(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】カーボンブラックの製造装置及びカーボンブラックの製造方法
(51)【国際特許分類】
C09C 1/56 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
C09C1/56
(21)【出願番号】P 2019217752
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】10-2018-0152391
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513280854
【氏名又は名称】オーシーアイ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OCI Company Ltd.
【住所又は居所原語表記】94,Sogong-ro,Jung-gu,Seoul,100-718(KR)
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】ソン・スジン
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0071474(KR,A)
【文献】特開昭62-054764(JP,A)
【文献】特表2015-522679(JP,A)
【文献】特開2009-035696(JP,A)
【文献】特開2002-308613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/00-3/12
C01B 32/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラック粉末を形成する燃焼反応器;
前記燃焼反応器の下流に位置し、前記燃焼反応器で形成されたカーボンブラック粉末と分散媒を混合して、カーボンブラックスラーリを形成する混合部;及び、
前記混合部の下流に位置し、前記混合部で形成されたカーボンブラックスラーリを前記燃焼反応器へ還流させる還流部;
を含むものの、
前記燃焼反応器は、
燃料油、原料油、及び燃焼促進ガスを投入した後、反応させる第1の反応帯域;
前記第1の反応帯域の下流に位置し、前記混合部で形成されたカーボンブラックスラーリが投入されて、前記カーボンブラックスラーリ中のカーボンブラック粉末が活性化する第2の反応帯域;及び、
前記第2の反応帯域の下流に位置し、活性化したカーボンブラック粉末に向けて焼入れ液を噴射する第3の反応帯域;
を含む、
カーボンブラックの製造装置。
【請求項2】
前記混合部で形成されたカーボンブラックスラーリを前記第2の反応帯域へ還流させるとき、前記第1の反応帯域へ投入される前記燃料油の流量は、前記第1の反応帯域へ投入される前記燃焼促進ガスの流量の3
%~10%である、請求項1に記載のカーボンブラックの製造装置。
【請求項3】
前記混合部で形成されたカーボンブラックスラーリを前記第2の反応帯域へ還流させるとき、前記第1の反応帯域へ投入される前記原料油の流量は、前記第1の反応帯域へ投入される前記燃料油の流量の1倍~3倍である、
請求項1に記載のカーボンブラックの製造装置。
【請求項4】
前記混合部で形成されるカーボンブラックスラーリは、50重量%~90重量%の分散媒を含む、
請求項1に記載のカーボンブラックの製造装置。
【請求項5】
a)第1の反応帯域、第2の反応帯域及び第3の反応帯域が順次に連結された燃焼反応器の第1の反応帯域へ燃料油、原料油及び燃焼促進ガスを投入した後、反応させてカーボンブラック粉末を形成するステップ;
b)前記ステップa)において形成されたカーボンブラック粉末と分散媒を混合して、カーボンブラックスラーリを形成するステップ;
c)前記ステップb)において形成されたカーボンブラックスラーリを前記燃焼反応器の第2の反応帯域へ還流させるステップ;
d)前記燃焼反応器の第2の反応帯域において、前記カーボンブラックスラーリ中のカーボンブラック粉末を活性化するステップ;及び、
e)前記燃焼反応器の第3の反応帯域において、活性化したカーボンブラック粉末に向けて焼入れ液を噴射するステップ;
を含む、
カーボンブラックの製造方法。
【請求項6】
前記ステップb)において形成されるカーボンブラックスラーリは、50重量%~90重量%の分散媒を含む、
請求項5に記載のカーボンブラックの製造方法。
【請求項7】
前記カーボンブラックスラーリの粘度は、200cps以下である、
請求項5に記載のカーボンブラックの製造方法。
【請求項8】
前記ステップd)の前、前記第1の反応帯域に投入される前記燃料油の流量は、前記第1の反応帯域へ投入される前記燃焼促進ガスの流量の3%~10%である、
請求項5に記載のカーボンブラックの製造方法。
【請求項9】
前記ステップd)の前、前記第1の反応帯域へ投入される前記原料油の流量は、前記第1の反応帯域に投入される前記燃料油の流量の1倍~3倍である、
請求項5に記載のカーボンブラックの製造方法。
【請求項10】
前記ステップe)において活性化したカーボンブラック粉末を焼入れた後、前記ステップb)~前記ステップd)を繰り返す、
