(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】枝管接続部材
(51)【国際特許分類】
F16L 41/08 20060101AFI20240105BHJP
F16L 41/02 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
F16L41/08
F16L41/02
(21)【出願番号】P 2019135837
(22)【出願日】2019-07-24
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】太田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 邦彦
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-305151(JP,A)
【文献】特開2003-129554(JP,A)
【文献】特開平03-244894(JP,A)
【文献】実開平04-121593(JP,U)
【文献】特開2000-018466(JP,A)
【文献】特開昭53-005427(JP,A)
【文献】実開昭51-105607(JP,U)
【文献】実開昭50-121318(JP,U)
【文献】特開2017-133662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 41/08
F16L 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本管に枝管を形成するために当該本管に対して取り付けられ、前記枝管が接続される枝管接続部材であって、
前記枝管が接続される枝管接続部と、
前記本管の内部に導入され、前記本管に穿孔された開口の周辺部において前記本管の内周側に装着される内周部材と、
前記本管の外側からの操作により、前記本管の内側に導入された前記内周部材を、前記本管の内周面に近接する方向に引き寄せる引き寄せ操作を可能とする操作部材と、
前記内周部材を前記引き寄せ操作により引き寄せた位置で位置決めする位置決め部材とを有し、
前記内周部材が、
前記本管の前記内周面に当接する複数の当接片を複数、屈曲伸長可能に接続したものであって、複数の前記当接片を屈曲させることにより前記本管の前記開口を介して前記本管の外側から内側に導入可能な屈曲状態となり、複数の前記当接片を前記本管の内部で伸長させることにより前記本管の前記開口から前記本管の外部に離脱不能な伸長状態になるものであり、
前記屈曲状態において前記操作部材を引き寄せることにより、前記内周部材を前記内周面に近接させつつ前記伸長状態とすることができることを特徴とす
る枝管接続部材。
【請求項2】
前記内周部材が、
所定の回動軸心を中心に複数の前記当接片を回動可能に連結する連結部を有し、
前記操作部材が、前記回動軸心から外れた位置において前記引き寄せ操作に伴う操作力が作用するように接続されていることを特徴とする
請求項1に記載の枝管接続部材。
【請求項3】
本管に枝管を形成するために当該本管に対して取り付けられ、前記枝管が接続される枝管接続部材であって、
前記枝管が接続される枝管接続部と、
前記本管の内部に導入され、前記本管に穿孔された開口の周辺部において前記本管の内周側に装着される内周部材と、
前記本管の外側からの操作により、前記本管の内側に導入された前記内周部材を、前記本管の内周面に近接する方向に引き寄せる引き寄せ操作を可能とする操作部材と、
前記内周部材を前記引き寄せ操作により引き寄せた位置で位置決めする位置決め部材とを有し、
前記本管に穿孔された開口の周辺部において前記本管の外周側に装着される外周部材を有し、
前記外周部材は、前記開口を外れた位置に穿孔された少なくとも1つの孔を有し、
前記操作部材が、線材によって構成されており、
前記線材は、少なくとも一端側の端部が、前記孔を介して取り出されると共に、前記内周部材に接続されていることを特徴とす
る枝管接続部材。
【請求項4】
前記枝管接続部が、前記外周部材に対して一体的に設けられた筒状の筒状部を有し、
前記孔が、前記筒状部を外れた位置に設けられていることを特徴とする
請求項3に記載の枝管接続部材。
【請求項5】
本管に枝管を形成するために当該本管に対して取り付けられ、前記枝管が接続される枝管接続部材であって、
前記枝管が接続される枝管接続部と、
前記本管の内部に導入され、前記本管に穿孔された開口の周辺部において前記本管の内周側に装着される内周部材と、
