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特許7413007風車用駆動制御装置、風車用駆動装置の制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】風車用駆動制御装置、風車用駆動装置の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   F03D 7/04 20060101AFI20240105BHJP
   F03D 15/00 20160101ALI20240105BHJP
【FI】
F03D7/04 L
F03D15/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019234146
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021102936
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】野原 修
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-003816(JP,A)
【文献】特開2019-078223(JP,A)
【文献】特開2015-140777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 7/04
F03D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギアと前記ギアに制動力を与える油圧ブレーキとを備える風力発電装置に含まれる2つの構造体を相対的に移動させ電磁ブレーキを備える駆動装置を制御する風車用駆動制御装置であって、
前記駆動装置と、前記2つの構造体のうち前記駆動装置により発生した力が与えられている構造体との間に生じる負荷に関する情報を取得する取得部と、
前記油圧ブレーキおよび前記電磁ブレーキを作動させることで前記2つの構造体が相対的に停止している停止期間中に、前記取得部が取得した前記負荷に関する情報に基づいて、前記油圧ブレーキの制動力を作動させたまま前記電磁ブレーキの制動力を一時的に低減させ又はゼロになるように前記電磁ブレーキにより発生する力が低減またはゼロになるように前記駆動装置を制御する制御部と、
を備えた風車用駆動制御装置。
【請求項2】
前記負荷に関する情報は、前記駆動装置を前記2つの構造体の一方に固定する固定具に作用する力に基づく情報である、
請求項1に記載の風車用駆動制御装置。
【請求項3】
ギアと前記ギアに制動力を与える油圧ブレーキとを備える風力発電装置に含まれる2つの構造体を相対的に移動させ電磁ブレーキを備える駆動装置を制御する風車用駆動制御装置であって、
前記油圧ブレーキおよび前記電磁ブレーキを作動させることで前記2つの構造体が相対的に停止している停止期間中に、停止期間の終了前に前記油圧ブレーキの制動力を作動させたまま前記電磁ブレーキにより発生する力が低減またはゼロになるように前記駆動装置を制御する制御部と、
を備えた風車用駆動制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記停止期間中に定期的に到来するタイミングに、停止期間の終了前に前記油圧ブレーキの制動力を作動させたまま前記電磁ブレーキにより発生する力が低減またはゼロになるように前記駆動装置を制御する、
請求項3に記載の風車用駆動制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記2つの構造体を相対的に移動させる駆動期間が開始する所定時間前に到来するタイミングに、前記油圧ブレーキの制動力を作動させたまま前記電磁ブレーキにより発生する力が低減またはゼロになるように前記駆動装置を制御する、
請求項3または4に記載の風車用駆動制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記2つの構造体を相対的に移動させる駆動期間が終了した所定時間後に到来するタイミングに、前記油圧ブレーキの制動力を作動させたまま前記電磁ブレーキにより発生する力が低減またはゼロになるように前記駆動装置を制御する、
請求項3から5のうち何れか1項に記載の風車用駆動制御装置。
【請求項7】
ギアと前記ギアに制動力を与える油圧ブレーキとを備える風力発電装置に含まれる2つの構造体を相対的に移動させ電磁ブレーキを備える複数の駆動装置を制御する風車用駆動制御装置であって、
前記駆動装置それぞれと、前記2つの構造体のうち前記駆動装置により発生した力が与えられている構造体との間に生じる負荷に関する情報を取得する取得部と、
前記油圧ブレーキおよび前記電磁ブレーキを作動させることで前記2つの構造体が相対的に停止している停止期間中に、前記取得部が取得した前記負荷に関する情報に基づいて、前記油圧ブレーキの制動力を作動させたまま前記電磁ブレーキの制動力を一時的に低減させ又はゼロになるように前記駆動装置を制御する制御部と、
を備えた風車用駆動制御装置。
【請求項8】
ギアと前記ギアに制動力を与える油圧ブレーキとを備える風力発電装置に含まれる2つの構造体を相対的に移動させ電磁ブレーキを備える複数の駆動装置を制御する風車用駆動制御装置であって、
前記油圧ブレーキおよび前記電磁ブレーキを作動させることで前記2つの構造体が相対的に停止している停止期間中に、停止期間の終了前に前記油圧ブレーキの制動力を作動させたまま前記複数の駆動装置のうち少なくとも一つの前記駆動装置により発生する力が低減またはゼロになるように前記駆動装置を制御する制御部と、
を備えた風車用駆動制御装置。
【請求項9】
ギアと前記ギアに制動力を与える油圧ブレーキとを備える風力発電装置に含まれる第1の構造体に対して第2の構造体を相対的に停止させるための制動力を発生する電磁ブレーキを備える制動部と、前記第1の構造体に対して前記第2の構造体を相対的に移動させるための駆動力を発生する駆動部と、前記制動力および前記駆動力を前記第1の構造体に伝達する伝達部と、を備える複数の駆動装置を制御する風車用駆動制御装置であって、
前記駆動装置を前記第2の構造体に固定する固定具に作用する力に基づく情報を取得する取得部と、
前記第1の構造体に対して前記第2の構造体が相対的に移動している駆動期間と、前記油圧ブレーキおよび前記電磁ブレーキを作動させることで前記第1の構造体に対して前記第2の構造体が相対的に停止している停止期間とを切り換え、前記停止期間中に、前記取得部が取得した情報に基づいて、前記油圧ブレーキの制動力を作動させたまま前記電磁ブレーキの制動力を一時的に低減させ又はゼロになるように前記駆動装置を制御する制御部と、
を備えた風車用駆動制御装置。
【請求項10】
