(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】撮像装置、コンピュータプログラムおよび記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G03B 17/00 20210101AFI20240105BHJP
G03B 17/56 20210101ALI20240105BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20240105BHJP
G03B 15/02 20210101ALI20240105BHJP
G03B 15/03 20210101ALI20240105BHJP
G03B 15/05 20210101ALI20240105BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20240105BHJP
G03B 17/18 20210101ALI20240105BHJP
H04N 23/56 20230101ALI20240105BHJP
H04N 23/69 20230101ALI20240105BHJP
H04N 23/695 20230101ALI20240105BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
G03B17/00 X
G03B17/56 A
G03B15/00 S
G03B15/00 Q
G03B15/02 H
G03B15/03 F
G03B15/05
G03B17/02
G03B17/18
G03B15/02 L
H04N23/56
H04N23/69
H04N23/695
H04N7/18 E
(21)【出願番号】P 2019173353
(22)【出願日】2019-09-24
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】内藤 祥子
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-282161(JP,A)
【文献】特開2003-037711(JP,A)
【文献】特開2003-030633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/00
G03B 17/56
G03B 15/00
G03B 15/02
G03B 15/03
G03B 15/05
G03B 17/02
G03B 17/18
H04N 23/56
H04N 23/69
H04N 23/695
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部と、
前記撮像部とは光軸が異なるように配置される照明部と、
前記撮像部と前記照明部を一体で駆動可能な駆動部と、
前記
撮像部の撮影画角を変更可能な画角変更部と、
前記画角変更部と前記駆動部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記照明部が点灯している場合に、指定された撮影範囲の中心点と、前記照明部によって照明される範囲において所定値以上の輝度を有する高輝度点との、撮影画像上における距離が閾値未満になるように前記駆動部を駆動させ、前記駆動部を駆動させた量に応じて撮影画角を広げるように前記画角変更部を制御し、前記駆動部を駆動させた量に応じて広げた撮影画角で撮影された撮影画像から、前記指定された撮影範囲の画像を切り出すことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御部は、所定の角度で前記駆動部を駆動させ、前記中心点と前記高輝度点との前記距離が閾値未満になるまで、前記駆動部と前記画角変更部の制御を繰り返すことを特徴とす
る請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
撮像装置の撮影角度を取得する撮影角度取得部を有し、
前記制御部は、前記撮影角度と、前記指定された撮影範囲を撮影する場合の前記中心点と前記高輝度点の距離に基づいて、前記駆動部を駆動させる量を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記撮像部と前記照明部との配置距離、撮像装置の設置高さ、および、撮像装置の撮影角度を用いて、前記駆動部を駆動させる量を取得し、前記取得結果に応じて前記駆動部を駆動させることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記指定された撮影範囲における撮影角度をθ1と、前記距離が閾値未満となる撮影角度をθ2と、基準点から前記照明部の光軸と被写体面との交点までの距離をHA1と、前記基準点から前記撮像部の光軸と前記被写体面との交点までの距離をHB1として、以下の等式を満たすように前記駆動部を駆動させる量を算出することを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記撮像部と前記照明部の配置距離をあらかじめ記憶する記憶部を有することを特徴とす