請求項5に記載のカーボンブラックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンブラックの形成及びカーボンブラックに対する活性化を連続して行える装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、カーボンブラックに対する改質処理は、原料の炭化水素からカーボンブラックを製造した後、製造済みカーボンブラックを別途改質用反応器へ移して、後続工程として改質処理する方法が知られている。
【0003】
この場合、反応器の容量に合わせて製造されたカーボンブラックの一定量を繰り返して移さなければならないため、大量の生産が不可能であり、工程時間が長くなる問題点がある。また、別途反応器へカーボンブラックを移す追加工程が必要であり、これは最終に改質処理されたカーボンブラックの均一度(uniformity)を下げるか、収率が低下する問題を引き起こし得る。
【0004】
これにより、最近は、比表面積の大きいカーボンブラックを製造するために、カーボンブラックを形成するため燃料油と原料油が投入される燃焼反応器により、カーボンブラックを活性化するための水蒸気を投入する方法が使用されている。
【0005】
しかしながら、上記方法は、燃焼反応器へ投入される水蒸気が焼入れ液として作用し、カーボンブラックの形成反応を早期に終決させて、カーボンブラックの形成収率を低下させるか、均一な物性を有するカーボンブラックの製造に適していないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した技術的背景下で、本発明は、カーボンブラックの改質(特に、比表面積を増加させる活性化)のため、別途改質用反応器を設ける必要がなく、既存のカーボンブラックを形成する燃焼反応器において、カーボンブラックに対する改質処理を連続して行えるカーボンブラックの製造装置、及びこれを用いてカーボンブラックを製造する方法を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、燃焼反応器で形成されたカーボンブラックをスラーリ化し、さらに燃焼反応器へ繰り返して還流させて、改質処理を連続して行うことにより、カーボンブラックを活性化するための足りる残留時間を確保することが可能なカーボンブラックの製造装置、及びこれを用いてカーボンブラックを製造する方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の目的は、以上に言及した目的に制限されないし、言及していない本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解されるし、本発明の実施例によってより明らかに理解される。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示した手段及びその組み合わせによって実現できることが分かりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によれば、カーボンブラック粉末を形成する燃焼反応器、前記燃焼反応器の下流に位置し、前記燃焼反応器で形成されたカーボンブラック粉末と分散媒を混合して、カーボンブラックスラーリを形成する混合部、及び前記混合部の下流に位置し、前記混合部で形成されたカーボンブラックスラーリを前記燃焼反応器へ還流させる還流部、とを含むカーボンブラックの製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カーボンブラックの改質(特に、比表面積を増加させる活性化)のため、別途改質用反応器を設ける必要がなく、既存のカーボンブラックを形成する燃焼反応器によりカーボンブラックに対する改質処理を連続して行えることによって、簡素なカーボンブラックの製造装置を具現することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施例によるカーボンブラックの製造装置の構成を概略に示した図面。
【
図2】本発明の他の実施例によるカーボンブラックの製造装置の構成を概略に示した図面。
【発明を実施するための形態】
【0012】
前述した目的、特徴及び長所は、添付の図面を参照して詳細に後述され、これにより、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明の技術思想を容易に実施することができる。本発明を説明するにあたって、本発明に係る公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合には詳細な説明を省略する。
【0013】
以下における構成要素の上流(又は下流)に任意の構成が配置されるということは、任意の構成が前記構成要素の上流(又は下流)に直ぐに配置されるだけでなく、上流に配置した構成要素と下流に配置された構成要素の間に他の構成要素が介在し得ると理解しなければならない。
【0014】
また、ある構成要素が他の構成要素に連結、結合又は接続されると記載した場合、前記構成要素は、互いに直接に連結されるか、2つの構成要素の間に他の構成要素が介在するか、各構成要素が他の構成要素を介して連結、結合又は接続され得ると理解しなければならない。
【0015】
以下では、本願に添付した図面を参考して、本発明の幾つかの実施例によるカーボンブラックの製造装置及びカーボンブラックの製造方法を説明する。
【0016】
第1実施例
