(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】太陽電池群及び壁面構造
(51)【国際特許分類】
H01L 31/042 20140101AFI20240105BHJP
【FI】
H01L31/04 500
(21)【出願番号】P 2019164481
(22)【出願日】2019-09-10
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】小泉 玄介
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-308360(JP,A)
【文献】特開2003-344163(JP,A)
【文献】国際公開第2019/161762(WO,A1)
【文献】特開2012-084820(JP,A)
【文献】特開平11-238897(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103218626(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 10/00-99/00
H01L 31/00-31/20
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
総数が20個以上の太陽電池が平面的に配置された太陽電池群であって、
前記太陽電池は、受光面を有し、前記受光面の一部又は全部に反射防止膜が形成されており、
前記太陽電池の中には、前記反射防止膜の厚み又は前記反射防止膜の屈折率が相違することで、色要素にばらつきが生じるものがあり、
直射日光の照射下における前記太陽電池を写真撮影した画像から計算したCIE1976(L*,a*,b*)表色系において、以下の(1)又は(2)の条件を満たす、太陽電池群。
(1)
前記太陽電池群における各太陽電池の明度L*の最大値と最小値の差が3.0以上であって、かつ隣接する太陽電池の明度L*の差が1.5度以下である。
(2)
前記太陽電池群における各太陽電池の色度b*の最大値と最小値の差が5.0以上であり、かつ隣接する太陽電池の色度b*の差が2.5以下である。
【請求項2】
一の太陽電池は、少なくとも3つの太陽電池と隣接して配されており、
直射日光の照射下における前記太陽電池を写真撮影した画像から計算したCIE1976(L*,a*,b*)表色系において、以下の(3)又は(4)の条件を満たす、請求項1に記載の太陽電池群。
(3)前記(1)の条件を満たし、かつ前記一の太陽電池と前記3つの太陽電池との明度L*の差が1.8以下である。
(4)前記(2)の条件を満たし、かつ前記一の太陽電池と前記3つの太陽電池との色度b*の差が2.0以下である。
【請求項3】
前記太陽電池の明度L*及び色度b*は、それぞれ前記太陽電池において複数の測定点で測定した平均値である、請求項1又は2に記載の太陽電池群。
【請求項4】
前記太陽電池は、碁盤状に並べられており、
隣接する太陽電池の最短距離は、5mm以下である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の太陽電池群。
【請求項5】
前記隣接する太陽電池は、一部が重なっている、請求項4に記載の太陽電池群。
【請求項6】
前記太陽電池が配線部材によって電気的に接続された太陽電池モジュールであり、
各太陽電池は、前記受光面とは反対側の面が前記配線部材で接続されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の太陽電池群。
【請求項7】
前記太陽電池は、2つの封止部材に挟まれた複数の太陽電池セルを含む太陽電池モジュールである、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の太陽電池群。
【請求項8】
総数が20個以上の太陽電池モジュールが平面的に配置された壁面構造であって、
前記太陽電池モジュールは、受光面を有し、2つの封止部材の間に太陽電池セルが挟まれたものであり、
前記太陽電池モジュールは、前記受光面側の前記封止部材と前記太陽電池セルの間に反射防止材が介在しており、
前記受光面側の前記封止部材は、透光性を有しており、
前記太陽電池モジュールの中には、前記反射防止材の厚み又は前記反射防止材の屈折率が相違することで、色要素にばらつきが生じるものがあり、
直射日光の照射下における前記太陽電池モジュールを写真撮影した画像から計算したCIE1976(L*,a*,b*)表色系において、以下の(5)又は(6)の条件を満たす、壁面構造。
(5)
前記壁面構造における各太陽電池モジュールの明度L*の最大値と最小値の差が2.0以上であって、かつ隣接する太陽電池モジュールの明度L*の差が1.0度以下である。
(6)
前記壁面構造における各太陽電池モジュールの色度b*の最大値と最小値の差が4.0以上であり、かつ隣接する太陽電池モジュールの色度b*の差が1.5以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池群及び壁面構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、裏面側にのみ電極が設けられ、受光面側に電極を設けない所謂バックコンタクト型の太陽電池セルが知られている(例えば、特許文献1)。
バックコンタクト型の太陽電池セルは、裏面に電極が集約されるため、太陽電池の受光面を大きくでき、より多くの光を取り込むことが可能となっている。
また、バックコンタクト型の太陽電池セルを用いた太陽電池モジュールは、各太陽電池間を接続する配線部材も裏面側に設けられるため、室内等では、視認者に見た目が均一な心証を与えることができる。
【0003】
バックコンタクト型の太陽電池セルは、受光した光を太陽電池セル内に閉じ込めるために、受光面側に反射防止膜を設けており、見た目の色要素が概ね反射防止膜で決まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、量産する太陽電池セルの製造では、多数の太陽電池セルを同一条件で同時に受光面に反射防止膜を製膜する。しかしながら、各太陽電池セルにおいて同一条件で反射防止膜を製膜した場合でも、反射防止膜を製造する際の製膜位置や加熱温度等の影響により、太陽電池セル間でわずかに反射防止膜の厚みが異なったり、反射防止膜の屈折率が異なったりする場合がある。
【0006】
このような場合、ランダムに太陽電池セルを並べて配線部材で接続してモジュール化すると、
図15(a)のように照度の低い室内等ではほとんど感じられないが、
図15(b)のように太陽光が差し込むと色むらが感じられる場合がある。そのため、従来の太陽電池モジュールでは、太陽光のもとで視認したときに、太陽電池セル間で色むらがあり、色のバランスが悪く、色要素の統一性にかけるという問題があった。
【0007】
また、太陽電池モジュールは、複数枚の太陽電池モジュールを使用して一枚の壁面を形成する場合がある。このような場合、各太陽電池モジュールで太陽電池セルの色のバランスが異なると、壁面を形成したときの壁面全体の色のバランスも悪くなり、色要素の統一性にかけるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、太陽光の下で人が視認した場合でも、色要素の統一性が良好であると感じやすい太陽電池群及び壁面構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を受けて以下のように考察した。
