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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】光学走査装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/12 20060101AFI20240105BHJP
   B41J 2/47 20060101ALI20240105BHJP
   G03G 15/04 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
G02B26/12
B41J2/47 101D
G03G15/04 111
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019181353
(22)【出願日】2019-10-01
(65)【公開番号】P2021056446
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】白川 智尋
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-198890(JP,A)
【文献】特開平10-239617(JP,A)
【文献】特開2007-114396(JP,A)
【文献】特開2001-100137(JP,A)
【文献】特開平07-168115(JP,A)
【文献】特開2007-010868(JP,A)
【文献】特開2013-156419(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0050346(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10-26/12
B41J 2/47
G03G 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射する光源と、
前記光源より出射されたレーザ光を偏向する光偏向器であって、レーザ光を反射する回転多面鏡と、前記回転多面鏡を駆動する駆動部と、前記駆動部を制御する集積回路と、前記駆動部と前記集積回路を実装する基板と、を有する光偏向器と、
前記光偏向器で偏向されたレーザ光を被走査面に導くための複数の光学素子と、
前記光偏向器、及び前記複数の光学素子を内部に収容する筐体と、
を備える光学走査装置において、
前記基板の実装面に対して垂直方向に前記装置を見た時、前記複数の光学素子のうちの少なくとも一の光学素子は、前記基板の一部の領域及び前記回転多面鏡と重なる位置に配置され、前記集積回路は、前記基板の前記領域から離れた位置に配置されていることを特徴とする光学走査装置。
【請求項2】
前記基板の形状は略矩形であり、前記垂直方向に前記装置を見た時、前記基板は、前記矩形を構成する一つの辺と前記一の光学素子の長手方向とが平行となるように、前記筐体に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の光学走査装置。
【請求項3】
前記基板の形状は略矩形であり、前記垂直方向に前記装置を見た時、前記基板は、前記矩形を構成する全ての辺と前記一の光学素子の長手方向とが90°以外の角度で交差するように、前記筐体に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の光学走査装置。
【請求項4】
前記一の光学素子は、レーザ光を透過するレンズ、又はレーザ光を反射するミラーであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光学走査装置。
【請求項5】
前記一の光学素子は、樹脂製であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光学走査装置。
【請求項6】
前記基板は、前記駆動部及び前記集積回路に電力を供給するためのケーブルを接続するコネクタ部を有し、
前記コネクタ部は、前記基板の前記領域から離れた位置に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光学走査装置。
【請求項7】
感光体と、
前記感光体を画像情報に応じたレーザ光で走査する光学走査ユニットと、
を有し、記録材に画像を形成する電子写真方式の画像形成装置において、
