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特許7412943コンテナホルダー、育苗キット及び山林苗の生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】コンテナホルダー、育苗キット及び山林苗の生産方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/00 20180101AFI20240105BHJP
   A01G 23/04 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
A01G9/00 D
A01G9/00 J
A01G23/04 503H
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019180174
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021052688
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦田 信明
(72)【発明者】
【氏名】中浜 克彦
(72)【発明者】
【氏名】根岸 直希
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-317732(JP,A)
【文献】特開2001-136835(JP,A)
【文献】特表2015-504663(JP,A)
【文献】登録実用新案第3205361(JP,U)
【文献】登録実用新案第3208835(JP,U)
【文献】特開2005-095115(JP,A)
【文献】特許第6598131(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00
A01G 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
育苗孔上端開口部の外縁に連続する鍔部を有する筒状の育苗コンテナを着脱可能に保持する山林苗育苗用コンテナホルダーであって、
複数の保持ユニットから構成される平板状のフレーム部と、
フレーム部に装着された育苗コンテナを、その底面部が接地せずに略水平に支持する支持部と
を備え、
保持ユニットは、育苗コンテナが入り込むが鍔部が入り込めない大きさの開口部を取り巻く保持枠部と、保持枠部の一部であって開口部の外縁に連続的に設けられる溝であり育苗コンテナが装着される際に鍔部が略嵌合する嵌合部を有し、
支持部は、接地面に開口する底面枠部と、保持枠部から底面枠部へ延伸する支柱部とを有する、
山林苗育苗用コンテナホルダー。
【請求項2】
フレーム部には主面からみて複数の保持ユニットがマトリックス状に配列している、請求項1に記載のコンテナホルダー。
【請求項3】
保持ユニットの開口部は略方形状である、請求項1又は2に記載のコンテナホルダー。
【請求項4】
育苗コンテナは、独立型育苗コンテナである、請求項1~のいずれか1項に記載のコンテナホルダー。
【請求項5】
保持ユニットは、嵌合部の外縁に隣接して保持枠部の一部に設けられ、フレーム部に装着された育苗コンテナを取り出す際に指を挿入可能な窪みである凹部を有する、請求項1~のいずれか1項に記載のコンテナホルダー。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載のコンテナホルダーと、
育成孔上面開口部の外縁に鍔部を有する筒状の育苗コンテナの複数個の組み合わせと
を含む
育苗キット。
【請求項7】
苗コンテナの鍔部は、コンテナホルダーの嵌合部に略嵌合可能なサイズである、請求項に記載の育苗キット。
【請求項8】
複数個の育苗コンテナは、互いに異なる2種以上の育苗コンテナを含む、請求項又はに記載の育苗キット。
【請求項9】
複数個の育苗コンテナは、独立型育苗コンテナを含む、請求項のいずれか1項に記載の育苗キット。
【請求項10】
培土及び肥料からなる群より選ばれる少なくとも1つを更に含む、請求項のいずれか1項に記載の育苗キット。
【請求項11】
請求項10のいずれか1項に記載の育苗キットを用いて山林苗を育苗することを含む、山林苗の生産方法。
【請求項12】
育苗コンテナをコンテナホルダーに装着する装着工程、
山林苗の種子、幼苗、挿し穂又は発根苗を育苗コンテナの育苗孔に植え付ける植え付け工程、
培土を育苗孔に詰める培土充填工程、