上記の課題は、単純に色要素が近い太陽電池セルのみを並べて使用することで色のバランスが良くなり、解決すると思われる。しかしながら、単純に色要素が近い太陽電池セルのみを使用すると、性能に異常がないにも関わらず、使用できない太陽電池セルが発生し、歩留まりが低下してしまう問題が生じる。そのため、歩留まりを維持するためには、できる限り多くの太陽電池セルを使用して太陽電池モジュールを製造することが好ましい。
【0010】
ところで、人間の脳は、目で認識した映像を静止画として認識し、静止画を繋げることによって動きを認識する。そのため、目の錯覚(錯視)があり、色が均一であってもまだらに視えたり、色の分布が均一でなくても均一に見えたりすることがある。
そこで、本発明者は、この人間の目の錯覚を利用して、より多くの太陽電池セルを使用することを考えた。
【0011】
上記の考えのもと、各太陽電池の配置及び各太陽電池の色要素と、人が視認したときに目の錯覚が生じ、色のバランスが良好と感じる配置を鋭意検討し、導き出された本発明の一つの様相は、総数が20個以上の太陽電池が平面的に配置された太陽電池群であって、前記太陽電池は、受光面を有し、前記受光面の一部又は全部に反射防止膜が形成されており、前記太陽電池の中には、前記反射防止膜の厚み又は前記反射防止膜の屈折率が相違することで、色要素にばらつきが生じるものがあり、直射日光の照射下における前記太陽電池を写真撮影した画像から計算したCIE1976(L*,a*,b*)表色系(測定方法の詳細は後述する。本明細書における以降の色度座標の表示は直射日光に相当する条件下で写真撮影した画像から計算した値とする)において、以下の(1)又は(2)の条件を満たす、太陽電池群である。
(1)各太陽電池の明度L*の最大値と最小値の差が3.0以上であって、かつ隣接する太陽電池の明度L*の差が1.5以下である。
(2)各太陽電池の色度b*の最大値と最小値の差が5.0以上であり、かつ隣接する太陽電池の色度b*の差が2.5以下である。
【0012】
本様相の太陽電池群は、各太陽電池の明度L*、色度b*の少なくともいずれかの色要素の絶対値が大きく、太陽電池全体の色要素にばらつきがある。すなわち、単純に並べると、色要素の統一性がなく、色むらが発生するものである。
本様相によれば、太陽電池全体の色要素にばらつきがあっても、隣接する太陽電池の明度L*、色度b*の少なくともいずれかの色要素の差が小さいため、全体としてまとまりのある均質性のあり、色要素の統一性が取れた太陽電池群となる。
【0013】
好ましい様相は、一の太陽電池は、少なくとも3つの太陽電池と隣接して配されており、直射日光の照射下における前記太陽電池を写真撮影した画像から計算したCIE1976(L*,a*,b*)表色系において、以下の(3)又は(4)の条件を満たすことである。
(3)前記(1)の条件を満たし、かつ前記一の太陽電池と前記3つの太陽電池との明度L*の差が1.8以下である。
(4)前記(2)の条件を満たし、かつ前記一の太陽電池と前記3つの太陽電池との色度b*の差が2.0以下である。
【0014】
好ましい様相は、前記太陽電池の明度L*及び色度b*は、それぞれ前記太陽電池において複数の測定点で測定した平均値であることである。
【0015】
好ましい様相は、前記太陽電池は、碁盤状に並べられており、隣接する太陽電池の最短距離は、5mm以下であることである。
【0016】
本様相によれば、隣接する太陽電池の間隔が5mm以下と狭いので、より色のバランスが良好となる。
【0017】
好ましい様相は、前記隣接する太陽電池は、一部が重なっていることである。
【0018】
好ましい様相は、前記太陽電池が配線部材によって電気的に接続された太陽電池モジュールであり、各太陽電池は、前記受光面とは反対側の面が前記配線部材で接続されていることである。
【0019】
好ましい様相は、前記太陽電池は、2つの封止部材に挟まれた複数の太陽電池セルを含む太陽電池モジュールであることである。
【0020】
本発明の一つの様相は、総数が20個以上の太陽電池モジュールが平面的に配置された壁面構造であって、前記太陽電池モジュールは、受光面を有し、2つの封止部材の間に太陽電池セルが挟まれたものであり、前記太陽電池モジュールは、前記受光面側の前記封止部材と前記太陽電池セルの間に反射防止材が介在しており、前記受光面側の前記封止部材は、透光性を有しており、前記太陽電池モジュールの中には、前記反射防止材の厚み又は前記反射防止材の屈折率が相違することで、色要素にばらつきが生じるものがあり、直射日光の照射下における前記太陽電池モジュールを写真撮影した画像から計算したCIE1976(L*,a*,b*)表色系において、以下の(5)又は(6)の条件を満たす、壁面構造である。
(5)各太陽電池モジュールの明度L*の最大値と最小値の差が2.0以上であって、かつ隣接する太陽電池モジュールの明度L*の差が1.0以下である。
(6)各太陽電池モジュールの色度b*の最大値と最小値の差が4.0以上であり、かつ隣接する太陽電池モジュールの色度b*の差が1.5以下である。
【0021】
本様相の壁面構造は、各太陽電池モジュールの明度L*、色度b*の少なくともいずれかの色要素の絶対値が大きく、太陽電池モジュール全体の色要素にばらつきがある。すなわち、単純に並べると、色要素の統一性がなく、色むらが発生するものである。
本様相によれば、太陽電池モジュール全体の色要素にばらつきがあっても、隣接する太陽電池モジュールの明度L*、色度b*の少なくともいずれかの色要素の差が小さいため、全体としてまとまりのある均質性のあり、色要素の統一性が取れた壁面構造となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の太陽電池群及び壁面構造によれば、太陽光の下で人が視認した場合でも、色要素の統一性が良好であると感じやすい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施形態のモジュール製造装置のブロック図である。
【
図2】
図1のモジュール製造装置で製造可能な太陽電池モジュールを模式的に示した説明図であり、(a)は表面側から視た斜視図であり、(b)は裏面側から視た斜視図である。
【
図3】
図2(b)の太陽電池モジュールの分解斜視図である。
【
図4】
図3の太陽電池モジュールの要部の斜視図である。
【
図6】
図1のディープラーニング部の説明図であり、(a)はニューロンのモデルを示す模式図であり、(b)ニューラルネットワークモデルを示す模式図である。
【
図7】
図1の製造部で製造される母集団太陽電池セルと標本太陽電池セルの関係を示す説明図であり、(a)は母集団太陽電池セルの明度に対する個数のグラフであり、(b)は標本太陽電池セルの明度に対する個数のグラフである。
【
図8】
図1の製造部で製造される太陽電池モジュールの太陽電池セルを模した画像であり、(a)は低照度で光を照射した場合、(b)は擬似太陽光で光を照射した場合を表す。
【
図9】本発明の第2実施形態の壁面製造装置のブロック図である。
【
図10】
図9の壁面製造装置で製造可能な壁面構造を模式的に示した斜視図である。
【
図13】本発明の第3実施形態のモジュール製造装置のブロック図である。
【
図14】本発明の他の実施形態の製造装置で製造される太陽電池モジュールの断面図である。
【
図15】従来の太陽電池モジュールの太陽電池セルを模した画像であり、(a)は低照度で光を照射した場合、(b)は擬似太陽光で光を照射した場合を表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第1実施形態のモジュール製造装置1について詳細に説明する。
