(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
B62J 50/22 20200101AFI20240105BHJP
B60K 35/00 20240101ALI20240105BHJP
G01D 7/00 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
B62J50/22
B60K35/00 Z
G01D7/00 303B
(21)【出願番号】P 2019201116
(22)【出願日】2019-11-06
【審査請求日】2022-05-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】山本 智
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-510586(JP,A)
【文献】特開2015-024675(JP,A)
【文献】特開2015-085853(JP,A)
【文献】特開2018-118639(JP,A)
【文献】特開2009-103540(JP,A)
【文献】特開2014-091477(JP,A)
【文献】特開2015-017810(JP,A)
【文献】特開2017-149314(JP,A)
【文献】特開2009-008604(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0162225(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 50/22
B60K 35/00 - 37/06
G01D 7/00 - 7/12
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両に取り付けられる車両用表示装置において、
鞍乗型車両の走行中に変化する情報である走行情報を表示するドットマトリクス式の表示部と、
前記表示部に表示する内容を変更する制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記表示部に表示されている前記走行情報が強調条件を満たすと判断した場合に、当該走行情報が示す数値の表示形態を変化させることで、当該走行情報を強調し、
前記表示部には、前記走行情報としてのエンジン回転速度が、バーグラフと回転速度値により表示されており、
エンジン回転速度を表示する領域は、レッドゾーンを示す過回転部を含み、
前記制御部は、エンジン回転速度の変化に応じて前記バーグラフの長さを変化させる制御を行い、
エンジン回転速度がレッドゾーンに到達した際に前記過回転部に新たに表示される前記バーグラフの色は、レッドゾーン以外のエンジン回転速度を示す領域の前記バーグラフの色とは、異な
り、
前記制御部は、現在のエンジン回転速度が、前記回転速度値が示すエンジン回転速度を超えているという前記強調条件を満たす全ての前記回転速度値を拡大サイズで表示し、当該強調条件を満たさない全ての前記回転速度値を通常サイズで表示する制御を行うことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の車両用表示装置であって、
前記表示部は矩形であり、
エンジン回転速度を表示する領域は、レッドゾーン以外のエンジン回転速度を示す領域として、
画面の上下方向に直線状に延びる低回転部と、
画面の左右方向に直線状に延びる高回転部と、
前記低回転部と前記高回転部とを接続する中回転部と、
を含むことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の車両用表示装置であって、
前記高回転部及び前記低回転部について、エンジン回転速度を表示する領域が延びる方向に対して直交する方向の長さを幅としたときに、
前記バーグラフの前記高回転部の幅は、前記低回転部の幅よりも広く、
前記高回転部の前記回転速度値の拡
大サイズは、前記低回転部の前記回転速度値の拡
大サイズよりも大きいことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項4】
請求項
2又は
3に記載の車両用表示装置であって、
前記低回転部の所定の数値間隔を示す目盛りの表示間隔である第1表示間隔は、前記低回転部の全体で一定であり、
前記高回転部の同じ数値間隔を示す目盛りの表示間隔である第2表示間隔は、前記高回転部の全体で一定であり、
前記第2表示間隔は、前記第1表示間隔よりも長いことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項5】
鞍乗型車両に取り付けられる車両用表示装置において、
鞍乗型車両の走行中に変化する情報である走行情報を表示するドットマトリクス式の表示部と、
