(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】光学装置、および、物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/04 20140101AFI20240105BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20240105BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20240105BHJP
B23K 26/08 20140101ALI20240105BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20240105BHJP
【FI】
B23K26/04
G02B26/08 E
B23K26/08 F
B23K26/00 M
(21)【出願番号】P 2019154010
(22)【出願日】2019-08-26
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】井上 晋宏
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/067411(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/038606(WO,A1)
【文献】特開平05-002146(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0134604(US,A1)
【文献】特開2006-339266(JP,A)
【文献】特開2014-117722(JP,A)
【文献】特開2014-133242(JP,A)
【文献】特開2008-032524(JP,A)
【文献】特開2015-116591(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0120378(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
G02B 26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物にレーザ光を照射して前記対象物を加工する光学装置であって、
第1の複数のガルバノミラーを含み、前記第1の複数のガルバノミラーを駆動することにより2つの方向においてレーザ光が対象物に入射する入射角度を調整する第1ガルバノミラー光学系と、
可動レンズを含み、前記可動レンズを駆動することにより焦点方向におけるレーザ光の焦点位置を調整する焦点位置調整機構と、
第2の複数のガルバノミラーを含み、前記第2の複数のガルバノミラーを駆動することによりレーザ光の焦点方向に垂直な
2つの方向においてレーザ光が対象物に入射する入射位置を調整する
第2ガルバノミラー光学系と、
前記第1ガルバノミラー光学系の第1の複数のガルバノミラーと、前記焦点位置調整機構
の可動レンズと、前記第2ガルバノミラー光学系の第2の複数のガルバノミラーの駆動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1の複数のガルバノミラーの駆動量と前記
可動レンズの駆動量に基づき、
前記第1の複数のガルバノミラーと前記可動レンズの駆動による前記入射位置のずれ
、を補正するように、前記
第2の複数のガルバノミラーの駆動を制御する、
ことを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記焦点位置調整機構の
可動レンズの駆動量に基づき、前記入射位置のずれを補正するための補正量を前記入射角度に応じて算出し、算出された補正量に用いて前記
第2ガルバノミラー光学系の複数のガルバノミラーの駆動を制御することを特徴とする請求項
1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記焦点位置調整機構
の可動レンズの駆動量と前記
第1ガルバノミラー光学系の複数のガルバノミラーの駆動量に基づいて前記補正量を算出することを特徴とする請求項
2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記入射位置のずれ量に対応する前記補正量を記憶した記憶部を有することを特徴とする請求項
2または
3に記載の光学装置。
【請求項5】
レーザ光が照射された対象物からの反射光を検出する検出部を備え、
前記制御部は、前記検出部によって検出される前記反射光の光量に基づいて、前記焦点位置調整機構
