(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240105BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20240105BHJP
【FI】
H01G4/30 311Z
H01G4/30 201N
H01G4/30 517
H01G13/00 351A
(21)【出願番号】P 2020004456
(22)【出願日】2020-01-15
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽輔
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-045934(JP,A)
【文献】特開2016-025151(JP,A)
【文献】特開2012-209538(JP,A)
【文献】特開2013-182982(JP,A)
【文献】特開2019-106528(JP,A)
【文献】特開2011-228626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
H01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸方向に積層され、かつ前記第1軸に直交する第2軸方向に向いた第1側面及び第2側面から露出した複数の内部電極を有するセラミック積層チップの前記第1側面を、第1粘着シートに貼り付け、
前記第2側面にサイドマージン部を形成し、
前記第1粘着シート及び第2粘着シートの周縁領域に貼り付けられ前記セラミック積層チップの周囲に配置された固定部材であって、前記第2軸方向における厚み寸法が、前記サイドマージン部の設けられた前記セラミック積層チップの前記第2軸方向における寸法よりも大きい固定部材を介して、前記第1粘着シートと前記第2粘着シートとを前記第2軸方向に対向させて、前記サイドマージン部の前記第2軸方向に向いた表面を、前記第2粘着シートに貼り付け、
剥離用治具の突出した先端部と前記第2粘着シートの前記周縁領域との間の前記第2軸方向における第1距離、又は前記固定部材の前記厚み寸法よりも、前記先端部と前記サイドマージン部が貼り付けられた前記第2粘着シートのサイドマージン接着領域との間の前記第2軸方向における第2距離の方が小さい状態で、前記先端部に沿って前記第1粘着シートを屈曲させて前記第1粘着シートに前記第1側面から離れる方向の張力を付加することで、前記第1粘着シートを、前記サイドマージン部を介して前記第2粘着シートが貼り付けられた前記セラミック積層チップの前記第1側面から剥離する
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記第1粘着シートを剥離する工程では、前記第2軸方向に向いた支持面を有する支持台上に前記第2粘着シートを配置し、前記周縁領域を前記支持面に密接させ、かつ前記サイドマージン接着領域を前記支持面から前記第2軸方向に離間させた状態で、前記第1粘着シートを前記第1側面から剥離する
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記第1粘着シートを剥離する工程では、前記第2軸方向に向いた支持面を有する支持台上に前記第2粘着シートを配置し、
前記支持面は、
前記周縁領域が配置される周縁支持領域と、
前記サイドマージン接着領域が配置され、前記周縁領域から前記第2軸方向に突出した突出領域と、を含む
積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドマージン部を備えた積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化及び高性能化に伴い、積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品において、内部電極の周囲の絶縁性を確保するためのサイドマージン部を薄く均一に形成する要請が高まっている。
【0003】
特許文献1には、内部電極を側面に露出させた状態のグリーンチップにおいて、このグリーンチップの側面でセラミックグリーンシートを打ち抜くことにより、セラミック保護層(サイドマージン部)を設ける技術が開示されている。この技術では、粘着シートに複数のグリーンチップの第2の切断側面が貼り付けられ、第1の切断側面に一方のセラミック保護層が形成される。この後、粘着シート上で複数のグリーンチップが転動され、第1の切断側面が粘着シートに貼り付けられ、第2の切断側面が露出される。そして、第2の切断側面にセラミック保護層が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のように、チップの一方の側面にサイドマージン部を形成した後は、粘着シートに接着していた他方の側面を開放する必要がある。特許文献1に記載の転動により当該他方の側面を開放する方法では、グリーンチップの稜部に欠損などの損傷が生じやすく、歩留まりを高めることが難しかった。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、サイドマージン部の形成に関する生産効率を高めることが可能な積層セラミック電子部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、第1軸方向に積層され、かつ上記第1軸に直交する第2軸方向に向いた第1側面及び第2側面から露出した複数の内部電極を有するセラミック積層チップの上記第1側面を、第1粘着シートに貼り付けるステップを含む。
上記第2側面にサイドマージン部が形成される。