ギアと前記ギアに制動力を与える油圧ブレーキとを備える風力発電装置に含まれる第1の構造体に対して第2の構造体を相対的に停止させるための制動力を発生する電磁ブレーキを備える制動部と、前記第1の構造体に対して前記第2の構造体を相対的に移動させるための駆動力を発生する駆動部とを備える複数の駆動装置を制御する風車用駆動制御装置であって、
前記第1の構造体に対して前記第2の構造体が相対的に移動している駆動期間と、前記油圧ブレーキおよび前記電磁ブレーキを作動させることで前記第1の構造体に対して前記第2の構造体が相対的に停止している停止期間とを切り換え、前記停止期間中に、前記油圧ブレーキの制動力を作動させたまま前記電磁ブレーキの制動力を一時的に低減させ又はゼロになるように前記駆動装置を制御する制御部と、
を備えた風車用駆動制御装置。
【請求項11】
ギアと前記ギアに制動力を与える油圧ブレーキとを備える風力発電装置に含まれる2つの構造体を相対的に移動させ電磁ブレーキを備える駆動装置を制御する風車用駆動装置の制御方法であって、
前記駆動装置と、前記2つの構造体のうち前記駆動装置により発生した力が与えられている構造体との間に生じる負荷に関する情報を取得するステップと、
前記油圧ブレーキおよび前記電磁ブレーキを作動させることで前記2つの構造体が相対的に停止している停止期間中に、停止期間の終了前に、前記油圧ブレーキの制動力を作動させたまま前記負荷に関する情報に基づいて、前記油圧ブレーキの制動力を作動させたまま前記電磁ブレーキの制動力を一時的に低減させ又はゼロになるように前記駆動装置を制御するステップと、
を備えた風車用駆動装置の制御方法。
【請求項12】
ギアと前記ギアに制動力を与える油圧ブレーキとを備える風力発電装置に含まれる2つの構造体を相対的に移動させ電磁ブレーキを備える駆動装置を制御する風車用駆動装置の制御方法であって、
前記油圧ブレーキおよび前記電磁ブレーキを作動させることで前記2つの構造体が相対的に停止している停止期間中に、停止期間の終了前に、前記油圧ブレーキの制動力を作動させたまま前記電磁ブレーキにより発生する力が低減またはゼロになるように前記駆動装置を制御するステップと、
を備えた風車用駆動装置の制御方法。
【請求項13】
ギアと前記ギアに制動力を与える油圧ブレーキとを備える風力発電装置に含まれる2つの構造体を相対的に移動させ電磁ブレーキを備える駆動装置を制御する風車用駆動装置のコンピュータに、
前記駆動装置と、前記2つの構造体のうち前記駆動装置により発生した力が与えられている構造体との間に生じる負荷に関する情報を取得するステップと、
前記油圧ブレーキおよび前記電磁ブレーキを作動させることで前記2つの構造体が相対的に停止している停止期間中に、停止期間の終了前に、前記油圧ブレーキの制動力を作動させたまま前記負荷に関する情報に基づいて、前記電磁ブレーキにより発生する力が低減またはゼロになるように前記駆動装置を制御するステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項14】
ギアと前記ギアに制動力を与える油圧ブレーキとを備える風力発電装置に含まれる2つの構造体を相対的に移動させ電磁ブレーキを備える駆動装置を制御する風車用駆動装置のコンピュータに、
前記油圧ブレーキおよび前記電磁ブレーキを作動させることで前記2つの構造体が相対的に停止している停止期間中に、停止期間の終了前に、前記油圧ブレーキの制動力を作動させたまま前記電磁ブレーキにより発生する力が低減またはゼロになるように前記駆動装置を制御するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車用駆動制御装置、風車用駆動装置の制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、風向きに応じてブレードの方向を調整するヨー制御機能を備えた風力発電装置が知られている。この種の風力発電装置は、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1に記載された風力発電装置は、地上または洋上に設置され、発電機の支柱となるタワーと、タワー上に設けられ、発電機を内蔵するナセルと、ナセルの一端に設けられ、風を受けて回転エネルギーへ変換するハブおよびブレードからなるロータと、を有する風力発電装置である。この風力発電装置は、タワーとナセルの連結部に設けられ、タワーに対するナセルおよびロータの位置を制御するヨー駆動手段を有する。特許文献1には、ヨー駆動手段によりヨー駆動力の伝達を停止することによって、ヨー駆動装置の故障によるヨー制御トラブルの影響を最小限に抑え、利用可能率の高い風力発電装置を提供すると記載されている。
【0003】
上述した風力発電装置は、台風等の暴風によるギアの変形によるヨーベアリングギアとピニオンギアの固着が生じた場合に、ピニオンギアからヨーベアリングギアへのヨー駆動力の伝達を停止する。上述した風力発電装置は、ヨーインバータの電流が定格電流を超えた場合や所定のインターロック値を超えた場合に、ヨーベアリングギアとピニオンギアとの固着を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-140777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、風力発電装置は、ブレードの向きを調整するナセルの旋回中のみならずブレードの向きを固定するナセルの停止期間中にもピニオンギアとヨーベアリングギアとの間の負荷が変動する場合があり、当該負荷の変化に起因する不具合が発生する可能性がある。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、停止期間中における負荷を低減することができる風車用駆動制御装置、風車用駆動装置の制御方法、およびプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、風力発電装置に含まれる2つの構造体を相対的に移動させる駆動装置を制御する風車用駆動制御装置であって、前記駆動装置と、前記2つの構造体のうち前記駆動装置により発生した力が与えられている構造体との間に生じる負荷に関する情報を取得する取得部と、前記2つの構造体が相対的に停止している停止期間中に、前記取得部が取得した前記負荷に関する情報に基づいて、前記駆動装置により発生する力が低減またはゼロになるように前記駆動装置を制御する制御部と、を備えた風車用駆動制御装置である。
この構成によれば、負荷に関する情報に応じて停止期間中に負荷を低減することができる。
【0008】
上述の風車用駆動制御装置において、前記負荷に関する情報は、前記駆動装置を前記2つの構造体の一方に固定する固定具に作用する力に基づく情報である。
この構成によれば、固定具に作用する力を利用して負荷に関する情報を取得することができる。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、風力発電装置に含まれる2つの構造体を相対的に移動させる駆動装置を制御する風車用駆動制御装置であって、前記2つの構造体が相対的に停止している停止期間中に、所定のタイミングが到来した場合に、前記駆動装置により発生する力が低減またはゼロになるように前記駆動装置を制御する制御部と、を備えた風車用駆動制御装置である。
