(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】光学式記憶媒体の位置決定方法および印刷装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/34 20060101AFI20240105BHJP
B41J 29/38 20060101ALN20240105BHJP
B41J 3/407 20060101ALN20240105BHJP
【FI】
G01D5/34 R
B41J29/38
B41J3/407
(21)【出願番号】P 2020026130
(22)【出願日】2020-02-19
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北澤 利幸
(72)【発明者】
【氏名】大串 卓広
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-138431(JP,A)
【文献】特開2020-19223(JP,A)
【文献】特開昭61-234304(JP,A)
【文献】特開昭61-187614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26-5/38
B41J 29/00-29/70
B41J 3/01-3/54,3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発光する発光部と光を受光する受光部とを有し
、前記受光部が受光した光量に応じた出力値を出力する検出手段と、前記発光部からの光
を反射す
る反射部を有し
、記憶媒体を保持する保持手段と、前記保持手段と前
記検出手段とを相対的に移動する移動手段と、
前記移動手段によって前記保持手段と前記検出手段とを相対的に移動させ、記憶媒体の位置を検出する検出処理を行う制御手段と、を備える印刷装置であって、
前記制御手段は、前記保持手段上の光量調整部において前記発光部からの光を反射させたときの前記検出手段の出力値を調整する調整処理
を行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前
記反射部は、前記保持手段
が記憶媒体を保持した状態で
、記憶媒体の端部から所定距離の範囲内の前記保持手段上であり、平坦に形成された前記光量調整部を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前
記調整処理を前
記検出処理の前に行うことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前
記反射部は、前記保持手段に保持され
た記憶媒体の中心穴に対応する前記保持手段上に設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前
記検出処理では
、記憶媒体に対して前
記検出手段が第1方向へ移動しつ
つ記憶媒体の位置を検出する第1検出処理と、
記憶媒体に対して前
記検出手段が前記第1方向と交差する第2方向へ移動しつ
つ記憶媒体の位置を検出する第2検出処理と、
を行うことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第1検出処理と前記第2検出処理とでは、前
記反射部と
、記憶媒体の中心穴を形成する縁における2か所の端部と、に連続して前記発光部からの光を照射し、その反射光を前記受光部で受光することを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記調整処理では、前記受光部が受光することで得られた出力値が、所定値となるよう前記検出手段を調整し、
前
記検出手段は、前記所定値に基づいて設定された設定値に基づいて
、記憶媒体の位置を検出することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項8】
前
記調整処理では、前
記検出手段が受光することで検出した値を増幅する増幅率を調整することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項9】
前
記調整処理では、前
記検出手段の前記発光部へ供給される電流を調整することを特徴とする請求項8に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記光量調整部は、前
記反射部の中央に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項11】
前
記反射部は、複数の前記光量調整部を含んでいることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記保持手段は、前記保持手段の位置を検出するための複数の
前記反射部を備えていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記保持手段は、2つの前記反射部を備えていることを特徴とする請求項12に記載の印刷装置。
【請求項14】
前記保持手段は
、記憶媒体を収容可能な凹部と、前記凹部に収容され
た記憶媒体が当接する2つの突き当て部と
、記憶媒体を押圧する押圧部と、を備えていることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項15】