前記本管の外側からの操作により、前記本管の内側に導入された前記内周部材を、前記本管の内周面に近接する方向に引き寄せる引き寄せ操作を可能とする操作部材と、
前記内周部材を前記引き寄せ操作により引き寄せた位置で位置決めする位置決め部材とを有し、
前記本管に穿孔された開口の周辺部において前記本管の外周側に装着される外周部材を有し、
前記枝管接続部が、前記外周部材に対して一体的に設けられ、前記外周部材を貫通し、前記本管に形成された前記開口に挿入可能な筒状の筒状部を有し、
前記内周部材が、前記筒状部の外径に対応する大きさの内周部材開口を有し、
前記内周部材開口に前記筒状部を貫入可能であることを特徴とす
る枝管接続部材。
【請求項6】
本管に枝管を形成するために当該本管に対して取り付けられ、前記枝管が接続される枝管接続部材であって、
前記枝管が接続される枝管接続部と、
前記本管の内部に導入され、前記本管に穿孔された開口の周辺部において前記本管の内周側に装着される内周部材と、
前記本管の外側からの操作により、前記本管の内側に導入された前記内周部材を、前記本管の内周面に近接する方向に引き寄せる引き寄せ操作を可能とする操作部材と、
前記内周部材を前記引き寄せ操作により引き寄せた位置で位置決めする位置決め部材とを有し、
前記本管に穿孔された開口の周辺部において前記本管の外周側に装着される外周部材を有し、
前記外周部材は、前記開口の外周側に穿孔された複数の孔を有し、
前記操作部材は、一端側及び他端側のそれぞれの端部が、複数の前記孔を介して取り出されると共に、前記内周部材に接続されることにより、ループ状に形成されており、
前記本管の長手方向に対して交差する方向に前記操作部材を引き寄せることにより、前記引き寄せ操作が可能であることを特徴とす
る枝管接続部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枝管接続部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、既設の下水道等の主管(本管)に対して枝管を接続するための枝管接続部材の施工用の治具として、例えば下記特許文献1の分岐管取付用治具のようなものが提供されている。
【0003】
上記特許文献1の分岐管取付用治具は、枝管の接続対象となる主管に形成された開口部に対し、主管の内面側に係止可能な内面側係止部材と、主管の外面側から内面側係止部材に接続可能な外面側接続部材とを組付けて、枝管を接続可能な分岐管部を形成するためのものである。特許文献1の分岐管取付用治具は、主管への組み付けに際し、主管の内部において内面側係止部材を仮保持できる分岐管取付治具本体を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来技術においては、上記特許文献1に開示されている分岐管取付用治具のようなものが、枝管接続部材の取り付け施工に用いられている。しかしながら、従来技術においては、上述した分岐管取付用治具のような治具を取り揃えたり、このような治具を用いて所定箇所に設置したりするためには、相応の手間や時間、労力等を有する。
【0006】
そこで、本発明は、特別な治具等を用いることなく、枝管の取付対象となる本管に対して取付施工可能な枝管接続部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の枝管接続部材は、本管に対する枝管の接続に用いられるものであって、前記枝管が接続される枝管接続部と、前記本管の内部に導入され、前記本管に穿孔された開口の周辺部において前記本管の内周側に装着される内周部材と、前記本管の内側に導入された前記内周部材を、前記本管の外側からの操作により、内周面に近接する方向に引き寄せる引き寄せ操作を可能とする操作部材と、前記内周部材を前記引き寄せ操作により引き寄せた位置で位置決めする位置決め部材とを有することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の枝管接続部材は、本管の内周側に装着される内周部材を、本管の内側に導入した状態として、操作部材による操作により内周面に近接する方向に引き寄せる引き寄せ操作を行えるものとされている。また、本発明の枝管接続部材は、位置決め部材を備えており、引き寄せ操作により引き寄せた位置において、内周部材を位置決めすることができる。このように、本発明の枝管接続部材は、本管の外部からの引き寄せ操作により、内周部材を本管の内周面に近接した状態で位置決めすることができる。従って、本発明によれば、特別な治具等を用いることなく、枝管の取付対象となる本管に対して取付施工可能な枝管接続部材を提供することができる。
