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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
G03G15/08 221
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019196567
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021071531
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 俊一
(72)【発明者】
【氏名】大塚 真寛
(72)【発明者】
【氏名】古川 三洋
(72)【発明者】
【氏名】井上 達也
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-151612(JP,A)
【文献】特開2003-131488(JP,A)
【文献】特開2018-084800(JP,A)
【文献】特開2012-208469(JP,A)
【文献】特開2010-117491(JP,A)
【文献】特開2009-086009(JP,A)
【文献】特開2018-146930(JP,A)
【文献】特開2008-176236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
トナーとキャリアを含む現像剤を収容し且つ現像剤の循環経路を形成する現像容器と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像する現像位置にトナーを担持搬送する現像スリーブと、前記現像スリーブに対向して配置され且つ前記循環経路から供給された現像剤を担持搬送し且つ前記現像スリーブにトナーのみを供給する供給スリーブと、前記現像スリーブから落下するトナーを受けるトナー受け部材と、を有する現像装置と、
前記供給スリーブに直流電圧と交流電圧とが重畳された供給バイアスを印加する供給バイアス印加手段と、
前記現像スリーブに直流電圧と交流電圧とが重畳された現像バイアスを印加する現像バイアス印加手段と、
前記トナー受け部材を振動させる振動手段と、
前記振動手段を制御して前記トナー受け部材を振動させる振動モードを実行する制御手段と、
を備え、
画像形成動作時に前記供給バイアス印加手段によって印加される前記供給バイアスの交流電圧と、画像形成動作時に前記現像バイアス印加手段によって印加される前記現像バイアスの交流電圧との交流電位差が第1の電位差である場合に、前記制御手段によって実行される前記振動モードの実行間隔よりも、前記交流電位差が前記第1の電位差よりも大きい第2の電位差である場合に、前記制御手段によって実行される前記振動モードの実行間隔の方が短い、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記交流電位差が前記第1の電位差であり、且つ、画像形成動作時に前記供給バイアス印加手段によって印加される前記供給バイアスの直流電圧と、画像形成動作時に前記現像バイアス印加手段によって印加される前記現像バイアスの直流電圧との直流電位差が第3の電位差である場合に、前記制御手段によって実行される前記振動モードの実行間隔よりも、前記交流電位差が前記第1の電位差であり、且つ、前記直流電位差が第3の電位差よりも大きい第4の電位差である場合に、前記制御手段によって実行される前記振動モードの実行間隔の方が短い、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記供給スリーブは、回転可能であり、
前記現像スリーブは、回転可能であり、
前記供給スリーブと前記現像スリーブが対向する部分において、前記供給スリーブの回転方向は、前記現像スリーブの回転方向とは反対方向であり、
前記交流電位差が前記第1の電位差であり、且つ、画像形成動作時に前記供給スリーブを第1の回転速度で所定時間回転させた場合に、前記制御手段によって実行される前記振動モードの実行間隔よりも、前記交流電位差が前記第1の電位差であり、且つ、画像形成動作時に前記供給スリーブを前記第1の回転速度よりも速い第2の回転速度で前記所定時間回転させた場合に、前記制御手段によって実行される前記振動モードの実行間隔の方が短い、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
像担持体と、
トナーとキャリアを含む現像剤を収容し且つ現像剤の循環経路を形成する現像容器と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像する現像位置にトナーを担持搬送する現像スリーブと、前記現像スリーブに対向して配置され且つ前記循環経路から供給された現像剤を担持搬送し且つ前記現像スリーブにトナーのみを供給する供給スリーブと、前記現像スリーブから落下するトナーを受けるトナー受け部材と、を有する現像装置と、
前記供給スリーブに直流電圧と交流電圧とが重畳された供給バイアスを印加する供給バイアス印加手段と、
前記現像スリーブに直流電圧と交流電圧とが重畳された現像バイアスを印加する現像バイアス印加手段と、
前記トナー受け部材を振動させる振動手段と、
前記振動手段を制御して前記トナー受け部材を振動させる振動モードを実行する制御手段と、
を備え、
画像形成動作時に前記供給バイアス印加手段によって印加される前記供給バイアスの直流電圧と、画像形成動作時に前記現像バイアス印加手段によって印加される前記現像バイアスの直流電圧との直流電位差が第1の電位差である場合に、前記制御手段によって実行される前記振動モードの実行間隔よりも、前記直流電位差が前記第1の電位差よりも大きい第2の電位差である場合に、前記制御手段によって実行される前記振動モードの実行間隔の方が短い、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記供給スリーブは、回転可能であり、
前記現像スリーブは、回転可能であり、
前記供給スリーブと前記現像スリーブが対向する部分において、前記供給スリーブの回転方向は、前記現像スリーブの回転方向とは反対方向であり、
前記直流電位差が前記第1の電位差であり、且つ、画像形成動作時に前記供給スリーブを第1の回転速度で所定時間回転させた場合に、前記制御手段によって実行される前記振動モードの実行間隔よりも、前記直流電位差が前記第1の電位差であり、且つ、画像形成動作時に前記供給スリーブを前記第1の回転速度よりも速い第2の回転速度で前記所定時間回転させた場合に、前記制御手段によって実行される前記振動モードの実行間隔の方が短い、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
像担持体と、
トナーとキャリアを含む現像剤を収容し且つ現像剤の循環経路を形成する現像容器と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像する現像位置にトナーを担持搬送する現像スリーブと、前記現像スリーブに対向して配置され且つ前記循環経路から供給された現像剤を担持搬送し且つ前記現像スリーブにトナーのみを供給する供給スリーブと、前記現像スリーブから落下するトナーを受けるトナー受け部材と、を有する現像装置と、
前記供給スリーブに交流電圧を印加することなく直流電圧を印加する供給バイアス印加手段と、
前記現像スリーブに交流電圧を印加することなく直流電圧を印加する現像バイアス印加手段と、
前記トナー受け部材を振動させる振動手段と、
前記振動手段を制御して前記トナー受け部材を振動させる振動モードを実行する制御手段と、
を備え、
画像形成動作時に前記供給バイアス印加手段によって前記供給スリーブに印加される直流電圧と、画像形成動作時に前記現像バイアス印加手段によって印加される直流電圧との直流電位差が第1の電位差である場合に、前記制御手段によって実行される前記振動モードの実行間隔よりも、前記直流電位差が前記第1の電位差よりも大きい第2の電位差である場合に、前記制御手段によって実行される前記振動モードの実行間隔の方が短い、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記供給スリーブは、回転可能であり、
前記現像スリーブは、回転可能であり、
前記供給スリーブと前記現像スリーブが対向する部分において、前記供給スリーブの回転方向は、前記現像スリーブの回転方向とは反対方向であり、
前記直流電位差が前記第1の電位差であり、且つ、画像形成動作時に前記供給スリーブを第1の回転速度で所定時間回転させた場合に、前記制御手段によって実行される前記振動モードの実行間隔よりも、前記直流電位差が前記第1の電位差であり、且つ、画像形成動作時に前記供給スリーブを前記第1の回転速度よりも速い第2の回転速度で前記所定時間回転させた場合に、前記制御手段によって実行される前記振動モードの実行間隔の方が短い、