苗を育成する育苗工程、及び
空気根切りをする空気根切り工程を含む
請求項11に記載の山林苗の生産方法。
【請求項13】
培土充填工程において、培土をフレーム部上面に積載しコンテナホルダーを振動させて培土を育苗孔に落下させ、育苗孔に落下しなかった培土は摺り切りで落とすことを含む、請求項11又は12に記載の山林苗の生産方法。
【請求項14】
育苗工程の途中で苗をサイズ別に仕分けする仕分け工程をさらに含む、請求項1113のいずれか1項に記載の山林苗の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナホルダー、育苗キット及び山林苗の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スギ・ヒノキ等の山林苗は露地で栽培される裸苗や育苗容器であるポット又はコンテナを使用した苗が生産されている。この内、コンテナ苗生産に用いるコンテナとしては多数の育苗用孔を有する硬質プラスチック製の育苗容器が広く普及している。
【0003】
非特許文献1には、苗木を育てる孔を複数有するマルチキャビティコンテナが記載され、側面にリブ及びスリットを設け、キャビティの底に開口部を設け、底面を宙に浮かせる又は大きい空隙部を有する網棚の上に載置することにより空気根切りを行うことができ、根巻き、根の変形を防ぐことができることが記載されている。
【0004】
特許文献1には、所定形状の収容部を有する育苗容器が、植え付け及び植え替えの際の作業性に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-79706号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】遠藤利明、山田健(2009年)「JFA-150コンテナ苗育苗・植栽マニュアル」低コスト新育苗・造林技術開発事業報告書(平成20年度),74-90 http://www.rinya.maff.go.jp/j/kanbatu/syubyou/pdf/15-kontenanae_ikubyou_syokusai_manyuaru.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1にはマルチキャビティコンテナを浮かせた状態で保持するためのベンチが紹介されているものの、培土を充填したコンテナはある程度の重量があるため、これを支えるベンチや網棚を安価な部材で作製することは困難であり、現実には高額の育苗棚の導入が必要である。また、育苗棚を設置したとしても、コンテナの底面が育苗棚に接地してしまう箇所では根巻きが起こってしまうため、使用できるコンテナのサイズが制限されることがある。
【0008】
また、多数の育苗用孔を有する育苗容器においてその一部に未発芽苗や生育不良苗が発生すると、その苗を別の育苗用孔に移動する作業、別の苗に置き換える作業には非常に手間がかかり事実上困難であるという問題がある。そのような苗は周りの苗に被圧されて光が当たりにくくなるため生育不良が一層進むことになる。
【0009】
特許文献1の育苗容器は、使用時の保持手段についての言及が無い。実際に育苗容器を用いる際には園芸用トレー等の代用品を用いることにより容器が倒れないよう保持されていた。しかし、代用品では育苗容器と接地面との間の高さの調整が難しく、使用できる育苗ポットが代用品のサイズに合うものに限定される、サイズに合わない育苗ポットを使用すると安定的な保持が難しい、そのため培土を入れにくい等の不都合があった。
【0010】
本発明は、複数の山林苗を個々の生育能力に応じて効率よく生産でき、作業性も向上できる、山林苗の育苗に適した育苗容器のコンテナホルダー及びその用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の〔1〕~〔16〕を提供する。
〔1〕育苗孔上端開口部の外縁に連続する鍔部を有する筒状の育苗コンテナを着脱可能に保持する山林苗育苗用コンテナホルダーであって、
複数の保持ユニットから構成される平板状のフレーム部と、
フレーム部に装着された育苗コンテナを、その底面部が接地せずに略水平に支持する支持部と
を備え、
保持ユニットは、育苗コンテナが入り込むが鍔部が入り込めない大きさの開口部を取り巻く保持枠部を有する、
山林苗育苗用コンテナホルダー。
〔2〕保持ユニットは、開口部の外縁に連続的に設けられる溝であり育苗コンテナが装着される際に鍔部が略嵌合する嵌合部を更に有する、〔1〕に記載の山林苗育苗用コンテナホルダー。
