(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
A46B 15/00 20060101AFI20240105BHJP
A61C 17/22 20060101ALI20240105BHJP
A46B 3/16 20060101ALI20240105BHJP
A46B 9/04 20060101ALI20240105BHJP
A46B 13/02 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
A46B15/00 K
A61C17/22 A
A46B3/16
A46B9/04
A46B13/02
(21)【出願番号】P 2019237348
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】野田 玲央奈
(72)【発明者】
【氏名】蜂須賀 良祐
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/103504(WO,A1)
【文献】中国実用新案第205963331(CN,U)
【文献】国際公開第2014/162957(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/175304(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 15/00
A61C 17/22
A46B 3/16
A46B 9/04
A46B 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の音源データ信号により発振する圧電素子を有するブラシ構造体と、
一端側に前記ブラシ構造体が取り付けられるとともに前記圧電素子に電流を供給する本体と、を備え、
前記ブラシ構造体は、前記圧電素子が内蔵されたヘッド部、または前記ヘッド部の植毛面における複数の植毛穴に植設された複数の毛束からなるブラシ部が、使用者の口腔内の生体組織に接すると、前記音源データ信号により発振する前記圧電素子の振動が前記生体組織を介して骨部に伝達され、前記使用者に記振動を音として認知さ
せ、
複数本の用毛を束ねた前記毛束は、平線を用いて各植毛穴に植設されており、
前記植毛面に植設された全ての前記毛束の配列のうち、下記2つの条件1,2を満たす前記毛束の配列が少なくとも3列以上存在し、
前記植毛面に設けられた複数の植毛穴のうち少なくとも一部が格子状に配列されており、
前記植毛面に設けられた全ての前記植毛穴のうち、最も外側に存在する複数の前記植毛穴の外縁どうしを最短距離で結んだ第1の仮想線に囲まれた領域の面積に対して、
格子状に配列された複数の前記植毛穴のうち、最も外側に存在する複数の前記植毛穴の外縁どうしを最短距離で結んだ第2の仮想線に囲まれた領域の面積の割合が、20%以上となる、歯ブラシ。
<条件1>
前記ヘッド部の長さ方向に配列された複数の前記植毛穴のそれぞれに打ち込まれた前記平線どうしの距離が0.25mm以上、1.5mm以下であること
<条件2>
各植毛穴列における長さ方向の植毛領域の長さに対して、当該植毛穴列における長さ方向に隣接する複数の平線どうしの長さの和の割合が53%以上、94%以下であること
【請求項2】
前記圧電素子に対して1000Hz以上、7000Hz以下の音源を流したとき、
前記ブラシ部の振動レベルが45dB SPL以上、75dB SPL以下となる、請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記圧電素子は、表面が前記植毛面とされた植毛板の裏面側に接触するように設置され、
前記植毛面に設けられた全ての前記植毛穴の総面積に対して、
前記植毛板のうち前記圧電素子と平面視で重なる領域に設けられた複数の前記植毛穴の総面積の割合が30%以上となる、
請求項1または2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記植毛板のうち前記圧電素子と平面視で重なる領域の面積に対して、
前記領域に存在する複数の前記植毛穴の総面積の割合が23%以上
、60%以下である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記圧電素子の下面から、前記植毛穴の底面までの距離が、0.4mm以上、1.6mm以下となる、
請求項1から4のいずれか1項に記載の歯ブラシ。
【請求項6】
前記植毛面に設けられた全ての前記植毛穴のうち、最も外側に存在する複数の前記植毛穴の外縁どうしを最短距離で結んだ第1の仮想線に囲まれた全植毛領域の面積に対して、前記植毛面に植設された全ての用毛の総本数の割合が、600本/cm2以上、2800本/cm2以下となる、
請求項1から
5のいずれか1項に記載の歯ブラシ。
【請求項7】
前記用毛の一部もしくは全てが分岐毛からなり、 前記全植毛領域の面積に対して、当該領域に植設された全ての前記用毛の前記分岐毛の総本数の割合が600本/cm2以上、11200本/cm2以下となる、
請求項
6に記載の歯ブラシ。
【請求項8】
前記圧電素子の最大厚さ寸法と、前記植毛板の最大厚さ寸法とを合わせた厚さが、3.4mm以上、7.0mm以下となる、
請求項1から
7のいずれか1項に記載の歯ブラシ。
【請求項9】
前記圧電素子の最大厚さ寸法と、前記植毛板の最大厚さ寸法と、前記毛束の最小毛丈と、を合わせた寸法に対する、前記毛束の最小毛丈の割合は、40%以上、74%以下となる、
請求項1から
8のいずれか1項に記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯磨きにおいて、ブラッシングスキルが未成熟である1歳半から9歳までの子供に対して、親の仕上げ磨きは子供の歯を守る上で非常に重要である。親が子供に対して仕上げ磨きを行う際に、持ちやすくて取り回しやすい仕上げ磨き専用の歯ブラシも提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、仕上げ磨きを嫌がって逃げたり暴れたりする子供が多く、仕上げ磨きを満足にできない親が多い。したがって、子供が嫌がらずに仕上げ磨きを行うためのツールが求められている。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、親の仕上げ磨きに対する負担を低減することができるとともに、子供自身も仕上げ磨きを嫌がることなくブラッシング自体を楽しむことが可能な歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は、仕上げ磨きに対する子供の抵抗感を低減させる施策として、「ブラッシング中に音を鳴らす」ことを考えた。これは、「音が鳴るものに興味を示し易い」という子供の習性に着目したもので、仕上げ磨きを行う間、スマートフォンやPCなどを用いて子供が好きな音楽などをかける親も多い。親が子供の口腔内に歯ブラシを入れる際に、音楽を鳴らすことによって、仕上げ磨きに対する子供の抵抗感を軽減させることができる。
【0007】
そこで、本願発明者は、音楽によって、子供の仕上げ磨きに対する抵抗感をより効果的に低減させる施策として、歯ブラシが子供の歯に当たった時のみ子供に音楽が聞こえる「骨伝導歯ブラシ」を着想した。
【0008】
「骨伝導歯ブラシ」とは、ヘッド部の内部(植毛面の裏面側)に組み込んだ圧電素子に対して、音源データ信号を電流として流しこむことで振動を発生させ、この圧電素子の振動がヘッド部の硬質材料を介して植毛面に植毛された各用毛に伝わるように構成された歯ブラシである。この「骨伝導歯ブラシ」でブラッシングを行うと、子供の歯牙に接した用毛を通じて、その振動が子供の歯牙から子供の内耳にまで順に伝わるため、子供は伝わった振動を「音」として認知することができる。
【0009】
しかしながら、圧電素子から発生する振動が子供の歯牙(内耳)にまで伝わるまでの間に、いくつもの部材を介する。すなわち、圧電素子と歯牙の間には、硬質材料からなるヘッド部(植毛面)および複数の用毛が介在しており、これらが圧電素子からの振動を減衰させてしまうという問題がある。そのため、子供の興味を引き付ける大きさの音を発生させるために必要な振動を内耳にまで伝えることができない場合や、そもそも歯ブラシから伝わる振動を音として子供に認知させることが出来ない場合がある。
