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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】回転電機システム
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/08 20060101AFI20240105BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240105BHJP
   H02M 7/493 20070101ALI20240105BHJP
【FI】
H02P27/08
H02M7/48 M
H02M7/493
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020016333
(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2021125922
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】岡本 亮太郎
(72)【発明者】
【氏名】赤間 貞洋
(72)【発明者】
【氏名】中井 康裕
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-181949(JP,A)
【文献】特開2020-005394(JP,A)
【文献】特開2017-077061(JP,A)
【文献】特開2016-014829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00-3/12
7/00-13/00
15/00-58/40
H02M7/42-7/98
H02P21/00-25/03
25/04
25/10-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置(40)の正極側に接続される第1電気経路(CE)と、
前記蓄電装置の負極側に接続される第2電気経路(CG)と、
直列接続された第1上アームスイッチ(22)と第1下アームスイッチ(23)とを相ごとに有し、前記第1上アームスイッチの高電位側端子が前記第1電気経路に接続され、前記第1下アームスイッチの低電位側端子が前記第2電気経路に接続された第1インバータ(20)と、
直列接続された第2上アームスイッチ(32)と第2下アームスイッチ(33)とを相ごとに有し、前記第2上アームスイッチの高電位側端子が前記第1電気経路に接続され、前記第2下アームスイッチの低電位側端子が前記第2電気経路に接続された第2インバータ(30)と、
電機子巻線(14)を有し、前記第1上アームスイッチの低電位側端子及び前記第1下アームスイッチの高電位側端子に前記電機子巻線の第1端が接続され、前記第2上アームスイッチの低電位側端子及び前記第2下アームスイッチの高電位側端子に前記電機子巻線の第2端が接続された回転電機(10)と、
前記第1電気経路と前記第2電気経路との少なくとも一方において、前記第1インバータとの接続点と前記第2インバータとの接続点との間に設けられた第1開閉スイッチ(60)と、
前記第1開閉スイッチよりも前記第1インバータ側において、前記第1電気経路と前記第2電気経路との間を接続する第1コンデンサ(25)と、
2コンデンサ(35)と
前記第2コンデンサに直列接続された第2開閉スイッチ(64)と、
前記第1開閉スイッチ、前記第2開閉スイッチ、前記第1上アームスイッチ、前記第1下アームスイッチ、前記第2上アームスイッチ及び前記第2下アームスイッチをオンオフする制御装置(50)と、を備え、
前記第1開閉スイッチよりも前記第2インバータ側において、前記第2コンデンサ及び前記第2開閉スイッチの直列接続体が前記第1電気経路と前記第2電気経路との間に接続されており、
前記制御装置は、スター結線駆動の制御と、オープン結線駆動の制御とのいずれかを選択して実行可能であり、
前記スター結線駆動の制御は、
各相において前記第1上アームスイッチと前記第1下アームスイッチとを交互にオンし、かつ、
各相において、前記第2上,下アームスイッチのうち、前記第1開閉スイッチが設けられた側のスイッチをオンに維持するとともに、前記第1開閉スイッチが設けられていない側のスイッチをオフに維持し、かつ、
前記第1開閉スイッチ及び前記第2開閉スイッチをオフに維持する
制御であり、
前記オープン結線駆動の制御は、
各相において前記第1上アームスイッチと前記第1下アームスイッチとを交互にオンし、かつ、
各相において前記第2上アームスイッチと前記第2下アームスイッチとを交互にオンし、かつ、
前記第1開閉スイッチ及び前記第2開閉スイッチをオンに維持する
制御である、回転電機システム。
【請求項2】
蓄電装置(40)の正極側に接続される第1電気経路(CE)と、
前記蓄電装置の負極側に接続される第2電気経路(CG)と、
直列接続された第1上アームスイッチ(22)と第1下アームスイッチ(23)とを相ごとに有し、前記第1上アームスイッチの高電位側端子が前記第1電気経路に接続され、前記第1下アームスイッチの低電位側端子が前記第2電気経路に接続された第1インバータ(20)と、
直列接続された第2上アームスイッチ(32)と第2下アームスイッチ(33)とを相ごとに有し、前記第2上アームスイッチの高電位側端子が前記第1電気経路に接続され、前記第2下アームスイッチの低電位側端子が前記第2電気経路に接続された第2インバータ(30)と、
電機子巻線(14)を有し、前記第1上アームスイッチの低電位側端子及び前記第1下アームスイッチの高電位側端子に前記電機子巻線の第1端が接続され、前記第2上アームスイッチの低電位側端子及び前記第2下アームスイッチの高電位側端子に前記電機子巻線の第2端が接続された回転電機(10)と、
前記第1電気経路と前記第2電気経路との少なくとも一方において、前記第1インバータとの接続点と前記第2インバータとの接続点との間に設けられた第1開閉スイッチ(60)と、
前記第1開閉スイッチよりも前記第1インバータ側において、前記第1電気経路と前記第2電気経路との間を接続する第1コンデンサ(25)と、
第2コンデンサ(35)と、
前記第2コンデンサに直列接続された第2開閉スイッチ(64)と、
前記第1開閉スイッチ及び前記第2開閉スイッチをオンオフする制御装置(50)と、を備え、
前記第1開閉スイッチよりも前記第2インバータ側において、前記第2コンデンサ及び前記第2開閉スイッチの直列接続体が前記第1電気経路と前記第2電気経路との間に接続されており、
