体100質量部に対して、100質量部以上の水を用いて調製することが好ましい。水の使用量が100質量部以上であれば、油水反転を起こすことなく油滴(重合体粒子)を容易に形成できる。
【0127】
・分散安定剤
分散安定剤は、造粒工程において、懸濁液中に存在する懸濁粒子の分散安定化剤としての役割を果たす。分散安定剤として使用する無機化合物の種類としては、ヒドロキシアパタイト、第三リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナなどが挙げられる。分散安定剤として使用する有機化合物の種類としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリアクリル酸及びその塩、デンプンなどが挙げられる。また、これら分散安定剤の微細な分散のために、界面活性剤を使用してもよい。分散安定剤の初期の作用を促進するためのものである。界面活性剤の種類としては、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムなどが挙げられる。分散安定剤として、無機化合物を用いる場合、市販のものをそのまま用いてもよいが、より細かい粒子を得るために、水系媒体中にて上記無機化合物を生成させて用いてもよい。例えば、ヒドロキシアパタイトや第三リン酸カルシウムなどのリン酸カルシウム類の場合、高撹拌下において、リン酸塩水溶液とカルシウム塩水溶液を混合するとよい。
【0128】
〔造粒工程〕
該水系媒体に、結着樹脂、脂肪酸金属塩、有機溶媒を含む混合液を分散させて、懸濁液を調製する。即ち、造粒工程により、分散安定剤と、該混合液からなる懸濁粒子とを含む懸濁液を得ることができる。
【0129】
該懸濁粒子を造粒する際には、TK式ホモミキサー(商品名、特殊機化工業製)等の撹拌装置を用いることができる。
【0130】
本発明の水溶性金属塩は、この造粒工程で加えてもよい。
【0131】
〔脱溶媒工程〕
該懸濁液中の懸濁粒子に含まれる該有機溶媒を除去することで、該結着樹脂を含有する重合体粒子を生成させ、該重合体粒子が分散された分散液を得ることができる。
【0132】
脱溶媒の方法は、加熱による脱溶媒、減圧による脱溶媒、及びそれらの併用等、公知の脱溶媒方法を用いることができる。
【0133】
本発明の水溶性金属塩は、この脱溶媒工程で加えてもよい。
【0134】
〔アルカリ処理工程〕
該水溶性金属塩の添加後トナー粒子の表面異形化を目的として、該重合体粒子が分散された分散液の温度を該結着樹脂のTg以上かつ、pHを7.5以上10.0未満にするアルカリ処理工程を行う。
【0135】
また、アルカリ処理工程において、樹脂粒子を添加してトナー母粒子の表面に樹脂粒子を固着させることが耐久性向上の観点から望ましい。転写性の観点から、固着させる樹脂粒子が、上述の式(1)で示される1価の基aを有する重合体Aを含有することがより好ましい。
【0136】
〔洗浄、濾過及び乾燥工程〕
重合体粒子表面に付着した分散安定剤を除去する目的で、重合体粒子を含む分散液を、酸またはアルカリで処理をすることもできる。その際、一般的な固液分離法により重合体粒子は液相へと分離されるが、酸またはアルカリおよびそれに溶解した分散安定化剤成分を完全に取り除くため、再度水を添加して重合体粒子を洗浄する。この洗浄工程を何度か繰り返し、十分な洗浄が行われた後に、再び固液分離してトナー粒子を得る。得られたトナー粒子は必要であれば公知の乾燥手段により乾燥することができる。
【0137】
〔外添工程〕
第一の形態で例示した外添剤を同様に用いることができる。
【0138】
・トナー粒子
第一の形態で説明したのと同様に、各種現像方式に適用可能である。
【実施例
【0139】
以下の各例において用いた測定方法について、説明する。
【0140】
・重合体および結着樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定
重合体および結着樹脂のTgは、示差走査熱量計(DSC測定装置)を用いて測定した。
【0141】