この構成によれば、停止期間の終了前に、停止期間中における負荷を低減することができる。
【0010】
上述の風車用駆動制御装置において、前記所定のタイミングは、前記停止期間中に定期的に到来するタイミングである。
上記の構成によれば、停止期間中における負荷を定期的に低減することができる。
【0011】
上述の風車用駆動制御装置において、前記所定のタイミングは、前記2つの構造体を相対的に移動させる駆動期間が開始する所定時間前に到来するタイミングである。
この構成によれば、停止期間中における駆動期間が開始する所定時間前に負荷を低減することができる。
【0012】
上述の風車用駆動制御装置において、前記所定のタイミングは、前記2つの構造体を相対的に移動させる駆動期間が終了した所定時間後に到来するタイミングである。
この構成によれば、停止期間中における駆動期間が終了する所定時間後に負荷を低減することができる。
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、風力発電装置に含まれる2つの構造体を相対的に移動させる複数の駆動装置を制御する風車用駆動制御装置であって、前記駆動装置それぞれと、前記2つの構造体のうち前記駆動装置により発生した力が与えられている構造体との間に生じる負荷に関する情報を取得する取得部と、前記2つの構造体が相対的に停止している停止期間中に、前記取得部が取得した前記負荷に関する情報に基づいて、前記複数の駆動装置のうち少なくとも一つの前記駆動装置により発生する力が低減またはゼロになるように前記駆動装置を制御する制御部と、を備えた風車用駆動制御装置である。
この構成によれば、負荷に関する情報に応じて停止期間中に負荷を低減することができる。
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、風力発電装置に含まれる第1の構造体に対して第2の構造体を相対的に停止させるための制動力を発生する制動部と、前記第1の構造体に対して前記第2の構造体を相対的に移動させるための駆動力を発生する駆動部とを備える複数の駆動装置を制御する風車用駆動制御装置であって、前記第1の構造体に対して前記第2の構造体が相対的に移動している駆動期間と、前記第1の構造体に対して前記第2の構造体が相対的に停止している停止期間とを切り換え、前記停止期間中に、所定のタイミングが到来した場合に、前記複数の駆動装置のうち少なくとも一つの前記駆動装置により発生する力が低減またはゼロになるように前記駆動装置を制御する制御部と、を備えた風車用駆動制御装置である。
この構成によれば、負荷に関する情報に応じて停止期間中に負荷を低減することができる。
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、風力発電装置に含まれる2つの構造体を相対的に移動させる駆動装置を制御する風車用駆動装置の制御方法であって、前記駆動装置と、前記2つの構造体のうち前記駆動装置により発生した力が与えられている構造体との間に生じる負荷に関する情報を取得するステップと、前記2つの構造体が相対的に停止している停止期間中に、前記負荷に関する情報に基づいて、前記駆動装置により発生する力が低減またはゼロになるように前記駆動装置を制御するステップと、を備えた風車用駆動装置の制御方法である。
この方法によれば、負荷に関する情報に応じて停止期間中に負荷を低減することができる。
【0016】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、風力発電装置に含まれる2つの構造体を相対的に移動させる駆動装置を制御する風車用駆動装置の制御方法であって、前記2つの構造体が相対的に停止している停止期間中に、所定のタイミングが到来した場合に、前記駆動装置により発生する力が低減またはゼロになるように前記駆動装置を制御するステップと、を備えた風車用駆動装置の制御方法である。
この方法によれば、負荷に関する情報に応じて停止期間中に負荷を低減することができる。
【0017】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、風力発電装置に含まれる2つの構造体を相対的に移動させる駆動装置を制御するコンピュータに、前記駆動装置と、前記2つの構造体のうち前記駆動装置により発生した力が与えられている構造体との間に生じる負荷に関する情報を取得するステップと、前記2つの構造体が相対的に停止している停止期間中に、前記負荷に関する情報に基づいて、前記駆動装置により発生する力が低減またはゼロになるように前記駆動装置を制御するステップと、を実行させるプログラムである。
この構成によれば、負荷に関する情報に応じて停止期間中に負荷を低減することができる。
【0018】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、風力発電装置に含まれる2つの構造体を相対的に移動させる駆動装置を制御するコンピュータに、前記2つの構造体が相対的に停止している停止期間中に、所定のタイミングが到来した場合に、前記駆動装置により発生する力が低減またはゼロになるように前記駆動装置を制御するステップと、を実行させるプログラムである。
この構成によれば、負荷に関する情報に応じて停止期間中に負荷を低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、停止期間中における負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態における風力発電装置の一例を示す斜視図である。
図2】実施形態におけるタワーとヨー駆動装置との関係を示す上面図である。
図3】実施形態におけるヨー駆動装置の一例を示す図である。
図4】実施形態における風力発電装置の機能的な一例を示すブロック図である。
図5】実施形態における制御の期間を示す図である。
図6】実施形態における負荷に基づく停止期間における制御の一例を示すフローチャートである。
図7】実施形態において制動力を制御する一例を示す図であり、(a)はモータ制動部に供給する制御信号の変化を示す図、(b)はリングギアに対する制動力の変化を示す図である。
図8】実施形態において制動力を制御する他の一例を示す図であり、(a)はモータ駆動部に供給する制御信号の変化を示す図、(b)はモータ制動部(電磁ブレーキ)に供給する制御信号の変化を示す図、(c)は油圧ブレーキ駆動部52に供給する制御信号の変化を示す図である。
図9】実施形態において制動力を制御する他の一例を示す図であり、(a)はモータ駆動部に供給する制御信号の変化を示す図、(b)はモータ制動部(電磁ブレーキ)に供給する制御信号の変化を示す図、(c)は油圧ブレーキ駆動部52に供給する制御信号の変化を示す図である。