前記光学走査ユニットが、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光学走査装置であることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光偏向器を具備する光学走査装置、及び光学走査装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術を用いた画像形成装置に搭載される光学走査装置は、レーザダイオードから出射されたレーザ光を光偏向器で偏向し、レンズやミラーなどの光学素子を用いて、被走査面上に潜像画像を形成するように構成されている。光偏向器は、レーザ光を偏向する回転多面鏡を駆動するモータの駆動制御を行うために、複数の回路素子を搭載している。特に、回路素子の一つである集積回路は、電力供給時に発熱する主な発熱源の1つであり、光偏向器近傍に配置された部品へ熱を発散させる。光学走査装置に配置されたレンズは、成形の容易さやコストの観点から樹脂製のものが多用されており、樹脂製のレンズが集積回路の発する熱によって熱膨張し、変形する場合がある。そして、光学素子の変形が許容量を超えると、本来の光学性能が発揮できなくなり、例えばレーザ光の感光ドラムに対する照射位置がずれたり、スポット径の肥大などが生じたりする。更に、複数の色のトナーを使用するカラー画像形成装置の場合は、光偏向器が発する熱が光学走査装置内の各色の潜像画像を形成するための光学素子に及ぼす影響に差が生じると、形成される画像における色ずれや色ムラなどの画像不良につながってしまう。そこで、光偏向器が発する熱の影響を低減させる方法として、例えば、特許文献1では、光偏向器を仕切り部材で覆い、光学素子との間の空間を遮断する構成が提案されている。仕切り部材により、光偏向器内の熱せられた空気が光学素子の配置された空間へ移動することを妨げることで、熱の伝搬を防ぐことができる。
【0003】
一方、近年、画像形成装置の小型化に伴い、光学走査装置の更なる小型化が求められている。そこで、例えば、特許文献2では、目標とする光学性能を満足しながらも、更なる小型化を図るために、光学走査装置内の光学素子を光偏向器の近傍に配置する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-197330号公報
【文献】特開2018-36512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来例は、次のような課題を有している。すなわち、特許文献1に示された提案は、仕切り部材を別途設けることにより部品点数や組立て工数の増加を招くことになる。また、光偏向器周辺には、仕切り部材を設置するためのスペースが必要となるが、特許文献2のような光偏向器近傍に光学素子を配置する構成では、仕切り部材を設置するためのスペースを確保することが困難である。また、仕切り部材を設置するためのスペースを確保することにより、確保したスペース分だけ光学走査装置が大型化することになるため、特許文献2の目的である小型化の効果が薄れてしまうことになる。
【0006】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、光偏向器の近傍に配置された光学素子への熱の影響を低減し、光学走査装置を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明では、以下の構成を備える。
【0008】
(1)レーザ光を出射する光源と、前記光源より出射されたレーザ光を偏向する光偏向器であって、レーザ光を反射する回転多面鏡と、前記回転多面鏡を駆動する駆動部と、前記駆動部を制御する集積回路と、前記駆動部と前記集積回路を実装する基板と、を有する光偏向器と、前記光偏向器で偏向されたレーザ光を被走査面に導くための複数の光学素子と、前記光偏向器、及び前記複数の光学素子を内部に収容する筐体と、を備える光学走査装置において、前記基板の実装面に対して垂直方向に前記装置を見た時、前記複数の光学素子のうちの少なくとも一の光学素子は、前記基板の一部の領域及び前記回転多面鏡と重なる位置に配置され、前記集積回路は、前記基板の前記領域から離れた位置に配置されていることを特徴とする光学走査装置。
(2)感光体と、前記感光体を画像情報に応じたレーザ光で走査する光学走査ユニットと、を有し、記録材に画像を形成する電子写真方式の画像形成装置において、前記光学走査ユニットが、前記(1)に記載の光学走査装置であることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光偏向器の近傍に配置された光学素子への熱の影響を低減し、光学走査装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1、2の画像形成装置の構成を示す断面図
図2】実施例1、2の光学走査装置の構成を示す断面図
図3】実施例1の光学走査装置の光偏向器と光学素子の配置関係を説明する図
図4】実施例2の光学走査装置の光偏向器と光学素子の配置関係を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
[画像形成装置の構成]
