(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20240105BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20240105BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
G03G15/00 303
B41J29/393 107
H04N1/00 002A
B41J29/393 105
(21)【出願番号】P 2019179334
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】田中 澄斗
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-069606(JP,A)
【文献】特開2014-160988(JP,A)
【文献】特開2005-352366(JP,A)
【文献】特開2001-337496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
B41J 29/393
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成手段と、
前記シートに形成された前記画像を読み取る読取手段と、
前記画像形成手段によりテスト画像を前記シートに形成させ
て前記読取手段による
前記テスト画像の読取結果
に基づき前記画像形成手段により形成される画像の濃度を制御する制御手段と
、を備え、
前記制御手段は、
前記テスト画像が形成されるシートの平滑度に関する情報を取得し、
前記平滑度が所定値よりも低いシートに前記テスト画像が形成される場合に、前記画像形成手段に第1の階調数のテスト画像を形成させ、
前記平滑度が前記所定値よりも高いシートに前記テスト画像が形成される場合に、前記画像形成手段に前記第1の階調数よりも少ない第2の階調数のテスト画像を形成させることを特徴とする、
画像形成装置。
【請求項2】
前記
画像形成手段は、
画像データを変換条件に基づいて変換する変換手段を有し、
前記制御手段は、
前記読取手段による前記テスト画像の読取結果に基づいて前記変換条件を生成することで、前記画像形成手段により形成される画像の濃度を制御することを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記
読取手段は、原稿が載置される原稿台と、前記原稿台に載置された前記原稿を読み取る読取部と、を有し、前記画像形成手段へ前記原稿に関する画像データを出力するリーダであることを特徴とする、
請求項
1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記
画像形成手段は、前記シートに前記画像を定着させる定着手段を有し、
前記読取手段は、前記定着手段よりも、前記シートが搬送される搬送方向下流に設けられることを特徴とする、
請求項
1又は2記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、複合機、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オンデマンド画像形成装置の市場が拡大している。例えば、オフセット印刷市場には、電子写真方式の画像形成装置が広がりつつある。また、ラージフォーマット、低イニシャルコスト、超高速等の理由で幅広い市場開拓に成功したインクジェット方式の画像形成装置がある。しかし市場拡大は容易なものでなく、その市場を担ってきた先行の画像形成装置の画像品質(以下、「画質」と呼ぶ。)を維持しなければならない。
【0003】
画質には、階調性、粒状性、面内一様性、文字品位、色再現性(色安定性を含む)等がある。画質を調整する画像制御方法として、階調性を調整する手法が知られている。階調性は、例えば、画像形成に用いられる像担持体上に階調補正用のテスト画像を形成し、このテスト画像から測定される画像濃度に基づいて調整される。
【0004】
画像形成装置が長期にわたって使用された場合、像担持体上の画像から測定された画像濃度と、実際にシートに形成された画像の画像濃度とが一致しなくなることがある。この場合、シート上に階調補正用のテスト画像を形成し、シート上のテスト画像の画像濃度に基づいて画像形成条件を補正する方法が知られている(特許文献1)。像担持体上のテスト画像が形成される位置は、像担持体上でユーザの所望する画像が形成される領域以外の非画像領域とすることができる(特許文献2)。これにより、ユーザが所望する画像とは別紙にテスト画像を形成する必要がなくなり、ヤレ紙の発生が回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-238341号公報