前記表示部に表示する内容を変更する制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記表示部に表示されている前記走行情報が強調条件を満たすと判断した場合に、当該走行情報が示す数値の表示形態を変化させることで、当該走行情報を強調し、
前記表示部には、前記走行情報としてのエンジン回転速度が、バーグラフと回転速度値により表示されており、
前記制御部は、エンジン回転速度の変化に応じてバーグラフの長さを変化させる制御を行い、
前記表示部は矩形であり、
エンジン回転速度を表示する領域は、
画面の上下方向に直線状に延びる低回転部と、
画面の左右方向に直線状に延びる高回転部と、
前記低回転部と前記高回転部とを接続する中回転部と、
前記高回転部
よりも高速側に接続されるとともに左右方向に延びる
過回転部と、
を含み、
前記過回転部及び前記高回転部について、エンジン回転速度を表示する領域が延びる方向に対して直交する方向の長さを幅としたときに、
前記過回転部の幅は、前記高回転部の幅よりも狭く、
前記過回転部の下端の表示位置は、前記高回転部の下端の表示位置よりも上方であることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項6】
請求項1から
5までの何れか一項に記載の車両用表示装置であって、
前記表示部には、第1数値と第2数値とが表示されており、
前記第1数値は、現在計測中の現在タイムに基づく値であり、
前記第2数値は、過去ラップタイムに基づく値であり、
過去ラップタイムは、前回のラップタイム及びベストラップタイムの少なくとも何れかであり、
前記制御部は、ラップの走行の完了時において、新たに計測されたラップタイムが過去ラップタイムよりも短いか長いかという前記強調条件の判断を行い、短いと判定した場合の前記第2数値の色と、長いと判定した場合の前記第2数値の色と、を異ならせて強調することを特徴とする車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、鞍乗型車両に設けられる車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エンジン回転速度及びラップタイム等を表示する車載表示装置を開示する。この車載表示装置は、バーグラフと、並べて配置された複数の発光素子と、を用いてエンジン回転速度を表示する。具体的には、エンジン回転速度が高くなるに連れて、バーグラフが延びるとともに、点灯する発光素子の数が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の構成では、エンジン回転速度の変化が直感的に分かり易くなるだけであり、具体的なエンジン回転速度を一見して認識しにくい場合がある。また、車両用表示装置が表示する情報はエンジン回転速度以外にもあり、車両の走行中に変化する情報である走行情報を一見して認識し易い構成が求められていた。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、走行情報を一見して認識し易い車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の観点によれば、以下の構成の車両用表示装置が提供される。即ち、車両用表示装置は、鞍乗型車両に取り付けられる。車両用表示装置は、表示部と、制御部と、を備える。前記表示部は、ドットマトリクス式であり、鞍乗型車両の走行中に変化する情報である走行情報を表示する。前記制御部は、前記表示部に表示する内容を変更する制御を行う。前記制御部は、前記表示部に表示されている前記走行情報が強調条件を満たすと判断した場合に、当該走行情報が示す数値の表示形態を変化させることで、当該走行情報を強調する。前記表示部には、前記走行情報としてのエンジン回転速度が、バーグラフと回転速度値により表示されている。エンジン回転速度を表示する領域は、レッドゾーンを示す過回転部を含む。エンジン回転速度がレッドゾーンに到達した際に前記過回転部に新たに表示される前記バーグラフの色は、レッドゾーン以外のエンジン回転速度を示す領域の前記バーグラフの色とは、異なる。前記制御部は、現在のエンジン回転速度が、前記回転速度値が示すエンジン回転速度を超えているという前記強調条件を満たす全ての前記回転速度値を拡大サイズで表示し、当該強調条件を満たさない全ての前記回転速度値を通常サイズで表示する制御を行う。
【0008】
これにより、強調条件を満たした場合に走行情報の数値が強調されるので、運転者は、表示部を一見するだけで、強調条件を満たした走行情報の数値を認識できる。特に、鞍乗型車両の運転者は、車両用表示装置を走行中に一瞬しか見れないことが多いので、一見しただけで重要な情報を認識できることは特に有効である。なお、表示部がドットマトリクス式なので、数値の表示形態を容易に変更できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、走行情報を一見して認識し易い車両用表示装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用表示装置を含む自動二輪車のブロック図。