【0025】
本発明の第1実施形態のモジュール製造装置1は、
図2に示される複数の太陽電池セル201(太陽電池)を内蔵する太陽電池モジュール200(太陽電池群)を製造するものである。
モジュール製造装置1は、
図1のように、製造部2と、制御部3と、測定部5を備えている。
モジュール製造装置1は、制御部3に機械学習プログラムで動作するディープラーニング部20が設けられ、ディープラーニング部20によりあらかじめ機械学習された結果に基づいて太陽電池セル201の配置モデルが生成されるものである。そして、モジュール製造装置1は、生成された配置モデルに従って太陽電池セル201を配置して製造することを特徴の一つとする。
【0026】
製造部2は、
図1のように、主要構成要素として、セル形成部10と、収容部11と、配置操作部12と、配線接続部15を備えている。その他、太陽電池セル201を封止する封止部等の各種装置を備えているが、従来のものと同様であるため、説明を省略する。
【0027】
セル形成部10は、太陽電池セル201を形成する部位であり、CVD装置等の製膜装置を複数備えている。
収容部11は、測定部5で測定された太陽電池セル201を一時的に収容する収容部材である。収容部11は、太陽電池セル201を収容可能な部屋が複数設けられている。
配置操作部12は、制御部3のディープラーニング部20で形成された配置モデルに基づいて収容部11から所定の太陽電池セル201を取り出して配置する部位である。なお、セル形成部10で形成された太陽電池セル201を直接配置してもよい。
配線接続部15は、配置操作部12で所定の配置に並べられた太陽電池セル201,201間に配線部材202を接続する部位である。
【0028】
制御部3は、
図1のように、主要構成要素として、ディープラーニング部20(機械学習部,配置決定装置)と、記憶部21と、測定結果取得部22と、入出力部23を備えている。
制御部3は、製造部2や測定部5と異なる建屋に設けられていてもよい。この場合、制御部3は、製造部2や測定部5とイントラネット等のネットワークを介して通信可能に相互接続されていることが好ましい。また、制御部3は、製造部2や測定部5とインターネット等を介して接続されていてもよい。こうすることで、建屋の異なる複数拠点で製造部2及び測定部5を一括管理することもできる。
【0029】
ディープラーニング部20は、機械学習プログラムに基づいて動作可能な機械学習部である。
ディープラーニング部20は、各太陽電池セル201の色要素及び配置と、人が太陽電池モジュール200の色のバランスを判定した結果を教師データとして自ら機械学習をする機能をもち、機械学習の結果に基づいて、測定結果取得部22で取得した各太陽電池セル201の色要素から人が色のバランスが良好と判定すると予想される太陽電池セル201の配置モデルを作成可能となっている。
ディープラーニング部20は、後述するニューラルネットワーク等のアルゴリズムに則して教師あり学習を行うことが可能となっている。
ここで、「教師あり学習」とは、教師データ、すなわち、ある入力と結果のデータの組を大量にディープラーニング部20に与えることで、それらのデータセットにある特徴を学習し、入力から結果を推定するモデル(誤差モデル)、すなわち、入力と結果の関係性を帰納的に獲得するものである。
【0030】
本実施形態のディープラーニング部20は、各太陽電池セル201の色要素と、太陽電池モジュール200での各太陽電池セル201の配置と、人がその配置での太陽電池モジュール200の色のバランスの判定結果とを紐付けし、太陽電池セル201の色要素及び各太陽電池セル201の配置と、人がどう良否判定をするかとの相関関係を機械学習する。そして、ディープラーニング部20は、機械学習の結果に基づいて、各太陽電池セル201の色要素の情報から人が良好と判定すると予想される配置モデルを生成可能となっている。また、本実施形態のディープラーニング部20では、さらに各太陽電池セル201の色要素の情報から、人が視認したときの太陽電池モジュール200の色のバランスを判定した判定結果を予測可能となっている。
本実施形態のディープラーニング部20の詳細については、後述する。
【0031】
記憶部21は、メモリやハードディスク等の記憶装置を備え、ディープラーニング部20の機械学習で使用したデータや製造部2での太陽電池セル201の製造に用いた過去及び現在の製造パラメータ、測定部5で測定した各太陽電池セル201の発電特性や色要素等の各種測定パラメータ、ディープラーニング部20が生成した配置モデル等を記憶し、蓄積する部位である。
【0032】
測定結果取得部22は、測定部5で測定した発電特性や色要素等の測定結果を取得し、記憶部21及び/又はディープラーニング部20に送信する部位である。
【0033】
入出力部23は、製造部2に対して入出力する部位であり、ディープラーニング部20で生成した配置モデルを製造部2の配置操作部12に出力する部位である。
【0034】
測定部5は、製造部2のセル形成部10で形成された太陽電池セル201の特性を測定する部位であり、発電特性測定部30と、色要素測定部31を備えている。
発電特性測定部30は、太陽電池セル201の発電特性を測定する部位である。
色要素測定部31は、太陽電池セル201の色要素を測定する部位である。
【0035】
続いて、製造対象である太陽電池モジュール200について説明する。
【0036】
太陽電池モジュール200は、
図2,
図3のように、2つの封止基材205,206の間に配線部材202によって電気的に接続された複数の太陽電池セル201が配され、封止基材205,206の間を封止材207,208で充填されたものである。
太陽電池モジュール200は、板状であって、上記した配置モデルに基づいて太陽電池セル201が平面的に配置されたものであり、太陽電池セル201よりも裏面側にのみ配線部材202が設けられたものである。
【0037】
本実施形態の太陽電池モジュール200は、
図2(a)のように、総数が20個以上の太陽電池セル201を内蔵しており、太陽電池セル201が碁盤状に並べられている。
図4に示される太陽電池モジュール200の縦方向及び横方向に隣接する太陽電池セル201,201間の最短距離Lは、それぞれ5mm以下であることが好ましい。
この範囲であれば、密に太陽電池セル201を敷き詰めることができ、設置面積当たりの発電効率を向上できる。
【0038】
本実施形態の太陽電池モジュール200は、
図2(b)のように、裏面221側にモジュール側識別部223を備えている。
モジュール側識別部223は、太陽電池モジュール200ごとに固有のIDを割り当てる部位であり、具体的に一次元コード又は二次元コードである。すなわち、専用の読取装置によってモジュール側識別部223を識別することで少なくとも太陽電池モジュール200に割り当てられたIDを検出可能となっている。
【0039】
太陽電池セル201は、いわゆるバックコンタクト型の太陽電池であり、
図5のように、裏面221側に電極層213,216が設けられ、受光面220側に電極層213,216がないものである。
具体的には、太陽電池セル201は、第1導電型半導体基板210の受光面220側に反射防止膜211(反射防止材)を備えている。一方、太陽電池セル201は、第1導電型半導体基板210の裏面221(受光面220とは反対側の主面)側に第1導電型半導体層212及び第1導電型側電極層213がこの順に積層されている。さらに太陽電池セル201は、第1導電型半導体基板210の裏面221側であって第1導電型半導体層212及び第1導電型側電極層213とは別の部位に第2導電型半導体層215及び第2導電型側電極層216が積層されている。そして、太陽電池セル201の色要素は、受光面220側に設けられた反射防止膜211で実質的に決定されている。