図10】実施形態において制動力を制御する他の一例を示す図であり、(a)はモータ駆動部に供給する制御信号の変化を示す図、(b)はモータ制動部(電磁ブレーキ)に供給する制御信号の変化を示す図、(c)は油圧ブレーキ駆動部52に供給する制御信号の変化を示す図である。
図11】実施形態において制動力を制御する他の一例を示す図であり、(a)はモータ駆動部に供給する制御信号の変化を示す図、(b)はモータ制動部(電磁ブレーキ)に供給する制御信号の変化を示す図、(c)は油圧ブレーキ駆動部52に供給する制御信号の変化を示す図である。
図12】実施形態において制動力を制御する他の一例を示す図であり、(a)はヨー駆動装置100-1におけるモータ制動部に供給する制御信号の変化を示す図、(b)はヨー駆動装置100-2におけるモータ制動部に供給する制御信号の変化を示す図、(c)はヨー駆動装置100-3におけるモータ制動部に供給する制御信号の変化を示す図、(d)はヨー駆動装置100-4におけるモータ制動部160に供給する制御信号の変化を示す図である。
図13】実施形態において制動力を制御する他の一例を示す図であり、(a)はヨー駆動装置100-1におけるモータ制動部に供給する制御信号の変化を示す図、(b)はヨー駆動装置100-2におけるモータ制動部に供給する制御信号の変化を示す図、(c)はヨー駆動装置100-3におけるモータ制動部に供給する制御信号の変化を示す図、(d)はヨー駆動装置100-4におけるモータ制動部160に供給する制御信号の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態に係る風車用駆動制御装置、風車用駆動装置の制御方法、およびプログラムを、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態における風力発電装置の一例を示す斜視図である。風力発電装置1は、例えば、ナセル10と、タワー20と、ブレード30と、ハブ40とを備える。なお、タワー20およびナセル10は風力発電装置1に含まれる2つの構造体の一例であり、タワー20およびナセル10は駆動装置(ヨー駆動装置100)からの力により相対的に移動する。また、タワー20は、第1の構造体の一例であり、第1の構造体は固定的に備えられた風力発電装置1の一部であり、ナセル10は、第2の構造体の一例であり、第2の構造体は、ヨー駆動装置100からの駆動力により第1の構造体に対して相対的に移動し、ヨー駆動装置100からの制動力により第1の構造体に対して相対的に停止する。
【0023】
ナセル10は、タワー20の上端(Z方向端部)に取り付けられる。ナセル10には、ハブ40を介してブレード30が取り付けられる。ナセル10は、ブレード30およびハブ40の向きをヨー方向で調整するために旋回駆動する。ナセル10には、当該ナセル10をヨー方向に回転させるヨー駆動力を発生するヨー駆動装置が内蔵される。ヨー駆動装置は、駆動装置および風車用駆動装置の一例である。駆動装置および風車用駆動装置は、風向きに応じてブレード30およびハブ40の向き(風車の向き)を回転させる力を発生させる。タワー20は、地上または海上に埋め込まれる。タワー20は、地上または海上から鉛直方向上向きに延在する形状を有する。タワー20は、その上端にナセル10が取り付けられる。タワー20には、ナセル10をヨー方向に旋回駆動させるためのブレードギア(不図示)が内蔵される。なお、ナセル10は、駆動装置により発生した力が与えられていない構造体の一例である。タワー20は、駆動装置により発生した力が与えられている構造体の一例である。
【0024】
ブレード30は、風力を受けて回転力を発生する羽である。本実施形態においてブレード30は、三枚である。
【0025】
ハブ40は、ナセル10に取り付けられると共に、複数のブレード30が取り付けられる。ハブ40は、ブレード30が受けた風力による回転力(動力)を回転軸に伝達する。ハブ40は、回転軸を介してナセル10に風力に基づく回転力を伝達する。
【0026】
ハブ40には、各ブレード30をピッチ方向に回転させるピッチ駆動力を発生するピッチ駆動機構が内蔵される。ピッチ駆動力を発生する駆動機構は、ブレード30ごとに設けられる。ピッチ駆動機構は、風速に応じて各ブレード30をピッチ方向に回転させることで各ブレード30の角度を制御する。
【0027】
風力発電装置1は、ブレード30の回転による動力をハブ40からナセル10内の発電機(不図示)に伝達し、発電機により動力を電力に変換する。これにより、風力発電装置1は、風力発電を行う。
【0028】
図2は、実施形態におけるタワーとヨー駆動装置との関係を示す上面図である。
ナセル10には、ヨー駆動力を発生させるヨー駆動装置100が取り付けられる。本実施形態において、4台のヨー駆動装置100-1、100-2、100-3、および100-4がナセル10に取り付けられる。以下、ヨー駆動装置を総称する場合には単に「ヨー駆動装置100」と記載する。図2において、タワー20の内壁には、リングギア22が形成されている。リングギア22は、ヨー駆動装置100のピニオンギア150と噛み合う。ヨー駆動装置100は、モータ駆動力により図2中のR方向に回転駆動する。なお、ヨー駆動装置100は、R方向とは反対方向にも回転可能であってよい。
【0029】
リングギア22とピニオンギア150とが噛み合っている状態で、ナセル10、またはタワー20等に突風等の力が印加された場合、リングギア22とピニオンギア150との間に接線力が発生する。接線力とは、リングギア22のギア形成面の接線方向に生ずる力である。接線力は、ヨー駆動装置100における減速部に捻り応力を与える。また、接線力は、ヨー駆動装置100における固定具に引っ張り応力および圧縮応力を与える。なお、実施形態においては、タワー20にリングギア22が設けられ、ナセル10にヨー駆動装置100が固定された一例を説明したが、これに限定されず、ナセル10にリングギア22に相当するギア部が設けられ、タワー20にヨー駆動装置100に相当するヨー駆動装置が設けられてよい。
【0030】
図3は、実施形態におけるヨー駆動装置の一例を示す図である。ヨー駆動装置100は、例えば、ケース110と、フランジ120と、締結ボルト130と、出力軸140と、ピニオンギア150とを備える。ケース110には、フランジ120が取り付けられる。フランジ120は、締結ボルト130によりナセル10と接続される。出力軸140の一方端はケース110およびフランジ120の内部に接続され、出力軸140の他方端にはピニオンギア150が設けられる。ピニオンギア150は、リングギア22と噛み合うように配置される。ピニオンギア150は、出力軸140から出力された駆動力により回線し、ヨー駆動装置100を旋回方向(装置移動方向、-X方向)に旋回させる。これにより、ヨー駆動装置100は、タワー20に対してナセル10の方向を旋回させる。締結ボルト130は固定具の一例である。固定具は、ヨー駆動装置100をナセル10に固定する要素である。固定具は、締結ボルト130に限定されず、他の既知の部材であってよい。出力軸140およびピニオンギア150は伝達部の一例である。伝達部は、ヨー駆動装置100からタワー20に駆動力および制動力を伝達する要素である。なお、タワー20に駆動装置が固定される場合、伝達部は、タワー20からナセル10に力を伝達する要素である。