【0009】
(2)上述した本発明の枝管接続部材は、前記内周部材が、前記本管の前記内周面に当接する複数の当接片を複数、屈曲伸長可能に接続したものであって、複数の前記当接片を屈曲させることにより前記本管の前記開口を介して前記本管の外側から内側に導入可能な屈曲状態となり、複数の前記当接片を前記本管の内部で伸長させることにより前記本管の前記開口から前記本管の外部に離脱不能な伸長状態になるものであり、前記屈曲状態において前記操作部材を引き寄せることにより、前記内周部材を前記内周面に近接させつつ前記伸長状態とすることができるものであると良い。
【0010】
本発明の枝管接続部材は、内周部材が当接片を複数、屈曲伸長可能に接続したものとされている。また、内周部材は、屈曲状態とすることにより本管に設けられた開口を介して本管の内部に導入可能な程度にコンパクトな状態とすることができる。そのため、本発明の枝管接続部材は、内周部材を本管の内部に導入する作業を容易かつスムーズに行うことができる。
【0011】
また、本発明の枝管接続部材において、内周部材は、複数の当接片を本管の内部で伸長させることにより、本管の開口から前記本管の外部に離脱不能な状態(伸長状態)とすることができる。また、操作部材により引き寄せ操作を行うことにより、内周部材が本管の内周部に引き寄せされる過程において、内周部材を屈曲状態から伸長状態に変化させることができる。そのため、本発明の枝管接続部材は、本管内部への内周部材の導入後、操作部材により引き寄せ操作を行えば、開口を介して離脱しないように内周部材を本管の内周部に装着することができる。
【0012】
(3)上述した本発明の枝管接続部材は、前記内周部材が、所定の回動軸心を中心に複数の前記当接片を回動可能に連結する連結部を有し、前記操作部材が、前記回動軸心から外れた位置において前記引き寄せ操作に伴う操作力が作用するように接続されているものであると良い。
【0013】
本発明の枝管接続部材においては、内周部材をなす複数の当接片が、連結部を介して所定の回動軸心を中心に回動可能なように連結されている。そのため、回動軸心から外れた位置において当接片に対して引っ張り力を作用させることにより、回転軸心を中心として当接片を回動させることができる。本発明では、操作部材が当接片に接続されており、引き寄せ操作を行うことにより、回動軸心から外れた位置において当接片に操作力を作用させることができるものとされている。従って、本発明の枝管接続部材では、操作部材による引き寄せ操作により、回転軸心を中心として当接片を回動させ、伸長状態に状態変化させることができる。
【0014】
(4)上述した本発明の枝管接続部材は、前記本管に穿孔された開口の周辺部において前記本管の外周側に装着される外周部材を有し、前記操作部材が、線材によって構成されており、前記線材が、前記外周部材に設けられた孔を介して取り出されているものであると良い。
【0015】
かかる構成によれば、本管の外周に外周部材を取り付けつつ、外周部材によって阻害されることなく操作部材を用いた引き寄せ操作を行うことができる。従って、本発明によれば、本管に対して枝管を接続する作業の作業効率をより一層向上させることができる。
【0016】
(5)上述した本発明の枝管接続部材は、前記枝管接続部が、前記外周部材に対して一体的に設けられた筒状の筒状部を有し、前記孔が、前記筒状部を外れた位置に設けられているものであると良い。
【0017】
かかる構成によれば、枝管接続部をなす筒状部を外れた位置から操作部材をなす線材を外部に取り出すことができる。そのため、上述した構成によれば、枝管接続部において枝管を直接的あるいは間接的に接続する際に、線材が邪魔になるのを抑制することができる。従って、本発明によれば、本管に対する枝管の取付施工性をより一層向上させることができる。
【0018】
(6)上述した本発明の枝管接続部材は、前記本管に穿孔された開口の周辺部において前記本管の外周側に装着される外周部材を有し、前記枝管接続部が、前記外周部材に対して一体的に設けられ、前記外周部材を貫通し、前記本管に形成された前記開口に挿入可能な筒状の筒状部を有し、前記内周部材が、前記筒状部の外径に対応する大きさの内周部材開口を有し、前記内周部材開口に前記筒状部を貫入可能なものであると良い。
【0019】