上記第1粘着シート及び第2粘着シートの周縁領域に貼り付けられ上記セラミック積層チップの周囲に配置された固定部材であって、上記第2軸方向における厚み寸法が、上記サイドマージン部の設けられた上記セラミック積層チップの上記第2軸方向における寸法よりも大きい固定部材を介して、上記第1粘着シートと上記第2粘着シートとを上記第2軸方向に対向させて、上記サイドマージン部の上記第2軸方向に向いた表面が、上記第2粘着シートに貼り付けられる。
剥離用治具の突出した先端部と上記第2粘着シートの上記周縁領域との間の上記第2軸方向における第1距離、又は上記固定部材の上記厚み寸法よりも、上記先端部と上記サイドマージン部が貼り付けられた上記第2粘着シートのサイドマージン接着領域との間の上記第2軸方向における第2距離の方が小さい状態で、上記先端部に沿って上記第1粘着シートを屈曲させて上記第1粘着シートに上記第1側面から離れる方向の張力を付加することで、上記第1粘着シートが、上記サイドマージン部を介して上記第2粘着シートが貼り付けられた上記セラミック積層チップの上記第1側面から剥離される。
【0008】
この構成では、固定部材を用いて第1粘着シート及び第2粘着シートの撓みを抑制しつつ、剥離用治具の先端部を第1側面に接近させた状態で、第1粘着シートを第1側面から剥離することができる。具体的には、第2粘着シートのサイドマージン接着領域を第2粘着シートの周縁領域から第2軸方向に突出させた状態、又は先端部を固定部材の第1粘着シート固定面よりも第2軸方向の第2粘着シート側に接近させた状態、のいずれかの状態で、第1粘着シートを剥離する。これにより、剥離時に第1粘着シートに付加される張力の第2軸方向の成分を低減することができる。したがって、第1粘着シートを介してセラミック積層チップに大きな第2軸方向の外力が付加され、それに伴ってサイドマージン部から第2粘着シートが剥離することを防止できる。この結果、上記構成により、セラミック積層チップを、第1粘着シートから第2粘着シートへより確実に移し替えることができ、サイドマージン部の形成に関する生産効率を高めることができる。
【0009】
具体的には、上記第1粘着シートを剥離する工程では、上記第2軸方向に向いた支持面を有する支持台上に上記第2粘着シートを配置し、上記周縁領域を上記支持面に密接させ、かつ上記サイドマージン接着領域を上記支持面から上記第2軸方向に離間させた状態で、上記第1粘着シートが上記第1側面から剥離されてもよい。
これにより、簡易な構成の支持台を用いて、生産コストを抑制しつつ、サイドマージン接着領域を周縁領域から第2軸方向に突出させることができる。
【0010】
あるいは、上記第1粘着シートを剥離する工程では、上記第2軸方向に向いた支持面を有する支持台上に上記第2粘着シートが配置され、
上記支持面は、
上記周縁領域が配置される周縁支持領域と、
上記サイドマージン接着領域が配置され、上記周縁領域から上記第2軸方向に突出した突出領域と、を含んでいてもよい。
これによっても、サイドマージン接着領域を周縁領域から第2軸方向に突出させる構成を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、サイドマージン部の形成に関する生産効率を高めることが可能な積層セラミック電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの斜視図である。
【
図2】上記積層セラミックコンデンサの
図1のA-A'線に沿った断面図である。
【
図3】上記積層セラミックコンデンサの
図1のB-B'線に沿った断面図である。
【
図4】上記積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
【
図6】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
【
図7】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。
【
図8】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。
【
図9】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。
【
図10】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。
【
図11】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。
【
図12】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。
【
図13】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す平面図である。
【
図14】本実施形態の比較例に係る積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。
【
図15】本実施形態の比較例に係る積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。
【
図16】本発明の第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。
【
図17】本発明の第3実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。
【
図18】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。
【0014】
<第1実施形態>
[積層セラミックコンデンサの構成]