図1は、電子写真方式の画像形成装置1の構成の一例を示す断面図である。画像形成装置には、図1に示すように、4個のプロセスカートリッジPY、PM、PC、PKが略水平方向に並べて配置されている。プロセスカートリッジPY、PM、PC、PKには、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の色のトナーが収容されている。なお、プロセスカートリッジPKは、他のプロセスカートリッジPY、PM、PCよりもトナー容量が大きいため、高さ(図中、上下方向の長さ)が大きくなっている。また、プロセスカートリッジPY、PM、PC、PKには、それぞれ感光体である感光ドラム11(11a、11b、11c、11d)と、現像ローラ12(12a、12b、12c、12d)が一体的に配置されている。現像ローラ12は、感光ドラム11上(感光ドラム上)に形成された静電潜像にトナーを付着させることにより、静電潜像を現像してトナー像を形成する。また、図1に示すように、各プロセスカートリッジは、同一の構成を有している。なお、符号末尾のa、b、c、dは、それぞれ、プロセスカートリッジPY、PM、PC、PKに対応している。なお、以下では、特定の色の部材を指す場合を除き、末尾のa、b、c、dは省略する。
【0014】
また、プロセスカートリッジPY、PM、PC、PKの図中上方には、光学走査ユニットである光学走査装置2が配置されている。光学走査装置2は、画像情報に基づいてレーザ光を各プロセスカートリッジの感光ドラム11に照射し、感光ドラム11の表面に静電潜像を形成する。一方、プロセスカートリッジPY、PM、PC、PKの図中下方には、中間転写ベルトユニット20が配置されている。中間転写ベルトユニット20は、中間転写ベルト21、駆動ローラ22、テンションローラ23、従動ローラ24で構成されている。図1に示すように、中間転写ベルト21は、駆動ローラ22、テンションローラ23、従動ローラ24で張架され、図中の矢印方向(時計回り方向)に回転する。
【0015】
各プロセスカートリッジPY、PM、PC、PKの感光ドラム11の下方には、感光ドラム11に対向する位置に一次転写ローラ25が配置されている。一次転写ローラ25により中間転写ベルト21は感光ドラム11に当接し、各プロセスカートリッジの感光ドラム11上のトナー像が、順次中間転写ベルト21上に重畳して転写され、カラー画像が形成される。そして、駆動ローラ22は、中間転写ベルト21を介して二次転写ローラ26と当接されており、中間転写ベルト21上のカラー画像は、給紙トレイ61から給送された記録材Sに転写される。
【0016】
また、画像形成装置1内には、定着器30と排出装置40が配置されている。定着器30は、記録材Sに転写されたカラー画像を加熱する定着フィルム31と、記録材Sに転写されたカラー画像を加圧する加圧ローラ32とを有し、記録材Sにカラー画像を定着させる。一方、排出装置40は、排出ローラ41と排出コロ42を有し、定着器30から搬送された記録材Sを、画像形成装置1の上面に設けられ、斜面部51を有する積載トレイ50に排出する。
【0017】
画像形成に際しては、各プロセスカートリッジPY、PM、PC、PKでは、感光ドラム11を回転させ、帯電ローラ(不図示)によって表面を一様な電位に帯電された感光ドラム11に、光学走査装置2から画像情報に応じたレーザ光により露光が行われる。これにより、感光ドラム11の表面に静電潜像が形成され、静電潜像は現像ローラ12によって現像され、トナー像が形成される。そして、感光ドラム11上のトナー像は、順次、中間転写ベルト21上に重畳して転写され、カラー画像が形成される。
【0018】
一方、給紙装置60の給紙トレイ61内に積載された記録媒体である記録材Sは、図中の矢印方向(時計回り方向)に回転する給紙ローラ62により給紙され、重送した記録材Sは、分離ローラ63によって分離され、搬送される。そして、記録材Sは、駆動ローラ22と二次転写ローラ26とが当接するニップ部へ搬送され、中間転写ベルト21に形成されたカラー画像が、ニップ部に搬送された記録材Sに転写される。更に、カラー画像が転写された記録材Sは、定着器30の定着フィルム31と加圧ローラ32とが当接するニップ部へ搬送され、加熱・加圧されてカラー画像が記録材Sに定着される。カラー画像が定着された記録材Sは、排出装置40により、積載トレイ50に排出され、斜面部51に積載される。
【0019】
[光学走査装置の構成]
図2は、図1の画像形成装置1に搭載された光学走査装置2の構成を示す断面図である。光学走査装置2は、レーザ光を出射する光源であるレーザダイオード、レーザ光を偏向する光偏向器SM、光偏向器SMに偏向されたレーザ光を各プロセスカートリッジPY、PM、PC、PKの感光ドラム11上に導く結像レンズや反射ミラーを備えている。光学走査装置2では、図2に示すように、筐体(光学箱ともいう)201の略中央に光偏向器SMが配置されている。光偏向器SMは、レーザダイオード(不図示)から入射するレーザ光を偏向する回転多面鏡306と、回転多面鏡306を駆動する駆動部であるロータ部304と、ロータ部304が搭載されたモータ駆動基板301を有している。