【
図3】車両用表示装置に表示される各情報及び各情報の表示位置を説明する図。
【
図4】エンジン回転速度の上昇に伴ってバーグラフ及び回転速度値の表示態様が変化することを示す図。
【
図5】コースの1周の走行が完了した後にタイム表示領域の表示内容が変化することを示す図。
【
図6】タイム表示領域が通常状態に戻るまでの変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、
図1を参照して、本実施形態の車両用表示装置20が設けられる自動二輪車1について簡単に説明する。
【0012】
自動二輪車1は、フレームと、エンジンと、前輪及び後輪と、を備える。フレームにはエンジンが取り付けられている。エンジンが発生させた駆動力が後輪に伝達されることで、自動二輪車1が走行する。また、フレームには、運転者が着座するためのシートが配置されている。運転者は、フロントシートに着座した状態で、自動二輪車1を脚の膝部分で挟んで身体を安定させる。このように、自動二輪車1は、運転者が跨るように着座する鞍乗型車両である。また、シートの前方にはバーハンドルが配置されている。運転者は、バーハンドルを操作するとともに、重心を左右に移動させることで、車体を傾斜させながら自動二輪車1を旋回させる。
【0013】
バーハンドルの前方には、車両用表示装置20が配置されている。なお、車両用表示装置20は、バーハンドルに取り付けられていてもよい。また、車両用表示装置20は、鞍乗型車両であれば、自動二輪車1以外に配置されていてもよい。また、鞍乗型車両の車輪数も2に限られず、3以上であってもよい。また、駆動源もエンジンに限られず、電動モータであってもよい。
【0014】
図1及び
図2に示すように、車両用表示装置20は、表示部21と、制御部22と、記憶部23と、操作部24と、を備える。
【0015】
表示部21は、ドットマトリクス式の表示装置であり、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイである。表示部21は、例えば、車速、エンジン回転速度、及びシフトポジション等の様々な情報を表示する(詳細は後述)。
【0016】
制御部22は、CPU等の演算装置であり、表示部21の表示内容を変更する制御を行う。更に、制御部22は、表示部21に表示するためのデータを取得する処理を行う。具体的には、自動二輪車1には、エンジンを制御するエンジン制御装置11と、様々な情報を取得するセンサ12と、が配置されている。センサ12が検出したデータは、エンジン制御装置11に出力される。制御部22は、エンジン制御装置11を介して、センサ12が検出したデータを取得する。なお、制御部22がセンサ12から直接的にデータを取得してもよい。また、制御部22は、エンジン制御装置11へ指示を送信することもできる。なお、制御部22は、自動二輪車1以外の機器(例えば運転者の携帯端末装置)と通信可能であってもよい。
【0017】
記憶部23は、フラッシュメモリ等の記憶装置であり、表示部21に表示するためのデータ及び表示設定等を記憶する。
【0018】
操作部24は、
図2に示すように表示部21の周囲に配置されたハードウェアキーである。運転者が操作部24に対して行った操作は、制御部22に伝達される。これにより、例えば、表示部21に表示される内容が変更されたり、自動二輪車1が有する機能の有効と無効を切り替えたりすることができる。また、操作部24は、ハードウェアキーに限られず、タッチパネルであってもよい。
【0019】
次に、表示部21に表示される内容及びそのレイアウト等について
図3を参照して説明する。
図3及び後述の
図5について、鎖線は符号が示す範囲を示すものであり、実際には表示部21に表示されない。
【0020】
以下の表示部21の説明では、画面上下方向の上を単に上と記載することがある(下についても同様)。また、画面左右方向の左を単に左と記載することがある(右についても同様)。また、「上下方向」等の方向を示す用語は「実質的に上下方向」等であればよく、左右方向の成分をある程度含んでいてもよい。また、「直線状」等の形状を示す用語についても同様に実質的に「直線状」等であればよい。
【0021】
図3に示すように、表示部21は横長の矩形である。表示部21は、セグメント式ではなくドットマトリクス式であるため、表示内容を柔軟に変更することができる。また、表示部21は、モノクロ表示ではなくカラー表示が可能なので、表示色を変更することができる。なお、表示部21は、モノクロ表示であってもよい。
【0022】