図1~3は、本発明の第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。
図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。
図2は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のA-A'線に沿った断面図である。
図3は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のB-B'線に沿った断面図である。
【0015】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15と、を備える。セラミック素体11は、典型的には、Z軸方向を向いた2つの主面と、X軸方向を向いた2つの端面と、Y軸方向を向いた2つの側面と、を有する。
【0016】
積層セラミックコンデンサ10は、例えば小型に構成される。具体的に、積層セラミックコンデンサ10のX軸方向における寸法は、1mm以下でもよく、Y軸方向における寸法及びZ軸方向における寸法は、0.5mm以下でもよい。積層セラミックコンデンサ10の各方向における寸法は、各方向において最大となる寸法を意味する。
【0017】
外部電極14,15は、セラミック素体11の端面を覆い、セラミック素体11を挟んでX軸方向に対向している。外部電極14,15は、セラミック素体11の端面から主面及び側面に延出している。なお、外部電極14,15の形状は、
図1に示すものに限定されない。
【0018】
外部電極14,15は、電気の良導体により形成されている。外部電極14,15を形成する電気の良導体としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0019】
セラミック素体11は、セラミック積層体(積層体)16と、サイドマージン部17と、を有する。
【0020】
積層体16は、略直方体形状を有し、X軸方向を向いた第1端面16a及び第2端面16bと、Y軸方向を向いた第1側面16c及び第2側面16dと、Z軸方向を向いた第1主面16e及び第2主面16fと、を含む。端面16a,16bは、Y軸方向及びZ軸方向に沿って延びる。側面16c,16dは、Z軸方向及びX軸方向に沿って延びる。主面16e,16fは、X軸方向及びY軸方向に沿って延びる。
【0021】
積層体16の端面16a,16b、側面16c,16d、及び主面16e,16fはいずれも、平坦面として構成される。本実施形態に係る平坦面とは、全体的に見たときに平坦と認識される面であれば厳密に平面でなくてもよく、例えば、表面の微小な凹凸形状や、所定の範囲に存在する緩やかな湾曲形状などを有する面も含まれる。
【0022】
積層体16は、容量形成部18と、容量形成部18のZ軸方向両側にそれぞれ設けられたカバー部19と、を有する。容量形成部18は、Z軸方向にセラミック層を介して積層された第1内部電極12及び第2内部電極13を有する。
【0023】
第1内部電極12及び第2内部電極13は、それぞれ、X-Y平面に沿って延びるシート状に構成される。第1内部電極12は、第1端面16aまでX軸方向に延び、第1外部電極14に接続される。第2内部電極13は、第2端面16bまでX軸方向に延び、第2外部電極15に接続される。これにより、第1外部電極14と第2外部電極15との間に電圧が印加されると、第1内部電極12と第2内部電極13との間のセラミック層に電圧が加わり、容量形成部18に当該電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0024】
内部電極12,13は、電気の良導体により形成されている。内部電極12,13を形成する電気の良導体としては、典型的にはニッケル(Ni)が挙げられ、この他にも銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0025】
積層体16では、内部電極12,13間の各セラミック層の容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスが用いられる。高誘電率の誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
【0026】
なお、セラミック層は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)系、チタン酸カルシウム(CaTiO3)系、チタン酸マグネシウム(MgTiO3)系、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)系、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O3)系、ジルコン酸バリウム(BaZrO3)系、酸化チタン(TiO2)系などで構成してもよい。
【0027】
カバー部19は、絶縁性セラミックスで形成されるが、例えばセラミック素体11で用いられた誘電体セラミックスを含んでいてもよい。これにより、カバー部19と容量形成部18との間に発生し得る内部応力が抑制される。
【0028】
内部電極12,13は、容量形成部18のY軸方向の全幅にわたって形成され、積層体16の両側面16c,16dに露出している。これらの内部電極12,13の端部の位置は、Y軸方向に0.5μmの範囲内に相互に揃っている。両側面16c,16dには、内部電極12,13間及びこれらと外部との間の絶縁性を確保する等の観点から、サイドマージン部17が設けられている。
【0029】