前記制御装置は、前記第1開閉スイッチのオン期間に前記第2開閉スイッチをオンし、前記第1開閉スイッチのオフ期間に前記第2開閉スイッチをオフし、
前記制御装置は、
前記電機子巻線に流れる電流が閾値よりも大きいか否かを判定し、
記閾値よりも大きいと判定たことを条件に、前記第2開閉スイッチをオンする回転電機システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記回転電機が高回転駆動状態であるという第1条件と、前記回転電機が高トルク駆動状態であるという第2条件との少なくとも一方を満たす場合に、前記第1開閉スイッチをオンし、前記第1条件及び前記第2条件の両方を満たさない場合に、前記第1開閉スイッチをオフする請求項に記載の回転電機システム。
【請求項4】
前記第2インバータの耐圧値は、前記第1インバータの耐圧値以下である請求項1からまでのいずれか一項に記載の回転電機システム。
【請求項5】
前記第1上アームスイッチと前記第2上アームスイッチとは、同一仕様のスイッチング素子であり、前記第1下アームスイッチと前記第2下アームスイッチとは、同一仕様のスイッチング素子である請求項1からまでのいずれか一項に記載の回転電機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリに接続され、バッテリから供給される直流電力を交流電力に変換し、回転電機に出力するインバータを備えるシステムが知られている(例えば、特許文献1)。このシステムでは、インバータに含まれるスイッチング素子のオフへの切り替え時に発生するサージ・エネルギを吸収するスナバコンデンサが設けられている。このシステムでは、スイッチング素子の温度が取得され、取得されたスイッチング素子の温度が閾値以下の場合、スイッチング素子とスナバコンデンサとが電気的に接続される。これにより、スイッチング素子のオフへの切り替え時に発生するサージ・エネルギがスナバコンデンサに吸収され、過大なサージ電圧の発生が抑制される。また、スイッチング素子の温度が閾値を超えた場合、スイッチング素子とスナバコンデンサとの電気的接続が遮断される。これにより、サージ電圧が低い場合にはスナバコンデンサを作用させないことで回路損失が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-7310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インバータとして第1インバータと第2インバータとが設けられており、第1,第2インバータを用いて回転電機に交流電力を出力するシステムが知られている。このシステムは、バッテリなどの蓄電装置の正極側に接続される第1電気経路と、蓄電装置の負極側に接続される第2電気経路と、第1インバータと、第2インバータと、回転電機と、開閉スイッチと、コンデンサと、を備えている。第1インバータは、直列接続された第1上アームスイッチと第1下アームスイッチとを相ごとに有し、第1上アームスイッチの高電位側端子が第1電気経路に接続され、第1下アームスイッチの低電位側端子が第2電気経路に接続されている。第2インバータは、直列接続された第2上アームスイッチと第2下アームスイッチとを相ごとに有し、第2上アームスイッチの高電位側端子が第1電気経路に接続され、第2下アームスイッチの低電位側端子が第2電気経路に接続されている。回転電機は、電機子巻線を有し、第1上アームスイッチの低電位側端子及び第1下アームスイッチの高電位側端子に電機子巻線の第1端が接続され、第2上アームスイッチの低電位側端子及び第2下アームスイッチの高電位側端子に電機子巻線の第2端が接続されている。開閉スイッチは、第1電気経路と第2電気経路との少なくとも一方において、第1インバータとの接続点と第2インバータとの接続点との間に設けられている。コンデンサは、開閉スイッチよりも第1インバータ側において、第1電気経路と第2電気経路との間を接続している。このシステムでは、第2インバータは開閉スイッチを介して蓄電装置に接続されている。そして、開閉スイッチがオンされる場合には、第1インバータと第2インバータとを構成する各スイッチのスイッチング動作により回転電機に交流電力が出力される。
【0005】
このシステムにおいて、第2インバータのスイッチング動作により発生するサージ・エネルギがコンデンサに吸収される際の電気経路は開閉スイッチが設けられた部分を含む。当該部分では、開閉スイッチ自身のインダクタンスや、開閉スイッチを設けるための電気経路形状によりインダクタンスが大きくなっている。そのため、第2インバータのスイッチング動作で発生するサージ・エネルギにより過大なサージ電圧が発生してしまう。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、過大なサージ電圧の発生を抑制できる回転電機システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の手段は、蓄電装置の正極側に接続される第1電気経路と、前記蓄電装置の負極側に接続される第2電気経路と、直列接続された第1上アームスイッチと第1下アームスイッチとを相ごとに有し、前記第1上アームスイッチの高電位側端子が前記第1電気経路に接続され、前記第1下アームスイッチの低電位側端子が前記第2電気経路に接続された第1インバータと、直列接続された第2上アームスイッチと第2下アームスイッチとを相ごとに有し、前記第2上アームスイッチの高電位側端子が前記第1電気経路に接続され、前記第2下アームスイッチの低電位側端子が前記第2電気経路に接続された第2インバータと、電機子巻線を有し、前記第1上アームスイッチの低電位側端子及び前記第1下アームスイッチの高電位側端子に前記電機子巻線の第1端が接続され、前記第2上アームスイッチの低電位側端子及び前記第2下アームスイッチの高電位側端子に前記電機子巻線の第2端が接続された回転電機と、前記第1電気経路と前記第2電気経路との少なくとも一方において、前記第1インバータとの接続点と前記第2インバータとの接続点との間に設けられた開閉スイッチと、前記開閉スイッチよりも前記第1インバータ側において、前記第1電気経路と前記第2電気経路との間を接続する第1コンデンサと、前記開閉スイッチよりも前記第2インバータ側において、前記第1電気経路と前記第2電気経路との間を接続する第2コンデンサと、を備える。
【0008】