の可動レンズの駆動を制御することを特徴とする請求項1ないし
4のうちいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項6】
前記制御部は、検出される前記反射光の光量が極大となるように、前記焦点位置調整機構
の可動レンズを駆動することを特徴とする請求項
5に記載の光学装置。
【請求項7】
前記検出部は、共焦点光学系を用いて光の検出を行うことを特徴とする請求項
5または
6に記載の光学装置。
【請求項8】
前記検出部により検出を行う際に用いられる光の光量は、前記対象物を加工する際に用いられる光の光量よりも少ないことを特徴とする請求項
5ないし
7のうちいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項9】
請求項1ないし
8のうちいずれか1項に記載の光学装置を用いて物体の加工を行う工程と、
前記工程で前記加工を行われた前記物体の処理を行う工程と、を含むことを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置、および、物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工装置等における光走査装置は、対象物上の位置(x、y、z)に方位(θx、θy)から光を集光して照射するように、並進光学系と、集光光学系と、偏向光学系とを含みうる。並進光学系は、当該方位を変更するため、後述の集光光学系に入射する光を並進(平行シフト)させる光学系である(特許文献1)。集光光学系は、対象物上に集光するため、光の焦点位置(z)を変更する光学系である。偏向光学系(走査光学系ともいう)は、例えばミラー等の偏向光学素子を含み、光の照射位置(x、y)を変更する光学系である。これらの光学系のうち特許文献1の並進光学系は、第1反射面と第2反射面とを有する回転可能な反射部材を含む。また、第1反射面で反射された光を複数の反射面で順次反射して第2反射面に入射させる光学系を含む。さらに、反射部材の回転角度を変更することにより、第2反射面で反射されて反射部材を射出する光の光路を調整する調整部を含む。このような構成により、反射部材を射出する光の並進(平行シフト)を実現している。また、当該並進光学系を2組配置することにより、2軸方向において光を並進させることができる。反射部材を射出する光は、集光光学系(集光レンズ)に平行偏心して入射すると、当該偏心の量と集光光学系の焦点距離とによって決まる傾斜角で傾斜した集光光が集光光学系を射出する。当該集光光は、例えば、光加工装置において、物体に照射され、熱的または波動的な効果によって穴開け等の物体の加工に利用されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような光走査装置を用いた光加工装置においては、加工対象物の物体表面が凹凸形状や曲面形状である場合には、物体の表面位置とレーザ光の焦点位置とを正確に一致させることが困難であり、レーザ加工の精度が悪化しうる。
【0005】
本発明は、レーザ光の焦点位置を調整可能な光学装置において、レーザ加工の精度を向上させることを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、対象物にレーザ光を照射して前記対象物を加工する光学装置であって、第1の複数のガルバノミラーを含み、前記第1の複数のガルバノミラーを駆動することにより2つの方向においてレーザ光が対象物に入射する入射角度を調整する第1ガルバノミラー光学系と、可動レンズを含み、前記可動レンズを駆動することにより焦点方向におけるレーザ光の焦点位置を調整する焦点位置調整機構と、第2の複数のガルバノミラーを含み、前記第2の複数のガルバノミラーを駆動することによりレーザ光の焦点方向に垂直な2つの方向においてレーザ光が対象物に入射する入射位置を調整する第2ガルバノミラー光学系と、前記第1ガルバノミラー光学系の第1の複数のガルバノミラーと、前記焦点位置調整機構の可動レンズと、前記第2ガルバノミラー光学系の第2の複数のガルバノミラーの駆動を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1の複数のガルバノミラーの駆動量と前記可動レンズの駆動量に基づき、前記第1の複数のガルバノミラーと前記可動レンズの駆動による前記入射位置のずれ、を補正するように、前記第2の複数のガルバノミラーの駆動を制御する、ことを特徴とする光学装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば、レーザ光の焦点位置を調整可能な光学装置において、レーザ加工の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る光学装置の一部の構成例を示す図である。