る請求項4または5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記制御部は、撮影画像の輝度情報を取得し、前記撮影画像における最も明るい点を前記高輝度点とすることを特徴とす
る請求項1から6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
ユーザーが前記撮影範囲を指定することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記駆動部を駆動させた量に応じて画角を広げる際に、前記照明部の配光角を変化させないことを特徴とす
る請求項1から8のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記中心点と前記高輝度点との前記撮影画像上における距離を閾値未満とする制御を行うか否かを選択可能であることを特徴とす
る請求項1から9のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記照明部が点灯していることを検知した場合に前記中心点と前記高輝度点との前記撮影画像上における距離を閾値未満となるように前記駆動部の制御を行い、前記照明部が消灯していることを検知した場合に、前記中心点と前記高輝度点との前記撮影画像上における距離が閾値未満となるような前記駆動部の制御を行わず、前記中心点を中心とした前記指定された撮影範囲で撮影を行うことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記制御部は、所定の角度以上の撮影角度で撮影していることを検知した場合に、前記中心点と前記高輝度点との前記撮影画像上における距離を閾値未満となるように前記駆動部の制御を行い、前記所定の角度未満の撮影角度で撮影していることを検知した場合に、前記中心点と前記高輝度点との前記撮影画像上における距離が閾値未満となるような前記駆動部の制御を行わず、前記中心点を中心とした前記指定された撮影範囲で撮影を行うことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項13】
撮像部と、前記撮像部とは光軸が異なるように配置される照明部と、前記撮像部と前記照明部を
一体で駆動可能な駆動部と、撮影画角を変更可能な画角変更部と、を有する撮像装置の制御方法であって、
前記照明部が点灯している場合に、指定された撮影範囲の中心点と、前記照明部によって照明される範囲において所定値以上の輝度を有する高輝度点との、撮影画像上における距離が閾値未満になるように前記駆動部と前記照明部を一体で駆動させ、前記駆動部を駆動させた量に応じて撮影画角を広げるように前記画角変更部を制御し、前記駆動部を駆動させた量に応じて広げた撮影画角で撮影された撮影画像から、前記指定された撮影範囲の画像を切り出すことを特徴とする制御方法。
【請求項14】
請求項13に記載の撮像装置の制御方法を、コンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のプログラムを記憶する、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、コンピュータプログラムおよび記憶媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
夜間などの低照度環境下において赤外LEDなどの照明を照射して撮影するために、照明が搭載された撮像装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている撮像装置では撮像部と照明部を同軸上に配置することができないため、撮影時において照明の中央が所望の撮影画面の中央を照らせない。故に、照明の中央から遠い側の撮影画面の周辺領域が暗くなってしまい、適切に撮影できない場合がある。特に、遠方を撮影するために撮像装置の撮影角度が水平方向に近づくほど、照明の中央が撮影画面の中央から離れるため、照明の中央から遠い側の撮影画面の周辺領域の明るさが暗くなり、画像の視認性が低下する。