図3に示すように、表示部21には、車速表示領域31、冷却水温表示領域32、警告表示領域33、オートクルーズ速度表示領域34、シフトポジション表示領域35、第1補助情報表示領域36、第2補助情報表示領域37、エンジン回転速度表示領域40、及びタイム表示領域50が存在する。
【0023】
車速表示領域31は、表示部21の中心よりも画面左右方向の一側(左側)に位置している。車速表示領域31には、車速センサで計測した自動二輪車1の車速(走行速度)が表示される。冷却水温表示領域32は、車速表示領域31の下側に位置している。冷却水温表示領域32には、温度センサで計測したエンジンの冷却水の温度が表示される。警告表示領域33は、冷却水温表示領域32の下側に位置している。警告表示領域33には、自動二輪車1に関する様々な警告が表示される。オートクルーズ速度表示領域34は、車速表示領域31の上側に位置している。オートクルーズ速度表示領域34には、オートクルーズの設定車速が表示される。自動二輪車1は、オートクルーズの条件を満たす間は、設定車速を維持し続ける。シフトポジション表示領域35は、表示部21の中心よりも画面左右方向の他側(右側)に位置している。シフトポジション表示領域35には、自動二輪車1のシフトポジション(変速装置の現在の変速段)が表示される。第1補助情報表示領域36は、シフトポジション表示領域35の下側に位置している。また、表示部21の下端には第2補助情報表示領域37が位置している。第1補助情報表示領域36及び第2補助情報表示領域37には、累積走行距離、自動二輪車1の走行モード、所定の機能の設定状態(有効/無効)、各種通知等が表示される。走行モードとは、自動二輪車1の特性を定めるものである。走行モードを変化させることで、例えば最高出力が変化したり、アクセル開度に対するレスポンスが変化したりする。
【0024】
上述したように表示部21は、ドットマトリクス式かつカラー表示が可能であるため、例えば以下のような表示を行うことができる。冷却水温表示領域32に表示される冷却水温は、温度に応じて表示色を変更してもよい。警告表示領域33に表示される警告は、警告内容に応じたマークや警告文を表示できる。また、運転者が操作部24を操作することで設定を変更した場合、設定状態の表示箇所(第1補助情報表示領域36又は第2補助情報表示領域37の一部)を点滅させたり表示色を変更したりしてもよい(即ち、後述の表示形態を変更してもよい)。これにより、設定状態が変更した箇所を一見して認識できる。
【0025】
次に、エンジン回転速度表示領域40について
図3及び
図4を参照して説明する。エンジン回転速度表示領域40は、回転速度センサ等で検出されたエンジン回転速度(走行情報)を表示する。走行情報とは、自動二輪車1の走行中に変化する情報である。エンジン回転速度表示領域40は、低回転部と、中回転部と、高回転部と、過回転部と、に区分されている。低回転部は、画面左右方向の一側(左側)の端部を上下方向に直線状に延びる。中回転部は、低回転部と高回転部とを接続するように向きを変える部分である。高回転部は画面上下方向の一側(上側)の端部を左右方向に直線状に延びる。過回転部は、高回転部の高回転側の端部に接続されており、左右方向に直線状に延びる。過回転部はいわゆるレッドゾーンを示す部分である。
【0026】
エンジン回転速度表示領域40には、目盛り41と、回転速度値42と、バーグラフ43と、が表示される。目盛り41は、所定の間隔で配置されている(詳細は後述)。一部の目盛り41の傍には、回転速度値42が表示されている。回転速度値42は、エンジン回転速度を示す値である。バーグラフ43は、検出された現在のエンジン回転速度に応じて長さが変化する。例えば、現在のエンジン回転速度が1500rpmである場合、回転速度値42の「1」と「2」の間までバーグラフ43が延びる。また、表示部21はカラー表示可能であるため、過回転部のバーグラフ43の表示色を他の部分(具体的には低回転部、中回転部、高回転部)とは表示色を異ならせることができる(具体的には過回転部のみを赤色にする)。つまり、エンジン回転速度が過回転部に到達したタイミングで、過回転部に新たな表示色のバーグラフ43が表示される。これにより、運転者は、エンジン回転速度が過回転部に到達したことを即座に認識できる。
【0027】
上述のように、過回転部はレッドゾーンを示す部分なので、エンジン回転速度が過回転部に記載の数値に到達することは好ましくない。一方で、エンジン回転速度が低回転部又は中回転部に記載の数値である間にシフトチェンジを行うと、エンジンの出力を十分活用できない可能性がある。従って、通常は、エンジン回転速度が高回転部に記載の数値である間にシフトチェンジを行うことが好ましい。従って、運転者はエンジン回転速度表示領域40の高回転部を最も注目する傾向にある。
【0028】
そのため、本実施形態では、以下のようにして高回転部を他の部分と異ならせている。即ち、