〔3〕フレーム部には主面からみて複数の保持ユニットがマトリックス状に配列している、〔1〕又は〔2〕に記載のコンテナホルダー。
〔4〕保持ユニットの開口部は略方形状である、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のコンテナホルダー。
〔5〕支持部は、接地面に開口する底面枠部と、保持枠部から底面枠部へ延伸する支柱部とを有する、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載のコンテナホルダー。
〔6〕育苗コンテナは、独立型育苗コンテナである、〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載のコンテナホルダー。
〔7〕保持ユニットは、嵌合部の外縁に隣接して保持枠部の一部に設けられ、フレーム部に装着された育苗コンテナを取り出す際に指を挿入可能な窪みである凹部を有する、〔1~〔6〕のいずれか1項に記載のコンテナホルダー。
〔8〕〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載のコンテナホルダーと、
育成孔上面開口部の外縁に鍔部を有する筒状の育苗コンテナの複数個の組み合わせと
を含む
育苗キット。
〔9〕コンテナホルダーの保持ユニットは、開口部の外縁に連続的に設けられる溝であり育苗コンテナが装着される際に鍔部が略嵌合する嵌合部を更に有し、
育苗コンテナの鍔部は、コンテナホルダーの嵌合部に略嵌合可能なサイズである、〔8〕に記載の育苗キット。
〔10〕複数個の育苗コンテナは、互いに異なる2種以上の育苗コンテナを含む、〔8〕又は〔9〕に記載の育苗キット。
〔11〕複数個の育苗コンテナは、独立型育苗コンテナを含む、〔8〕~〔10〕のいずれか1項に記載の育苗キット。
〔12〕培土及び肥料からなる群より選ばれる少なくとも1つを更に含む、〔8〕~〔11〕のいずれか1項に記載の育苗キット。
〔13〕〔8〕~〔12〕のいずれか1項に記載の育苗キットを用いて山林苗を育苗することを含む、山林苗の生産方法。
〔14〕育苗コンテナをコンテナホルダーに装着する装着工程、
山林苗の種子、幼苗、挿し穂又は発根苗を育苗コンテナの育苗孔に植え付ける植え付け工程、
培土を育苗孔に詰める培土充填工程、
苗を育成する育苗工程、及び
空気根切りをする空気根切り工程を含む
〔13〕に記載の山林苗の生産方法。
〔15〕培土充填工程において、培土をフレーム部上面に積載しコンテナホルダーを振動させて培土を育苗孔に落下させ、育苗孔に落下しなかった培土は摺り切りで落とすことを含む、〔13〕又は〔14〕に記載の山林苗の生産方法。
〔16〕育苗工程の途中で苗をサイズ別に仕分けする仕分け工程をさらに含む、〔13〕~〔15〕のいずれか1項に記載の山林苗の生産方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、育苗コンテナを複数保持することができ、着脱可能であるため、複数の山林苗を樹種、生育能力に応じた最適条件で一時期に生産できる等、多くの山林苗を効率よく生産できるコンテナホルダーが提供される。本発明のコンテナホルダーを用いることにより、コンテナ底面が接地せずに空気に触れるよう保持できるため、空気根切りが可能となる。また、生育が遅れた苗でも光を十分に得ることができ、より多くの苗が出荷基準を満たすことができる(得苗率が上がった)。すなわち、出荷基準を満たす苗を効率的に生産できる。
本発明によれば、一時期に複数の異なる育苗コンテナを用いた育苗を行うことができるので、個々の山林苗について樹種、苗個体の生育能力に応じた最適条件を選択でき、山へ植栽した後の生育不良、枯死等の問題を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明のコンテナホルダーの概略的な態様の例を示す斜視図である。
図2図2は、図1のコンテナホルダーの上面図である。
図3図3は、図1のコンテナホルダーの側面図である。
図4図4は、本発明のコンテナホルダーの概略的な態様の別の例を示す斜視図である。
図5図5は、図3のコンテナホルダーの上面図である。
図6図6は、図3のコンテナホルダーの断面図(図1の矢印A1の断面)である。
図7図7は、保持枠部及び開口部の一例を示す部分平面図である。
図8図8は、保持枠部及び開口部の一例を示す部分平面図である。