【0020】
図2において、光偏向器SMの左側には、レーザ光を透過する第1結像レンズN1、第2結像レンズN1a、N1b、及びレーザ光を反射する第1反射ミラーM1a、M1b、第2反射ミラーM2bが配置されている。一方、光偏向器SMの右側には、レーザ光を透過する第1結像レンズN2、第2結像レンズN2c、N2d、及びレーザ光を反射する第1反射ミラーM1c、M1d、第2反射ミラーM2cが配置されている。上述した光偏向器SMや各結像レンズ、各反射ミラーは、筐体201内部に一体的に配置され、筐体201の開口部を密閉する筐体カバー202を筐体201に取り付けることにより、筐体201内部は密閉状態に設定される。ここで、光学走査装置2は、光偏向器SMと筐体カバー202とに挟まれた装置内の空間SP(黒い枠線で囲まれた部分)に、後述するレーザ光Lcを感光ドラム11cに導くための第2反射ミラーM2cが配置されている。これは、画像形成装置1内における光学走査装置2の搭載領域に合わせて光学走査装置2内の光学素子を配置することにより、光学走査装置2、ひいては画像形成装置1の小型化を図っている。
【0021】
そして、図2に示す光学走査装置2の図面手前側には、各プロセスカートリッジPY、PM、PC、PKの感光ドラム11に静電潜像を形成するレーザ光を出射し、感光ドラム11を露光するレーザダイオード(不図示)が配置されている。レーザダイオードは、プロセスカートリッジPY、PM、PC、PKの各感光ドラム11に対応して、設けられている。プロセスカートリッジPYの感光ドラム11aに対応したレーザダイオードから出射されたレーザ光Laは、光偏向器SMの回転多面鏡306によって偏向され、第1結像レンズN1に入射する。第1結像レンズN1を通過したレーザ光Laは、第1反射ミラーM1aによって反射される。第1反射ミラーM1aによって反射されたレーザ光Laは、第2結像レンズN1a、筐体カバー202に設けられた透明窓を通過して、感光ドラム11aを走査する。
【0022】
プロセスカートリッジPMの感光ドラム11bに対応したレーザダイオードから出射されたレーザ光Lbは、光偏向器SMの回転多面鏡306によって偏向され、第1結像レンズN1に入射する。第1結像レンズN1を通過したレーザ光Lbは、第1反射ミラーM1bによって反射される。第1反射ミラーM1bによって反射されたレーザ光Lbは、次に第2反射ミラーM2bによって反射される。第2反射ミラーM2bによって反射されたレーザ光Lbは、第2結像レンズN1b、筐体カバー202に設けられた透明窓を通過して、感光ドラム11bを走査する。
【0023】
プロセスカートリッジPCの感光ドラム11cに対応したレーザダイオードから出射されたレーザ光Lcは、光偏向器SMの回転多面鏡306によって偏向され、第1結像レンズN2に入射する。第1結像レンズN2を通過したレーザ光Lcは、第1反射ミラーM1cによって反射される。第1反射ミラーM1cによって反射されたレーザ光Lcは、第2結像レンズN2cに入射する。第2結像レンズN2cを通過したレーザ光Lcは、第2反射ミラーM2cによって反射され、筐体カバー202に設けられた透明窓を通過して、感光ドラム11cを走査する。
【0024】
プロセスカートリッジPKの感光ドラム11dに対応したレーザダイオードから出射されたレーザ光Ldは、光偏向器SMの回転多面鏡306によって偏向され、第1結像レンズN2に入射する。第1結像レンズN2を通過したレーザ光Ldは、第1反射ミラーM1dによって反射される。第1反射ミラーM1dによって反射されたレーザ光Ldは、第2結像レンズN2d、筐体カバー202に設けられた透明窓を通過して、感光ドラム11dを走査する。
【0025】
[光偏向器の発熱素子と光学素子の配置関係]
次に、図3を用いて、図2において光偏向器SMと筐体カバー202とに挟まれた空間SPに配置された光偏向器SM、及び第2反射ミラーM2cの位置関係について説明する。図3は、光偏向器SMと第2反射ミラーM2cを、光偏向器SMに搭載しているモータ駆動基板301の実装面に対して垂直な方向から見たときの上面図であり、図2において、図中下方向から光偏向器SM、及び第2反射ミラーM2cを見たときの図である。図3には、第2反射ミラーM2cと、第2反射ミラーM2cにより一部が隠れている光偏向器SMが示されている。第2反射ミラーM2cにより隠れている光偏向器SMの部分(光偏向器SMと第2反射ミラーM2cとの重なり部303)は、ハッチングにより表示され、重なり部303における光偏向器SMの外形は一点鎖線で示されている。
【0026】
図3に示すように、光偏向器SMは、形状が略矩形のモータ駆動基板301を有している。モータ駆動基板301上には、回転多面鏡306が上部に搭載され、回転軸307により回転多面鏡306を回転駆動するロータ部304、ロータ部304の駆動制御を行う集積回路であるIC305、ケーブルが接続されるコネクタ部302が実装されている。なお、コネクタ部302に接続されるケーブルには、IC305との信号授受を行う信号線や、光偏向器SMの各回路素子に電力を供給するための電源線が収容されている。また、光偏向器SMのモータ駆動基板301の図中、右側の側辺部を側辺SL2、左側の側辺を側辺SL1とする。