【
図2】反射部材の角度を変更する駆動部の構成例を示す図である。
【
図3】光学装置の一部の他の構成例を示す図である。
【
図4】並進光学系を含むレーザ加工装置の構成例を示す図である
【
図5】本実施形態に係るレーザ加工装置の構成例を示す図である。
【
図6】オートフォーカス動作のみが実施された場合のレーザ加工の状態の一例を示す図である。
【
図7】オートフォーカスによる入射位置のずれ量の数値例を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る入射位置ずれの補正処理を示すフロー図である。
【
図9】本実施形態に係るレーザ加工の状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、実施形態を説明するための全図を通して、原則として(断りのない限り)、同一の部材等には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0010】
〔加工装置の実施形態〕
図1は、本実施形態に係る光学装置の一部の構成例を示す図である。本実施形態における光学装置は、出射する光の経路(光路)を制御可能であり、例えば、光線の並進(平行シフト)が可能である。本実施形態の光線平行シフト機構(並進光学系)は、レーザ光源50からの光線51を反射するミラー部材2(反射部材ともいう)を含む。なお、以下の説明では、各反射面が平面とみなせ、光路の並進を行う場合について例示する。ミラー部材2は、例えば、ガラスで構成され、光源50からの光線51を受ける第1反射面2aと、その反対側の第2反射面2bとを有する。第1反射面2a及び第2反射面2bには、それぞれ高反射率を有するコーティングがされている。なお、ミラー部材2は、プリズム状に構成されていてもよいし、第1反射面2aと第2反射面2bとがそれぞれ独立した構成であってもよい。
【0011】
また、ミラー部材2は、光学装置を出射する光の光路を制御(変更)できるように角度可変に構成されている。ここで、
図2は、反射部材(2)の角度を変更する駆動部(1)の構成例を示す図である。図示の如く、ミラー部材2は、(ガルバノ)モータ1(駆動部)の出力軸1aに軸支されている。制御部60は、モータ1に対して駆動信号を出力し、モータ1は、駆動信号に応じた駆動量だけ出力軸1aを介してミラー部材2を回転させる。
このように、ミラー部材2は回転可能(角度可変)に構成されている。ここでは、ミラー部材2は、光源50からの光線51に対して略45度に傾斜している。本明細書では、このようなミラー部材をガルバノミラー光学系という。なお、ミラー部材2が、光学装置を出射する光の光路を制御できるように構成されていればよく、この構成に限られるものではない。
【0012】
図1にもどり、並進光学系は、ミラー部材2によって反射された光を複数の反射面で順次反射してミラー部材2に入射させる光学系80を有する。光学系80は、例えば、光線51に関して線対称になるように固定配置された4個のミラー3,4,5,6(反射面)を含む。ミラー部材2の第1反射面2aにより反射された光は、これらのミラー3,4,5,6により順次反射されて、ミラー部材2の第2反射面2bへと導かれる。最終的に第2反射面2bにより反射されてミラー部材2を射出する光は、光線51の進行方向とは略同一の(略平行な)進行方向を有する。
【0013】
この射出光の角度(進行方向)は、ミラー部材2の回転角度を変更しても変化しない。そのため、制御部60によりミラー部材2の回転角度を制御することにより、第2反射面2bで反射されてミラー部材2を射出する光の経路を調整(並進または平行シフト)させることができる。
【0014】
図3は、光学装置の一部の他の構成例を示す図である。本構成は、
図1で示した構成を組み合わせたものであり、光源50からの光線51を受ける第1並進光学系61と、第1並進光学系61からの射出光を受ける第2並進光学系62とを含む。第1並進光学系61は、光源50からの光線51を反射する角度可変のミラー部材13を有する。また、第1並進光学系61は、ミラー14-1,14-2,14-3,14-4を有する。第2並進光学系62は、第1並進光学系を射出した光線を反射する角度可変のミラー部材15を有する。また、第2並進光学系62は、ミラー16-1,16-2,16-3,16-4を有する。そして、第1並進光学系61のミラー部材13の回転軸63と第2並進光学系62のミラー部材15の回転軸64とは、非平行であるように、例えば直交するように配置されている。