図9図9は、保持枠部及び開口部の一例を示す部分平面図である。
図10図10は、図3のコンテナホルダーを構成する1ユニットの部分斜視図である。
図11図11は、本発明のコンテナホルダーが対象とする育苗コンテナの概略的な態様の例を示す斜視図である。
図12図12は、図11の育苗コンテナホルダーの側面図である。
図13図13は、図11の育苗コンテナホルダーの上面図である。
図14図14は、図11の育苗コンテナホルダーの断面図(図11の矢印A2の断面)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔1.コンテナホルダー〕
本明細書においてコンテナホルダーは、山林苗の生産過程における発根期間および育苗期間の少なくとも一時期において、育苗コンテナを保持するために用いられるホルダーを言う。本発明のコンテナホルダーは育苗コンテナを着脱可能に保持することができる。保持したコンテナの底面は接地せず、空気に触れるため、空気根切りが可能となる。
また、未発芽種子や生育不良苗が出た際に一部の育苗コンテナのみ他の育苗コンテナと取り換えることができ、生育が遅れた苗を有する育苗コンテナを光などの生育条件が良い場所に移動させることができ、そのためより多くの苗が出荷基準を満たすことができる(得苗率を上げることができる)。また、本発明のコンテナホルダーは育苗コンテナが着脱可能であるため、異なる容量の育苗コンテナを使用でき、樹種によって最適な容量の育苗コンテナを選択することができる。
【0015】
山林苗の樹種としては、例えば、マツ属(例、クロマツ、アカマツ)、カラマツ属(例、カラマツ、グイマツ)、トウヒ属(例、エゾマツ、トウヒ)、モミ属(例、トドマツ)、スギ属(スギ、ヒノキ属(例、ヒノキ))、これらの交配種(例、カラマツとグイマツの交配種(クリーンラーチなど))等の針葉樹、ユーカリ属(例、ユーカリ)、ミズキ属(例、ミズキ)、サクラ属(例、サクラ)、シイ属(例、シイ)、カシ属(例、カシ)等の広葉樹が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
(フレーム部)
本発明のコンテナホルダーは、フレーム部を備える。フレーム部は、育苗コンテナを保持するための平板状のフレームである。
【0017】
フレーム部は、保持ユニットから構成される。保持ユニットは、1つのユニットあたり1つの育苗コンテナを保持するユニットであり、保持枠部および嵌合部を少なくとも有する。保持枠部は、育苗コンテナを保持するための開口部を取り巻く枠である。
【0018】
開口部は育苗コンテナが入り込むが鍔部が入り込めない大きさを有し、フレーム部の主面から裏面まで貫通している。このため、育苗コンテナを保持枠部に装着したとき、育苗コンテナの鍔部は保持枠部の開口部より大きいので入り込めず、収容部が開口部に入り込みフレーム部の下部へ懸垂した状態となる。フレーム部に懸垂した育苗コンテナの底面が接地せずに空気に触れることで、確実に空気根切りが出来るようになる。
【0019】
保持枠部は嵌合部を有することが好ましい。嵌合部は、開口部を取り巻き、連続的に設けられる溝である。本発明のコンテナホルダーは鍔部を有する育苗コンテナを対象としているが、育苗コンテナを装着する際、育苗コンテナの鍔部が嵌合部に略嵌合する。これにより、嵌合部のサイズに合った鍔部を有する育苗コンテナを安定して保持できる、かつ、保持ユニットにいったん装着した育苗コンテナは、鍔部を持ち上げることにより簡単に取り出しできる。嵌合部は更に、育苗コンテナの鍔部を嵌合部に略嵌合させた際、育苗コンテナの鍔部とフレーム部の平面とが略水平面を形成することがより好ましい。これにより、培土を詰める際に育苗孔に入らない培土を容易に除去できる等、作業性を向上させることができる。
【0020】
開口部及び嵌合部のそれぞれの、形状及びサイズは、対象とする育苗コンテナの形状に応じて適宜定めればよいが、一例を挙げると以下のとおりである。開口部の形状は、例えば、略円状、略方形状が挙げられ、略方形状が好ましい。開口部の面積は、通常は12.2cm2以上、好ましくは16cm2以上、より好ましくは20cm2以上である。上限は、通常は43cm2以下、好ましくは36cm2以下、より好ましくは31cm2以下である。開口部の最大径は、通常は3.5cm以上、好ましくは4cm以上、より好ましくは4.5cm以上である。上限は、通常は7cm以下、好ましくは6.5cm以下、より好ましくは6cm以下である。嵌合部は、溝の幅(開口部の端部から嵌合部の外縁部までの間:図2のW1)が、通常は1mm以上、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上である。上限は、通常は6mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは4mm以下である。嵌合部の深さ(図3のD1)は、通常は0.5mm以上、好ましくは1mm以上、より好ましくは1.5mm以上である。上限は、通常は3.5mm以下、好ましくは3mm以下、より好ましくは2.5mm以下である。