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複数の機能を有する複合機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を用いた画像形成装置に使用される現像剤としては、非磁性トナー(以下、トナーという)と、磁性キャリア(以下、キャリアという)と、を含む二成分現像剤が普及している。この二成分現像剤を利用して像担持体の一例である感光ドラムに形成された静電潜像を現像する現像方式として、ハイブリッド現像方式が知られている。ハイブリッド現像方式では、トナーを担持して回転することで感光ドラムを現像する現像スリーブと、現像容器内の現像剤を担持して回転することで現像スリーブにトナーを供給する供給スリーブと、が用いられる。
【0003】
ハイブリッド現像方式では、供給スリーブと現像スリーブとの対向部分やその周囲からトナーが飛散する場合があり、現像容器内で飛散したトナーは、現像容器内の気流に乗り、規制ブレードや現像スリーブに対向する現像容器の内壁に堆積する場合がある。堆積したトナーが凝集し現像スリーブへ付着すると、凝集したトナーが感光ドラム上へ供給され、画像不良を発生する虞がある。そこで、トナーが堆積する部分にトナー受け部材を設け、このトナー受け部材を振動手段により振動可能にした現像装置が提案されている(特許文献1参照)。この現像装置を備える画像形成装置では、一定の印字枚数毎の非画像形成時にトナー受け部材を振動させる振動モードを実行し、堆積したトナーをふるい落として、供給スリーブに担持された現像剤により回収するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-208469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された現像装置を備える画像形成装置では、一定の印字枚数毎の非画像形成時に振動モードを実行してトナー受け部材を振動させているので、振動間隔が適正でない場合がある。ここで、現像装置内で飛散するトナーの量は、供給スリーブと現像スリーブとの間で飛翔するトナーの挙動に大きく依存する。供給スリーブと現像スリーブとの間には、直流電圧と交流電圧が重畳された電圧が印加されている。供給スリーブのトナーは、供給スリーブから交流電圧に追随して往復運動をしながら、直流電圧によって現像スリーブ側へと移動する。そして、画像形成の条件によって、印加する直流電圧又は交流電圧を大きくした場合は、トナーが供給スリーブと現像スリーブの間から離れてしまい、飛翔中に気流によってトナーが飛散してしまう虞がある。
【0006】
ここで、上述した一定の印字枚数毎に振動モードを実行する構成では、振動モードの実行間隔が長いと、印加電圧が大きい場合にトナー受け部材へのトナー堆積や凝集が進んでしまい、凝集したトナーが現像スリーブへ供給されて画像不良を生じる虞がある。一方、トナー劣化による付着力増加を見込んで、初期から振動モードの実行間隔を短く設定していると、トナー受け部材にトナーがあまり堆積していない状態でも振動モードを実行することになる。近年、高生産性のために画像形成装置はなるべく調整時間を少なくする傾向にあり、過剰な振動モードの実行は生産性を低下させる虞がある。
【0007】
本発明は、振動モードの実行間隔を適正化できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像形成装置は、像担持体と、トナーとキャリアを含む現像剤を収容し且つ現像剤の循環経路を形成する現像容器と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像する現像位置にトナーを担持搬送する現像スリーブと、前記現像スリーブに対向して配置され且つ前記循環経路から供給された現像剤を担持搬送し且つ前記現像スリーブにトナーのみを供給する供給スリーブと、前記現像スリーブから落下するトナーを受けるトナー受け部材と、を有する現像装置と、前記供給スリーブに直流電圧と交流電圧とが重畳された供給バイアスを印加する供給バイアス印加手段と、前記現像スリーブに直流電圧と交流電圧とが重畳された現像バイアスを印加する現像バイアス印加手段と、前記トナー受け部材を振動させる振動手段と、前記振動手段を制御して前記トナー受け部材を振動させる振動モードを実行する制御手段と、を備え、画像形成動作時に前記供給バイアス印加手段によって印加される前記供給バイアスの交流電圧と、画像形成動作時に前記現像バイアス印加手段によって印加される前記現像バイアスの交流電圧との交流電位差が第1の電位差である場合に、前記制御手段によって実行される前記振動モードの実行間隔よりも、前記交流電位差が前記第1の電位差よりも大きい第2の電位差である場合に、前記制御手段によって実行される前記振動モードの実行間隔の方が短いことを特徴とする
【0009】
また、本発明の画像形成装置は、像担持体と、トナーとキャリアを含む現像剤を収容し且つ現像剤の循環経路を形成する現像容器と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像する現像位置にトナーを担持搬送する現像スリーブと、前記現像スリーブに対向して配置され且つ前記循環経路から供給された現像剤を担持搬送し且つ前記現像スリーブにトナーのみを供給する供給スリーブと、前記現像スリーブから落下するトナーを受けるトナー受け部材と、を有する現像装置と、前記供給スリーブに直流電圧と交流電圧とが重畳された供給バイアスを印加する供給バイアス印加手段と、前記現像スリーブに直流電圧と交流電圧とが重畳された現像バイアスを印加する現像バイアス印加手段と、前記トナー受け部材を振動させる振動手段と、前記振動手段を制御して前記トナー受け部材を振動させる振動モードを実行する制御手段と、を備え、画像形成動作時に前記供給バイアス印加手段によって印加される前記供給バイアスの直流電圧と、画像形成動作時に前記現像バイアス印加手段によって印加される前記現像バイアスの直流電圧との直流電位差が第1の電位差である場合に、前記制御手段によって実行される前記振動モードの実行間隔よりも、前記直流電位差が前記第1の電位差よりも大きい第2の電位差である場合に、前記制御手段によって実行される前記振動モードの実行間隔の方が短いことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の画像形成装置は、像担持体と、トナーとキャリアを含む現像剤を収容し且つ現像剤の循環経路を形成する現像容器と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像する現像位置にトナーを担持搬送する現像スリーブと、前記現像スリーブに対向して配置され且つ前記循環経路から供給された現像剤を担持搬送し且つ前記現像スリーブにトナーのみを供給する供給スリーブと、前記現像スリーブから落下するトナーを受けるトナー受け部材と、を有する現像装置と、前記供給スリーブに交流電圧を印加することなく直流電圧を印加する供給バイアス印加手段と、前記現像スリーブに交流電圧を印加することなく直流電圧を印加する現像バイアス印加手段と、前記トナー受け部材を振動させる振動手段と、前記振動手段を制御して前記トナー受け部材を振動させる振動モードを実行する制御手段と、を備え、画像形成動作時に前記供給バイアス印加手段によって前記供給スリーブに印加される直流電圧と、画像形成動作時に前記現像バイアス印加手段によって印加される直流電圧との直流電位差が第1の電位差である場合に、前記制御手段によって実行される前記振動モードの実行間隔よりも、前記直流電位差が前記第1の電位差よりも大きい第2の電位差である場合に、前記制御手段によって実行される前記振動モードの実行間隔の方が短いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、振動モードの実行間隔を適正化できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成断面図。
図2】第1の実施形態に係る画像形成装置の制御ブロック図。
図3】第1の実施形態に係る現像装置の概略構成断面図。
図4】第1の実施形態に係る現像装置の概略縦断面図。
図5】第1の実施形態に係る現像装置の振動モータ及び加振ウェイトであり、(a)は側面図、(b)は正面図。
図6】第1の実施形態に係る現像装置の回収モード実行時の概略縦断面図。
図7】第1の実施形態に係る現像装置において、トナーが供給スリーブから現像スリーブに移動する際の挙動を示す概略の説明図。
図8】第1の実施形態に係る現像装置において、トナーが供給スリーブから現像スリーブに移動する際に電界によって飛散する場合の挙動を示す概略の説明図。
図9】第1の実施形態に係る現像装置において、供給スリーブと現像スリーブとの間に発生する気流を示す概略の説明図。
