(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】医療情報処理システム
(51)【国際特許分類】
G16H 40/40 20180101AFI20240105BHJP
【FI】
G16H40/40
(21)【出願番号】P 2019232079
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】安田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】杉山 篤史
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 大史
(72)【発明者】
【氏名】中島 永景
(72)【発明者】
【氏名】今尾 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】平田 啓伍
(72)【発明者】
【氏名】増田 恵美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英二
【審査官】原 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-127381(JP,A)
【文献】特開2018-174973(JP,A)
【文献】特開2015-232767(JP,A)
【文献】特開2017-117294(JP,A)
【文献】国際公開第2018/225326(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 50/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡観察装置から提供される、内視鏡検査に関する第1検査情報を取得する第1検査情報取得部と、
端末装置から提供される、内視鏡検査に関する第2検査情報を取得する第2検査情報取得部と、
洗浄装置から提供される、内視鏡の洗浄に関する洗浄情報を取得する洗浄情報取得部と、
1人の医師が実施した検査に関する第1検査情報および第2検査情報と、当該医師の検査で使用された内視鏡の洗浄情報とを関連付ける関連付け部と、
を備えることを特徴とする医療情報処理システム。
【請求項2】
前記関連付け部は、第1検査情報に含まれる医師ID、第2検査情報に含まれる医師IDを用いて、第1検査情報と第2検査情報を関連付ける、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療情報処理システム。
【請求項3】
内視鏡の洗浄情報には、当該内視鏡を使用した医師の医師IDが含まれる、
ことを特徴とする請求項2に記載の医療情報処理システム。
【請求項4】
前記関連付け部による関連付けの結果から、当該医師が実施した検査数を導出する導出部を、さらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療情報処理システム。
【請求項5】
前記関連付け部による関連付けの結果を提示する関連付け結果提示部を、さらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医師が実施した内視鏡検査数を導出するために必要となる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医師が専門医になるためには、研修期間内に所定の診療実績を挙げなければならない。専門医を目指す医師(以下「研修医」と呼ぶ)は専門医試験を受ける前に、自分で診療実績を集計して指導医の承認を受ける必要があり、勤務している医療施設から実施検査数を含む実績情報を提供してもらう。研修医が過去に複数の施設で勤務していた場合には、各施設から実績情報を提供してもらう必要がある。
【0003】