【0021】
保持ユニットは、さらに凹部を備えていてもよい。凹部は、保持枠部の一部に設けられる、育苗コンテナを取り出す際に指を挿入可能な窪みであればよく、そのサイズは特に限定されないが、一例を挙げると、幅1cm~3cm程度、深さ3mm~7mm程度である。凹部の位置は、嵌合部の外縁に隣接して設けられる。1ユニットあたりの凹部の数は1つ又は2つ以上でもよく、2つのユニットで1つの凹部を共有していてもよい。
【0022】
フレーム部は、複数の保持ユニットから構成され、保持ユニットの配置はランダム状、一方向並列状、及びマトリクス状のいずれでもよいが、マトリクス状が好ましい。これにより、育苗コンテナの位置の把握が容易となり、苗個体の生育能力の把握が容易となる。
【0023】
フレーム部は保持ユニット内外に、運搬のための持ち手、水きり孔等の任意の構成を更に備えていてもよい。
【0024】
フレーム部について、図1~5を例に取って説明する。図1~3に示す例においては、フレーム部1が4行6列の保持ユニットU1、U2、・・・、U23、U24からなり、各保持ユニットはマトリクス状に配置されている。それぞれの保持ユニットは、フレーム部の主面(上面)から見ると(図2)、正方形状の開口部11と、開口部以外の部分である保持枠部12が備えられている。隣接する保持ユニットの嵌合部12の外縁の間に凹部14が設けられている。また、各ユニットの境界の任意の箇所に水きり孔16が設けられている。
図4~6に示す別の例においても、図1~3の例と同様、フレーム部1が4行6列の保持ユニットU1、U2、・・・、U23、U24からなり、各保持ユニットはマトリクス状に配置されている。それぞれの保持ユニットは、フレーム部の主面(上面)から見ると(図5)、正方形状の開口部11と、開口部以外の部分である保持枠部12と、開口部11の外縁を取り巻く嵌合部13が備えられている。隣接する保持ユニットの嵌合部12の外縁の間に凹部14が設けられている。また、フレーム部1の各端部に4つの持ち手15、各ユニットの境界の任意の箇所に水きり孔16が設けられている。
後述の実施例では、図1に示すコンテナホルダーを使用しており、各部のサイズは以下のとおりである。開口部11の面積は31.3cm2、最大径は5.6cmである。嵌合部13の溝の幅は3mm、深さは1mmである。凹部14の幅は1.1cm、深さは8mmである。フレーム部1のサイズは、主面からみて縦30cm、横45.3cm、厚さ1.7cmである。
【0025】
開口部は、図1~6に示すように略方形状でなくともよく、例えば図7~8に示すような円状でもよい。また、嵌合部も図4~6、8に示すようにその幅は一定でなくともよく開口部の外縁に設けられていればよい。例えば、図7、9に示すように主面からみて中抜きの略方形状、中抜きの略円状でもよい。
【0026】
(支持部)
支持部は、フレーム部を支持する部位であり、コンテナホルダーを接地面に載置した際、フレーム部と接地面の間に位置しフレーム部を略水平に支持する。支持部は、育苗コンテナを略す水平に支持する。
【0027】
支持部は、通常、底面枠部及び支柱部を有する。底面枠部は、コンテナホルダーを接地面に載置した際に接地する部位であり、接地面に開口することが好ましい。これにより、育苗コンテナの底部からの吸水及び排水が容易となり、コンテナホルダーの軽量化を図ることができる。また、コンテナホルダーの底面が開口していることにより、通気性が向上し、苗から伸長してきた根の空気根切りが促進される。支柱部は、保持枠部から底面枠部へ延伸する支柱の組みあわせである。底面枠部及び支柱部は、保持ユニットごとに設けられていることが好ましい。これにより、コンテナホルダーの強度を高めることができ、育苗期間が経過し苗が大きく成長して全体の重量が上昇しても、フレーム部をより水平に近い状態に支持することができる。
【0028】