【0010】
したがって、圧電素子からの振動がヘッド部の硬質材料および用毛で減衰してしまうのを抑えて、子どもの歯牙に伝える振動を最大化させ、子供が認知する音を大きくすることができる施策が必要である。
【0011】
本発明の一態様における歯ブラシは、任意の音源データ信号により発振する圧電素子を有するブラシ構造体と、一端側に前記ブラシ構造体が取り付けられるとともに前記圧電素子に電流を供給する本体と、を備え、前記ブラシ構造体は、前記圧電素子が内蔵されたヘッド部、または前記ヘッド部の植毛面における複数の植毛穴に植設された複数の毛束からなるブラシ部が、使用者の口腔内の生体組織に接すると、前記音源データ信号により発振する前記圧電素子の振動が前記生体組織を介して骨部に伝達され、前記使用者に前記振動を音として認知させる構成としてもよい。
【0012】
本発明の一態様における歯ブラシにおいて、前記圧電素子に対して1000Hz以上、7000Hz以下の音源(周波数)を流したとき、前記ブラシ部の振動レベルが45dB SPL以上、75dB SPL以下となる、構成としてもよい。
【0013】
本発明の一態様における歯ブラシにおいて、前記圧電素子は、表面が前記植毛面とされた植毛板の裏面側に接触するように設置され、前記植毛面に設けられた全ての前記植毛穴の総面積に対して、前記植毛板のうち前記圧電素子と平面視で重なる領域に設けられた複数の前記植毛穴の総面積の割合が30%以上となる構成としてもよい。
【0014】
本発明の一態様における歯ブラシにおいて、前記植毛板のうち前記圧電素子と平面視で重なる領域の面積に対して、前記領域に存在する複数の前記植毛穴の総面積の割合が23%以上である構成としてもよい。
【0015】
本発明の一態様における歯ブラシにおいて、前記圧電素子の下面から、前記植毛穴の底面までの距離が、0.4mm以上、1.6mm以下となる構成としてもよい。
【0016】
複数本の用毛を束ねた前記毛束において、平線を用いて各植毛穴に植設されており、前記植毛面に植設された全ての前記毛束の配列のうち、下記2つの条件1,2を満たす前記毛束の配列が少なくとも3列以上存在する構成としてもよい。
<条件1>前記ヘッド部の長さ方向に配列された複数の前記植毛穴のそれぞれに打ち込まれた前記平線どうしの距離が0.25mm以上、1.5mm以下であること
<条件2>
各植毛穴列における長さ方向の植毛領域の長さに対して、当該植毛穴列における長さ方向に隣接する複数の平線どうしの長さの和の割合が53%以上、94%以下であること
【0017】
本発明の一態様における歯ブラシにおいて、前記植毛面に設けられた複数の植毛穴のうち少なくとも一部が格子状に配列されており、前記植毛面に設けられた全ての前記植毛穴のうち、最も外側に存在する複数の前記植毛穴の外縁どうしを最短距離で結んだ第1の仮想線に囲まれた領域の面積に対して、格子状に配列された複数の前記植毛穴のうち、最も外側に存在する複数の前記植毛穴の外縁どうしを最短距離で結んだ第2の仮想線に囲まれた領域の面積の割合が、20%以上となる構成としてもよい。
【0018】
本発明の一態様における歯ブラシにおいて、前記植毛面に設けられた全ての前記植毛穴のうち、最も外側に存在する複数の前記植毛穴の外縁どうしを最短距離で結んだ第1の仮想線に囲まれた全植毛領域の面積に対して、前記植毛面に植設された全ての用毛の総本数の割合が、600本/cm2以上、2800本/cm2以下となる構成としてもよい。
【0019】
本発明の一態様における歯ブラシにおいて、前記用毛の一部もしくは全てが分岐毛からなり、前記全植毛領域の面積に対して、当該領域に植設された全ての前記用毛の前記分岐毛の総本数の割合が600本/cm2以上、11200本/cm2以下となる構成としてもよい。
【0020】
本発明の一態様における歯ブラシにおいて、前記圧電素子の最大厚さ寸法と、前記植毛板の最大厚さ寸法とを合わせた厚さが、3.4mm以上、7.0mm以下となる構成としてもよい。
【0021】
本発明の一態様における歯ブラシにおいて、前記圧電素子の最大厚さ寸法と、前記植毛板の最大厚さ寸法と、前記毛束の最小毛丈と、を合わせた寸法に対する、前記毛束の最小毛丈の割合は、40%以上、74%以下となる構成としてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ヘッド部の背面側に圧電素子を有する歯ブラシにおいて、圧電素子の振動を、減衰させることなく使用者へ伝達させることのできる歯ブラシを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の一態様における歯ブラシの全体構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一態様における歯ブラシのヘッド部の構成を示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、植毛面に形成された植毛穴の配列状態を示す図である。
【
図4】
図4は、植毛面に形成された植毛穴の配置間隔を示す図である。
【
図5】
図5は、植毛面に植設された毛束どうしの平線間距離を示す図である。
【
図6】
図6は、ヘッド部に内蔵された圧電素子の位置を示す図である。
【
図7】
図7は、植毛穴の格子配列の定義の説明に用いる図である。
【
図8】
図8は、実験1において使用する実施例1~実施例3および比較例1,2の骨伝導歯ブラシD1~D3、E,E2のヘッド部12からの音圧を測定する方法を示す図である。
【
図9A】
図9Aは、実施例4の骨伝導歯ブラシD4の仕様を示す図である。
【
図9B】
図9Bは、実施例5の骨伝導歯ブラシD5の仕様を示す図である。
【
図9C】
図9Cは、実施例6の骨伝導歯ブラシD6の仕様を示す図である。
【
図9D】
図9Dは、実施例7の骨伝導歯ブラシD7の仕様を示す図である。
【
図11】
図11は、実施例15~24の骨伝導歯ブラシD15~24に共通する仕様を示す図である。
【
図12A】
図12Aは、実施例15,16の骨伝導歯ブラシD15,16の仕様を示す図である。
【
図12B】
図12Bは、実施例17,18の骨伝導歯ブラシD17,18の仕様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[一実施形態]
以下、本発明の一実施形態の骨伝導歯ブラシについて説明する。
なお、以下の各図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0025】
図1は、本発明の一態様における骨伝導歯ブラシの全体構成を示す図である。
図2は、本発明の一態様における歯ブラシのヘッド部の構成を示す縦断面図である。
図3は、植毛面に形成された植毛穴の配列状態を示す図である。
図4は、植毛面に形成された植毛穴の配置間隔を示す図である。
図5は、植毛面に植設された毛束どうしの平線間距離を示す図である。
図6は、ヘッド部に内蔵された圧電素子の位置を示す図である。
なお、
図3~
図6においては、ヘッド部12のみの構成を示しており、ネック部13等の図示を省略している。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の骨伝導歯ブラシ(歯ブラシ)10は、子供の仕上げ磨き専用の歯ブラシであって、圧電素子18が内蔵されたブラシ構造体11と、一端側にブラシ構造体11が接続されるとともに圧電素子18に対して電流を供給する本体22と、を備えている。ブラシ構造体11は、本体に対して適宜交換可能なものであることが好ましい。
なお、本実施形態では、ブラシ構造体11と本体22とが別体で構成されているが、これに限られず、ブラシ構造体11が本体22に対して一体的に構成されていてもよい。
【0027】
(本体)
本体22は、ブラシ構造体11内に組み込まれた圧電素子18を駆動させるための駆動制御部等を備えている。