図3に示すように、低回転部の目盛り41の間隔を第1表示間隔L1とし、高回転部の目盛りの表示間隔を第2表示間隔L2とする。低回転部の複数の第1表示間隔L1はそれぞれ同じ長さである。高回転部の複数の第2表示間隔L2は、それぞれ同じ長さである。また、第1表示間隔L1と第2表示間隔L2は、エンジン回転速度に換算した値(本実施形態では1000rpm)が同じである。第2表示間隔L2は、第1表示間隔L1よりも長い。そのため、高回転部では、低回転部と比較して、エンジン回転速度がより詳細に表示される。また、一般的には、エンジン回転速度の目盛りの表示間隔を異ならせると、運転者が混乱する(正確なエンジン回転速度を瞬時に認識できない)ことがある。しかし、本実施形態では、低回転部と高回転部は向き(延びる方向)が大きく異なるため、混乱が生じにくい。
【0029】
また、
図3と
図4に示すように、低回転部と高回転部でバーグラフ43の幅も異なる。高回転部のバーグラフ43の幅は、低回転部のバーグラフ43の幅よりも広い。そのため、重要な部分である高回転部をユーザに注目させることができる。それに伴って、高回転部の目盛り41の長さは、低回転部の目盛り41の長さよりも長い。
【0030】
また、過回転部のバーグラフ43の幅は、高回転部のバーグラフ43の幅よりも狭い。具体的には、過回転部のバーグラフ43の上端の表示位置は、高回転部のバーグラフ43の上端の表示位置と同じである。一方で、過回転部のバーグラフ43の下端の表示位置は、高回転部のバーグラフ43の下端の表示位置よりも
図3に示すように長さL3だけ上側である。この構成により、過回転部のバーグラフ43の下側に上下方向のサイズが大きい領域が生じる。
【0031】
ここで、上述した車速表示領域31から第1補助情報表示領域36までの領域は、エンジン回転速度表示領域40で囲まれる領域(具体的には低回転部よりも左右方向の内側であって、高回転部及び過回転部よりも下側の領域)に表示される。そして、シフトポジション表示領域35は、表示サイズを大きくする必要がある。そのため、シフトポジション表示領域35が過回転部の下側に位置されている。以上により、高回転部を目立たせつつ他の情報の表示領域(特に上下方向の表示サイズを大きくする情報の表示領域)を確保できる。
【0032】
次に、
図3と
図4を参照して、エンジン回転速度の変化に伴って表示態様が変化することについて説明する。「表示形態」とは、情報をどのようにして表示するかを示す用語であり、表示形態を異ならせると(変化させる)は、例えば表示色を異ならせたり、表示サイズを異ならせたり、点滅の有無を異ならせたりすること等を意味する。
【0033】
図4に示すように、エンジン回転速度が変化することで、回転速度値42の表示形態(具体的には表示サイズ)が変化する。具体的には、バーグラフ43が長くなって目盛り41を通過するタイミングで、目盛り41の傍に表示される回転速度値42の表示サイズが大きくなる(
図4の「1」から「8」を参照)。別の観点から説明すると、表示部21は、それぞれの回転速度値42について、「現在のエンジン回転速度が、回転速度値42が示す値を超えた」という強調条件を満たすか否かの判断を行う。そして、制御部22は、この強調条件を満たす回転速度値42については、表示サイズを大きくする処理を行う。
【0034】
また、回転速度値42の表示サイズを大きくする処理としては、強調条件を満たすと直近で判断された回転速度値42のみの表示サイズを大きくする第1パターンと、強調条件を満たすと判断された全ての回転速度値42の表示サイズを大きくする第2パターンと、があり得る。本実施形態では、
図4に示すように、第2パターンが採用されている。なお、仮に第1パターンを採用すると、
図4の回転速度値42のうち「8」のみの表示サイズが大きくなる。第1パターンを採用する場合、エンジン回転速度が頻繁に上下すると回転速度値42の表示サイズが頻繁に変更されてしまう。この点、第2パターンを採用することで、回転速度値42のうち「8」(第2回転速度値)の表示サイズを拡大した場合において、「8」よりも小さい「6」等(第1回転速度値)の表示サイズが拡大した状態で維持される。そのため、第2パターンでは、回転速度値42の表示サイズが頻繁に変更されにくい。
【0035】
また、本実施形態では、回転速度値42の表示サイズを滑らかに変化させる。具体的には、回転速度値42の表示サイズは、通常サイズと拡大サイズの2つの間でサイズが切り替わる訳ではなく、少なくとも1つの中間サイズを経由して通常サイズ又は拡大サイズに切り替わる。これにより、回転速度値42が動的に変化している印象を運転者に与えることができる。
【0036】
また、上述したようにエンジン回転速度のうち高回転部が重要となるため、高回転部の回転速度値42の拡大サイズは、低回転部の回転速度値42の拡大サイズよりも大きい。更に、高回転部の回転速度値42の通常サイズは、低回転部の回転速度値42の拡大サイズよりも大きいか殆ど同じである。