支持部のサイズは、育苗コンテナをその底面部が接地せずに保持可能なサイズであることが好ましい。対象とする育苗コンテナのサイズにより選択できるが、一例を挙げると、フレーム部の接地面からの距離が、通常は14cm以上、好ましくは15cm以上、より好ましくは16cm以上の距離に調整されることが好ましい。上限は特に限定なく、通常は20cm以下である。
【0029】
支持部について、図1~6を例に取って説明する。図1~3に示す例及び図4~6に示す支持部2の例のいずれも、フレーム部1の保持枠部12の裏面より支柱部21が接地面に向けて延伸し、底面枠部22に連結する。支柱部21及び底面枠部22は、保持ユニットU1~U24ごとに設けられており、それぞれ4本の支柱21A、21B、21C及び21Dからなる。底面枠部22は、その中央に底面開口部23を有する。
【0030】
コンテナホルダーの素材は特に限定されないが、山林苗は育苗期間が長く、耐久性が求められるため、通常は硬質の素材であり、熱可塑性樹脂(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル)等、熱成形可能な硬質の素材が好ましい。これにより、コンテナホルダーを一体成形して容易に製造できる。また、バイオポリエステル、バクテリアセルロース、微生物多糖(例、プルラン、カードラン)、カゼイン、変性澱粉、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ナイロンオリゴマー、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシアルカノエート等の生分解性樹脂も、環境安全性の面から好ましい。
【0031】
〔2.コンテナホルダーが対象とする育苗コンテナ〕
本発明のコンテナホルダーが対象とする育苗コンテナは、育苗孔上端開口部の外縁に連続する鍔部を有する筒状の育苗コンテナを用いることが好ましい。育苗コンテナは、独立型育苗コンテナ及び連結型育苗コンテナのいずれでもよい。独立型育苗コンテナとは、単一の育苗孔を有する育苗コンテナであり、連結型コンテナは、複数のコンテナが連結されている育苗コンテナである。
【0032】
育苗コンテナが有する鍔部は、育苗孔上端開口部の外縁に連続的に設けられており、コンテナホルダーの外壁と略直角に張り出した形状である。コンテナホルダーが嵌合部を有する場合、育苗コンテナの鍔部はコンテナホルダーの嵌合部に略嵌合することができるサイズであることが好ましい。育苗コンテナは筒状であればよいが、本発明のコンテナホルダーに用いるためには、鍔部以外がコンテナホルダーの保持ユニットの開口部に入り込むサイズであることが求められる。一方、鍔部と全体のサイズが上記の条件を満たせば、育苗コンテナのサイズ(高さ、開口部の大きさ)は特に限定されない。すなわち、同時期の育苗において高さの異なる2以上の育苗コンテナを用いてもよく(例えば図4参照)、これにより、苗個体の生育条件や樹種に応じた育苗コンテナを選択できる。
【0033】
育苗コンテナは、異なるサイズ(容量、高さなど)を組みあわせて使用でき、樹種によって最適な容量のコンテナを選択することができる。
育苗コンテナの高さは、育苗コンテナをコンテナホルダーに装着した際に育苗コンテナの底面部が接地しない大きさであればよく、通常18cm以下、好ましくは以下、より好ましくは16cm以下である。通常7.5cm以上、好ましくは9.5cm以上、より好ましくは12.5cm以上である。
【0034】
育苗コンテナは、培土保持枠を備える底面開口部、育苗孔内部側面に設けてもよいリブ、スリット等、山林苗育苗コンテナが任意で備える部位を有してもよく、これらのうち少なくとも1つを有することが好ましく、少なくとも底面開口部を備えることがより好ましい。これにより、空気根切りを効率よく行うことができる。これらの部位のサイズ、形状、数は、コンテナごとに異なっていてもよい。培土保持枠は、底面開口部と複数個所で連結していればよい。
【0035】
筒状の育苗コンテナの好ましい一例について、図11~14を例に取って説明する。図8~10の育苗コンテナ3においては、育苗孔31が略正方形の開口部32を有し、開口部上端に鍔部33が設けられている。育苗コンテナ3の外形は、上端から底面に向けてテーパー状であり、その外壁には補強用の溝34が4本(裏面2本は図示なし)設けられている。底面35は、培土保持枠36を備える底面開口部37を有する。育苗孔31の内面には、開口部より底面に向かって延伸する8本のリブ38が設けられている。培土保持枠36は、中抜きの枠36Aと枠36Aから放射状に突出した連結部36B1~36B4とを備える。培土保持枠の連結部36B1~36B4は、底面の端部37A~37Dと連結している。これにより底面開口部は底面の略全面が培土保持枠で仕切られている。底面開口部37及びリブは空気根切りを促すので、育苗効率を向上させることができる。