検出手段の発光部から光を発光し受光部で光を受光す
る検出工程と、前記発光部からの光
を反射す
る反射部を有した保持手段
で記憶媒体を保持する保持工程と、前記保持手段と前
記検出手段とを相対的に移動する移動工程と、
記憶媒体の位置を検出する検出処理を行う制御工程と、を有し
た記憶媒体の位置決定方法であって、
前記制御工程では、前記保持手段上の光量調整部において前記発光部からの光を反射させたときの前記検出工程における出力値を調整する調整処理を行うことを特徴とす
る記憶媒体の位置決定方法。
【請求項16】
前記反射部を、前記保持手段で記憶媒体を保持した状態で、記憶媒体の端部から所定距離の範囲内の前記保持手段上に設け、前記反射部には、平坦に形成された前記光量調整部を含めることを特徴とする請求項15に記載の記憶媒体の位置決定方法。
【請求項17】
前記調整処理を前記検出処理の前に行うことを特徴とする請求項15または16に記載の記憶媒体の位置決定方法。
【請求項18】
前記反射部を、前記保持手段に保持された記憶媒体の中心穴に対応する前記保持手段上に設けることを特徴とする請求項15ないし17のいずれか1項に記載の記憶媒体の位置決定方法。
【請求項19】
前記検出処理では、記憶媒体に対して前記検出手段が第1方向へ移動しつつ記憶媒体の位置を検出する第1検出処理と、
記憶媒体に対して前記検出手段が前記第1方向と交差する第2方向へ移動しつつ記憶媒体の位置を検出する第2検出処理と、
を行うことを特徴とする請求項18に記載の記憶媒体の位置決定方法。
【請求項20】
前記第1検出処理と前記第2検出処理とでは、前記反射部と、記憶媒体の中心穴を形成する縁における2か所の端部と、に連続して前記発光部からの光を照射し、その反射光を前記受光部で受光することを特徴とする請求項19に記載の記憶媒体の位置決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD-RやDVD-R等の光学式記憶媒体に印刷を行う際の光学式記憶媒体の位置決定方法および印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、光学式記憶媒体を搭載するトレイの複数の位置に光学式記憶媒体を囲むように位置検出用マーカを設け、そのうちの1つの位置検出用マーカに光を照射し、その反射光を光学センサで検出して閾値を算出する。そして、算出した閾値に基づいて、複数の位置の位置検出用マーカの位置検出を行うことで、光学式記憶媒体の位置検出を行っている。
【0003】
位置検出用マーカ(以下、単にマーカともいう)の汚れ方には、ばらつきが生じることがあり、閾値の設置に用いたマーカとその他のマーカとで汚れ方が異なり、反射率に違いが出る場合がある。そこで特許文献1では、最も特性が悪い(反射率が低い)マーカ用いて閾値の設定を行うとしている。これによって、経年変化でマーカの反射率が低下した場合でも安定した位置検出を可能にすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法では、光学式記憶媒体を囲むように複数の位置検出用マーカを設けており、その複数のマーカの中から位置検出用の閾値の設定に用いるマーカが決められる。特許文献1の場合、閾値の設定に用いるマーカと位置検出に用いるマーカとの位置が離れているものがある。閾値の設定に用いるマーカと位置検出に用いるマーカとの位置が離れている場合、経年変化によるマーカの汚れ方や表面状態が異なっていることが考えられる。その結果、特許文献1の方法では、閾値の設定に用いるマーカの位置(汚れ)に依存した閾値が設定される。このように閾値の設定に用いたマーカの汚れ方や表面状態に依存した閾値で、反射率や表面状態が異なるマーカの検出を行っても、精度よく位置検出を行うことができない虞がある。
【0006】
更に、特許文献1の方法ではマーカの位置から間接的にディスクの位置を検知することから、トレイに対してディスクの位置がずれている場合には、ディスク位置を検知することができない。その結果、印刷の位置ずれが生じる虞がある。
【0007】
よって本発明は、対象物の反射率の低下や、反射率にばらつきが生じた場合でも、対象物を精度よく検出することが可能であり、印刷の位置ずれを抑制することができる光学式記憶媒体の位置決定方法および印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのため本発明の印刷装置は、光を発光する発光部と光を受光する受光部とを有し、前記受光部が受光した光量に応じた出力値を出力する検出手段と、前記発光部からの光を反射する反射部を有し、記憶媒体を保持する保持手段と、前記保持手段と前記検出手段とを相対的に移動する移動手段と、前記移動手段によって前記保持手段と前記検出手段とを相対的に移動させ、記憶媒体の位置を検出する検出処理を行う制御手段と、を備える印刷装置であって、前記制御手段は、前記保持手段上の光量調整部において前記発光部からの光を反射させたときの前記検出手段の出力値を調整する調整処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、対象物の反射率の低下や、反射率にばらつきが生じた場合でも、精度よく対象物を検出することが可能であり、印刷の位置ずれを抑制することができる光学式記憶媒体の位置決定方法および印刷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】印刷装置で印刷される光ディスクを登載したトレイを示した図である。