示差走査熱量計は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(商品名、TA Instruments社製)を用い、ASTM D3418-82に準じて以下のように測定した。測定サンプル(重合体および結着樹脂)は、3mgを精密に秤量した。それをアルミニウム製のパン中に入れ、対照用に空のアルミパンを用いた。20℃で5分間平衡を保った後、測定範囲20℃から180℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行った。なお、ガラス転移温度は中点法で求めた。
【0142】
・トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行ない、算出した。
【0143】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0144】
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように専用ソフトの設定を行なった。
【0145】
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
【0146】
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0147】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、芯粒子またはトナー粒子約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0148】
・樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の体積基準のD50の測定
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、ゼータサイザーNano-ZS(MALVERN社製)を用い、動的光散乱法(DLS:Dynamic Light Scattering)で粒子径を測定することにより算出する。
【0149】
まず、装置の電源を入れ、レーザーを安定するまで30分待つ。その後、Zetasizerソフトウェアを起動する。
【0150】
MeasureメニューからManualを選択し、測定の詳細を以下に示すように入力する。
測定モード:粒子径
Material:Polystyrene latex(RI:1.59、Absorption:0.01)
Dispersant:Water(Temperature:25℃、Viscosity:0.8872cP、RI:1.330)
Temperature:25.0℃
Cell:Clear disposable zeta cell
Measurement duration:Automatic
【0151】
試料は0.50質量%となるように、水で希釈して調製し、ディスポーザブルキャピラリーセル(DTS1060)に充填し、セルを装置のセルホルダに装入する。
【0152】
以上の準備が終わったら測定表示画面のStartボタンを押し、測定する。
【0153】
DLS測定から得られる光強度分布をミー理論により変換した体積基準の粒度分布のデータを元に、D50を算出する。
【0154】
次に、各例に用いた各樹脂の製造方法について説明する。
【0155】
<結着樹脂の製造>
(ポリエステル樹脂1の製造例)
撹拌機、コンデンサー、温度計、冷却管、窒素導入管および撹拌機のついた反応容器中に、下記を投入した。
・1,2-プロパンジオール:847質量部
・テレフタル酸ジメチルエステル:861質量部
・1,6-ヘキサン二酸:212質量部
・テトラブトキシチタネート(縮合触媒):3質量部
170℃で窒素気流下、生成するメタノールを留去しながら7時間反応させた。ついで240℃まで徐々に昇温させながら、窒素気流下に、生成するプロピレングリコール、水を留去しながら5時間反応させ、さらに20mmHgの減圧下にて反応させた後、取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕、粒子化し、ポリエステル樹脂1を得た。該ポリエステル樹脂1のTgは44℃であった。