【0005】
そこで、本発明は、照明部を有する撮像装置において、照度の低下を抑制しつつ、指定された撮影範囲をより広範囲で照明し、撮影画像の視認性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の撮像装置は、撮像部と、前記撮像部とは光軸が異なるように配置される照明部と、前記撮像部と前記照明部を一体で駆動可能な駆動部と、前記撮像部の撮影画角を変更可能な画角変更部と、前記画角変更部と前記駆動部を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記照明部が点灯している場合に、指定された撮影範囲の中心点と、前記照明部によって照明される範囲において所定値以上の輝度を有する高輝度点との、撮影画像上における距離が閾値未満になるように前記駆動部を駆動させ、前記駆動部を駆動させた量に応じて撮影画角を広げるように前記画角変更部を制御し、前記駆動部を駆動させた量に応じて広げた撮影画角で撮影された撮影画像から、前記指定された撮影範囲の画像を切り出すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、照明部を有する撮像装置において、照度の低下を抑制しつつ、指定された撮影範囲をより広範囲で照明し、撮影画像の視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る撮像装置を含む撮像システムを説明する図である。
【
図2】撮像部と照明部の配置構成の例を示す模式図である。
【
図3】信号処理部の内部構造を示すブロック図である。
【
図4】撮像装置の使用状態の一例を示す模式図である。
【
図5】
図4の使用状態において撮影される撮影画面の模式図である。
【
図6】実施例2に係る処理示すフローチャートである。
【
図9】実施例3に係る処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を用いて、本発明の実施形態における撮像装置について説明する。その際、図において同一の機能を有するものは同一の数字を付け、その繰り返しの説明は省略する。なお、実施形態においては、撮像装置としてネットワークカメラに適用した例について説明する。
【0010】
(実施例1)
図1は、本実施形態に係る撮像装置100を含む撮像システム1000を説明する図である。
図1(A)は、本実施形態に係る撮像装置100を含む撮像システム1000の構成を示した模式図である。撮像システム1000は、撮像装置100と、撮像装置100とネットワーク160を介して通信可能なクライアント装置170と、を含む。ネットワーク160は、例えば、有線LAN、無線LAN等により構成されている。撮像装置100は、撮像照明部110、駆動部120、信号処理部130、撮影角度取得部140、ユーザーインターフェース150を有する。
【0011】
撮像照明部110は、撮像部111および照明部113を有する。撮像部111は、例えば、照明部113によって照らされた被写体面からの反射光を集光するレンズと、反射光を電気信号へ変換する撮像素子と、を含む。撮像部111は、撮影倍率を変更させるための光学ズーム部112(画角変更部)を有する。光学ズーム部112は、例えば、ズームモータを用いて変倍レンズを駆動制御することにより撮影画角を変更可能である。
【0012】
照明部113は、LEDなどの照明素子を含み、信号処理部130からの制御信号によって、照明の点灯と消灯、及び照明の配光角の変更が可能である。ここで、配光角の変更とは、例えば、照明素子の前方に備えたレンズを光軸方向に動かして照明部113の光の広がりを変更することで、照射範囲を変更することを言う。配光角を小さくし、照射範囲を狭めるほど、照明部113の照射範囲内の光量を増やすことができる。なお、照明部113がレンズを備えない場合は、照明部113が射出する光の中心軸を光軸とする。
【0013】
駆動部120は、信号処理部130からの制御信号によって、撮像部111と照明部113を同軸で駆動可能である。駆動部120の詳細については、後述する。
【0014】
信号処理部130は、例えば、PCやモニタなどの外部機器(クライアント装置170)と、ネットワーク160を介して接続される。信号処理部130は、例えば、映像信号をクライアント装置170に送信し、クライアント装置170に撮影画像を表示させる。なお、信号処理部130には、コンピュータとしてのCPUが内蔵されており、不図示のメモリに記憶されたコンピュータプログラムに基づき装置全体の各種動作を実行する制御手段として機能する。