【0028】
(ブラシ構造体)
ブラシ構造体11は、ヘッド部12およびネック部13を有する筐体14と、ヘッド部12の植毛面12aに設けられるブラシ部15と、を有している。
【0029】
筐体14は、ヘッド部12とネック部13とが長尺状に一体的に形成されている。
【0030】
筐体14は、
図2に示すように、ネック部13およびヘッド部12の一部(背面部121)を構成する長尺部材141と、長尺部材141のうちヘッド部12の背面側を構成する背面部121の一面側に配置される環状をなす楕円形状の接続部材142と、接続部材142を介して長尺部材141に対向して配置される楕円形状の植毛板143と、を備えている。
【0031】
筐体14のうち、長尺部材141と植毛板143は、例えば、硬質樹脂を材料として射出成形により得られるものである。長尺部材141と植毛板143を形成する樹脂は、ブラシ構造体11(骨伝導歯ブラシ10)として求める剛性や機械特性等を勘案して決定される。例えば、曲げ弾性率(JIS K7203)が1000~3000MPaの範囲にある高硬度樹脂が挙げられる。
【0032】
このような高硬度樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリアセタール(POM)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、セルロースプロピオネート(CP)、ポリアリレート、ポリカーボネート、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂(AS)等が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
一方、接続部材142は空洞を囲む壁面の役割を果たし、既存の樹脂材料が用いられる。
【0034】
ヘッド部12は、一面側に楕円形状の植毛面12aを有している。具体的には、ヘッド部12を構成する植毛板143の表面側(接続部材142側とは反対側の面)が植毛面12aとされている。
【0035】
図2および
図3に示すように、植毛面12aには複数の植毛穴16が形成されている。本実施形態では、植毛面12aのうち、ヘッド部12の長さ方向(X方向)の中央領域に第1の植毛穴群16A(
図3)が形成されているとともに、第1の植毛穴群16Aを挟むようにしてヘッド部12の長さ方向両側に一対の第2の植毛穴群16B(
図4)が形成されている。
【0036】
図3に示すように、第1の植毛穴群16Aでは、複数の植毛穴16が格子状に配列されている。本実施形態では、例えば、
図3に示すように、ヘッド部12の長さ方向(X方向)に3列、幅方向(Y方向)に4列、合計12の植毛穴16が格子状に形成されている。なお、第1の植毛穴群16Aを構成する植毛穴16の数はこれに限らない。
【0037】
各第2の植毛穴群16Bでは、
図4に示すように、複数の植毛穴16が千鳥状に配列されている。本実施形態では、例えば、一対の第2の植毛穴群16Bでは、最前列に幅方向に並ぶ2つの植毛穴16の各中心が、これらよりも第1の植毛穴群16A側において幅方向に並ぶ3つの植毛穴16どうしの間に位置するように千鳥状に配列されており、各第2の植毛穴群16Bがそれぞれ5つの植毛穴16により構成されている。なお、各第2の植毛穴群16Bを構成する植毛穴16の数はこれに限らない。
【0038】
図3に示すように、植毛面12aには、幅方向に7列の植毛穴列N1~N4を有している。7列の植毛穴列N1~N4のうち、植毛面12aの幅方向で最も外側に位置する一対の植毛穴列N4は、植毛面12aの長さ方向に所定の間隔をあけて並ぶ3つの植毛穴16aをそれぞれ有する。各植毛穴列N4における3つの植毛穴16aは、第1の植毛穴群16Aの一部を構成するとともに、長さ方向で互いに隣り合うとともに長さ方向に直線状に並ぶ配列とされている。
【0039】
一対の植毛穴列N4の幅方向内側に位置する一対の植毛穴列N3は、第1の植毛穴群16Aを挟むようにしてその両側に形成された2つの植毛穴16bをそれぞれ有する。各植毛穴列N3を構成する2つの植毛穴16bは、第2の植毛穴群16Bの一部を構成するとともに、植毛面12aの長さ方向に所定の間隔をあけて配置されているとともに、長さ方向に直線状に並ぶ配列とされている。
【0040】
一対の植毛穴列N3の幅方向内側に位置する一対の植毛穴列N2は、植毛面12aの中央部分において長さ方向に所定の間隔をあけて並ぶ3つの植毛穴16cと、ヘッド部12の先端側および後端側に位置する2つの植毛穴16dをそれぞれ有する。
各植毛穴列N3において、3つの植毛穴16cは第1の植毛穴群16Aの一部を構成し、2つの植毛穴16dは第2の植毛穴群16Bの一部を構成する。これら3つの植毛穴16cと、2つの植毛穴16dとは、互いに長さ方向で隣り合うとともに長さ方向に直線状に並ぶ配列とされている。
【0041】
植毛穴列N1は、一対の植毛穴列N3の幅方向内側に位置するとともにヘッド部12の幅方向中央に位置している。植毛穴列N1は、第1の植毛穴群16Aを挟むようにしてその両側に形成された2つの植毛穴16eを有する。2つの植毛穴16eは、第2の植毛穴群16Bの一部を構成し、長さ方向で隣り合うとともに長さ方向に直線状に並ぶ配列とされている。
【0042】
図4に示すように、ヘッド部12の幅方向における植毛穴列N4と植毛穴列N2のピッチP1、つまり、植毛穴列N4の植毛穴16の中心位置と、各植毛穴列N2の植毛穴16の中心位置との距離P1は、例えば2.5mm~3.3mmの範囲内が好ましく、2.9mmが最も好ましい。
【0043】
また、ヘッド部12の幅方向における一対の植毛穴列N2のピッチP2、つまり、一方の植毛穴列N2の植毛穴16の中心位置と、他方の植毛穴列N2の植毛穴16の中心位置との距離P2は、例えば、2.0mm~2.8mmの範囲内が好ましく、2.4mmが最も好ましい。
【0044】
また、ヘッド部12の幅方向における植毛穴列N1と各植毛穴列N3のそれぞれのピッチP3、つまり、植毛穴列N1の植毛穴16の中心位置と、各植毛穴列N3の植毛穴16の中心位置との距離P3は、例えば、2.4mm~3.2mmの範囲内が好ましく、2.75mmが最も好ましい。
【0045】
また、植毛面12aに植設された全ての植毛穴16のうち、ヘッド部12の長さ方向に並ぶ植毛穴16どうしのピッチP4は、互いに等しく、2.4mm~3.2mmの範囲内が好ましく、2.75mmが最も好ましい。
【0046】
また、植毛面12aに形成された植毛穴16のうち、ヘッド部12の最も後端側に位置する植毛穴16の中心からヘッド部12の後端12Bまでの距離L4は、2.1mm~2.9mmの範囲内が好ましく、2.51mmが最も好ましい。
【0047】
ブラシ部15は、植毛面12aに形成された複数の植毛穴16のそれぞれに植設された複数の毛束17(
図1)により構成されている。各毛束17は、互いに毛丈の等しい複数の用毛が所定本数ずつ束ねられて形成されている。
【0048】
各毛束17は、複数本束ねられた用毛17aを2つ折りにし、その間に挟み込まれる平線19(
図5)が植毛穴16に打ち込まれることによって、植毛面12aにそれぞれ植毛されている。本実施形態では、
図5に示すように、平線19は、ヘッド部12の長さ方向に対して所定の角度で斜めに傾けた状態で植毛穴16に打ち込まれている。全ての毛束17における平線19の向きはそれぞれ等しく、統一されている。
【0049】
平線19の傾斜角度は、特に限定するものではないが、例えば、ヘッド部12の長さ方向に対して0度以上、45度以下が好ましい。
【0050】
平線19は、圧電素子18の振動を減衰させにくい材料、例えば、金属を用いて形成されたものであることが好ましい。
【0051】
各毛束17において、平線19を介して対向する一方の半毛束17Aと、他方の半毛束17Bとは、植毛面12aからの高さ(以下、毛丈という)が互いに等しい。そのため、ブラシ部15の毛先は全体的にフラットな毛先となっている。
【0052】
