(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】印刷媒体
(51)【国際特許分類】
B41M 5/42 20060101AFI20240105BHJP
B41M 5/44 20060101ALI20240105BHJP
B42D 25/378 20140101ALI20240105BHJP
【FI】
B41M5/42 221
B41M5/44 220
B42D25/378
(21)【出願番号】P 2019182815
(22)【出願日】2019-10-03
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【氏名又は名称】塩川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】本田 昌洋
(72)【発明者】
【氏名】島根 博昭
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-169161(JP,A)
【文献】特開平06-297848(JP,A)
【文献】特開2004-098453(JP,A)
【文献】特開2016-155903(JP,A)
【文献】特開2006-347052(JP,A)
【文献】特開2020-006575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/28- 5/48
B42D 15/02
B42D 25/00-25/485
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体であって、
感熱記録シート、及び前記感熱記録シート上の光輝性印刷層を具備しており、
前記光輝性印刷層が、フォトクロミックパール顔料、合成マイカ系無着色パール顔料、及びバインダー樹脂を含有して
おり、
前記フォトクロミックパール顔料が、フォトクロミック性賦活剤を含有しており、かつ
前記感熱記録シートが、基材層、感熱記録層、及び保護層をこの順で具備しており、それによって、前記印刷媒体が、前記基材層、前記感熱記録層、前記保護層、及び前記光輝性印刷層をこの順で具備している、
印刷媒体。
【請求項2】
前記フォトクロミックパール顔料の存在比率が、前記フォトクロミックパール顔料及び前記合成マイカ系無着色パール顔料の合計の質量を基準として、55~85質量%であり、かつ前記合成マイカ系無着色パール顔料の存在比率が、前記フォトクロミックパール顔料及び前記合成マイカ系無着色パール顔料の合計の質量を基準として、15~45質量%である、請求項1に記載の印刷媒体。
【請求項3】
前記フォトクロミックパール顔料の含有率が、前記光輝性印刷層全体の質量を基準として、37質量%以下である。請求項1又は2に記載の印刷媒体。
【請求項4】
前記感熱記録シートと前記光輝性印刷層との間に、他の印刷層を更に具備している、請求項
1~3のいずれか一項に記載の印刷媒体。
【請求項5】
前記
基材層の前記感熱記録層に対する反対側に、磁気記録層を更に具備している、請求項1~
4のいずれか一項に記載の印刷媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
感熱紙を用いた印刷媒体、例えばチケット等の表面に、偽造防止等の目的で、パール顔料を含有している光輝性印刷層を設けることが行われている。
【0003】
特許文献1では、少なくとも一部に感熱発色層を備えたサーマルカードにおいて、該感熱発色層の上に透明性を有するパールインキ層が積層され、サーマル印字により感熱発色した時に、色彩の可変効果が増大することを特徴とするサーマルカードが開示されている。
【0004】
なお、特許文献2では、支持体及び感熱層を有する感熱記録材料であって、感熱層が感熱発色材とアコ錯体とを含有していることを特徴とする感熱記録材料が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、種々のフォトクロミックパール顔料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4508803号公報
【文献】特開昭54-118845号公報
【文献】特開2016-155903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のパールインキ層によれば、有色の光沢がもたらされており、この光沢は、複写したときに再現できないため、良好な偽造防止性に寄与するものであった。しかしながら、この光沢により、サーマル印字された印刷層が視認し難くなること、及び/又は読取機器による読取がし難くなることがあった。