特許文献1は、病院に所属する複数の研修医が専門医として認定されるための実績に関する研修状況情報を記憶し、所定の疾患について経験しなければならない残件数が研修の残期間に対して大きい研修医を、患者の担当医として優先的に決定する担当医決定装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医療施設には、内視鏡観察装置から、検査の種別情報、実施医の識別情報、使用した内視鏡の識別情報などを含む検査情報を収集する医療情報処理システムが設けられる。医療情報処理システムが、医療施設内の全ての内視鏡観察装置から検査情報を取得できれば、医師の診療実績は確実に管理される。しかしながら様々なメーカーの内視鏡観察装置が存在する場合、ある内視鏡観察装置からは診療実績の管理に適切な検査情報を取得できるが、別の内視鏡観察装置からは診療実績の管理に適切な検査情報を取得できない状況が発生しうる。そのため医療施設では、内視鏡観察装置から取得する検査情報以外の情報も用いて、医師の診療実績を管理できることが好ましい。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、医師の診療実績を管理する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の医療情報処理システムは、内視鏡観察装置から提供される内視鏡検査に関する第1検査情報を取得する第1検査情報取得部と、端末装置から提供される内視鏡検査に関する第2検査情報を取得する第2検査情報取得部と、洗浄装置から提供される内視鏡の洗浄に関する洗浄情報を取得する洗浄情報取得部と、1人の医師が実施した検査に関する第1検査情報および第2検査情報と、当該医師の検査で使用された内視鏡の洗浄情報とを関連付ける関連付け部と、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、医師の診療実績を管理するための技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例にかかる医療情報処理システムの構成を示す図である。
【
図4】検査記録画面に検査情報を入力した状態を示す図である。
【
図6】第1検査情報記録部に記録された第1検査情報の例を示す図である。
【
図7】第2検査情報記録部に記録された第2検査情報の例を示す図である。
【
図8】洗浄情報記録部に記録された洗浄情報の例を示す図である。
【
図9】関連付け部により関連付けされた第1検査情報、第2検査情報、洗浄情報の例を示す図である。
【
図11】医療情報処理システムの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施例にかかる医療情報処理システム1の構成を示す。実施例の医療情報処理システム1は病院などの医療施設に設けられる。医療施設で使用される内視鏡3a、3b(以下、特に区別しない場合には「内視鏡3」と呼ぶ)には識別情報(スコープID)が付与され、各内視鏡3には、スコープIDを記録したIDタグが取り付けられる。医療施設で勤務する医師には、自身を識別するための識別情報(医師ID)が付与され、医師は、医師IDを記録したIDカードを携行する。
【0012】
管理サーバ10は、実施した内視鏡検査に関する情報(検査情報)および内視鏡の洗浄に関する情報(洗浄情報)から、医師、特に研修医の診療実績を導出する機能をもつ。研修医が専門医になるためには、所定の診療実績基準を満たす必要があり、管理サーバ10は、研修医からの要求を受けると、研修医の診療実績を導出して研修医に提供できる。後述するが、医療施設は、検査情報および洗浄情報を、インターネットで接続する外部の集計サーバに送信し、当該集計サーバが、研修医の集計した診療実績を導出してもよい。
【0013】
図2は、日本消化器内視鏡学会により定められている診療実績基準を示す。研修医は、5年以上の研修期間内に、診療実績基準で示される検査件数を満たす必要がある。治療内視鏡については、切除術、止血術、狭窄拡張・ステント挿入の3手技を含むことが要求される。そのため管理サーバ10は、医師の診療実績を導出するに際し、上部消化管の内視鏡検査と下部消化管の内視鏡検査を区別して検査件数を集計するとともに、治療内視鏡の実績についても集計する必要がある。
【0014】
医療施設では、複数の内視鏡観察装置4a、4b(以下、特に区別しない場合は「内視鏡観察装置4」と呼ぶ)が使用される。なお検査室の数は3つ以上あってよく、使用される内視鏡観察装置4も3つ以上存在してよい。医療施設において、複数の内視鏡観察装置4が全て同種のものであることは希であり、メーカーが異なっていたり、メーカーが同一であっても機種が異なっていることで、複数の内視鏡観察装置4の機能は異なる。複数の内視鏡観察装置4の全てが管理サーバ10に対して、実施した内視鏡検査に関する検査情報を提供できることが好ましいが、中には検査情報を提供できないものや、検査情報の一部しか提供しないものが存在することもある。