【0031】
ヨー駆動装置100は、モータ制動部160と、モータ駆動部162と、減速部164とを備える。モータ制動部160は、出力軸140に対して制動力を発生させる。なお、モータ制動部160は、出力軸140に直接的に制動力を与えているが、これに限定されず、出力軸140に間接的に制動力を与えてよい。例えば、モータ制動部160の力は、出力軸140とは異なる部材に与えられ、当該部材から出力軸140に伝達されてよい。モータ駆動部162は、出力軸140に対して駆動力を発生させる。モータ制動部160は、外部から供給された制御信号に応じて電磁作用により制動力を発生する。モータ制動部160は、電磁ブレーキとして機能する。モータ駆動部162は、外部から供給された制御信号に応じて電磁作用により駆動力を発生する。減速部164は、出力軸140により発生した駆動力に応じた回転速度を低減させ、駆動トルクを上昇させる。モータ制動部160および/またはモータ駆動部162は力発生部の一例である。力発生部は、力を発生する。ヨー駆動装置100の少なくとも一つは駆動装置の一例である。駆動装置は、力発生部により力を発生し、伝達部に力を伝達する機器である。なお、本実施形態は、ヨー駆動装置100が駆動力および制動力を発生させるが、これに限定されず、ナセル10の回転させるための駆動力の方向から逆転した方向の駆動力を制動力として発生させてよい。この場合、ヨー駆動装置100は、モータ制動部160を備えなくてもよい。
【0032】
さらに、ヨー駆動装置100は、歪みセンサ166aおよび歪みセンサ166bを備える。歪みセンサ166は、負荷に関する情報を取得する取得部の一例である。歪みセンサ166aおよび歪みセンサ166bを総称する場合には単に「歪みセンサ166」と記載する。歪みセンサ166は、締結ボルト130に生ずる歪みに応じた信号を出力する。締結ボルト130に生ずる歪みは、接線力に応じて変化する値である。なお、本実施形態において負荷に関する情報として締結ボルト130の歪みを検出するが、これに限定されず、出力軸140とリングギア22との間に生ずるトルクを検出してよい。ヨー駆動装置100は、例えば、出力軸140に作用する力量を測定することによってトルクを検出する。さらに、ヨー駆動装置100は、モータ駆動部162とモータ制動部160とを連結する出力軸140における捻れを検出するためのトルクメータを備え、トルクメータの出力信号を負荷に関する情報として取得してもよい。さらに、ヨー駆動装置100は、ピニオンギア150等の駆動力または制動力を伝達するギアにおける歯車の根元に歪みゲージを備え、歪みゲージの出力信号を負荷に関する情報として取得してもよい。さらに、ヨー駆動装置100は、出力軸140の出力ねじれ角と出力軸140の入力ねじれ角との差分を検出し、検出した差分を示す情報を負荷に関する情報として取得してもよい。出力軸140の出力ねじれ角は、モータ制動部160またはモータ駆動部162付近における出力軸140のねじれ角であり、入力ねじれ角は、ピニオンギア150付近における出力軸140のねじれ角である。
【0033】
風力発電装置1は、リングギア22に制動力を与える油圧ブレーキを備える。油圧ブレーキは、例えば、キャリパーブレーキ機構である。油圧ブレーキは、油圧ブレーキ駆動部52と、摩擦体50とを備える。油圧ブレーキ駆動部52は、外部から供給された制御信号に応じて摩擦体50を図3中のZ方向に移動させる。油圧ブレーキ駆動部52は、摩擦体50をリングギア22に押し当てることでリングギア22に制動力を印加する。風力発電装置1は、リングギア22に付与する制動力を調整することができることが望ましい。
【0034】
図4は、実施形態における風力発電装置の機能的な一例を示すブロック図である。なお、図4は、風力発電装置1においてヨー駆動力を制御するための機能的な一例を示している。ヨー駆動装置100は、例えば、制御部170と、歪みセンサ166-1、166-2、166-3、166-4と、モータ駆動部・制動部160・162-1、160・162-2、160・162-3、160・162-4と、油圧ブレーキ駆動部52と、風センサ200とを備える。
【0035】
歪みセンサ166-1は、ヨー駆動装置100-1における歪みセンサ166aおよび歪みセンサ166bに相当する。歪みセンサ166-2は、ヨー駆動装置100-2における歪みセンサ166aおよび歪みセンサ166bに相当する。歪みセンサ166-3は、ヨー駆動装置100-3における歪みセンサ166aおよび歪みセンサ166bに相当する。歪みセンサ166-4は、ヨー駆動装置100-4における歪みセンサ166aおよび歪みセンサ166bに相当する。なお、歪みセンサ166は、1つのヨー駆動装置100に対して2個より多く備えてよい。
【0036】
モータ駆動部・制動部160・162-1は、ヨー駆動装置100-1におけるモータ制動部160およびモータ駆動部162に相当する。モータ駆動部・制動部160・162-2は、ヨー駆動装置100-2におけるモータ制動部160およびモータ駆動部162に相当する。モータ駆動部・制動部160・162-3は、ヨー駆動装置100-3におけるモータ制動部160およびモータ駆動部162に相当する。モータ駆動部・制動部160・162-4は、ヨー駆動装置100-4におけるモータ制動部160およびモータ駆動部162に相当する。
【0037】
風センサ200は、例えばナセル10の上面に設けられる。風センサ200は、風の強度、および風の向きを表す信号(風検出信号)を生成し、制御部170に供給する。
【0038】
制御部170は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがプログラムメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現される。制御部170は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアが協働することで実現されてもよい。制御部170には、歪みセンサ166-1、166-2、166-3、および166-4のそれぞれから歪み検出信号が供給される。制御部170には、風センサ200から風検出信号が供給される。制御部170は、歪み検出信号および風検出信号に基づいて、モータ駆動部・制動部160・162-1、160・162-2、160・162-3、160・162-4、および油圧ブレーキ駆動部52に制御信号を出力する。制御部170は、ヨー駆動装置100により発生する力を低減またはゼロにさせる風車用駆動制御装置の一例であるが、制御部170および歪みセンサ166が風車用駆動制御装置の一例であってよい。