図10】第1の実施形態に係る現像装置において、トナーが供給スリーブから現像スリーブに移動する際に気流によって飛散する場合の挙動を示す概略の説明図。
図11】第1の実施形態に係る画像形成装置による回収モードの実行手順を示すフローチャート。
図12】第1の実施形態に係る現像装置の交流電位差と堆積係数Rとの関係を示すグラフ。
図13】第2の実施形態に係る画像形成装置による回収モードの実行手順を示すフローチャート。
図14】第2の実施形態に係る現像装置の直流電位差と堆積係数Rとの関係を示すグラフ。
図15】第3の実施形態に係る画像形成装置による回収モードの実行手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
第1の実施形態について、図1図12を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成装置の概略構成について、図1を用いて説明する。
【0014】
[画像形成装置]
図1に示す画像形成装置1は、装置本体内に4色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の画像形成部PY、PM、PC、PKを有する電子写真方式のフルカラープリンタである。本実施形態では、画像形成部PY、PM、PC、PKを後述する中間転写ベルト7の回転方向に沿って配置した中間転写タンデム方式としている。画像形成装置1は、装置本体に接続された不図示の原稿読み取り装置又は装置本体に対し通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器からの画像信号に応じてトナー像(画像)を記録材Sに形成する。記録材としては、用紙、プラスチックフィルム、布などのシート材が挙げられる。
【0015】
トナー像の形成プロセスについて説明する。まず、画像形成部PY、PM、PC、PKについて説明する。但し、画像形成部PY、PM、PC、PKは、トナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外、ほぼ同一に構成される。そこで、以下では代表してイエローの画像形成部PYを例に説明し、その他の画像形成部PM、PC、PKについては説明を省略する。
【0016】
画像形成部PYは、主に感光ドラム2、帯電装置3、露光装置4、現像装置5等から構成される。回転駆動される像担持体の一例としての感光ドラム2の表面は、帯電装置3により予め表面を一様に帯電され、その後、画像情報の信号に基づいて駆動される露光装置4によって静電潜像が形成される。即ち、感光ドラム2には、静電潜像が形成される。感光ドラム2上に形成された静電潜像は、現像装置5によってトナーにより現像され、トナー像として可視像化される。また、画像形成で消費された現像剤中のトナーは、不図示のトナーカートリッジからキャリアと共に補給される。
【0017】
その後、感光ドラム2と中間転写ベルト7を挟んで対向配置される一次転写ローラ6により所定の加圧力及び一次転写バイアスが与えられ、感光ドラム2上に形成されたトナー像が中間転写ベルト7上に一次転写される。一次転写後の感光ドラム2上に僅かに残る転写残トナーは、クリーニング装置8により除去され、再び次の画像形成プロセスに備える。
【0018】
中間転写ベルト7は、テンションローラ10、二次転写内ローラ11、駆動ローラ12によって張架されている。中間転写ベルト7は、駆動ローラ12によって図中矢印R1方向へと移動するように駆動される。上述の画像形成部PY、PM、PC、PKにより処理される各色の画像形成プロセスは、中間転写ベルト7上に一次転写された移動方向上流の色のトナー像上に順次重ね合わせるタイミングで行われる。その結果、最終的にはフルカラーのトナー像が中間転写ベルト7上に形成され、二次転写部T2へと搬送される。二次転写部T2は、中間転写ベルト7の二次転写内ローラ11に張架された部分と二次転写外ローラ13とにより形成される転写ニップ部である。なお、二次転写部T2を通過した後の転写残トナーは、転写クリーナ装置14によって中間転写ベルト7から除去される。
【0019】
二次転写部T2まで送られて来るトナー像の形成プロセスに対して、同様のタイミングで二次転写部T2までの記録材Sの搬送プロセスが実行される。搬送プロセスでは、記録材Sは、不図示のシートカセット等から給送され、画像形成タイミングに合わせて二次転写部T2へと送られる。二次転写部T2では、二次転写内ローラ11に二次転写電圧が印加される。
【0020】
以上、画像形成プロセス及び搬送プロセスにより、二次転写部T2において中間転写ベルト7から記録材Sにトナー像が二次転写される。その後、記録材Sは定着装置15へと搬送され、定着装置15により加熱及び加圧されることにより、トナー像が記録材S上に溶融固着される。こうしてトナー像が定着された記録材Sは、排出ローラにより排出トレイに排出される。
【0021】
[制御部]
画像形成装置1は、上記した画像形成動作などの各種制御を行うための制御部20を備えている。画像形成装置1の各部の動作は、画像形成装置1に設けられた制御部20によって制御される。一連の画像形成動作は、装置本体の上面の操作部、あるいは、ネットワークを経由した各入力信号に従って制御部20が制御している。
【0022】
図2に示すように、制御部20は、演算制御手段としてのCPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23等を有する。CPU21は、ROM22に格納された制御手順に対応するプログラムを読み出しながら画像形成装置1の各部の制御を行う。RAM23には、作業用データや入力データが格納されており、CPU21は、前述のプログラム等に基づいてRAM23に収納されたデータを参照して制御を行う。制御部20は、画像処理部24で画像情報を処理して各部の駆動信号を生成し、画像形成制御部25で各部の動作を制御し、補給制御部26で現像装置5に対するトナー補給制御を行う。制御部20には、トナー濃度センサ58と、光学センサ80と、温湿度センサ81とが接続されている。トナー濃度センサ58と、光学センサ80とについては後述する。尚、温湿度センサ81は、温度検知手段の一例として現像装置5の内部の温度及び湿度に関する情報を検知するために、例えば、撹拌室53の壁部のトナー搬送方向下流側の一部に設けられている(図3参照)。
【0023】
[二成分現像剤]
次に、本実施形態にて用いられる現像剤について説明する。本実施形態では、現像剤として、非磁性トナー粒子(トナー)と磁性キャリア粒子(キャリア)を含む二成分現像剤を使用している。トナーは、結着樹脂、着色剤、及び、必要に応じてその他の添加剤を含む着色樹脂粒子であり、その表面にコロイダルシリカ微粉末のような外添剤が外添されている。本実施形態で用いたトナーは、負帯電性のポリエステル系樹脂であり、体積平均粒径は約7.0μmである。本実施形態で用いたキャリアは、例えば表面が酸化処理された鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属粒子からなり、体積平均粒径は約50μmである。
【0024】
[現像装置]
次に、現像装置5について、図3乃至図6を用いて詳細に説明する。図3及び図4に示すように、現像装置5は、現像容器50と、現像スリーブ60と、供給スリーブ61と、回収機構70(図4参照)と、を備えている。
【0025】
現像容器50には、非磁性トナー及び磁性キャリアを含む現像剤が収容される。現像容器50内の略中央部は、現像室52と撹拌室53とが水平方向に隣接するように隔壁51によって区画されている。現像剤は、現像室52及び撹拌室53に収容されている。現像室52及び撹拌室53には、現像剤を撹拌して循環させるために回転可能な第1搬送スクリュ54及び第2搬送スクリュ55が、それぞれ配置されている。第1搬送スクリュ54は、現像室52の底部に供給スリーブ61の軸方向に沿ってほぼ平行に対向して配置されており、第2搬送スクリュ55は撹拌室53内の底部に第1搬送スクリュ54とほぼ平行に配置されている。第1搬送スクリュ54及び第2搬送スクリュ55を回転することで、現像剤を搬送する。なお、現像室52において現像剤が搬送される搬送路を現像搬送路52pとし、撹拌室53において現像剤が搬送される搬送路を撹拌搬送路53pとする。第1搬送スクリュ54及び第2搬送スクリュ55の回転によって搬送された現像剤は、隔壁51の両端部の開口部である連通部56、57を通じて現像室52と撹拌室53とを循環する。
【0026】
撹拌室53には、第2搬送スクリュ55と対面して、トナー濃度センサ58が配置されている。トナー濃度センサ58としては、例えば、現像容器50内の現像剤の透磁率を検出する透磁率センサが用いられる。制御部20は、トナー濃度センサ58の検知結果に基づいて、トナーカートリッジからトナー補給口59を介して撹拌室53にトナーを補給する。
【0027】