【0015】
ユーザーインターフェース150は、ユーザーが指定範囲を指定するのに用いられる。ユーザーインターフェース150によって、ユーザーは撮影範囲を指定することができる。ユーザーインターフェース150は、各種のスイッチや、タッチパネル等を含む。更にはクライアント装置170の表示部173上に表示されるボタンやアイコン等のGUI(グラフィカルユーザインターフェース)を含んでいても良い。ユーザーインターフェース150は、撮像装置100側ではなくクライアント装置170側に配置されてもよい。
【0016】
撮影角度取得部140は、撮像装置の撮影角度を取得する。撮影角度の詳細は、後述する。撮影角度取得部140は、例えば電子水準器などであり、電気的に角度を測定することができる。撮影角度は、ユーザーインターフェース150を用いて、ユーザーが入力してもよい。
【0017】
クライアント装置170は、例えば、PC(パーソナルコンピューター)やタブレット型端末などの外部機器である。クライアント装置170は、例えば、撮像装置100を制御するコマンドを、ネットワーク160を介して撮像装置100に送信する。それを受けて、撮像装置100は、コマンドに対するレスポンスをクライアント装置170に返信する。コマンドとは、例えば撮像照明部110や駆動部120に対する制御等である。
【0018】
クライアント装置170は、制御部171、入力部172、および表示部173を備えうる。制御部171は、クライアント装置170内部の制御を行い、CPU等のコンピュータを内蔵している。また、制御部171は、不図示のメモリを内蔵し、メモリには制御部内のCPUの動作を制御するためのコンピュータプログラムが記憶されている。制御部171は、ユーザーが撮影範囲を指定するためのユーザーインターフェース150を含む画像を表示部173に表示させる表示制御手段(表示制御部)としても機能する。
【0019】
表示部173は、撮像装置100から送られてきた映像信号などを表示するためのものであり、例えば、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイパネル等の表示装置である。例えば、ユーザーが入力部172を用いてユーザーインターフェース150を操作することによって撮像装置100に対して各種の指示をすることができる。
【0020】
入力部172は、例えば、ユーザーからの操作入力を受け付けるタッチパネルやキーボード、マウスなどであって、タッチパネルやキーによってユーザーからの指示や入力を受け付ける。なお、クライアント装置170がタブレット型端末である場合等、入力部172は表示部173としても機能し、表示部173と入力部172は一体となった構造であっても良い。
【0021】
図1(B)は、ユーザーインターフェース150によって、撮影範囲を指定する方法の一例を示す。ここでは、撮像装置100の撮影範囲のデフォルト設定を撮影範囲205とし、クライアント装置170で撮影範囲205を表示しているものとする。ユーザーが表示されている撮影範囲205から所望の撮影範囲206を指定すると、撮影範囲206に対応するように光学ズーム部112と駆動部120が制御され、撮影範囲206が表示される。ここで、撮影範囲206は、指定された撮影範囲である。
【0022】
図2は、撮像部111と照明部113の配置構成の例を示す模式図である。本図では、天井面201に対して設置された撮像装置100に対して、
図2に示すように互いに直行するxyz軸を取る。ここで点Oはxyz軸の原点を示し、駆動部120の駆動軸の原点を示す。
図2(A)は、撮像部111と照明部113がy軸方向で並ぶように配置された場合の構成、
図2(B)は撮像部111と照明部113がx軸方向で並ぶように配置された場合の構成をそれぞれ示す。破線203は、撮像部111の光軸、破線204は照明部113の光軸をそれぞれ示し、
図2(A)(B)のいずれにおいても、撮像部111の光軸と照明部113の光軸は同軸上に重ならないように配置される。言い換えると、撮像部111と照明部113とはそれぞれの光軸が異なるように配置される。
図2(A)に示すように、撮像部111と照明部113がy軸方向で並ぶように配置されている場合、駆動部120は、少なくとも撮像照明部110をx軸に対して回転駆動させる一軸の駆動機構を有する。
図2(B)に示すように、撮像部111と照明部113がx軸方向で並ぶように配置されている場合、駆動部120は、少なくとも撮像照明部110をy軸に対して回転駆動させる一軸の駆動機構を有する。
【0023】