【0036】
育苗コンテナの素材の例、好ましい例は、コンテナホルダーの素材の例、好ましい例と同様であり、コンテナホルダーの素材と同様とすればよい。
【0037】
〔3.育苗キット〕
本発明のコンテナホルダーは、上記の育苗コンテナ複数個と共に育苗キットを構成してもよい。複数個の育苗コンテナは、サイズ、大きさ等が異なる2以上の育苗コンテナであることが好ましい。育苗キットは更に、山林苗の生産に通常用いられるもの、例えば、培土及び肥料を含んでいてもよい。培土としては、例えば、砂、土(例、赤玉土、鹿沼土)等の自然土壌が挙げられる。支持体の別の例としては、籾殻燻炭、ココナッツ繊維、バーミキュライト、パーライト、ピートモス、ガラスビーズ等の人工土壌;発泡フェノール樹脂、ロックウール等の多孔性成形品;固化剤(例、寒天又はゲランガム)が挙げられ、これらから選ばれる少なくとも一種を自然土壌に換えて、又は自然土壌と共に用いてもよい。肥料は、速効性肥料及び緩効性肥料のいずれでもよく、無機肥料、有機肥料及び化成肥料のいずれでもよい。育苗キットはさらに、幼苗、種子、挿し穂、発根苗等の植物材料を更に含んでいてもよい。
【0038】
〔4.山林苗の生産方法〕
本発明のコンテナホルダーおよび育苗キットは、山林苗の生産に好ましく用いられる。山林苗の生産方法を、一例を挙げて説明すると以下のとおりである。山林苗の生産方法は、山林苗の種子、幼苗、挿し穂又は発根苗を育苗コンテナの育苗孔に植え付ける植え付け工程、育苗コンテナをコンテナホルダーに装着する装着工程、培土を育苗孔に詰める培土充填工程、苗を育成する育苗工程、及び、空気根切りをする空気根切り工程に分けることができる。工程の順序は、特に限定されず、先に装着工程を行った後に、植え付け工程と培土充填工程を同時に又は順次行ってもよいし、先に培土充填工程を行った後に、植え付け工程と装着工程を順次行ってもよい。各工程の実施条件は、特段限定されず、通常の山林苗の生産方法で行う条件で進めればよいが、培土充填工程においては、培土をフレーム部上面に積載しコンテナホルダーを振動させて培土を育苗孔に落下させ、育苗孔に落下しなかった培土は摺り切りで落とす操作を行うことが好ましい。これにより複数の育苗コンテナに短時間で容易に培土を充填でき、作業性を高めることができる。また、空気根切り工程は、育苗工程の少なくとも発根後の期間において行うことが好ましく、全期間において行ってもよい。
【0039】
育苗工程においては、途中で苗をサイズ別に仕分けする仕分け工程を行うことが好ましい。これにより、樹種、苗個体の生育能力等の育苗条件に応じた最適条件に変更したり、生育能力の低い個体を間引きしたりする操作を簡単に行うことができる。仕分けとしては、例えば、苗をサイズ別に2群以上に分類しそのうちの少なくとも1群の育苗コンテナを移動することが挙げられる。移動先は、別のコンテナでもよいし、同じホルダーの別のユニットでもよい。苗をサイズ別に2群以上に分類し一つの群をコンテナの一部に写し他の群を別のコンテナに移すこと、サイズとしては、例えば苗の重量、苗高、幹径が挙げられる。仕分けする基準としては、仕分けする基準は、複数の苗の平均値でもよいし、各樹種の標準値でもよい。仕分けを行う時期は、育苗期間(植え付け時~育苗完了時)の前半であることが好ましく、植え付け時から2~5か月後(好ましくは3~4か月後)、又は育苗期間の1/5~1/3を経過した時期であることが好ましい。
空気根切り工程は、山林苗の空気根切り処理を行う工程である。空気根切り処理とは、育苗コンテナの開口部(例えば、底面開口部、側面部のスリット)から空気中に出た根の成長を停止させる処理である。これにより、育苗コンテナ内部での根の変形(いわゆる根巻き等)を抑制できる。空気根切り工程は、山林苗の生育の度合い(好ましくは、発根後の根の生育の度合い)をみながら行ってもよいし、植え付け工程後すぐに、育苗工程の全期間において、将来の根の変形に備えて空気根切り処理を行ってもよい。
【実施例
【0040】
実施例1