【0015】
図1において、検査室aに内視鏡観察装置4aが配置される。検査開始前、内視鏡3aが内視鏡観察装置4aに接続される。内視鏡観察装置4aは、検査を実施する医師の医師IDを読み取るためのID読取装置5を備え、検査開始前に医師は、自身のIDカードをID読取装置5にかざして、医師IDを読み取らせる。内視鏡観察装置4aは、接続された内視鏡3aからスコープIDを自動取得し、またID読取装置5から医師IDを取得する。なお内視鏡観察装置4aがスコープIDの自動取得機能を有しない場合、医師または医療スタッフは、内視鏡3aのIDタグをID読取装置5にかざして、スコープIDを読み取らせてよい。検査で処置具を使用する場合、医療スタッフは、処置具の滅菌袋に印刷または糊付けされた処置具IDを、ID読取装置5に読み取らせる。検査開始ボタンが押されると、内視鏡観察装置4aは検査開始時刻を取得し、検査終了ボタンが押されると、内視鏡観察装置4aは検査終了時刻を取得する。
【0016】
内視鏡観察装置4aは、検査のオーダ情報に関連付けて、スコープID、医師ID、処置具ID、検査開始時刻および検査終了時刻を管理サーバ10に送信する。オーダ情報には、検査種別や、患者を識別するための識別情報(患者ID)、検査開始予定時刻、検査終了予定時刻などの情報が含まれている。内視鏡観察装置4aは、これらの情報を検査終了時にまとめて送信してもよいが、情報を取得するたびに送信してもよい。管理サーバ10は、これらの検査に関する情報を、検査情報として記録する。
【0017】
検査室bには内視鏡観察装置4bが配置される。検査開始前、内視鏡3bが内視鏡観察装置4bに接続される。内視鏡観察装置4bは、内視鏡観察装置4aと異なり、医師IDや処置具IDを読み取るID読取装置5を有していない。そのため内視鏡観察装置4bは、少なくとも検査実施医の医師IDや、検査で使用した処置具の処置具IDを取得できず、管理サーバ10に送信できない。なお内視鏡観察装置4bは、検査のオーダ情報に関連付けて、検査開始時刻および検査終了時刻を管理サーバ10に送信できるが、そのような情報すらも管理サーバ10に送信できない内視鏡観察装置が医療施設に存在している可能性もある。
【0018】
以上のように内視鏡観察装置4aは、医師の診療実績を管理するために十分な検査情報を管理サーバ10に送信する機能をもつ一方で、内視鏡観察装置4bは、医師の診療実績を管理するために十分な検査情報を管理サーバ10に送信する機能をもたない。そのため管理サーバ10は、内視鏡観察装置4から送信される検査情報のみから、研修医の診療実績を管理できない。そこで実施例の医療情報処理システム1では、研修医がタブレット装置などの端末装置9を携行し、自分の実施した検査に関する情報(検査情報)を端末装置9に入力して、管理サーバ10に登録する。なお端末装置9は、研修医の携行物であってもよいが、検査室ごとに配置されていてもよい。
【0019】
実施例の端末装置9は、無線通信機能を有し、アクセスポイントであるAP8を経由して管理サーバ10に接続する。研修医は、検査室で内視鏡検査を終了すると、端末装置9のディスプレイに検査記録画面を表示させて、検査情報を入力する。端末装置9は、タッチパネルを有してよい。
【0020】
図3は、検査記録画面の例を示す。研修医Aは、端末装置9にログインして、検査記録画面を表示させる。検査記録画面には、以下の入力項目が設けられる。
・検査開始時刻
・検査終了時刻
・種別
・処置内容
・患者ID
【0021】
検査開始時刻の入力欄には、検査の開始時刻が入力され、検査終了時刻の入力欄には、検査の終了時刻が入力される。種別の入力欄には、上部内視鏡検査であるか、下部内視鏡検査であるかを示す情報が入力される。たとえば研修医Aが種別の入力欄をタップすると、上部検査または下部検査の選択肢が表示されてよい。
【0022】
処置内容の入力欄には、検査中に実施した処置に関する情報が入力される。実施例の医療情報処理システム1は、研修医の診療実績を管理することを目的としており、したがって処置内容の入力欄には、切除術、止血術、狭窄拡張・ステント挿入の3つの手技のいずれかに関する情報が入力される。処置していなければ、処置内容の入力欄には「処置なし」と入力される。たとえば研修医Aが処置内容の入力欄をタップすると、切除術、止血術、狭窄拡張・ステント挿入、処置なしの選択肢が表示されてよい。患者IDの入力欄には、検査対象となる患者のIDが入力される。たとえば端末装置9に携帯型のID読取装置を接続し、ID読取装置で、患者のリストバンドに記録された患者IDを読み取ることで、患者IDが入力欄に入力されてもよい。