【0015】
第1並進光学系61において、ミラー部材13の第1反射面により反射された入射光は、ミラー14-1,14-2,14-3,14-4により順次反射されて、ミラー部材13の第1反射面とは反対側の第2反射面へと導かれる。第2反射面により反射されてミラー部材13を射出した光は、第2並進光学系62のミラー部材15に入射する。第2並進光学系62において、ミラー部材15の第1反射面により反射された入射光は、ミラー16-1,16-2,16-3,16-4により順次反射されて、ミラー部材15の第1反射面とは反対側の第2反射面へと導かれる。最終的にミラー部材15の第2反射面により反射されてミラー部材15を射出した光は、光線51の進行方向とは略同一の(略平行な)進行方向を有する。なお、
図3に示すように、第1並進光学系61の各ミラーでの反射により形成される光路がなす平面と、第2並進光学系62の各ミラーでの反射により形成される光路がなす平面とが交差するような配置を採用してもよい。このように2つの並進光学系を交差するように配置することにより、光学装置の小型化を実現できる。
【0016】
ここで、以上に説明した並進光学系と、当該並進光学系を射出した光を物体(対象物)に導く(照射する)光学系とを含む加工装置を説明する。
図4は、並進光学系を含むレーザ加工装置の構成例を示す図である。
図4に示すレーザ加工装置は、レーザ光源71の後側(後段)に、
図3を参照して説明した並進光学系17を含む。その後側には、光線拡大光学系を含み、それにより光線の並進量・径を必要な量に拡大する。光線拡大光学系は、集光レンズ18とコリメートレンズ19から構成される。さらに、光線拡大光学系の後側には、集光光学系(集光レンズ22)を含み、それにより、その焦点面に配置された物体23にレーザ光を集光して照射する。また、光線拡大光学系と集光光学系との間に(ガルバノ)ミラー20,21(偏向光学系)を含み、その回転角度の調整により、物体23上の目標とする入射位置(x、y)に光を照射する。つまり、(ガルバノ)ミラー20,21は、光の入射位置を調整する機構であるといえる。(ガルバノ)ミラー20,21は、レーザ光の焦点方向に垂直な方向においてレーザ光が物体23に入射する入射位置を調整する。
【0017】
以上の構成によれば、集光光学系に入射する光線を並進光学系17により平行偏心させることができ、もって、集光光学系を射出して物体23に入射する光線の角度(入射角度)を変更(または調整)することができる。つまり、並進光学系17は、角度調整機構であるといえる。また、光線拡大光学系内の集光レンズ18とコリメートレンズ19の相対間隔を調整することで、物体23に照射される焦点面の位置を変更することができる。その結果、テーパー状の穴の形成や斜めの断面を有する切断等を物体に行うことができる。
【0018】
ここで、本実施形態に係る光学装置としてのレーザ加工装置100について説明する。
図5は、本実施形態に係るレーザ加工装置100の構成例を示す図である。
図5に示すように、レーザ加工装置100は、レーザ光源71からの光線を、上述した並進光学系、光線拡大光学系、偏向光学系、集光光学系を含む光学装置を介して物体に照射することにより、レーザ加工を行う構成となっている。このレーザ光源71として、例えば発振波長が1030nm、周波数100kHz、パルス幅350fs(フェムト秒)、出力100μJ/pulseのフェムト秒固体レーザなどを使用することができる。物体23としては、例えば、ステンレス板(SUS304)などを用いることができる。
【0019】
そして、このレーザ加工装置100は、レーザ光照射により物体23からの反射光を結像させ、この結像光を光量測定手段となるフォトディテクタ24(検出部)により検出する共焦点光学系を備える。なお、ここで、反射光とは、正反射光と散乱光を含む。レーザ光源71より発せられた光線は、集光手段となる集光レンズ25に入射され、この集光レンズ25によって、第1のピンホールマスク26のピンホール内に集光される。このピンホールを経た光線は、コリメートレンズ27を経て、分岐用ミラー28に入射する。分岐用ミラー28を透過した光線は並進光学系、光線拡大光学系、偏向光学系、集光光学系を含む光学装置を介して物体23に照射される。
【0020】
物体23からの反射光は、並進光学系、光線拡大光学系、偏向光学系、集光光学系を含む光学装置を経て、分岐用ミラー28に戻る。分岐用ミラー28に反射された光は、集光レンズ29に入射され、この集光レンズ29によって、第2のピンホールマスク30のピンホール内に集光される。このピンホールを経た光線は、コリメートレンズ31を経て、フォトディテクタ24によって受光される。