【0027】
図3に示すように、第2反射ミラーM2cは、光偏向器SMのモータ駆動基板301との間に重なり部303(斜線部)が形成される筐体201内の位置に設置されている。ここで、光偏向器SMに実装されたIC305は、光偏向器SMにおける主な発熱源であり、コネクタ部302に接続されたケーブルを介して電力が供給されると発熱する回路素子である。そのため、光偏向器SM近傍に配置された光学素子は、IC305が発する熱の伝播により、熱膨張を起こして変形してしまう場合がある。そして、光学素子の変形が許容量を超えると、光学素子が有する光学性能が低下し、図2で示すレーザ光La、Lb、Lc、Ldの感光ドラム11a、11b、11c、11dに対する照射位置ずれやスポット径の肥大などが生じることになる。特に、カラー画像形成装置の場合は、光偏向器SMのIC305が発する熱が各色の光学素子に及ぼす影響に差が生じ、トナーの色により照射位置ずれ等により、形成されるカラー画像における色ずれや色ムラなどの画像不良につながってしまう。
【0028】
そこで、本実施例では、モータ駆動基板301のIC305が実装される実装面に垂直な方向から見て、第2反射ミラーM2cと重ならない位置に、IC305を配置している。このとき、IC305はモータ駆動基板301の実装面上の配置可能な範囲で、第2反射ミラーM2cからなるべく離れた位置に配置することが望ましい。例えば図3に示すように、IC305をモータ駆動基板301の第2反射ミラーM2cから遠い側の側辺SL1の端部近傍に配置することが望ましい。
【0029】
更に、コネクタ部302に接続されるケーブルも挿抜等の着脱作業が行われる。そのため、図3に示すように、ケーブルの着脱時に手が触れたりしないように、コネクタ部302を、第2反射ミラーM2cと重ならないようなモータ駆動基板301上の位置に配置しておくとよい。光偏向器SMを上述したように配置することにより、重なり部303上に配置されている第2反射ミラーM2cは、IC305と第2反射ミラーM2cが重なっている場合よりもIC305からの熱の伝播量が少なくなり、熱膨張を低減することができる。
【0030】
以上説明したように、本実施例の光偏向器SMの近傍に光学素子を配置し、小型化した光学走査装置により、光偏向器SM近傍の光学素子への熱の影響を低減し、色ずれや色ムラが発生しにくい光学走査装置2及び画像形成装置1が提供可能である。なお、本実施例では、光偏向器SMとの重なり部303を形成する光学素子は反射ミラー(第2反射ミラーM2c)であるが、反射ミラーに限定されるものではなく、例えば樹脂製のレンズなど、他の光学素子についても適用が可能である。また、光学素子は使用材料の線膨張係数が大きいほど熱膨張が大きくなり、例えば光学素子の材料であるガラス材と樹脂材を比較した場合、樹脂材の線膨張係数はガラス材の線膨張係数よりも大きい。そのため、光偏向器SMとの重なり部303上に配置される光学素子の材料が樹脂材の場合には、ガラス材で作られた光学素子よりも、光偏向器SM近傍の光学素子への熱の影響を低減する点でより効果的である。
【0031】
以上説明したように、本実施例によれば、光偏向器の近傍に配置された光学素子への熱の影響を低減し、光学走査装置を小型化することができる。
【実施例2】
【0032】
実施例1では、光偏向器のICの搭載位置を光偏向器と光学素子との重なり部からずらすことにより、光学素子に対するICの発する熱の影響を低減させた実施例について説明した。実施例2では、光偏向器をロータ部の回転軸まわりに回転させて取り付けることにより、光偏向器と光学素子との重なり部の面積を減らし、光学素子に対するICの発する熱の影響を低減させた実施例について説明する。なお、本実施例での画像形成装置、及び光学走査装置の構成は実施例1と同様であり、同じ構成には同一符号を用いて説明することで、ここでの説明を省略する。
【0033】
[光偏向器の発熱素子と光学素子の配置関係]
図4を用いて、図2において光偏向器SM(本実施例では光偏向器SM2)と筐体カバー202とに挟まれた装置内の空間SPに配置された光偏向器SM2、及び第2反射ミラーM2cの位置関係について説明する。図4は、光偏向器SM2と第2反射ミラーM2cを、光偏向器SM2に搭載しているモータ駆動基板401の実装面に対して垂直方向から見たときの上面図であり、図2において図中下方向から光偏向器SM2、及び第2反射ミラーM2cを見たときの図である。図4には、第2反射ミラーM2cと、第2反射ミラーM2cにより一部が隠れている光偏向器SM2が示されている。第2反射ミラーM2cにより隠れている光偏向器SMの部分(光偏向器SMと第2反射ミラーM2cとの重なり部403)は、ハッチングにより表示され、重なり部403における光偏向器SM2の外形は破線で示されている。図4の重なり部403の面積は、実施例1の図3に示す重なり部303の面積よりも小さくなっている。