第1導電型半導体層212は、第1導電型半導体基板210と同一の導電型であって第2導電型半導体層215と逆の導電型となっている。すなわち、太陽電池セル201は、第1導電型半導体層212及び第1導電型半導体基板210がn型の場合、第2導電型半導体層215がp型となり、第1導電型半導体層212及び第1導電型半導体基板210がp型の場合、第2導電型半導体層215がn型となる。
【0040】
反射防止膜211は、受光した光を太陽電池セル201内に封じこめる反射封止材である。反射防止膜211は、例えば、窒化シリコン等が使用できる。
【0041】
本実施形態では、太陽電池モジュール200を形成する太陽電池セル201の中に、製造する際の反射防止膜211の製膜位置や加熱温度等の影響により、太陽電池セル201間でわずかに反射防止膜211の厚みや反射防止膜211の屈折率が相違したものが混在している。
【0042】
太陽電池セル201は、
図4のように、裏面221側にセル側識別部217を有している。
セル側識別部217は、固有のIDを割り当てる部位であり、具体的に一次元コード又は二次元コードである。すなわち、専用の読取装置によってセル側識別部217を識別することで少なくとも太陽電池セル201に割り当てられたIDを検出可能となっている。
【0043】
配線部材202は、いわゆるインターコネクタであり、
図3のように、隣接する太陽電池セル201,201間を物理的及び電気的に接続するものである。
【0044】
第1封止基材205は、太陽電池セル201を封止する封止部材であって、透光性及び絶縁性を有する透光性絶縁基板又は透明絶縁シートであり、例えば、ガラス製や透明樹脂製のものが使用できる。
第2封止基材206は、太陽電池セル201を封止する封止部材であって、絶縁性を有する絶縁基板又は絶縁シートであり、例えば、ガラス製や樹脂製のものが使用できる。
【0045】
封止材207,208は、透光性及び接着性を有する透光性接着材であり、例えば、EVA等のシートが使用できる。
【0046】
続いて、太陽電池モジュール200の製造方法について説明する。
【0047】
まず、製造部2のセル形成部10で太陽電池セル201を形成する(太陽電池形成工程,セル形成工程)。
具体的には、
図5から読み取れるように、第1導電型半導体基板210の片面の一部に第1導電型半導体層212及び第1導電型側電極層213をこの順に積層し、同一面の他の部分に第2導電型半導体層215及び第2導電型側電極層216をこの順に積層する。そして、第1導電型半導体基板210の反対の面に反射防止膜211を製膜する。
【0048】
続いて、太陽電池形成工程で形成された各太陽電池セル201に対して、発電特性測定部30によって発電特性を測定しつつ、同時に色要素測定部31によって色要素を測定する(色測定工程)。
本実施形態では、発電特性測定部30によってI-V特性や抵抗などを測定し、色要素測定部31によって各太陽電池セル201の明度を測定する。
【0049】
色測定工程での各太陽電池セル201の測定結果を制御部3の測定結果取得部22に送信し(送信工程)、ディープラーニング部20で各太陽電池セル201の色測定工程での測定結果を各太陽電池セル201のセル側識別部217と紐付けし、記憶部21で記憶する(紐付け工程)。
【0050】
必要に応じて、紐付け工程が終了し、測定結果とセル側識別部217が紐付けされた太陽電池セル201を収容部11に収容する(収容工程)。
このとき、収容部11への収容形態は特に限定されない。製造順に収容部11に入れても良いし、色要素ごとに分別し、色要素ごとに異なる収容部11に入れてもよい。
【0051】
続いて、制御部3のディープラーニング部20は、測定結果取得部22で受信した測定結果に基づいて、太陽電池モジュール200内の太陽電池セル201の配置を決定する(配置決定工程)。
本実施形態では、ディープラーニング部20によって過去の太陽電池モジュール200で測定した各太陽電池セル201の色要素及び各太陽電池セル201の配置と、人が当該過去の太陽電池モジュール200の色のバランスの良否を判定した結果に基づいて、各太陽電池セル201の測定部5での測定結果から、形成する太陽電池モジュール200の色のバランスが良好であると人が判定するように各太陽電池セル201の配置モデルを生成し、太陽電池セル201の配置姿勢を踏まえて配置を決定する。
【0052】
製造部2の配置操作部12は、収容部11から太陽電池セル201を取り出し、配置決定工程でディープラーニング部20により生成された配置モデルに基づいて太陽電池セル201を配置する(配置工程)。
【0053】
配置工程時又は配置工程の後に、隣接する太陽電池セル201,201間に配線部材202を接続していき、各太陽電池セル201を電気的に接続する(配線接続工程)。
このとき、配線部材202は、
図3から読み取れるように、隣接する太陽電池セル201の裏面221側で第1導電型側電極層213と第2導電型側電極層216を接続させる。すなわち、配線部材202は、太陽電池セル201の受光面220側では配線部材202が接続されない状態となっている。
【0054】
その後、適宜、公知の手法にてフレームやコネクター部材等を取り付けて太陽電池モジュール200が完成する。
【0055】
続いて、本実施形態のディープラーニング部20について説明する。
【0056】
ディープラーニング部20は、4層以上のニューラルネットワークに則して学習するものであり、価値関数の近似アルゴリズムとして、
図6(a)のようなニューロンモデルを組み込んだニューラルネットワークを実現する演算装置及びメモリ等で構成されている。
すなわち、ニューロンは、
図6(a)のように、m個の入力x
i(iは正の整数)に対する出力yを出力するものであり、各x
iには、この入力x
iに対応する重みw
iが掛けられ、下記式(1)により表現される出力yを出力する。なお、入力x
i、出力y、及び重みw
iは全てベクトルである。
【0057】
【0058】
ここで、bはバイアスであり、fは活性化関数である。
【0059】
本実施形態のディープラーニング部20のニューラルネットワークは、
図6(b)のように、入力層300と、中間層301と、出力層302を備え、中間層301として上記のニューロン(ニューロンN1~Np)が組み合わせられ、p層(pは4以上の正の整数)の厚みを有する深層ニューラルネットワークである。すなわち、中間層301は、p層の中間層D1~Dpを有している。
本実施形態のニューラルネットワークは、入力層300からS個の入力X(X
1~X
S:Sは、正の整数)が入力され、中間層301を経て、出力層302からT個の結果Y(Y
1~Y
T:Tは、正の整数)が出力される。
【0060】
具体的には、入力層300の入力X(X1~XS)に対して対応する重みW1が掛けられて中間層301の第1中間層D1の各ニューロンN1に入力される。第1中間層D1のニューロンN1は、それぞれ特徴ベクトルZ1を出力し、特徴ベクトルZ1は、中間層301の第2中間層D2の各ニューロンN2に対して、対応する重みW2がかけられて入力される。
【0061】
特徴ベクトルZ1は、重みW1と重みW2との間の特徴ベクトルであり、入力ベクトルの特徴量を抽出したベクトルとみなすことができる。