【0021】
この共焦点光学系において、第1のピンホールマスク26、および、第2のピンホールマスク30は、分岐用ミラー28を介して共役な位置に配置されている。すなわち、分岐用ミラー28から第1のピンホールマスク26のピンホールまでの光学的距離と、分岐用ミラー28から第2のピンホールマスク30のピンホールまでの光学的距離とは、互いに等しい。
【0022】
そして、物体23は、集光光学系の光軸に対して垂直な平面内において移動可能なXYステージ32上に、吸引保持機構(バキュームチャック)33によって固定されて支持されている。XYステージ32は、X-Y平面が集光光学系の光軸に対して垂直な平面となっており、Z軸が集光光学系の光軸に平行な軸となっている。
【0023】
また、光線拡大光学系に含まれる集光レンズ18は、リニアステージ34上に固定されている。制御部60は、リニアステージ34に対して駆動信号を出力し、リニアステージ34は、駆動信号に応じた駆動量だけ集光レンズ18を光軸方向に移動させる。これにより、物体23に照射される焦点面の位置を変更することができる。つまり、リニアステージ34は、焦点位置調整機構として機能する。また、焦点位置調整機構として、集光光学系に含まれる集光レンズ22を光軸方向に移動する機構を用いてもよい。
【0024】
XYステージ32は、コンピュータ装置35により、ステージコントローラ36を介して制御される。このコンピュータ装置35は、共焦点光学系におけるフォトディテクタ24による反射光量の測定結果(検出結果)に基づいて、焦点調節手段としてのリニアステージ34の動作を、制御部60を介して制御する。コンピュータ装置35は、集光レンズ18を光軸方向に移動させることにより合焦位置の検索を行う。合焦位置としては、フォトディテクタ24によって検出される反射光量が極大となる位置とすることが好ましいが、例えば、閾値以上の反射光量が検出された位置を合焦位置としても良い。
【0025】
すなわち、共焦点光学系におけるフォトディテクタ24により検出される反射光量は、集光レンズ18と物体23との相対距離に対して、極大となる点があり、この極大点が、物体23の表面に対する合焦位置である。そして、コンピュータ装置35は、フォトディテクタ24により検出される反射光量が極大となるように、制御部60を介してリニアステージ34のZ軸を調整するので、オートフォーカス動作が実現される。オートフォーカス動作を、物体23が変化する毎に実施することで、加工精度を向上することができる。また、このような構成とすることにより、レーザ加工装置100では、XYステージ32をZ方向に駆動させる必要がない。
【0026】
なお、フォトディテクタ24によって受光される光、すなわち、焦点位置を決定するための光は、物体23の加工のための光と同じ強度であっても良いが、加工のための光よりも弱い方が好ましい。焦点位置を決定するための光が強いと、物体23が加工されてしまい、加工された状態で検出された光に基づいて焦点位置を調整すると焦点位置がずれてしまう可能性があるためである。
【0027】
しかしながら、オートフォーカス動作を用いてレーザ加工を行う場合、入射角度による入射位置のずれが生じうる。
図6は、オートフォーカス動作のみが実施された場合のレーザ加工の状態の一例を示す図である。例えば、レーザ加工装置100を用いて、円加工を行う場合、入射角度を変更すると入射位置がずれるため、円の大きさが入射角度に応じて変化してしまう。
図6に示すように、入射角度が0°の場合の円を基準とすると、入射角度を+方向に傾けた場合、加工される円は0°の場合よりも小さくなってしまう。一方、入射角度を-方向に傾けた場合、加工される円は0°の場合よりも大きくなってしまう。よって、加工精度が低下しうる。
【0028】
そこで、本実施形態では、焦点位置調整機構による調整量、言い換えると、焦点位置調整機構の駆動量に基づき、入射角度による入射位置のずれに対する補正量を、コンピュータ装置35に内蔵されている演算部37により算出する。つまり、演算部37は、焦点位置調整機構の駆動量と角度調整機構の駆動量に基づいて、入射位置のずれを補正するための補正量を算出する。そして、この補正量に基づいた指令値を制御部60に送り、制御部60からの補正された駆動信号で(ガルバノ)ミラー20,21を駆動させてレーザ加工を行う。即ち、本実施形態において、制御部は60、焦点位置調整機構の駆動量に基づき、焦点位置が変化したことによる入射位置のずれを補正するように、入射位置調整機構の駆動を制御する。
【0029】