第1の手段では、第1コンデンサに加えて第2コンデンサが設けられている。第2コンデンサは、開閉スイッチよりも第2インバータ側において第1電気経路と第2電気経路との間を接続している。そのため、第2上アームスイッチ及び第2下アームスイッチのスイッチング動作により発生するサージ・エネルギは、第2コンデンサに吸収される。したがって、過大なサージ電圧の発生を抑制できる。
【0009】
第2の手段では、前記開閉スイッチは、第1開閉スイッチであり、前記第2コンデンサに直列接続された第2開閉スイッチと、前記第1開閉スイッチ及び前記第2開閉スイッチをオンオフする制御装置と、を備え、前記第2コンデンサ及び前記第2開閉スイッチの直列接続体が前記第1電気経路と前記第2電気経路との間に接続されており、前記制御装置は、前記第1開閉スイッチのオン期間に前記第2開閉スイッチをオンし、前記第1開閉スイッチのオフ期間に前記第2開閉スイッチをオフする。
【0010】
第2の手段では、第1電気経路と第2電気経路との間において、第2コンデンサと直列接続された第2開閉スイッチが設けられている。そして、第1開閉スイッチのオン期間に第2開閉スイッチがオンされ、第1開閉スイッチのオフ期間に第2開閉スイッチがオフされるように、第2開閉スイッチが制御される。第1開閉スイッチのオン期間に第2開閉スイッチがオンされることで、第2上アームスイッチ及び第2下アームスイッチのスイッチング動作により発生するサージ・エネルギを、第2コンデンサに吸収させることができ、過大なサージ電圧の発生を抑制できる。また、第1開閉スイッチのオフ期間に第2開閉スイッチがオフされることで、第2コンデンサが設けられた場合でも、第2インバータの全ての相において、第2上アームスイッチ及び第2下アームスイッチのうち第1開閉スイッチが設けられた電気経路と接続する方をオン固定し、第1開閉スイッチが設けられた電気経路と接続しない方をオフ固定する方式の回転電機の駆動を適正に実施することができる。
【0011】
第3の手段では、前記電機子巻線に流れる電流が閾値よりも大きいか否かを判定する電流判定部を備え、前記制御装置は、前記電流判定部により前記閾値よりも大きいと判定されたことを条件に、前記第2開閉スイッチをオンする。
【0012】
電機子巻線に流れる電流が閾値よりも大きい場合には、第2上アームスイッチ及び第2下アームスイッチのスイッチング動作により発生するサージ・エネルギも大きくなる。この結果、発生するサージ電圧も大きくなり、第2開閉スイッチをオンする必要がある。
【0013】
一方、電機子巻線に流れる電流が閾値以下である場合には、発生するサージ電圧も小さくなり、第2開閉スイッチをオンする必要がない。第3の手段では、閾値よりも大きいと判定された場合にのみ第2開閉スイッチがオンされ、閾値以下と判定された場合には第2開閉スイッチがオフされるため、回転電機システムの高いシステム効率を維持できる。
【0014】
第4の手段では、前記制御装置は、前記回転電機が高回転駆動状態であるという第1条件と、前記回転電機が高トルク駆動状態であるという第2条件との少なくとも一方を満たす場合に、前記第1開閉スイッチをオンし、前記第1条件及び前記第2条件の両方を満たさない場合に、前記第1開閉スイッチをオフする。
【0015】
回転電機が高回転駆動状態と高トルク駆動状態との少なくとも一方の駆動状態である場合には、第1開閉スイッチをオンし、回転電機の電機子巻線に比較的大きな電流を流すことが多いが、例えば高回転低トルク状態の場合は、電機子巻線に流れる電流が閾値以下となることがある。この場合に、第2開閉スイッチがオンされると、第2コンデンサが作用することでシステム損失が増加する。第4の手段では、第1開閉スイッチがオンであっても、電機子巻線に流れる電流が閾値以下と判定された場合には、第2開閉スイッチがオフされる。そのため、例えば高回転低トルク状態において回転電機の損失が、第2コンデンサの有無により変化せず、高いシステム効率を維持できる。
【0016】
第5の手段では、前記第2インバータの耐圧値は、前記第1インバータの耐圧値以下である。
【0017】
第1コンデンサのみが設けられ、第2コンデンサが設けられていない回転電機システムでは、第1電気経路と第2電気経路との少なくとも一方において、開閉スイッチが設けられた部分のインダクタンスにより、第2インバータのスイッチング動作により発生するサージ電圧が第1インバータのスイッチング動作により発生するサージ電圧よりも大きくなる。そのため、第2インバータの耐圧値を第1インバータの耐圧値よりも大きくする必要があり、第2インバータの耐圧値の増加により回転電機システムの製造コストが増加する。第5の手段では、第1コンデンサに加えて第2コンデンサが設けられており、第2インバータのスイッチング動作により発生するサージ電圧が第1インバータのスイッチング動作により発生するサージ電圧と同じか、それよりも小さくなるように構成されている。そのため、第2インバータの耐圧値を第1インバータの耐圧値以下とすることができ、回転電機システムの製造コストの増加を抑制できる。
【0018】
第6の手段では、前記第1上アームスイッチと前記第2上アームスイッチとは、同一仕様のスイッチング素子であり、前記第1下アームスイッチと前記第2下アームスイッチとは、同一仕様のスイッチング素子である。
【0019】
第6の手段では、第1上アームスイッチと第2上アームスイッチとが、同一仕様のスイッチング素子となっている。ここで、同一仕様のスイッチング素子とは、耐圧値や定格電流などの電気的特性が等しいことを意味し、例えば製造元や型番が等しいことを意味する。これにより、回転電機システムの製造コストを低減できる。第1下アームスイッチと第2下アームスイッチについても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態の回転電機システムの全体構成図。
図2】回転電機の電気角速度と出力トルクとの関係を示す図。
図3】スター結線駆動の所定状態における相電流の電流経路を示す図。
図4】オープン結線駆動の所定状態における相電流の電流経路を示す図。
図5】第1インバータの上アームをオンからオフに切り替える場合のサージ電圧に寄与する電気経路を示す図。
図6】比較例において第2インバータの上アームをオンからオフに切り替える場合のサージ電圧に寄与する電気経路を示す図。
図7】本実施形態において第2インバータの上アームをオンからオフに切り替える場合のサージ電圧に寄与する電気経路を示す図。
図8】各インバータを含む閉回路の合成インダクタンスを示す図。
図9】第1実施形態の変形例の回転電機システムの全体構成図。
図10】第2実施形態の回転電機システムの全体構成図。
図11】第2実施形態の切替処理の手順を示すフローチャート。