特徴ベクトルZ1は、中間層301の第2中間層D2の各ニューロンN2に対して、対応する重みW2がかけられて入力される。
第2中間層D2のニューロンN2は、それぞれ特徴ベクトルZ2を出力し、特徴ベクトルZ2は、中間層301の第3中間層D3の各ニューロンN3に対して、対応する重みW3がかけられて入力される。
中間層301の各中間層で上記の処理が繰り返されていき、末端の第P中間層DpのニューロンNpは、それぞれ特徴ベクトルZpを出力し、特徴ベクトルZpは、出力層302に出力される。その結果、ニューラルネットワークは、結果Y(Y1~YT)を出力する。
重みW1~Wpは、誤差逆伝搬法により学習可能なものである。誤差逆伝搬法は、各ニューロンについて、入力xが入力されたときの出力yと真の出力y(教師)との差分を小さくするように、それぞれの重みWを調整(学習)する手法である。
【0062】
続いて、ディープラーニング部20での機械学習の手順について説明する。
【0063】
まず、500個以上の太陽電池セル201(以下、母集団太陽電池セル201aともいう)を製造し、母集団太陽電池セル201aの各太陽電池セル201の色要素の分布を算出する。
本実施形態では、
図7のように、1000個の母集団太陽電池セル201aの各太陽電池セル201の明度の分布を算出する。
【0064】
続いて、
図7のように、母集団太陽電池セル201aの明度分布が実質的に維持されるように、母集団太陽電池セル201aの中から所定数(例えば、30個)の太陽電池セル201(以下、標本太陽電池セル201bともいう)を標本として抽出し、標本太陽電池セル201bをランダムに並べ、太陽電池モジュール200を組み立てる。
【0065】
ここでいう「明度分布が実質的に維持されるように所定数の太陽電池を抽出する」とは、標本たる所定数の太陽電池の色分布を取得したときに色分布の傾向が母集団の色要素の分布の傾向と一致することをいう。
【0066】
ディープラーニング部20の入力層300に、各太陽電池セル201の配置と各太陽電池セル201の色要素を入力し、出力層302から色のバランスの良否の判定結果を取得する。また、別途工程にて人にこの太陽電池モジュール200を視認してもらい、良否判定をしてもらう。
このとき、本実施形態では、人は、明度を判断基準とし、明度のバランスから色のバランスの良否を判定する。
【0067】
ここでいう「色のバランス」とは、均質性だけではなく、太陽電池で図柄や模様を構成した場合には、図柄や模様の色のバランスも含む。
【0068】
そして、ディープラーニング部20の出力層302から取得した良否判定結果と、人が判定した良否判定結果を比較し、良否判定結果の差が一致するように重みを調整し、太陽電池セル201の配置を入れ替えていき、機械学習する。
【0069】
最後に、本実施形態のモジュール製造装置1で製造した太陽電池モジュール200の代表的な物性について説明する。
【0070】
太陽電池モジュール200は、室内等の照度が小さい場所において、
図8(a)のように、全体の明度が低く、全体が均等に見えるものであり、屋外等の照度の大きい場所においても、
図8(b)のように全体的に色むらを感じさせないものである。
【0071】
ここで、物体色の表示方法としてはCIE1976(L*,a*,b*)表色系が一般に使われている。しかし、CIE1976(L*,a*,b*)表色系は物体への照明環境の違いによる見え方の違いを数値化する目的には適していない。
したがって前述のように屋外での直射日光のように照度の大きい条件で特に顕著となる物体の見え方を数値化する目的では使用できない。
【0072】
そこで、発明者は屋外環境における直射日光下での物体色を数値表現する方法を検討した。本明細書における物体色の表示は前記検討の結果を反映したものであり、具体的には以下の条件で測定した数値を用いる。
光源としてソーラシミュレータを用意し、放射強度1000W/m2のAM1.5の光を対象物に垂直照射する。測定装置としてカメラを用意し、対象物に向け正反射光が入らない条件でできるだけ正対する位置に設置する。
【0073】
カメラの設定を以下の通りとし、カメラで対象物のJPEG画像を撮影する。撮影したJPEG画像から対象物の各画素のRGB値を読み出す。読み出したRGB値を光源D65 10°視野の白色点を用いてCIE1976(L*,a*,b*)表色系へ変換する。
【0074】
〔カメラの設定〕
ニコン製デジタルカメラD5500に標準レンズNIKKOR 18-55mm 1:3.5-5.6 GIレンズを装着した状態で絞り8、フィルム感度ISO400、シャッタスピード1/100秒、ホワイトバランス「晴天」、ピクチャーコントロール「スタンダード」、色空間sRGB、アクティブD-ライティングOFF、ハイダイナミックレンジOFFとする。
【0075】
以降に記載するCIE1976(L*,a*,b*)表色系での色度座標は、上記の方法で物体色を数値化した座標とする。
【0076】
太陽電池モジュール200は、直射日光の照射下における太陽電池を写真撮影した画像から計算したCIE1976(L*,a*,b*)表色系において、以下の(1)又は(2)の条件を満たしていることが好ましい。
(1)各太陽電池セル201の明度L*の最大値と最小値の差が3.0以上であって、かつ隣接する太陽電池セル201,201の明度L*の差が1.5以下である。
(2)各太陽電池セル201の色度b*の最大値と最小値の差が5.0以上であり、かつ隣接する太陽電池セル201,201の色度b*の差が2.5以下である。
太陽電池モジュール200は、一の太陽電池セル201を囲むように少なくとも3つの太陽電池セル201と隣接して配されており、一の太陽電池セル201と3つの太陽電池セル201の関係は、CIE1976(L*,a*,b*)表色系において、以下の(3)又は(4)の条件を満たすことが好ましい。
(3)(1)の条件を満たし、かつ一の太陽電池セル201と3つの太陽電池セル201との明度L*の差が1.8以下である。
(4)(2)の条件を満たし、かつ一の太陽電池セル201と3つの太陽電池セル201との色度b*の差が2.0以下である。
なお、明度L*及び色度b*の値は、一つの測定点での値であってもよいし、複数の測定点で測定した平均値であってもよい。
【0077】
上記したように、本実施形態のモジュール製造装置1の製造部2で製造される太陽電池セル201は、同一の製造工程を経て形成される太陽電池セル201であるけれども、反射防止膜211の厚み又は反射防止膜211の屈折率が相違することで、太陽電池セル201,201間に色要素の乱れが生じるものである。
本実施形態のモジュール製造装置1によれば、人の主観による色のバランスの判断をディープラーニング部20で行い、ディープラーニング部20が、上記した太陽電池セル201間のわずかな色要素の乱れを踏まえて、人が太陽電池モジュール200の色のバランスが良好と判定すると予測される配置モデルを生成する。そのため、人の目の錯覚を踏まえた均質感のある太陽電池セル201の配置を設定でき、より多くの太陽電池セル201を太陽電池モジュール200の製造に使用できる。それ故に、単純に色分布が近い物を並べた場合に比べて歩留まりを向上できる。
また、本実施形態のモジュール製造装置1によれば、モジュール製造装置1内で人の感性に近い色のバランスの判定ができるため、太陽電池セル201の配置の自動化も可能である。
【0078】
本実施形態の太陽電池セル201によれば、受光面220とは反対側、すなわち、裏面221側に配線部材202が設けられているため、配線部材202が太陽光等の受光の邪魔にならず、配線部材202が受光面220側に設けられた場合に比べて発電効率を向上できる。