【0023】
図4は、検査記録画面に検査情報を入力した状態を示す。研修医Aが全ての項目に情報を入力し、登録ボタンをタップすると、端末装置9は、入力された情報を、管理サーバ10に送信し、管理サーバ10は、受信した情報を検査情報として記録する。
【0024】
上記したように、内視鏡観察装置4aは、診療実績を管理するのに十分な検査情報を管理サーバ10に送信する機能を有するが、内視鏡観察装置4bは、検査を実施した医師の医師IDを管理サーバ10に送信することができない。そのため医療施設では、端末装置9の使用規則として、研修医が内視鏡観察装置4bを使用したときに、端末装置9に検査情報を入力して管理サーバ10に送信させ、内視鏡観察装置4aを使用した場合は端末装置9に検査情報を入力しない、とするルールを定めてよい。
【0025】
しかしながら、そのようにルール化した場合、研修医は、使用する内視鏡観察装置4の種類を毎回気にしなくてはならない。特に最近では、内視鏡観察装置4が可搬式のトロリーに載せられて、検査室間で移動されることがあり、検査室と内視鏡観察装置4の種類とが一対一に対応付けられない。そのため研修医は、毎回内視鏡観察装置4の種類を確認して、端末装置9に検査情報を入力するべきか否かを判断するのではなく、むしろ内視鏡観察装置4の種類に関係なく、毎回、端末装置9に検査情報を入力することが、確実な診療実績の管理という観点から望ましい。そこで実施例の医療情報処理システム1では、研修医が端末装置9を携行し、検査を終了したタイミングで、必ず検査情報を端末装置9に入力して、管理サーバ10に送信させる運用を採用する。この運用により、理想的には、管理サーバ10は、端末装置9から送信される検査情報を記録するだけで、研修医の診療実績を管理できる。
【0026】
しかしながら、1日に多くの検査を実施した場合、研修医が、忙しさのあまり端末装置9への入力を忘れることがある。そのため端末装置9から送信される検査情報のみで研修医の診療実績を管理することは、入力忘れなどのヒューマンエラーを考慮すると、完全とは言い難い。そこで実施例の管理サーバ10は、端末装置9から送信される検査情報を含む様々な情報をもとに、研修医の診療実績を管理する仕組みを備える。
【0027】
洗浄室には、複数の洗浄装置6a、6b(以下、特に区別しない場合は「洗浄装置6」と呼ぶ)が少なくとも設けられる。洗浄装置6についても内視鏡観察装置4と同様の事情が存在し、メーカーが異なっていたり、メーカーが同一であっても機種が異なっていることで、複数の洗浄装置6の機能は異なる。
【0028】
洗浄装置6aは、内視鏡3のスコープIDを読み取るためのID読取装置7を備え、洗浄開始前に、医療スタッフは、検査で使用した内視鏡3のIDタグをID読取装置7にかざして、スコープIDを読み取らせる。なお医療情報処理システム1では、検査で使用された内視鏡3に、検査を実施した医師の医師IDや、検査された患者の患者IDを一時記録する記録媒体が取り付けられる。この記録媒体は、検査を終えた研修医が内視鏡3に取り付けてよい。医療スタッフは、洗浄開始前に、記録媒体をID読取装置7にかざして、医師IDおよび患者IDを読み取らせる。なお記録媒体からの医師IDおよび患者IDの読み取りは、別のID読取装置によって実施されてもよい。スコープIDのIDタグや、医師ID等を記録する記録媒体は、防水加工を施されて、内視鏡3と一緒に洗浄槽に入れられることが好ましいが、防水加工が施されていない場合には、洗浄開始前に、IDタグや記録媒体は、内視鏡3から取り外される必要がある。
【0029】
医療スタッフが、内視鏡3を洗浄槽にセットして洗浄プログラムを選択し、洗浄開始ボタンを押すと、洗浄装置6aは、洗浄プログラムにしたがって内視鏡3を洗浄する。洗浄装置6aは、洗浄開始ボタンが押されたとき、ID読取装置7により読み取ったスコープIDを、洗浄開始時刻とともに管理サーバ10に送信する。なお医師IDおよび患者IDを読み取っている場合には、これらの情報も管理サーバ10に送信する。そして洗浄が終了すると、洗浄装置6aは、洗浄終了時刻を管理サーバ10に送信する。
【0030】