本発明の枝管接続部材においては、枝管接続部をなす筒状部が、外周部材に対して一体的に設けられると共に、外周部材を貫通している。また、内周部材には、筒状部の外径に対応する大きさの内周部材開口が設けられている。また、筒状部は、本管に形成された開口に挿入可能であると共に、内周部材開口に対して貫入可能なものとされている。そのため、本発明の枝管接続部材を本管に対して取り付ける際に、内周部材開口に対して筒状部を貫入することにより、本管に形成された開口を基準として、外周部材及び内周部材の配置を位置決め精度良く調整できる。従って、本発明の枝管接続部材によれば、外周部材及び内周部材の双方が、本管に穿孔された開口の周辺部において内周側及び外周側から確実に被さるように設置することができる。
【0020】
(7)上述した本発明の枝管接続部材は、前記操作部材が、ループ状に形成されており、前記本管の長手方向に対して交差する方向に前記操作部材を引き寄せることにより、前記引き寄せ操作が可能なものであると良い。
【0021】
かかる構成によれば、例えば、本管への枝管の取付施工現場にあるバール等の工具や棒状の部材等を、ループ状に形成された操作部材に挿通しつつ本管の側方に突き刺した後、倒す操作を行うことにより、操作部材の引っ張り操作を行うことができる。このように、上述した構成によれば、取付施工現場にあるバール等の工具等を引っ張り操作の補助具として活用する等して、枝管接続部材を本管に対して設置できる。従って、本発明によれば、本管に対する枝管接続部材の取り付け作業を、より一層簡単に行えるようにすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、特別な治具等を用いることなく、枝管の取付対象となる本管に対して取付施工可能な枝管接続部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る枝管接続部材を用いて本管に枝管を接続した状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る枝管接続部材を用いて本管に枝管を接続した状態を示す側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る枝管接続部材を用いて本管に枝管を接続する方法を段階的に示した断面図である。
【
図4】(a)は
図1に示した枝管接続部材を本管に対して装着する第一の工程における平面図、(b)は第二の段階における平面図である。
【
図5】
図1に示した枝管接続部材を本管に対して装着する第一の工程における枝管接続部材の状態を示す斜視図である。
【
図6】
図1に示した枝管接続部材を本管に対して装着する第二の工程における枝管接続部材の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る枝管接続部材10について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において上下左右等の方向や表裏、前後等の表現については、特に断りのない限り、
図1に示すように枝管接続部材10を本管1に対して取り付けた状態を基準として説明する。また、以下の説明においては、先ず枝管接続部材10の構成について説明した後、枝管接続部材10を用いて本管1に枝管5を接続する施工方法について説明する。
【0025】
≪枝管接続部材10の構成について≫
枝管接続部材10は、例えば下水道管等の既設の本管1に新たに穿孔して形成された開口3に対し、枝管5を接続するために用いられるものである。本管1は、例えば、コンクリート管やヒューム管、塩化ビニル等の樹脂により形成された樹脂管等とすることができる。
図1~
図3等に示すように、枝管接続部材10は、外周部材20、内周部材40、操作部材60、位置決め部材80を備えている(
図1においては、操作部材60及び位置決め部材80は図示せず省略)。
【0026】
外周部材20は、本管1に穿孔された開口3の周辺部において本管1の外周面7に装着される部材である。外周部材20は、外周当接部22、枝管接続部24、及び複数(本実施形態では4つ)の孔26を備えている。
【0027】
外周当接部22は、本管1の外周面7に対して当接するように取り付けられる部分である。外周当接部22は、外周面7と同等の曲率で湾曲した円弧状の断面形状を有し、平面視で略矩形の形状を有する部材である。外周当接部22は、長手方向(母線方向)に所定の長さを有し、長手方向の略中央部に表面22aから裏面22bに向けて貫通するように設けられた貫通孔30を備えている。
【0028】