【0008】
したがって、本発明では、感熱記録シート上の印字の読取を妨げず、かつ良好な偽造防止性を有する新規な印刷媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈態様1〉感熱記録シート、及び前記感熱記録シート上の光輝性印刷層を具備しており、
前記光輝性印刷層が、フォトクロミックパール顔料、合成マイカ系無着色パール顔料、及びバインダー樹脂を含有している、
印刷媒体。
〈態様2〉前記フォトクロミックパール顔料の存在比率が、前記フォトクロミックパール顔料及び前記合成マイカ系無着色パール顔料の合計の質量を基準として、55~85質量%であり、かつ前記合成マイカ系無着色パール顔料の存在比率が、前記フォトクロミックパール顔料及び前記合成マイカ系無着色パール顔料の合計の質量を基準として、15~45質量%である、態様1に記載の印刷媒体。
〈態様3〉前記フォトクロミックパール顔料の含有率が、前記光輝性印刷層全体の質量を基準として、37質量%以下である。態様1又は2に記載の印刷媒体。
〈態様4〉前記感熱記録シートが、基材層、感熱記録層、及び保護層をこの順で具備しており、それによって、前記印刷媒体が、前記基材層、前記感熱記録層、前記保護層、及び前記光輝性印刷層をこの順で具備している、態様1~3のいずれか一項に記載の印刷媒体。
〈態様5〉前記感熱記録シートと前記光輝性印刷層との間に、他の印刷層を更に具備している、態様4に記載の印刷媒体。
〈態様6〉前記感熱記録シート上に、磁気記録層を更に具備している、態様1~5のいずれか一項に記載の印刷媒体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、感熱記録シート上の印字の読取を妨げず、かつ良好な偽造防止性を有する新規な印刷媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
《印刷媒体》
図1(a)及び(b)に示すように、本発明の印刷媒体100は、感熱記録シート20、及び感熱記録シート20上の光輝性印刷層10を具備しており、
光輝性印刷層10が、フォトクロミックパール顔料、合成マイカ系無着色パール顔料、及びバインダー樹脂を含有している。
【0013】
本発明者らは、上記の構成により、感熱記録シート上の印字の読取を妨げず、かつ良好な偽造防止性をもたらすことができることを見出した。
【0014】
より具体的には、天然マイカ系パール顔料を用いた光輝性印刷層を有する従来の印刷媒体では、特定の角度から見た際の有色の光沢があった。また、この印刷媒体は、カラーコピーをした場合に、この色が再現できないものであった。しかしながら、天然マイカ系パール顔料を用いた場合には、感熱記録シート上の印字が視認できない及び/又は読取できないことがあった。
【0015】
これに対し、単純にフォトクロミックパール顔料を用いた場合には、感熱記録シート上の印字の読取は妨げられないものの、天然マイカ系パール顔料の光沢を再現できず、光沢による偽造防止性が得られなかった。
【0016】
これに対し、本発明者らは、合成マイカ系無着色パール顔料及びフォトクロミックパール顔料を混合させて用いることにより、感熱記録シート上の印字の読取を妨げず、かつ良好な偽造防止性をもたらすことができることを見出した。理論に拘束されることを望まないが、これは、これらのパール顔料を混合させて用いることにより、合成マイカ系無着色パール顔料及びフォトクロミックパール顔料をそれぞれ単独で用いた場合に生じない乱反射が生じ、その結果、干渉色がもたらされることによると考えられる。
【0017】
更に、本発明の印刷媒体は、光輝性印刷層に含有されているフォトクロミックパール顔料の存在により、紫外線の照射による真贋判定機能をも有する。
【0018】
光輝性印刷層10は、感熱記録シート20上全体に存在していてもよく、又は
図1(a)に示すように、感熱記録シート20上の一部に存在していてよい。
【0019】
また、
図1(a)に示すように、感熱記録シート20は、基材層26、感熱記録層24、及び保護層22をこの順で具備しており、それによって、本発明の印刷媒体100が、基材層26、感熱記録層24、保護層22、及び光輝性印刷層10をこの順で具備していてよい。
【0020】