サイドマージン部17は、積層体16の第1側面16c及び第2側面16dをそれぞれ被覆している。サイドマージン部17は、X-Z平面に沿って延びる略平板状に構成される。サイドマージン部17は、絶縁性セラミックスで形成されるが、内部応力抑制等の観点から、カバー部19と同様に積層体16で用いられた誘電体セラミックスで形成されてもよい。サイドマージン部17は、以下に説明するように、例えば側面16c,16dでセラミックグリーンシートを押圧し打ち抜くことによって形成される。
【0030】
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図4は、積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。
図5~13は積層セラミックコンデンサ10の製造過程を模式的に示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、
図4に沿って、
図5~13を適宜参照しながら説明する。
【0031】
(ステップS01:セラミック積層チップの作製)
ステップS01では、容量形成部18を形成するための第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102と、カバー部19を形成するための第3セラミックシート103と、を積層し、切断することで、未焼成のセラミック積層チップ(積層チップ)116を作製する。
【0032】
図5に示すセラミックシート101,102,103は、誘電体セラミックスを主成分とする未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。第1セラミックシート101には、第1内部電極12に対応する未焼成の第1内部電極112が形成される。第2セラミックシート102には、第2内部電極13に対応する未焼成の第2内部電極113が形成される。第3セラミックシート103には、内部電極が形成されていない。
【0033】
各内部電極112,113は、X軸方向に平行な切断線Lxを横切り、かつY軸方向に平行な切断線Lyに沿って延びる複数の帯状の電極パターンを有する。これらの内部電極112,113は、印刷法等により、導電性ペーストをセラミックシート101,102に塗布することで形成される。
【0034】
セラミックシート101,102は、
図5に示すように、Z軸方向に交互に積層される。セラミックシート101,102の積層体は、容量形成部18に対応する。セラミックシート103は、セラミックシート101,102の積層体のZ軸方向上下面に積層される。セラミックシート103の積層体は、カバー部19に対応する。
なお、セラミックシート101,102,103の積層枚数等は、適宜調整可能である。
【0035】
続いて、セラミックシート101,102,103の積層体をZ軸方向から圧着し、切断線Lx,Lyに沿って切断する。これにより、
図6に示す積層チップ116が作製される。
【0036】
図6に示すように、積層チップ116は、Z軸方向に積層された未焼成の内部電極112,113を含む未焼成の容量形成部118と、未焼成のカバー部119と、を有する。積層チップ116には、切断線Lxに対応する切断面である第1側面116c及び第2側面116dと、切断線Lyに対応する切断面である第1端面116a及び第2端面116bと、が形成される。側面116c,116dからは、未焼成の内部電極112,113の端部が露出している。
【0037】
(ステップS02:第1粘着シートの貼り付け)
ステップS02では、
図7に示すように、第1側面116cを第1粘着シートS1に貼り付ける。これにより、積層チップ116は、第2側面116dが開放されて第1粘着シートS1とは反対側に向いた状態となる。
図7に示す例では、第1粘着シートS1に、複数の積層チップ116が貼り付けられている。これらの積層チップ116は、例えばZ軸方向に間隔をあけて配置されている。なお、積層チップ116は、X軸方向に間隔をあけて配置されていてもよい。
【0038】
第1粘着シートS1は、粘着性を有する第1粘着面S11を含む。より詳細には、第1粘着シートS1は、基材と、第1粘着面S11を含む粘着層と、を有する。基材は、例えばポリエステル、ポリエチレン等を含む樹脂材料で形成される。粘着層は、例えばアクリル樹脂、シリコーン樹脂等を含む粘着剤で形成される。
【0039】
図7に示すように、第1粘着シートS1の第1粘着面S11には、例えば第1フレームF1が貼り付けられる。第1フレームF1は、後述する固定部材Fの一部を構成し、例えば金属や樹脂等で形成された枠体として構成される。第1フレームF1は、第1粘着シートS1に貼り付けられた第1固定面F11と、第1固定面F11の反対側の第1接続面F12と、を含み、積層チップ116の周囲に配置されている。第1接続面F12は、後述する第2接続面F22と係合する図示しない第1係合部を含む。
【0040】
第1粘着シートS1に第1フレームF1を貼り付けることで、第1粘着シートS1には、第1固定面F11側に引っ張られる方向の張力が作用する。これにより、第1粘着シートS1の撓みを抑制でき、第1粘着シートS1上における積層チップ116の姿勢を良好に維持することができる。
【0041】
(ステップS03:サイドマージン部の形成1)
ステップS03では、第2側面116dにサイドマージン部117を形成する。サイドマージン部117は、以下に説明するように、セラミックシート117sを第2側面116dで打ち抜くことで形成される。なお、本ステップは、例えば第1フレームF1が貼り付けられた状態で行われるが、
図8では第1フレームF1の図示を省略している。
【0042】
まず、