枝管接続部24は、枝管5が接続される部分である。枝管接続部24は、筒状部32と受口部34とを有する。筒状部32は、軸線方向に貫通した筒状の形状を有し、外周当接部22に対して一体的に設けられている。筒状部32は、外周当接部22に設けれた貫通孔30を介して表面22a側及び裏面22b側の双方に突出している。
【0029】
筒状部32において、裏面22b側に突出した部分(以下、「内側筒状部32a」とも称す)は、本管1の開口3、及び後に詳述する内周部材40の内周部材開口48に貫入される。また、筒状部32において表面22a側に突出した部分(以下、「外側筒状部32b」とも称す)には、受口部34が設けられている。受口部34は、枝管5の接続に際し受口として機能する部分である。
【0030】
孔26は、後に詳述する操作部材60をなす線材を取り出すために設けられたものである。孔26は、筒状部32の外周側に設けられている。孔26は、外周当接部22の表面22a及び裏面22bに亘って貫通するように形成されている。
【0031】
内周部材40は、本管1の内部に導入され、本管1に穿孔された開口3の周辺部において、本管1の内周面9に装着される部材である。内周部材40は、当接片42、及び連結部44を備えている。内周部材40は、複数(本実施形態では2つ)の当接片42,42を、連結部44を介して屈曲伸長可能に接続したものとされている。
【0032】
当接片42は、本管1の内周面9と同等の曲率で湾曲した円弧状の断面形状を有し、平面視で略矩形の形状を有する部材である。当接片42は、長手方向(母線方向)に所定の長さを有する。当接片42は、後に詳述する連結部44を介して並列に配置した状態で、互いに回動可能なように連結されている。
【0033】
内周部材40は、隣接する当接片42,42の裏面同士が離反するように回動させることにより、隣接する当接片42,42が突き合わせられ、表面同士が連続した状態になる。これにより、内周部材40は、全体として伸長した状態(伸長状態)になる。当接片42は、伸長状態において隣接する他の当接片42と突き合わせられる部分(合わせ部42x)を有する。また、内周部材40は、伸長状態にすると、本管1の開口3から本管1の外部に離脱不能なように拡張された状態になる。また、内周部材40は、連結部44において隣接する当接片42,42の裏面同士が近接するように折り畳むことにより、屈曲した状態(変形状態)にすることができる。内周部材40を屈曲状態とすると、本管1の開口3を介して本管1の外側から内側に導入可能なようにコンパクトな状態になる。
【0034】
当接片42,42は、それぞれ合わせ部42x,42x側において長手方向(母線方向)の略中央部に、切欠部46,46を有する。切欠部46,46は、それぞれ半円状とされている。内周部材40を伸長状態とすると、切欠部46,46の組み合わせからなる略円形に開口した内周部材開口48が形成される。内周部材開口48の開口径は、外周部材20の筒状部32において、裏面22b側に突出した内側筒状部32aの外径に対応する大きさとされている。そのため、内周部材開口48は、筒状部32の内側筒状部32aを貫入可能とされている。
【0035】
連結部44は、当接片42の母線方向に延びる所定の回動軸心Cを中心に、複数(本実施形態では2つ)の当接片42を回動可能に連結するものである。連結部44は、例えば、隣接する当接片42,42のうち一方に軸部を設け、他方に軸部を回動自在に支持する受部を設けたもの等とすることが可能であるが、本実施形態においては蝶番によって連結部44が構成されている。回動軸心Cは、並べて配置された当接片42,42の境界をなす合わせ部42x,42x側の位置に存在している。
【0036】
操作部材60は、本管1の内側に導入された内周部材40を、本管1の外側からの操作(引き寄せ操作)により、内周部材40を本管1の内周面9に近接する方向に引き寄せるための部材である。操作部材60は、金属や樹脂等の素材によって形成された線材によって構成されている。本実施形態では、操作部材60として、当接片42,42のうち一方(以下、「第一当接片42a」とも称す)に接続される第一操作部材60aと、他方(以下、「第二当接片42b」とも称す)に接続される第二操作部材60bとが設けられている。
【0037】
操作部材60をなす第一操作部材60a及び第二操作部材60bは、それぞれ内周部材40をなす第一当接片42a及び第二当接片42bの回動軸心Cから外れた位置において引き寄せ操作に伴う操作力が作用するように接続されている。
【0038】