なお、ブラシ部15の毛先形状はこれに限られず、段差を有していてもよい。例えば、1つの毛束17内で半毛束17A,17Bどうしの毛丈を変えて段差を形成してもよい。また、1つの毛束17内における半毛束17A,17Bの毛丈は等しいが、ブラシ部15を構成する複数の毛束17どうしで毛丈を異ならせて段差を形成してもよい。
【0053】
毛束17を構成する用毛17aの本数は、所望とする毛束17の直径や植毛穴16の直径等を考慮して適宜設定すればよく、例えば、30~90本の範囲内が好ましい。より好ましくは、55~75本である。また、各毛束17では、使用感や刷掃感、清掃効果、耐久性等を考慮して、太さの異なる複数本の用毛17aを任意に組み合わせて用いてもよい。
【0054】
用毛17aの長さ方向に交差する断面形状は、例えば円形である。なお、これに限られず、円形以外の断面形状であってもよく、楕円形状や多角形状であってもよい。
【0055】
毛束17は、ストレート毛(非テーパー毛)のみで形成されていてもよいし、テーパー毛、セミテーパー毛、またそれらを組み合わせて形成されていてもよい。歯面に付着している歯垢除去効果が高くなる点から、毛束17は、ストレート毛またはセミテーパー毛で形成されることが好ましい。
【0056】
用毛17aの材質としては、特に限定されず、歯ブラシの用毛に通常使用されるものが使用できる。例えば、6-12ナイロン、6-10ナイロン等のポリアミド、PET、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等のポリエステル、PP等のポリオレフィン、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の樹脂材料が挙げられる。これらの樹脂材料は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
本実施形態のヘッド部12には、
図2および
図6に示すような圧電素子18が内蔵されている。具体的には、長尺部材141と接続部材142と植毛板143とによって囲まれた空間に配置されており、圧電素子18の下面18b側が植毛板143の裏面143b(植毛面12aとは反対側)に接した状態で設けられている。
【0058】
図6に示すように、圧電素子18は、植毛板143よりも小さく、植毛面12a側から見て植毛面12a(植毛板143)の中央部分に配置されている。圧電素子18は、ヘッド部12の長さ方向に沿って長さを有する矩形状を呈し、先端側において幅方向が狭く細くなった形状を有している。
【0059】
本実施形態における圧電素子18は、本体22側から送られてくる任意の音源データ信号により発振する。すなわち、音源データ信号を電流として圧電素子18に供給することによって、圧電素子18が振動する。
【0060】
本実施形態の骨伝導歯ブラシ10では、圧電素子18を駆動させた状態で、ヘッド部12あるいはブラシ部15が使用者の口腔内の生体組織に接すると、上述した音源データ信号により発振する圧電素子18の振動が、ヘッド部12の筐体14を通じてブラシ部15に伝達される。ヘッド部12あるいはブラシ部15が振動した状態で子供の口腔内の生体組織に接すると、ヘッド部12あるいはブラシ部15が生体組織に接している間だけ、生体組織を介して、ヘッド部12あるいはブラシ部15の振動が子供の骨部に伝達されて、その振動が音として子供に認知されることになる。
【0061】
このように、本実施形態の骨伝導歯ブラシ10によれば、音源データ信号(電子信号)を振動(音)に変換する圧電素子18をヘッド部12に内蔵させることによって、ヘッド部12あるいはブラシ部15が歯や歯茎等に接したときにこれらを介して振動が内耳まで伝わり、ブラッシングの間だけ音(例えば、音楽)を楽しむことができる。
【0062】
本実施形態の骨伝導歯ブラシ10では、音源データ信号によって発振する圧電素子18の振動がブラシ部15を介して子供の歯牙等に接触した際に、圧電素子18の振動が歯牙等に伝達し、その振動が内耳に直接伝わることによって、子供に音として認知させることができる。そのため、子供が鼓膜を介して聞く周囲の雑音や、子供自身の声などに影響を受けることなく、骨伝導によって歯ブラシ10からの音を認知することができる。これにより、親の仕上げ磨きの負担を低減することができるとともに、子供自身も仕上げ磨きを嫌がることなくブラッシング自体を楽しむことができる。
【0063】
本実施形態において、前記圧電素子に対して1000Hz以上、7000Hz以下の音源を流したとき、前記ブラシ部の振動レベルが45dB SPL以上、75dB SPL以下となる、ことが好ましい。
このような範囲における周波数(音源)において、ブラシ部15の振動レベルを45dB SPL以上、75dB SPL以下とすれば、子供に認知される音の大きさを適正な大きさとすることができる。
【0064】
ここで、ブラシ部15の振動レベルが45dB SPL以下の場合は、圧電素子18によって発振された振動レベルが小さく、子供が音として認知しにくくなる。一方、ブラシ部15の振動レベルが75dB SPL以上である場合は、ブラシ部15の振動レベルが大きく、子供が認知する音の大きさが大きくなりすぎてしまう。そのため、上記振動レベルが75dB SPLよりも大きい場合、骨伝導によって認知する音の大きさも非常に多くなり、使用者にとって為外性を感じるレベルとなる。
【0065】
したがって、骨伝導歯ブラシ10から発生する振動レベルの大きさを上記範囲内にすることによって、骨伝導歯ブラシ10を歯牙に当てた際に骨伝導歯ブラシ10から伝わる振動を音として認知することができるとともに、その音圧が大きすぎることによる為害性も感じない。
【0066】
以下、ブラシ構造体11の主構成要素について詳述する。
【0067】
図2に示すように、圧電素子18は、植毛板143の裏面143bに接触させた状態で設置されているが、植毛板143(植毛面12a)に設けられた全ての植毛穴16の総面積に対して、植毛板143のうち圧電素子18と平面視で重なる圧電素子領域R1(
図6)に設けられた複数の植毛穴16の総面積の割合A1は、30%以上であることが好ましく、40%以上がより好ましい。
【0068】
圧電素子領域R1に設けられた全ての植毛穴16の総面積が大きいほど、植毛穴16に植設された毛束17に伝達される圧電素子18の振動が大きくなる。そのため、子供が認識できる音の大きさを所望の大きさとするべく、圧電素子領域R1における複数の植毛穴16の総面積の割合A1を、上記範囲内で設定することが好ましい。
【0069】
圧電素子領域R1における複数の植毛穴16の総面積の割合A1が、植毛面12aに設けられた全ての植毛穴16の総面積に対して30%以下の場合、植毛面12aに設けられた全ての植毛穴16に対して、圧電素子18の振動を効率よく伝達する毛束17が少なくなる。このため、子供に対して圧電素子18の振動を十分に伝達することができない。
【0070】
また、上記圧電素子領域R1に存在する複数の植毛穴16の総面積の割合A2は、圧電素子領域R1の面積に対して、23%以上であることが好ましく、33%以上がより好ましい。なお、上限値は植毛板143の強度を考慮すると、60%以下が好ましい。
【0071】
圧電素子領域R1の面積に対して、当該圧電素子領域R1内に存在する全ての植毛穴16の総面積が大きいほど、子供に対して圧電素子18の振動を効率的に伝達させることができる。
【0072】
ここで、圧電素子領域R1に存在する全ての植毛穴16の総面積の割合A2が、圧電素子領域R1の面積に対して23%以下である場合、圧電素子領域R1の面積に対して圧電素子領域R1内に存在する植毛穴16の数が少なくなるため、圧電素子18の振動を効率よく子供に対して伝達させることができない。
【0073】
また、本実施形態では、
図2に示すように、圧電素子18のうち植毛板143の裏面143bと接触する下面18bから、植毛穴16の底面(穴底)16bまでの距離H6が、0.4mm以上、1.6mm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.4mm以上、1.0以下である。
【0074】
これにより、圧電素子18と植毛穴16の底面16fまでの距離が短くなるため、圧電素子18の振動を減衰させることなく、各毛束17に伝達させることができる。