【0037】
また、バーグラフ43と重なっていない目盛り41は所定の表示色(例えば黒色)で表示されているのに対し、バーグラフ43と重なっている目盛り41は白抜きで表示される。これにより、バーグラフ43の幅(バーグラフ43が進む方向に垂直な方向の長さ)を太くして視認性を上げつつ、更に、バーグラフ43と重なっている目盛り41の視認性の低下も防止できる。
【0038】
次に、
図5及び
図6を参照してタイム表示領域50について説明する。タイム表示領域50は、周回コースを走行する際に使用される。以下では、周回コースを1周するために掛かる時間をラップタイムと称する。ラップタイム及びその比較結果も上記の走行情報に相当する。つまり、自動二輪車1の走行中に新たなラップタイムが計測されて、値が変化するからである。タイム表示領域50は、表示部21の中心に位置している。タイム表示領域50は、現在タイム表示領域51と、前回タイム表示領域52と、ベストタイム表示領域53と、が上下方向に並べられた領域である。
【0039】
現在タイム表示領域51には、現在計測中の現在タイムが表示される。現在タイムとは、周回コースのスタート地点を通過してから現在までに経過した時間である。自動二輪車1が周回コースを1周して再びスタート地点に到達したタイミングで、ラップの走行が完了してラップタイムが確定する。
図5に示す例では、ラップタイムが12秒である場合の例が記載されている。ラップタイムの確定直後は、確定されたラップタイムが一定時間だけ現在タイム表示領域51に表示された後に(
図6の上側)、次の周回の現在タイムが表示される(
図6の下側)。確定直後のラップタイムは、現在タイムが確定した瞬間の値であり、「現在タイムに基づく第1数値」に相当する。もちろん、現在タイム自身も「第1数値」に相当する。
【0040】
また、現在タイムと車速は同じフォントで同じ大きさの文字を用いている。そのため、例えば現在タイムと車速を左右方向に並べて配置した場合、一見して数値の境界が分かりにくくなる。そのため、本実施形態では、現在タイムの上下方向の位置と、車速の上下方向の位置と、を異ならせることで、一見して両者を区別できるようにしている。
【0041】
前回タイム表示領域52には、前回又は今回のラップ数と、前回ラップタイムと、が表示される。
図5の上側には、前回ラップタイムが13秒であることが示されている。また、ラップの走行の完了直後は、アニメーション表示を行って、表示される情報が変更される。
【0042】
具体的には、ラップの走行の完了後、前回タイム表示領域52に表示されていた前回ラップタイムが非表示となる。その後、画面左右方向の一側(左側)から他側(右側)の順に新たな情報が徐々に表示される。新たな情報とは、
図6の上側に示すように、今回ラップタイムから前回ラップタイムを減算した値(以下、前回比較結果)である。なお、前回比較結果は、ラップ数を含んでいるが、含んでいなくてもよい。前回ラップタイム及び前回比較結果も過去ラップタイムに基づく値なので「第2数値」に相当する。図に示す例では、今回ラップタイムは前回ラップタイムよりも短いので、前回比較結果はマイナスを含んでいる。前回タイム表示領域52には、前回比較結果が一定時間だけ表示された後に、再び前回ラップタイムが表示される。
【0043】
ここで、前回比較結果及びその背景色が徐々に表示される方向は、高回転部のエンジン回転速度が大きくなったときにバーグラフ43が延びる方向と同じである。これにより、エンジン回転速度の上昇と、前回比較結果の表示と、の間で変化態様に共通性をもたせることができる。
【0044】
また、前回ラップタイムが黒色の文字で表示されるのに対し、前回比較結果は、白抜きの文字で表示される(図面では表示の関係上、黒色で記載)。更に、前回比較結果は、前回ラップタイムよりも短いか長いかに応じて、異なる背景色で表示される。具体的には、前回比較結果が負の場合は背景色が第1色となり、前回比較結果が正の場合は背景色が第2色となる。別の観点から説明すると、制御部22は、「前回比較結果が負」という強調条件を満たしたと判断した場合、前回比較結果を第1色で表示する(数値の表示態様を変更する)。一方、制御部22は、「前回比較結果が正」という強調条件を満たしたと判断した場合、前回比較結果を第2色で表示する。
【0045】
第1色及び第2色は、前回ラップタイムの表示時の背景色とは異なる色であって、例えば他の領域で用いられていない色であることが好ましい。更に、第1色は、前回よりも今回の方が速く走行できたことを示す色であるため、目立つ色であって、かつ、結果が良好であることを示す色(例えば青色等の寒色)であることが好ましい。一方、第2色は、前回よりも今回の方が遅く走行したことを示す色であるため、結果が悪いことを示す色であって、かつ、警告等で用いられていない色(例えば灰色等の第1色よりも彩度が低い色)であることが好ましい。
【0046】