【文献】特開2014-107648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通り階調性を調整する場合には、テスト画像がシートに形成される。階調性は、シートの種類(特性)により異なる。そのために、多様な種類のシートに対して階調性の調整を行うために、テスト画像をシートの種類毎に形成して階調性を調整する必要がある。これは、階調性の調整に用いられる現像剤の使用量の増加につながる。現像剤は、本来、ユーザが所望する印刷物の生成のために使用されるべきであり、画像形成装置の安定稼働のために使用される現像剤は、できるだけ少ないことが好ましい。そのために、テスト画像をできるだけ小さくすることが望ましい。
【0007】
しかしながら、画像が形成されるシートには、エンボス紙や型押し紙のように表面に凹凸が形成された平滑度(平滑性)の低い紙がある。このような表面性のシートは、像担持体から画像が転写されにくい性質を有する。例えばシートの表面に高さ数10[μm]以上の凹凸がある場合、シートの凹み部分では像担持体とシートとが接触できずに空隙が形成されることがある。この空隙によりシートへの画像の転写が正常に行われない。これは、例えば導電性ゴムローラ等で構成される転写部材によりシートを押圧しながら、バイアス電圧の印加により転写を行う構成であっても発生することがある。画像の転写が正常に行われない場合、画像抜けや濃度ムラといった画質の低下が発生する。また画像を形成するシートに再生紙が用いられることがある。再生紙は、不純物が多いために抵抗ムラが大きく、転写性がよくないために、画像内のムラが大きい。これらの理由から、シートの種類によっては、テスト画像を小さくすると、テスト画像自体の画質の低下により、階調性等の画質の調整が高精度に行えないことがある。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑み、現像剤の使用量を抑えつつ高精度な画質調整が可能な画像形成装置を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画像形成装置は、シートに画像を形成する画像形成手段と、前記シートに形成された前記画像を読み取る読取手段と、前記画像形成手段によりテスト画像を前記シートに形成させて前記読取手段による前記テスト画像の読取結果に基づき前記画像形成手段により形成される画像の濃度を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記テスト画像が形成されるシートの平滑度に関する情報を取得し、前記平滑度が所定値よりも低いシートに前記テスト画像が形成される場合に、前記画像形成手段に第1の階調数のテスト画像を形成させ、前記平滑度が前記所定値よりも高いシートに前記テスト画像が形成される場合に、前記画像形成手段に前記第1の階調数よりも少ない第2の階調数のテスト画像を形成させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、現像剤の使用量を抑えつつ高精度な画質調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図8】シートの種類(特性)とパッチ画像のサイズとの関係の説明図。
【
図10】テスト画像の選択処理を表すフローチャート。
【
図12】インラインでテストチャートを読み取る画像形成装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成要素の相対配置、数式、数値等は、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
(全体構成)
図1は、画像形成装置の構成図である。本実施形態の画像形成装置は、リーダ部A及びプリンタ部Bを備える。リーダ部Aは、原稿画像を読み取る画像読取装置である。プリンタ部Bは、例えばリーダ部Aが読み取った原稿画像に応じた画像を紙等のシート6に印刷する。
【0014】
(リーダ部)
リーダ部Aは、原稿101が載置される原稿台ガラス102、原稿台ガラス102上の原稿101に光を照射する光源103、光学系104、受光部105、及びリーダ画像処理部108を備える。原稿台ガラス102上には、つき当て部材107及び基準白色板106が配置される。つき当て部材107は、原稿101を正しい位置に載置するために用いられる。基準白色板106は、受光部105の白レベル決定及びシェーディング補正に用いられる。
【0015】
