IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーインスツル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電気化学セル 図1
  • 特許-電気化学セル 図2
  • 特許-電気化学セル 図3
  • 特許-電気化学セル 図4
  • 特許-電気化学セル 図5
  • 特許-電気化学セル 図6
  • 特許-電気化学セル 図7
  • 特許-電気化学セル 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】電気化学セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240105BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20240105BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20240105BHJP
   H01M 50/463 20210101ALI20240105BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20240105BHJP
   H01M 50/109 20210101ALI20240105BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20240105BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALN20240105BHJP
   H01M 50/586 20210101ALN20240105BHJP
   H01M 50/593 20210101ALN20240105BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01G11/26
H01G11/52
H01M50/463 B
H01M50/105
H01M50/109
H01M50/186
H01M10/0587
H01M50/586
H01M50/593
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019163784
(22)【出願日】2019-09-09
(65)【公開番号】P2021044100
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】木村 長幸
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 俊二
(72)【発明者】
【氏名】田中 和美
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-212506(JP,A)
【文献】特開2016-181464(JP,A)
【文献】特許第6472032(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/39
H01M 6/00- 6/22
H01M50/10-50/198
H01M50/40-50/598
H01G11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交互に積層された正極体および負極体、並びに前記正極体と前記負極体との間に介在するセパレータを有し、前記正極体および前記負極体が前記セパレータを挟んで扁平に捲回された電極構造体と、
前記電極構造体を収容する外装体と、
を備え、
前記電極構造体の平面視の外形は、捲回軸方向に交差する方向に延びる側縁を有し、
前記側縁の少なくとも一部は、平面視で前記捲回軸方向に直交する方向に交差する方向に延び、
前記セパレータは、前記正極体および前記負極体よりも捲回軸方向に張り出した複数層の張り出し部を有し、
前記電極構造体における前記捲回軸方向、および前記電極構造体の厚さ方向に沿う断面上で、前記正極体および前記負極体における前記捲回軸方向の端部を通り前記厚さ方向に延びる基準線を定義し、
前記断面上での前記基準線に対する前記張り出し部の長さを張り出し量と定義した場合、
前記複数層の張り出し部のうち前記断面上で前記厚さ方向に並ぶ少なくとも一部の層の張り出し部は、前記電極構造体の捲回中心側から外周側に向かうに従い前記張り出し量が大きくなるように形成され、
前記複数層の張り出し部は、前記捲回軸方向の外側から見て前記正極体および前記負極体のうち少なくともいずれか一方の端縁に重なっている、
ことを特徴とする電気化学セル。
【請求項2】
前記複数層の張り出し部は、
前記厚さ方向で両端に位置する第1張り出し部および第2張り出し部と、
前記第1張り出し部と前記第2張り出し部との間に位置する中間張り出し部と、
を備え、
前記第1張り出し部および前記第2張り出し部の前記張り出し量は、前記中間張り出し部の前記張り出し量よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記複数層の張り出し部のうち前記中間張り出し部以外の張り出し部は、前記厚さ方向で前記中間張り出し部側に撓んでいる、
ことを特徴とする請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記外装体は、第1容器および第2容器を前記厚さ方向に重ね合わせて形成され、前記第1容器と前記第2容器との間で前記電極構造体を収容する収容部、および前記厚さ方向から見て前記収容部の周囲の全周で前記第1容器と前記第2容器とが互いに重なり合う封止部を有し、