【0039】
図5は、実施形態における制御の期間を示す図である。
制御部170は、例えば図5に示すように、予め駆動期間と停止期間とを設定する。駆動期間とは、風の向きに基づいてナセル10の向きを移動させる期間である。停止期間とは、ナセル10の向きを固定させる期間である。すなわち、停止期間は、風力発電装置に含まれる2つの構造体が相対的に停止している期間である。制御部170は、駆動期間中にタワー20に対してナセル10を目標位置まで移動させる制御を行う。制御部170は、停止期間中にタワー20に対してナセル10体を目標位置で停止させる制御である。目標位置とは、風の向きに基づいて決定されるタワー20に対するナセル10の最適な位置である。
【0040】
制御部170は、駆動期間の開始タイミングが到来した場合、タワー20に対してナセル10を目標位置まで移動させる制御を開始する。制御部170は、駆動期間の終了タイミングが到来するまでに、ナセル10の位置を目標位置に位置決めする。制御部170は、停止期間中にナセル10の位置を目標位置に固定するように制動力を発生させる。これにより、制御部170は、駆動期間と停止期間との間で制御を切り換える。
【0041】
以下、上述したヨー駆動装置100におけるナセル10(第2構造体)をタワー20(第1構造体)に対して停止させるべき期間の制御について説明する。
図6は、実施形態における負荷に基づく停止期間における制御の一例を示すフローチャートである。
制御部170は、まず、停止期間であるか否かを判定する(ステップS10)。制御部170は、現在が停止期間ではない場合(ステップS10:NO)、本フローチャートの処理を終了する。制御部170は、現在が停止期間であると判定した場合(ステップS10:YES)、負荷が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS12)。負荷とは、歪みセンサ166により検出された歪み検出信号の値であるが、これに限定されない。負荷は、リングギア22とピニオンギア150との間にかかる負荷に影響する値であってよい。例えば、負荷は、風センサ200により検出された風の強度であってよい。また、閾値は、歪み検出信号の上限値であるが、これに限定されない。閾値は、風の強度の上限値であってもよい。
【0042】
制御部170は、負荷が閾値以上ではない場合、処理をステップS10に戻す。制御部170は、負荷が閾値以上である場合(ステップS12:YES)、電磁ブレーキの力を低減又はゼロに制御する(ステップS14)。ステップS14においては、制御部170は、例えば、停止期間や駆動期間よりも十分に短い期間(例えば数マイクロ秒)に亘り電磁ブレーキの制動力を低減またはゼロにする。なお、ステップS14の動作は、電磁ブレーキの力を一時的に低減またはゼロに制御すると読み替えてよく、電磁ブレーキの動作を停止すると読み替えてよい。
【0043】
図7は、実施形態において制動力を制御する一例を示す図である。(a)はモータ制動部160に供給する制御信号の変化を示す図であり、(b)はリングギア22に対する制動力の変化を示す図である。
風力発電装置1は、モータ制動部160(電磁ブレーキ)による制動力、および摩擦体50による制動力を合計した制動力F1をリングギア22に印加しているとする。制動力F1は、ピニオンギア150の回転をリングギア22に対して固定するために必要な制動力であるとする。
【0044】
風力発電装置1は、停止期間中に負荷が閾値以上であると判定された場合、電磁ブレーキを一時的に停止する。このとき、制御部170は、モータ制動部160にパルス信号を供給する。モータ制動部160は、パルス信号が供給されたことに応じて電磁作用により発生している制動力を低減する。これにより、電磁ブレーキの制動力が一時的に解除され、ピニオンギア150がリングギア22に対してフリーに噛合い、リングギア22には一時的に摩擦体50による制動力F2だけが印加されている状態になる。ピニオンギア150とリングギア22との間の負荷に相当する力が制動力F2を超えない場合、ナセル10は制動力F2で保持され、減速部164に蓄積された負荷が低減される。ピニオンギア150とリングギア22との間の負荷に相当する力が制動力F2を超えた場合、ナセルが回転する。しかし、ピニオンギア150がリングギア22とフリーに噛み合っているので、ナセル10が回転しても減速部164に負荷は蓄積しない。これにより、電磁ブレーキの制動力が解除される前の負荷よりも、ヨー駆動装置100が旋回した後の負荷が小さくなる。この結果、風力発電装置1は、停止中における負荷の変化に起因する不具合を抑制することができる。
【0045】
「制動力を低減させる」とは、電磁ブレーキの現制動力を0より大きい値に低減させること、および電磁ブレーキの現制動力を0にすることを含む。なお、制動力を低減させる処理には、モータ制動部160に供給する制御信号をオンからオフに切り換える処理、および制御信号をデューティ制御することにより電磁ブレーキの制動力に必要な電力量を低減させる処理を含む。
【0046】
なお、駆動期間は例えば数分であり、停止期間は例えば十数分であり、一時的に電磁ブレーキの制動力を低減する期間は、例えば、数マイクロ秒であり、電磁ブレーキの制動力を低減する期間に対応するパルス信号がONになっている期間は、例えば、数マイクロ秒であってよい。
【0047】
図8は、実施形態において制動力を制御する他の一例を示す図である。(a)はモータ駆動部162に供給する制御信号の変化を示す図であり、(b)はモータ制動部160(電磁ブレーキ)に供給する制御信号の変化を示す図であり、(c)は油圧ブレーキ駆動部52に供給する制御信号の変化を示す図である。
【0048】
ヨー駆動装置100は、ナセル10がタワー20に対して停止している期間中に所定のタイミング(t1)が到来した場合に、電磁ブレーキの制動力を一時的に低減させてよい。所定のタイミングは、例えば停止期間中における所定期間ごとに到来するタイミングである。その後、ヨー駆動装置100は、駆動期間における時刻t2で油圧ブレーキの制動力を低減させ、時刻t3で電磁ブレーキの制動力を低減させると共に駆動力を発生させる。ヨー駆動装置100は、駆動期間における時刻t4で電磁ブレーキの駆動を停止させると共に制動力を発生させ、その後の時刻t5で油圧ブレーキの制動力を作動させる。これにより、ヨー駆動装置100は、駆動期間後の停止期間中に、突風等によりリングギア22とピニオンギア150と負荷が大きくなる可能性であっても、一時的に電磁ブレーキの制動力を低減することにより、負荷を低減させることができる。すなわち、ヨー駆動装置100は、リングギア22とピニオンギア150と負荷を検出せずに、負荷が増大することを未然に抑制することができる。
【0049】