図8Aに示すように、積層チップ116の第2側面116dを、セラミックシート117sとY軸方向に対向して配置する。積層チップ116の第1側面116cは、第1粘着シートS1に貼り付けられている。セラミックシート117sは、弾性変形可能な弾性部材E上に配置されている。
【0043】
続いて、
図8Bに示すように、積層チップ116の第2側面116dをセラミックシート117sに対してY軸方向に押し込む。これにより、第2側面116dの外縁に沿ってセラミックシート117sにせん断力が作用し、このせん断力がセラミックシート117sのせん断強さ以上になると、セラミックシート117sが打ち抜かれる。
【0044】
このとき、例えば打ち抜かれる部分以外のセラミックシート117sの不要部分117pが第1粘着シートS1に接触する程度に、積層チップ116が弾性部材E側へ押し込まれる。これにより、例えば不要部分117pが第1粘着シートS1に貼り付けられ、不要部分117pが積層チップ116に貼り付くといった不具合を防止することができる。
【0045】
本ステップにより、
図8Cに示すように、第2側面116dにサイドマージン部117が形成される。
【0046】
(ステップS04:第2粘着シートの貼り付け)
ステップS04では、サイドマージン部117のY軸方向に向いた表面を第2粘着シートS2に貼り付ける。
【0047】
図9~11は、本ステップを説明する模式的な断面図である。
本ステップでは、まず、
図9に示すように、粘着性を有する第2粘着面S21を含む第2粘着シートS2を準備する。第2粘着シートS2は、例えばY軸方向に直交する支持面G11を含む支持台G1上に配置される。
【0048】
より詳細には、第2粘着シートS2は、基材と、第2粘着面S21を含む粘着層と、を有する。第2粘着シートS2は、第1粘着シートS1と同様の構成を有していてもよい。基材は、例えばポリエステル、ポリエチレン等を含む樹脂材料で形成される。粘着層は、例えばアクリル樹脂、シリコーン樹脂等を含む粘着剤で形成される。
【0049】
本実施形態において、第2粘着シートS2には、第2フレームF2が貼り付けられている。第2フレームF2は、例えば、上述の第1フレームF1と同様の平面形状を有し、第1フレームF1と接続されて後述する固定部材Fの一部を構成する。第2フレームF2は、例えば金属や樹脂等で形成された枠体として構成される。第2フレームF2は、第2粘着シートS2に貼り付けられた第2固定面F21と、第2固定面F21の反対側の第2接続面F22と、を含む。第2接続面F22は、第1接続面F12と係合する図示しない第2係合部を含む。
【0050】
第2粘着シートS2に第2フレームF2を貼り付けることで、第2粘着シートS2には、第2固定面F21に引っ張られる方向の張力が作用する。これにより、第2粘着シートS2の撓みを抑制でき、第2粘着シートS2の取り扱いを容易にすることができる。
【0051】
続いて、
図10に示すように、第2フレームF2の第2接続面F22を、第1フレームF1の第1接続面F12に接続する。これにより、第1フレームF1及び第2フレームF2からなる固定部材Fが形成されるとともに、第1粘着シートS1と第2粘着シートS2とがY軸方向に対向する。具体的には、第1粘着面S11と第2粘着面S21とがY軸方向に対向する。第1粘着シートS1の第1粘着面S11には、サイドマージン部117が形成された複数の積層チップ116が貼り付けられている。なお、
図10では、第1粘着シートS1及びそれに貼り付けられた複数の積層チップ116を、
図8からY軸方向に反転した態様で示している。
【0052】
固定部材Fは、第1粘着シートS1に貼り付けられた第1固定面F11と、第1固定面F11の反対方向を向き、第2粘着シートS2に貼り付けられた第2固定面F21と、を含む。固定部材Fは、全体として複数の積層チップ116の周囲に配置された枠状に構成される。
【0053】
固定部材Fにより、第1粘着シートS1及び第2粘着シートS2に対し、固定部材Fに引っ張る方向の張力を及ぼすことができる。これにより、第1粘着シートS1及び第2粘着シートS2の撓み及び積層チップ116の姿勢の大きな変化を抑制できる。
【0054】
本実施形態において、固定部材FのY軸方向における厚み寸法T1は、サイドマージン部117を含む積層チップ116のY軸方向における寸法T2よりも大きい。さらに、厚み寸法T1は、寸法T2の2倍以上であってもよい。これにより、固定部材Fの剛性を十分に確保でき、取り扱い時における固定部材Fの変形を抑制することができる。したがって、第1粘着シートS1及び第2粘着シートS2の撓み及び積層チップ116の姿勢の大きな変化をより確実に抑制できる。
【0055】
図10に示す例では、厚み寸法T1が寸法T2よりも大きく、固定部材Fによって第1粘着面S11に張力が付加されているため、サイドマージン部117の表面と第2粘着面S21とが離間している。この場合、第1粘着シートS1上から押圧板等によって複数の積層チップ116をY軸方向に押圧することで、
図11に示すように、サイドマージン部117の表面を第2粘着シートS2の第2粘着面S21に貼り付ける。
【0056】
(ステップS05:第1粘着シートの剥離)
ステップS05では、第1粘着シートS1を、サイドマージン部117を介して第2粘着シートが貼り付けられた積層チップ116の第1側面116cから剥離する。これにより、サイドマージン部117に第2粘着シートS2が貼り付けられた状態で、第1側面116cが開放される。
【0057】
図12は、本ステップを説明する模式的な断面図である。
本ステップでは、
図12に示すように、突出した先端部H1を含む剥離用治具Hを用いる。剥離用治具Hは、例えば、第1粘着シートS1を第1側面116cから離れる方向に誘導する誘導面H2と、第1側面116cに対向する対向面H3と、誘導面H2及び対向面H3を接続する突出した先端部H1と、を含む。誘導面H2と対向面H3とのなす角度は、