図4に示すように、供給スリーブ61の回転軸線方向から視て供給スリーブ61の斜め上方で感光ドラム2との間には、現像スリーブ60が設けられている。供給スリーブ61と現像スリーブ60とは、回転軸線をほぼ平行にして、対向部分Ar2において互いに対向して配置されている。現像スリーブ60は、現像容器50の開口側において感光ドラム2に対向している。現像スリーブ60及び供給スリーブ61は、それぞれ回転軸周りに関して回動自在に設けられている。現像スリーブ60及び供給スリーブ61は、装置本体に設けられた駆動部9(図2参照)によって、図4中の反時計回りに回転駆動される。即ち、現像スリーブ60及び供給スリーブ61は、対向部分Ar2で反対方向に回転すると共に、駆動部9により回転速度を可変としている。
【0028】
供給スリーブ61は、図4において反時計方向に回転する非磁性のスリーブからなり、内周側に設けられた磁界発生手段である回転しないマグネットローラ61aの周囲を回転可能に設けられている。マグネットローラ61aは、複数の磁極を有しており、現像極S1と現像剤を搬送する磁極S3、N2、N1、S2を有している。このうち同極である磁極S2、S3は、隣り合って現像容器50の内側に設置され、極間では反発磁界が形成される。供給スリーブ61は、現像容器50の内部の現像剤を担持して回転することで、現像スリーブ60にトナーを供給可能である。
【0029】
現像スリーブ60は、図4において反時計回り方向に回転する非磁性のスリーブからなり、内周側に設けられた1つの磁極を持つ回転しないマグネット60aの周囲を回転可能に設けられている。現像スリーブ60は、トナーを担持して回転することで感光ドラム2に対向する対向領域である現像領域Ar1において感光ドラム2上の静電潜像を現像可能である。供給スリーブ61と現像スリーブ60とは、その対向部分Ar2において所定のギャップをもって対向している。現像スリーブ60内のマグネット60aの磁極N3は、対向する現像極S1と異極性である。
【0030】
現像容器50には、規制ブレード62が供給スリーブ61に対向して長手方向に沿って取り付けられている。規制ブレード62は、供給スリーブ61の回転方向(図4中、反時計回転方向)において、現像スリーブ60と供給スリーブ61との対向部分Ar2よりも上流側に位置付けられている。規制ブレード62の先端と供給スリーブ61の表面との間には、僅かな隙間(ギャップ)が形成されている。
【0031】
[トナーの供給と回収]
現像スリーブ60には、直流電圧と交流電圧とが重畳された現像電圧(以下、現像バイアスという)が印加されている。供給スリーブ61には、直流電圧と交流電圧とが重畳された供給電圧(以下、供給バイアスという)が印加されている。これらの電圧は、電圧印加部の一例としてのバイアス電源82(図2参照)からバイアス制御回路を経由して現像スリーブ60及び供給スリーブ61に印加される。即ち、バイアス電源82は、現像スリーブ60と供給スリーブ61との間に直流成分及び交流成分を含む電圧を印加する。
【0032】
現像室52内の現像剤は、第1搬送スクリュ54によって供給スリーブ61に搬送され、供給スリーブ61上に発生している磁界によって穂立ちした磁気穂を形成する。供給スリーブ61上の磁気穂は、規制ブレード62によって層厚規制された後、供給スリーブ61の回転によって供給スリーブ61と現像スリーブ60との対向部分Ar2に搬送される。供給スリーブ61に印加される供給バイアスと現像スリーブ60に印加される現像バイアスとの電位差により、供給スリーブ61と現像スリーブ60との対向部分Ar2に電界が生ずる。この生じた電界によって、現像スリーブ60上にトナー薄層が形成される。
【0033】
現像スリーブ60上のトナー層厚は、例えば、供給スリーブ61と現像スリーブ60との回転速度差、剤劣化、環境、画像比率などにより変化する。また、現像スリーブ60上のトナー層厚は、供給スリーブ61に印加される供給バイアスの直流電圧と現像スリーブ60に印加される現像バイアスの直流電圧との電位差ΔVDC(以下、直流電位差という)により、制御することができる。更に、現像スリーブ60上のトナー層厚は、供給スリーブ61に印加される供給バイアスの交流電圧と現像スリーブ60に印加される現像バイアスの交流電圧との電位差ΔVAC(以下、交流電位差という)により、制御することができる。直流電位差ΔVDCを大きくすることで、現像スリーブ60上のトナー層は厚くなる。また、交流電位差ΔVACを適切な範囲に設定することで、現像スリーブ60上のトナー層は厚くなる。現像時における直流電位差ΔVDCの範囲は一般的に100V~350Vが適切であり、交流電位差ΔVACの範囲は一般的に1000V~3000V程度が適切である。尚、直流電位差ΔVDCは、本発明の電圧印加部により印加される電圧の直流成分に相当する。また、交流電位差ΔVACは、本発明の電圧印加部により印加される電圧の交流成分に相当する。
【0034】
供給スリーブ61上の磁気穂との接触によって現像スリーブ60上に形成されたトナー薄層は、現像スリーブ60の回転によって感光ドラム2と現像スリーブ60との対向部分(以下、現像領域Ar1という)に搬送される。現像スリーブ60には現像バイアスが印加されているため、感光ドラム2との間の電位差によって現像スリーブ60から感光ドラム2にトナーが飛翔し、感光ドラム2上の静電潜像が現像される。
【0035】
現像に用いられずに残ったトナーは、再び現像スリーブ60と供給スリーブ61との対向部分Ar2に搬送され、供給スリーブ61上の磁気穂によって摺擦されて回収される。磁気穂は、マグネットローラ61aの反発磁界が形成される剥ぎ取り部で供給スリーブ61から現像室52内に落下して、現像容器50内を循環している現像剤と混合される。その後、トナー濃度センサ58の検知結果に基づいてトナー補給口59から所定量のトナーが補給され、撹拌室53と現像室52を循環し、現像容器50内を循環している現像剤と混合される。混合された現像剤が、供給スリーブ61上へ再び供給される。
【0036】
[回収機構]
次に図4図6を用いて、堆積したトナーを回収する回収機構70について詳細に説明する。図4に示すように、現像容器50の現像スリーブ60の近傍には、回収機構70が設けられている。回収機構70は、現像スリーブ60とほぼ平行に配置され、現像スリーブ60の回転軸線方向から視て現像スリーブ60の下方から供給スリーブ61に向けて下方に傾斜する壁部を構成している。回収機構70は、トナー受け部材71と、トナー受け部材71を振動させる振動手段の一例である振動機構72とを有している。
【0037】
トナー受け部材71は、回収機構70の上面において長手方向に沿って設けられ、飛散したトナーが堆積するトナーを受ける。即ち、トナー受け部材71は、現像スリーブ60と供給スリーブ61との少なくとも一方の下方に対向して配置される。トナー受け部材71は金属製の板材であり、圧縮コイルばねからなるコイルばね73を介して、合成樹脂製の底部74に支持されている。コイルばね73は、底部74に一体形成された台座75に装着されている。
【0038】
振動機構72は、トナー受け部材71の裏面に固定されて設けられている。振動機構72は、モータホルダ76と、振動モータ77と、加振ウェイト78とを有している。トナー受け部材71の裏面には、モータホルダ76を介して振動モータ77が固定されている。モータホルダ76内には、振動モータ77の駆動を制御するための不図示の回路基板や電子部品が実装されている。
【0039】
図5(a)、(b)は、振動機構72の振動モータ77と加振ウェイト78との概略図である。図5(a)、(b)に示すように、振動機構72の加振ウェイト78は、円柱形状の周側面の一部に中心軸線に沿った平面部78aを有する所謂Dカット形状をなしている。即ち、加振ウェイト78は、中心軸線に重なる位置に嵌入された振動モータ77の回転軸77aに対して非対称な形状となっている。振動モータ77の回転軸77aが所定の回転速度以上の回転速度で回転するとき、平面部78aに作用する遠心力は加振ウェイト78の他の部分に比べて小さいため、加振ウェイト78には偏心した不均一な遠心力が加わる。この遠心力が回転軸77aに伝達されることにより、振動モータ77が振動する。なお、加振ウェイト78の形状はDカット形状に限定されず、回転軸77aに対して重心が中心軸線上から外れる任意の形状とすることができる。
【0040】
図6は、現像装置5の駆動中におけるトナー受け部材71の動作を示す概略側面図である。振動モータ77の回転軸77aを例えば10000rpm程度に高速回転させることにより、加振ウェイト78も回転軸77aと共に高速回転する。尚、振動モータ77の回転軸77aの回転方向は、図6中、反時計回り方向としている。このとき、加振ウェイト78には偏心した不均一な遠心力が加わるため、回転軸77aを介して振動モータ77及びモータホルダ76が振動する。この振動に伴い、モータホルダ76が固定されたトナー受け部材71も振動する。トナー受け部材71の振動により、トナー受け部材71に堆積したトナーTはトナー受け部材71の表面から離れ、傾斜した下方側に向けてふるい落とされる。