一方、洗浄装置6bは、内視鏡3のスコープIDを読み取るためのID読取装置7を備えない。そのため洗浄装置6bは、スコープID、医師ID、患者IDなどのID情報を取得しない。
【0031】
以上のように洗浄装置6aは、スコープID、医師ID、患者IDなどのID情報を含む洗浄情報を管理サーバ10に送信する機能をもつ一方で、洗浄装置6bは、ID情報を管理サーバ10に送信する機能をもたない。このように洗浄室には、様々な機能の異なる複数の洗浄装置6が存在している。
【0032】
図5は、管理サーバ10の機能ブロックを示す。管理サーバ10は、処理部20および記録部50を備える。処理部20は、情報取得部22、関連付け部30、関連付け結果提示部32および導出部34を備え、情報取得部22は、第1検査情報取得部24、第2検査情報取得部26および洗浄情報取得部28を有する。記録部50は、HDDやSSDなどの補助記憶装置であって、第1検査情報記録部52、第2検査情報記録部54および洗浄情報記録部56を有する。
【0033】
これらの構成はハードウエア的には、任意のプロセッサ、メモリ、補助記憶装置、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0034】
第1検査情報取得部24は、内視鏡観察装置4から提供される、内視鏡検査に関する検査情報を取得する。以下、内視鏡観察装置4から提供される検査情報を「第1検査情報」と呼ぶ。第1検査情報取得部24は、取得した第1検査情報を第1検査情報記録部52に記録する。
【0035】
図6は、第1検査情報記録部52に記録された第1検査情報の例を示す。第1検査情報は、検査ID、検査日、検査開始時刻、検査終了時刻、検査種別、医師ID、スコープID、処置具IDおよび患者IDを含む。第1検査情報記録部52は、第1検査情報に検査番号を付与して管理する。この第1検査情報において、研修医である医師Aは、検査番号1_7,1_10の上部検査を実施したことが示される。
【0036】
第1検査情報において、検査番号1_2,1_5,1_9の検査情報には、医師IDが含まれていない。上記したように、これらの検査情報は、内視鏡観察装置4bから提供されたものであり、ID読取装置5を備えていない内視鏡観察装置4bは、実施医の医師IDを送信できない。そのため仮に検査番号1_2,1_5,1_9の検査を医師Aが実施していた場合、第1検査情報からは、そのことを特定することはできない。
【0037】
第2検査情報取得部26は、端末装置9から提供される、内視鏡検査に関する検査情報を取得する。以下、端末装置9から提供される検査情報を「第2検査情報」と呼ぶ。第2検査情報取得部26は、取得した第2検査情報を第2検査情報記録部54に記録する。
【0038】
図7は、第2検査情報記録部54に記録された第2検査情報の例を示す。第2検査情報は、医師ID、検査日、検査開始時刻、検査終了時刻、検査種別、処置内容および患者IDを含む。第2検査情報記録部54は、第2検査情報に検査番号を付与して管理する。実施例の医療施設では、研修医のみが端末装置9を携行し、自身が実施した検査情報を端末装置9から管理サーバ10に登録する。なお医療施設内に複数の研修医がいれば、第2検査情報記録部54は、複数の研修医の第2検査情報を記録する。
【0039】
洗浄情報取得部28は、洗浄装置6から提供される、内視鏡の洗浄に関する洗浄情報を取得する。洗浄情報取得部28は、取得した洗浄情報を洗浄情報記録部56に記録する。
【0040】
図8は、洗浄情報記録部56に記録された洗浄情報の例を示す。洗浄情報は、洗浄日、洗浄開始時刻、洗浄終了時刻、スコープID、医師IDおよび患者IDを含む。洗浄情報記録部56は、洗浄情報に洗浄番号を付与して管理する。実施例では、研修医が内視鏡検査を実施すると、使用した内視鏡3に、医師IDおよび患者IDを一時記録した記録媒体を取り付ける。記録媒体を取り付けられた内視鏡3は、検査室から洗浄室に運び込まれ、医療スタッフは、記録媒体をID読取装置7にかざして、医師IDおよび患者IDを読み取らせる。このように医師IDおよび患者IDを読み取らせることで、研修医である医師Aが使用した内視鏡3の洗浄情報には、医師IDおよび患者IDが含まれる。
【0041】
関連付け部30は、1人の医師Aが実施した検査に関する第1検査情報および第2検査情報と、当該医師Aの検査で使用された内視鏡の洗浄情報とを、互いに関連付ける。以下、関連付け部30が、2019年6月3日付の
図6に示す第1検査情報、