ベストタイム表示領域53には、ベストラップタイムが表示される。ベストタイム表示領域53は、基本的には前回タイム表示領域52と同様に情報が変化するので、簡単に説明する。ベストタイム表示領域53には、ラップの走行の完了直後の一定時間だけベスト比較結果が表示される。ベスト比較結果とは、今回ラップタイムからベストラップタイムを減算した値である。ベストラップタイム及びベスト比較結果も過去ラップタイムに基づく値なので「第2数値」に相当する。また、ベスト比較結果も、前回比較結果と同様のアニメーション表示及び表示態様で表示される。前回比較結果とベスト比較結果は独立して背景色が変化するので、
図6に示すように、両者が異なる背景色になることもある。なお、本実施形態では、前回比較結果とベスト比較結果を白抜き文字で表示するが、これらを黒色で表示してもよい。また、本実施形態では、前回比較結果とベスト比較結果の背景色を比較結果に応じて変化させることで結果が良好か否かを示すが、これに代えて、前回比較結果とベスト比較結果の文字色(表示色)を比較結果に応じて変化させてもよい。
【0047】
また、本実施形態の車両用表示装置20は、表示モードを変更可能に構成されている。表示モードは、レースモードと公道モードを含む。
図2から
図6には表示モードがレースモードの場合の例が示されている。そのため、レース時に重要となるタイム表示領域50が表示部21の中心に位置している。なお、レースモードにおいても、公道走行で表示することが好ましい情報(例えばオートクルーズの設定速度、車速、各種通知)が表示されているため、公道走行に支障はない。
【0048】
以上に説明したように、本実施形態の車両用表示装置20は、自動二輪車1に取り付けられる。車両用表示装置20は、表示部21と、制御部22と、を備える。表示部21は、ドットマトリクス式であり、自動二輪車1の走行中に変化する情報である走行情報を表示する。制御部22は、表示部に表示する内容を変更する制御を行う。制御部22は、表示部21に表示されている走行情報が強調条件を満たすと判断した場合に、当該走行情報が示す数値の表示形態を変化させることで、当該走行情報を強調する。
【0049】
これにより、強調条件を満たした場合に走行情報の数値が強調されるので、運転者は、表示部21を一見するだけで、強調条件を満たした走行情報の数値を認識できる。特に、自動二輪車1の運転者は、車両用表示装置20を走行中に一瞬しか見れないことが多いので、一見しただけで重要な情報を認識できることは特に有効である。なお、表示部21がドットマトリクス式なので、数値の表示形態を容易に変更できる。
【0050】
また、本実施形態の車両用表示装置20において、表示部21には、走行情報としてのエンジン回転速度が、バーグラフ43と回転速度値42により表示されている。制御部22は、エンジン回転速度の変化に応じてバーグラフ43の長さを変化させる制御を行う。制御部22は、現在のエンジン回転速度が、回転速度値42が示すエンジン回転速度を超えたという強調条件を満たしたと判断した場合に、当該回転速度値42の表示サイズを拡大する。
【0051】
これにより、運転者は、現在のエンジン回転速度を一見しただけで認識できる。
【0052】
また、本実施形態の車両用表示装置20において、エンジン回転速度を示す回転速度値42は、第1回転速度値と、第1回転速度値よりも大きい第2回転速度値と、を含んでいる。制御部22は、エンジン回転速度の変化に応じて第2回転速度値の表示サイズを拡大した場合において、第1回転速度値の表示サイズを拡大した状態で維持する。
【0053】
これにより、エンジン回転速度が急激に大きくなった状況において、第1回転速度値の表示サイズが拡大した後に即座に縮小されることがない。言い換えれば、表示サイズが変更されるのは、現在のエンジン回転速度に最も近い第2回転速度値だけであるため、運転者を第2回転速度値に着目させ易くすることができる。
【0054】
また、本実施形態の車両用表示装置20において、表示部21(詳細には表示部21の画面)は矩形である。エンジン回転速度表示領域40は、低回転部と、高回転部と、中回転部と、を含む。低回転部は、画面の上下方向に直線状に延びる。高回転部は、画面の左右方向に直線状に延びる。中回転部は、低回転部と高回転部とを接続する。
【0055】
これにより、エンジン回転速度表示領域40の形状が表示部の形状に整合するため、表示領域を有効に活用できる。また、エンジン回転速度を一直線状の領域で表示する構成と比較して、エンジン回転速度表示領域40の長さ(詳細にはバーグラフが延びる方向に沿う長さ)が長くなり易いため、運転者は、詳細なエンジン回転速度を認識し易くなる。
【0056】
また、本実施形態の車両用表示装置20において、バーグラフ43の高回転部の幅は、低回転部の幅よりも広い。高回転部の回転速度値42の拡大後の表示サイズは、低回転部の回転速度値42の拡大後の表示サイズよりも大きい。