具体的には、第一操作部材60aの一端側及び他端側の端部は、それぞれ外周部材20に設けられた孔26,26を介し、外周部材20の表面22aから裏面22bに向けて挿通されている。第一操作部材60aが挿通される孔26,26は、それぞれ外周部材20において内周部材40の第二当接片42bと対向する位置に設けられたものが選択されている。また、第一操作部材60aの一端側及び他端側の端部は、第一当接片42aに設けられた半円状の切欠部46において、周方向一方側の位置、及び他方側の位置に固定されている。第一操作部材60aの両端部は、第一当接片42aの長手方向に略対象となる固定位置において固定されている。第一操作部材60a(操作部材60)は、このように両端を第一当接片42aに固定することにより、ループ状に形成されている。
【0039】
同様に、第二操作部材60bの一端側及び他端側の端部は、それぞれ外周部材20に設けられた孔26,26を介し、外周部材20の表面22aから裏面22bに向けて挿通されている。第二操作部材60bが挿通される孔26,26は、それぞれ外周部材20において内周部材40の第一当接片42aと対向する位置に設けられたものが選択されている。また、第二操作部材60bの一端側及び他端側の端部は、それぞれ第二当接片42bに設けられた半円状の切欠部46において、周方向一方側の位置、及び他方側の位置に固定されている。第二操作部材60bの両端部は、第二当接片42bの長手方向に略対称となる固定位置において固定されている。第二操作部材60b(操作部材60)は、このように両端を第二当接片42bに固定することにより、ループ状に形成されている。
【0040】
第一操作部材60a及び第二操作部材60bは、上述したようにして配索されている。そのため、第一操作部材60a及び第二操作部材60bは、外周部材20の表面22a側において筒状部32を介して外周部材20の長手方向(母線方向)一方側及び他方側の二箇所においてクロスした配置とされている。そのため、第一操作部材60a及び第二操作部材60bを引き寄せる操作(引き寄せ操作)により第一当接片42aや第二当接片42bを引き寄せる操作は、第一操作部材60a及び第二操作部材60bを本管1の側方に向けて引っ張ることにより行うことができる。
【0041】
位置決め部材80は、内周部材40をなす第一当接片42aや第二当接片42bが、操作部材60によって引き寄せた位置から、引き寄せ方向とは逆方向に戻らないように位置決めするためのものである。位置決め部材80は、操作部材60をなす第一操作部材60a及び第二操作部材60bが外周部材20の表面22a側においてクロスする位置に設けられている。具体的には、位置決め部材80は、第一操作部材60a及び第二操作部材60bを挿通可能とされている。例えば、ラチェット機構のような第一操作部材60a及び第二操作部材60bの動作方向を一方に制限可能な機構を備えている。そのため、第一操作部材60a及び第二操作部材60bは、引き寄せ操作により引っ張ることはできるが、前述の機構を解除しない限り、逆方向には戻らない。従って、位置決め部材80は、第一当接片42aや第二当接片42bを、引き寄せ位置において位置決めすることができる。
【0042】
≪枝管接続部材10を用いた施工方法について≫
続いて、枝管接続部材10を用い、本管1に穿孔された開口3に対して枝管5を接続する施工方法について説明する。
【0043】
図5に示すように、本管1に対する枝管5の接続施工に際し、枝管接続部材10は、操作部材60が未だ引き寄せられておらず、外周部材20と内周部材40とが十分に離れた状態で準備される。この状態において、内周部材40をなす当接片42,42を連結部44において屈曲させ、折り畳んだ状態(変形状態)にする。
図3において実線で示すように、内周部材40は、変形状態で本管1の開口3から内部に導入される。
【0044】
上述したようにして内周部材40が本管1の内部に導入されると、
図3において矢印(1)で示すように、外周部材20に一体的に設けられた枝管接続部24の筒状部32が、内側筒状部32aを先頭にして、本管1の開口3に差し込まれる。また、外周部材20は、外周当接部22が本管1の外周面7に沿うように配置される。
【0045】
このようにして、外周部材20の配置が完了すると、
図4(a)に示すように、第一操作部材60a及び第二操作部材60bが本管1の幅方向(径方向)外側に向けて引っ張ることが可能なように配置される。この状態において、
図3の矢印(2)や
図4(b)の矢印で示すように、筒状部32の側方に配置された第一操作部材60a及び第二操作部材60bを本管1の内側から外側に向かう方向に引っ張る操作(引き寄せ操作)が行われる。これに伴い、