前記中間張り出し部は、捲回軸方向から見て前記封止部の内周縁に重なっている、
ことを特徴とする請求項3に記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記複数層の張り出し部のうち少なくとも1つの層の張り出し部は、撓んだ状態で前記外装体の内面に接触している、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートフォンやウエアラブル機器、補聴器などの小型機器の電源として、リチウムイオン二次電池や電気化学キャパシタ等の電気化学セルが広く活用されている。
このような電気化学セルにおいては、電池容量並びに充電電流および放電電流を大きくする観点から、電気化学セル内で対向している電極同士の面積を大きくすることが必要である。電気化学セルの構造としては、セパレータを介して互い違いに積層された負極電極と正極電極とを備えた電極体をケースに収め、電解液を電極体に含浸させた構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
セパレータは、対向している電極同士のショートを防止するため、電極同士の積層面全体を覆うように電極よりも大きく形成される。その一方で、電気化学セルの体積効率を確保するためには、電極からはみ出したセパレータの寸法をできる限り小さくする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第02/013305号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電極からはみ出したセパレータの寸法をできる限り小さくすると、電極の端縁が露出する可能性がある。電極の端縁が露出すると、他の電極や外装体の金属部等に接触して、内部ショートのリスクが上昇する。したがって、従来技術にあっては、電気化学セルのショートリスクを抑制するという点で改善の余地がある。
【0006】
そこで本発明は、ショートリスクが抑制された電気化学セルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気化学セルは、交互に積層された正極体および負極体、並びに前記正極体と前記負極体との間に介在するセパレータを有し、前記正極体および前記負極体が前記セパレータを挟んで扁平に捲回された電極構造体と、前記電極構造体を収容する外装体と、を備え、前記電極構造体の平面視の外形は、捲回軸方向に交差する方向に延びる側縁を有し、前記側縁の少なくとも一部は、平面視で前記捲回軸方向に直交する方向に交差する方向に延び、前記セパレータは、前記正極体および前記負極体よりも捲回軸方向に張り出した複数層の張り出し部を有し、前記電極構造体における前記捲回軸方向、および前記電極構造体の厚さ方向に沿う断面上で、前記正極体および前記負極体における前記捲回軸方向の端部を通り前記厚さ方向に延びる基準線を定義し、前記断面上での前記基準線に対する前記張り出し部の長さを張り出し量と定義した場合、前記複数層の張り出し部のうち前記断面上で前記厚さ方向に並ぶ少なくとも一部の層の張り出し部は、前記電極構造体の捲回中心側から外周側に向かうに従い前記張り出し量が大きくなるように形成され、前記複数層の張り出し部は、前記捲回軸方向の外側から見て前記正極体および前記負極体のうち少なくともいずれか一方の端縁に重なっている、ことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、セパレータの張り出し部によって正極体および負極体の端縁を捲回軸方向の外側から覆うことができる。このため、電極構造体を捲回軸方向から見た場合に正極体および負極体の端縁が露出することを抑制できる。よって、正極体と負極体との接触、並びに正極体および負極体と外装体との接触を抑制できる。したがって、ショートリスクが抑制された電気化学セルを提供できる。
ここで、電極構造体の製造時において一定の幅を有する帯状のセパレータ用のシート部材を正極体および負極体とともに扁平に捲回する場合には、捲回体の平面視の外形が捲回軸方向に直交する方向に延びる側縁を有する。このため、上記構成のように電極構造体の平面視の側縁が捲回軸方向に交差する方向、かつ捲回軸方向に直交する方向に交差する方向に延びる構成では、電極構造体の製造時に捲回体のセパレータ用のシート部材を切断して、セパレータの張り出し部を成形する必要がある。セパレータ用のシート部材の切断ラインが一直線ではない場合には、切断位置のずれにより正極体および負極体の端縁が電極構造体の平面視の側縁に近接するおそれがある。また、正極体および負極体が巻きずれしている場合には、電極構造体の平面視の側縁が捲回軸方向に直交する方向に延びる構成と比較して、正極体および負極体の端縁が電極構造体の平面視の側縁に近接しやすい。よって、上述したようにセパレータの張り出し部が正極体および負極体の端縁を覆うことで、正極体および負極体の端縁が電極構造体の平面視の側縁に近接していても、ショートリスクの低減を図ることができる。
さらに、正極体および負極体が巻きずれしている場合には、正極体および負極体の端縁は電極構造体の外周側ほど捲回軸方向の外側に位置し得る。上記構成によれば、厚さ方向に並ぶ少なくとも一部の層の張り出し部は、電極構造体の捲回中心側から外周側に向かうに従い張り出し量が大きくなるように形成されているので、正極体および負極体が巻きずれしていても、セパレータの張り出し部によって正極体および負極体の端縁を確実に覆うことができる。