図12に示す例では鋭角であるが、これに限定されない。対向面H3は、
図12に示す例では、Y軸方向と直交するように配置されているが、この配置に限定されない。
【0058】
本ステップでは、剥離用治具Hの先端部H1が、剥離対象の第1側面116cのY軸方向上方に配置される。そして、第1粘着シートS1が先端部H1に沿って屈曲され、誘導面H2に沿って張力を付加される。これにより、第1粘着シートS1に第1側面116cから離れる方向の張力が付加され、第1側面116cから第1粘着シートS1が剥離する。
【0059】
さらに、第1粘着シートS1が誘導面H2に沿って張力を付加されつつ、剥離用治具Hが先端部H1の突出方向と反対方向(例えばZ軸方向)に移動する。これにより、第1側面116cから第1粘着シートS1が完全に剥離される。また、剥離用治具Hが移動することで、複数の第1側面116cから第1粘着シートS1を連続的に剥離することができる。
【0060】
本実施形態では、剥離用治具Hを含む図示しない剥離機構によって、各第1側面116cからの第1粘着シートS1の剥離が自動的に行われてもよい。当該剥離機構は、例えば、剥離用治具Hと、第1粘着シートS1に第1側面116cから離れる方向の張力を付加する張力付加部と、剥離用治具H及び張力付加部を移動させる駆動部と、制御部と、を備える。張力付加部は、例えば第1粘着シートS1を巻き取る巻取ローラと、巻取ローラを回転させるモータ等と、を含む。駆動部は、例えば剥離用治具Hを案内するガイドと、剥離用治具Hをガイド上で移動させるモータ等と、を含む。制御部は、コンピュータによって構成され、各部の動作を制御する。
【0061】
剥離用治具H(先端部H1)は、上記剥離機構によって、固定部材Fの第1固定面F11よりもY軸方向上方(第2粘着面S21から離れる方向)に位置し、かつ、Z軸方向に移動可能に構成される。
【0062】
図13は、固定部材Fと剥離用治具Hの配置例を示す図であり、Y軸方向から見た平面図である。固定部材Fは、例えば2つの矩形の開口部F3を含む。開口部F3は、一例として、Z軸方向に長辺を有し、X軸方向に短辺を有する長方形状に構成される。第1粘着シートS1及び第2粘着シートS2は、例えば、2つの開口部F3を含む固定部材F全体にわたって延びている。複数の積層チップ116は、開口部F3内に、例えばZ軸方向に並んで配置される。
【0063】
図13に示すように、例えば、剥離用治具Hは、Y軸方向から見た際に、例えば固定部材FのX軸方向全長にわたって延びる棒状に構成される。これに伴い、先端部H1も、X軸方向に沿って延びる線状に構成される。剥離用治具Hを案内するガイド(図示せず)は、例えば固定部材FのX軸方向外側に配置され、Z軸方向に沿って延びる。このような構成により、剥離用治具Hが、固定部材FのY軸方向上方においてZ軸方向に移動可能となる。
【0064】
本ステップでは、剥離用治具Hの先端部H1を第1側面116cとY軸方向に接近させた状態で、第1粘着シートS1を第1側面116cから剥離する。本実施形態では、上述のように、剥離用治具Hが固定部材FのY軸方向上方に位置しており、剥離用治具HのY軸方向における位置を調整することが難しい。このため、第2粘着シートS2のサイドマージン接着領域R1を周縁領域R2から先端部H1側に突出させた状態とすることで、先端部H1を第1側面116cに接近させる。例えば、先端部H1と第1粘着シートS1とのY軸方向における距離は、サイドマージン部117を含む積層チップ116のY軸方向における寸法T2(
図10参照)より小さい。
【0065】
なお、第2粘着面S21の周縁領域R2は、本実施形態において、固定部材Fの第2固定面F21が貼り付けられた領域とする。
【0066】
より詳細に、本ステップに係る第1粘着シートS1の剥離は、
図12に示すように、第1距離D1よりも第2距離D2の方が小さい状態で行われる。第1距離D1は、先端部H1と、固定部材Fの第2固定面F21が貼り付けられた第2粘着シートS2の周縁領域R2と、の間のY軸方向における距離である。第2距離D2は、先端部H1と、第2粘着シートS2のサイドマージン接着領域R1と、の間のY軸方向における距離である。第2距離D2は、先端部H1と、複数の積層チップ116が貼り付けられたサイドマージン接着領域R1との間のY軸方向における距離のうち、最も小さい距離を意味する。
【0067】
本ステップに係る第1粘着シートS1の剥離は、第2粘着シートS2を、第2粘着シートS2が配置された支持台G1の支持面G11に固定せずに行われる。これにより、剥離用治具HによるY軸方向の成分を含む張力によって第1粘着シートS1及びそれに接着した積層チップ116がY軸方向上方に持ち上げられる。これに伴い、サイドマージン接着領域R1は、支持面G11から離間した状態となる。一方、周縁領域R2は、固定部材Fが配置されていることから、支持面G11に密接した状態となる。
【0068】
図14は、本実施形態の比較例に係る剥離工程を示す模式的な断面図である。この図において、
図12と対応する構成については同一の符号を付して説明する。
図14では、支持台G2の構成が
図12に示す支持台G1の構成とは異なる。支持台G2は、第2粘着シートS2を吸着することが可能な吸着面G21と、吸着面G21に開口する複数の吸着孔G22と、を含む。吸着面G21は、Y軸方向に直交する平坦面で構成される。これにより、第2粘着シートS2が、剥離工程の間、吸着面G21に吸着された状態となる。
【0069】