【0079】
本実施形態のモジュール製造装置1によれば、明度のばらつきを色のバランスの判定基準としているので、屋外等の太陽光下において、より色のバランスを良好とでき、より意匠性を向上できる。
【0080】
本実施形態のモジュール製造装置1によれば、傾向が平滑化された母集団太陽電池セル201aの色分布から分布を実質的に維持されるように標本太陽電池セル201bを取得するため、より精度良く機械学習できる。
【0081】
本実施形態の太陽電池モジュール200は、各太陽電池セル201の明度L*、色度b*の少なくともいずれかの色要素の絶対値が大きく、太陽電池セル201全体の色要素にばらつきがある。すなわち、単純に並べると、色要素の統一性がなく、色むらが発生するものである。
本実施形態の太陽電池モジュール200によれば、太陽電池セル201全体の色要素にばらつきがあっても、隣接する太陽電池セル201,201の明度L*、色度b*の少なくともいずれかの色要素の差が小さいため、全体としてまとまりのある均質性のあり、色要素の統一性が取れた太陽電池モジュールとなる。
【0082】
本実施形態の太陽電池モジュール200は、一の太陽電池セル201と、一の太陽電池セル201の各辺に隣接する太陽電池セル201の明度L*、色度b*の少なくともいずれかの色要素の差が小さいため、より色要素の統一性が取れた太陽電池モジュールとなる。
【0083】
本実施形態の太陽電池モジュール200は、太陽電池セル201が碁盤状に並べられており、隣接する太陽電池セル201,201間の間隔が狭いので、より色要素の統一性が取れた太陽電池モジュールとなる。
【0084】
本実施形態の太陽電池モジュール200の製造方法によれば、色要素を測定する色測定工程での測定結果を使用して太陽電池セル201の配置を決定するので、色要素の測定結果に基づいた色のバランスが良好な太陽電池モジュール200を製造できる。
【0085】
本実施形態の太陽電池モジュール200の製造方法によれば、配置決定工程において、過去の太陽電池モジュール200で測定した各太陽電池セル201の色要素と、過去の太陽電池モジュール200の各太陽電池セル201の色のバランスの良否に基づいて、色測定工程での測定結果から各太陽電池セル201の色のバランスが良好となるように太陽電池セル201の配置を決定する。そのため、ランダムに各太陽電池セル201を並べた場合に比べて各太陽電池セル201の色のバランスが良好となる。
【0086】
本実施形態の太陽電池モジュール200の製造方法によれば、配置工程では、配置決定工程でのディープラーニング部20が決定した配置モデルに基づいて、紐付け工程で測定結果に紐付けされた太陽電池セル201を収容部11から取り出して配置する。そのため、収容部11に収容されて一時的にストックされた太陽電池セル201を必要なタイミングで取り出すことができる。
【0087】
本実施形態の太陽電池モジュール200の製造方法によれば、色測定工程において、太陽電池セル201の色要素と発電特性を同時に測定するので、収容部11に入れる前に欠陥品を除外することができ、製造時間を短縮できる。
【0088】
本実施形態の太陽電池モジュール200の製造方法によれば、測定結果に基づいて配置する太陽電池セル201の配置姿勢(どの辺をどの位置を向くようにするか等)を決定する。そのため、より多くの種類の太陽電池セル201を太陽電池モジュール200に使用できる。
【0089】
本実施形態の太陽電池モジュール200の製造方法によれば、色測定工程において、太陽電池セル201の色要素を複数の測定点で測定し、配置決定工程において、色要素の平均値を使用して太陽電池セル201の配置を決定するため、より正確に太陽電池セル201の配置を決定できる。
【0090】
続いて、本発明の第2実施形態の壁面製造装置400について説明する。なお、第1実施形態のモジュール製造装置1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0091】
第2実施形態の壁面製造装置400は、
図10のように、複数の太陽電池モジュール200(太陽電池)を平面的に並べた壁面構造500(太陽電池群)を形成するものである。
壁面製造装置400も第1実施形態でのモジュール製造装置1と同様、ディープラーニング部20を備えており、ディープラーニング部20によりあらかじめ機械学習された結果に基づいて太陽電池モジュール200の配置モデルが生成されるものである。そして、モジュール製造装置1は、生成された配置モデルに従って太陽電池モジュール200を配置して製造することを特徴の一つとする。
すなわち、第1実施形態でのモジュール製造装置1は、ディープラーニング部20で各太陽電池セル201の配置モデルを形成し、太陽電池モジュール200の色のバランスを調整したのに対して、第2実施形態での壁面製造装置400は、ディープラーニング部20で各太陽電池モジュール200の配置を調整して壁面構造500の色のバランスを調整する。
【0092】
壁面製造装置400は、
図9のように、製造部402と、制御部403と、測定部5を備えている。
製造部402は、主要構成要素として、モジュール製造装置1と、配置操作部412を備えている。
【0093】
配置操作部412は、制御部403のディープラーニング部20で形成された配置モデルに基づいて太陽電池モジュール200を配置する部位である。
【0094】
制御部403は、ディープラーニング部20と、記憶部21と、測定結果取得部422と、入出力部23を備えている。
本実施形態のディープラーニング部20は、各太陽電池モジュール200の色要素及び配置と、人が壁面構造500の色のバランスを判定した結果を教師データとして自ら機械学習をする機能をもち、機械学習の結果に基づいて、測定結果取得部422で取得した各太陽電池モジュール200の色要素から人が色のバランスが良好と判定すると予想される太陽電池モジュール200の配置モデルを作成可能となっている。
ディープラーニング部20での機械学習の手順については、第1実施形態の太陽電池セル201が第2実施形態の太陽電池モジュール200となり、第1実施形態の太陽電池モジュール200が第2実施形態の壁面構造500になったこと以外は同様であるため、説明は省略する。
【0095】
測定結果取得部422は、測定部5で測定した発電特性や色要素等の測定結果を取得し、記憶部21及び/又はディープラーニング部20に送信する部位である。
【0096】
本実施形態の測定部5は、製造部402のモジュール製造装置1で形成された太陽電池モジュール200の特性を測定する部位であり、発電特性測定部30と、色要素測定部31を備え、測定部30,31の測定対象が太陽電池モジュール200となっている。
【0097】
続いて、製造対象である壁面構造500について説明する。
【0098】
壁面構造500は、
図11のように複数の太陽電池モジュール200が平面的に配置され、各太陽電池モジュール200が裏面221に設けられたコネクター部材502によって電気的に接続されたものである。本実施形態の壁面構造500は、総数が20個以上の太陽電池モジュール200が碁盤状に並べられている。
【0099】
隣接する太陽電池モジュール200,200間の最短距離は、5cm以下であることが好ましく、2cm以下であることがより好ましく、5mm以下であることが特に好ましい。
この範囲であれば、密に太陽電池モジュール200を敷き詰めることができ、設置面積当たりの発電効率を向上できる。