図1は、本発明の一実施例によるカーボンブラックの製造装置の構成を概略に示したものである。
【0017】
図1を参照すれば、本発明の一実施例によるカーボンブラックの製造装置100は、カーボンブラック粉末を形成する燃焼反応器110を含む。
【0018】
燃焼反応器110は、原料油、燃料油及び燃焼促進ガスが投入された後、不完全燃焼して、カーボンブラック粉末を形成する反応器であり、第1の反応帯域110a、第2の反応帯域110b及び第3の反応帯域110cとに区画され得る。
【0019】
本願で用いられる燃焼反応器110は、反応が起きる位置を定義するため便宜上、第1の反応帯域110a、第2の反応帯域110b及び第3の反応帯域110cとに区画されたものであり、本願における燃焼反応器110は、上述した反応帯域のほか、さらに反応帯域を含むか、第1の反応帯域110aと第2の反応帯域110bの間に他の反応帯域が介在するか、第2の反応帯域110bと第3の反応帯域110cの間に他の反応帯域が介在し得ると理解しなければならない。
【0020】
第1の反応帯域110aには燃料油、原料油及び燃焼促進ガスが投入され、燃料油、原料油及び燃焼促進ガスは、同時に又は順次に投入されてもよい。第1の反応帯域110aに投入された燃料油、原料油及び燃焼促進ガスは、反応によってカーボンブラック粉末を形成することができる。
図1には別途示していないが、燃料油及び原料油は、それぞれ貯蔵タンク内に別途貯蔵されてもよく、貯蔵タンクに連結されたポンプにより第1の反応帯域110aへ供給されてもよい。
【0021】
本願で用いられる燃料油は、カーボンブラック粉末を生成する反応温度に至るために燃焼する燃料であり、カーボンブラック粉末を製造するため通常に用いられる燃料を含んでいてもよい。燃料油の非制限的な例としては、軽油、灯油、バンカーC油、石油系FCC、EBO、クレオソート、ソフトピッチ、石炭系コールタール、ナフタレン、カルボキシル酸、FCC等の液体燃料、天然ガス及び石炭ガス等がある。
【0022】
本願で用いられる原料油は、カーボンブラック粉末のシード(seed)を生成する物質であり、カーボンブラック粉末を製造するため通常に使用される原料を含んでいてもよい。原料油の非制限的な例としては、ガソリン、経由、燈油、バンカーC油、石油系FCC、EBO、クレオソート、ソフトピッチ、石炭系コールタール、ナフタレン、カルボキシル酸、FCC等の液体原料、天然ガス及び石炭ガス等がある。
【0023】
燃焼促進ガスは、燃料油の燃焼を促進するためのガスであり、空気又は酸素であってもよい。
【0024】
さらに、本願における第1の反応帯域110aは、高温の燃焼促進ガスを用いて燃料油を燃消させて、燃焼ガス類を形成すると共に、カーボンブラック粉末を生成する反応温度に至るようにする反応帯域と、燃焼ガス類に原料油を反応させて、カーボンブラック粉末を形成する反応帯域とに区画されてもよい。
【0025】
一般に、燃焼ガス類を形成する反応帯域の温度は、1,600℃以上であることが好ましく、燃焼ガス類の温度が高いほど、カーボンブラック粉末の生産性が向上し得る。ただし、燃焼ガス類の温度は、高いほど良いが、燃焼反応器の耐熱性を考慮して、1,600℃以上の温度で適宜決定されてもよい。また、燃焼ガス類と原料油が反応する反応帯域の温度は、燃焼ガス類を形成する反応帯域と同様、カーボンブラック粉末の生産性を考慮して、1,600℃以上であることが好ましい。
【0026】
第2の反応帯域110bは、第1の反応帯域110aの下流に位置し、後述する混合部140で形成されたカーボンブラックスラーリが投入され、カーボンブラックスラーリ中のカーボンブラック粉末が活性化する区間である。
【0027】
本願におけるカーボンブラックの活性化は、高温でカーボンブラックと水蒸気(スチーム)との反応によって、カーボンブラックの表面に孔が形成される改質処理を意味する。
【0028】
第3の反応帯域110cは、第2の反応帯域110bの下流に位置し、第1の反応帯域110aで形成されるか、第2の反応帯域110bで活性化したカーボンブラック粉末を後続工程に移送する前、所定の温度以下(例えば、600℃~950℃)に低くするために、カーボンブラック粉末に焼入れ液(一般に、水)を噴射する区間である。相対的に高温であるカーボンブラック粉末に焼入れ液を噴射する場合、焼入れ液が蒸発することによって、カーボンブラック粉末の温度を低くすることができるようになる。
【0029】
一方、上述した第1の反応帯域110a、第2の反応帯域110b及び第3の反応帯域110cの具体的な温度は、求められるカーボンブラック粉末の物性等に応じて適宜変更されてもよい。
【0030】
燃焼反応器110で形成されたカーボンブラック粉末は、燃焼反応器110の下流に位置する貯蔵部120へ移送されてもよい。カーボンブラック粉末を移送するために、燃焼反応器110と貯蔵部120は、移送配管で連結されてもよく、移送配管に設置された移送式ホッパー、スクリュー又はエアブロワ等によりカーボンブラック粉末が移送されてもよい。
【0031】
貯蔵部120に一時的に貯蔵されたカーボンブラック粉末は、異物除去部130を経て混合部140に移送されてもよい。カーボンブラック粉末を移送するために、貯蔵部120と異物除去部130、異物除去部130と混合部140は、移送配管で連結されてもよく、移送配管に設置された移送式ホッパー、スクリュー又はエアブロワ等によりカーボンブラック粉末が移送されてもよい。