【0156】
<極性樹脂の製造>
(ポリエステル樹脂2の製造例)
テレフタル酸 43.00モル部
トリメリット酸 1.30モル部
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2mol付加物 32.00モル部
エチレングリコール 23.70モル部
の仕込み比率で混合した混合物100質量部と触媒として、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫0.55質量部を窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱電対を装備した6リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、200℃で6時間かけて反応させた。更に210℃にて無水トリメリット酸を添加して、40kPaの減圧下にて反応を行い、重量平均分子量(Mw)が12000になるまで反応を続けた。得られた樹脂をポリエステル樹脂2とする。
【0157】
次に、各例に用いた各樹脂粒子分散液の製造方法について説明する。
【0158】
<樹脂粒子分散液の製造>
・重合体A-1の製造例
2,4-ジヒドロキシ安息香酸18gをメタノール150mLに溶解させ、炭酸カリウム36.9gを加えて65℃に加熱した。この反応液に4-(クロロメチル)スチレン18.7gとメタノール100mLの混合液を滴下し、65℃にて3時間反応させた。反応液を冷却後、濾過し、濾液を濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をpH=2の水1.5Lに分散させ、酢酸エチルを加えて抽出した。その後、水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。析出物をヘキサン洗浄後、トルエンと酢酸エチルにて再結晶することで精製し、下記式(2)に示す重合性単量体を20.1g得た。
【0159】
【化3】
【0160】
式(2)に示す重合性単量体 9.9g、スチレン 60.1gをDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)42.0mlに溶解させ、窒素バブリングをしながら1時間撹拌した後、110℃まで加熱した。この反応液に、開始剤としてtert-ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日本油脂株式会社製、商品名パーブチルI)2.1gとトルエン42mlの混合液を滴下した。更に110℃にて4時間反応した。その後、反応液を冷却しメタノール1Lに滴下し、析出物を得た。得られた析出物をTHF120mlに溶解後、メタノール1.80Lに滴下し、白色析出物を析出させ、濾過し、減圧下90℃にて乾燥させることで、重合体A-1を63.2g得た。重合体A-1中の、式(1)で示される1価の基aに由来する成分の含有量(樹脂1g当たりのμmol数)は526μmol/gであった。
【0161】
・樹脂粒子分散液1の製造例
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、メチルエチルケトン200.0質量部を仕込み、重合体A-1を100.0質量部加えて溶解した。次いで、1.0モル/L水酸化カリウム水溶液をゆっくり加え、10分間撹拌を行った後、イオン交換水500.0質量部をゆっくり滴下し、乳化させた。得られた乳化物を減圧蒸留して脱溶剤し、イオン交換水を加えて樹脂濃度が20%になるように調製することで、樹脂粒子分散液1を得た。
【0162】
得られた樹脂粒子分散液1中のA-1粒子の平均粒径は37nmであった。
【0163】
(ポリエステル樹脂3の製造)
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に下記の単量体を仕込み、エステル化触媒としてテトラブトキシチタネート0.03質量部を添加し、窒素雰囲気下、210℃に昇温して、撹拌しながら5時間反応を行った。