【0041】
これにより、現像装置5内の供給スリーブ61及び現像スリーブ60が高速で回転し、トナー浮遊量が大きい場合であっても、トナー受け部材71上でのトナーの堆積を抑制できる。トナー受け部材71の振動により、トナー受け部材71に堆積したトナーTはトナー受け部材71の傾斜に沿って下方(図6中、白矢印方向)に滑り落ち、トナー落下面79と供給スリーブ61とで挟まれた領域Ar3に落下する。本実施形態では、トナー受け部材71はトナー落下面79が略垂直となるように配置されるため、領域Ar3のトナーTが自由落下し易くなる。
【0042】
本実施形態では、制御部20は、非画像形成時に、振動機構72を制御することにより、トナー受け部材71に堆積したトナーを振動機構72の振動によってふるい落とす振動モードの一例である回収モードを実行可能である。なお、本実施形態では、非画像形成時とは、感光ドラム2にトナー像を形成していないときを意味しており、例えば、画像形成ジョブ中の紙間、前回転時、後回転時や、画像形成ジョブが実行されていないときを含むものとする。
【0043】
また、本実施形態では、領域Ar3に落下したトナーTを現像室52へ戻すために、非画像形成時に供給スリーブ61を画像形成時とは逆方向(図6中、時計回り方向)に回転させる。供給スリーブ61を逆方向に回転させることにより、領域Ar3に落下して堆積したトナーTは供給スリーブ61の表面に連れ回りして供給スリーブ61と規制ブレード62との隙間を通過し、現像室52へ強制的に戻される。
【0044】
[トナー補給制御]
現像装置5に対するトナー補給制御について説明する。画像形成装置1は、現像によって消費した分に見合う量のトナーを現像装置5に補給する自動トナー補給制御(ATR:Auto Toner Replenisher)を行う。本実施形態では、出力画像の濃度を安定させるために、次のような方式のATR制御を採用している。制御部20は、画像形成時の画像比率、トナー濃度センサ58の検知結果、パッチ画像の濃度の検知結果等により、トナーカートリッジとトナー補給口59の間に設けられたトナーホッパの補給スクリュの回転回数を制御し、現像容器50にトナーを補給する。即ち、画像形成時の画像比率に基づいて、予測されるトナー消費量に見合う分のトナー補給量を求める。また、トナー濃度センサ58の検知結果に基づいて、上記画像比率に基づくトナー補給量を補正する。また、所定の頻度で形成されるパッチ画像の濃度検知結果を用いて、上記トナー濃度センサ58の検知結果の目標値を補正する。本実施形態では、任意の補給量を随時補給するのではなく、予め設定された1回分(例えば、トナーホッパの補給スクリュの1回転分)の補給量まで補給を控え、1回分の補給量ごとに補給スクリュを1回転させる。これにより、安定した補給量を得ることができる。
【0045】
更に、制御部20の画像処理部24は、画像読み取り装置やネットワークなどを介して接続されたパーソナルコンピュータから受信した画像情報に基づいて、画像形成によるトナー消費量を算出する。本実施形態では、トナーの消費量は、画像情報に基づいて積算されるビデオカウント値(画像信号値)に基づく画像比率から求められ、画像出力1枚ごとに積算される。制御部20の補給制御部26は、トナー消費量に見合う分のトナー量をトナー補給量として求めるが、トナー濃度センサ58で検知されたT/DがT/Dの目標値に対しずれている場合は、そのずれを小さくするようにトナー補給量を補正する。そして、補給制御部26は、求められた補給量がトナーホッパの補給スクリュの1回転分の補給量以上になると、必要な回転回数分だけ補給スクリュを回転させて、トナーを現像装置5に補給する。
【0046】
補給制御部26は、所定の頻度(例えば、所定枚数の画像出力ごと)で所定の潜像コントラストの所定のサイズ(例えば、15mm角)の制御用トナー像の一例であるパッチ画像を感光ドラム2に形成し、これを中間転写ベルト7に転写させる。このパッチ画像の画像濃度(反射濃度)を、中間転写ベルト7上で、濃度検知手段の一例としての光学センサ80(図1及び図2参照)によって測定させる。そして、測定された画像濃度と基準の画像濃度とを比較して、画像濃度のずれを小さくするようにT/Dの目標値を変更する(パッチ検知制御)。これにより、パッチ画像の形成に使用されたトナー量からトナーの帯電量を予測して、キャリアの劣化などによるトナーの帯電量の変動に起因する画像濃度の変動に対応することができる。
【0047】
[トナーの飛散]
ここで、トナーの飛散について、図7図10を用いて説明する。トナーの飛散の主な要因は、供給スリーブ61と現像スリーブ60との対向部分Ar2で行われる電界によるトナーの受け渡しと、供給スリーブ61と現像スリーブ60との回転により生じる気流である。ここでは、電界によるトナーの飛散と、気流によるトナーの飛散とについて、それぞれ説明する。
【0048】
まず、電界によるトナーの飛散について説明する。図7に、供給スリーブ61と現像スリーブ60の間を移動するトナーTの挙動の一例についての概略図を示す。現像剤は、供給スリーブ61の内部に配置されたマグネットローラ61aによって担持され、供給スリーブ61上に磁気穂を形成し、供給スリーブ61と現像スリーブ60との対向部分Ar2まで搬送される。供給スリーブ61と現像スリーブ60とは、それぞれ供給バイアスと現像バイアスとを印加され、その対向部分Ar2では供給バイアスと現像バイアスとの電位差により電界が生じる。対向部分Ar2に搬送された現像剤において、電界によりキャリアCからトナーTが遊離する。遊離したトナーTは、供給バイアスと現像バイアスとの直流電圧及び交流電圧により生じる電界に追従し、供給スリーブ61と現像スリーブ60との間を往復しながら、供給スリーブ61から現像スリーブ60に向けて飛翔する。
【0049】
ここで、例えば、低画像比率の画像が連続して出力された場合には、トナーの劣化が進行しキャリアに対するトナー付着力が増加し、キャリアからトナーを引き剥がすために、より大きな電界が必要になる。キャリアからトナーを引き剥がす電界を強める方法としては、印加する交流電圧の振幅を大きくする方法がある。図8に、トナーTが飛散する場合の供給スリーブ61と現像スリーブ60の間を移動するトナーTの挙動の一例についての概略図を示す。供給スリーブ61に印加される供給バイアスの交流電圧と現像スリーブ60に印加される現像バイアスの交流電圧との交流電位差ΔVACが大きくなることで、供給スリーブ61と現像スリーブ60間のトナーTの往復運動が激しくなる。これにより、トナーTは、供給スリーブ61と現像スリーブ60との両方から離れた位置まで移動する可能性がある。また、交流電位差ΔVACが大きくなることで、トナーTが供給スリーブ61から飛翔を開始する位置が供給スリーブ61の回転方向上流側になり、対向部分Ar2に達する前に供給スリーブ61と現像スリーブ60の両方から離れた位置に飛翔する場合がある。供給スリーブ61と現像スリーブ60の両方から離れた位置では電界による作用力が小さくなり、トナーTにどちらのスリーブに向かう力も作用しなくなり、空間中を浮遊する可能性がある。空間中を浮遊したトナーTの一部はトナー受け部材71まで漂い、トナー受け部材71上に飛散トナーとして堆積する。これにより、交流電位差ΔVACが大きくなると、トナーの飛散量が増加する。
【0050】
次に、気流によるトナーの飛散について説明する。図9に、供給スリーブ61と現像スリーブ60の間に発生する気流の概略図を示す。供給スリーブ61と現像スリーブ60は、対向部分Ar2で反対方向に進むように回転しているので、供給スリーブ61の回転により発生する気流F1と現像スリーブ60の回転により発生する気流F2とは、反対方向を向く。このため、対向部分Ar2の下方側では、気流F1が対向部分Ar2に達する前に気流F2に方向転換する部分が発生する。この際に、気流に回転力が働くため、供給スリーブ61と現像スリーブ60の間に渦F3が発生する。
【0051】
図10に、トナーTが飛散する場合の供給スリーブ61と現像スリーブ60の間を移動するトナーTの挙動の一例についての概略図を示す。交流電位差ΔVACが大きくなることで、トナーTが供給スリーブ61から現像スリーブ60へ飛翔開始する位置が供給スリーブ61の回転方向上流側になると、気流の渦F3にトナーTが捕らえられる可能性が高くなる。渦F3にトナーTが捕らえられると、トナーTは気流に流されて飛散する。これにより、交流電位差ΔVACが大きくなると、トナーTの飛散量が増加する。
【0052】
[回収モードの実行間隔]