図14に示すように、この構成では、サイドマージン接着領域R1が周縁領域R2と同一平面上に配置されることになり、第2距離D2が第1距離D1と同一の距離となる。さらに、剥離用治具Hの先端部H1は、固定部材Fの第1固定面F11よりもY軸方向上方に位置するため、第1距離D1及び第2距離D2が固定部材Fの厚み寸法T1よりも大きくなる。この結果、積層チップ116の第1側面116cと剥離用治具Hの先端部H1との間の距離も大きくなり、第1粘着シートS1には、Y軸方向の成分の大きな張力が付加される。この張力によって、積層チップ116にもY軸方向上方の成分を含む外力が付加される。
【0070】
一方で、第2粘着シートS2には、吸着面G21からY軸方向下方への吸着力が付加される。これにより、サイドマージン部117と第2粘着面S21との間には、相反する力が作用する。したがって、
図15に示すように、サイドマージン部117から第2粘着シートS2が剥がれ、積層チップ116を第2粘着シートS2に移し替えることが困難になる。
【0071】
これに加えて、固定部材Fの厚み寸法T1が、サイドマージン部117を含む積層チップ116のY軸方向における寸法T2よりも大きい場合、第1粘着シートS1には、第1固定面F11からもY軸方向の成分を含む張力が付加される。これによっても、サイドマージン部117が第2粘着シートS2から剥がれやすくなる。
【0072】
一方、
図12に示すように、本実施形態の剥離工程では、第2粘着シートS2が支持面G11に固定されていないため、サイドマージン接着領域R1が周縁領域R2からY軸方向に突出し、第2距離D2を第1距離D1よりも小さくすることが可能である。このため、剥離用治具Hを第1側面116cに接近させることができ、剥離用治具Hから第1粘着シートS1に付加される張力のY軸方向の成分を、
図14に示す例よりも小さくすることができる。これにより、積層チップ116に付加され得るY軸方向の外力を低減することができる。
【0073】
さらに、第2粘着シートS2が支持面G11上に固定されないため、第2粘着シートS2には支持面G11への吸着力が付加されない。これにより、サイドマージン部117と第2粘着シートS2と境界部に相反する方向の外力が付加されにくくなり、第2粘着シートS2がサイドマージン部117から剥がれる不具合を防止することができる。
【0074】
加えて、剥離工程の間、積層チップ116がY軸方向上方に持ち上げられているため、第1粘着シートS1に生じ得る、第1固定面F11からのY軸方向の成分を含む張力も小さくなる。これによっても、積層チップ116に付加され得るY軸方向の外力を低減することができる。
【0075】
また、本実施形態では、支持台G1に吸着固定のための機構等を設ける必要がなく、簡易な装置構成で、第2粘着シートS2の剥がれ防止を達成することができる。
【0076】
さらに、本実施形態では、セラミックシート117sの不要部分117pが第1粘着シートS1に貼り付けられているため、この不要部分117pも本ステップにおいて除去することができる。これにより、不要部分117pが積層チップ116の表面や第2粘着シートS2に貼り付くといった不具合も防止することができる。
【0077】
(ステップS06:サイドマージン部の形成2)
ステップS06では、開放された第1側面116cにサイドマージン部117を形成する。サイドマージン部117は、ステップS03と同様に形成される。これにより、未焼成のセラミック素体11が作製される。なお、第2粘着シートS2は、本ステップの後、積層チップ116から剥離される。
【0078】
(ステップS07:焼成)
ステップS07では、ステップS06で得られた未焼成のセラミック素体11を焼成することにより、
図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10のセラミック素体11を作製する。焼成温度は、未焼成のセラミック素体11の焼結温度に基づいて決定することができる。また、焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。
【0079】
(ステップS08:外部電極形成)
ステップS08では、ステップS07で得られたセラミック素体11のX軸方向両端部に外部電極14,15を形成する。一例として、まず、導電性ペーストをセラミック素体11のX軸方向両端部に塗布し、この導電性ペーストを焼き付けて下地膜を形成する。次に、下地膜が形成されたセラミック素体11をメッキ液に浸漬させて電解メッキを行うことで、1又は複数のメッキ膜を形成する。
これにより、
図1~3に示すような積層セラミックコンデンサ10が形成される。
【0080】
なお、上記のステップS08における処理の一部を、ステップS07の前に行ってもよい。例えば、ステップS07の前に未焼成のセラミック素体11のX軸方向両端面に未焼成の電極材料を塗布し、ステップS07において、未焼成のセラミック素体11を焼成すると同時に、未焼成の電極材料を焼き付けて外部電極14,15の下地層を形成してもよい。また、脱バインダ処理したセラミック素体11に未焼成の電極材料を塗布して、これらを同時に焼成してもよい。
【0081】
以上により、本実施形態によれば、積層チップ116における第1粘着シートS1から第2粘着シートS2の移し替えをより確実に行うことができる。したがって、サイドマージン部117形成時における歩留まりの低下を抑制し、生産効率を高めることができる。
【0082】
<第2実施形態>
図16は、本発明の第2実施形態に係る第1粘着シートS1の剥離工程(ステップS05)を示す模式的な断面図である。なお、以下の実施形態において、上述の第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、説明を省略する。
【0083】