図9は、実施形態において制動力を制御する他の一例を示す図である。(a)はモータ駆動部162に供給する制御信号の変化を示す図であり、(b)はモータ制動部160(電磁ブレーキ)に供給する制御信号の変化を示す図であり、(c)は油圧ブレーキ駆動部52に供給する制御信号の変化を示す図である。
【0050】
ヨー駆動装置100は、ナセル10がタワー20に対して停止している期間における所定のタイミング(t10)として駆動期間が開始する前に到来するタイミングが到来した場合に、電磁ブレーキの制動力を一時的に低減させてよい。その後、ヨー駆動装置100は、駆動期間における時刻t2で油圧ブレーキの制動力を低減させ、時刻t3で電磁ブレーキの制動力を低減させると共に駆動力を発生させる。ヨー駆動装置100は、駆動期間における時刻t4で電磁ブレーキの駆動を停止させると共に制動力を発生させ、その後の時刻t5で油圧ブレーキの制動力を作動させる。これにより、ヨー駆動装置100は、停止期間中に負荷が増大した状態で、ピニオンギア150を駆動させることを回避することができる。これにより、ヨー駆動装置100は、ピニオンギア150を駆動開始する場合の不具合を抑制することができる。
【0051】
図10は、実施形態において制動力を制御する他の一例を示す図である。(a)はモータ駆動部162に供給する制御信号の変化を示す図であり、(b)はモータ制動部160(電磁ブレーキ)に供給する制御信号の変化を示す図であり、(c)は油圧ブレーキ駆動部52に供給する制御信号の変化を示す図である。
【0052】
ヨー駆動装置100は、ナセル10がタワー20に対して停止している期間における所定のタイミング(t20)として駆動期間が終了した後に到来するタイミングが到来した場合に、電磁ブレーキの制動力を一時的に低減させてよい。これにより、ヨー駆動装置100は、ヨー駆動装置100間のブレーキタイミングの相違や噛み合い状態のばらつきに起因する、ヨー駆動装置100間の負荷のばらつきを抑制および解消することができる。すなわち、ヨー駆動装置100間で負荷を均一化することができる。
【0053】
なお、図8図9、および図10を参照した制御は、組み合わせて実施してもよい。すなわち、制御部170は、ナセル10がタワー20に対して停止している期間中に、所定期間ごとに到来するタイミング、駆動期間の開始前に到来するタイミング、駆動期間の終了後に到来するタイミングの少なくとも1回のタイミングで一時的に電磁ブレーキの制動力を低減してよい。
【0054】
図11は、実施形態において制動力を制御する他の一例を示す図である。(a)はモータ駆動部162に供給する制御信号の変化を示す図であり、(b)はモータ制動部160(電磁ブレーキ)に供給する制御信号の変化を示す図であり、(c)は油圧ブレーキ駆動部52に供給する制御信号の変化を示す図である。制御部170は、所定のタイミングが到来した場合に、モータ駆動部162に複数回に亘りパルス信号を供給してよい。制御部170は、予め設定されたパルス間隔で複数回に亘りモータ駆動部162にパルス信号を供給してよい。または、制御部170は、歪みセンサ166により検出された負荷に基づく値が閾値を下回るまで複数回に亘りモータ駆動部162にパルス信号を供給してよい。これにより、ヨー駆動装置100は、複数回に亘り負荷の低減させる動作を分散させることができる。なお、制動力を制御する処理には、電磁ブレーキに供給する制御信号をデューティ制御する処理が含まれてよい。これにより、電磁ブレーキに供給する電力量を低減させることで、電磁ブレーキにより発生する力を低減またはゼロに制御することができる。
【0055】
図12および図13は、実施形態において制動力を制御する他の一例を示す図である。(a)はヨー駆動装置100-1におけるモータ制動部160に供給する制御信号の変化を示す図であり、(b)はヨー駆動装置100-2におけるモータ制動部160に供給する制御信号の変化を示す図であり、(c)はヨー駆動装置100-3におけるモータ制動部160に供給する制御信号の変化を示す図であり、(d)はヨー駆動装置100-4におけるモータ制動部160に供給する制御信号の変化を示す図である。制御部170は、図12に示すように、所定のタイミングが到来した場合に、複数のモータ制動部160に制動力を低減する制御信号を供給してよい。制御部170は、図13に示すように、所定のタイミングが到来した場合に、複数のモータ制動部160のうち一部のモータ制動部160に制動力を低減する制御信号を供給してよい。制御部170は、負荷が閾値以上である場合に、全部のモータ制動部160または一部のモータ制動部160に制動力を低減する制御信号を供給してよい。
【0056】
以上説明した実施形態によれば、風力発電装置1に含まれる2つの構造体(ナセル10およびタワー20)を相対的に移動させるヨー駆動装置100を制御する風車用駆動制御装置であって、ヨー駆動装置100と2つの構造体のうちヨー駆動装置100により発生した力が与えられている構造体との間に生じる負荷に関する情報を取得する取得部と、2つの構造体が相対的に停止している停止期間中に、取得部が取得した負荷に関する情報に基づいて、ヨー駆動装置100により発生する力が低減またはゼロになるようにヨー駆動装置100を制御する制御部170制御部とを備える風車用駆動制御装置を実現することができる。これにより、実施形態によれば、停止期間中にナセル10とタワー20との間の負荷を低減することができる。
【0057】
実施形態によれば、制御部170により、駆動期間中にナセル10を目標位置まで移動させる制御と停止期間中にナセル10を目標位置で停止させる制御との間で制御を切り換える制御を行う場合であっても、停止期間中に制動力を低減すべきではない状態で、一時的に制動力を低減することができる。
【0058】
実施形態によれば、負荷に関する情報が、ヨー駆動装置100を2つの構造体の一方に固定する歪みセンサ166に作用する力に基づく情報であるので、歪みセンサ166に作用する力を利用して負荷に関する情報を取得することができる。
【0059】
以上説明した実施形態によれば、風力発電装置1に含まれる2つの構造体を相対的に移動させるヨー駆動装置100を制御する風車用駆動制御装置であって、2つの構造体が相対的に停止している停止期間中に、所定のタイミングが到来した場合に、ヨー駆動装置100により発生する力が低減またはゼロになるようにヨー駆動装置100を制御する制御部170と、を備えた風車用駆動制御装置を実現することができる。この構成によれば、停止期間の終了前に、停止期間中における負荷を低減することができる。また、この実施形態によれば、複数のヨー駆動装置100の負荷分担のバランスを均一化することができ、停止期間中の大きな負荷発生時にも特定のヨー駆動装置100に負荷が集中することを抑制することができる。さらに、この実施形態によれば、特定のヨー駆動装置100に過大な負荷が発生することを抑制するよりも、複数のヨー駆動装置100の負荷を均一化することにより各ヨー駆動装置100の寿命の延命化を図ることができる。
【0060】