【0032】
また、貯蔵部120は、燃焼反応器110で形成されたカーボンブラック粉末を一時的に貯蔵する区間であり、必要に応じて省略されてもよい。すなわち、燃焼反応器110で形成されたカーボンブラック粉末は、移送配管を介して混合部140に直接に移送されるか、異物除去部130を経て混合部140に移送されてもよい。
【0033】
燃焼反応器110又は貯蔵部120の下流に位置する混合部140は、異物が除去されたカーボンブラック粉末と分散媒を混合して、カーボンブラックスラーリを形成する。
【0034】
本実施例におけるカーボンブラックスラーリは、分散媒の中にカーボンブラック粉末が分散されたスラーリを意味し、カーボンブラック粉末を分散させるための分散媒は、好ましくは、水を用いることができる。
【0035】
一実施例において、カーボンブラックスラーリは、10重量%~50重量%のカーボンブラック粉末と、50重量%~90重量%の分散媒を含んでいてもよく、カーボンブラックスラーリの粘度は、200cps以下、好ましくは、150cps以下であってもよい。
【0036】
カーボンブラックスラーリ中のカーボンブラック粉末の含量が50重量%を超える場合、カーボンブラックスラーリの粘度が高くなり過ぎて、カーボンブラックスラーリの移送難易度が増加し得るし、第2の反応帯域110bへカーボンブラックスラーリを噴射する際、噴射ノズルが詰まるおそれがある。
【0037】
混合部140は、カーボンブラック粉末と分散媒を相対的に高速(例えば、1,000rpm~2,000rpm)に混合するプレミキサー140aと、プレミキサー140aの下流に位置し、プレミキサー140aで高速に混合したカーボンブラックスラーリを相対的に低速(50rpm~200rpm)に混合しながら、カーボンブラックスラーリの中に固まっているカーボンブラック粉末を物理的に粉碎するビーズミル140bとを含んでいてもよい。混合部140は、プレミキサー140aとビーズミル140bを両方とも含むか、2つの混合手段のうち1つのみを含んでいてもよい。
【0038】
混合部140の下流に位置する還流部150は、混合部140で形成されたカーボンブラックスラーリを貯蔵すると共に、カーボンブラックスラーリを第2の反応帯域110bへ還流させる。カーボンブラックスラーリを移送するために、混合部140と還流部150、還流部150と第2の反応帯域110bは、移送配管で連結されてもよく、移送配管に設置されたポンプ等によりカーボンブラックスラーリが移送されてもよい。
【0039】
還流部150内のカーボンブラックスラーリの温度は、カーボンブラックスラーリ中の分散媒の気化を防ぐために100℃未満、好ましくは、50℃~80℃であってもよい。また、還流部150は、カーボンブラックスラーリ中のカーボンブラック粉末の分散性が低下することを防ぐために、撹拌手段をさらに含んでいてもよい。
【0040】
移送配管を介して還流部150において、第2の反応帯域110bへ移送されたカーボンブラックスラーリは、第2の反応帯域110bの内周面に配置された噴射ノズル等のような手段によって、燃焼反応器110内へ噴射されてもよい。カーボンブラックスラーリは、第2の反応帯域110bへ還流されることにより、カーボンブラック粉末が形成される第1の反応帯域110aには影響を与えない。もし第1の反応帯域110aにおいて、カーボンブラック粉末が形成されても、その量が少ないため、カーボンブラックスラーリ中のカーボンブラック粉末の物性等に影響を与えない可能性が大きい。
【0041】
燃焼反応器110内へ噴射されるカーボンブラックスラーリの温度は、100℃未満、好ましくは、50℃~80℃であってもよく、カーボンブラックスラーリの噴射圧力は、15kgf/cm2以下であってもよい。
【0042】
上述したように、第2の反応帯域110bは、還流部150によってカーボンブラックスラーリが還流されて、カーボンブラックスラーリ中のカーボンブラック粉末が活性化する区間である。
【0043】
本実施例において、カーボンブラック粉末の活性化は、高温でカーボンブラックと水蒸気(スチーム)との反応によって、カーボンブラック粉末の表面に孔が形成されることで、比表面積が向上する改質処理を意味する。カーボンブラック粉末は、高温で水蒸気(スチーム)と接触することにより、表面に存在する欠陥部分、すなわち、非晶質(amorphous)部分を中心に酸化して、表面の炭素がCO又はCO2状に離脱し、これによってカーボンブラック粉末の表面に孔が形成される。
【0044】
このとき、カーボンブラック粉末を活性化するために必要な酸化剤として水蒸気は、カーボンブラックスラーリ中の分散媒として用いられた水が、第2の反応帯域110b内の高温雰囲気温度下で気化することによって確保され得る。これにより、本発明の一実施例によれば、カーボンブラック粉末を活性化するために、燃焼反応器110内へ水蒸気を供給する別途手段が不要である利点がある。
【0045】
カーボンブラックスラーリ中のカーボンブラック粉末を活性化するために、燃焼反応器110内のカーボンブラック粉末の表面と水蒸気が反応するために必要な高温雰囲気を形成する必要がある。
【0046】
このため、還流部150において、第2の反応帯域110bへカーボンブラックスラーリを還流させるとき、燃焼反応器110内の高温雰囲気(1,100℃~1,700℃)を形成する必要がある。これにより、第1の反応帯域110aへ燃料油と燃焼促進ガスを投入して反応させることで、燃焼反応器110の内部温度を上昇させることができる。