制御部20は、振動機構72を作動させてトナー受け部材71のトナーをふるい落とす回収モードを実行する際に、回収モードの実行間隔として、例えば、一定の印字枚数毎にすることができる。しかしながら、一定の印字枚数ごとにトナー受け部材71を振動させる構成では、交流電位差ΔVACを大きくした場合、トナーが堆積する早さに対して、振動機構72を作動させる頻度が少なくなる。このため、現像装置5の内壁にトナーの堆積と凝集が進み、凝集したトナーが現像スリーブ60へ付着し、感光ドラム2上へ凝集したトナーが供給されることで、画像不良を生じる虞がある。また、交流電位差ΔVACを小さくした場合では、トナーの堆積が進む早さに対して振動機構72を作動させる頻度が多くなるため、生産性が低下してしまう虞がある。そこで、本実施形態では、トナー受け部材71を振動させ堆積トナーを回収する回収モードの実行間隔を、交流電位差ΔVACに基づいて適正化するようにしている。これにより、生産性を必要以上に落とすことなく、トナーの堆積を抑制することができる。
【0053】
本実施形態における回収モードの実行手順について、図11に示すフローチャートに沿って詳細に説明する。制御部20は、画像形成ジョブ情報を受け取ると、供給スリーブ61に印加される供給バイアスの交流電圧と現像スリーブ60に印加される現像バイアスの交流電圧との交流電位差ΔVACを取得する(ステップS1)。制御部20は、取得した交流電位差ΔVACに基づいてテーブルを参照するなどして、堆積係数Rを算出する(ステップS2)。図12に示すように、堆積係数Rは、トナー受け部材71にトナーが堆積する量に対応すると共に、交流電位差ΔVACが大きくなる程、大きくなる。即ち、堆積係数Rは、交流電位差ΔVACに応じてトナーが堆積する早さを重みづけする係数である。
【0054】
制御部20は、画像形成ジョブの実行時の供給スリーブ61の駆動時間tを取得する(ステップS3)。制御部20は、堆積係数R及び駆動時間tを乗じて、堆積指数P=R×tを算出する(ステップ4)。制御部20は、算出した堆積指数Pを前回の回収モード実施時から今までの積算堆積指数Q1=Σ{R×t}に積算して、現在の積算堆積指数Q1を算出する(ステップS5)。
【0055】
制御部20は、積算堆積指数Q1が閾値Q0を超えたか否かを判断する(ステップS6)。閾値Q0は、トナー受け部材71に堆積したトナーが現像スリーブ60に付着し、画像不良が発生した積算堆積指数Q1を予め確認しておき、画像不良が発生しないように、例えば0.8倍程度の安全率を掛けて設定した。制御部20は、積算堆積指数Q1が閾値Q0を超えていないと判断した場合は(ステップS6のNO)、交流電位差ΔVACを再び取得する(ステップS1)。制御部20は、積算堆積指数Q1が閾値Q0を超えたと判断した場合は(ステップS6のYES)、画像形成前に回収モードを実行する(ステップS7)。即ち、制御部20は、前回の回収モードの実行後において、交流電位差ΔVAC及び駆動時間tに基づく積算堆積指数Q1が閾値Q0を超えた場合に、回収モードを実行する。尚、本実施形態では、制御部20は、画像形成前に回収モードを実行しているが、これには限られず、例えば、画像形成前の前回転時、画像形成後の後回転後、紙間のいずれかに実行するようにしてもよい。制御部20は、回収モードの実行後、積算堆積指数Q1をリセットし(ステップS8)、処理を終了する。
【0056】
ここで、制御部20は、交流電位差ΔVAC及び駆動時間tに基づく積算堆積指数Q1が閾値Q0を超えた場合に回収モードを実行するので、交流電位差ΔVACの高い場合の方が低い場合よりも早く閾値Q0を超える。即ち、制御部20は、交流電位差ΔVACが第1電圧値である場合に、回収モードの実行間隔を供給スリーブ61が駆動される第1時間であるようにする。この場合に、制御部20は、交流電位差ΔVACが第1電圧値より高い第2電圧値である場合に、回収モードの実行間隔を供給スリーブ61が駆動される第1時間より短い第2時間であるようにする。
【0057】
なお、本実施形態の回収モードの実行手順では、図12に示すように、堆積係数Rの取得時に交流電位差ΔVACに重みづけをすることで交流電位差ΔVACに応じて実行間隔を変更しているが、これには限られない。例えば、交流電位差ΔVACと駆動時間tとのそれぞれに重みづけをするなどして、交流電位差ΔVACと駆動時間tとに応じて回収モードの実行間隔を変更するようにしてもよい。
【0058】
上述したように本実施形態の画像形成装置1によれば、制御部20は、交流電位差ΔVACが第1電圧値より高い第2電圧値である場合に、回収モードの実行間隔を供給スリーブ61が駆動される第1時間より短い第2時間であるようにしている。これにより、一定の画像形成枚数ごとに回収モードを実行する場合に比べて、回収モードの実行間隔が長すぎたり短すぎたりすることを抑制し、積算堆積指数Q1に基づいて回収モードの実行間隔を適正化することができる。また、画像比率等に応じて交流電位差ΔVACの変更を要する場合でも、生産性の低下を抑えつつ、トナー受け部材71に堆積したトナーが現像スリーブ60へ付着することを抑えることができ、画像不良を抑制できる。
【0059】
即ち、本実施形態の画像形成装置1によれば、現像スリーブ60と供給スリーブ61との間に印加される電圧に応じて、回収モードの実行間隔を変更する。供給スリーブ61と現像スリーブ60と間の印加電圧が大きい場合には、堆積するトナーの量が許容量を超える前に回収モードを実行することができ、画像不良が発生することを抑制できる。また、印加電圧が小さい場合では、回収モードの実行間隔を長く設けることができるため、生産性の低下を抑えながら、画像不良を抑制できる。
【0060】
また、本実施形態の画像形成装置1によれば、制御部20は、交流電位差ΔVACに重みづけをすることで、交流電位差ΔVACに応じて回収モードの実行間隔を変更している。具体的には、交流電位差ΔVACが高いほど、重みづけを大きくするようにしている。このため、トナーの飛散量は、交流電位差ΔVACに対して単純に比例的に増加するのではなく、交流電位差ΔVACが高いほど、比例的な増加を超えて増加することに対応することができる。これにより、交流電位差ΔVACに重みづけをせずに、交流電位差ΔVACに対して単純に比例的に対応して回収モードの実行間隔を変更する場合に比べて、より高精度に回収モードの実行間隔を適正化することができる。
【0061】
[比較評価]
上述した本実施形態の画像形成装置1に係る実施例1と、比較例1及び比較例2とについて、画像評価と生産性を比較した。ここでは、複数の画像形成速度で画像形成を行い、実施例1では積算堆積指数P1が閾値P0を超えるごとに回収モードを実行し、比較例1及び比較例2では、一定の印字枚数(以下、積算堆積枚数)ごとに回収モードを実行した。比較例1の積算堆積枚数を100枚、比較例2の積算堆積枚数を600枚とした。比較評価は画像比率30%の画像1万枚の耐久印刷を行い、そのときの画像欠陥の発生の有無と回収モードに要した時間を比較した。
【0062】
1万枚の耐久印刷は、交流電位差ΔVACを変更して実施した。比較評価に使用した交流電位差ΔVACは、第1交流電位差ΔVAC1=2000V、第2交流電位差ΔVAC2=3000Vの2種類とした。供給スリーブ61に印加される供給バイアスの直流電圧と現像スリーブ60に印加される現像バイアスの直流電圧との直流電位差ΔVDCは、200Vで一定とした。条件1では第1交流電位差ΔVAC1で全て画像形成し、条件2では第2交流電位差ΔVAC2で全て画像形成し、条件3では第1交流電位差ΔVAC1と第2交流電位差ΔVAC2を1:1の割合で画像形成した。尚、条件1では堆積係数R1=1、条件2では堆積係数R2=2.25とした。また、実施例1における積算堆積指数の閾値Q0は1200とした。
【0063】
本実施形態の現像装置5における画像形成速度は25枚/分とし、感光ドラム2の回転速度は125mm/sとし、感光ドラム2の回転速度と現像スリーブ60の回転速度との比を1.5として、現像スリーブ60の回転速度を187.5mm/sとした。また、現像スリーブ60の回転速度と供給スリーブ61の回転速度との比を1.6として、供給スリーブ61の回転速度を300mm/sとした。現像スリーブ60の回転方向は、感光ドラム2に対して現像領域Ar1で同方向となるウィズ回転とし、供給スリーブ61の回転方向は、現像スリーブ60に対して対向部分Ar2で反対方向となるカウンタ回転とした。トナー受け部材71の長手方向の長さは315mm、トナー受け部材71の短手方向の長さは25mmとし、回収モードにおける振動モータ77の回転速度は10000rpm、駆動時間は10秒とした。
【0064】
実施の結果を表1に示す。表1中、画像評価については、1万枚耐久後に画像形成した10枚を目視し、トナー受け部材71に堆積したトナーの凝集塊による画像欠陥が認められたか否かを確認した。画像上に凝集塊による画像欠陥が認められない場合を「○」、認められた場合を「×」とした。生産性については、耐久印刷を行った際に回収モードに要した時間が1000秒未満である場合を「○」、1000秒以上である場合を「×」とした。
【表1】
【0065】