2018年2月に種まき用培土を充填した育苗箱にスギの種子を播種した。同年3月に発芽したスギ稚苗を、コンテナ苗木育苗培土(株式会社トップ製)を充填した独立型育苗コンテナ(図11)に植え替えた。苗木を植え付けた独立型育苗コンテナは1枚あたり24個のコンテナを保持できるコンテナホルダー(図1)に入れた。その際、独立型育苗コンテナと地面の間に3.5cm程度空間を設けるようにした。
【0041】
コンテナホルダー全体に土を乗せて、コンテナホルダーをゆすって培土をコンテナ内に充填した。さらにコンテナホルダー上部に残った土をすりきりで落とした。独立型育苗コンテナをコンテナホルダーにセットしてから培土を充填するまでの時間を計測した。
【0042】
植え替え後は露地に設置したパレット(1100×1100×150mm)に配置して、3か月間育苗を行った。同年6月に各個体の成長量を調査し、大きさ別に仕分けを行った。すなわち、苗高20cm以上の苗と苗高20cm以下の苗に仕分けた。すなわち、コンテナホルダー(上記と同じ、図1に示すもの)を2つ用意し、1つには苗高20cm以上の苗のコンテナを集め、もう1つに苗高20cm以下の苗のコンテナを集めた。
【0043】
その後、2019年3月まで育苗を行い、空気根切り、得苗率について評価を行った。空気根切りの評価は、コンテナ底面を目視で確認し、根が巻いていなければ空気根切りが出来ている個体として計測した。
【0044】
得苗率については苗高30~45cm、根元径3.5mm以上を満たす個体の数を得苗数として計測し、育苗本数に対する得苗数を得苗率(%)として算出した。
【0045】
実施例2
育苗する樹種をクロマツとした以外、実施例1と同様に実施した。
【0046】
比較例1
育苗容器に連結型コンテナ(リエコ社製 マルチキャビティコンテナ:穴の直径7cm、穴の高さ10cm、穴の大きさ約311cc、1ケースの穴の数15穴、プラスチック製)を用い、2019年6月に大きさ別の仕分けを行わなかったこと以外、実施例1と同様に実施した。
【0047】
比較例2
育苗容器に比較例1と同じ連結型コンテナを用い、2019年6月に大きさ別に仕分けを行わなかった以外、実施例2と同様に実施した。
【0048】
表1に実施例1~2及び比較例1~2の実施条件及び結果を示す。
【0049】
【表1】
【0050】
実施例3
まず、独立型コンテナ24個をコンテナホルダーにセットした。次に、コンテナホルダー全体に培土を乗せて、コンテナホルダーをゆすって培土をコンテナ内に充填した。さらにコンテナホルダー上部に残った培土をすりきりで落とした。独立型コンテナをコンテナホルダーにセットしてから培土を充填するまでの時間を計測した。培土は、実施例1で用いた培土と同じものを用いた。
【0051】
比較例4
まず、独立型コンテナの上端開口部からスコップで培土をコンテナに入れた。次にコンテナ内の空隙をなくすためにコンテナを軽く叩いた。さらに、コンテナ上端開口部よりスコップで培土をコンテナに入れて培土を充填した。同じ独立型コンテナ24個に上記の手順で順次培土を充填し、すべてのコンテナに培土を充填完了するまでの時間を計測した。
【0052】
表に、実施例3及び比較例4の実施条件及び結果を示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表1から明らかなように、独立型コンテナをコンテナホルダーに装着して用いた実施例1及び2では、連結型コンテナを用いた比較例1及び2と比較して、仕分けや効率よい空気根切りができ、得苗率が高かった。また、表2から明らかなように独立型コンテナをコンテナホルダーに装着して用いた実施例3では、同じ数の独立型コンテナを単独で用いた比較例3と比較して早期に培土を充填できた。これらの結果は、本発明によれば、山林苗を効率よく生産でき、得苗率を向上させることができ、かつ育苗の際の作業性も向上できることを示している。
【符号の説明】
【0055】
1 フレーム部、11 開口部、12 保持枠部、13 嵌合部、14 凹部、15 持ち手、16 水切り孔
2 支持部、21 支柱部、22 底面枠部、23 底面開口部
U1~U24 保持ユニット
3 育苗コンテナ、31 育苗孔、32 開口部、33 鍔部、34 補強用の溝、35 底面、36 培土保持枠、37 底面開口部、38 リブ
図1
図2
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図10
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