図12】第3実施形態の切替処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る回転電機システムを、車載の回転電機システム100として具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る回転電機システム100は、回転電機10と、第1インバータ20と、第2インバータ30と、蓄電装置としてのバッテリ40と、回転電機10を制御対象とする制御装置50と、を備えている。
【0023】
回転電機10は、力行駆動及び回生駆動の機能を有する。回転電機10は、バッテリ40との間で電力の入出力を行うものであり、力行時には、バッテリ40から供給される電力により車両に推進力を付与し、回生時には、車両の減速エネルギを用いて発電を行い、バッテリ40に電力を出力する。
【0024】
回転電機10は、ロータ11とステータ13とを備えている。ロータ11には、界磁を行う永久磁石12が設けられている。つまり、回転電機10は、永久磁石界磁型回転電機である。永久磁石12は、例えばネオジム磁石やフェライト磁石である。
【0025】
ステータ13には、オープン型の3相(U相、V相、W相)の巻線14が設けられている。回転電機10のロータ11は、車両の駆動輪と動力伝達が可能なように接続されている。なお、本実施形態において、巻線14が「電機子巻線」に相当する。
【0026】
各相の巻線14の第1端は、第1インバータ20を介してバッテリ40に接続されている。バッテリ40は、充放電可能な蓄電池であり、例えば複数のリチウムイオン蓄電池が直列接続された組電池である。なお、バッテリ40は、他の種類の蓄電池であってもよい。
【0027】
第1インバータ20は、高電位側のスイッチング素子である第1上アームスイッチ22(22A,22B,22C)、及び低電位側のスイッチング素子である第1下アームスイッチ23(23A,23B,23C)の直列接続体が、並列に接続されて構成されている。なお、本実施形態では、スイッチ22,23として、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、より具体的にはIGBTが用いられている。各相において、第1上アームスイッチ22のエミッタ端子及び第1下アームスイッチ23のコレクタ端子には、巻線14の第1端が接続されている。スイッチ22,23には、フリーホイールダイオードであるダイオード24が逆並列接続されている。なお、本実施形態において、コレクタ端子が「高電位側端子」に相当し、エミッタ端子が「低電位側端子」に相当する。
【0028】
第2インバータ30は、高電位側のスイッチング素子である第2上アームスイッチ32(32A,32B,32C)、及び低電位側のスイッチング素子である第2下アームスイッチ33(33A,33B,33C)の直列接続体が、並列に接続されて構成されている。なお、本実施形態では、スイッチ32,33として、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、より具体的にはIGBTが用いられている。各相において、第2上アームスイッチ32のエミッタ端子及び第2下アームスイッチ33のコレクタ端子には、巻線14の第2端が接続されている。スイッチ32,33には、フリーホイールダイオードであるダイオード34が逆並列接続されている。
【0029】
バッテリ40の正極側、第1上アームスイッチ22のコレクタ端子及び第2上アームスイッチ32のコレクタ端子は、第1電気経路としての電源線CEにより接続されている。また、バッテリ40の負極側、第1下アームスイッチ23のエミッタ端子及び第2下アームスイッチ33のエミッタ端子は、第2電気経路としての接地線CGにより接続されている。電源線CE及び接地線CGは、例えばバスバーで構成されている。
【0030】
具体的には、バッテリ40の正極側、第1上アームスイッチ22のコレクタ端子及び第2上アームスイッチ32のコレクタ端子は、この順に電源線CEに接続されている。そのため、第2上アームスイッチ32のコレクタ端子は、電源線CEと第1インバータ20との接続点よりもバッテリ40とは反対側において、電源線CEに接続されている。
【0031】
電源線CEにおいて、第1インバータ20との接続点と第2インバータ30との接続点との間には、開閉スイッチ60が設けられている。本実施形態では、開閉スイッチ60として、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、より具体的にはIGBTが用いられている。開閉スイッチ60には、フリーホイールダイオードであるダイオード62が逆並列接続されている。ダイオード62は、第2インバータ30から第1インバータ20へと向かう向きが順方向となるように、電源線CEに接続されている。
【0032】
また、電源線CEと接地線CGとは、第1コンデンサ25により接続されている。第1コンデンサ25は、開閉スイッチ60よりも第1インバータ20側、詳細には第1インバータ20よりもバッテリ40側において、電源線CEと接地線CGとの間を接続している。
【0033】
制御装置50は、CPU、ROM、RAM及びフラッシュメモリ等からなる周知のマイクロコンピュータを備えている。制御装置50は、各種信号を取得し、取得した情報に基づき、各種制御を実施する。
【0034】
具体的には、制御装置50は、回転電機10の駆動時に、第1コンデンサ25の電圧VBを検出する電圧センサ51、回転電機10の相電流IMを検出する相電流センサ53、及び回転電機10の電気角θを検出する回転角センサ54等から検出値を取得する。本実施形態では、相電流センサ53として、U相の巻線14に流れる相電流を検出するU相電流センサ53U、及びV相の巻線14に流れる相電流を検出するV相電流センサ53Vが設けられている。制御装置50は、取得した検出値に基づき、回転電機10の制御量をその指令値に制御すべく、第1インバータ20及び第2インバータ30を制御する。本実施形態において、制御量は出力トルクTEである。
【0035】
具体的には、制御装置50は、第1インバータ20の制御において、デッドタイムを挟みつつスイッチ22,23を交互にオンとすべく、スイッチ22,23それぞれに対応する第1駆動信号SG1を、スイッチ22,23に出力する。第1駆動信号SG1は、スイッチ22,23をオンとするオン指令と、オフとするオフ指令とのいずれかをとる。同様に、制御装置50は、第2インバータ30の制御において、デッドタイムを挟みつつスイッチ32,33を交互にオンとすべく、スイッチ32,33それぞれに対応する第2駆動信号SG2を、スイッチ32,33に出力する。