また、本発明の印刷媒体は、感熱記録シート上に磁気記録層を更に具備していてよい。この磁気記録層は、感熱記録シートの光輝性印刷層に対する反対側に存在していてもよい。特に、感熱記録シートが基材層、感熱記録層、及び保護層をこの順で具備している場合、磁気記録層は、基材層の感熱記録層に対する反対側に存在していてよい。
【0021】
以下では、本発明の各構成要素について説明する。
【0022】
〈感熱記録シート〉
感熱記録シートは、感熱記録層を有するシートである。感熱記録シートは、例えば基材層、感熱記録層、及び保護層をこの順で具備していてよい。
【0023】
(基材層)
基材層は、感熱記録シートの他の層を支持できる基材であれば、特に限定されるものではなく、例えば紙基材層であってよい。
【0024】
(感熱記録層)
感熱記録層は、加熱によって可視情報を形成できるものであれば特に限定されるものではない。感熱記録層としては、例えば、ロイコ染料とフェノール性物質に代表される電子受容性物質との反応によるもの、イミノ化合物とイソシアナート化合物との反応によるもの、長鎖脂肪酸鉄塩と多価フェノールとの反応によるもの等を利用し得る。これらの組合せの具体例は、例えば特許文献2などに記載されている。
【0025】
(保護層)
保護層は、感熱記録層に褪色防止性、耐水性等の機能を付与できる層であれば、特に限定されるものではない。保護層は、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等の硬化性樹脂を含有している層であってよい。
【0026】
〈光輝性印刷層〉
光輝性印刷層は、フォトクロミックパール顔料、合成マイカ系無着色パール顔料、及びバインダー樹脂を含有している。
【0027】
フォトクロミックパール顔料及び合成マイカ系無着色パール顔料の合計含有率は、光輝性印刷層の質量全体を基準として、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、又は47質量%以下であることが、製造の観点から好ましく、また35質量%以上、40質量%以上、又は45質量%以上であることが、偽造防止性の観点から好ましい。
【0028】
光輝性印刷層の厚さは、2.5μm以下、又は2.0μm以下であることが、感熱記録印字の際の感熱記録層への伝熱を促進する観点から好ましい。この厚さは、0.5μm以上、又は1.0μm以上であってよい。
【0029】
また、光輝性印刷層に耐摩耗性を付与し、感熱記録印字の際のサーマルヘッドへの光輝性印刷層の付着を抑制するため、光輝性印刷層は、ワックスを更に含有していてよい。光輝性印刷層がワックスを含有している場合、ワックスの含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して1質量部以上、2質量部以上、又は3質量部以上であってよく、また10質量部以下、9質量部以下、7質量部以下、5質量部以下、又は4質量部以下であってよい。光輝性印刷層を、下記に示す光輝性印刷層用組成物を塗布又は印刷することにより形成した場合には、上記の含有量は、固形分の質量部を意味する。
【0030】
光輝性印刷層は、例えば下記に示す物質及び溶剤成分を混合させて光輝性印刷層用組成物を作製し、これを感熱記録シート上に塗布又は印刷し、そして乾燥させて溶剤成分を除去することにより形成することができる。溶剤成分としては、例えば酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール等を、単体で又は混合させて用いることができる。
【0031】
光輝性印刷層用組成物の塗布は、例えばバーコーター等を用いて行うことができる。
【0032】
光輝性印刷層用組成物の印刷は、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷等の公知の印刷手段により行うことができるが、このような光輝性印刷層用組成物を用いた場合には、光輝性印刷層用組成物の印刷は、グラビア印刷により行うことが好ましい。
【0033】
(フォトクロミックパール顔料)
フォトクロミックパール顔料は、フォトクロミック性を有し、かつ光輝性を有していれば、特に限定されず、有機顔料であっても無機顔料であってもよい。
【0034】
フォトクロミックパール顔料は、例えば、雲母及び雲母を被覆している酸化チタン含有層を含む雲母チタンと、雲母の表面及び/又は酸化チタン含有層の内部若しくは表面に担持されているフォトクロミック性賦活剤を含有していてよい。好ましくは、本発明で用いられるフォトクロミックパール顔料は、雲母チタンとフォトクロミック性賦活剤とから本質的になる。本発明で用いられるフォトクロミックパール顔料は、例えば、雲母チタンによって光輝性が与えられており、フォトクロミック性は、フォトクロミック性賦活剤によって与えられている。