ビスフェノールA-プロピレンオキサイド2モル付加物:49.2質量部
エチレングリコール:8.9質量部
テレフタル酸:21.7質量部
イソフタル酸:14.4質量部
5-ナトリウムスルホイソフタル酸:5.8質量部
【0164】
次いで、反応容器内を5乃至20mmHgに減圧しながら、さらに5時間反応を行い、ポリエステル樹脂3を得た。ポリエステル樹脂3のTgは66℃であった。
【0165】
(樹脂粒子分散液2の作製)
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、得られたポリエステル樹脂3を100.0質量部とメチルエチルケトン45.0質量部、テトラヒドロフラン45.0質量部を仕込み、80℃に加熱して溶解した。
【0166】
次いで、撹拌下、80℃のイオン交換水300.0質量部を添加して水分散させた後、得られた水分散体を蒸留装置に移し、留分温度が100℃に達するまで蒸留を行った。
【0167】
冷却後、得られた水分散体にイオン交換水を加え、分散液中の樹脂濃度が20%になるように調整した。これを、樹脂微粒子分散液2とした。得られた樹脂粒子分散液2中のポリエステル樹脂3粒子の平均粒径は48nmであった。
【0168】
次に各例に使用した脂肪酸金属塩を表1に示す。
【0169】
【表1】
【0170】
次に各例に使用した水溶性金属塩を表2に示す。
【0171】
【表2】
【0172】
〔実施例1〕
<トナー1の製造>
(分散安定剤を含む水系媒体の調製)
造粒タンクに、イオン交換水100.00質量部、リン酸ナトリウム2.00質量部、及び10質量%塩酸0.90質量部を添加し、リン酸ナトリウム水溶液を作製し、50℃に加温した。この造粒タンクに、イオン交換水8.20質量部に塩化カルシウム6水和物1.2質量部を溶解し作製した塩化カルシウム水溶液を添加し、TK式ホモミキサー(商品名、特殊機化工業製)を用いて周速25m/sにて30分撹拌した。これにより、分散安定剤として、リン酸カルシウム(の微粒子)を含有する水系媒体を得た(水系媒体調製工程)。
【0173】
(顔料分散組成物の調製)
重合性単量体:スチレン 39.00質量部
着色剤:C.I.ピグメントブルー15:3 6.50質量部
脂肪酸金属塩1 0.13質量部
上記材料を、アトライター(日本コークス社製)に導入し、半径1.25mmのジルコニアビーズを用いて200rpmにて25℃で180分間撹拌を行い、顔料分散組成物を調製した。
【0174】
(着色剤含有組成物の調製)
下記材料を同一容器内に投入し、TK式ホモミキサー(商品名、特殊機化工業製)を用いて、周速20m/sにて混合および分散した。
・上記顔料分散組成物 45.63質量部
・重合性単量体:スチレン 33.00質量部
・重合性単量体:n-ブチルアクリレート 28.00質量部
・極性樹脂:ポリエステル樹脂2 2.00質量部
更に、60℃に加温した後、離型剤:ベヘン酸ベヘニル 10.00質量部を投入し、30分間分散および混合を行い、着色剤含有組成物を調製した。
【0175】
(重合性単量体組成物の懸濁粒子の作製)
リン酸カルシウム微粒子を含有する分散液中に、上記着色剤含有組成物を投入し、温度60℃、窒素雰囲気下において、TK式ホモミキサー(商品名、特殊機化工業製)にて周速30m/sで撹拌した。これに、重合開始剤t-ヘキシルパーオキシピバレート(日本油脂社製、商品名「パーヘキシルPV」、分子量:202、10時間半減期温度:53.2℃)2.50質量部を添加し、重合性単量体組成物粒子が分散した懸濁液を調製した(造粒工程)。
【0176】
(トナー粒子1の作製)
上記重合性単量体組成物粒子の懸濁液を別のタンクに移し、パドル撹拌翼で撹拌しつつ温度70℃に昇温し、4時間反応させ、塩化アルミニウムを0.10質量部投入した(水溶性金属塩添加工程)。この際、塩化アルミニウム添加前の懸濁液のpHは5.3であった。さらに、1時間、同条件で反応させた後、更に80℃に昇温し、6時間反応させた(昇温工程)。これにより、トナー粒子1を含む重合体粒子が分散した分散液(重合スラリー)を得た(懸濁重合工程)。この時、該重合スラリーのpHは5.0だった。