表1に示すように、実施例1では、比較例1と比較例2と比べ、良好な結果を得ることができた。一方、比較例1では、画像不良は発生しなかったが、必要以上に回収モードが実行されたため、実施例1と比べて生産性の低下がみられた。比較例2では、生産性は良好であったが画像不良が確認された。したがって、本実施形態によれば、供給スリーブ61と現像スリーブ60との交流電位差ΔVACに応じて回収モードの実行間隔を変更できるため、生産性を必要以上に落とすことなく、トナーの堆積を抑制できることが確認された。
【0066】
また、実施例1では、第1交流電位差ΔVAC1=2000Vである場合に、堆積係数R1=1、閾値Q0=1200であることから、回収モードの実行間隔は供給スリーブ61が駆動される第1時間である1200秒ごとになる。これは、画像形成枚数では500枚ごとになる。また、第2交流電位差ΔVAC2=3000Vである場合に、堆積係数R2=2.25、閾値Q0=1200であることから、回収モードの実行間隔は供給スリーブ61が駆動される第2時間である約533秒ごとになる。これは、画像形成枚数では約222枚ごとになる。従って、交流電位差ΔVACが、2000V(第1電圧値)より高い3000V(第2電圧値)であるとする。この場合に、制御部20は、回収モードの実行間隔を、供給スリーブ61が駆動される第1時間である1200秒より短い第2時間である533秒に短縮することが確認された。
【0067】
尚、上述した実施形態では、回収モードの実行間隔の判断に供給スリーブ61の回転速度を含めていないが、これには限られず、この回転速度を含めて判断するようにしてもよい。即ち、供給スリーブ61の回転速度が大きければ、発生する気流も強くなるので、トナーは飛翔し易くなる。そこで、制御部20は、交流電位差ΔVACが一定であるときには、供給スリーブ61の回転速度が第1速度である場合に、回収モードの実行間隔を供給スリーブ61が駆動される第1時間であるようにする。この場合に、制御部20は、供給スリーブ61の回転速度が第1速度より速い第2速度である場合に、回収モードの実行間隔を供給スリーブ61が駆動される第1時間より短い第2時間であるようにする。このため、例えば、交流電位差ΔVAC及び駆動時間tに基づく積算堆積指数Q1が同じであっても、供給スリーブ61の回転速度の速い方が回収モードの実行間隔を短くするようにできる。これにより、一定の積算堆積指数Q1ごとに回収モードを実行する場合に比べて、より高精度に回収モードの実行間隔を適正化することができる。尚、この場合、例えば、堆積係数Rを取得するテーブルに、回転速度をパラメータとして追加する。
【0068】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態を、図13図14を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、制御部20は、供給スリーブ61に印加される供給バイアスの直流電圧と現像スリーブ60に印加される現像バイアスの直流電圧との直流電位差ΔVDCに基づいて回収モードの実行間隔を設定する点で、第1の実施形態と構成を異にしている。但し、それ以外の画像形成装置1の構成については、第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
【0069】
直流電位差ΔVDCとトナーの飛散の関係について説明する。第1の実施形態で述べたように、トナーの飛散の主な要因は、供給スリーブ61と現像スリーブ60との対向部分Ar2で行われる電界によるトナーの受け渡しと、供給スリーブ61と現像スリーブ60との回転により生じる気流である。また、例えば、低画像比率の画像が連続して出力された場合には、トナーの劣化が進行しキャリアに対するトナー付着力が増加し、キャリアからトナーを引き剥がすために、より大きな電界が必要になる。キャリアからトナーを引き剥がす電界を強める方法としては、印加する直流電圧の振幅を大きくする方法がある。
【0070】
まず、電界によるトナーの飛散について説明する。直流電位差ΔVDCが大きくなると、供給スリーブ61と現像スリーブ60間で飛翔するトナー量が増加する。供給スリーブ61と現像スリーブ60間で飛翔するトナー量が増加すると、飛翔トナー量に応じて飛散トナー量も増加する。これにより、直流電位差ΔVDCが大きくなると、トナーの飛散量が増加する。
【0071】
次に、気流によるトナーの飛散について説明する。直流電位差ΔVDCが大きくなると、トナーが供給スリーブ61から飛翔開始する位置が供給スリーブ61の回転方向上流側になるので、トナーが空間中を飛翔する距離が長くなってしまう。このため、供給スリーブ61と現像スリーブ60の回転によって発生する気流の渦にトナーが捕まる可能性が高くなる。これにより、直流電位差ΔVDCが大きくなるとトナーの飛散量が増加する。
【0072】
[回収モードの実行間隔]
制御部20は、振動機構72を作動させてトナー受け部材71のトナーをふるい落とす回収モードを実行する際に、回収モードの実行間隔として、例えば、一定の印字枚数毎にすることができる。しかしながら、一定の印字枚数ごとにトナー受け部材71を振動させる構成では、直流電位差ΔVDCを大きくした場合、トナーが堆積する早さに対して、振動機構72を作動させる頻度が少なくなる。このため、現像装置5の内壁にトナーの堆積と凝集が進み、凝集したトナーが現像スリーブ60へ付着し、感光ドラム2上へ凝集したトナーが供給されることで、画像不良を生じる虞がある。また、直流電位差ΔVDCを小さくした場合では、トナーの堆積が進む早さに対して振動機構72を作動させる頻度が多くなるため、生産性が低下してしまう虞がある。そこで、本実施形態では、トナー受け部材71を振動させ堆積トナーを回収する回収モードの実行間隔を、直流電位差ΔVDCに基づいて適正化するようにしている。これにより、生産性を必要以上に落とすことなく、トナーの堆積を抑制することができる。
【0073】
本実施形態における回収モードの実行手順について、図13に示すフローチャートに沿って詳細に説明する。制御部20は、画像形成ジョブ情報を受け取ると、供給スリーブ61に印加される供給バイアスの直流電圧と現像スリーブ60に印加される現像バイアスの直流電圧との直流電位差ΔVDCを取得する(ステップS11)。制御部20は、取得した直流電位差ΔVDCに基づいてテーブルを参照するなどして、堆積係数Rを算出する(ステップS2)。図14に示すように、堆積係数Rは、トナー受け部材71にトナーが堆積する量に対応すると共に、直流電位差ΔVDCが大きくなる程、比例的に大きくなる。その後、ステップS3以降については、第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
【0074】
ここで、制御部20は、直流電位差ΔVDC及び駆動時間tに基づく積算堆積指数Q1が閾値Q0を超えた場合に回収モードを実行するので、直流電位差ΔVDCの高い場合の方が低い場合よりも早く閾値Q0を超える。即ち、制御部20は、直流電位差ΔVDCが第1電圧値である場合に、回収モードの実行間隔を供給スリーブ61が駆動される第1時間であるようにする。この場合に、制御部20は、直流電位差ΔVDCが第1電圧値より高い第2電圧値である場合に、回収モードの実行間隔を供給スリーブ61が駆動される第1時間より短い第2時間であるようにする。
【0075】
なお、本実施形態の回収モードの実行手順では、図14に示すように、堆積係数Rの取得時に直流電位差ΔVDCに重みづけをすることなく、直流電位差ΔVDCに応じて実行間隔を変更しているが、これには限られない。例えば、直流電位差ΔVDCに適宜な重みづけをすることで、直流電位差ΔVDCに応じて回収モードの実行間隔を変更するようにしてもよい。
【0076】
上述したように本実施形態の画像形成装置1によれば、制御部20は、直流電位差ΔVDCが第1電圧値より高い第2電圧値である場合に、回収モードの実行間隔を供給スリーブ61が駆動される第1時間より短い第2時間であるようにしている。これにより、一定の画像形成枚数ごとに回収モードを実行する場合に比べて、回収モードの実行間隔が長すぎたり短すぎたりすることを抑制し、積算堆積指数Q1に基づいて回収モードの実行間隔を適正化することができる。また、画像比率等に応じて直流電位差ΔVDCの変更を要する場合でも、生産性の低下を抑えつつ、トナー受け部材71に堆積したトナーが現像スリーブ60へ付着することを抑えることができ、画像不良を抑制できる。
【0077】
[比較評価]
上述した本実施形態の画像形成装置1に係る実施例2と、比較例1及び比較例2とについて、画像評価と生産性を比較した。ここでは、複数の画像形成速度で画像形成を行い、実施例2では積算堆積指数Q1が閾値Q0を超えるごとに回収モードを実行し、比較例1及び比較例2では、一定の印字枚数(以下、積算堆積枚数)ごとに回収モードを実行した。比較例1の積算堆積枚数を100枚、比較例2の積算堆積枚数を600枚とした。比較評価は画像比率30%の画像1万枚の耐久印刷を行い、そのときの画像欠陥の発生の有無と回収モードに要した時間を比較した。
【0078】