【0009】
上記の電気化学セルにおいて、前記複数層の張り出し部は、前記厚さ方向で両端に位置する第1張り出し部および第2張り出し部と、前記第1張り出し部と前記第2張り出し部との間に位置する中間張り出し部と、を備え、前記第1張り出し部および前記第2張り出し部の前記張り出し量は、前記中間張り出し部の前記張り出し量よりも大きくてもよい。
【0010】
この構成では、中間張り出し部に厚さ方向で隣り合う正極体および負極体の端縁は外装体の内面に捲回軸方向のみで対向し得るのに対し、第1張り出し部に厚さ方向で隣り合う正極体または負極体の端縁、および第2張り出し部に厚さ方向で隣り合う正極体または負極体の端縁は、外装体の内面に捲回軸方向および厚さ方向の2方向で対向し得る。よって、第1張り出し部および第2張り出し部の張り出し量を中間張り出し部の張り出し量よりも大きくすることで、電極構造体において外装体の内面に接触しやすい位置にある正極体または負極体の端縁を確実に覆うことができる。したがって、電気化学セルのショートリスクをより一層抑制できる。
【0011】
上記の電気化学セルにおいて、前記複数層の張り出し部のうち前記中間張り出し部以外の張り出し部は、前記厚さ方向で前記中間張り出し部側に撓んでいてもよい。
【0012】
ここで、仮に中間張り出し部以外の張り出し部が厚さ方向で中間張り出し部とは反対側に撓んでいると、中間張り出し部に隣り合う正極体および負極体の端縁が張り出し部によって覆われない。これに対して上記構成によれば、第1張り出し部および第2張り出し部よりも捲回中心側に位置する全ての正極体および負極体の端縁が中間張り出し部以外の張り出し部によって覆われる。したがって、電気化学セルのショートリスクをより一層抑制できる。
【0013】
上記の電気化学セルにおいて、前記外装体は、第1容器および第2容器を前記厚さ方向に重ね合わせて形成され、前記第1容器と前記第2容器との間で前記電極構造体を収容する収容部、および前記厚さ方向から見て前記収容部の周囲の全周で前記第1容器と前記第2容器とが互いに重なり合う封止部を有し、前記中間張り出し部は、捲回軸方向から見て前記封止部の内周縁に重なっていてもよい。
【0014】
この構成では、中間張り出し部が捲回軸方向から見て封止部の内周縁に重なっているので、中間張り出し部よりも第1張り出し部側の張り出し部は、第1容器および第2容器の一方の内側に配置され、中間張り出し部よりも第2張り出し部側の張り出し部は、第1容器および第2容器の他方の内側に配置される。このため、電極構造体を外装体の収容部に収容する際、中間張り出し部よりも第1張り出し部側の張り出し部には、第1容器および第2容器の一方の内面が中間張り出し部に向けて摺接し、中間張り出し部よりも第2張り出し部側の張り出し部には、第1容器および第2容器の他方の内面が中間張り出し部に向けて摺接する。つまり、電極構造体を外装体の収容部に収容する際、張り出し部の撓む方向に倣って張り出し部に第1容器および第2容器それぞれの内面を摺接させることができる。よって、張り出し部を確実に撓ませて、正極体および負極体の端縁を張り出し部によって確実に覆うことができる。
【0015】
上記の電気化学セルにおいて、前記複数層の張り出し部のうち少なくとも1つの層の張り出し部は、撓んだ状態で前記外装体の内面に接触していてもよい。
【0016】
この構成によれば、張り出し部が撓んだ状態を外装体の内面によって維持できる。したがって、正極体および負極体の端縁を張り出し部によって確実に覆うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ショートリスクが抑制された電気化学セルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態の電池の斜視図である。
図2】実施形態の電池の断面図である。
図3】実施形態の電極構造体の平面図である。
図4図3のIV-IV線における断面図である。
図5】実施形態の正極体の捲回前における展開図である。
図6】実施形態の負極体の捲回前における展開図である。
図7図1のVII-VII線における断面図である。
図8図7に示す電極構造体の断面図であって、張り出し部の撓みを解消した状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。また以下の説明では、電気化学セルとして、非水電解質二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」という。)を例に挙げて説明する。
【0020】
(電池)
図1は、実施形態の電池の斜視図である。図2は、実施形態の電池の断面図である。
図1および図2に示すように、電池1は、平面視円形状のいわゆるボタン形の電池である。電池1は、正極活物質および負極活物質を有する発電要素の電極構造体40と、電極構造体40に含浸される電解液(図示せず)と、電極構造体40を収容する外装体10と、を備える。
【0021】
(外装体)
外装体10は、電池1の外郭を形成している。外装体10は、電極構造体40が収容される収容部11と、収容部11の外周11aに沿って折り曲げられた封止部12と、を備える。封止部12は、例えば絞り成形によって、収容部11の外周11aに沿って折り曲げられている。
【0022】