図6に示すように、第一操作部材60a及び第二操作部材60bに接続された内周部材40(第一当接片42a及び第二当接片42b)が本管1の内部において変形状態から伸長状態に状態変化しつつ、本管1の内周面9側に引き寄せられる。内周面9に当接するまで内周部材40が引き寄せられると、内周部材40は伸長状態となって内周面9に対して密接した状態となる。これにより、本管1に対する枝管接続部材10の取り付けが完了する。また、本管1に枝管接続部材10が取り付けられると、枝管接続部24の受口部34に対して枝管5が差し込まれて接続される。これにより、枝管接続部材10を用いた本管1への枝管5の取付施工が完了する。
【0046】
上述したように、本実施形態の枝管接続部材10は、内周部材40を本管1の内側に導入した後、操作部材60による引き寄せ操作を行うことにより、内周部材40を内周面9に沿うように配置することができる。また、枝管接続部材10は、位置決め部材80を備えているため、内周部材40を内周面9に沿うように配置された状態で位置決めすることができる。従って、本実施形態の枝管接続部材10は、特別な治具等を用いることなく、本管1に対して取付施工することができる。
【0047】
上述したように、本実施形態の枝管接続部材10は、内周部材40として、複数(本実施形態では2つ)の当接片42を、連結部44を介して屈曲伸長可能に連結したものとされている。内周部材40は、屈曲状態とすることにより本管1に設けられた開口3を介して本管1の内部に導入可能な程度にコンパクトな状態に変形させることができる。そのため、枝管接続部材10は、本管1への取り付けに際し、内周部材40を開口3を介して本管1の内部に導入する作業を容易かつスムーズに行うことができる。
【0048】
上述したように、枝管接続部材10に用いられている内周部材40は、操作部材60による本管1の外部からの操作により、内周面9に向けて引き寄せられる過程において、内周部材40を屈曲状態から伸長状態に変化させることができる。また、本管1の内部において内周部材40を伸長状態に変形させることができる。また、内周部材40が伸長状態になると、開口3を介して本管1の外部に離脱不能な状態になる。従って、枝管接続部材10は、本管1の外部における操作部材60による操作により、内周部材40が本管1の開口3から離脱しないように装着することができる。
【0049】
なお、本実施形態では、内周部材40として、操作部材60の操作により変形し、屈曲伸展可能なものを用いた例を示したが、内周部材40を他の構成のものとしても良い。例えば、内周部材40を開口3の開口径よりも長い棒状の部材(棒状部材)とすると良い。このような棒状部材を上述した内周部材40に代えて採用した場合、棒状部材を傾斜させることにより、開口3から本管1の内部に棒状部材を導入できる。また、棒状部材に操作部材60を連結し、連結部材60を引っ張り操作することにより本管1の内部において棒状部材が略水平な姿勢で内周面9に向けて移動するようにすれば、開口3の近傍において棒状部材が引っかかり、開口3から抜け落ちないようにすることができる。従って、内周部材40として棒状部材を用いた場合についても、上記実施形態で示したのと同様に、本管1の開口3から離脱しないように内周部材40を装着することが可能となる。
【0050】
上述したように、本実施形態の枝管接続部材10においては、内周部材40が、複数(本実施形態では2つ)の当接片42,42を連結部44を介して所定の回動軸心Cを中心に回動可能なように連結したものとされている。また、当接片42,42には、操作部材60をなす第一操作部材60a及び第二操作部材60bが、回動軸心Cから外れた位置において接続されている。このため、枝管接続部材10は、操作部材60による引き寄せ操作を行うことにより、回転軸心Cを中心として当接片42,42を回動させ、変形状態から伸長状態に状態変化させることができる。
【0051】
なお、本実施形態では、内周部材40が当接片42,42を回動可能なように連結したものとされているため、上述のような位置に操作部材60を連結することが望ましいが、例えば上述した棒状部材のように回動を伴わないものを内周部材40に用いた場合には、内周部材40に対する操作部材60の接続位置を適宜調整することが望ましい。例えば、棒状部材を内周部材40に用いた場合には、上述したように、開口部3から抜け出さないようにすべく、本管1の内部において棒状部材が略水平な姿勢で内周面9に接近し、当接することが望ましい。そのため、このような場合には、操作部材60の一端側及び他端側が、それぞれ棒状部材の長手方向一方側及び他方側において対称となる位置に接続する等すれば良い。
【0052】