【0075】
ここで、上記距離H6が1.6mmを超える場合は、圧電素子18と植毛穴16の底面16fまでの距離が長くなるため、圧電素子18の振動が減衰してしまい各毛束17に対して効率よく伝達されない。
【0076】
一方、上記距離H6を0.4mm以上とする理由としては、骨伝導歯ブラシ10としての強度を保つ上で最低限必要な厚みを確保する必要があるからである。
よって、上記距離H6を上記範囲内で設定することが好ましい。本実施形態では、距離H6を0.5mmとした。
【0077】
図3および
図5に示すように、複数本の用毛17aを束ねた毛束17は、金属製の平線19を用いて植毛穴16に植設されているが、植毛面12aに植設された全ての毛束17の配列のうち、下記の2つの条件1,2を満たす毛束17の配列が少なくとも3列以上存在することが好ましい。
【0078】
条件1;ヘッド部12の長さ方向に配列された複数の植毛穴16のそれぞれに打ち込まれた平線19どうしの最短距離(以下、平線間距離という)が、それぞれ0.25mm以上、1.5mm以下であること。好ましくは、0.25mm以上、1.0mm以下であること。
【0079】
条件2;各列N1~N4における長さ方向の植毛領域の長さに対して、当該列N1~N4における長さ方向に隣接する複数の平線19どうしの長さの和の割合が53%以上、94%以下であること。好ましくは、60%以上、80%以下であること。
【0080】
本実施形態において、平線19の長さは、1.95mm~2.45mmが好ましく、2.25mmであることが最も好ましい。
【0081】
具体的に、本実施形態では、植毛面12aに植設された全ての毛束17の配列のうち、上記条件1,2を満たす毛束17の配列は、
図3および
図4に示すように、幅方向中央に位置する植毛穴列N2と、幅方向最も外側に位置する一対の植毛穴列N4である。
【0082】
例えば、植毛穴列N2における長さ方向の植毛領域の長さL0(
図5)が18.8mm、平線19の長さL19が2.25mm、各植毛穴列N2における最大平線間距離M1(
図5)が3.26mm、最小平線間距離M2(
図5)が0.61mmであるとき、植毛穴列N2における長さ方向の植毛領域の長さL0に対して、植毛穴列N2において長さ方向に隣接する複数の平線19どうしの長さの和の割合は59.8%であり、上記条件1,2を満たし、好ましい仕様といえる。
【0083】
また、例えば、各植毛穴列N4における最小平線間距離M3が0.61mmであるとき、長さ方向における植毛面12aの長さに対して、長さ方向に隣接する複数の平線19どうしの長さの和の割合は53.6%であり、好ましい仕様といえる。
【0084】
本実施形態では、長さ方向において隣り合う全ての平線19の最短距離が0.25mm~1.5mmの範囲内であることが好ましく、0.25mm以上、1.0mm以下であればより好ましい。
【0085】
ヘッド部12に内蔵された圧電素子18の振動を伝達させる媒質として、平線19を構成する金属は最適な材料である。金属は硬度が高いため、圧電素子18からの振動が金属内で減衰されにくい。したがって、骨伝導歯ブラシ10(植毛面12a)の長さ方向に平線19が多く打ち込まれているほど、植毛板143および各毛束17における振動効率は向上する。
【0086】
また、本実施形態では、
図3に示すように、植毛面12aの形成された複数の植毛穴16のうち少なくとも一部が格子状に配列されている。ここで、植毛面12aのうち、全ての植毛穴16が存在する領域を全植毛領域S1とし、植毛面12aの中央であって複数の植毛穴16が格子配列された第1の植毛穴群16Aが存在する領域を格子配列領域S2としたとき、本実施形態では、全植毛領域S1の面積に対して、格子配列領域S2の面積の割合は、20%以上、100%以下であることが好ましく、50%以上、100%以下であることがさらに好ましい。
【0087】
全植毛領域S1は、植毛面12aに設けられた全ての植毛穴16のうち、最も外側に存在する複数の植毛穴16の外縁どうしを最短距離で結んだ第1の仮想線K1に囲まれた領域である。格子配列領域S2は、第1の植毛穴群16Aのうち、最も外側に存在する複数の外側植毛穴16どうしを最短距離で結んだ第2の仮想線K2に囲まれた領域である。
【0088】
図3および
図7を参照して格子配列について定義する。
図7は、植毛穴のピッチを示す図である。
本実施形態において格子配列(
図3)とは、
図7に示すように、植毛穴16の半径をrとしたとき、ヘッド部12の長さ方向で隣り合う植毛穴16の中心どうしにおいて、ヘッド部12の幅方向の距離P5が1/2r以下であるとともに、ヘッド部12の幅方向で隣り合う植毛穴16の中心どうしにおいて、ヘッド部12の長さ方向の距離P6が1/2r以下となるような配列である。
【0089】
本実施形態では、例えば、全植毛領域S1(
図3)の面積が1.43cm
2、格子配列領域S2が0.72cm
2のとき、全植毛領域S1の面積に対して格子配列領域S2(
図3)の面積の割合は50.3%であり、好ましい仕様である。
これにより、植毛面12aに形成される全ての植毛穴16が、植毛面12aの全体に亘って均一に広がっているほど、植毛板143において圧電素子18の振動の減衰を抑えることができる。すなわち、植毛面12aの全体において、全ての植毛穴16(毛束17)の配列が部分的に疎密になることなく均一な配列とされているほど、ブラシ部15等を介して圧電素子18の振動を効率良く子供に伝達させることができる。
【0090】
圧電素子18の振動を効率よく植毛板143に伝えるためには、植毛板143に形成された全ての植毛穴16のうち、圧電素子18と平面視で重なる領域(圧電素子領域R1)に存在する植毛穴16の配列が最も重要である。この圧電素子領域R1に存在する植毛穴16の配列を格子状にすることで、圧電素子18の振動効率を向上させることができることから、全植毛領域S1の面積に対する格子配列領域S2の割合は、20%以上を担保することが望ましい。さらに、格子配列領域S2の割合が大きいほど、圧電素子18の振動を、均一にブラシ部15(各毛束17)に伝達させることができる。
例えば、全植毛領域S1(
図3)の面積が1.43cm
2、格子配列領域S2が0.72cm
2のとき、全植毛領域S1の面積に対して格子配列領域S2(
図3)の面積の割合は50.3%である。このときに、圧電素子領域R1(
図6)での格子配列領域は0.298cm
2であり、全植毛領域S1の面積に対する割合としては20.8%である。このように、圧電素子領域R1にある格子配列領域S2において、全植毛領域S1の面積に対する割合が20%以上であると、より好ましい仕様となる。
【0091】
また、本実施形態では、上記第1の仮想線K1(
図3)に囲まれた全植毛領域S1の面積に対して、植毛面12aに植設された全ての用毛17aの総本数の割合が、600本/cm
2以上、2800本/cm
2以下であることが好ましい。
【0092】
第1の仮想線K1に囲まれた全植毛領域S1の面積に対して、植毛面12aに植設された全ての用毛17aの総本数の割合が、600本/cm2以下である場合、用毛17aの本数が少なくなり、圧電素子18の振動を伝達させる媒質が減るため、圧電素子18の振動が歯牙に伝わりにくい。
【0093】
また、第1の仮想線K1に囲まれた全植毛領域S1の面積に対して、植毛面12aに植設された全ての用毛17aの総本数の割合が、2800本/cm2以上である場合、各用毛17aの太さが細く柔軟性が必要以上に高まることから、圧電素子18の振動が各用毛17a内で減衰してしまい、十分な振動が歯牙に伝わらない。
【0094】
よって、第1の仮想線K1に囲まれた全植毛領域S1の面積に対する植毛面12aに植設された全ての用毛17aの総本数の割合を、上記範囲内で設定することが好ましい。
【0095】
好ましい上記割合を設定する際に、振動の伝達能を向上させるために下記2つの因子について考慮する。