ここで、撮影角度取得部140によって取得される撮影角度について説明する。撮影角度は
図2において、y軸と撮像部111の光軸とがなす角である。
【0024】
図3は、信号処理部130の内部構造を示すブロック図である。信号処理部130は、画像処理部310、制御部320、演算部330、記憶部340を有する。信号処理部130は、撮像部111で変換された電気信号に対して画像処理部310で補正処理や現像処理を行い、処理後の映像信号を出力する。画像処理部310は、輝度取得部311を有し、輝度取得部311は、撮影画像の輝度情報を取得することができる。
【0025】
記憶部340には、ユーザーが入力した撮像装置100の設置高さが記憶されている。設置高さは、
図2において点Oから被写体面202に下した垂線と、被写体面との交点Hまでの距離OHを指す。なお、設置高さの取得方法はユーザー入力に限らない。例えば、撮像装置がピント面調整用のフォーカスレンズを有する場合、フォーカスレンズをレンズの光軸に沿ってウォブリングしながら、画像の解像度を評価することで、点Hにピント面が一致した際のピント面までの距離を求めることで算出してもよい。
【0026】
演算部330は、輝度取得部311で取得された輝度情報に基づいて、特に駆動部120の制御量、言い換えると、駆動部120を駆動させる量(駆動量)を算出する。詳細は後述する。
【0027】
制御部320は、撮像制御部321、照明制御部322、駆動制御部323を有する。制御部320は、演算部330で算出された制御量をもとに、撮像部111、照明部113、駆動部120をそれぞれ制御する。撮像制御部321は、光学ズーム部112を含む撮像部111を制御する。照明制御部322は、照明部113を制御する。駆動制御部323は、駆動部120を制御する。
【0028】
図4は、撮像装置100の使用状態の一例を示す模式図である。また、
図5は、
図4の使用状態において撮影される撮影画面の模式図である。
図4に示す撮像装置100は、一例として、
図2(A)に示したように撮像部111および照明部113がy軸方向に並ぶように配置され、点Oを基準にx軸に対して駆動できるものを想定する。また、撮像部111の光軸と照明部113の光軸が平行であり、これらの光軸は撮像照明部110の撮像部111の撮像面に対して垂直であるものとする。
【0029】
図4(A)には、照明部113の点灯時に、指定された撮影範囲401に撮影画角に合わせて撮影している場合の模式図を示す。
図4(A)では、撮像装置100は天井面201に設置され、撮影角度θ
1で天井面201に対して水平な被写体面202を撮影している。点A
0は照明部113の光軸上の点、点B
0は撮像部111の光軸上の点を示す。点O、点A
0、点B
0は同一直線状にあるとする。点A
1は被写体面202における照明の高輝度点を示し、点B
1は撮影範囲における画角の中心点(以下、注目点B
1)を示す。ここで、高輝度点とは、照明部113によって照明される範囲のうちの所定値以上の輝度を有する点をいう。角度α
1は照明の配光角、角度β
1は画角をそれぞれ示す。
図4(A)で撮影される撮影画面の模式図を
図5(A)に示す。白色の範囲501は照明の照射範囲を示す。
図5(A)に示すように、指定された撮影範囲401に撮影画角を合わせて撮影する場合、注目点B
1に対して高輝度点A
1は手前にあるため、注目点B
1の周辺を十分な照度で照らすことができない。よって、例えば夜間等、照度十分でない環境においては暗くて視認性の悪い範囲が大きくなりうる。
【0030】
一方、本実施形態では注目点B
1の周辺に照明の高輝度点A
1を近づけて撮影する。
図4(B)に本実施形態に係る撮像装置の使用例の模式図、
図5(B)には
図4(B)の場合の撮影画像を示す。注目点B
1を照明の高輝度点A
1が照射するように、言い換えると、注目点B
1と高輝度点A
1とが近づくように撮像照明部110を駆動部120によって駆動角度γだけ駆動させ、撮影角度θ
2で撮影する。具体的には、撮影画像上における注目点B
1と高輝度点A
1との距離(距離A
1B
1)が、閾値未満となるように駆動部120を駆動させる。距離A
1B
1は、例えば、撮影画像の画素数と距離OA
1に基づいて取得することが可能である。また、このとき注目点B
1と高輝度点A
1とが重なるように駆動部120を駆動させることが好ましい。注目点B
1と高輝度点A
1とが近づくように撮像照明部110を駆動すると、
図5(B)に示すように、画角は指定された撮影範囲401から撮影範囲502に移行するため、注目点B
1を撮影できない。そこで、信号処理部130は、指定された撮影範囲401が画角内に入るように、撮像部111の画角を画角β