【0047】
よって、還流部150において、第2の反応帯域110bへカーボンブラックスラーリを還流させるとき、燃焼反応器110内の高温雰囲気を形成するために、第1の反応帯域110aに投入される燃料油の流量は、第1の反応帯域110aへ投入される燃焼促進ガスの流量の10%以下、好ましくは、3%~10%であることが好ましい。
【0048】
一方、カーボンブラック粉末は、燃焼促進ガス(例えば、酸素)が存在する高温雰囲気(一般に、400℃以上)下で燃焼するため、カーボンブラックスラーリを第2の反応帯域110bへ還流させる前、燃焼反応器110内の燃焼促進ガスが存在する場合、カーボンブラックスラーリ中のカーボンブラック粉末が熱分解し得る。
【0049】
よって、燃焼反応器110内に存在する過量の燃焼促進ガスを使いきれるために、第1の反応帯域110aへ燃料油及び燃焼促進ガスのみならず、原料油を投入する必要がある。このとき、燃焼反応器110内に存在する過量の燃焼促進ガスを使いきれるために、第1の反応帯域110aへ投入される原料油の流量は、第1の反応帯域110aへ投入される燃料油の流量の1倍~3内であることが好ましい。
【0050】
上述したように、還流部150を介して第2の反応帯域110bへカーボンブラックスラーリを還流させると、カーボンブラックスラーリ中の分散媒は、全て気化して、カーボンブラック粉末を活性化するための酸化剤として作用する。
【0051】
カーボンブラック粉末の活性化によって、カーボンブラック粉末の表面に形成される孔は、直径に応じて2nm未満の直径を有するマイクロ孔、2nm~50nmの間の直径を有するメゾ孔、50nmを超える直径を有するマクロ孔とに区分される。一般に、高伝導性のカーボンブラック粉末を製造するためには、カーボンブラック粉末の表面にマイクロ孔及びマクロ孔に対し、相対的に多くのメゾ孔を誘導することが有利である。また、カーボンブラックを伝導性樹脂と混合して用いる場合、カーボンブラックの表面に存在するマイクロ孔には、伝導性樹脂が十分に含浸しないため、カーボンブラックと伝導性樹脂の混和性を向上させるためには、カーボンブラックの表面にメゾ孔が存在することが好ましい。
【0052】
カーボンブラック粉末の表面に、マイクロ孔及びマクロ孔に対し、相対的に多くのメゾ孔を誘導するために、第2の反応帯域110bで行われるカーボンブラック粉末を活性化するための足りる残留時間を確保する必要がある。
【0053】
本実施例によれば、カーボンブラック粉末に対する活性化処理を連続して行うことにより、カーボンブラック粉末を活性化するための足りる残留時間を確保することができる。
【0054】
このため、第1の反応帯域110aで最初形成された後、第3の反応帯域110cで焼入れたカーボンブラック粉末は、経路(a)に沿って混合部140でカーボンブラックスラーリを形成し、第2の反応帯域110bへ還流される過程を複数回経ることができる。第2の反応帯域110bへ還流される数が増加するほど、カーボンブラック粉末の活性化度合いが向上し得る。第2の反応帯域110bへカーボンブラック粉末を還流する繰り返した回数は、求められるカーボンブラック粉末の特性に応じて適宜調節されてもよい。
【0055】
次いで、カーボンブラック粉末に対する活性化が十分に行われた場合、カーボンブラック粉末は、第3の反応帯域110cで焼入れた後、経路(b)に沿って後続工程160へ移送されてもよい。
【0056】
後続工程160は、活性化処理済みカーボンブラック粉末から異物を除去する工程、カーボンブラック粉末をペレット化する工程、及びカーボンブラック粉末を包装する工程等を含んでいてもよい。
【0057】
第2実施例
図2は、本発明の他の実施例によるカーボンブラックの製造装置の構成を概略に示したものである。
【0058】
図2を参照すれば、本発明の一実施例によるカーボンブラックの製造装置200は、カーボンブラック粉末を形成する燃焼反応器210を含む。
【0059】
燃焼反応器210は、原料油、燃料油及び燃焼促進ガスが投入された後、不完全燃焼して、カーボンブラック粉末を形成する反応器であり、第1の反応帯域210a、第2の反応帯域210b及び第3の反応帯域210cとに区画されてもよい。
【0060】
第1の反応帯域210aには、燃料油、原料油及び燃焼促進ガスが投入され、燃料油、原料油及び燃焼促進ガスは、同時に又は順次に投入されてもよい。第1の反応帯域210aに投入された燃料油、原料油及び燃焼促進ガスは、反応によってカーボンブラック粉末を形成することができる。
【0061】
第2の反応帯域210bは、第1の反応帯域210aの下流に位置し、後述する混合部270で形成されたカーボンブラックスラーリが投入されて、カーボンブラックスラーリ中のカーボンブラックペレットが活性化する区間である。
【0062】
第3の反応帯域210cは、第2の反応帯域210bの下流に位置し、第1の反応帯域210aで形成されるか、第2の反応帯域210bで活性化したカーボンブラック粉末を後続工程へ移送する前、所定の温度以下(例えば、600℃~950℃)に低くするために、カーボンブラック粉末に焼入れ液(一般に、水)を噴射する区間である。
【0063】