光源103は、原稿台ガラス102に載置される原稿101を照射する。受光部105は、光源103から照射された光の原稿101による反射光を、光学系104を介して受光する。受光部105は、受光した反射光に基づいてR(赤)、G(緑)、B(青)の各色を表す電気信号である色成分信号を生成し、リーダ画像処理部108に送信する。このような受光部105は、例えば受光素子としてCCD(Charge Coupled Device)センサを備える。例えば受光部105は、R、G、Bの各色に対応して3列に配列されたCCDラインセンサを備え、各CCDラインセンサで受光した反射光に基づいてR、G、Bのそれぞれの色成分信号を生成する。光源103、光学系104、及び受光部105は一体に構成された読取ユニットであり、図中左右方向に移動可能である。受光部105のCCDラインセンサは、複数のCCDセンサが
図1の奥行き方向にならぶ。そのために読取ユニットは、
図1の奥行き方向を1ラインとし、移動することで原稿101の全体を1ラインずつ順次読み取って、ライン毎の色成分信号を生成する。
図1の奥行き方向がリーダ部Aの主走査方向となる。
【0016】
リーダ画像処理部108は、各色の色成分信号に対する画像処理を行い、原稿101の画像を表す画像データを生成する。リーダ画像処理部108は、生成した画像データをプリンタ部Bに送信する。
【0017】
(プリンタ部)
プリンタ部Bは、紙等のシート6への画像形成のために、像担持体である感光ドラム4、帯電器8、現像器3、クリーナ9、中間転写体5、定着器7、レーザ光源110、ポリゴンミラー1、ミラー2、及びプリンタ制御部109を備える。感光ドラム4の周囲には、表面電位センサ12及びフォトセンサ40が設けられる。
【0018】
感光ドラム4は、ドラム形状の感光体であり、画像形成の際に図中時計回りに回転する。帯電器8は、例えばコロナ帯電器であり、回転中の感光ドラム4にバイアス電圧を印加することで、感光ドラム4の表面を一様に帯電する。レーザ光源110は、プリンタ制御部109の制御により、帯電された感光ドラム4の表面に静電潜像を形成する。プリンタ制御部109は、リーダ部Aのリーダ画像処理部108から画像データを取得し、この画像データに基づいてレーザ光源110から出射されるレーザ光の明滅を制御する。なお、プリンタ制御部109は、パーソナルコンピュータ等の外部装置から画像データを取得した場合、取得した画像データに基づいてレーザ光源110から出射されるレーザ光の明滅を制御する。レーザ光源110から出射されたレーザ光は、ポリゴンミラー1及びミラー2を介して、一様に帯電された感光ドラム4上を照射する。レーザ光は、ポリゴンミラー1の回転により偏向角が変化することで、感光ドラム4を走査する。レーザ光は、感光ドラム4の回転方向に直交する方向(
図1の奥行き方向)を主走査方向として、感光ドラム4の表面を走査する。回転中の感光ドラム4をレーザ光が走査することで、感光ドラム4の表面に、画像データに基づく1ページ分の静電潜像が形成される。
【0019】
現像器3は、感光ドラム4に形成された静電潜像を現像剤(トナー)により現像して現像剤像(トナー像)を形成する。現像器3は、回転式現像器であり、マゼンタの現像器3M、シアンの現像器3C、イエローの現像器3Y、及びブラックの現像器3Kを含む。4つの現像器3M、3C、3Y、3Kは、現像器3内に着脱可能に保持されており、画像形成の際には現像器3に保持された状態で現像器3の回転軸を中心に回転する。例えばマゼンタの現像剤(トナー)により現像する場合、現像器3Mが感光ドラム4に対向した位置に停止する。現像器3M内のスリーブは、感光ドラム4に対して微小間隔(例えば400[μm]程度)で対向し、感光ドラム4上の静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する。シアンやイエローのような有彩色のトナー像を形成する場合には、現像器3が回転して現像器3C、3Yが感光ドラム4に対向した位置に停止して現像が行われる。ブラックのトナー像を形成する場合には、現像器3が回転して現像器3Kが感光ドラム4に対向した位置に停止して現像が行われる。
【0020】
以上のような現像動作が終了すると、現像器3Y、3M、3C、3K内の各スリーブが感光ドラム4に当接しない位置まで、現像器3が離間する。離間した位置は、現像器3のホームポジションとなる。現像器3のホームポジションを設定することで、不用意に現像器3内のトナーが感光ドラム4表面に付着することが防止される。また、現像器3内に収納されているトナーが、各現像器3Y、3M、3C、3Kの間で他の色のトナーに混入することが防止される。
【0021】