図7に示す第2検査情報、
図8に示す洗浄情報を、医師Aが実施した検査に対して関連付け処理を行う例を示す。関連付け処理の前段階として、関連付け部30は、医師Aに関する第1検査情報、第2検査情報、洗浄情報を抽出する。
【0042】
関連付け部30は、第1検査情報記録部52に記録された第1検査情報から、医師Aが実施した検査を抽出する。具体的に関連付け部30は、第1検査情報に含まれる医師IDを参照して、医師Aが含まれる検査を抽出する。
図6に示す第1検査情報において、抽出される検査は、検査番号1_7,1_10の検査である。
【0043】
関連付け部30は、第2検査情報記録部54に記録された第2検査情報から、医師Aが実施した検査を抽出する。具体的に関連付け部30は、第2検査情報に含まれる医師IDを参照して、医師Aが含まれる検査を抽出する。なお
図7には、医師Aによる第2検査情報のみが示されているが、他の研修医がいる場合には、第2検査情報記録部54には、他の研修医による第2検査情報も含まれることになる。
図7に示す第2検査情報において、抽出される検査は、検査番号2_1,2_2の検査である。
【0044】
関連付け部30は、洗浄情報記録部56に記録された洗浄情報から、医師Aが実施した検査で使用された内視鏡3の洗浄処理を特定する。具体的に関連付け部30は、洗浄情報に含まれる医師IDを参照して、医師Aが含まれる洗浄情報を抽出する。
図8に示す洗浄情報において、抽出される洗浄処理は、洗浄番号3_8,3_10の洗浄処理である。
【0045】
以上のように関連付け部30は、2019年6月3日付の第1検査情報、第2検査情報、洗浄情報から、検査番号1_7,1_10の検査、検査番号2_1,2_2の検査、洗浄番号3_8,3_10の洗浄処理を抽出し、これらを関連付ける処理を実施する。なお関連付け処理は、医師Aが実施した1つの検査を2つ又は3つの検査と誤ってカウントしないために実施される。つまり関連付け処理は、1つの検査に関する第1検査情報、第2検査情報、洗浄情報を、1つの検査としてカウントできるようにまとめる処理である。関連付け処理の実施手法は様々考えられるが、実施例では、第2検査情報を軸として、第1検査情報および洗浄情報を関連付ける処理を説明する。
【0046】
関連付け部30は、検査番号2_1の検査に関連付けられる第1検査情報および洗浄情報が存在するか判断する。ここで検査番号2_1の検査は、以下の検査情報を含む。
・検査日 2019/6/3
・検査開始時刻 10:00
・検査終了時刻 10:35
・検査種別 上部検査
・処置内容 止血術
・患者ID 734512
【0047】
関連付け部30は、第1検査情報に含まれる検査番号1_7,1_10の検査のうち、検査番号2_1の検査と同じ患者IDを含む検査を調べる。ここで検査番号1_7の検査の患者IDは、検査番号2_1の検査の患者IDと一致するため、関連付け部30は、検査番号1_7の検査と検査番号2_1の検査とを関連付ける。
【0048】
関連付け部30は、洗浄情報に含まれる洗浄番号3_8,3_10の洗浄処理のうち、検査番号2_1の検査と同じ患者IDを含む洗浄処理を調べる。ここで洗浄番号3_8の洗浄処理の患者IDは、検査番号2_1の検査の患者IDと一致するため、関連付け部30は、洗浄番号3_8の洗浄処理と検査番号2_1の検査とを関連付ける。
【0049】
以上の処理を、関連付け部30は、検査番号2_2の検査についても実施する。その結果、関連付け部30は、検査番号2_2の検査に、検査番号1_10の検査と、洗浄番号3_10の洗浄処理とを関連付ける。
【0050】
図9は、関連付け部30により関連付けされた第1検査情報、第2検査情報、洗浄情報の例を示す。このように関連付け部30が、第1検査情報、第2検査情報、洗浄情報とを、関連付けることで、医師Aが実施した検査を正確に特定できる。
図9に示す関連付け結果によれば、2019年6月3日に、医師Aは上部検査を2件実施し、そのうちの1つで止血術を実施したことが実績として管理される。
【0051】
なお以上は、関連付け処理を実施する上で理想的なケースである。この理想ケースでは、内視鏡観察装置4が、研修医の診療実績を管理するのに十分な第1検査情報を管理サーバ10に送信し、研修医である医師Aが、自身の検査情報を忘れることなく端末装置9に入力し、また洗浄装置6が、研修医の医師IDおよび患者IDを、洗浄情報として管理サーバ10に送信している。
【0052】