本実施形態のステップS05においても、第2粘着シートS2のサイドマージン接着領域R1を周縁領域R2からY軸方向(先端部H1側)に突出させた状態で、第1粘着シートS1を積層チップ116の第1側面116cから剥離する。これにより、サイドマージン部117に第2粘着シートS2が貼り付けられた状態で、第1側面116cが開放される。本実施形態のステップS05では、第1実施形態の支持台G1とは異なる支持台G3に第2粘着シートS2が配置される。
【0084】
支持台G3は、Y軸方向に向いた支持面G31を有する。支持台G3は、支持面G31に開口する複数の吸着孔G32を含み、支持面G31は、例えば第2粘着シートS2の吸着が可能な吸着面として構成される。
【0085】
支持面G31は、周縁領域R2が配置される周縁支持領域G312と、サイドマージン接着領域R1が配置され、周縁支持領域G312からY軸方向に突出した突出領域G311と、を含む。突出領域G311は、例えばY軸方向に直交する平坦面で構成される。この場合、
図16に示すように、周縁支持領域G312と突出領域G311との間には、段差が形成される。
【0086】
このような構成の支持台G3によっても、サイドマージン接着領域R1が周縁領域R2からY軸方向に突出し、第1距離D1よりも第2距離D2の方が小さい状態で、第1粘着シートS1の剥離を行うことができる。このため、剥離用治具Hから第1粘着シートS1に付加されるY軸方向の成分を含む張力を低減することができる。したがって、サイドマージン部117を含む積層チップ116に付加されるY軸方向の外力を低減することができ、第2粘着シートS2がサイドマージン部117から剥がれる不具合を防止することができる。
【0087】
<第3実施形態>
図17は、本発明の第3実施形態に係る第1粘着シートS1の剥離工程(ステップS05)を示す模式的な断面図である。
【0088】
本実施形態のステップS05では、固定部材FのY軸方向における厚み寸法T1よりも、先端部H1とサイドマージン接着領域R1とのY軸方向における距離D2の方が小さい状態で、第1粘着シートS1を第1側面116cから剥離する。つまり、本実施形態のステップS05では、先端部H1を、固定部材Fの第1固定面F11よりもY軸方向下方(第2粘着シートS2側)に配置することで、先端部H1を第1側面116cに接近させる。
【0089】
このとき、先端部H1は、Y軸方向に第1側面116cを押圧した状態でZ軸方向に移動してもよい。
【0090】
本実施形態では、Y軸方向に直交する略平坦な支持面G41を含む支持台G4に第2粘着シートS2を配置してもよい。支持台G4は、支持面G41に開口する複数の吸着孔G42を含み、支持面G41は、例えば第2粘着シートS2の吸着が可能な吸着面として構成される。
【0091】
このような構成によっても、先端部H1を第1側面116cに接近させた状態とすることができ、剥離用治具Hから第1粘着シートS1に付加されるY軸方向の成分を含む張力を低減することができる。これにより、サイドマージン部117を含む積層チップ116に付加されるY軸方向の外力を低減することができる。したがって、第2粘着シートS2が支持面G41に固定されていた場合であっても、第2粘着シートS2がサイドマージン部117から剥がれる不具合を防止することができる。
【0092】
また、剥離用治具Hの対向面H3も第1粘着シートS1に接近させた状態とすることができる。これにより、第1固定面F11によって付加されるY軸方向の成分を含む張力の影響を抑制することができ、積層チップ116に付加されるY軸方向の外力をさらに低減することができる。これによっても、第2粘着シートS2がサイドマージン部117から剥がれることをより確実に防止できる。
【0093】
本実施形態では、例えば、
図18の平面図に示すような固定部材F'を用いてもよい。この固定部材F'は、一つの大きな開口部F'3を有している。開口部F'3は、剥離用治具H及び剥離機構のガイド等の構成を配置することができる。これにより、先端部H1を固定部材F'の第1固定面F11よりもY軸方向下方に配置しつつ、開口部F3内を移動させることが可能となる。
【0094】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば本発明の実施形態は各実施形態を組み合わせた実施形態とすることができる。
【0095】
サイドマージン部の形成方法は、上述のサイドマージンシートの打ち抜きに限定されず、例えば成形されたサイドマージンシートの貼り付けや、セラミックペーストの塗布等であってもよい。
【0096】
上記第2実施形態及び第3実施形態において、支持面が吸着面であると説明したが、吸着面でなく、第2粘着シートS2を固定しない面であってもよい。
【0097】
固定部材の構成は、上述の例に限定されず、第1粘着シート及び第2粘着シートをY軸方向に対向させ、これらの撓みを抑制できる構成であればよい。
【0098】
上記実施形態では積層セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、本発明は一対の外部電極を有する積層セラミック電子部品全般に適用可能である。このような積層セラミック電子部品としては、例えば、チップバリスタ、チップサーミスタ、積層インダクタなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0099】
10…積層セラミックコンデンサ(積層セラミック電子部品)
112,113…(未焼成の)内部電極
116…積層チップ(セラミック積層チップ)
116c…(積層チップの)第1側面
116d…(積層チップの)第2側面
117…(未焼成の)サイドマージン部
S1…第1粘着シート
S2…第2粘着シート
H…剥離用治具
H1…先端部
F、F'…固定部材