2に広げ、撮影範囲503で撮影する。
【0031】
以上によって、照明部113の方向と撮像部111の方向を個々に制御しない撮像装置において、ユーザーが指定した撮影範囲の中央に照明の中央が当たるように照らすことで、ユーザーが指定した撮影範囲全体を明るく撮影することが可能になる。
【0032】
従来の撮像装置においては、画角が広いときには照明部の配光角を広げ、画角が狭いときには配光角を狭めるといったように、照明部の配光角は画角に応じて調節されていた。すなわち
図5(A)に示すように指定された撮影範囲401を撮影している場合は、撮影範囲401の画角に対応する配光角で照射する。したがって、本件のように撮影範囲401を画角に入れるために撮影範囲503で撮影できるように画角を広げた際、従来法では
図5(C)に示すように、撮影範囲503の画角に対応するように配光角を広げて照射する。しかしながら、本件において本来撮影したいのは撮影範囲401であり、撮影範囲503に合わせて照射範囲501を広げてしまうと、撮影範囲401に対して光量が落ちてしまう。本件では撮影範囲401を照らせればよいので、配光角はα
1のまま固定させる、つまり、配光角を変化させないことが望ましい。すなわち、本実施形態によれば、ユーザーが指定した撮影範囲の光量を低下させることなく、撮影を行うことができる。
【0033】
なお、撮像部111と照明部113の配置構成は、y軸に対して並ぶように配置される必要はなく、また原点Oに対して点対称に配置される必要もない。また、撮像部111の光軸と照明部113の光軸は、並行である必要はなく、同軸上で一致していない構成であれば成り立つ。本実施形態によれば、照明部113に対して配光角の制御を行う必要がない。さらに、信号処理部130は、輝度取得部311によって取得した撮影画像の輝度情報に基づいて、撮影画像における最も明るい点を高輝度点とすることが望ましい。最も明るい点を高輝度点とすることで、撮影範囲の視認性がより向上する。さらに、照明は複数あってもよく、この場合、複数照明で照らした時の高輝度点を輝度取得部311より検出し、撮影範囲401の中央に近づくように撮像照明部110を制御する。
【0034】
また、設置高さの求め方は、ウォブリングに限らず、測距センサを有していてもよい。信号処理部130から送信される映像信号は、撮像装置100の記憶部340に保存してもよいし、クライアント装置170側に保存してもよい。光学ズーム部112のズーム倍率を小さくして、撮影画角を広げる場合は、撮影範囲の中心点と照明の高輝度点のずれは小さくなるため、照明中心撮影をしなくてもよい。また、撮影範囲の中心点と照明の高輝度点のずれに応じて判断してもよい。
【0035】
撮像装置100のオフセット方向は、任意であり、x軸、y軸、z軸のいずれにおいても任意の角度で回転した方向を向いていてよい。撮像装置100の設置は、天吊りに限らず、壁付けや据え置きでもよい。また、被写体面が水平でない場合でも成り立つ。
【0036】
(実施例2)
実施例1には、ユーザーが指定した撮影範囲の中心(注目点)に照明の高輝度点を近づけ、これに応じて画角を広げる撮影を行う照明中心撮影の方式のみについて述べた。実施例2では、従来の画角中心撮影、即ち、指定された撮影範囲において、注目点と高輝度点とを近づけることなく撮影を行う方式と合わせた2方式を有する場合について説明する。つまり、本実施例では、信号処理部130は、照明中心撮影を行うか否かを選択可能である。
【0037】
図6は、実施例2に係る処理示すフローチャートである。このフローチャートで示す各動作(ステップ)は、信号処理部130よって実行されうる。
(S601)ユーザーが撮像装置100の設置高さを、例えば、入力部172を用いて入力し、記憶部340が撮像装置100の設置高さを記憶する。また、ユーザーは、撮影範囲を指定し、S602に進む。
【0038】
(S602)信号処理部130は、照明中心撮影を行うか否かを選択する。ここで、照明中心撮影することが選択された場合(Yes)、S603に進む。照明中心撮影が選択されない場合(No)はS602を繰り返す。
【0039】
(S603)撮影角度取得部140から撮像装置100の撮影角度θ1を読み出し、S604に進む。
【0040】
(S604)輝度取得部311より、撮影画像から照明の高輝度点A1を取得し、S605に進む。
【0041】
(S605)信号処理部130は、高輝度点A
1と注目点B
1が近づいたか否かを判定する。
図7は、実施例2に係る処理を説明する図である。線分OA
1と線分OHのなす角度701と線分OB
1と線分OHのなす角度702の差分703が閾値φ未満の場合、注目点B