しかしながら医療施設において、全ての内視鏡観察装置4が、診療実績を管理するのに十分な第1検査情報を管理サーバ10に送信できるわけではなく、また全ての洗浄装置6が、研修医の医師IDおよび患者IDを洗浄情報として管理サーバ10に送信できるわけではない。また実施例では研修医が端末装置9を携行し、自身の第2検査情報を端末装置9に入力する運用をとるが、研修医は、第2検査情報の入力を忘れることもある。実施例の関連付け部30は、第2検査情報を取得できていない場合であっても、第1検査情報および/または洗浄情報を用いて、研修医の診療実績を適切に管理する。
【0053】
上記した処理例で、関連付け部30は、患者IDの一致にもとづいて関連付け処理を実施した。関連付け処理において、患者IDの一致をみることは、検査の一致をみることに等しく非常に有効であるが、第1検査情報、洗浄情報に、患者IDが含まれないことがある。以下、その場合の対応について説明する。
【0054】
関連付け部30は、第1検査情報に含まれる検査番号1_7,1_10の検査のうち、検査番号2_1の検査と同じ患者IDを含む検査を調べる。ここで検査番号1_7の検査情報に患者IDが含まれていなければ、関連付け部30は、患者IDが一致する検査を特定できない。このとき関連付け部30は、検査開始時刻、検査終了時刻、検査種別の項目を参照して、検査番号2_1の検査と一致する検査を調べる。これらの項目に関し、検査番号1_7の検査は、検査番号2_1の検査と一致するため、関連付け部30は、検査番号1_7の検査と検査番号2_1の検査とを関連付ける。検査番号1_10の検査については、検査開始時刻、検査終了時刻が検査番号2_1の検査開始時刻、検査終了時刻と異なっているため、関連付け部30は、検査番号1_10の検査は検査番号2_1の検査と別であることを判定する。
【0055】
なお仮に検査番号1_7の検査情報に、検査開始時刻、検査終了時刻が含まれていない場合、関連付け部30は、検査番号2_1の処置内容に相当する情報を含む項目を調べる。関連付け部30は、検査番号1_7の検査情報に含まれる処置具ID“CD0002”を抽出すると、処置具のマスタテーブル(図示せず)を参照して、“CD0002”に対応する処置内容を特定する。マスタテーブルは、処置具IDと処置内容とを対応付けたものである。特定した処置内容が「止血術」であれば、関連付け部30は、検査番号1_7の検査と検査番号2_1の検査とを関連付けてよい。
【0056】
洗浄情報に関し、関連付け部30は、洗浄情報に含まれる洗浄番号3_8,3_10の洗浄処理のうち、検査番号2_1の検査と同じ患者IDを含む洗浄処理を調べる。ここで洗浄番号3_8,3_10の洗浄情報に患者IDが含まれていなければ、関連付け部30は、患者IDが一致する洗浄処理を特定できない。このとき関連付け部30は、検査番号2_1の検査に関連付けた検査番号1_7の検査情報からスコープID“AAA0004”を抽出し、抽出したスコープIDを含む洗浄情報を特定する。このスコープIDは、洗浄番号3_8の洗浄情報に含まれており、関連付け部30は、検査番号1_7の検査と洗浄番号3_8の洗浄処理とを関連付け、したがって検査番号1_7の検査と検査番号2_1の検査と洗浄番号3_8の洗浄処理とが関連付けられる。
【0057】
なお第1検査情報と洗浄情報との関連付けに際して、関連付け部30は、検査番号1_7の検査の検査終了時刻と、洗浄番号3_8の洗浄処理の洗浄開始時刻との時間差を参酌することが好ましい。実施例において、第1検査情報、第2検査情報、洗浄情報は、全て同日(6月3日)の情報であるが、たとえば検査番号1_7の検査の検査日と、洗浄番号3_8の洗浄処理の洗浄日とが異なっていると、関連付け部30は、検査番号1_7の検査と洗浄番号3_8の洗浄処理とを関連付けない。また洗浄番号3_8の洗浄開始時刻の方が、検査番号1_7の検査の検査終了時刻より早い場合にも、関連付け部30は、検査番号1_7の検査と洗浄番号3_8の洗浄処理とを関連付けない。そのため関連付け部30は、洗浄番号3_8の洗浄処理の洗浄開始時刻が検査番号1_7の検査の検査終了時刻の後の所定時間(たとえば3時間)以内である場合に、検査番号1_7の検査と洗浄番号3_8の洗浄処理とを関連付けてよい。
【0058】
以上のように関連付け部30は、様々な項目の情報を用いて、第1検査情報、第2検査情報、洗浄情報を関連付ける。