また、外装体10は、電極構造体40を間に挟む第1容器20および第2容器30を備える。第1容器20および第2容器30は、それぞれラミネートフィルムにより形成されている。ラミネートフィルムは、金属層(金属箔)と、重ね合わせ面(内側面)に設けられ金属層を被覆する樹脂製の融着層と、外側面に設けられ金属層を被覆する樹脂製の保護層と、を有する。金属層は、例えばステンレスやアルミニウム等の外気や水蒸気を遮断する金属材料を用いて形成されている。重ね合わせ面の融着層は、例えば、ポリオレフィンのポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を用いて形成されている。外側面の保護層は、例えば、上述のポリオレフィンや、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等を用いて形成されている。
【0023】
第1容器20は、円形状の第1底壁部21と、第1底壁部21の外周から筒状に延びる第1周壁部22と、第1周壁部22の開口縁から拡径して筒状に延びる第1鍔部23と、を備える。第1底壁部21には、第1貫通孔24が形成されている。例えば、第1貫通孔24は、第1底壁部21の中心に形成されている。
【0024】
第1底壁部21の内面には、第1シーラントリング25を介して銅プレート26が熱融着されている。第1シーラントリング25は、シーラントフィルムをリング状にしたものである。シーラントフィルムは、ポリオレフィンのポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を用いて形成されている。
【0025】
銅プレート26の内面は、後述する負極リード3(図3参照)に接続されている。銅プレート26の外面の中央には、ニッケルプレート27が溶接されている。ニッケルプレート27は、第1貫通孔24を貫通して外部に露出され、電池1の負極端子として機能する。また、銅プレート26に代えて、ニッケル製のプレート材を用いることもできる。この場合、ニッケルプレート27を設けなくてもよい。
【0026】
第1周壁部22は、収容部11の外周11aの一部を形成する。第1鍔部23は、第1周壁部22の開口縁から径方向外方に突出し、さらに略一定の径で第1底壁部21から離れる側に延びている。
【0027】
第2容器30は、円形状の第2底壁部31と、第2底壁部31の外周から筒状に延びる第2周壁部32と、第2周壁部32の開口縁から拡径して筒状に延びる第2鍔部33と、を備える。
【0028】
第2底壁部31は、電極構造体40を挟んで第1容器20の第1底壁部21とは反対側に配置されている。第2底壁部31は、第1容器20の第1底壁部21と略同径に形成されている。第2底壁部31には、第2貫通孔34が形成されている。例えば、第2貫通孔34は、第2底壁部31の中心に形成されている。
【0029】
第2底壁部31の内面には、第2シーラントリング35を介してステンレスプレート36が熱融着されている。第2シーラントリング35は、第1シーラントリング25と同様に、熱可塑性樹脂により形成されている。
【0030】
ステンレスプレート36の内面は、後述する正極リード2(図3参照)に接続されている。ステンレスプレート36の外面の中央には、ニッケルプレート37が溶接されている。ニッケルプレート37は、第2貫通孔34を貫通して外部に露出され、電池1の正極端子として機能する。なお、例えば、ステンレスプレート36に代えて、アルミニウム製のプレート材を用いることもできる。
【0031】
第2周壁部32は、第2底壁部31の外周から第1容器20の第1底壁部21に向けて延びている。第2周壁部32は、第1周壁部22とともに、収容部11の外周11aを形成する。第2鍔部33は、第2周壁部32の開口縁から径方向外方に突出し、さらに略一定の径で第2周壁部32に沿って第2底壁部31側に延びている。第2鍔部33は、第2周壁部32に対して外側に間隔をおいて配置されている。
【0032】
第2周壁部32は、第1鍔部23の内側で、かつ、第2鍔部33の内側に配置されている。また、第2鍔部33は、第1鍔部23の内側に配置されている。第2鍔部33の融着層は、第1鍔部23の融着層に熱融着されている。
【0033】
収容部11は、第1容器20と第2容器30との間で電極構造体40を収容する。具体的に、収容部11は、第1底壁部21、第1周壁部22、第2底壁部31、および第2周壁部32により形成され、平面視で円形状に形成されている。封止部12は、平面視で収容部11の周囲の全周で第1容器20と第2容器30とが重なり合って形成されている。具体的に、封止部12は、第1容器20の第1鍔部23の融着層と、第2容器30の第2鍔部33の融着層と、が熱融着されることにより形成されている。これにより、第1容器20および第2容器30が重ね合わされて外装体10が形成される。封止部12は、外装体10の第1容器20と第2容器30との重ね合わせ方向で、収容部11の中間部から突出している。
【0034】
(電極構造体)
図3は、実施形態の電極構造体の平面図である。図4は、図3のIV-IV線における断面図である。
図3および図4に示すように、電極構造体40は、交互に積層されたシート状の正極体50および負極体60と、正極体50と負極体60との間に介在するシート状のセパレータ70と、を備える。正極体50および負極体60は、セパレータ70を挟んで扁平に捲回されている。正極体50および負極体60は、所定の捲回軸線Oを中心として捲回されている。なお、本実施形態では、正極体50および負極体60が交互に積層された部分を電極構造体40と称し、後述する正極リード2および負極リード3は電極構造体40に含まれないものとする。また、以下の説明では、電極構造体40の厚さ方向を単に厚さ方向といい、捲回軸線Oに沿う方向を軸方向(捲回軸方向)といい、厚さ方向および軸方向に直交する方向を軸直方向という。厚さ方向は、外装体10の第1容器20と第2容器30との重ね合わせ方向に一致している。