1を照明する光量が十分である、言い換えると、注目点B
1が照明部113によって照らされていると判断して、
処理を終了する。一方、差分703が閾値φ以上の場合は、注目点B
1を照明する光量が不足している、言い換えると、注目点B
1が照明部113によって照らされていないと判断して、S606に進む。ここで、差分703は、撮影画像上においては、高輝度点A
1と注目点B
1との距離であるといえる。
【0042】
(S606)駆動制御部323は、駆動角度γ
1だけ撮像照明部110を駆動させ、S607に進む。駆動角度γ
1は駆動部120の最小ステップにしてもよいし、はじめは数ステップ分駆動させS606の繰り返し数が増えるほどに駆動角度を小さくしてもよい。また、おおよその値を設置高さOH、撮影角度θ
1、高輝度点A
1と注目点B
1の距離A
1B
1より得られる以下の式(1)で算出して、駆動角度γ
1を決定してもよい。距離A
1B
1は、撮影画面の画素数と距離OA
1によって算出可能である。
【数1】
式(1)を用いて、おおよその値を算出することで、S606を繰り返す回数を低減することができる。
【0043】
(S607)撮像制御部321は、駆動部120が駆動された量(ここでは、駆動角度γ1)に応じて撮影画角を広げるように光学ズーム部112を制御し、撮影画角を画角β1から画角β2(=β1+2×γ1)に変更し、S604に戻る。S605で、差分703が閾値φ未満になるまでS604~S607を繰り返す。
【0044】
ここでは、注目点B1に照明の高輝度点を合わせる方法までを説明したが、さらに、画像処理部310によって撮影範囲401を切り出して表示画面に表示させてもよい。撮影範囲401を切り出して表示することで、指定された撮影範囲に合わせた撮影画角で、撮影画像を表示することが可能になり、ユーザーの所望の撮影画像を表示することができる。
【0045】
また、
図6(S602)における本件の照明中心撮影と画角中心撮影の選択は、自動で行っても、ビューワー上にUI(ユーザーインターフェース)を用意してユーザーが手動で行ってもよい。自動で照明中心撮影を選択する場合の条件は複数考えられる。まず、信号処理部130において、照明部113に含まれる赤外照明の消灯を検知した場合は画角中心撮影を選択し、点灯を検知した場合に照明中心撮影を選択する方法がある。
【0046】
また、撮像装置100が、Dayモードと、Nightモードを有し、信号処理部130はDayモードの場合に画角中心撮影を選択し、Nightモードの場合は照明中心撮影を選択してもよい。ここで、Dayモードは、例えば、日中の屋外を撮影するためのモードであって、撮影環境の照度が閾値以上となる場合に設定されるものとしても良い。また、Nightモードは、例えば、夜間の屋外を撮影するためのモードであって、撮影環境の照度が閾値未満となる場合に設定されるものとしても良い。
【0047】
本件は、遠方を撮影している場合に、より効果的である。よって、例えば、信号処理部130において、光学ズーム部112のズーム倍率が上がったこと、言い換えると、ズーム倍率が閾値を超えたことを検知した場合に画角中心撮影から照明中心撮影に切り替えてもよい。また、撮影角度に閾値を設け、閾値以上の角度(所定の角度以上)で撮影する場合に、画角中心撮影から照明中心撮影に切り替え、閾値未満の角度(所定の角度未満)で撮影する場合は、画角中心撮影を行っても良い。
【0048】
さらに、照明の高輝度点と撮影範囲の中心点との角度の差分703に対する閾値φをより大きく設定することで、解像度を担保し、かつ、画角中心撮影よりも照明の照射範囲を広げた撮影を行うことができる。したがって、閾値φを段階的に設けてもよい。また、状況に応じて、段階的に設けた閾値φを選択可能であっても良い。
【0049】
以上によって、照明部113の方向と撮像部111の方向を個々に制御しない撮像装置において、ユーザーが指定した撮影範囲の中央に照明の中央が当たるように照らすことで、ユーザーが指定した撮影範囲全体を明るく撮影することが可能になる。また、不要に撮影画像の解像度が低下することを抑制することができ、撮影画像の視認性がさらに向上する。
【0050】
(実施例3)
上述の実施例では、駆動部120の制御を繰り返すことで、注目点B
1に照明の高輝度点A
1を合わせる方法を記述した。実施例3では、駆動角度γを算出して注目点B
1に照明の高輝度点A
1を合わせる方法を記述する。
図8は、実施例3に係る処理を説明する図である。以下、
図8に示す撮像装置を仮定し、撮影角度θ
1で撮影していた場合において、照明中心撮影に切り替えた際の撮影角度θ