燃焼反応器210で形成されたカーボンブラック粉末は、燃焼反応器210の下流に位置する異物除去部220へ移送されてもよい。カーボンブラック粉末を移送するために、燃焼反応器210と貯蔵部220は、移送配管で連結されてもよく、移送配管に設置された移送式ホッパー、スクリュー又はエアブロワ等によりカーボンブラック粉末が移送されてもよい。ここで、貯蔵部220は、燃焼反応器210で形成されたカーボンブラック粉末を一時的に貯蔵する区間であり、必要に応じて省略されてもよい。
【0064】
貯蔵部220に一時的に貯蔵されたカーボンブラック粉末は、異物除去部230を経て、カーボンブラック粉末を一定大きさに粉碎する粉砕部240へ移送されてもよい。粉砕部240で粉砕されたカーボンブラック粉末は、カーボンブラック粉末をペレット化する前、カーボンブラック粉末と水とを混合して、一次にカーボンブラックスラーリを形成する副混合部250に移送されてもよい。カーボンブラック粉末を移送するために、貯蔵部220と異物除去部230、異物除去部230と粉砕部240、粉砕部240と副混合部250は、移送配管で連結されてもよく、移送配管に設置された移送式ホッパー、スクリュー又はエアブロワ等によりカーボンブラック粉末が移送されてもよい。次いで、副混合部250で形成されたカーボンブラックスラーリは、ペレタイザー260へ移送されて、カーボンブラックペレットにペレット化される。
【0065】
ペレタイザー260で形成されたカーボンブラックペレットは、混合部270へ移送されてもよい。カーボンブラックペレットを移送するためにペレタイザー260と混合部270は、移送配管で連結されてもよく、移送配管に設置された移送式ホッパー、スクリュー又はエアブロワ等によりカーボンブラックペレットが移送されてもよい。
【0066】
ペレタイザー260の下流に位置する混合部270は、カーボンブラックペレットと分散媒を混合して、カーボンブラックスラーリを形成する。
【0067】
本実施例におけるカーボンブラックスラーリは、分散媒の中にカーボンブラックペレットが分散されたスラーリを意味し、カーボンブラック粉末を分散させるための分散媒は、好ましくは、水を用いることができる。
【0068】
一実施例において、カーボンブラックスラーリは、10重量%~50重量%のカーボンブラックペレットと、50重量%~90重量%の分散媒とを含んでいてもよく、カーボンブラックスラーリの粘度は、200cps以下、好ましくは、150cps以下であってもよい。
【0069】
カーボンブラックスラーリ中のカーボンブラックペレットの含量が50重量%を超える場合、カーボンブラックスラーリの粘度が高くなり過ぎて、カーボンブラックスラーリの移送難易度が増加し得るし、第2の反応帯域210bへカーボンブラックスラーリを噴射する際、噴射ノズルが詰まるおそれがある。
【0070】
混合部270は、カーボンブラックペレットと分散媒を相対的に高速(例えば、1,000rpm~2,000rpm)に混合するプレミキサー270aと、プレミキサー270aの下流に位置し、プレミキサー270aで高速に混合したカーボンブラックスラーリを相対的に低速(50rpm~200rpm)に混合しながら、カーボンブラックスラーリの中に固まっているカーボンブラックペレットを物理的に粉碎するビーズミル270bとを含んでいてもよい。混合部270は、プレミキサー270aとビーズミル270bを両方とも含むか、2つの混合手段のうち1つのみを含んでいてもよい。
【0071】
混合部270の下流に位置する還流部280は、混合部270で形成されたカーボンブラックスラーリを貯蔵すると共に、カーボンブラックスラーリを第2の反応帯域210bへ還流させる。カーボンブラックスラーリを移送するために、混合部270と還流部280、還流部2800と第2の反応帯域210bは、移送配管で連結されてもよく、移送配管に設置されたポンプ等によりカーボンブラックスラーリが移送されてもよい。
【0072】
還流部280内のカーボンブラックスラーリの温度は、カーボンブラックスラーリ中の分散媒の気化を防ぐために、100℃未満、好ましくは、50℃~80℃であってもよい。また、還流部2800は、カーボンブラックスラーリ中のカーボンブラックペレットの分散性が低下することを防ぐために、撹拌手段をさらに含んでいてもよい。
【0073】
移送配管を介して還流部280において、第2の反応帯域210bへ移送されたカーボンブラックスラーリは、第2の反応帯域210bの内周面に配置された噴射ノズル等のような手段によって、燃焼反応器210内へ噴射されてもよい。
【0074】
燃焼反応器210内へ噴射されるカーボンブラックスラーリの温度は、100℃未満、好ましくは、50℃~80℃であってもよく、カーボンブラックスラーリの噴射圧力は、15kgf/cm2以下であってもよい。
【0075】
上述したように、第2の反応帯域210bは、還流部280によってカーボンブラックスラーリが還流され、カーボンブラックスラーリ中のカーボンブラックペレットが活性化する区間である。
【0076】
カーボンブラックスラーリ中のカーボンブラックペレットを活性化するために、燃焼反応器210内のカーボンブラックペレットの表面と水蒸気が反応するために必要な高温雰囲気を形成する必要がある。
【0077】
このため、還流部280において、第2の反応帯域210bへカーボンブラックスラーリを還流させるとき、燃焼反応器210内の高温雰囲気(1,100℃~1,700℃)を形成する必要がある。これにより、第1の反応帯域210aへ燃料油と燃焼促進ガスを投入して反応させることで、燃焼反応器210の内部温度を上昇させることができる。