図10は、関連付けた結果の一例を示す。この結果では、検査番号1,2,7の検査で、第1検査情報、第2検査情報、洗浄情報の全てが関連付けられている。
【0059】
検査番号3の検査では、検査番号2_3に対して、第1検査情報および洗浄情報が関連付けられていない。これは、当該検査で使用した内視鏡観察装置4が、診療実績の管理に十分な第1検査情報を管理サーバ10に提供せず、また洗浄装置6も、診療実績の管理に十分な洗浄情報を管理サーバ10に提供しなかったケースである。
【0060】
検査番号4の検査では、検査番号1_18に、洗浄番号3_18が関連付けられている。本来であれば医師Aは、実施した検査情報を端末装置9から入力しているはずであり、第2検査情報に関連付かない第1検査情報や洗浄情報は存在しない。しかしながら医師Aが、実施した検査の検査情報を入力し忘れると、第2検査情報に関連付かない第1検査情報や洗浄情報が抽出される。このことは、第2検査情報のみからは拾い上げることのできない検査番号4の検査を、第1検査情報および/または洗浄情報を参照することで、関連付け部30が抽出できたことを意味する。
【0061】
検査番号5の検査では、検査番号2_4に、洗浄番号3_25が関連付けられ、検査番号6の検査では、検査番号2_5に、検査番号1_30が関連付けられている。
【0062】
図10に示す最下欄では、洗浄番号3_45の洗浄処理によって、医師Aが実施した検査番号8の検査が特定されている。洗浄番号3_45の洗浄情報に医師Aの医師IDが含まれており、一方で、洗浄番号3_45の洗浄情報に関連付けられる第1検査情報および第2検査情報が存在しない場合、関連付け部30は、洗浄番号3_45の洗浄情報をもって、医師Aが実施した検査を特定する。これは、医師Aが端末装置9に検査情報の入力を忘れ、また検査で使用した内視鏡観察装置4が、診療実績の管理に十分な検査情報を出力できていないケースである。検査番号4の検査と同様に、医療実績の管理を、第2検査情報のみに頼るのではなく、洗浄情報も加味することで、関連付け部30は、検査番号8の検査を医療実績として拾い上げることができている。
【0063】
関連付け結果提示部32は、関連付け部30による関連付けの結果を提示する機能をもつ。関連付け結果提示部32は、研修医の指導医に対して、関連付けの結果を提示してよい。たとえば関連付け結果提示部32は、
図10に示す結果を、指導医の端末装置に表示してよい。このとき指導医は、関連付けの結果を変更できることが好ましく、誤って関連付けられた情報、または誤って関連付けられていない情報を変更してよい。
【0064】
導出部34は、関連付け部30による関連付けの結果から、医師Aが実施した検査数を導出する。このとき導出部34は、
図2に示す診療実績基準に合わせたフォーマットで、検査数の導出結果を出力することが好ましい。処理部20は、医師Aからの要求にもとづいて関連付け処理および検査数の導出処理を実施してよいが、たとえば定期的に検査数を導出して、研修医に提供してもよく、また診療実績基準を満たしたタイミングで研修医に通知してもよい。
【0065】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0066】
実施例では、医療情報処理システム1が、医療施設内のシステムである場合について説明したが、複数の医療施設から構成されるシステムであってもよい。
図11は、管理サーバ10が複数の医療施設から各種情報を取得して集計する医療情報処理システム1の変形例を示す。各医療施設は、第1検査情報、第2検査情報および洗浄情報を管理サーバ10に送信し、管理サーバ10は、受信した第1検査情報、第2検査情報および洗浄情報を記録部50に記録する。研修医が複数の医療施設で勤務していた場合、管理サーバ10は、複数の医療施設における研修医の診療実績を集計する集計サーバとして動作し、研修医にとって利便性の高いシステムが構築される。
【符号の説明】
【0067】
1・・・医療情報処理システム、3a,3b・・・内視鏡、4a,4b・・・内視鏡観察装置、6a,6b・・・洗浄装置、9・・・端末装置、10・・・管理サーバ、20・・・処理部、22・・・情報取得部、24・・・第1検査情報取得部、26・・・第2検査情報取得部、28・・・洗浄情報取得部、30・・・関連付け部、32・・・関連付け結果提示部、34・・・導出部、50・・・記録部、52・・・第1検査情報記録部、54・・・第2検査情報記録部、56・・・洗浄情報記録部。