【
図4】印刷装置における印刷動作を示したフローチャートである。
【
図5】光学センサの光量調整処理を示したフローチャートである。
【
図6】光学センサの受光時電圧レベル波形を示したグラフである。
【
図7】印刷装置における印刷動作を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。
【0012】
図1は、本実施形態を適用可能な印刷装置101の要部を示した概略図である。印刷装置101は、X方向である主走査方向に往復移動可能なキャリッジ104と、キャリッジ104に搭載された印刷ヘッド103と光学式検出手段である光学センサ112とを備えている。キャリッジ104の移動範囲の一方の端部に、プーリ付きキャリッジモータ105が配置され、他方の端部にアイドルプーリ106が配置され、これらにタイミングベルト107がかけられ、キャリッジ104とタイミングベルト107とが連結される。キャリッジモータ105を駆動することで、キャリッジ104は主走査方向に往復移動する。
【0013】
印刷装置101は、更に第1搬送ローラ109と第2搬送ローラ110とを備え、搬送モータ108の駆動により第1搬送ローラ109と第2搬送ローラ110とを回転させることで、印刷媒体102をY方向である搬送方向に搬送する。そして印刷装置101は、キャリッジ104の往復移動と、搬送方向に搬送される印刷媒体102の移動と、の相対的移動により印刷媒体102に印刷を行う。印刷中の印刷媒体102は、印刷ヘッド103と対向する位置に設けられたプラテン111によって支持されている。
【0014】
図2は、印刷装置101の制御系を示すブロック図である。ROM202には、ASIC201が動作するためのプログラムや印刷ヘッド103の制御に必要な各種テーブル等が格納されている。ASIC201は初期設定値もしくは光量調整結果により、光学センサ発光部204の電流量調整部203を制御する。光学センサ発光部204は、例えばLED、電流量調整部203は例えばLEDドライバである。光学センサ発光部204を対象物に照射し、対象物によって反射された光を光学センサ受光部205で検出する。光学センサ受光部205は、例えばフォトトランジスタである。
【0015】
本構成では光学センサ発光部204から発した光を対象物に照射し、光学センサ受光部205で対象物からの反射光を受光する構成である。光学センサ受光部205が検知する電位差は微小であるため、増幅回路206によって増幅する。増幅回路206の増幅率は増幅率調整部207で制御可能であり、ASIC201は初期設定値もしくは光量調整結果により、増幅率調整部207を制御する。増幅率調整部207は、例えばデジタルポテンショメータである。光学センサ受光部205が検出した光量信号値は、増幅回路206で増幅され、ASIC201で処理される。ASIC201は、搬送モータ制御回路208を介して搬送モータ209を動作させることにより搬送ローラ210を動作させる。また、ASIC201は、キャリッジモータ制御回路211を介してキャリッジモータ212を動作させることによりキャリッジ104を移動させる。
【0016】
図3は、印刷装置101で印刷される印刷媒体である光ディスクを登載したトレイ302を示した図である。光ディスク301は、例えば、表面に印刷受容層を持つプリンタブルディスクを想定しており、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)などが挙げられる。印刷が行われる際、光ディスク301は、光ディスクの保持手段であるトレイ302が備えた凹部303に搭載されており、突き当て部305A、305Bと当接するように、押圧部材306の突き当て部305Cで押圧されて保持されている。凹部303は、トレイ302の一方の面に、光ディスク301を収容可能に設けられている。
【0017】
トレイ302は、前述した凹部303と、トレイの位置検出に用いられるトレイ用第1反射部304Aとトレイ用第2反射部304Bと、前述した押圧部材306とを備えている。トレイ用第1反射部304A、トレイ用第2反射部304Bは、トレイ302のその他の部分に比べて、光学センサ発光部204の発した光を反射しやすい。よって光学センサ112の受光時の電圧レベルを確認することで、各反射部の有無や位置を検出することができる。なお、本実施形態では、トレイ用第1反射部304Aとトレイ用第2反射部304Bとの2つの反射部を設けているがこれに限定するものでなく、複数の反射部であればよい。
【0018】
第1搬送ローラ109と第2搬送ローラ110との間で、キャリッジ104がX方向に往復移動することで、光ディスク301の位置検知や光ディスク301への印刷を行うことができる。印刷が行われる際には、光ディスク301はトレイ302に搭載された状態で、トレイ302と共に主走査方向と交差する副走査方向であるY方向に搬送される。
【0019】