感光ドラム4上に形成されたトナー像は、中間転写体5に転写される。フルカラーの画像を形成する場合、4色のトナー像が中間転写体5に順次重畳して転写される。これにより中間転写体5上にフルカラーのトナー像が形成される。中間転写体5に転写されたトナー像は、不図示の給紙ユニットから給送されるシート6に一括転写される。トナー像が転写されたシート6は、定着器7によりトナー像の定着処理が行われる。定着器7は、トナー像をシート6に加熱定着させる。定着器7は、シート6を加熱するための定着ローラ7aと、シート6を定着ローラ7aに圧接させるための加圧ローラ7bとで構成されている。トナー像が定着されたシート6は、印刷物として機外に排出される。
【0022】
なお、転写後に感光ドラム4に残留するトナーは、クリーナ9により除去される。除去されたトナーは、不図示のクリーニング容器に蓄積される。クリーニング容器は、トナーが満杯になると交換される。クリーナ9により残留するトナーが除去されることで、感光ドラム4は、次の画像形成処理に使用可能となる。
【0023】
表面電位センサ12は、感光ドラム4の周囲で、レーザ光源110によりレーザ光が照射される位置と現像器3との間に設けられる。表面電位センサ12は、感光ドラム4の表面の電位を検出する。
【0024】
フォトセンサ40は、感光ドラム4の周囲で、現像器3と中間転写体5との間に設けられる。フォトセンサ40は、光源10及びフォトダイオード11を有する。光源10は、主波長が約960[nm]の近赤外光を、トナー像が形成された感光ドラム4の表面に照射する。フォトダイオード11は、光源10から照射された光の感光ドラム4の表面による反射光を受光する。これによりフォトセンサ40は、感光ドラム4に形成された画質調整用のトナー像(以下、「テスト画像」という。)からの反射光量を測定することができる。
【0025】
テスト画像は、詳細は後述するが、複数のパッチ画像の組み合わせにより構成される。本実施形態の画像形成装置では、シートの特性に応じて、画質調整に用いるテスト画像のデザインを決定する。テスト画像のデザインは、パッチ画像のサイズ、レイアウト、数等により決定される。デザインの違いにより、テスト画像の生成時の現像剤(トナー)の使用量が異なる。以降の説明では、画質調整の一例として階調性の調整処理について説明する。階調補正用のテスト画像は、複数の異なる画像濃度のパッチ画像で構成される階調パターンを、色毎に備える。
【0026】
(プリンタ制御部)
図2は、プリンタ制御部109の構成説明図である。プリンタ制御部109は、リーダ部Aのリーダ画像処理部108、レーザ光源110、CPU(Central Processing Unit)509、及びパターンジェネレータ507が接続される。CPU509は、操作部508及びメモリ510が接続される。
【0027】
操作部508は、入力装置と出力装置とが組み合わされたユーザインタフェースである。入力装置は、テンキー、入力キー等のキーボタンやタッチパネルである。出力装置は、ディスプレイやスピーカである。CPU509は、所定のコンピュータプログラムを実行することで画像形成装置全体の動作を制御するコントローラである。CPU509は、操作部508から入力される指示やデータを受け付けて処理を実行する。また、CPU509は、操作部508によりユーザへの指示画像や画像形成装置100の状態画像の表示を行う。メモリ510は、CPU509による処理の際のワークエリアを提供する。
【0028】
プリンタ制御部109は、画像処理のために、A/D(Analog/Digital)変換部502、シェーディング部503、LOG(Laplacian Of Gaussian)変換部504、及びγLUT部505を備える。プリンタ制御部109は、リーダ部Aから取得する画像データに対して所定の画像処理を行い、処理後の画像データに応じてレーザ光源110の発光制御を行う。
【0029】
A/D変換部502は、リーダ画像処理部108から取得する画像データに含まれるアナログの輝度信号をデジタルの輝度信号に変換する。シェーディング部503は、デジタル変換された輝度信号に対するシェーディング補正を行う。これは、受光部105を構成する複数の受光素子の感度のバラツキを補正するための処理である。シェーディング補正により、受光部105の測定再現性が向上する。LOG変換部504は、シェーディング補正後の輝度信号をLOG変換する。LOG変換により、R、G、Bの各輝度信号はC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各濃度信号に変換される。γLUT部505は、LOG変換により生成されたC、M、Y、Kの各濃度信号に対するガンマ補正を行う。γLUT部505は、プリンタ部Bが理想とする濃度特性と、γ特性に従って処理された出力画像濃度特性とが一致するようにガンマ補正を行う。このように画像処理された画像データは、レーザ光源110に送信され、レーザ光の明滅の制御に用いられる。
【0030】