【0035】
図3に示すように、電極構造体40は、電極構造体40の厚さ方向から見た平面視で非矩形状に形成されている。具体的に、電極構造体40は、収容部11内の密封空間の形状に対応し、平面視で円形状に形成されている。これにより、電極構造体40の平面視の外形は、軸方向に交差する方向に延びる一対の側縁41を有する。各側縁41は、円弧状に延びている。各側縁41は、中間部を除いて軸直方向に交差する方向に延びている。
【0036】
図5は、実施形態の正極体の捲回前における展開図である。
図5に示すように、正極体50は、捲回される前の展開状態で、全体として帯状に形成されている。正極体50は、金属材料により形成された正極集電箔と、正極集電箔の表面に配置された正極活物質と、を備える。正極集電箔は、例えばアルミニウムやステンレス等の金属箔により形成されている。正極活物質は、例えば、コバルト酸リチウムやチタン酸リチウム、マンガン酸リチウム等のように、リチウムと遷移金属とを含む複合酸化物である。以下、展開状態における正極体50の長手方向を正極長手方向といい、展開状態における正極体50の短手方向を正極短手方向という。
【0037】
正極体50は、正極長手方向に一列に並んで配置された複数の正極本体51と、隣り合う一対の正極本体51を接続する少なくとも1つの正極連結部52と、を有する。複数の正極本体51は、電極構造体40において厚さ方向の垂直面に沿って平坦に延びる部分である。正極連結部52は、電極構造体40の側部において折り返される部分である。図示の例では、正極本体51の数は7個とされ、正極連結部52の数は6個とされている。ただし、正極本体51および正極連結部52の数はこれに限定されるものではなく、適宜変更して構わない。
【0038】
複数の正極本体51は、展開状態で、正極短手方向におけるそれぞれの中心が正極長手方向に沿う同一直線上に位置するように配置されている。各正極本体51は、所定の径の円に対し、正極長手方向における両端部を切り欠いた形状に形成されている。
【0039】
正極連結部52は、正極短手方向で複数の正極本体51よりも内側に位置するように形成されている。すなわち、正極連結部52は、正極短手方向で複数の正極本体51よりも小さく形成されている。正極連結部52の外縁は、平面視で内側に窪む円弧状に延びている。正極連結部52の外縁は、正極本体51の外縁の円弧部に接続している。ただし、正極連結部52の外縁は、必ずしも円弧状に延びていなくてもよく、例えば直線状に延びていてもよい。各正極連結部52における正極長手方向の寸法は、捲回状態で外周側に配置される正極連結部52ほど大きくなっている。これにより、展開状態で隣り合う一対の正極本体51の間隔は、捲回状態で外周側ほど大きくなっている。
【0040】
正極体50の一端部には、正極リード2が接続されている。正極リード2は、上述したステンレスプレート36に接続される部分である。正極リード2は、最外周に配置される正極本体51から正極長手方向に沿って延出している。正極リード2は、正極体50の正極集電箔と同一部材により一体的に形成されている。
【0041】
図6は、実施形態の負極体の捲回前における展開図である。
図6に示すように、負極体60は、捲回される前の展開状態で、全体として帯状に形成されている。負極体60は、金属材料により形成された負極集電箔と、負極集電箔の表面に配置された負極活物質と、を備える。負極集電箔は、例えば銅やステンレス等の金属箔により形成されている。負極活物質は、例えば、シリコン酸化物やグラファイト、ハードカーボン、チタン酸リチウム、LiAl等である。以下、展開状態における負極体60の長手方向を負極長手方向といい、展開状態における負極体60の短手方向を負極短手方向という。
【0042】
負極体60は、負極長手方向に一列に並んで配置された複数の負極本体61と、隣り合う一対の負極本体61を接続する少なくとも1つの負極連結部62と、を有する。複数の負極本体61は、電極構造体40において厚さ方向の垂直面に沿って平坦に延びる部分である。負極連結部62は、電極構造体40の側部において折り返される部分である。図示の例では、負極本体61の数は7個とされ、負極連結部62の数は6個とされている。ただし、負極本体61および負極連結部62の数はこれに限定されるものではなく、適宜変更して構わない。
【0043】
複数の負極本体61は、展開状態で、負極短手方向におけるそれぞれの中心が負極長手方向に沿う同一直線上に位置するように配置されている。各負極本体61は、正極本体51よりも大径の円に対し、負極長手方向における両端部を切り欠いた形状に形成されている。
【0044】
負極連結部62は、負極短手方向で複数の負極本体61よりも内側に位置するように形成されている。すなわち、負極連結部62は、負極短手方向で複数の負極本体61よりも小さく形成されている。負極連結部62の外縁は、平面視で内側に窪む円弧状に延びている。負極連結部62の外縁は、負極本体61の外縁の円弧部に接続している。ただし、負極連結部62の外縁は、必ずしも円弧状に延びていなくてもよく、例えば直線状に延びていてもよい。負極連結部62における負極長手方向の寸法は、捲回状態で外周側に配置される負極連結部62ほど大きくなっている。これにより、展開状態で隣り合う一対の負極本体61の間隔は、捲回状態で外周側ほど大きくなっている。
【0045】
負極体60の一端部には、負極リード3が接続されている。負極リード3は、上述した銅プレート26に接続される部分である。負極リード3は、最外周に配置される負極本体61から負極長手方向に沿って延出している。負極リード3は、負極体60の負極集電箔と同一部材により一体的に形成されている。