【0177】
重合工程終了後、重合スラリーに120℃の水蒸気(スチーム)を5kg/hrの流量で供給を開始した。水蒸気供給開始後、98℃に達した時点から蒸留開始とし、8時間蒸留を行った(蒸留工程)。
【0178】
蒸留工程終了後、該重合スラリーのpHが8.5になるよう7.0%の炭酸ナトリウム水溶液を加え、80℃で1時間保持した(アルカリ処理工程)。
【0179】
該アルカリ処理工程開始と同時に、重合スラリー中の固形分100質量部に対して、1.25質量部の樹脂粒子分散液1を添加し、重合体粒子の表面へ樹脂粒子A-1を固着させた。
【0180】
冷却後、塩酸を加えpHを1.4にし、2時間撹拌し、トナー粒子表面の難水溶性無機微粒子を溶解した。トナー粒子の分散液を濾別し、水洗後、温度40℃にて48時間乾燥しトナー粒子1を得た(洗浄/濾過/乾燥工程)。
【0181】
(無機微粉体を表面に有するトナー粒子1の作製)
上記トナー粒子1、100.0質量部に対して、無機微粉体1.50質量部を、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機株式会社製)を用いて、3000rpm(min-1)で15分間混合して無機微粉体を表面に有するトナー粒子1を得た(外添工程)。
【0182】
なお、無機微粉体を付与する前のトナー粒子1と区別するため、上記無機微粉体を表面に有するトナー粒子1を、以降トナー1と称する。上記無機微粉体としては、流動性向上剤であるジメチルシリコーンオイル(20質量%)で処理され、無機微粉体を付与する前のトナー粒子1と同極性(負極性)に摩擦帯電する疎水性シリカ微粒子(1次粒子の個数平均粒径:10nm、BET比表面積:170m2/g)を用いた。
【0183】
〔実施例5〕
<トナー5の調製>
(重合性単量体組成物の懸濁粒子の調製)
実施例1と同様にして、重合性単量体組成物の懸濁粒子を調製した。
【0184】
(トナー粒子5の作製)
上記重合性単量体組成物粒子の懸濁液を別のタンクに移し、パドル撹拌翼で撹拌しつつ温度70℃に昇温し、1時間反応させ、塩化アルミニウムを0.10質量部投入した(水溶性金属塩添加工程)。この際、塩化アルミニウム添加前の懸濁液のpHは5.3であった。さらに、4時間、同条件で反応させた後、更に80℃に昇温し、6時間反応させた(昇温工程)。これにより、トナー粒子5を含む重合体粒子が分散した分散液(重合スラリー)を得た(懸濁重合工程)。
【0185】
(トナー5の調製)
重合工程終了後、実施例1と同様の蒸留工程、アルカリ処理工程、洗浄/濾過/乾燥工程、外添工程を行い、トナー5を得た。
【0186】
〔実施例6〕
<トナー6の調製>
(分散安定剤を含む水系媒体の調製)
造粒タンクに、イオン交換水100.00質量部、リン酸ナトリウム2.00質量部、及び10質量%塩酸0.90質量部を添加し、リン酸ナトリウム水溶液を作製し、50℃に加温した。この造粒タンクに、イオン交換水8.20質量部に塩化カルシウム6水和物1.20質量部を溶解し作製した塩化カルシウム水溶液を添加し、TK式ホモミキサー(商品名、特殊機化工業製)を用いて周速25m/sにて30分撹拌した。これにより、難水溶性無機微粒子として、リン酸カルシウム(の微粒子)を含有する水系媒体を得た(水系媒体調製工程)。該水系媒体のpHは5.5であった。続いて、該水系媒体に塩化アルミニウムを0.10質量部添加した(水溶性金属塩添加工程)。
【0187】
上記塩化アルミニウムが添加された水系媒体を使う以外は、実施例1と同様の操作を行い、トナー6を得た。
【0188】
〔実施例7〕
<トナー7の製造>
(追加添加分散安定剤の調製)
造粒タンクに、イオン交換水20.00質量部、リン酸ナトリウム0.40質量部、及び10質量%塩酸0.18質量部を添加し、リン酸ナトリウム水溶液を作製し、50℃に加温した。この造粒タンクに、イオン交換水1.64質量部に塩化カルシウム6水和物0.24質量部を溶解し作製した塩化カルシウム水溶液を添加し、TK式ホモミキサー(商品名、特殊機化工業製)を用いて周速25m/sにて30分撹拌した。その後、塩化アルミニウムを0.10質量部添加した。このとき、塩化アルミニウムを加える前の該追加添加分散安定剤のpHは5.5であった。