【0034】
図4に示すように、光偏向器SM2は、矩形のモータ駆動基板401を有している。モータ駆動基板401上には、回転多面鏡306が上部に搭載され、回転軸307により回転多面鏡306を回転駆動するロータ部304、ロータ部304の駆動制御を行う集積回路であるIC305、ケーブルが接続されるコネクタ部302が実装されている。なお、コネクタ部302に接続されるケーブルには、IC305との信号授受を行う信号線や、光偏向器SMの各回路素子に電力を供給するための電源線が収容されている。
【0035】
図4に示すように、第2反射ミラーM2cは、走査光学装置2の小型化を図るため、光偏向器SM2のモータ駆動基板401との間に重なり部403(斜線部)が形成される筐体201内の位置に設置されている。ここで、光偏向器SM2のモータ駆動基板401の図中、右側の側辺部を側辺SL2、左側の側辺を側辺SL1とする。実施例1では、光偏向器SMの側辺SL1、SL2は、第2反射ミラーM2cの長手方向とは交差しないように、平行となるように、すなわち、光偏向器SMは、第2反射ミラーM2cとの角度を有しないように配置されていた。
【0036】
一方、本実施例の光偏向器SM2は、図4に示すように、光偏向器SMの側辺SL1、SL2は、第2反射ミラーM2cの長手方向と交差するように、第2反射ミラーM2cとの角度を有するように配置されている。すなわち、本実施例では、光偏向器SM2のモータ駆動基板401は、ロータ部304の回転軸307が、第1結像レンズN1の中点と第1結像レンズN2の中点を結ぶ線分の中点に配置されるように設置される。そして、モータ駆動基板401は、ロータ部304の回転軸307を中心にして水平に、図中時計回り方向に回転させた位置に固定されている。すなわち、モータ駆動基板401は、モータ駆動基板401を構成する全ての辺と第2反射ミラーM2cの長手方向とが、90°以外の角度で交差するように、筐体201に固定されている。このとき、モータ駆動基板401の回転方向は、モータ駆動基板401の側辺SL1、SL2との中央部に実装されたIC305が第2反射ミラーM2cから遠ざかる方向である。これにより、図4に示すように、IC305は、第2反射ミラーM2cと重ならない位置に配置されている。また、モータ駆動基板401は、回転多面鏡306により偏向されたレーザ光が入射する第1結像レンズN1、N2や、第1結像レンズN1、N2を筐体201に固定するために設けられた固定部402と接触しない範囲内(干渉しない範囲内)で回転される。
【0037】
なお、第2反射ミラーM2cは、レーザ光により静電潜像が形成される感光ドラム11の回転軸と平行に筐体201に取り付かれている。そのため、光偏向器SM2のモータ駆動基板401は、第2反射ミラーM2cと角度を有して配置されているが、感光ドラム11上に形成される静電潜像の形成に影響を与えることはない。
【0038】
また、本実施例では、IC305はモータ駆動基板401の側辺SL1、SL2との略中央に実装されている。第2反射ミラーM2cへの熱の影響を更に低減するため、IC305はモータ駆動基板401の実装面上の配置可能な範囲で、第2反射ミラーM2cからなるべく離れた位置に配置することが望ましい。例えば実施例1の図3のように、第1結像レンズN1への熱の影響を考慮しながら、IC305をモータ駆動基板401の第2反射ミラーM2cから遠い側の側辺SL1の端部近傍に配置してもよい。光偏向器SM2を上述したように配置することにより、重なり部403上に配置されている第2反射ミラーM2cは、IC305と第2反射ミラーM2cが重なっている場合よりもIC305からの熱の伝播量が少なくなり、熱膨張を低減することができる。
【0039】
更に、コネクタ部302に接続されるケーブル挿抜等の着脱作業が行われる。そのため、光偏向器SM2でも、図4に示すように、ケーブルの着脱時に第2反射ミラーM2cや第1結像レンズN1に手が触れないように、コネクタ部302を第2反射ミラーM2cと重ならないようなモータ駆動基板401上の位置に配置しておくとよい。以上説明したように、本実施例の光偏向器SM2の近傍に光学素子を配置し、小型化した光学走査装置により、光偏向器SM2近傍の光学素子への熱の影響を低減し、色ずれや色ムラが発生しにくい光学走査装置2及び画像形成装置1が提供可能である。
【0040】
以上説明したように、本実施例によれば、光偏向器の近傍に配置された光学素子への熱の影響を低減し、光学走査装置を小型化することができる。
【符号の説明】
【0041】
201 筐体
301 モータ駆動基板
304 ロータ部
305 IC
306 回転多面鏡
M2c 第2反射ミラー
SM 光偏向器
図1
図2
図3
図4