1つ目は、植毛面12aにより多くの毛束17が植設されることによって、圧電素子18の振動を子供の歯牙に伝える伝達媒質が増えるため、圧電素子18の振動効率をより高めることができるという点である。厳密には、全植毛領域S1の面積当たりの全ての植毛穴16の総面積の割合が大きくなるほど、圧電素子18の振動効率が向上する。結果的に、全植毛領域S1における用毛17aの本数が多くなるほど振動効率は向上する。
【0096】
2つ目は、用毛17aは、材質の硬度によってブラッシング時の撓み具合が変化するという点である。硬度が高く撓みにくい用毛17aほど振動効率が高い。厳密には、用毛17aの径が大きく太いほど振動効率は向上する。
【0097】
まず、全植毛領域S1に存在する全ての植毛穴16の総面積の上限値および下限値の設定には、上記1つ目の因子が関係する。
圧電素子18の振動効率を最大化できるのは、「全植毛領域S1の面積」が「全植毛領域S1に存在する全ての植毛穴16の総面積」に等しいときである。いわゆるワンタフトタイプの構造がこれに相当する。そのため本実施形態では、全ての植毛穴16の総面積の上限値は、全植毛領域S1の面積に等しい、1.43cm2である。
【0098】
一方、上記全ての植毛穴16の総面積の下限値は、各植毛穴16が最小径のときの総穴面積となる。例えば、植毛穴16の最小径が1.2mmで、全ての植毛穴16の数が22のとき、植毛穴16の総面積は0.249cm2となる。これが本実施形態において、植毛穴16の総面積の下限値となることが好ましい。
【0099】
次に、用毛17aの用毛径の上限値、下限値の設定には、上記2つ目の因子が関係する。
本実施形態では、圧電素子18の振動効率を最大化できる用毛径の上限値が10mil(直径0.254mm)であることが好ましく、下限値が4mil(直径0.1016mm)であることが好ましい。好ましい範囲としては、音の聞こえやすさと骨伝導歯ブラシ10としての使用感を考慮して、7mil~5milであることが好ましく、6mil~5milであることが好ましい。
【0100】
上記2つの因子における上限値および下限値から、全植毛領域S1の面積(圧電素子18の下面18bの面積)に対する用毛17aの総本数の割合の上限値および下限値を考えると、下記の計算式1,2により求められる。
<計算式1>
(植毛穴面積の総和)×(PF:パッキングファクター)/(用毛17aの断面積)=用毛17aの総本数
<計算式2>
(用毛17aの総本数)/(全植毛領域S1の面積:1.43cm2)=全植毛領域S1の面積に対する用毛17aの総本数の割合
【0101】
上記全植毛領域S1の面積に対する用毛17aの総本数の割合Aの上限値は、植毛穴面積の総和の上限値と、用毛径の下限値とから算出できる。
上記計算式1を用いて計算をすると、上記割合Aの上限値は下記に示す通りである。
1.43cm2×PF:90% / (0.1016×0.1016×3.14×10-2)cm2=3970本
3970本 / 1.43cm2=2776本/cm2
【0102】
上記割合Aの下限値は、植毛穴面積の総和の下限値と用毛径の上限値とから算出できる。
上記計算式1を用いて計算をすると、上記割合Aの下限値は下記に示すとおりである。
0.249cm2×PF:70% / (0.254×0.254×3.14×10-2)cm2=860本
860本 / 1.43cm2=2776本/cm2 =602本 / cm2
【0103】
したがって、上記割合Aの範囲を600~2800本/cm2とすることが好ましい。
なお、本実施形態において上記割合Aは、2030本/cm2である。
【0104】
また、本実施形態では、用毛17aとして、毛先が複数に分岐した分岐毛を有する用毛を用いてもよい。分岐毛の数は、特に問わず、2本~4本あるいはそれ以上であってもよい。このような分岐毛を有する用毛を用いる場合、上記第1の仮想線K1に囲まれた全植毛領域S1の面積に対して、当該領域S1に植設された全ての用毛17aの分岐毛の総本数の割合は、600本/cm2以上、11200本/cm2以下であることが好ましい。
【0105】
本実施形態では、1本の用毛17a内における分岐毛の数が4本であることが好ましい。
よって、上記上限値(11200本/cm2)は、全植毛領域S1に対する用毛17aの総本数の割合Aの上限値(2800本/cm2)を4倍にした値とすることが好ましい。
【0106】
各用毛17aの先端側の毛先(分岐毛)の数が多いほど、子供の歯牙に対するブラシ部15の接触面積が大きくなるため、圧電素子18の振動を効率よく歯牙に伝達させることができる。
【0107】
また、本実施形態では、
図2に示すように、圧電素子18の最大厚さ寸法H1と、植毛板143の最大厚さ寸法H2とを合わせた厚さが、3.4mm以上、7.0mm以下であることが好ましく、3.4mm以上、6.0mm以下であることがより好ましい。圧電素子18の最大厚さ寸法H1と、植毛板143の最大厚さ寸法H2とを合わせた厚さが、3.4mmを下回ると、歯ブラシ10としての最低限の強度が保てない。また、圧電素子18の最大厚さ寸法H1と、植毛板143の最大厚さ寸法H2とを合わせた厚さが、6.0mmを上回ると、口腔内操作性が悪くなる。
【0108】
ここで、圧電素子18の最大厚さ寸法H1が大きいほど、ブラシ部15の振動レベルは向上する。また、植毛板143の最大厚さ寸法H2が大きいほど、植毛板143を構成する硬質材料が増えるため、ブラシ部15の振動レベルが高まる。しかしながら、圧電素子18の最大厚さ寸法H1と、植毛板143の最大厚さ寸法H2とが大きいほど、ヘッド部12の厚みが増してしまうことから、口腔内において歯ブラシ10の操作性が低下してしまう。
【0109】
そのため、圧電素子18の最大厚さ寸法H1と、植毛板143の最大厚さ寸法H2とを合わせたヘッド部12の厚みを上記範囲内で設定することによって、圧電素子18から伝達される振動レベルを問題の無い範囲に担保しつつ、口腔内におけるヘッド部12の操作性を損なわない骨伝導歯ブラシ10を実現することができる。
【0110】
本実施形態におけるヘッド部12およびブラシ部15を含むヘッド側全体の厚さH5は、15mmである。これ以上の厚みを有する場合は、骨伝導歯ブラシ10のヘッドとしては厚みがありすぎてしまい、口腔内での操作性が低下する。そのため、ヘッド側全体の厚さH5の上限値を15mmとすることが好ましい。ここでは、ヘッド部12の内部に存在する空間領域K(
図2)の厚さH4については考慮せず、圧電素子18の厚さH1と、植毛板143の厚さH2と、毛丈H3と、における3つのパーツからなる歯ブラシ10について考慮した。
よって、圧電素子18の厚さH1、植毛板143の厚さH2および毛丈H3を足した厚さの上限値は、ヘッド側全体の厚さH5の上限値(15mm)である。
【0111】
ここで、圧電素子18の厚さH1の上限値については特に限定はしない。圧電素子18のサイズは振動レベルと比例するため、そのサイズが大きい程、振動レベルが大きくなる。したがって、厚さH1の上限値は特に設定しない。一方、圧電素子18の厚さH1の下限値は、0.9mmであることが好ましい。
【0112】
植毛板143の厚さH2の上限値については特に限定はしない。植毛板143における硬質樹脂の量が増えることで、振動レベルも大きくなる。したがって、上限値は特に設定しない。一方、植毛板143の厚さH2の下限値は、最低限の強度を確保できる2.5mmである。
【0113】
毛束17(用毛17a)の毛丈H3の上限値は、11mmであることが好ましい。
毛丈H3が11mmを超えると、圧電素子18の振動が用毛17a内で大きく減衰してしまい、用毛17aの毛先にまで振動が伝わらない。
【0114】
毛丈の下限値は、6mmであることが好ましい。毛丈が6mm未満になると、骨伝導歯ブラシ10としての使用感が悪くなる。
【0115】
また、本実施形態では、
図2に示すように、圧電素子18の最大厚さ寸法H1と、植毛板143の最大厚さ寸法H2と、毛束17の最小毛丈H3と、を合わせた寸法に対する、毛束17の最小毛丈H3の割合は、40%以上、74%以下であることが好ましい。前記毛束17の最小毛丈H3の割合が、40%を下回ると、ブラッシング時における毛束の当たり心地が悪くなる。また、毛束17の最小毛丈H3の割合が74%を上回ると、口腔内操作性が悪くなる。