2を算出する方法について説明する。なお、本実施例に係る撮像装置の構成は、実施例1とほぼ同じ構成である。ただし、本実施例において撮像部111と照明部113は回転軸に対して等距離に配置された構成である。
【0051】
点O、点A0、点B0から被写体面202に下した垂線と、被写体面202との交点をそれぞれ点H(基準点)、点A2、点B2とする。また、撮影角度をθと定義し、撮影角度取得部140から取得する。線分A0B0は撮像部111と照明部113の配置距離を示し、あらかじめ記憶部340に記憶しておく。線分OHは撮像装置100の設置高さを示し、ユーザーがあらかじめ入力した値を記憶部340に記憶しておく。なお、設置高さの取得方法はユーザー入力に限らない。
【0052】
以下に、照明中心撮影における撮影角度θ
2の計算方法を説明する。撮影角度θ
2は、点Hを基準としたときの点B
1までの距離(以下、水平撮像距離HB
1(θ))と、点Hを基準としたときの点A
1までの距離(以下、水平照射距離HA
1(θ))を用いて算出できる。水平撮像距離HB
1(θ)は、以下の式(2)で表せる。
【数2】
ここで、線分HB
2(θ)と、線分B
2B
1(θ)はそれぞれ既知の値、線分OB
0、高さOHを用いて以下の式(3)で表せる。
【数3】
次に、水平照射距離HA
1(θ)は以下の式(4)で表せる。
【数4】
ここで、線分HA
2(θ)と、線分A
2A
1(θ)はそれぞれ既知の値、線分OA
0、高さOHを用いて以下の式(5)で表せる。
【数5】
撮影角度θ
1で撮影していた場合、水平照射距離HA
1が水平撮像距離HB
1(θ
1)と同等になる時の角度がθ
2である。したがって、以下の式(6)を計算することでθ
2を算出できる。つまり、演算部330は、以下の等式を満たす撮影角度θ
2を算出する。
【数6】
【0053】
図9は、実施例3に係る処理を示すフローチャートである。このフローチャートで示す各動作(ステップ)は、信号処理部130よって実行されうる。
図9のS601~S603は
図6とほぼ同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0054】
(S904)演算部330は、記憶部340からS901でユーザーが入力した設置高さOHを読み出し、S905に進む。
(S905)演算部330は、あらかじめ記憶部340に記憶されていた、撮像部111と照明部113の配置距離を読み出し、S906に進む。
(S906)演算部330において、読み出した値を用いて照明中心撮影における撮影角度θ2を算出して取得する、S907に進む。
【0055】
(S907)駆動制御部313は駆動部120を制御して、撮影角度θ2になるように、撮像照明部110を回転させ、S908に進む。
(S908)撮像制御部321は光学ズーム部112を制御して、撮影画角を画角β1から画角β2(=β1+2×(θ2-θ1))に変更し、処理を終了する。
本実施例によれば、照明中心撮影を行う場合の処理時間をより短縮することができる。
【0056】
ここでは、照明中心撮影における撮影角度θ2の算出方法を説明したが、あらかじめ撮影角度θごとの照明中心撮影における撮影角度θ2の値を記憶部340に保存しておいて、撮影角度θ1に応じた値を読み出して取得してもよい。この場合、駆動制御部313は、取得結果に応じて、駆動部120を制御する。このようにすることで、処理時間をさらに短縮することが可能となる。
【0057】
(その他の実施例)
以上、本発明をその好適な実施例に基づいて詳述してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨に基づき種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0058】
また、本実施形態における制御の一部または全部を上述した実施例の機能を実現するコンピュータプログラムをネットワーク又は各種記憶媒体を介して撮像装置に供給するようにしてもよい。そしてその撮像装置におけるコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。その場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することとなる。
【符号の説明】
【0059】
100 撮像装置
110 撮像照明部
111 撮像部
112 光学ズーム部(画角変更部)
113 照明部
120 駆動部
130 信号処理部
140 撮影角度取得部
150 ユーザーインターフェース
160 ネットワーク
170 クライアント装置