【0046】
図3および図4に示すように、正極体50および負極体60は、それぞれの展開状態における短手方向の中心が互いに重なるように配置された状態で捲回されている。複数の正極本体51および複数の負極本体61は、厚さ方向に交互に積層されている。複数の正極本体51および複数の負極本体61は、平面視でそれぞれの中心点が捲回軸線O上で互いに一致するように配置されている。複数の正極連結部52および複数の負極連結部62のそれぞれは、電極構造体40における軸直方向の端部に配置されている。負極体60は、正極体50よりも軸方向の両側に張り出すように配置されている(図7参照)。
【0047】
セパレータ70は、リチウムイオンを通す特性を有する部材である。セパレータ70は、例えば樹脂ポーラスフィルム等により形成されている。セパレータ70を形成する樹脂材料としては、例えばポリプロピレン等のポリオレフィンを用いることができる。セパレータ70は、少なくとも正極体50および負極体60それぞれの内周面全体に重なるように配置されている。これにより、セパレータ70は、正極体50および負極体60の層間全体に配置され、正極体50と負極体60とを絶縁している。
【0048】
図7は、図1のVII-VII線における断面図である。なお、図7では、正極体50、負極体60およびセパレータ70の層数を少なく図示している(以下の断面図でも同様)。
図7に示すように、セパレータ70は、正極体50および負極体60の少なくともいずれか一方に対向する複数層の対向部71と、正極体50および負極体60よりも軸方向の外側に張り出した複数層の張り出し部72と、を有する。複数層の対向部71は、正極本体51および負極本体61の層間に配置された対向部71と、最外周の正極本体51に厚さ方向の外側から重なる対向部71と、最外周の負極本体61に厚さ方向の外側から重なる対向部71と、を備える。対向部71は、正極本体51および負極本体61と平行に配置されている。複数層の張り出し部72のそれぞれは、対向部71に連なっている。なお、複数層の張り出し部72は、正極体50および負極体60を挟んだ軸方向の両側で互いに同様に形成されている。このため、以下の複数層の張り出し部72に関する説明では、正極体50および負極体60よりも軸方向の一方側に張り出した複数層の張り出し部72について説明する。
【0049】
図3に示すように、張り出し部72は、電極構造体40の軸直方向の一端部から他端部にわたって連続的に設けられている。張り出し部72は、平面視で正極体50および負極体60の全体における外縁のうち軸直方向に交差する方向を向く部分(軸方向に交差する方向に延びる部分)に沿って延びている。張り出し部72は、電極構造体40の一対の側縁41を形成している。
【0050】
図8は、図7に示す電極構造体の断面図であって、張り出し部の撓みを解消した状態を示すものである。
ここで、図8に示すように、電極構造体40における軸方向および厚さ方向に沿い捲回軸線Oを含む断面上で基準線Lを定義する。基準線Lは、前記断面上で正極体50および負極体60における軸方向の前記一方側の端部を通り、厚さ方向に延びている。また、前記断面上での基準線Lに対する張り出し部72の長さを張り出し量と定義する。張り出し量は、撓みを解消して軸方向に延びている状態での張り出し部72の端縁から基準線Lまでの寸法である。張り出し量は、張り出し部72の厚さ方向の位置に応じて変化している。
【0051】
複数層の張り出し部72は、厚さ方向で両端に位置する第1張り出し部72Aおよび第2張り出し部72Bと、第1張り出し部72Aおよび第2張り出し部72Bとの間に位置する中間張り出し部72Cと、を備える。本実施形態では、中間張り出し部72Cは、最内周の正極本体51と最内周の負極本体61との間に介在する対向部71から延びている。中間張り出し部72Cは、軸方向から見て外装体10の封止部12の内周縁に重なっている(図7参照)。なお、中間張り出し部72Cは、最内周の正極本体51と最内周の負極本体61との間に介在する対向部71以外の対向部71に連なっていてもよい。
【0052】
第1張り出し部72Aおよび第2張り出し部72Bの張り出し量は、中間張り出し部72Cの張り出し量よりも大きい。第1張り出し部72Aから中間張り出し部72Cにわたって厚さ方向に並ぶ複数層の張り出し部72は、電極構造体40の捲回中心側(捲回軸線O側)から外周側に向かうに従い張り出し量が大きくなるように形成されている。第2張り出し部72Bから中間張り出し部72Cにわたって厚さ方向に並ぶ複数層の張り出し部72は、電極構造体40の捲回中心側から外周側に向かうに従い張り出し量が大きくなるように形成されている。
【0053】
図7に示すように、複数層の張り出し部72のうち中間張り出し部72C以外の張り出し部72は、対向部71に対して厚さ方向に撓んでいる。図示の例では、複数層の張り出し部72のうち中間張り出し部72C以外の張り出し部72は、対向部71に対して厚さ方向で中間張り出し部72C側に撓んでいる。これにより、張り出し部72は、第1容器20の内側では厚さ方向で第1周壁部22の開口縁側に向けて撓み、第2容器30の内側では厚さ方向で第2周壁部32の開口縁側に向けて撓んでいる。例えば、張り出し部72は、セパレータ70を成形する際に、セパレータ70用のシート部材を含む捲回体を剪断することで癖付けされて撓む。撓んだ複数層の張り出し部72のうち少なくとも一部の層の張り出し部72には、外装体10の収容部11の内面が軸方向の外側から接触している。