【0116】
ここで、圧電素子18の最大厚さ寸法H1と、植毛板143の最大厚さ寸法H2と、毛束17の最小毛丈H3と、を合わせた寸法に対する毛束17の最小毛丈H3の割合が40%以下の場合、圧電素子18の振動を減衰させる用毛17aの毛丈が短くなるため、圧電素子18から子供の歯牙までの距離が短くなり、圧電素子18における振動伝達効率が向上する。しかしながら、ブラシ部15の毛丈が短くなるため、骨伝導歯ブラシ10としての使用感を損なわれてしまう。
【0117】
また、圧電素子18の最大厚さ寸法H1と、植毛板143の最大厚さ寸法H2と、毛束17の最小毛丈H3と、を合わせた寸法に対する毛束17の最小毛丈H3の割合が74%以上の場合、用毛17aの毛丈が長くなるため、圧電素子18の振動伝達効率が低下してしまい、圧電素子18の振動が子供の歯牙に十分に伝達されない。
【0118】
このようなことから、圧電素子18の最大厚さ寸法H1と、植毛板143の最大厚さ寸法H2と、毛束17の最小毛丈H3と、を合わせた寸法に対する毛束17の最小毛丈H3の割合を上記範囲内で設定することによって、圧電素子18から伝達される振動レベルを担保しつつ、使用感も損なわない骨伝導歯ブラシ10を実現することができる。本実施形態では、毛束17の最小毛丈H3が6mm~10mmであることが好ましい。
【0119】
以上のように、筐体14および用毛17aの材質や植毛穴16の直径、配列などの構成を最適化することによって、ブラッシング中、骨伝導歯ブラシ10を通じて子供が「音」を確実に認知できる程度にまで、圧電素子18の振動効率を十分に高めることができる。
【0120】
また、一般的には、歯の清掃効果を高めるために圧電素子18を設けた歯ブラシが多いが、本実施形態では、仕上げ磨き中に子供に音楽を届けるためのツールとして圧電素子18を備えた骨伝導歯ブラシ10である。
【実施例】
【0121】
以下、実施例によって本願発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0122】
<<実験1>>
図8は、実験1において使用する実施例1~実施例3および比較例1,2の骨伝導歯ブラシD1~D3、E1,E2のヘッド部12からの音圧を測定する方法を示す図である。
実験1では、音圧と音が聞こえる程度(使用感)との関係について調べた。
【0123】
(目的)
歯ブラシから音が聞こえなくなる場合と、音がうるさい場合の音圧値を特定することを目的とする。
【0124】
(実施例1~3、比較例1、2の骨伝導歯ブラシの作製)
表1に、実施例1~3の骨伝導歯ブラシD1~D3の仕様について示す。
【0125】
【0126】
表1に示す仕様に基づいて、上述した実施形態を基礎とする実施例1~3の骨伝導歯ブラシD1~D3を作製した。各実施例の骨伝導歯ブラシD1~D3は、圧電素子18の厚さおよび用毛17aの毛丈が異なる。また、表1に示す仕様に基づいて、比較例1、2の骨伝導歯ブラシE1、E2を作製した。比較例の歯ブラシE1、E2においても、圧電素子18の厚さおよび用毛17aの毛丈がそれぞれ異なる。
このように、5つの骨伝導歯ブラシD1~D3、E1,E2の各仕様は、圧電素子18の厚みおよび毛丈がそれぞれ異なり、その他の仕様に関しては同一とした。
【0127】
(仕様の共通部分)
圧電素子18の面積:0.685cm2
全植毛領域S1:1.43cm2
植毛穴16の直径:1.75mm
圧電素子18の下面18bから植毛穴16の底面16fまでの距離:0.6mm
植毛穴16の穴深さ:2.5mm
用毛17aの直径:5mil
1つの植毛穴16当たりの用毛17aの本数:2122本/cm2
【0128】
[評価方法]
1)音圧(dB SPL)
まず、パソコンから1000Hz, 3000Hz, 7000Hzの音源データ信号を圧電素子18が組み込まれた各歯ブラシD1~D3、E1,E2に送信し、圧電素子18を振動させる。圧電素子18の振動が植毛板143および各毛束17に伝達されると、歯ブラシD1~D3、E1,E2の毛先の振動によって空気が振動するため、その振動レベルを騒音計200により測定した。ここでは、各歯ブラシD1~D3、E1,E2の先端から少し離れた位置に騒音計200を配置して測定を行った。具体的には、
図8に示すように、各歯ブラシD1~D3、E1,E2の先端から騒音計200までの距離L5を5mmとした。
【0129】
2)音の聞こえやすさに関する使用感の評価(点)
上記のように、1000, 3000, 7000Hzの音源データ信号を各歯ブラシD1~D3、E1,E2の各圧電素子に送信し、3分間のブラッシングを行った後に、10名の専門家パネルにアンケートを実施した。
【0130】
アンケートについては「音の聞こえやすさ」を5段階で評価した。ここでは、10名のパネリストの平均点を評価結果とした。
(評価基準)
5点:うるさい
4点:よく聞こえる
3点:聞こえる
2点:かすかに聞こえる
1点:聞こえない
【0131】
具体的には、平均点が4.0以下、2.0以上を合格「OK」とし、平均点が4.0より大きいまたは平均点が2.0より小さい場合を不合格「NG」とした。
【0132】
<結論>
表1に示すように、実施例1~3の歯ブラシD1~D3では、各音圧値が45dB SPL~79dB SPLとなり、評価点が2.0点以上、4.0点以下であった。よって、実施例1~3の歯ブラシD1~D3では、歯ブラシから出る音が確実に聞こえるとともにその音が適度な大きさで聞こえるという評価が得られた。
【0133】
一方、最も音が聞こえにくいと評価された歯ブラシは、評価点が2.0未満となった比較例1の歯ブラシE1であり、その最低音圧値は40dB SPLであった。また、最も音がうるさいと評価された歯ブラシは、評価点が4.0を超える歯ブラシE2であり、その最大音圧値は84dB SPLであった。
【0134】
<<実験2>>
実験2では、各骨伝導歯ブラシの仕様と音の聞こえる程度(使用感)との関係について調べるために、4つの(実験2-1)~(実験2-4)を行った。
【0135】
(目的)
音が聞こえやすい骨伝導歯ブラシ10の仕様を検討する。
【0136】
[評価方法]
1)使用感評価
1000Hz~7000Hzの音源データ信号をサンプルとして作製した各骨伝導歯ブラシの圧電素子に送り、3分間のブラッシングを行った後、10名の専門家パネルにアンケートを実施した。
【0137】
アンケートについては「音の聞こえやすさ」を5段階で評価した。ここでは、10名のパネリストの平均点を評価結果とした。
(評価基準)
5点:うるさい
4点:よく聞こえる
3点:聞こえる
2点:かすかに聞こえる
1点:聞こえない
【0138】
具体的には、平均点が4.0~3.0となる仕様の歯ブラシを「◎」、2.0~3.0未満となる仕様の歯ブラシを「○」と判定した。
【0139】
2)歯ブラシとしての強度
3分間のブラッシングを1日3回、90日間行った後の植毛面を観察した。白化や割れが確認されなければ合格(OK)とし、確認されれば不合格(NG)とした。
【0140】
<実験2-1>
(実施例4~7の骨伝導歯ブラシD4~D7の作製)
表2に、実施例4~7の骨伝導歯ブラシD4~D7の作製の仕様について示す。
【0141】
【0142】
実験(2-1)では、表2に示す仕様に基づいて、上述した実施形態を基礎とする実施例1~4の骨伝導歯ブラシD4~D7を作製し、音の聞こえやすさについて評価を行った。
図9Aは、実施例4の骨伝導歯ブラシD4の仕様を示す図である。
図9Bは、実施例5の骨伝導歯ブラシD5の仕様を示す図である。
図9Cは、実施例6の骨伝導歯ブラシD6の仕様を示す図である。
図9Dは、実施例7の骨伝導歯ブラシD6の仕様を示す図である。
【0143】
4つの歯ブラシD4~D7の仕様は、圧電素子18の大きさおよび配置がそれぞれ異なっている。すなわち、植毛面12aに存在する全ての植毛穴16の総面積に対して、圧電素子領域R1内に存在する複数の植毛穴16の総面積の割合(%)が、それぞれ異なっている。その他の仕様については同一とした。
【0144】
(仕様の共通部分)
圧電素子18の厚み:0.9mm
植毛穴16の直径:1.75mm