【0035】
フォトクロミックパール顔料の含有率は、光輝性印刷層全体の質量を基準として、37質量%以下であることが、製造の観点から好ましい。この含有率は、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、又は20質量%以下であってよく、また10質量%以上、又は15質量%以上であってよい。
【0036】
また、フォトクロミックパール顔料の存在比率は、フォトクロミックパール顔料及び合成マイカ系無着色パール顔料の合計の質量を基準として、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、又は70質量%以上であることが、フォトクロミックパール顔料による偽造防止性を良好にする観点から好ましい。また、この存在比率は、85質量%以下、80質量%以下、又は75質量%以下であることが、干渉色による光沢を十分に生じさせる観点から好ましい。
【0037】
(フォトクロミックパール顔料:雲母チタン)
フォトクロミックパール顔料は、好ましくは、雲母と雲母を被覆している酸化チタン含有層とを有するパール顔料を含有していてよい。この顔料は、微細な薄片状雲母の表面に二酸化チタン層を形成させた構造であり、真珠光沢及び種々の干渉色を有する。その製法としては、例えばチタンの無機塩類(例えば硫酸チタニル)の水溶液を雲母の存在下で加水分解し、雲母表面に含水二酸化チタンを析出させた後、加水分解する方法が挙げられる。この場合、生成した雲母チタン系顔料は、雲母表面上の二酸化チタン被覆層の厚さによって様々な干渉色を呈する。
【0038】
雲母チタンの発する干渉色は、雲母上に積層された酸化チタン含有層の厚さにより決定される。すなわち、通常、雲母チタンは酸化チタン含有層表面と、雲母と酸化チタン含有層の境界である雲母表面で反射光が生ずるので、酸化チタン含有層の比率を調整して雲母と酸化チタン含有層とのそれぞれの表面での反射光の光路差を調整することにより、各反射光の間に生ずる干渉作用による干渉光を様々な色に調整することが可能である。
【0039】
雲母チタン中の酸化チタン含有層の比率は、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、又は45質量%以上であることが好ましく、また70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、又は55質量%以下であることが好ましい。
【0040】
酸化チタンの結晶構造としては、ルチル構造、ブルカイト構造とアナターゼ構造があるが、比較的安定であり、かつ表面積及び光活性が高いことから、本発明で用いられる雲母チタン中の酸化チタンは、アナターゼ型である事が好ましい。
【0041】
干渉色を有しているアナターゼ型酸化チタンを含有するパール顔料としては、フラメンコゴールド、フラメンコオレンジ、フラメンコレッド、フラメンコバイオレット、フラメンコブルー、フラメンコグリーン、フラメンコスパークルゴールド、フラメンコスパークルレッド、フラメンコスパークルブルー、フラメンコスパークルグリーン(BASF社)等が挙げられる。
【0042】
本発明で用いるフォトクロミックパール顔料は、雲母チタンを、好ましくは80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は97質量%以上で含み、好ましくは99.95質量%以下、99.90質量%以下、又は99.70質量%以下で含む。
【0043】
(フォトクロミックパール顔料:フォトクロミック性賦活剤)
上記のとおり、本発明で用いるフォトクロミックパール顔料においては、フォトクロミック性を発現させるために、例えばフォトクロミック性賦活剤を含有する。
【0044】
フォトクロミック性賦活剤としては、鉄、クロム、銅、ニッケル、マンガン、コバルト、及びモリブデン、並びにこれらの酸化物、窒化物、ハロゲン化物及び塩からなる群より選択される金属又は金属化合物の微粒子が挙げられる。塩としては、硫酸塩、硝酸塩、及び酢酸塩を挙げることができる。この中でも特に、酸化鉄微粒子を用いることが好ましい。
【0045】
フォトクロミックパール顔料は、フォトクロミック性賦活剤を、10質量%以下、又は5質量%以下で含むことが、フォトクロミック効果による色調変化を弱めすぎない観点から好ましい。また、フォトクロミックパール顔料は、フォトクロミック性賦活剤を、0.05質量%以上、0.1質量%以上、又は0.3質量%以上で含むことが、有効にフォトクロミック効果を発現させる観点から好ましい。