【0078】
よって、還流部280において、第2の反応帯域210bへカーボンブラックスラーリを還流させるとき、燃焼反応器210内の高温雰囲気を形成するために、第1の反応帯域210aへ投入される燃料油の流量は、第1の反応帯域210aへ投入される燃焼促進ガスの流量の10%以下、好ましくは、3%~10%であることが好ましい。
【0079】
一方、カーボンブラックペレットは、燃焼促進ガス(例えば、酸素)が存在する高温雰囲気(一般に、400℃以上)下で燃焼するため、カーボンブラックスラーリを第2の反応帯域210bへ還流させる前、燃焼反応器210内に燃焼促進ガスが存在する場合、カーボンブラックスラーリ中のカーボンブラック粉末が熱分解し得る。
【0080】
よって、燃焼反応器210内に存在する過量の燃焼促進ガスを使いきれるために、第1の反応帯域210aへ燃料油及び燃焼促進ガスのみならず、原料油を投入する必要がある。このとき、燃焼反応器210内に存在する過量の燃焼促進ガスを使いきれるために、第1の反応帯域210aへ投入される原料油の流量は、第1の反応帯域210aへ投入される燃料油の流量の1倍~3倍であることが好ましい。
【0081】
本実施例によれば、カーボンブラック粉末に対する活性化処理を連続して行うことにより、カーボンブラック粉末を活性化するための足りる残留時間を確保することができる。
【0082】
このため、燃焼反応器210で最初形成されたカーボンブラック粉末は、異物除去部230で異物が除去された後、経路(a)に沿ってペレタイザー260を経てペレット化された後、混合部270に投入され、混合部270でカーボンブラックスラーリを形成して、第2の反応帯域210bへ還流される過程を経ることができる。次いで、第2の反応帯域210bで活性化したカーボンブラックペレットは、異物除去部230で異物が除去された後、経路(b)に沿って直ぐに混合部270に投入され、混合部270でカーボンブラックスラーリを形成して、第2の反応帯域210bへ還流される過程を複数回経ることができる。
【0083】
第2の反応帯域210bへ還流される数が増加するほど、カーボンブラックペレットの活性化度合いが向上し得るし、第2の反応帯域210bへカーボンブラックペレットを還流する繰り返した回数は、求められるカーボンブラックペレットの特性に応じて適宜調節されてもよい。
【0084】
次いで、カーボンブラックペレットに対する活性化が十分に行われた場合、カーボンブラックペレットは、第3の反応帯域110cで焼入れた後、経路(c)に沿って後続工程2900へ移送されてもよい。
【0085】
後続工程290は、活性化処理済みカーボンブラック粉末から異物を除去する工程、及びカーボンブラックペレットを包装する工程等を含んでいてもよい。
【0086】
以下では、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記に記載した実施例は、本発明を具体的に例示するか説明するためのものに過ぎず、これによって本発明が制限されてはならない。
【0087】
カーボンブラック粉末の活性化
実施例1
燃焼反応器の第1の反応帯域に原料油としてクレオソート、燃料油として石油系FCC、及び燃焼促進ガスとして空気を投入した後、約1,500℃に昇温して反応させて、カーボンブラック粉末を形成した。第3の反応帯域において、カーボンブラック粉末に焼入れ液を噴射して焼入れた。
【0088】
プレミキサーで焼入れたカーボンブラック粉末30重量%と水70重量%を1,500rpmで3時間混合して、カーボンブラックスラーリを形成した後、カーボンブラックスラーリをビーズミルに移して、150rpmで2時間混合した。
【0089】
さらに燃焼反応器内の原料油、燃料油及び燃焼促進ガスを投入して、燃焼反応器の内部温度を約1,500℃に昇温した後、60℃のカーボンブラックスラーリを燃焼反応器の第2の反応帯域へ還流させて、カーボンブラックスラーリ中のカーボンブラック粉末の活性化反応を誘導した。
【0090】
第3の反応帯域で活性化したカーボンブラック粉末に焼入れ液を噴射して、焼入れた後、1時間後、カーボンブラック粉末を得た。
【0091】
実施例2
第3の反応帯域で活性化したカーボンブラック粉末に焼入れ液を噴射して、焼入れた後、さらにカーボンブラックスラーリを製造して、燃焼反応器の第2の反応帯域へ還流させる過程をさらに1回行った後、カーボンブラック粉末を得た。
【0092】
比較例1
別途活性化処理を行わないことを除いては、実施例1と同様な方式でカーボンブラック粉末を形成した。
【0093】
比較例2
燃焼反応器の第1の反応帯域に原料油としてクレオソート、燃料油として石油系FCC、及び燃焼促進ガスとして空気を投入した後、約1,500℃に昇温して反応させて、カーボンブラック粉末を形成した。第1の反応帯域へ投入される原料油に対し、15%の量で第2の反応帯域に水蒸気を投入して、第1の反応帯域で形成されたカーボンブラック粉末を活性化した。次いで、第3の反応帯域で活性化したカーボンブラック粉末に焼入れ液を噴射して焼入れた。
【0094】
活性化したカーボンブラック粉末の特性評価
実施例1-2及び比較例1-2で得たカーボンブラック粉末に対して、比表面積(N2SA、STSA)、OAN(Oil