圧電素子18の下面18b~植毛穴16の底面16fまでの距離:1.6mm
植毛穴16の穴深さ:2.5mm
用毛17aの用毛径:5mil
1穴当たりの用毛17aの本数(1束当たりの用毛の総数):2122本/cm
2
用毛17aの毛丈:7mm
穴配列:上記実施形態と同様の穴配列(
図9A~
図9Dを参照)
【0145】
<結果>
表2に示すように、実施例4~7の骨伝導歯ブラシD4~D7に対して「音の聞こえやすさ」について10人の専門家パネルが評価した結果、圧電素子領域R1内に存在する植毛穴16の総面積が、ヘッド部全体の全ての植毛穴16の総面積の30%以上となる場合に、音楽の聞こえやすさに関する評点が高くなることが分かった。
【0146】
<実験2-2>
表3に、実施例5、8,9の骨伝導歯ブラシD5、D8、D9の仕様について示す。
【0147】
【0148】
実験(2-2)では、表3に示す仕様に基づいて、3本の骨伝導歯ブラシD5,D8,D9を作製し、音の聞こえやすさについて評価を行った。
【0149】
(実施例5の骨伝導歯ブラシD5および実施例8,9の骨伝導歯ブラシD8,D9の作製)
図10Aは、骨伝導歯ブラシD8の仕様を示す図である。
図10Bは、骨伝導歯ブラシD9の仕様を示す図である。実施例5の骨伝導歯ブラシD5の仕様については、
図9Bを参照する。
3本の骨伝導歯ブラシD5,D8,D9の仕様は、植毛穴16の配列および植毛穴16の穴径が異なる。その他の仕様に関しては同一とした。
【0150】
(仕様の共通部分)
圧電素子領域R1:0.47cm2
圧電素子18の厚さ:0.9mm
圧電素子18の下面18bから植毛穴16の底面16fまでの距離:1.6mm
植毛穴16の穴深さ:2.5mm
用毛17aの用毛径:5mil
1穴当たりの用毛17aの本数(1束当たりの用毛の総数):2122本/cm2
用毛17aの毛丈:7mm
【0151】
<結果>
表3に示すように、実施例5,8,9の歯ブラシD5,D8,D9に対して「音の聞こえやすさ」について10人の専門家パネルが評価した結果、植毛板143に設けられた全ての植毛穴16の総面積に対する、植毛板143のうち圧電素子18の下面18bと重なる圧電素子領域R1内に存在する複数の植毛穴16の総面積の割合が、23%以上となる場合に、音楽の聞こえやすさに関する評点が高くなると分かった。
【0152】
<実験2-3>
表4に、実施例5、11~14の骨伝導歯ブラシD5,D11~D14の仕様について示す。
【0153】
【0154】
実験(2-3)では、表4に示す仕様に基づいて、5つの骨伝導歯ブラシD5,D11~D14を作製し、音の聞こえやすさについて評価を行った。
【0155】
(実施例5、11~14の骨伝導歯ブラシD5,D11~D14の作製)
5つの骨伝導歯ブラシD5,D11~D14の仕様は、圧電素子18の下面18bから植毛穴16の底面16fまでの距離が異なる。実施例11~14の骨伝導歯ブラシのその他の仕様は、
図9Bに示す実施例5の骨伝導歯ブラシD5の仕様と同様であるため、適宜
図9Bを参照する。
【0156】
(仕様の共通部分)
圧電素子18の下面18bの面積(圧電素子領域R1):0.47cm
2
圧電素子18の厚さ:0.9mm
植毛穴16の直径:1.75mm
植毛穴16の穴深さ:2.5mm
用毛17aの用毛径:5mil
1穴当たりの用毛17aの本数(1束当たりの用毛の総数):2122本/cm
2
用毛17aの毛丈:7mm
穴配列:
図9B参照
圧電素子18の位置:
図9B参照
【0157】
<結果>
表4に示すように、「音の聞こえやすさ」について評価した結果、圧電素子18の下面18bから植毛穴16の底面16fまでの距離H6(
図2参照)が1.6mm以下の歯ブラシの場合、音楽の聞こえやすさに関する評点が高くなると分かった。また、歯ブラシとしての強度を保つには、上記距離H6が0.4mm以上でなければならないと分かった。
【0158】
<実験2-4>
表5に、実施例15~23の骨伝導歯ブラシD15~D24の仕様について示す。
【0159】
【0160】
実験(2-4)では、表5に示す仕様に基づいて、10本の骨伝導歯ブラシD15~D24を作製し、音の聞こえやすさについて評価を行った。
図11は、実施例15~24の骨伝導歯ブラシD15~24に共通する仕様を示す図である。
図12Aは、実施例15,16の骨伝導歯ブラシD15,16の仕様を示す図である。
図12Bは、実施例17,18の骨伝導歯ブラシD17,18の仕様を示す図である。
図12Cは、実施例19の骨伝導歯ブラシD19の仕様を示す図である。
図12Dは、実施例20の骨伝導歯ブラシD20の仕様を示す図である。
図12Eは、実施例21の骨伝導歯ブラシD21の仕様を示す図である。
図12Fは、実施例19の骨伝導歯ブラシD22の仕様を示す図である。
図12Gは、実施例23の骨伝導歯ブラシD23の仕様を示す図である。
図12Hは、実施例24の骨伝導歯ブラシD24の仕様を示す図である。
【0161】
(実施例15~23の骨伝導歯ブラシD15~D24の作成)
10本の骨伝導歯ブラシD15~D24の仕様は、「植毛穴16の配列」が異なり、その他の仕様に関しては同一とした。
骨伝導歯ブラシD15~D24におけるそれぞれの「植毛穴16の配列」は、
図12A~
図12Hに示すように、ヘッド部12(
図11)の幅方向に3行から5行配列されている。表5では、ヘッド部12の幅方向一方側に位置する複数の植毛穴列N(1)を1行目とし、幅方向他方側に向かって順に植毛穴列N(2)~N(5)を2行目~5行目とした。
【0162】
(仕様の共通部分)
圧電素子18の下面18bの面積(圧電素子領域R1):1.51cm
2
圧電素子18の厚さ:0.9mm
圧電素子18の下面18bから植毛穴16の底面16fまでの距離(H6):1.6mm
植毛穴16の直径:1.75mm
植毛穴16の穴深さ:2.5mm
用毛径:5mil
1穴当たりの用毛17aの総本数:2122本/cm
2
用毛17aの毛丈:7mm
平線19の長さ:2.25mm
圧電素子18の位置:
図11参照
【0163】
<結果>
表5に示すように、ヘッド部の長さ方向で隣り合う平線どうしの距離(平線間距離M)の上限値は、実施例15~24の骨伝導歯ブラシD15~D24のうち、実施例18,19の骨伝導歯ブラシD18,D19の「音の聞こえやすさ」の評価を指標にして、1.5mmとした。
【0164】
平線間距離Mの下限値は、実施例15~24の骨伝導歯ブラシD15~D24のうち、実施例15,16の骨伝導歯ブラシD15,D16の「歯ブラシとしての強度」の評価を指標にして、0.25mmとした。
【0165】
「(平線19の長さの総和)/(植毛領域の長軸方向長さ)」の上限については、骨伝導歯ブラシとしての強度を指標に、実施例23, 24から94%とした。
「(平線長さの和)/(植毛領域の長軸方向長さ)」の下限については、音の聞こえやすさを指標にして、実施例20, 21, 22から53%とした。
【0166】
また、「平線間の最短距離が0.25mm以上」、「(平線長さの総和)/(長さ方向の植毛領域(植毛面12a)の長さ)が53%以上」を満たす植毛穴列Nがヘッド部内において2行設けられた実施例21の歯ブラシD21の場合は、音の判定が「○」となる。また、上記条件を満たす植毛穴列Nが3行設けられた実施例22の歯ブラシD22の場合は、音の判定が「◎」となった。
【0167】
以上の結果から、「平線間の最短距離が0.25mm以上」、「(平線長さの総和)/(長さ方向の植毛領域(植毛面12a)の長さ)が53%以上」を満たす植毛穴列Nは、ヘッド部内に少なくとも3行必要であるとわかった。
【0168】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0169】
10…骨伝導歯ブラシ(歯ブラシ)、11…ブラシ構造体、12…ヘッド部、12a…植毛面、15…ブラシ部、16(16a,16b,16c,16d,16e)…植毛穴、16f…底面、17…毛束、17a…用毛、18…圧電素子、18b…圧電素子の下面、19…平線、22…本体、143…植毛板、143b…植毛板の裏面、K1…第1の仮想線、K2…第2の仮想線