【0054】
撓んだ張り出し部72は、軸方向の外側から見て、厚さ方向で撓んだ側に隣り合う正極本体51または負極本体61の端縁に重なっている。これにより、撓んだ張り出し部72は、厚さ方向で撓んだ側に隣り合う正極本体51または負極本体61の端縁を軸方向の外側から覆っている。
【0055】
電極構造体40は、例えば第1容器20に電極構造体40を収容した後、第2容器30を電極構造体40に被せることにより、外装体10に収容される。第1容器20に電極構造体40を収容する際、張り出し部72は第1周壁部22の内周面に引き摺られて、対向部71に対して厚さ方向で第1周壁部22の開口側に確実に撓む。第2容器30を電極構造体40に被せる際、張り出し部72は、第2周壁部32の内周面に引き摺られて、対向部71に対して厚さ方向で第2周壁部32の開口側に確実に撓む。
【0056】
以上に説明したように、本実施形態では、セパレータ70の複数層の張り出し部72は、軸方向の外側から見て正極体50および負極体60のうち少なくともいずれか一方の端縁に重なっている。この構成によれば、セパレータ70の張り出し部72によって正極体50および負極体60の端縁を軸方向の外側から覆うことができる。このため、電極構造体40を軸方向から見た場合に正極体50および負極体60の端縁が露出することを抑制できる。よって、正極体50と負極体60との接触、並びに正極体50および負極体60と外装体10との接触を抑制できる。したがって、ショートリスクが抑制された電池1を提供できる。
【0057】
ここで、電極構造体40の製造時において一定の幅を有する帯状のセパレータ70用のシート部材を正極体50および負極体60とともに扁平に捲回する場合には、捲回体の平面視の外形が軸方向に直交する方向に延びる側縁を有する。このため、本実施形態のように電極構造体40の平面視の側縁41が軸方向に交差する方向、かつ軸直方向に交差する方向に延びる構成では、電極構造体40の製造時に捲回体のセパレータ70用のシート部材を切断して、セパレータ70の張り出し部72を成形する必要がある。セパレータ70用のシート部材の切断ラインが一直線ではない場合には、切断位置のずれにより正極体50および負極体60の端縁が電極構造体40の平面視の側縁41に近接するおそれがある。また、正極体50および負極体60が巻きずれしている場合には、電極構造体の平面視の側縁が軸直方向に延びる構成と比較して、正極体50および負極体60の端縁が電極構造体40の平面視の側縁41に近接しやすい。よって、上述したようにセパレータ70の張り出し部72が正極体50および負極体60の端縁を覆うことで、正極体50および負極体60の端縁が電極構造体40の平面視の側縁41に近接していても、ショートリスクの低減を図ることができる。
【0058】
さらに、正極体50および負極体60が巻きずれしている場合には、正極体50および負極体60の端縁は電極構造体40の外周側ほど軸方向の外側に位置し得る。本実施形態によれば、厚さ方向に並ぶ少なくとも一部の層の張り出し部72は、電極構造体40の捲回中心側から外周側に向かうに従い張り出し量が大きくなるように形成されているので、正極体50および負極体60が巻きずれしていても、セパレータ70の張り出し部72によって正極体50および負極体60の端縁を確実に覆うことができる。
【0059】
また、本実施形態では、複数層の張り出し部72は、厚さ方向で両端に位置する第1張り出し部72Aおよび第2張り出し部72Bと、第1張り出し部72Aと第2張り出し部72Bとの間に位置する中間張り出し部72Cと、を備える。この構成では、中間張り出し部72Cに厚さ方向で隣り合う正極本体51および負極本体61の端縁は外装体10の内面に軸方向のみで対向し得るのに対し、第1張り出し部72Aに厚さ方向で隣り合う負極体60の端縁、および第2張り出し部72Bに厚さ方向で隣り合う正極体50の端縁は、外装体10の内面に軸方向および厚さ方向の2方向で対向し得る。
【0060】
そこで、本実施形態では、第1張り出し部72Aおよび第2張り出し部72Bの張り出し量は、中間張り出し部72Cの張り出し量よりも大きい構成とした。これにより、第1張り出し部72Aおよび第2張り出し部72Bの張り出し量を中間張り出し部72Cの張り出し量よりも大きくすることで、電極構造体40において外装体10の内面に接触しやすい位置にある正極本体51または負極本体61の端縁を確実に覆うことができる。したがって、電池1のショートリスクをより一層抑制できる。
【0061】
ここで、仮に中間張り出し部72C以外の張り出し部72が厚さ方向で中間張り出し部72Cとは反対側に撓んでいると、中間張り出し部72Cに隣り合う正極本体51および負極本体61の端縁が張り出し部72によって覆われない。そこで、本実施形態では、複数層の張り出し部72のうち中間張り出し部72C以外の張り出し部72は、厚さ方向で中間張り出し部72C側に撓んでいる構成とした。この構成によれば、第1張り出し部72Aおよび第2張り出し部72Bよりも捲回中心側に位置する全ての正極本体51および負極本体61の端縁が中間張り出し部72C以外の張り出し部72によって覆われる。したがって、電池1のショートリスクをより一層抑制できる。
【0062】