【0036】
また、制御装置50は、取得した検出値に基づいて、開閉スイッチ60のオンオフを切り替えるべく、切替信号SCを生成し、生成した切替信号SCを開閉スイッチ60に出力する。
【0037】
そして、制御装置50は、第1駆動信号SG1、第2駆動信号SG2及び切替信号SCを用いて、回転電機10の駆動を制御する。回転電機10の駆動は、例えばスター結線駆動やオープン結線駆動である。
【0038】
図2には、電気角θの時間微分値としての電気角速度ωと出力トルクTEとの相関図において、スター結線駆動が実施可能な第1駆動範囲HA、及びオープン結線駆動が実施可能な第2駆動範囲HBが示されている。図2に破線で示すように、第1駆動範囲HAは、電気角速度ωが閾値角速度ωthよりも低く、かつ出力トルクTEが閾値トルクTthよりも低い範囲に設定されている。また、図2に実線で示すように、第2駆動範囲HBは、第1駆動範囲HAよりも高電気角速度側、または高出力トルク側の範囲に設定されている。
【0039】
回転電機10の電気角速度ω及び出力トルクTEが第1駆動範囲HAに含まれる場合、回転電機10はスター結線駆動される。具体的には図3に示すように、開閉スイッチ60がオフされる。また、第1インバータ20がPWM制御される。PWM制御では、回転電機10への電圧指令値と、三角波信号等のキャリア信号との大小比較に基づいて、第1インバータ20に含まれるスイッチ22,23のオンオフが制御される。図3では、U相第1上アームスイッチ22A及びV,W相第1下アームスイッチ23B,23Cがオンされており、その他のスイッチがオフされている状態が示されている。なお、スター結線駆動における第1インバータ20の制御方式はPWM制御に限られず、過変調制御、矩形制御等であっても良い。
【0040】
さらに、第2インバータ30に含まれるスイッチ32,33のうち、開閉スイッチ60が設けられた側の第2上アームスイッチ32がオンに維持され、開閉スイッチ60が設けられていない側の第2下アームスイッチ33がオフに維持される。これにより、第1インバータ20及び第2インバータ30には、矢印YAに示す経路で相電流IMが流れるとともに、第2上アームスイッチ32のコレクタ端子に接続される電源線CEが中性点として機能する。なお、図3では、第1コンデンサ25、制御装置50及び各種センサ51,53,54の記載が省略されている。図4についても同様である。
【0041】
一方、回転電機10の電気角速度ω及び出力トルクTEが第2駆動範囲HBに含まれる場合、回転電機10はオープン結線駆動される。具体的には図4に示すように、開閉スイッチ60がオンされる。また、第1インバータ20及び第2インバータ30がPWM制御される。図4では、U相第1上アームスイッチ22A、V,W相第1下アームスイッチ23B,23C、U相第2下アームスイッチ33A、及びV,W相第2上アームスイッチ32B,32Cがオンされており、その他のスイッチがオフされている状態が示されている。これにより、第1インバータ20及び第2インバータ30には、矢印YBに示す経路で相電流IMが流れる。なお、オープン結線駆動における第1インバータ20及び第2インバータ30の制御方式はPWM制御に限られず、過変調制御、矩形制御等であっても良い。
【0042】
回転電機システム100は、更に第2コンデンサ35を備えている。第2コンデンサ35は、開閉スイッチ60よりも第2インバータ30側、詳細には第2インバータ30よりも開閉スイッチ60とは反対側において、電源線CEと接地線CGとの間を接続している。本実施形態では、第2コンデンサ35の容量は、第1コンデンサ25の容量よりも小さい容量に設定されている。なお、第2コンデンサ35が設けられる理由については後述する。
【0043】
スター結線駆動及びオープン結線駆動では、第1インバータ20のスイッチ22,23のスイッチング動作によりサージ・エネルギが発生する。図5を用いて、第1上アームスイッチ22をオンからオフに切り替える時に第1上アームスイッチ22に発生するサージ電圧について説明する。なお、図5では、理解を容易とするために、回転電機10、第1インバータ20及び第2インバータ30において、1相分の巻線14、スイッチ22,23,32,33のみが記載されている。また、図5では、制御装置50及び各種センサ51,53,54の記載が省略されている。図6図7についても同様である。
【0044】
図5図7には、回転電機システム100における各所のインダクタンスLA~LEが記載されている。図5を例に説明すると、第1インダクタンスLAは、電源線CEのうち第1インバータ20よりも第1コンデンサ25側の部分のインダクタンス(より具体的には、電源線CEのうち第1コンデンサ25との接続点と第1インバータ20との接続点との間の部分のインダクタンス)である。また、第2インダクタンスLBは、第1上アームスイッチ22、第1下アームスイッチ23、及びスイッチ22,23を接続する配線のインダクタンスである。第3インダクタンスLCは、電源線CEのうち第1インバータ20と第2インバータ30との間の部分のインダクタンスである。そのため、第3インダクタンスLCには、電源線CEのうち開閉スイッチ60が設けられた部分のインダクタンスが含まれる。第4インダクタンスLDは、電源線CEのうち第2インバータ30から第2コンデンサ35までの部分のインダクタンスである。また、第5インダクタンスLEは、第2上アームスイッチ32、第2下アームスイッチ33、及びスイッチ32,33を接続する配線のインダクタンスである。
【0045】
図5では、第1上アームスイッチ22がオンからオフに切り替わり、第1下アームスイッチ23がオフからオンに切り替わる際、つまり、矢印YCに示すように、第1上アームスイッチ22から巻線14に流れていた相電流IMが減少する際に、第1上アームスイッチ22に発生するサージ電圧について説明する。
【0046】
この際、第1,第2インダクタンスLA,LBには、矢印YCに示す向きの相電流IMを増加させようとするサージ・エネルギが発生し、サージ・エネルギは、第1コンデンサ25に吸収される(図5矢印YD参照)。このサージ・エネルギにより、第1上アームスイッチ22、第1下アームスイッチ23、及び第1コンデンサ25を含む第1閉回路CAに第1サージ電圧VS1が発生する。第1サージ電圧VS1は、第1閉回路CAの第1合成インダクタンスL1と、第1上アームスイッチ22を流れる電流iの時間変化率であるdi/dtを用いて、(式1)のように表される。
【0047】
VS1=L1・(di/dt)・・・(式1)