【0046】
なお、本発明の好ましい実施態様で用いるフォトクロミックパール顔料は、フォトクロミック効果及び/又はフリップフロップ効果を著しく損なわない範囲で、フォトクロミック性賦活剤の他に、他の金属又は金属化合物の粒子を含んでもよく、その平均粒径は0.7μm以上であってもよい。
【0047】
フォトクロミック性賦活剤としては、具体的には、平均粒径が0.07μmであるIPJ‐226G、平均粒径が0.10μmのIPK‐409G、平均粒径が0.11μmのIPK‐426G、平均粒径が0.07μmのIPJ‐218H、平均粒径が0.08μmのIPF‐249H、平均粒径が0.10μmのIPK‐409H、平均粒径が0.11μmのIPK‐428H(全て戸田工業株式会社)、平均粒径が0.10μmのTRY‐100P(チタン工業株式会社)等の酸化鉄微粒子を挙げることができる。
【0048】
(合成マイカ系無着色パール顔料)
合成マイカ系無着色パール顔料は、概して、マイカの表面に、一般に酸化チタン等の高屈折率金属酸化物から作られている高屈折率層をコーティングして得られるものであり、マイカと高屈折率層との屈折率差で生じる反射によってパール光沢を提供する顔料であってよい。これについては、上記のフォトクロミックパール顔料の雲母チタンに関する記載を参照できる。
【0049】
また、合成マイカ系無着色パール顔料の存在比率は、フォトクロミックパール顔料及び合成マイカ系無着色パール顔料の合計の質量を基準として、15質量%以上、20質量%以上、又は25質量%以上であってよく、また、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、又は30質量%以下であってよい。
【0050】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、例えばポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルブチラール、及びウレタン変性ポリエステル系樹脂等を用いることができる。
【0051】
ポリエステル系樹脂は、結晶性又は非晶性のポリエステル系樹脂を用いることができる。
【0052】
アクリル系樹脂としては、例えばアクリル成分の重合体、及びアクリル成分とエチレンとの共重合体を用いることができる。アクリル成分は、例えば(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチルアクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等であってよい。
【0053】
ウレタン変性ポリエステル系樹脂としては、芳香族ポリエステルを基本骨格とし、かつ側鎖にウレタン成分が結合しているウレタン変性共重合ポリエステルを用いること、又はエステルの繰返し単位と、ウレタンの繰返し単位とを骨格中に含むウレタン変性共重合ポリエステル等を用いることができる。かかるウレタン変性ポリエステル系樹脂としては、例えば東洋紡株式会社のバイロン(商標)URシリーズを用いることができる。
【0054】
(ワックス)
ワックスとしては、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の合成炭化水素系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス、及びキャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス等の植物系ワックス、並びにこれらの誘導体を用いることができる。
【0055】
〈他の印刷層〉
他の印刷層は、例えば絵柄印刷層であってよい。
【0056】
〈磁気記録層〉
磁気記録層は、磁性体化合物を具備している層であれば特に限定されない。また、磁気記録層は、分散剤、帯電防止剤、ワックス類、カーボンブラック、添加剤等の他の成分を含有していてよい。
【0057】
磁性体化合物としては、例えばγ-フェライト、コバルト含有フェライト、バリウムフェライト、酸化クロム、ストロンチウムフェライト等が挙げられる。
【0058】
磁気記録層は、例えば上記の成分を公知の方法により塗工することにより得ることができる。
【実施例】
【0059】
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0060】