パターンジェネレータ507は、テスト画像を形成するための画像データであるテストパターン信号を生成する。テスト画像には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色分の階調パターンが含まれている。階調パターンは、それぞれ濃度(階調)が異なる複数のパッチ画像により構成される。本実施形態のパターンジェネレータ507は、複数の異なるデザインのテスト画像を形成するためのテストパターン信号を生成するパターン生成部の一例である。
【0031】
(階調補正)
γLUT部505で行われるガンマ補正は、画像形成装置の濃度特性が理想的な特性となるように画像データを変換する処理である。ガンマ補正では、予め用意されたガンマルックアップテーブル(以下、「γLUT」という。)が用いられる。
【0032】
図3は、ガンマ補正の説明図である。横軸は画像形成に用いられる画像データが表す画像濃度(入力信号)を示し、縦軸はシートに形成された画像の実際の画像濃度(出力信号)を示す。一点鎖線201は、ガンマ補正が適用されていないオリジナルの階調特性を示している。破線202は、理想的な階調特性(ターゲット階調特性)を示している。実線203は、γLUTの特性(階調特性の補正値)を示す。γLUTの補正値(実線203)を適用して補正処理を行うことで、オリジナルの階調特性(一点鎖線201)はターゲット階調特性(破線202)に変換される。なお、画像形成装置100の濃度特性は、経年変化や環境に応じて変動する。そのために、濃度特性の変動に応じてγLUTは更新される必要がある。γLUTの補正値は、画質の調整に用いられる調整値の一例である。
【0033】
図4は、階調補正処理を表すフローチャートである。この処理では、γLUTがγLUT部505に設定される。CPU509は、操作部508から階調補正処理の開始指示を受け付けると、階調補正処理を開始する。
【0034】
階調補正処理を開始すると、CPU509は、パターンジェネレータ507を用いてテストチャートを作成する(S201)。CPU509は、パターンジェネレータ507にテストパターン信号の出力を指示する。パターンジェネレータ507から出力されたテストパターン信号は、γLUT部505によりガンマ補正される。ガンマ補正されたテストパターン信号は、レーザ光源110に送信される。レーザ光源110は、このテストパターン信号に応じて変調されたレーザ光により感光ドラム4を走査する。以降、上述した処理によりシート6にテスト画像が印刷されて、テストチャートが完成する。テストチャートに印刷されるテスト画像は、各色の階調パターンを含む。本実施形態の階調パターンは、色毎に、それぞれ異なる画像濃度の矩形のパッチ画像より構成される。
本実施形態では、テストチャートの作成に用いられるテスト画像が複数用意される。CPU509は、テストチャートに用いられるシート6の特性に応じたテスト画像のテストパターン信号をパターンジェネレータ507に生成させる。テストチャートの作成処理の詳細は後述する。
【0035】
テストチャートが作成されると、CPU509は、ユーザに対してテストチャートを原稿台ガラス102上に載置するように指示する。CPU509は、例えば操作部508に原稿台ガラス102上へのテストチャートの載置を指示する画像や文字を表示する。
図5は、このような案内画像の例示図である。案内画像では、テストチャートの原稿台ガラス102上への置き方、方向等が案内される。ユーザは、案内画像に応じて原稿台ガラス102上にテストチャートを載置した後に、操作部508によりテストチャートの読取指示を入力する。読取指示の入力は、案内画像の「読込開始」ボタンの押下により行われる。CPU509は、テストチャートの読取指示を受け付けると、リーダ部Aによる画像読取処理を行う(S202)。これによりプリンタ制御部109は、リーダ部Aからテストチャートに形成されたテスト画像の読取結果である画像データを取得する。画像データは、プリンタ制御部109によりLOG変換され、各色の濃度信号としてCPU509に入力される。
【0036】
CPU509は、プリンタ制御部109で取得した各色の濃度信号(画像濃度)と、テストパターン信号により指示されるレーザ光の出力レベルと、の関係をメモリ510に格納する(S203)。CPU509は、メモリ510に格納したテスト画像の画像濃度とレーザ光の出力レベルとから、階調特性の補正値を算出してγLUTを生成する。CPU509は、生成したγLUTをγLUT部505に設定することで、γLUTを更新する(S204)。
【0037】
(シート特性と画像濃度のバラツキ)