第1合成インダクタンスL1は、第1,第2インダクタンスLA,LBの和である。また、図5に示すように、第1閉回路CAには、電源線CEのうち開閉スイッチ60が設けられた部分が含まれない。そのため、第1閉回路CAの第1合成インダクタンスL1は閾値インダクタンスLthよりも小さく(図8参照)、第1閉回路CAでは、過大な第1サージ電圧VS1の発生が抑制されている。
【0048】
ところで、オープン結線駆動では、第1インバータ20のスイッチ22,23だけでなく、第2インバータ30のスイッチ32,33もスイッチング動作を行う。そのため、スイッチ32,33のスイッチング動作によりサージ・エネルギが発生する。比較例を示す図6を用いて、第2上アームスイッチ32をオンからオフに切り替える時に第2上アームスイッチ32に発生するサージ電圧について説明する。図6に示す比較例は、サージ・エネルギを吸収するコンデンサとして、第1コンデンサ25のみが設けられた回転電機システムである。
【0049】
図6では、第2上アームスイッチ32がオンからオフに切り替わり、第2下アームスイッチ33がオフからオンに切り替わる際、つまり、矢印YEに示すように、第2上アームスイッチ32から巻線14に流れていた相電流IMが減少する際に、第2上アームスイッチ32に発生するサージ電圧について説明する。
【0050】
この際、第1,第3,第5インダクタンスLA,LC,LEには、矢印YEに示す向きの相電流IMを増加させようとするサージ・エネルギが発生する。図6に示すように、回転電機システム100に第1コンデンサ25のみが設けられている比較例では、サージ・エネルギが、第1コンデンサ25に吸収される(図6矢印YF参照)。このサージ・エネルギにより、第1コンデンサ25、第2上アームスイッチ32、第2下アームスイッチ33、及び開閉スイッチ60を含む第2閉回路CBに第2サージ電圧VS2が発生する。第2サージ電圧VS2は、第2閉回路CBの第2合成インダクタンスL2と、第2上アームスイッチ32を流れる電流iの時間変化率di/dtを用いて、(式2)のように表される。
【0051】
VS2=L2・(di/dt)・・・(式2)
図6に示すように、第2閉回路CBには、開閉スイッチ60及び電源線CEのうち開閉スイッチ60が設けられた部分が含まれている。比較例における第2合成インダクタンスL2は第1,第3,第5インダクタンスLA,LC,LEの和であり、閾値インダクタンスLthよりも大きい(図8参照)。これは、本実施形態において、第2インダクタンスLBと第5インダクタンスLEとは同等であり、第3インダクタンスLCの分だけ、第2合成インダクタンスL2が第1合成インダクタンスL1よりも大きくなるためである。この第3インダクタンスLCには、開閉スイッチ60自身のインダクタンス、及び開閉スイッチ60と電源線CEとを接続する経路のインダクタンスが含まれている。そのため、比較例の第2閉回路CBでは、過大な第2サージ電圧VS2が発生してしまう。したがって、比較例の回転電機システムでは、第2サージ電圧VS2により第2インバータ30が過電圧故障しないように、第2インバータ30の第2耐圧値VB2を第1インバータ20の第1耐圧値VB1よりも大きくする必要があり、回転電機システムの製造コストが増加する。
【0052】
そこで、本実施形態では、回転電機システム100に第2コンデンサ35が設けられている。図7を用いて、本実施形態の回転電機システム100において、第2上アームスイッチ32をオンからオフに切り替える時に第2上アームスイッチ32に発生するサージ電圧について説明する。図7では、図6と同様に、第2上アームスイッチ32がオンからオフに切り替わり、第2下アームスイッチ33がオフからオンに切り替わる際、つまり、矢印YEに示すように、第2上アームスイッチ32から巻線14に流れていた相電流IMが減少する際に、第2上アームスイッチ32に発生するサージ電圧について説明する。
【0053】
この際、第4,第5インダクタンスLD,LEには、矢印YEに示す向きの相電流IMを増加させようとするサージ・エネルギが発生する。図7に示すように、回転電機システム100に第2コンデンサ35が設けられている本実施形態では、サージ・エネルギが、第2コンデンサ35に吸収される(図7矢印YG参照)。このサージ・エネルギにより、第2上アームスイッチ32、第2下アームスイッチ33、及び第2コンデンサ35を含む第3閉回路CDに第3サージ電圧VS3が発生する。第3サージ電圧VS3は、第3合成インダクタンスL3と、第2上アームスイッチ32を流れる電流iの時間変化率di/dtを用いて、(式3)のように表される。
【0054】
VS3=L3・(di/dt)・・・(式3)
図7に示すように、第3閉回路CDには、電源線CEのうち開閉スイッチ60が設けられた部分が含まれない。具体的には、第3閉回路CDの第3合成インダクタンスL3は第4,第5インダクタンスLD,LEの和であり、閾値インダクタンスLthよりも小さく(図8参照)、過大な第3サージ電圧VS3の発生が抑制されている。
【0055】
本実施形態では、第1インダクタンスLAと第4インダクタンスLDとは同等である。そのため、図8に示すように、第3合成インダクタンスL3は、第1合成インダクタンスL1と同等となる。そのため、本実施形態の回転電機システム100では、第2インバータ30の第2耐圧値VB2が、第1インバータ20の第1耐圧値VB1と同じ値に設定されている。
【0056】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0057】
本実施形態では、電源線CEにおいて、開閉スイッチ60が、第1インバータ20との接続点と第2インバータ30との接続点との間に設けられている。また、第1コンデンサ25が、開閉スイッチ60よりも第1インバータ20側において電源線CEと接地線CGとの間を接続している。本実施形態では、第1コンデンサ25に加えて第2コンデンサ35が設けられており、第2コンデンサ35は、開閉スイッチ60よりも第2インバータ30側において電源線CEと接地線CGとの間を接続している。そのため、スイッチ22,23のスイッチング動作により発生するサージ・エネルギは、第1コンデンサ25に吸収される。また、スイッチ32,33のスイッチング動作により発生するサージ・エネルギは、第2コンデンサ35に吸収される。そのため、過大なサージ電圧の発生を抑制できる。
【0058】