【0100】
本実施形態の太陽電池モジュール200は、
図12のように、受光面220側の封止基材205に第2反射防止膜501が形成されている。すなわち、本実施形態の太陽電池モジュール200は、受光面220側の封止基材205と太陽電池セル201の間に反射防止膜211が介在しており、さらに太陽電池セル201を基準として受光面220側の封止基材205の外側面に第2反射防止膜501が形成されている。
【0101】
続いて、壁面構造500の製造方法について説明する。
【0102】
まず、製造部402のモジュール製造装置1で太陽電池モジュール200を形成する(太陽電池モジュール形成工程)。
このとき、受光面220側の封止基材205の外側面に第2反射防止膜501を形成する。
【0103】
続いて、太陽電池モジュール形成工程で形成された各太陽電池モジュール200に対して、発電特性測定部30によって発電特性を測定しつつ、同時に色要素測定部31によって色要素を測定する(色測定工程)。
【0104】
色測定工程での太陽電池モジュール200の測定結果を制御部403の測定結果取得部422に送信し(送信工程)、ディープラーニング部20で太陽電池モジュール200の色測定工程での測定結果を各太陽電池モジュール200のモジュール側識別部223と紐付けし、記憶部21で記憶する(紐付け工程)。
【0105】
続いて、制御部403のディープラーニング部20は、測定結果取得部422で受信した測定結果に基づいて、壁面構造500内の太陽電池モジュール200の配置を決定する(配置決定工程)。
具体的には、第1実施形態と同様、ディープラーニング部20によって過去の壁面構造500で測定した各太陽電池モジュール200の色要素及び各太陽電池モジュール200の配置と、人が当該過去の壁面構造500の色のバランスの良否を判定した結果に基づいて、各太陽電池モジュール200の測定部5での測定結果から、形成する壁面構造500の色のバランスが良好であると人が判定するように各太陽電池モジュール200の配置モデルを生成し、配置を決定する。
【0106】
製造部402の配置操作部412は、配置決定工程でディープラーニング部20により生成された配置モデルに基づいて太陽電池モジュール200を配置する(配置工程)。
【0107】
配置工程時又は配置工程の後に、隣接する太陽電池モジュール200,200間を裏面221に設けられたコネクター部材502を接続し、各太陽電池モジュール200を電気的に接続する(コネクター接続工程)。
【0108】
その後、適宜、公知の手法にて桟等を取り付けて壁面構造500が完成する。
【0109】
本実施形態の壁面製造装置400によれば、モジュール製造装置1で製造される太陽電池モジュール200は、同一の製造工程を経て形成される太陽電池モジュール200であるけれども、反射防止膜211,501の厚み又は反射防止膜211,501の屈折率が相違することで、太陽電池モジュール200,200間に色要素の乱れが生じるものである。
本実施形態の壁面製造装置400によれば、人の主観による色のバランスの判断をディープラーニング部20で行い、ディープラーニング部20が、上記した太陽電池モジュール200間のわずかな色要素の乱れを踏まえて、人が壁面構造500の色のバランスが良好と判定すると予測される配置モデルを生成する。そのため、人の目の錯覚を踏まえた均質感のある太陽電池モジュール200の配置を設定でき、より多くの太陽電池モジュール200を壁面構造500の製造に使用できる。それ故に、単純に色分布が近い物を並べた場合に比べて歩留まりを向上できる。
また、本実施形態の壁面製造装置400によれば、壁面製造装置400内で人の感性に近い色のバランスの判定ができるため、太陽電池モジュール200の配置の自動化も可能である。
【0110】
本実施形態の壁面製造装置400によれば、壁面構造500が太陽電池モジュール200を並べて形成されるため、広範囲で色のバランス、特に色要素の統一性が良好となる。
【0111】
本実施形態の壁面構造500は、各太陽電池モジュール200の明度L*、色度b*の少なくともいずれかの色要素の絶対値が大きく、太陽電池モジュール200全体の色要素にばらつきがある。すなわち、単純に並べると、色要素の統一性がなく、色むらが発生するものである。
本実施形態の壁面構造500によれば、太陽電池モジュール200全体の色要素にばらつきがあっても、隣接する太陽電池モジュール200,200の明度L*、色度b*の少なくともいずれかの色要素の差が小さいため、全体としてまとまりのある均質性のあり、色要素の統一性が取れた壁面構造となる。
【0112】
本実施形態の壁面構造500の製造方法によれば、色要素を測定する色測定工程での測定結果を使用して太陽電池モジュール200の配置を決定するので、色要素の測定結果に基づいた色のバランスが良好な壁面構造500を製造できる。
【0113】
続いて、本発明の第3実施形態の製造装置600について説明する。なお、第1,2実施形態の製造装置1,400と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0114】
第3実施形態の製造装置600は、制御部603の構造が第1実施形態の制御部3と異なる。
すなわち、製造装置600の制御部603は、
図13のように、主要構成要素として、ディープラーニング部20(機械学習部)と、記憶部21と、測定結果取得部22と、入出力部23に加えて、第2ディープラーニング部605(第2機械学習部)を備えており、太陽電池セル201の配置モデルを第2ディープラーニング部605が生成する。
第2ディープラーニング部605は、太陽電池モジュール200における各太陽電池セル201の配置を入れ替えて、入れ替えたときの各太陽電池セル201の色要素の情報をディープラーニング部20に与えて太陽電池モジュール200の色のバランスを判定させ、複数の太陽電池セル201の配置とディープラーニング部20が判定した判定結果との相関関係を教師データとして機械学習するものである。
第2ディープラーニング部605は、ディープラーニング部20が太陽電池モジュール200の色のバランスがより良好と判定すると予測される太陽電池セル201の配置モデルを生成可能となっている。
【0115】
第2ディープラーニング部605は、ディープラーニング部20と同様、4層以上のニューラルネットワークに則して学習するものである。第2ディープラーニング部605のニューラルネットワークは、ディープラーニング部20と同様、入力層300と、中間層301と、出力層302を備え、中間層301として上記のニューロン(ニューロンN1~Np)が組み合わせられ、p層(pは4以上の正の整数)の厚みを有する深層ニューラルネットワークである。
【0116】
続いて、第2ディープラーニング部605での機械学習の手順について説明する。
【0117】
まず、母集団太陽電池セル201aを製造し、母集団太陽電池セル201aの各太陽電池セル201の色要素の分布を算出する。
【0118】
続いて、母集団太陽電池セル201aの明度分布が実質的に維持されるように、母集団太陽電池セル201aの中から標本太陽電池セル201bを標本として抽出し、標本太陽電池セル201bをランダムに並べ、太陽電池モジュール200を組み立てる。
第2ディープラーニング部605の入力層300に、各太陽電池セル201の配置と各太陽電池セル201の色要素を入力し、出力層302から色のバランスの良否の判定結果を取得する。また、ディープラーニング部20でこの太陽電池モジュール200について良否判定をする。