テストチャートから検出される画像濃度は、テストチャートに用いられるシートの特性に応じてバラツキが発生する。画像濃度のバラツキに影響するシート特性には、例えば、坪量、厚さ、地合ムラ、平滑度等がある。坪量は、1m2当たりのシートの質量であり、単位はs/m2である。厚さは、平滑な金属面でシートを挟んで一定荷重をかけたときの金属面間の距離である。地合ムラは、シートの二次元的な構造ムラである。
【0038】
最も画像濃度のバラツキへの影響が大きいのは、シートの平滑度である。平滑度は、レーザ方式のオフィス用途のプリンタや商業印刷向けのオンデマンド機では画質を支配する最も重要なシート特性である。平滑度は、非常に平滑な金属面とシート表面とが接触したときにできる隙間から空気が漏れ出る速度や、隙間から一定量の空気が漏れ出るのに要する時間(秒)で表現される。代表的なものにベック平滑度という指標がある。本実施形態では、ベック平滑度をシート6の特性値として説明する。メモリ510には、シートの種類毎の平滑度が予め記憶される。
【0039】
本実施形態では、上記の通り、テストチャートの作成に用いられるテスト画像が複数用意される。各テスト画像は、デザインが異なる。テストチャートに用いるテスト画像は、シート特性であるベック平滑度に応じて決定される。なお、テスト画像は、坪量や地合等の他のシート特性に応じて決定されてもよい。ここでは、テスト画像に含まれるパッチ画像のサイズが異なる場合について説明する。パッチ画像のサイズが、ベック平滑度に応じて決定される。
【0040】
図6は、シートの種類毎のベック平滑度を例示する。
図6では、上質紙、エンボス紙、及びコート紙のベック平滑度を示す。ベック平滑度が高いほど、シートの表面が平滑であることを表す。
【0041】
パッチ画像内で画像濃度にバラツキが生じると、画像濃度を正確に検出できないために、高精度な階調補正が行えなくなる。そのために本実施形態では、ベック平滑度が所定値(閾値)よりも低いシートに形成されるパッチ画像のサイズを、10[mm]×10[mm]とする。ベック平滑度が所定値よりも高いシートは、画像濃度のバラツキが、ベック平滑度が所定値よりも低いシートよりも小さくなる。そのためにベック平滑度が所定値よりも高いシートに形成されるパッチ画像のサイズは、10[mm]×10[mm]よりも小さくすることができる。このことから、複数のテスト画像に含まれるパッチ画像のサイズを、それぞれ異なるものとすることができる。
【0042】
図7は、3階調の階調パターンから検出される画像濃度のバラツキの説明図である。ここでは、A4サイズの上質紙にハイライト(画素データの値が16)、中間調(画素データの値が90)、ベタ(画素データの値が255)の3階調のブラックの階調パターンが印刷される例を説明する。各階調パターンのパッチ画像のサイズは、10[mm]×10[mm]である。画像濃度の検出は、10[mm]間隔で行われる。
図7の例では、標準偏差が、ハイライト側で0.008、中間調で0.007、ベタ側で0.006となる。いずれも、階調補正に用いる画像濃度の検出バラツキとしては許容される。
【0043】
シート上の画像濃度のバラツキは、シート表面の凹凸ムラや、凹凸の大きさに依存する。画像形成時にシートの表面の凹凸を覆うだけのトナー量が無い場合に、シートの表面がトナーから露出して画像ムラが発生しやすくなる。この画像ムラが画像濃度のバラツキとなる。
【0044】
エンボス紙では、表面の凹凸が幅1[mm]~5[mm]程度で形成される。そのために、エンボス紙に形成されるパッチ画像のサイズは、凹凸の幅よりも大きい10[mm]×10[mm]となる。平滑度の高いシートは、表面の凹凸が幅0.1[mm]~1[mm]である。そのために、平滑度の高いシートに形成されるパッチ画像のサイズは、凹凸の幅よりも大きい6[mm]×6[mm]とすることができる。当然ながら、パッチ画像のサイズは、これらの数値に限定されるものではない。
【0045】
本実施形態では、画像濃度のバラツキが顕在化しにくくなる平滑度を、60(上質紙の平滑度)と設定する。つまり平滑度の高低を区別するための所定値が「60」に設定される。平滑度が60以上のシートに形成されるパッチ画像は、60未満のシートに形成されるパッチ画像よりも小さいサイズで形成される。本実施形態では、平滑度が60以上のシートに形成されるパッチ画像のサイズが6[mm]×6[mm]であり、平滑度が60未満のシートに形成されるパッチ画像のサイズが10[mm]×10[mm]である。
【0046】
図8は、シートの種類(特性)とパッチ画像のサイズとの関係の説明図である。平滑度が所定値よりも高い上質紙やコート紙では、平滑度が所定値よりも低い他の種類のシートよりも、パッチ画像のサイズが小さくなっている。パッチ画像のサイズを小さくすることで、階調補正時のトナーの使用量を減らすことができる。
【0047】
図9は、テスト画像の例示図である。
図9(a)は、平滑度が所定値よりも低いシートに形成される、パッチ画像のサイズが大きいテスト画像を例示する。