第1コンデンサ25のみが設けられ、第2コンデンサ35が設けられていない比較例の回転電機システムでは、電源線CEのうち開閉スイッチ60が設けられた部分の第3インダクタンスLCにより、第2インバータ30のスイッチング動作により発生する第2サージ電圧VS2が、第1インバータ20のスイッチング動作により発生する第1サージ電圧VS1よりも大きくなる。そのため、第2インバータ30の第2耐圧値VB2を第1インバータ20の第1耐圧値VB1よりも大きくする必要があり、第2耐圧値VB2の増加により回転電機システムの製造コストが増加する。
【0059】
これに対し、本実施形態では、第1コンデンサ25に加えて第2コンデンサ35が設けられており、第2インバータ30のスイッチング動作により発生する第3サージ電圧VS3が、第1インバータ20のスイッチング動作により発生する第1サージ電圧VS1と同等となるように構成されている。そのため、第2インバータ30の第2耐圧値VB2を第1インバータ20の第1耐圧値VB1と同じ値とすることができ、回転電機システム100の製造コストの増加を抑制できる。
【0060】
第2インバータ30の第2耐圧値VB2を第1インバータ20の第1耐圧値VB1と同じ値にする場合には、第1インバータ20と第2インバータ30とを同一仕様のスイッチング素子とすることができる。具体的には、第1上アームスイッチ22と第2上アームスイッチ32とを、同一仕様のスイッチング素子とすることができるとともに、第1下アームスイッチ23と第2下アームスイッチ33とを、同一仕様のスイッチング素子とすることができる。これにより、回転電機システム100の製造コストを低減できる。
【0061】
(第1実施形態の変形例)
図9に示すように、第2コンデンサ35が、第2インバータ30の各スイッチ32、33に対して個別に設けられていてもよい。この場合、個別に設けられた第2コンデンサ35は、各スイッチ32,33、及び各スイッチ32,33に逆並列接続されているダイオード34に対して並列接続されている。
【0062】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図10図11を参照しつつ説明する。図10において、先の図1に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付して説明を省略する。
【0063】
本実施形態では、第2コンデンサ35に直列接続された開閉スイッチ64が設けられている点で、第1実施形態と異なる。本実施形態では、開閉スイッチ64として、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、より具体的にはIGBTが用いられている。開閉スイッチ64には、フリーホイールダイオードであるダイオード66が逆並列接続されている。以下では、区別のために、開閉スイッチ60を第1開閉スイッチ60と呼び、開閉スイッチ64を第2開閉スイッチ64と呼ぶ。
【0064】
第2コンデンサ35は、接続線CNにより電源線CEと接地線CGとの間に接続されており、第2開閉スイッチ64は、この接続線CNにおいて第2コンデンサ35に直列接続されている。具体的には、第2開閉スイッチ64は、接続線CNにおいて第2コンデンサ35よりも低電位側に接続されている。
【0065】
制御装置50は、回転電機10の電気角速度ω及び出力トルクTEに基づいて、第2開閉スイッチ64のオンオフを切り替えるべく、切替信号SCを生成し、生成した切替信号SCを第2開閉スイッチ64に出力する。以下では、区別のために、第1開閉スイッチ60の切替信号SCを第1切替信号SC1と呼び、第2開閉スイッチ64の切替信号SCを第2切替信号SC2と呼ぶ。
【0066】
そして、制御装置50は、第1駆動信号SG1、第2駆動信号SG2、第1切替信号SC1及び第2切替信号SC2を用いて、回転電機10の駆動を制御する。この際に、制御装置50は、第1切替信号SC1及び第2切替信号SC2を切り替える切替処理を実施する。
【0067】
図11に、本実施形態の切替処理のフローチャートを示す。制御装置50は、回転電機10の駆動時に、所定の制御周期毎に切替処理を繰り返し実施する。
【0068】
切替処理を開始すると、まずステップS10において、回転電機10の駆動がオープン結線駆動であるか否かを判定する。制御装置50の記憶部55(図10参照)には、図2に示す第1駆動範囲HA及び第2駆動範囲HBを特定する情報が記憶されており、制御装置50は、この情報と、回転電機10の電気角速度ω及び出力トルクTEとに基づいて、回転電機10の駆動がオープン結線駆動であるか否かを判定する。
【0069】
回転電機10の駆動がオープン結線駆動である場合、ステップS10で肯定判定する。この場合、ステップS12において、第1開閉スイッチ60をオンするとともに、第2開閉スイッチ64をオンし、切替処理を終了する。そのため、第1開閉スイッチ60がオンされるオン期間において、第2開閉スイッチ64がオンされる。
【0070】
また、回転電機10の駆動がスター結線駆動である場合、ステップS10で否定判定する。この場合、ステップS14において、第1開閉スイッチ60をオフするとともに、第2開閉スイッチ64をオフし、切替処理を終了する。そのため、第1開閉スイッチ60がオフされるオフ期間において、第2開閉スイッチ64がオフされる。
【0071】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0072】
回転電機10の駆動がオープン結線駆動である場合、第1開閉スイッチ60がオンされる。本実施形態では、この第1開閉スイッチ60のオン期間に第2開閉スイッチ64がオンされる。これにより、スイッチ32,33のスイッチング動作により発生するサージ・エネルギを第2コンデンサ35に吸収させることができ、過大なサージ電圧の発生を抑制できる。
【0073】
また、回転電機10の駆動がスター結線駆動である場合、第1開閉スイッチ60がオフされる。本実施形態では、この第1開閉スイッチ60のオフ期間に第2開閉スイッチ64がオフされる。回転電機10の駆動がスター結線駆動である場合、第2上アームスイッチ32はオン固定され、第2下アームスイッチ33はオフ固定されるため、サージ・エネルギが発生せず、サージ・エネルギを吸収させるために第2開閉スイッチ64をオンする必要はない。一方、スター結線駆動において第2開閉スイッチ64がオンされると、中性点として機能する第2上アームスイッチ32のコレクタ端子に接続される電源線CEの電位が変動し、これにより回転電機10の駆動が不安定となる。本実施形態では、回転電機10の駆動がスター結線駆動である場合に第2開閉スイッチ64がオフされるので、回転電機10のスター結線駆動を適正に実施することができる。