absorption number)値、体積抵抗を測定しており、その結果は、下記の表1に記載した。
【0095】
(1)比表面積:N2SA(Total Surface Area)は、ASTM
D3037-93に基づいて測定しており、STSA(External Surface Area)は、ASTM
D5816-96に基づいて測定した。N2SAは、2nm以下の直径を有するマイクロ孔を含む表面積を測定し、STSAは、ポリマーと相互作用することのできる比表面積を測定して、メゾ孔の形成度合いを予測するようにする。
【0096】
(2)OAN(Oil
absorption number)値は、カーボンブラック100gに含有し得るDBP(フタル酸ジブチル)の吸油量を評価して示した値であり、ASTM D-2414規定に準して測定した。OANの数値が高いほど、カーボンブラックの構造が複雑で、かつ発達したことを意味する。
【0097】
(3)体積抵抗は、Mitsubishi社のMCP-T610に従って、下記の方法により測定した:
【0098】
エチレンビニルアセテート(EVA)樹脂(LG化学、EC28005)に、実施例1-2及び比較例1-2のそれぞれに対して、カーボンブラック粉末の含量が15wt%となるように混合し、internal mixer(HAAKE Rheocord 90)を用いて約15分間配合しており、これをホットプレスで一定大きさのシート状に成形製作した。シートの大きさは、横、縦が10cmであり、厚さは2mmである。設けたカーボンブラックが混合したEVAシートを用いて体積抵抗(Volume resistance)を9回測定しており、平均値を結果に示した。
【0099】
【0100】
上記表1の結果をみると、活性化処理を行っていない比較例1に比べて、第1の反応帯域でカーボンブラック粉末を形成した後、第2の反応帯域で活性化処理を行った比較例2によるカーボンブラック粉末のN2SA及びSTSAが向上したことを確認することができる。すなわち、第1の反応帯域でカーボンブラック粉末を形成した後、第2の反応帯域で活性化処理を行っても、カーボンブラック粉末の比表面積を向上させることを確認することができる。また、OAN値も比較例2によるカーボンブラック粉末が比較例1より大きいことを確認することができる。これにより、比較例2によるカーボンブラック粉末の体積抵抗が比較例1より大きいことは、活性化処理によってカーボンブラック粉末の比表面積が向上し、構造が発達したことによると予想することができる。
【0101】
しかし、比較例2によるカーボンブラック粉末は、比較例1に比べて、比表面積、特にN2SA値とOAN値が向上したにもかかわらず、体積抵抗の増加幅が小さいことを確認することができる。これは、活性化処理を行ったにもかかわらず、カーボンブラック粉末の表面に伝導性の向上に影響を与えるメゾ孔の代わりに、マイクロ孔が複数形成されたからであり、N2SA/STSAの値が大きいほど、カーボンブラック粉末の表面にメゾ孔に比べて、マイクロ孔が複数存在することを意味する。
【0102】
かかる結果は、実施例1及び実施例2の結果からより明確に確認することができる。実施例1によるカーボンブラック粉末は、比較例2と同様、1回の活性化処理を行ったにもかかわらず、高い伝導性を有することを確認することができる。
【0103】
かかる結果は、まず、実施例1によれば、比較例2と違って、燃焼反応器の第2の反応帯域に水蒸気を噴射して、第3の反応帯域での焼入れが行われる前まで活性化することとは違って、カーボンブラック粉末と水を混合して形成されたカーボンブラックスラーリを第2の反応帯域に噴射して活性化を行うことにより、比較例2に比べて、カーボンブラック粉末の活性化に要する足りる残留時間を確保したことに起因するものである。
【0104】
実施例1によるカーボンブラック粉末は、比較例2に比べて、カーボンブラック粉末の活性化に要する足りる残留時間を確保することによって、カーボンブラック粉末のN2SA及びSTSA値が比較例2よりさらに増加した反面、N2SA/STSA値は、減少したことを確認することができる。すなわち、実施例1によれば、カーボンブラック粉末の表面に伝導性の向上に影響を与えるメゾ孔が複数形成されて、比表面積が向上したことを予想することができる。
【0105】
また、実施例1によって活性化したカーボンブラック粉末をさらに燃焼反応器の第2の反応帯域へ還流させて、活性化処理を行った実施例2の場合、実施例1に比べて、N2SA及びSTSA値が増加すると共に、N2SA/STSA値は、減少したことを確認することができる。
【0106】
このように、本発明によれば、燃焼反応器で形成されたカーボンブラック粉末をスラーリ化し、さらに燃焼反応器で繰り返して還流させて、活性化処理を連続して行うことにより、カーボンブラックを活性化するための足りる残留時間を確保することができる。
【0107】
以上のように、本発明について例示した図面を参照して説明したが、本明細書に開示した実施例と図面によって本発明が限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で通常の技術者によって多様な変形が成されることは自明である。また、本発明の実施例を前述しながら、本発明の構成による作用効果を明示的に記載して説明しなかったとしても、該構成によって予測可能な効果も認めるべきであることは、当然である。