図9(a)は、平滑度が所定値よりも高いシートに形成される、パッチ画像のサイズが小さいテスト画像を例示する。このように本実施形態のテスト画像は2つのパターンが用意される。なお、さらに多くのパターンが用意されてもよい。つまり、シート特性に応じて、3以上のパッチ画像のサイズでテスト画像が用意されてもよい。
【0048】
図9(a)、(b)のテスト画像は、色毎に、16階調のパッチ画像で構成される階調パターンを含む。各パッチ画像の形成に用いられる画像データの値は、16、32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、208、224、240、256である。256はベタ画像を表す。この他に、画像データの値が0の画像が検出可能である。
【0049】
パッチ画像のサイズを小さくする場合、パッチ画像間の余白を詰めてテスト画像が形成されてもよい。この場合、テスト画像を読み取るためのリーダ部A(光源103)の発光時間が短縮され、光源103の長寿命化につながる。パッチ画像のレイアウトは、画像形成装置の特性や使用するシートのサイズに応じて適宜調整されてもよい。
【0050】
シート特性(シートの種類毎の平滑度)は、ユーザにより操作部508を用いてメモリ510に予め登録される。また、パッチ画像のサイズやレイアウトのパターンもメモリ510に予め保存されていてもよい。CPU509は、パターンジェネレータ507に、テストチャートに用いるシートの特性に応じたテスト画像のテストパターン信号を生成させる。CPU509は、パッチ画像のサイズに応じたレイアウトで、パターンジェネレータ507に、テストパターン信号を生成させてもよい。
【0051】
図10は、テスト画像の選択処理を表すフローチャートである。
図4のS201の処理の際に、この処理が行われる。
【0052】
CPU509は、テストチャートを作成する際に、テストチャートに用いるシートの種類を表す情報を取得する(S1)。シートの種類を表す情報は、例えばシートが収容されている給紙カセットが複数ある場合に、どの給紙カセットから給紙させるかをユーザが操作部508により選択することで入力される。給紙カセットに収容されるシートの種類は、収容時に設定されて、メモリ510に保存されている。
図11は、給紙カセットの選択画像の例示図である。ユーザは、操作部508により選択画像から給紙カセットを選択することになる。CPU509は、選択された給紙カセットに収容されるシートの種類を表す情報を、メモリ510から取得する。なお、給紙カセットが1つの場合には、該給紙カセットに収容されるシートの種類が予め設定されている。
【0053】
CPU509は、取得したシートの種類を表す情報に基づいて、シートの平滑度が所定値、本実施形態では60以上であるか否かを確認する(S2)。メモリ510には、画像形成装置で使用可能なシートの種類毎に、予め平滑度が登録されている。CPU509は、この登録された平滑度を参照して、テストチャートに用いるシートの平滑度を確認し、確認した平滑度と所定値(60)とを比較することでこの処理を行う。
【0054】
平滑度が所定値以上、つまり60以上の場合(S2:Y)、CPU509は、シートに印刷するテスト画像のパッチ画像のサイズが小さくてもよいと判断する。この場合、CPU509は、サイズが6[mm]×6[mm]の矩形のパッチ画像により構成された各色の階調パターンを含むテスト画像のテストパターン信号をパターンジェネレータ507に生成させる。CPU509は、このテストパターン信号に応じたテスト画像をシートに印刷することで、テストチャートを作成する(S3)。
【0055】
平滑度が所定値未満、つまり60未満の場合(S2:N)、CPU509は、シートに印刷するテスト画像のパッチ画像のサイズが大きければならないと判断する。この場合、CPU509は、サイズが10[mm]×10[mm]の矩形のパッチ画像により構成された各色の階調パターンを含むテスト画像のテストパターン信号をパターンジェネレータ507に生成させる。CPU509は、このテストパターン信号に応じたテスト画像をシートに印刷することで、テストチャートを作成する(S4)。
【0056】
以上のように作成されたテストチャートは、
図4のS202の処理でリーダ部Aに読み取られる。CPU509は、リーダ部Aによりテストチャートの読取結果に基づいてγLUTを生成してγLUT部505に設定する。以上のように、シートの種類に応じた最適なデザインで形成されたテスト画像による階調補正処理が行われる。
【0057】
パッチ画像のサイズが小さくなることで、階調補正時に使用されるトナー量が抑制される。例えば、サイズが6[mm]×6[mm]の矩形のパッチ画像を用いる場合、サイズが10[mm]×10[mm]の矩形のパッチ画像を用いる場合よりも、トナーの使用量が約1/3削減される。