【0189】
これにより、難水溶性無機微粒子として、リン酸カルシウム(の微粒子)を含有する追加添加分散安定剤を得た。
【0190】
(重合性単量体組成物の懸濁粒子の調製)
実施例1と同様にして、重合性単量体組成物の懸濁粒子を調製した(造粒工程)。
【0191】
(トナー7の作製)
上記重合性単量体組成物粒子の懸濁液を別のタンクに移し、パドル撹拌翼で撹拌しつつ温度70℃に昇温し、5時間反応させた後、更に80℃に昇温し、4時間反応させたところで、該追加添加分散安定剤を投入した。追加添加分散安定剤を投入する前の懸濁液のpHは5.3であった。さらに、1時間、同条件で反応させた後、更に80℃に昇温し、6時間反応させた(昇温工程)。これにより、トナー粒子7を含む重合体粒子が分散した分散液(重合スラリー)を得た(懸濁重合工程)。この時、該重合スラリーのpHは5.0だった。
【0192】
該重合スラリーに対して、実施例1と同様の操作を行い、トナー7を得た。
【0193】
〔実施例18~20、26、27、32、33、比較例1~6、9〕
上記トナー粒子1及びトナー1の製造において、工程上の諸条件と、使用する脂肪酸金属塩、水溶性金属塩を表3に示すように変更する以外は同様にしてトナー18~20、26、27、32~39、42を作製した。
【0194】
〔比較例7〕
実施例1の分散安定剤を含有する水系媒体の調製において、使用する10質量%塩酸の使用量を1.20質量部にする以外は実施例1と同様にした。結果、蒸留工程中に重合体粒子の合一による粗大化が起きてしまい、トナー40は得られなかった。
【0195】
〔比較例8〕
実施例1の分散安定剤を含有する水系媒体の調製において、使用する10質量%塩酸の使用量を0.55質量部にする以外は実施例1と同様にしてトナー41を調製した。
【0196】
【表3】
【0197】
〔実施例2〕
<トナー2の製造>
(結着樹脂溶液の調製)
撹拌羽つきの密閉性容器に酢酸エチルを50質量部投入し、100rpmで撹拌しているところに、上記ポリエステル樹脂1を50質量部入れ室温で3日撹拌することで結着樹脂溶液1を調製した。
【0198】
(離型剤分散液の製造例)
・カルナウバワックス(融点83℃):18質量部
・酢酸エチル:82質量部
上記を撹拌羽根突きの容器内に投入し、系内を70℃に加熱することでカルナウバワックスを酢酸エチルに溶解させた。
【0199】
ついで、系内を100rpmで緩やかに撹拌しながら徐々に冷却し、2時間かけて30℃にまで冷却させ乳白色の液体を得た。
【0200】
この溶液を1mmのガラスビーズ20質量部とともに耐熱性の容器に投入し、ペイントシェーカーにて3時間分散を行い、ナイロンメッシュでガラスビーズを取り除き、ワックス分散液1を得た。
【0201】
(着色剤分散液の製造例)
・ポリエステル樹脂1:20質量部
・Cuフタロシアニン(Pigment Blue 15:3):20質量部
・脂肪酸金属塩1:0.52質量部
・酢酸エチル:59.48質量部
上記材料を容器中で十分プレミクスした後、これを20℃以下に保ったままアトライタ
ー(三井三池化工機製)を用いて約4時間均一に分散混合し、着色剤分散液1を得た。
【0202】
(混合液の調製)
ワックス分散液1:50質量部
(カルナウバWAX含有率:18%)
着色剤分散液1:25質量部
(顔料含有率:20%、樹脂含有率:20%、脂肪酸金属塩含有率:0.52%)
結着樹脂溶液1:160質量部
(樹脂含有率:50%)
酢酸エチル:15質量部
上記溶液を容器内に投入し、ホモディスパー(特殊機化工業(株)社製)で2000r
pmで5分間撹拌・分散することにより混合液を調製した。
【0203】
(分散安定剤を含む水系媒体の調製)