《印刷媒体の作製》
〈実施例1〉
バインダー樹脂としてのウレタン変性ポリエステル(バイロンUR-8200、東洋紡株式会社、固形分30質量%)100質量部、合成マイカ系無着色パール顔料(TWINCLE PEARL YXB、日本光研工業株式会社、平均粒子径約13μm)5質量部、フォトクロミックパール顔料(フォトクロパール、不二化成株式会社、平均粒子径約24μm)20質量部、溶剤としてのメチルエチルケトン65質量部、及び溶剤としての酢酸エチル65質量部を混合させ、光輝性印刷層用組成物を作製した。なお、ここでの平均粒子径はD50を表し、レーザー解析・散乱法で測定したものである。
【0061】
作製した光輝性印刷層用組成物を、赤黒2色サーマル紙(王子エフテックス株式会社)上にバーコーターNo.7を用いて塗布し、そして60℃のオーブンで1分間乾燥して、厚さ2μmの光輝性印刷層を形成した。ここに、サーマルプリンターPX430(株式会社フェニックス)を用いて、印字エネルギー18で黒色のQRコード(登録商標)(データ:56789、バージョン1、訂正レベル:標準のM、6ドット/セル、300dpi)を印字して、実施例1の印刷媒体を作製した。
【0062】
〈実施例2~4及び比較例1~6〉
各パール顔料の種類及び含有量を表1に示すように変更したことを除き、実施例1と同様にして、実施例2~4及び比較例1~6の印刷媒体を作製した。
【0063】
合成マイカ系着色パール顔料としては、TWINCLE PEARL RYXB(日本光研工業株式会社、平均粒子径約13μm)を用いた。天然マイカ系パール顔料としては、MY-100RF(日本光研工業株式会社、平均粒子径約13μm)を用いた。
【0064】
《評価》
〈読取性能〉
光輝性印刷層の下の発色部のQRコードをiPhone(登録商標) XS(アップル社)で読み取り、読み取り安定性を確認した。
【0065】
評価基準は以下のとおりである:
〇:QRコードが瞬時に読み取れる
△:QRコードが読み取れるが、読み取りに時間を要する
×:QRコードが読み取れない
【0066】
〈有色の光沢〉
目視により、作製した印刷媒体の有色の光沢の有無を確認した。評価基準は以下のとおりである:
〇:有色の光沢が視認できた
△:有色の光沢が視認できたが、やや薄かった
×:有色の光沢が視認できなかった
【0067】
〈コピー非再現性〉
カラーコピー機DocuCentre-V C5576(富士ゼロックス株式会社)を用い、作製した印刷媒体を、以下の設定でカラーコピーして、光輝性印刷層の再現性を目視により確認した。
フルカラー濃度:ふつう
シャープネス:ふつう
彩度:ふつう
地色消去:する
コントラスト:ふつう
色合い:ふつう
原稿の画質:文字/写真
カラーバランス:標準
おまかせ画質調整:標準画質
【0068】
評価基準は以下のとおりである:
〇:光輝性印刷層の色が、カラーコピーで再現されない
△:光輝性印刷層の色が、カラーコピーで薄く再現できる
×:光輝性印刷層の色が、カラーコピーで同等の濃さで再現される
【0069】
〈変色による偽造防止性〉
ブラックライトで波長365nmの紫外線を光輝性印刷層に3分間照射してフォトクロミック変色性能を確認した。
【0070】
評価基準は以下のとおりである:
〇:瞬時に視認できる程度に変色が確認できた
△:薄い変色が確認できた
×:変色が確認できなかった
【0071】
実施例及び比較例の構成及び評価結果を表1及び2に示す。
【0072】
【0073】
【0074】
表1から、合成マイカ系無着色パール顔料及びフォトクロミックパール顔料を含有している光輝性印刷層を具備している実施例1の印刷媒体は、読取性能、有色の光沢及びこの光沢のコピー非再現性が良好であったことが理解できよう。
【0075】
これに対し、天然マイカ系パール顔料又は合成マイカ系着色パール顔料を含有している比較例1、3、5及び6の印刷媒体は、読取性能が良好ではなかった。また、フォトクロミックパール顔料又は合成マイカ系無着色パール顔料のみで構成されている比較例2及び4の印刷媒体は、有色の光沢が視認できなかった。
【0076】
また、表2から、フォトクロミックパール顔料の存在比率が、フォトクロミックパール顔料及び合成マイカ系無着色パール顔料の合計の質量を基準として、55質量%以上であることが、変色による偽造防止性の観点から好ましく、85質量%以下であることが、有色の光沢の観点から好ましいことが理解できよう。
【符号の説明】
【0077】
10 光輝性印刷層
20 感熱記録シート
22 保護層
24 感熱記録層
26 基材層
100 印刷媒体