【0058】
(インライン方式)
本実施形態では、シートにテスト画像を印刷して階調補正を行う。本実施形態で行う階調補正は、ユーザが手動でテストチャートをリーダ部Aで読み取らせるオフラインの他に、ユーザを介さないで自動的にテストチャートを読み取るインラインであっても可能である。
図12は、インラインでテストチャートを読み取る画像形成装置の構成図である。この画像形成装置は、
図1の画像形成装置に読取装置50を追加した構成である。読取装置50の構成について説明する。
【0059】
読取装置50は、プリンタ部Bから排出される印刷物(シート)の排出先に設けられる。読取装置50は、第1搬送部51、第2搬送部52、第1読取センサ53、及び第2読取センサ54を備える。読取装置50は、プリンタ部Bによりシート6の両面に画像が形成された場合、第1読取センサ53及び第2読取センサ54により、シート6の両面の画像を同時に読み取ることが可能な構成となっている。読取装置50によるテスト画像の読取結果は、プリンタ制御部109により処理される。
【0060】
第1読取センサ53は、第1搬送部51により搬送されるシート6の一方の面(下面)に印刷された画像を読み取る。第1読取センサ53は、例えば、ラインスキャナ等の比較的高速で画像読取処理を行うことができる光学式センサである。第1読取センサ53は、シート6に形成された画像を読み取り、読取結果としてR、G、Bの各色の画像データをプリンタ制御部109へ送信する。第2読取センサ54は、第2搬送部52により搬送されるシート6の他方の面(上面)に印刷された画像を読み取る。第2読取センサ54は、第1読取センサ53と同様の構成であり、読取結果としてR、G、Bの各色の画像データをプリンタ制御部109へ送信する。プリンタ制御部109の処理は、リーダ部Aを用いる場合と同様である。
【0061】
以上のような読取装置50を用いることで、インラインによる階調補正が可能となる。つまり画像形成装置内に読取装置50のような画像濃度検出部を設け、インラインでテスト画像の階調パターンを検出する。シート6には、ユーザによる印刷ジョブの指示に応じて印刷する画像の外側且つ印刷可能な余白部分にテスト画像が追加で印字される。このテスト画像が読み取られて階調補正が行われる。シート6の平滑度が所定値よりも高い場合には、サイズの小さいパッチ画像を含む階調パターンにより構成されるテスト画像が用いられる。平滑度が所定値よりも高いシート6では画像濃度の検出結果のバラツキの他に、色検出結果のバラツキも小さくなるため、色検出のためのパッチ画像のサイズも小さくすることができる。
【0062】
(テスト画像の他の例)
テスト画像は、シートの特性に応じてパッチ画像のサイズを小さくする他に、階調パターンの階調数を減らすことで、トナーの使用量の削減を実現してもよい。
図7で説明した通り、表面性のよい(平滑度が高い)シートは、画像のムラが顕在化しにくいため、パッチ画像内のムラによる画像濃度の検出誤差が小さい。そのために、階調補正を行うための階調パターンに含まれるパッチ画像の数を減らして、階調数を減らしても階調補正の精度への影響が少ない。階調補正に使用するパッチ画像の数が削減されるために現像剤(トナー)の使用量を抑えることができる。
【0063】
図13は、パッチ画像の数を削減した階調パターンを含むテスト画像の例示図である。エンボス紙のように平滑度が所定値よりも低いシートに印刷されるテスト画像は、一つの階調パターンが16のパッチ画像により構成される(
図9(a))。上質紙のように平滑度が所定値よりも高いシートに印刷されるテスト画像は、一つの階調パターンが8のパッチ画像により構成される(
図13)。この例では、
図9(a)のテスト画像に比べてパッチ画像の数が半分になるために、消費するトナー量(現像剤量)も略半分に抑制される。
【0064】
以上のように本実施形態の画像形成装置は、異なるデザインの複数のテスト画像が印刷可能である。画像形成装置は、シートの特性に応じて最適なデザインのテスト画像により、画質の調整を行うための調整値が生成される。テスト画像は、複数のパッチ画像の組み合わせで構成される。テスト画像のデザインは、パッチ画像のサイズ、パッチ画像のレイアウト、テスト画像に用いるパッチ画像の数等により決定される。そのためにパターンジェネレータ507は、パッチ画像のサイズ、パッチ画像のレイアウト、テスト画像に用いるパッチ画像の数、が異なる複数のテスト画像のテストパターン信号を生成可能である。デザインの違いにより、テスト画像は使用する現像剤の量が異なる。このようなテスト画像を用いることで、画質調整を高精度に行いつつ、画質調整に用いる現像剤の使用量を削減することができる。