印刷時には、印刷動作前にユーザにより印刷装置101の内部に、搬送方向下流側から光ディスク301を登載したトレイ302がセットされる。トレイ302は一旦印刷装置101の内部に引き込まれ、その後、搬送方向下流側に搬送されつつ排出される。印刷時のトレイ302は、第1搬送ローラ109と、第1搬送ローラに従動する第1従動ローラ311とに搬送方向下流側を挟持され、第2搬送ローラ110と、第2搬送ローラに従動する第2従動ローラ312とに搬送方向上流側を挟持されて搬送される。なお、第1搬送ローラ119と第2搬送ローラ110のどちらか一方の駆動により搬送される場合もある。
【0020】
第1従動ローラ311は、主走査方向に複数個並べて設けられており、第1搬送ローラ109と対になってトレイ302の主走査方向全域をニップしてトレイ302を搬送する。また、第2従動ローラ312は、トレイ302の凹部303に対して、主走査方向における外側に設けられている。
【0021】
搬送方向へのトレイ302の搬送及びキャリッジ104の走査によって、トレイ302の各所に光学センサ112から光を照射することができる。
【0022】
本実施形態では、光ディスク孔部307に対応するトレイ上の領域には、トレイ302が平坦に形成された光量調整部308が設けられている。光量調整部308は、トレイ302に搭載された状態の光ディスク孔部307の縁である端部と対応するトレイ上(保持手段上)の部分である検出部から所定距離離れた位置に設けられている。なお、トレイ302に搭載された状態の光ディスク孔部307の縁である端部と対応するトレイ上の検出部は、光ディスク孔部307の端部と同じ位置であるので、以下では光量調整部308の位置を光ディスク孔部307の端部から所定距離の位置ともいう。
【0023】
トレイ302は、樹脂等により形成されており、その表面粗さは部分的にむらが生じることがある。しかしトレイの表面粗さは、任意の箇所から所定距離の範囲内では同一の表面粗さとなることがわかっている。なお、所定距離はトレイの材質や形成方法によっても異なるため、実際に表面粗さを測定して適宜設定することが好ましい。トレイの表面粗さの異なる部分に光を照射した場合、光の反射光の強さが異なる。そのため本実施形態では、略同一粗さの領域に光を照射すべく、光量調整部308を、光ディスクの位置検出を行う検出部から所定距離の範囲内に設けている。これによって、光量調整を行う光量調整部308の粗さと、光ディスクの位置検出を行う検出部の粗さと、を略同じにすることができる。
【0024】
本実施形態では、光量調整部308に光学センサ112から光を照射し、反射光を光学センサ112が受光することで、光学センサ112の光量調整を行う。光学センサ112は受光量に対応した電圧が出力されることから、光量調整を行うことで、光量調整部308における反射率が変化しても、所望の電圧レベルでの検出を行うことが可能になる。光量調整部308は、必ずしも光ディスク孔部307の中心でなくてもよく、光ディスク孔部307の縁である端部から所定距離の範囲内であれば、光ディスク孔部307内の任意の位置でもよい。
【0025】
光ディスク検出動作時には、光学センサ112が主走査方向検出範囲309を往復移動するようにキャリッジ104を移動させる。また、同様に光学センサ112が搬送方向検出範囲310を往復移動するようにトレイ302を搬送する。このように本実施形態では、光学センサ112が主走査方向検出範囲309と搬送方向検出範囲310とを移動しながら検出部を検出して、直接光ディスク301の位置を検出する。
【0026】
光量調整は、光ディスク検出動作の前に行われ、検出部と略同じ粗さの面を備えた光量調整部308において光学センサ112の光量調整が行われる。また、所定距離の範囲内の領域であれば、経年変化による汚れや状態変化も略同じになると考えられることから、検出部と光量調整部308とは、粗さ、汚れ具合や状態変化が略同じであると考えられる。したがって、本実施形態によれば、検出部の汚れや状態変化に依存することなく、光量調整を行った光量調整部308と略同じである検出部を検出することで光ディスクの位置検出を精度よく行うことができる。
【0027】
なお、以下の説明では、光量調整部308と検出部とを含む領域で、光ディスク孔部307に対応するトレイ上の領域を受光反射部と称する。
【0028】
図4は、本実施形態の印刷装置101における印刷動作を示したフローチャートである。以下、このフローチャートを用いて本実施形態の印刷動作を説明する。なお、ここで説明する印刷動作における各処理の主体はASIC201であり、ASIC201が、プログラムをROM202や不図示の外部記憶装置から読み出して、そのプログラムを実行することにより実現される。
【0029】
印刷動作が開始されると、ASIC201はS401で、トレイ引き込み処理を行う。
トレイ引き込み処理では、ユーザが印刷装置101の不図示のトレイ挿入部からトレイ302を挿入すると、第1搬送ローラ109と第2搬送ローラ110とにより、トレイ302を搬送方向上流側に搬送する。その後、ASIC201はS402で、光学センサ発光部204を発光させ、S403で、トレイ302の位置を検出するために反射部検出動作を行う。
【0030】