実施形態によれば、所定のタイミングが、停止期間中に定期的に到来するタイミングであるので、停止期間中における負荷を定期的に低減することができる。
【0061】
実施形態によれば、所定のタイミングが、2つの構造体を相対的に移動させる駆動期間が開始する所定時間前に到来するタイミングであるので、停止期間中における駆動期間が開始する所定時間前に負荷を低減することができる。これにより、実施形態によれば、負荷が増大したまま駆動させることを回避することができる。
【0062】
実施形態によれば、所定のタイミングが、前記2つの構造体を相対的に移動させる駆動期間が終了した所定時間後に到来するタイミングであるので、停止期間中における駆動期間が終了する所定時間後に負荷を低減することができる。これにより、ヨー駆動装置100間のブレーキタイミングの相違や噛み合い状態のばらつきに起因する、ヨー駆動装置100間の負荷のばらつきを低減することができる。
【0063】
実施形態によれば、風力発電装置1に含まれる2つの構造体を相対的に移動させる複数のヨー駆動装置100を制御する風車用駆動制御装置であって、ヨー駆動装置100それぞれと、2つの構造体のうちヨー駆動装置100により発生した力が与えられている構造体との間に生じる負荷に関する情報を取得する取得部と、2つの構造体が相対的に停止している停止期間中に、取得部が取得した負荷に関する情報に基づいて、複数のヨー駆動装置100のうち少なくとも一つのヨー駆動装置100により発生する力が低減またはゼロになるようにヨー駆動装置100を制御する制御部170と、を備えた風車用駆動制御装置を実現することができる。実施形態によれば、負荷に関する情報に応じて停止期間中に負荷を低減することができる。
【0064】
実施形態によれば、風力発電装置1に含まれるタワー20に対してナセル10を相対的に停止させるための制動力を発生するモータ制動部160と、タワー20に対してナセル10を相対的に移動させるための駆動力を発生するモータ駆動部162とを備える複数のヨー駆動装置100を制御する風車用駆動制御装置であって、タワー20に対してナセル10が相対的に移動している駆動期間と、タワー20に対してナセル10が相対的に停止している停止期間とを切り換え、停止期間中に、所定のタイミングが到来した場合に、複数のヨー駆動装置100のうち少なくとも一つのヨー駆動装置100により発生する力が低減またはゼロになるようにヨー駆動装置100を制御する制御部170と、を備えた風車用駆動制御装置を実現することができる。実施形態によれば、負荷に関する情報に応じて停止期間中に負荷を低減することができる。
【0065】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、風力発電装置1に含まれる2つの構造体を相対的に移動させるヨー駆動装置100を制御する風車用駆動装置の制御方法であって、ヨー駆動装置100と、2つの構造体のうちヨー駆動装置100により発生した力が与えられている構造体との間に生じる負荷に関する情報を取得するステップと、2つの構造体が相対的に停止している停止期間中に、前記負荷に関する情報に基づいて、前記駆動装置により発生する力が低減またはゼロになるように前記駆動装置を制御するステップと、を備えた風車用駆動装置の制御方法を実現することができる。この方法によれば、負荷に関する情報に応じて停止期間中に負荷を低減することができる。
【0066】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、風力発電装置1に含まれる2つの構造体を相対的に移動させるヨー駆動装置100を制御する風車用駆動装置の制御方法であって、2つの構造体が相対的に停止している停止期間中に、所定のタイミングが到来した場合に、ヨー駆動装置100により発生する力が低減またはゼロになるようにヨー駆動装置100を制御するステップと、を備えた風車用駆動装置の制御方法を実現することができる。この方法によれば、負荷に関する情報に応じて停止期間中に負荷を低減することができる。
【0067】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、風力発電装置1に含まれる2つの構造体を相対的に移動させるヨー駆動装置100を制御するコンピュータに、ヨー駆動装置100と、2つの構造体のうちヨー駆動装置100により発生した力が与えられている構造体との間に生じる負荷に関する情報を取得するステップと、2つの構造体が相対的に停止している停止期間中に、前記負荷に関する情報に基づいて、ヨー駆動装置100により発生する力が低減またはゼロになるようにヨー駆動装置100を制御するステップと、を実行させるプログラムを実現することができる。この構成によれば、負荷に関する情報に応じて停止期間中に負荷を低減することができる。
【0068】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、風力発電装置1に含まれる2つの構造体を相対的に移動させるヨー駆動装置100を制御するコンピュータに、2つの構造体が相対的に停止している停止期間中に、所定のタイミングが到来した場合に、ヨー駆動装置100により発生する力が低減またはゼロになるように前記駆動装置を制御するステップと、を実行させるプログラムである。
この構成によれば、負荷に関する情報に応じて停止期間中に負荷を低減することができる。
【0069】
以上に示した実施形態に係る制御部170の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、処理を行ってもよい。
なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、オペレーティングシステム(OS:Operating System)あるいは周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0070】
さらに、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークあるいは電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合の情報処理装置やクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)あるいは電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1…風力発電装置1、10…ナセル、20…タワー、30…ブレード、40…ハブ、50…摩擦体、52…油圧ブレーキ駆動部、100…ヨー駆動装置、110…ケース、120…フランジ、130…締結ボルト、150…ピニオンギア、160…モータ制動部、162…モータ駆動部、164…減速部、166…歪みセンサ、200…風センサ
図1
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