【0057】
運転者は、一般的に、エンジン回転速度がレッドゾーンに達しないようにするために(あるいはシフトチェンジのタイミングを決めるために)エンジン回転速度を確認するため、高回転部が重要となる。そのため、上記のように、高回転部のバーグラフの幅を太くしつつ、回転速度値を大きくすることで、運転者は、高回転部を確認し易くなる。
【0058】
また、本実施形態の車両用表示装置20において、低回転部の所定の数値間隔を示す目盛り41の表示間隔である第1表示間隔L1は、低回転部の全体で一定である。高回転部の同じ数値間隔を示す目盛り41の表示間隔である第2表示間隔L2は、高回転部の全体で一定である。第2表示間隔L2は、第1表示間隔L1よりも長い。
【0059】
これにより、重要度が高い高回転部の目盛り41の第2表示間隔L2が長いので、運転者は、高回転部の詳細なエンジン回転速度を確認し易くなる。また、低回転部内で目盛り41の第1表示間隔L1が一定なので、現在のエンジン回転速度を分かり易く表示できる(高回転部内でも同様)。
【0060】
また、本実施形態の車両用表示装置20において、エンジン回転速度表示領域40は、更に、高回転部に接続されるとともに左右方向に延びる過回転部を含む。過回転部の幅は、高回転部の幅よりも狭い。過回転部の下端の表示位置は、高回転部の下端の表示位置よりも上方である。
【0061】
一般的に運転者は過回転部(レッドゾーン)に入る前にシフトチェンジを行うため、過回転部の重要度は高回転部よりも低い。その過回転部の幅を狭くすることで、別の情報を表示するための表示領域を広くすることができる。
【0062】
また、本実施形態の車両用表示装置20において、表示部21には、現在計測中の現在タイムに基づく第1数値と、前回のラップタイム及びベストラップタイムの少なくとも何れかである過去ラップタイムに基づく第2数値と、が表示されている。制御部22は、ラップの走行の完了時において、新たに計測されたラップタイムが過去ラップタイムよりも短いか長いかという強調条件の判断結果に応じて、第2数値を異なる色で強調する。
【0063】
これにより、運転者は、車両用表示装置20の第2数値の強調に用いられた色を見るだけで、過去と比較して良いラップタイムが出たか否かを認識できる。
【0064】
また、本実施形態の車両用表示装置20において、制御部22は、ラップの走行の完了時において、新たに計測されたラップタイムが過去ラップタイムよりも短い場合は、第2数値を黒から白に変更するとともに、更に背景色を第1色に変更する。制御部22は、ラップの走行の完了時において、新たに計測されたラップタイムが過去ラップタイムよりも長い場合は、第2数値を黒から白に変更するとともに、更に背景色を第2色に変更する。
【0065】
第2数値の表示色と背景色の両方を変更することで、過去ラップタイムに関する数値を更に強調することができる。
【0066】
また、本実施形態の車両用表示装置20において、表示部21には、エンジン回転速度に応じて長さが変わるバーグラフ43が表示されている。少なくとも所定範囲(本実施形態では高回転部)においてエンジン回転速度が大きくなったときにバーグラフが延びる方向を第1方向とする。制御部22は、第1色又は第2色のバーを第1方向に延ばすようにして、第2数値の背景色を第1色又は第2色に徐々に変更する。
【0067】
エンジン回転速度と第2数値の背景色の変化態様に共通性があるため、統一又は整合された印象を運転者に与えることができる。
【0068】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0069】
上記実施形態では、エンジン回転速度の回転速度値42の表示サイズ、前回比較結果及びベスト比較結果の表示色及び背景色を変化させることで、走行情報が示す数値の表示形態を変化させた。これに代えて、別の走行情報が示す数値(例えば、車速及びシフトポジション等)の表示形態を所定の強調条件に応じて変化させてもよい。
【0070】
上記実施形態では、エンジン回転速度表示領域40は、L字状であるが、一直線状であってもよい。また、高回転部を目立たせる表示は一例であり、別の方法で目立たせてもよいし、上述した目立たせる表示の一部を省略してもよい。
【0071】
上記実施形態では、前回タイム表示領域52とベストタイム表示領域53の両方が表示されているが、何れか一方のみが表示される構成であってもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、前回比較結果及びベスト比較結果が表示されるが、これらの表示を省略してもよい。この場合であっても、背景色を変更することで、それぞれの比較結果が正か負かを一見して認識できる。
【符号の説明】
【0073】
1 自動二輪車(鞍乗型車両)
20 車両用表示装置
21 表示部
22 制御部
23 記憶部
24 操作部