また、本実施形態では、中間張り出し部72Cは、軸方向から見て外装体10の封止部12の内周縁に重なっている。この構成では、中間張り出し部72Cよりも第1張り出し部72A側の張り出し部72は第2容器30の内側に配置され、中間張り出し部72Cよりも第2張り出し部72B側の張り出し部72は第1容器20の内側に配置される。このため、電極構造体40を外装体10の収容部11に収容する際、中間張り出し部72Cよりも第1張り出し部72A側の張り出し部72には、第2容器30の第2周壁部32の内周面が中間張り出し部72Cに向けて摺接し、中間張り出し部72Cよりも第2張り出し部72B側の張り出し部72には、第1容器20の第1周壁部22の内周面が中間張り出し部72Cに向けて摺接する。つまり、電極構造体40を外装体10の収容部11に収容する際、張り出し部72の撓む方向に倣って張り出し部72に第1容器20および第2容器30それぞれの内面を摺接させることができる。よって、張り出し部72を確実に撓ませて、正極本体51および負極本体61の端縁を張り出し部72によって確実に覆うことができる。
【0063】
また、撓んだ複数層の張り出し部72のうち少なくとも一部の層の張り出し部72は、外装体10の収容部11の内面に接触している。この構成によれば、張り出し部72が撓んだ状態を外装体10の内面によって維持できる。したがって、正極本体51および負極本体61の端縁を張り出し部72によって確実に覆うことができる。
【0064】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、電気化学セルの一例として、二次電池を例に挙げて説明したが、これに限らず、電気二重層キャパシタおよび一次電池等に上述した構成を適用してもよい。また、電池としてリチウムイオン二次電池を例に挙げて説明したが、これに限らず、金属リチウム二次電池等のリチウムイオン二次電池以外の二次電池であってもよい。
なお、電気二重層キャパシタに上述した構成を適用する場合、電気二重層キャパシタは機能上正負の区別がない一対の電極を備えるが、一方の電極を上記負極体と同様に構成し、他方の電極を上記正極体と同様に構成すればよい。
【0065】
また、上記実施形態では、複数層の張り出し部72は、電極構造体40の捲回中心側から厚さ方向の両側に向かうに従い張り出し量が大きくなるように形成されている。しかしながら、これに限定されず、複数層の張り出し部は、電極構造体の捲回中心側から厚さ方向の一方に向かうに従い張り出し量が大きくなるとともに、捲回中心側から厚さ方向の他方に向かうに従い張り出し量が小さくなるように形成されていてもよい。つまり、複数層の張り出し部は、厚さ方向の一端に位置する第1張り出し部から、厚さ方向の他端に位置する第2張り出し部に向かうに従い張り出し量が小さくなるように形成されていてもよい。この構成では、負極体60が正極体50よりも軸方向に大きく形成されていることを前提として、第1張り出し部が最外周の負極本体61の端縁を覆うように配置されていることが望ましい。この構成によれば、負極体60が巻きずれした場合に軸方向で最も外側に位置し得る最外周の負極本体61の端縁を、第2張り出し部よりも張り出し量の大きい第1張り出し部によって覆うことができるので、電池のショートリスクの低減を図ることができる。
【0066】
また、上記実施形態では、電極構造体40の製造時に捲回体におけるセパレータ70用のシート部材を剪断してセパレータ70の張り出し部72を成形する方法を説明したが、予め最終形状に成形されたセパレータを正極体50および負極体60とともに捲回してもよい。この場合であっても、複数層の張り出し部72のうち少なくとも一部の層の張り出し部72に、外装体10の収容部11の内面を軸方向の外側から接触させることで、張り出し部72を撓ませることができる。
【0067】
また、上記実施形態では、張り出し部72の張り出し量を、電極構造体40における捲回軸線Oを含む断面上で定義しているが、軸方向および厚さ方向に沿う他の断面上で定義してもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、負極体60が正極体50よりも軸方向の両側に張り出すように、負極体60が正極体50よりも大きく形成されている。しかしながら、正極体および負極体の大小関係はこれに限定されず、例えば正極体および負極体が同形同大に形成されていてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、電極構造体40が平面視で円形状に形成されているが、これに限定されない。電極構造体は、長軸または短軸が軸方向に沿う長円形状や、対角線が軸方向に沿う菱形状に形成されていてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、外装体10の封止部12は、第1容器20と第2容器30との重ね合わせ方向で収容部11の中間部から突出している。しかしながら、外装体は、封止部が第1容器と第2容器との重ね合わせ方向で収容部の端部から突出するように形成されていてもよい。さらに上記実施形態では、外装体10の第1容器20および第2容器30の両方がラミネートフィルムにより形成されている。しかしながらこれに限定されず、第1容器および第2容器の一方が、ステンレスやアルミニウム等からなる金属缶により形成されていてもよい。
【0071】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…電池(電気化学セル) 10…外装体 11…収容部 12…封止部 20…第1容器 30…第2容器 40…電極構造体 41…側縁 50…正極体 60…負極体 70…セパレータ 72…張り出し部 72A…第1張り出し部 72B…第2張り出し部 72C…中間張り出し部 L…基準線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8