そして、第2ディープラーニング部605の出力層302から取得した良否判定結果と、ディープラーニング部20が判定した良否判定結果を比較し、良否判定結果の差が一致するように重みを調整し、太陽電池セル201の配置を入れ替えていき、機械学習する。
【0119】
本実施形態のディープラーニング部20は、あらかじめ太陽電池セル201の色要素及び配置と、人が太陽電池モジュール200の色のバランスを判定した判定結果との相関関係を教師データとして機械学習し、人の主観に近い判定基準をもっている。
本実施形態の製造装置600によれば、人の主観に近いディープラーニング部20による色のバランスの判定を元に第2ディープラーニング部605で機械学習し、人が太陽電池モジュール200の色のバランスが良好と判定すると予測される配置モデルを第2ディープラーニング部605が生成する。そのため、人の目の錯覚を踏まえた配置を設定でき、より多くの太陽電池セル201を太陽電池モジュール200の製造に使用できる。それ故に、単純に色分布が近い物を並べた場合に比べて歩留まりを向上できる。
本実施形態の製造装置600によれば、ディープラーニング部20が第2ディープラーニング部605に教師データを与えるので、人が判定しなくても、第2ディープラーニング部605に教師データを与えることができる。
【0120】
上記した実施形態では、太陽電池セル201として裏面221側に電極層213,216及び配線部材202が設けられたバックコンタクト型の太陽電池セル201を使用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。太陽電池セル201として受光面220側に電極層及び配線部材が設けられた他の種類の太陽電池セルも使用できる。
【0121】
上記した実施形態では、配線部材202によって各太陽電池セル201が電気的に接続されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。
図14のように、太陽電池セル201の電極層213,216同士が直接接触して電気的に接続されてもよい。
【0122】
上記した第1,3実施形態では、太陽電池セル201は、裏面221側にセル側識別部217が設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。受光面220側にセル側識別部217が設けられていてもよい。
【0123】
上記した第1実施形態では、太陽電池セル201は、裏面221側にセル側識別部217が設けられることで各太陽電池セル201を識別していたが、本発明はこれに限定されるものではない。製造ライン上の太陽電池セル201の格納位置等の情報で太陽電池セル201を識別してもよい。この場合、セル側識別部217は、太陽電池セル201上に設けなくてもよい。
【0124】
上記した第2実施形態では、太陽電池モジュール200は、裏面221側にモジュール側識別部223が設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。受光面220側にモジュール側識別部223が設けられていてもよい。
【0125】
上記した第2実施形態では、太陽電池モジュール200は、裏面221側にモジュール側識別部223が設けられることで各太陽電池モジュール200を識別していたが、本発明はこれに限定されるものではない。製造ライン上の太陽電池モジュール200の格納位置等の情報で太陽電池モジュール200を識別してもよい。この場合、モジュール側識別部223は、太陽電池モジュール200上に設けなくてもよい。
【0126】
上記した実施形態では、太陽電池セル201として一導電型である第1導電型半導体基板210と逆導電型である第2導電型半導体層215が直接接合されてpn接合を形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。太陽電池セル201は、第1導電型半導体基板210と第2導電型半導体層215の間に真性半導体層が介在するヘテロ接合型の太陽電池セルであってもよい。この場合、真性半導体層の厚み等により、太陽電池セル201間の見た目の色要素に多少影響を与える場合がある。この場合、ディープラーニング部20は、真性半導体層の影響も踏まえて色バランスが良と判定すると予測される配置モデルを生成することとなる。
【0127】
上記した第1実施形態では、太陽電池セル201の受光面220の全部が反射防止膜211で被覆されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。太陽電池セル201の受光面220の一部が反射防止膜211で被覆されていてもよい。
【0128】
上記した第1実施形態では、人が太陽電池モジュール200の色のバランスについて複数段階で良否を判断したものを教師データとして用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。人が太陽電池モジュール200の色のバランスについて良否のみを判断したものを教師データとして用いてもよい。
【0129】
上記した第2実施形態では、受光面220側の封止基材205の表面に第2反射防止膜501を形成していたが、本発明はこれに限定されるものではない。受光面側の封止基材205の表面に第2反射防止膜501を形成しなくてもよい。
【0130】
上記した第2実施形態では、太陽電池モジュール200として太陽電池セル201がそれぞれ別個独立して設けられ、配線部材202で電気的に接続されて封止基材205,206で封止されたものを用いていたが、本発明はこれに限定されるものではない。太陽電池モジュール200として薄膜太陽電池セルのように層状の各太陽電池セルが封止支持基板上で製膜されたものを用いてもよい。
【0131】
上記した第1,3実施形態では、人やディープラーニング部20が太陽電池モジュール200の色のバランスを判定する際に、明度を基準として色のバランスを判定していたが、本発明はこれに限定されるものではない。人やディープラーニング部20が太陽電池モジュール200の色のバランスを判定する際に、色度を基準として色のバランスを判定してもよい。また、太陽電池セル201間で形成される図柄や模様等を基準に色のバランスを判定してもよい。
同様に、第2実施形態では、人が壁面構造500の色のバランスを判定する際に、明度を基準として色のバランスを判定していたが、本発明はこれに限定されるものではない。人が壁面構造500の色のバランスを判定する際に、色度を基準として色のバランスを判定してもよい。また、太陽電池モジュール200間で形成される図柄や模様等を基準に色のバランスを判定してもよい。
【0132】
上記した実施形態では、本発明の機械学習部や第2機械学習部として4層以上の深層ニューラルネットワークのアルゴリズムに則して学習するディープラーニング部20,605の場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。3層以下のニューラルネットワークのアルゴリズムに則して学習するものであってもよい。
【0133】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【符号の説明】
【0134】
200 太陽電池モジュール
201 太陽電池セル
202 配線部材
205 第1封止基材
206 第2封止基材
207,208 封止材
211 反射防止膜
217 セル側識別部
220 受光面
221 裏面
223 モジュール側識別部
500 壁面構造(太陽電池群)
501 第2反射防止膜
502 コネクター部材