焦点位置調整機構の駆動量、即ち、オートフォーカス動作による焦点位置の移動量をΔZ、X方向の入射角度をθx、Y方向の入射角度をθyとすると、X方向の入射位置ずれ量ΔX、Y方向の入射位置ずれ量ΔYは、以下の式で導かれる。
【数1】
【0030】
図7は、オートフォーカスによる入射位置のずれ量の数値例を示す図である。本図は、上述の式を用いて、X方向の入射位置ずれ量ΔX、および、Y方向の入射位置ずれ量ΔYを算出した数値の一例である。
図7(A)は、焦点位置を+100um移動させた場合のX方向の入射位置ずれ量ΔXの一例を示している。
図7(B)は、焦点位置を+100um移動させた場合のY方向の入射位置ずれ量ΔYの一例を示している。例えば、オートフォーカス動作により、焦点位置を+100um移動させた場合、X方向の入射位置ずれ量ΔXは、X方向の入射角度θxが0度の場合は0um、5度の場合は8.75um、10度の場合は17.6umとなる。同様に、Y方向の入射位置ずれ量ΔYは、Y方向の入射角度θyが0度の場合は0um、5度の場合は8.75um、10度の場合は17.6umとなる。
【0031】
したがって、上記入射角度による入射位置ずれ量ΔX、ΔYを算出し、この位置ずれ量の符号を反転させた量が補正量である。このため、この補正量を加味した指令値を制御部60に送り、制御部60から補正された駆動信号で(ガルバノ)ミラー20,21を駆動させてレーザ加工を行うようにすれば良い。
【0032】
図8は、本実施形態に係る入射位置ずれの補正処理を示すフロー図である。まず、制御部60は、焦点位置が変更されたか否かを判定する(S801)。ここで、焦点位置が変更されていない場合(No)、制御部60は、物体23上の目標位置に応じた駆動信号を出力し、(ガルバノ)ミラー20,21を駆動させて(S802)レーザ加工を開始する(S805)。
【0033】
一方、焦点位置が変更されている場合(Yes)、演算部37は、上述の式に基づいて、補正量を算出する(S803)。そして、演算部37は、この補正量に基づいた指令値を制御部60に出力する。なお、このとき、例えば、コンピュータ装置35に内蔵されているメモリなどの記憶部にずれ量に対応する補正量を記憶させておいても良い。この場合、コンピュータ装置35は、記憶部に記憶された、ずれ量に対応する補正量に基づいて、指令値を制御部60に出力する。また、演算部37による算出と、記憶された補正量を併用しても良い。そして、制御部60は、取得した指令値に基づいて、補正された駆動信号を出力し、(ガルバノ)ミラー20,21を駆動させて(S804)レーザ加工を開始する(S805)。
【0034】
図9は、本実施形態に係るレーザ加工の状態の一例を示す図である。本実施形態によれば、入射角度に応じた入射位置の補正が施されているため、
図6と同様円加工を行う場合でも、円の大きさが入射角度によって変化することを低減することができる。よって、円の大きさがいずれの入射角度の場合でも一定となり、精度の良い加工が実現できる。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る加工装置は、加工対象物の物体表面が凹凸形状や曲面形状である場合においても、物体の表面位置とレーザ光の焦点位置の誤差を低減することが可能となり、レーザ加工の精度を向上させることができる。
【0036】
〔物品製造方法に係る実施形態〕
以上に説明した実施形態に係る加工装置は、物品製造方法に使用しうる。当該物品製造方法は、当該加工装置を用いて物体(対象物)の加工を行う工程と、当該工程で加工を行われた物体を処理する工程と、を含みうる。当該処理は、例えば、当該加工とは異なる加工、搬送、検査、選別、組立(組付)、および包装のうちの少なくともいずれか一つを含みうる。本実施形態の物品製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストのうちの少なくとも1つにおいて有利である。
【0037】
〔その他の実施形態〕
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。上述の実施形態では、制御部60とコンピュータ装置35は別体としたが、制御部60がコンピュータ装置35の機能を実現しても良いし、コンピュータ装置35が制御部60の機能を実現しても良い。
【0038】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0039】
17 並進光学系
20,21 (ガルバノ)ミラー
23 物体
24 フォトディテクタ
32 ステージ
35 コンピュータ装置
37 演算部
50,71 レーザ光源
60 制御部
100 レーザ加工装置