造粒タンクに、イオン交換水100.00質量部、リン酸ナトリウム2.00質量部、及び10質量%塩酸0.90質量部を添加し、リン酸ナトリウム水溶液を作製し、50℃に加温した。この造粒タンクに、イオン交換水8.20質量部に塩化カルシウム6水和物1.2質量部を溶解し作製した塩化カルシウム水溶液を添加し、TK式ホモミキサー(商品名、特殊機化工業製)を用いて周速25m/sにて30分撹拌した。これにより、分散安定剤として、リン酸カルシウム(の微粒子)を含有する水系媒体を得た(水系媒体調製工程)。
【0204】
(懸濁粒子を含有する懸濁液の調製)
前記混合液120質量部を前記水系媒体中に投入し、TK式ホモミキサー(商品名、特殊機化工業製)にて周速30m/sで撹拌し、懸濁粒子を含有する懸濁液を得た。
【0205】
(水溶性金属塩の添加工程)
上記懸濁液を別のタンクに移し、パドル撹拌翼で撹拌しつつ温度70℃に昇温させ、塩化アルミニウムを0.10質量部投入した(水溶性金属塩添加工程)。この際、塩化アルミニウム添加前の懸濁液のpHは5.3であった。
【0206】
(脱溶媒工程)
水溶性金属塩が添加された懸濁液を、パドル撹拌翼で150回転/分の回転速度で撹拌しつつ、70℃にてかつ500mgHgに減圧した状態で5時間かけて脱溶媒を行い、重合体粒子が分散された分散液を得た。
【0207】
脱溶媒終了後、該分散液のpHが8.5になるよう7.0%の炭酸ナトリウム水溶液を加え、70℃で1時間保持した(アルカリ処理工程)。
【0208】
該アルカリ処理工程開始と同時に、重合スラリー中の固形分100質量部に対して、1.25質量部の樹脂粒子分散液1を添加し、重合体粒子の表面へ樹脂粒子A-1を固着させた。
【0209】
その後、冷却した後、塩酸を加えpHを1.4にし、2時間撹拌し、トナー粒子表面の難水溶性無機微粒子を溶解した。トナー粒子の分散液を濾別し、水洗後、温度40℃にて48時間乾燥しトナー粒子2を得た(洗浄/濾過/乾燥工程)。
【0210】
(無機微粉体を表面に有するトナー粒子2の作製)
上記トナー粒子2、100.0質量部に対して、無機微粉体1.50質量部を、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機株式会社製)を用いて、3000rpm(min-1)で15分間混合して無機微粉体を表面に有するトナー粒子2を得た(外添工程)。
【0211】
なお、無機微粉体を付与する前のトナー粒子2と区別するため、上記無機微粉体を表面に有するトナー粒子2を、以降トナー2と称する。上記無機微粉体としては、流動性向上剤であるジメチルシリコーンオイル(20質量%)で処理され、無機微粉体を付与する前のトナー粒子2と同極性(負極性)に摩擦帯電する疎水性シリカ微粒子(1次粒子の個数平均粒径:10nm、BET比表面積:170m2/g)を用いた。
【0212】
〔実施例3、4、8~15、21~25、28~31〕
上記トナー粒子2及びトナー2の製造において、工程上の諸条件と、使用する脂肪酸金属塩、水溶性金属塩を表4に示すように変更する以外は同様にしてトナー3、4、8~15、21~25、28~31を作製した。
【0213】
なお、表4において、アルカリ処理のタイミングが脱溶媒工程の「後」の例は本発明の第二形態に、「同時」の例は本発明の第三形態に、「前」の例は本発明の第四形態に相当するものである。
【0214】
〔実施例16〕
実施例4の分散安定剤を含有する水系媒体の調製において、使用する10質量%塩酸の使用量を1.10質量部にする以外は実施例4と同様にしてトナー16を調製した。
【0215】
〔実施例17〕
実施例4の分散安定剤を含有する水系媒体の調製において、使用する10質量%塩酸の使用量を0.6質量部にする以外は実施例4と同様にしてトナー17を調製した。
【0216】
【表4】
【0217】
得られたトナー1乃至42に対して、以下に示す評価を行った。
【0218】
<クリーニング性評価>
クリーニング性の評価は、市販のカラーレーザープリンタであるLBP712Ci(キヤノン製)を一部改造して行った。改造は、クリーニングブレードを電子写真感光体の表面に対して、当接角が20°およびクリーニングブレードの侵入量が0.2mmになるように調整した。
【0219】