また、上述したように、本実施形態の枝管接続部材10は、操作部材60(第一操作部材60a及び第二操作部材60b)をなす線材が、外周部材20に設けられた孔26を介して取り出されている。このような構成とされているため、本管1の外周に外周部材20を取り付けた状態においても、外周部材20によって阻害されることなく操作部材60による引き寄せ操作を行うことができる。
【0053】
なお、本実施形態では、操作部材60(第一操作部材60a及び第二操作部材60b)を線材によって構成すると共に、位置決め部材80により位置決め固定可能とした構成例を示したが、このような構成とする代わりに、例えば、いわゆる結束バンドのように鋸歯状等の形状に形成されたセレーションを備えたストラップを内周部材40側に設け、外周部材20側に、結束バンドのヘッド部のようにストラップを挿通可能であると共にセレーションと係合する爪とを備えた構成等としても良い。
【0054】
上述したように、本実施形態の枝管接続部材10においては、操作部材60の挿通用として設けられた孔26が、外周部材20において筒状部32を外れた位置に設けられている。そのため、枝管接続部材10においては、枝管5の接続に際し、操作部材60をなす線材が邪魔にならず、枝管5の接続作業が容易に行える。なお、本実施形態では、操作部材60をなす線材を挿通するための孔26を筒状部32を外れた位置に設けた例を示したが、例えば、枝管接続部材10を本管1に設置した後、枝管5を接続する前に操作部材60を切断する等して枝管5の接続の邪魔にならなるのを回避できる場合等には、筒状部32を介して操作部材60を外部に取り出すようにする等しても良い。
【0055】
上述したように、枝管接続部材10は、外周部材20と一体的に設けられた筒状部32が、内周部材40に形成された内周部材開口48に貫入可能なものとされている。そのため、枝管接続部材10は、本管1への取り付けに際し、内周部材開口48に対して筒状部32を貫入することにより、本管1に形成された開口3を基準として、外周部材20及び内周部材40の配置を位置決め精度良く調整できる。従って、枝管接続部材10によれば、外周部材20及び内周部材40の双方が、開口3の周辺部において内周側及び外周側から確実に被さるように設置することができる。
【0056】
なお、本実施形態では、外周部材20に一体化された筒状部32において裏面22b側に突出した部分を、内周部材40の内周部材開口48に貫入可能とした例を示したが、例えば筒状部32が外周部材20の表面22a側にのみ突出しており、内周部材開口48に貫入可能とされていないものであっても良い。また、筒状部32の内側筒状部32aを裏面22b側に突出させる代わりに、内周部材40の内周部材開口48に係合可能な他の突出部を設けたり、内側筒状部32aあるいは前述の突出部のいずれか一方又は双方が係合可能な内周部材40を内周部材開口48とは別に設けた構成としたりしても良い。
【0057】
上述したように、枝管接続部材10は、操作部材60(第一操作部材60a及び第二操作部材60b)が、ループ状に形成されており、本管1の長手方向に対して交差する方向(本管1の径方向外側)に操作部材60を引き寄せることにより、引き寄せ操作が可能なものとされている。そのため、例えば、本管1への枝管5の取付施工現場にあるバール等の工具や棒状の部材等を、ループ状に形成された操作部材60に挿通しつつ、バール等の先端部分を本管1の側方において地面に突き刺した後、本管1の径方向外側に向けて倒す等の操作を行うことにより、操作部材60の引っ張り操作を行うことができる。このようにすれば、取付施工現場にあるバール等の工具等を引っ張り操作の補助具として活用することが可能となり、本管1に対する枝管接続部材10の取り付け作業が、より一層簡単に行えるようになる。なお、本実施形態では、操作部材60をなす線材をループ状に形成した例を示したが、操作部材60は必ずしもループ状のものでなくても良い。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、水道管、下水管、排水管等の各種の配管において、本管に対して枝管を接続するために好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 :本管
3 :開口
5 :枝管
9 :内周面
10 :枝管接続部材
20 :外周部材
24 :枝管接続部
26 :孔
32 :筒状部
40 :内周部材
42 :当接片
44 :連結部
48 :内周部材開口
60 :操作部材
80 :位置決め部材
C :回動軸心