1万枚の耐久印刷は、直流電位差ΔVDCを変更して実施した。比較評価に使用した直流電位差ΔVDCは、第1直流電位差ΔVDC1=200V、第2直流電位差ΔVDC2=300Vの2種類とした。交流電位差ΔVACは、2000Vで一定とした。条件1では第1直流電位差ΔVDC1で全て画像形成し、条件2では第2直流電位差ΔVDC2で全て画像形成し、条件3では第1直流電位差ΔVDC1と第2直流電位差ΔVDC2を1:1の割合で画像形成した。尚、条件1では堆積係数R1=1、条件2では堆積係数R2=1.5とした。また、実施例2における積算堆積指数の閾値Q0は1200とした。
【0079】
本実施形態の現像装置5における画像形成速度は25枚/分とし、感光ドラム2の回転速度は125mm/sとし、感光ドラム2の回転速度と現像スリーブ60の回転速度との比を1.5として、現像スリーブ60の回転速度を187.5mm/sとした。また、現像スリーブ60の回転速度と供給スリーブ61の回転速度との比を1.6として、供給スリーブ61の回転速度を300mm/sとした。現像スリーブ60の回転方向は、感光ドラム2に対して現像領域Ar1で同方向となるウィズ回転とし、供給スリーブ61の回転方向は、現像スリーブ60に対して対向部分Ar2で反対方向となるカウンタ回転とした。トナー受け部材71の長手方向の長さは315mm、トナー受け部材71の短手方向の長さは25mmとし、回収モードにおける振動モータ77の回転速度は10000rpm、駆動時間は10秒とした。
【0080】
実施の結果を表2に示す。表2中、画像評価については、1万枚耐久後に画像形成した10枚を目視し、トナー受け部材71に堆積したトナーの凝集塊による画像欠陥が認められたか否かを確認した。画像上に凝集塊による画像欠陥が認められない場合を「○」、認められた場合を「×」とした。生産性については、耐久印刷を行った際に回収モードに要した時間が1000秒未満である場合を「○」、1000秒以上である場合を「×」とした。
【表2】
【0081】
表2に示すように、実施例2では、比較例1と比較例2と比べ、良好な結果を得ることができた。一方、比較例1では、画像不良は発生しなかったが、必要以上に回収モードが実行されたため、実施例2と比べて生産性の低下がみられた。比較例2では、生産性は良好であったが画像不良が確認された。したがって、本実施形態によれば、供給スリーブ61と現像スリーブ60との交流電位差ΔVACに応じて回収モードの実行間隔を変更できるため、生産性を必要以上に落とすことなく、トナーの堆積を抑制できることが確認された。
【0082】
また、実施例2では、第1直流電位差ΔVDC1=200Vである場合に、堆積係数R1=1、閾値Q0=1200であることから、回収モードの実行間隔は供給スリーブ61が駆動される第1時間である1200秒ごとになる。これは、画像形成枚数では500枚ごとになる。また、第2直流電位差ΔVDC2=300Vである場合に、堆積係数R2=1.5、閾値Q0=1200であることから、回収モードの実行間隔は供給スリーブ61が駆動される第2時間である約800秒ごとになる。これは、画像形成枚数では約333枚ごとになる。従って、直流電位差ΔVDCが、200V(第1電圧値)より高い300V(第2電圧値)であるとする。この場合に、制御部20は、回収モードの実行間隔を、供給スリーブ61が駆動される第1時間である1200秒より短い第2時間である800秒に短縮することが確認された。
【0083】
尚、上述した実施形態では、現像バイアス及び供給バイアスはいずれも直流電圧と交流電圧とが重畳された電圧である場合について説明したが、これには限られない。例えば、現像バイアス及び供給バイアスはいずれも直流成分、即ち直流電圧のみを含む電圧であるようにしてもよい。この場合も、本実施形態と同様に、制御部20は、直流電位差ΔVDCが第1電圧値より高い第2電圧値である場合に、回収モードの実行間隔を供給スリーブ61が駆動される第1時間より短い第2時間であるようにできる。これにより、一定の画像形成枚数ごとに回収モードを実行する場合に比べて、回収モードの実行間隔が長すぎたり短すぎたりすることを抑制し、積算堆積指数Q1に基づいて回収モードの実行間隔を適正化することができる。
【0084】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態を、図15を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、制御部20は、供給スリーブ61に印加される供給バイアスと現像スリーブ60に印加される現像バイアスの交流電位差ΔVAC及び直流電位差ΔVDCに基づいて回収モードの実行間隔を設定する点で、第1の実施形態と構成を異にしている。但し、それ以外の画像形成装置1の構成については、第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
【0085】
第1の実施形態及び第2の実施形態で述べたように、トナーの飛散量は交流電位差ΔVACあるいは直流電位差ΔVDCの大きさによって変化する。このため、交流電位差ΔVACと直流電位差ΔVDCの両方が変化した場合にも、トナー飛散量は変化するので、そのような場合にも生産性を必要以上に落とすことなく、トナーの堆積を抑制する必要がある。そこで、本実施形態では、交流電位差ΔVAC及び直流電位差ΔVDCの両方が変化した場合について、回収モードの実行間隔の適正化を図るようにする。
【0086】
本実施形態における回収モードの実行手順について、図15に示すフローチャートに沿って詳細に説明する。制御部20は、画像形成ジョブ情報を受け取ると、供給スリーブ61に印加される供給バイアスと現像スリーブ60に印加される現像バイアスとから直流電位差ΔVDC及び交流電位差ΔVACを取得する(ステップS21)。制御部20は、取得した直流電位差ΔVDC及び交流電位差ΔVACに基づいてテーブルを参照するなどして、堆積係数Rを算出する(ステップS2)。堆積係数Rは、トナー受け部材71にトナーが堆積する量に対応する。その後、ステップS3以降については、第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
【0087】
ここで、制御部20は、直流電位差ΔVDC、交流電位差ΔVAC、駆動時間tに基づく積算堆積指数Q1が閾値Q0を超えた場合に回収モードを実行する。このため、直流電位差ΔVDC又は交流電位差ΔVACの高い場合の方が、低い場合よりも早く閾値Q0を超えるようになる。即ち、制御部20は、交流電位差ΔVACが一定であるときは、直流電位差ΔVDCが第1電圧値である場合に、回収モードの実行間隔を供給スリーブ61が駆動される第1時間であるようにする。この場合に、制御部20は、交流電位差ΔVACが一定であるときは、直流電位差ΔVDCが第1電圧値より高い第2電圧値である場合に、回収モードの実行間隔を供給スリーブ61が駆動される第1時間より短い第2時間であるようにする。あるいは、制御部20は、直流電位差ΔVDCが一定であるときは、交流電位差ΔVACが第1電圧値である場合に、回収モードの実行間隔を供給スリーブ61が駆動される第1時間であるようにする。この場合に、制御部20は、直流電位差ΔVDCが一定であるときは、交流電位差ΔVACが第1電圧値より高い第2電圧値である場合に、回収モードの実行間隔を供給スリーブ61が駆動される第1時間より短い第2時間であるようにする。
【0088】
上述したように本実施形態の画像形成装置1によれば、以下のようになる。まず、制御部20は、交流電位差ΔVACが一定であるときは、直流電位差ΔVDCが第1電圧値より高い第2電圧値である場合に、回収モードの実行間隔を供給スリーブ61が駆動される第1時間より短い第2時間であるようにしている。また、制御部20は、直流電位差ΔVDCが一定であるときは、交流電位差ΔVACが第1電圧値より高い第2電圧値である場合に、回収モードの実行間隔を供給スリーブ61が駆動される第1時間より短い第2時間であるようにしている。これにより、一定の画像形成枚数ごとに回収モードを実行する場合に比べて、回収モードの実行間隔が長すぎたり短すぎたりすることを抑制し、積算堆積指数Q1に基づいて回収モードの実行間隔を適正化することができる。また、画像比率等に応じて直流電位差ΔVDC又は交流電位差ΔVACの変更を要する場合でも、生産性の低下を抑えつつ、トナー受け部材71に堆積したトナーが現像スリーブ60へ付着することを抑えることができ、画像不良を抑制できる。
【符号の説明】
【0089】
1…画像形成装置、2…感光ドラム(像担持体)、5…現像装置、20…制御部、50…現像容器、60…現像スリーブ、61…供給スリーブ、71…トナー受け部材、72…振動機構(振動手段)、82…バイアス電源(電圧印加部)、Ar1…現像領域(対向領域)、Ar2…対向部分。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15