上記トナーカートリッジにトナーを170g充填した。そして、低温低湿(10℃/15%RH)の環境下で24時間放置後、1.0%印字比率の画像を20000枚出力した。初期と20000枚画像出力(画像形成)後にそれぞれ高印字5.0%の条件でベタ画像を出力した際の、クリーニングブレードからのトナーのすり抜けの発生により、クリーニング性の評価を行った。評価ランクは以下のとおりである。D、C、B、Aの順にクリーニング性が良くなっていく。本発明の効果を得る上でランクC以上が望ましい。評価結果を表5に示す。
A:トナーのすり抜けなし。
B:画像には出現しないが、トナーのすり抜けあり。帯電部材汚染のおそれもなし。
C:画像には出現しないが、トナーのすり抜けあり。帯電部材汚染のおそれがあり。
D:画像に出現するトナーのすり抜けあり。
【0220】
<粗大化の評価>
粗大化の評価は、蒸留工程もしくは脱溶媒工程の前後における重合体粒子のD4の変化の絶対値により評価した。評価基準は以下のとおりである。結果を表5に示す。
A:D4の変化の絶対値が0.10μm未満
B:D4の変化の絶対値が0.10μm以上0.15μm未満
C:D4の変化の絶対値が0.15μm以上0.20μm未満
D:D4の変化の絶対値が0.20μm以上
【0221】
<耐久性(スジ)>
耐久性の評価は、市販のカラーレーザープリンタである、HP Color LaserJet 3525dnを一部改造して評価を行った。改造は一色のプロセスカートリッジだけの装着でも作動するよう改良した。また、定着器を任意の温度に変更できるように改造した。
【0222】
このカラーレーザープリンタに搭載されていたブラックトナー用のプロセスカートリッジから中に入っているトナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、プロセスカートリッジに各トナー(300g)を導入し、トナーを詰め替えたプロセスカートリッジをカラーレーザープリンタに装着し、以下の画像評価を行った。具体的な画像評価項目は下記の通りである。
【0223】
常温常湿環境下(温度23℃/湿度60%RH)、及び、高温高湿環境下(温度33℃/湿度85%RH)において、横線で0.5%の印字率の画像を50000枚プリントアウト試験終了後、LETTERサイズのXEROX 4200用紙(XEROX社製、75g/m2)にハーフトーン(トナーの載り量:0.6mg/cm2)の画像をプリントアウトし、現像スジの評価をした。
A:未発生
B:現像スジが1カ所以上2カ所以下発生
C:現像スジが3カ所以上4カ所以下発生
D:現像スジが5カ所以上6カ所以下発生
E:現像スジが7カ所以上発生、あるいは、幅0.5mm以上発生
【0224】
<転写性>
画像形成装置としては市販のレーザープリンターであるLBP-7700C(キヤノン製)の改造機およびプロセスカートリッジであるトナーカートリッジ323(シアン)(キヤノン製)の改造カートリッジを用いた。
【0225】
改造は、内部のギアを変更することにより、プロセススピードが240mm/secとなるよう改造を行った。また、この改造カートリッジでは、カートリッジ内部のギアを変更・追加することにより、トナー供給ローラがトナー担持ローラとの当接部において各々の表面が同一の方向に移動するように改造を行った。なお、トナー供給ローラのトナー担持ローラ基準での周速は160%となるよう調整を行った。また、カートリッジ内部からは製品トナーを抜き取り、エアブローによって清掃した後、トナーを160g充填した。
【0226】
高温高湿環境(40℃/95%RH)にトナーを充填したプロセスカートリッジを15日間放置した。
【0227】
キヤノンカラーレーザーコピー用紙(A4:81.4g/m2)に印字率1%の画像を20000枚出力した。その後、全ベタ画像を出力し、感光体から中間転写体への転写中に装置を停止し、転写工程前の感光体上トナー載り量M1(mg/cm2)と転写工程後の感光体上トナー載り量M2(mg/cm2)を測定した。得られたトナー載り量から、(M1-M2)×100/M1を転写効率(%)とした。
A:転写効率95%以上
B:転写効率90%以上95%未満
C:転写効率85%以上90%未満
D:転写効率85%未満
【0228】
【表5】