【0074】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、第2実施形態との相違点を中心に図12を参照しつつ説明する。
【0075】
本実施形態では、切替処理において、相電流IMが閾値電流Ithよりも大きいか否かを判定する点で、第2実施形態と異なる。
【0076】
続いて、図12に、本実施形態の切替処理のフローチャートを示す。図12において、先の図11に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0077】
本実施形態の切替処理では、ステップS10で肯定判定すると、ステップS20において、相電流センサ53を用いて取得された相電流IMが閾値電流Ithよりも大きいか否かを判定する。なお、本実施形態において、ステップS20の処理が「電流判定部」に相当する。
【0078】
ステップS20で否定判定すると、つまり相電流IMが閾値電流Ith以下であると判定された場合に、ステップS22において、第1開閉スイッチ60をオンするとともに、第2開閉スイッチ64をオフし、切替処理を終了する。一方、ステップS20で肯定判定すると、つまり相電流IMが閾値電流Ithよりも大きいと判定された場合に、ステップS12に進み、第2開閉スイッチ64をオンする。つまり、本実施形態の切替処理では、相電流IMが閾値電流Ithよりも大きいと判定されたことを条件に、第2開閉スイッチ64をオンする。
【0079】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0080】
本実施形態では、第1開閉スイッチ60に流れる相電流IMに基づいて第2開閉スイッチ64のオンオフを切り替える。(式3)に示すように、第2インバータ30に発生するサージ電圧は、第2上アームスイッチ32又は第2下アームスイッチ33を流れる電流iの時間変化率di/dtに比例する。この時間変化率di/dtは、第1開閉スイッチ60に流れる相電流IMにより変動し、相電流IMが大きいほど時間変化率di/dtが大きくなる。本実施形態では、第1開閉スイッチ60に流れる相電流IMに基づいて第2開閉スイッチ64のオンオフを切り替えるため、過大なサージ電圧の発生を適正に抑制できる。
【0081】
相電流IMが閾値電流Ithよりも大きい場合には、スイッチ32,33のスイッチング状態の切り替え時に発生するサージ・エネルギも大きくなる。そのため、発生するサージ電圧も大きくなり、第2開閉スイッチ64をオンする必要がある。
【0082】
相電流IMが閾値電流Ith以下である場合には、発生するサージ電圧も小さくなり、第2開閉スイッチ64をオンする必要がない。この場合に、第2開閉スイッチ64がオンされると、第2コンデンサ35が作用することでシステム効率が低下する。本実施形態では、閾値電流Ith以下と判定された場合には、第2開閉スイッチ64がオフされるため、回転電機システム100の高いシステム効率を維持できる。
【0083】
本実施形態では、回転電機10の電気角速度ω及び出力トルクTEが第2駆動範囲HBに含まれる場合、つまり回転電機10が高回転駆動状態であるという第1条件と、回転電機10が高トルク駆動状態であるという第2条件との少なくとも一方を満たす場合に、第1開閉スイッチ60がオンされ、オープン結線駆動が実施可能となる。しかし、回転電機10がオープン結線駆動されていても、例えば高回転低トルク状態の場合は、第1開閉スイッチ60に流れる相電流IMが閾値電流Ith以下となることがある。この場合に、第2開閉スイッチ64がオンされると、第2コンデンサ35が作用することで損失が増加し、回転電機システム100のシステム効率が低下する。
【0084】
本実施形態では、回転電機10がオープン結線駆動されている場合でも、閾値電流Ith以下と判定された場合には、第2開閉スイッチ64がオフされる。そのため、第2コンデンサ35が作用する際の損失増加を必要最小限に止め、回転電機システム100の高いシステム効率を維持できる。
【0085】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0086】
・蓄電装置は、バッテリ40に限られず、キャパシタであってもよい。
【0087】
・回転電機10としては、3相のものに限らず、2相のものまたは4相以上のものであってもよい。
【0088】
・第1インバータ20が備えるスイッチとしては、IGBTに限らず、例えばMOSFETであってもよい。この場合、スイッチに逆接続されるダイオード24としてMOSFETのボディダイオードを用いることができ、MOSFETとは別にフリーホイールダイオードを用いる必要がない。なお、第2インバータ30、第1開閉スイッチ60及び第2開閉スイッチ64についても同様である。
【0089】
・開閉スイッチ60が設けられる電気経路は、電源線CEに限られず、接地線CGであってもよい。また、開閉スイッチ60が、電源線CEと接地線CGとの両方に設けられてもよい。接地線CGに開閉スイッチ60が設けられる場合には、以下のように開閉スイッチ60が設けられればよい。具体的には、バッテリ40の負極側、第1下アームスイッチ23のエミッタ端子及び第2下アームスイッチ33のエミッタ端子は、この順に接地線CGに接続されている。つまり、第2下アームスイッチ33のエミッタ端子は、接地線CGと第1インバータ20との接続点よりもバッテリ40とは反対側において、接地線CGに接続されている。この場合に、接地線CGにおいて、第1インバータ20との接続点と第2インバータ30との接続点との間に、開閉スイッチ60が設けられればよい。
【0090】
・例えば第4インダクタンスLDが第1インダクタンスLAよりも小さく設定されることで、第3合成インダクタンスL3が第1合成インダクタンスL1よりも小さく設定されてもよい。この場合、第2インバータ30の第2耐圧値VB2を、第1インバータ20の第1耐圧値VB1よりも小さく設定することができ、回転電機システム100の製造コストを低減できる。
【0091】
・接続線CNにおいて、第2開閉スイッチ64が第2コンデンサ35よりも高電位側に接続されてもよい。
【符号の説明】
【0092】
10…回転電機、14…巻線、20…第1インバータ、22…第1上アームスイッチ、23…第1下アームスイッチ、25…第1コンデンサ、30…第2インバータ、32…第2上アームスイッチ、33…第2下アームスイッチ、35…第2コンデンサ、50…制御装置、60…開閉スイッチ、CE…電源線、CG…接地線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12