反射部検出動作では、キャリッジ104を主走査方向に移動させることで、光学センサ112の主走査方向の位置をトレイ302のトレイ用第1反射部304Aがあると想定される位置に移動させる。そしてトレイ302を搬送して、トレイ302に対する光学センサ112の位置を移動させながら、光学センサ112によるトレイ用第1反射部304Aの検出を行う。トレイ用第1反射部304Aが検出されると、トレイ302の搬送により、光学センサ112の搬送方向の位置を、トレイ用第1反射部304Aの中心まで移動させ、キャリッジ104の走査により、トレイ用第1反射部304Aの主走査方向の位置を検出する。その後、光学センサ112の主走査方向の位置をトレイ用第1反射部304Aから所定量移動させる。次にトレイ用第2反射部304Bの検出を行う。トレイ用第2反射部304Bの検出では、トレイ用第1反射部304Aの検出と同様に、トレイ302の搬送及びキャリッジ104の走査により、トレイ用第2反射部304Bの検出を行う。
【0031】
反射部を検出した後、ASIC201はS404で、取得したトレイ用第1反射部304Aの位置とトレイ用第2反射部304Bの位置とに基づいて、トレイ302の位置を確定する。そして、ASIC201はS405で、トレイ302の位置から算出した光ディスク301の中心穴に対応するトレイ302上に設けられた光量調整部308の位置に光学センサ112を移動させる。その後、ASIC201はS406で、光学センサ112が光ディスク301の中心位置にある状態で、光学センサ発光部204を発光させ、光量調整部308に光を照射して反射光を受光することで光学センサ112の光量調整を行う。なお、光学センサ112の光量調整を行う光量調整処理の詳細については後述する。
【0032】
光量調整の完了後、ASIC201はS407で、トレイ302の搬送及びキャリッジ104の走査によって、光学センサ112を主走査方向検出範囲309と搬送方向検出範囲310とを往復移動させて、位置検出処理である光ディスク孔部307の端部の検出を行う。この時、光学センサ112から、受光反射部と、光ディスクの中心穴を形成する縁における2か所の端部と、に連続して光が照射される。そして、光ディスク孔部307と対応するトレイ302上の受光反射部と、光ディスク301とにおける光学センサ112受光電圧レベルの違いから光ディスク301の端部を検出する。
【0033】
なお、本実施形態では、受光反射部および光量調整部308を光ディスク孔部307の縁である端部から所定距離の範囲内に設けているがこれに限定するものではない。つまり、光ディスクの外周端部から所定距離の範囲内に設けてもよい。
【0034】
既にS406で光学センサ112の光量調整が完了しているため、S407における光ディスク301の端部の検出では、受光反射部の反射率が変化していても所望の電圧レベルで検出対象(光ディスク301)の検出を行うことができる。光ディスク301の端部の検出が完了すると、ASIC201はS408で、光ディスク301の位置を確定する。
【0035】
その後、ASIC201はS409で、光学センサ発光部204を消灯し、S410で光ディスク印刷を行う。光ディスク印刷では、設定した印刷位置に基づきトレイ302を搬送し、続いてキャリッジ104の印刷ヘッド103と光ディスク301との位置を合わせて光ディスク301への印刷を開始する。光ディスク印刷が完了すると印刷動作が終了となる。
【0036】
図5は、光学センサ112の光量調整処理を示したフローチャートである。以下、このフローチャートを用いて、本実施形態の印刷装置101における光量調整処理を説明する。なお、ここで説明する光量調整処理における各処理の主体はASIC201であり、ASIC201が、プログラムをROM202や不図示の外部記憶装置から読み出して、そのプログラムを実行することにより実現される。
【0037】
光量調整処理が開始されると、ASIC201はS501で、キャリッジ104の走査及びトレイ302の搬送により、光学センサ112を光量調整位置である光量調整部308に移動する。そして、ASIC201はS502で、光学センサ発光部204を点灯させて、光量調整部308に光を照射する。その後、ASIC201はS503で、光学センサ受光部205における受光時電圧レベルを検出する。
【0038】
そして、ASIC201はS504で、S503で検出した電圧レベルが所定の設定値よりも低いか否かを判定する。本実施形態では、受光量が多い方が、受光時電圧レベルは低くなる。そのため、検出した電圧レベルが所定の設定値よりも高い場合には、ASIC201は、S509に移行して増幅回路206の増幅率を大きくする。増幅回路206の増幅率を大きくすることで、受光時電圧レベルは低くなる。その後、ASIC201はS510で、光学センサ受光部205における受光時電圧レベルを検出する。そして、ASIC201はS511で、再度、検出した電圧レベルが所定の設定値よりも低いか否かを判定する。まだ、検出した電圧レベルが所定の設定値よりも高い場合には、ASIC201はS512で、増幅回路206の増幅率が最大値か否かを判定する。最大値ではない場合、ASIC201はS503に戻って処理を繰り返す。増幅回路206の増幅率が最大値である場合、ASIC201はS513に移行して、光学センサ受光部205における受光時電圧レベルを検出する。S511で、検出した電圧レベルが所定の設定値よりも低い場合には、光学センサ112の光量調整処理を終了する。
【0039】
ASIC201はS504で、検出した電圧レベルが所定の設定値よりも低い場合には、ASIC201は、S505に移行して増幅回路206の増幅率を小さくする。増幅率を小さくすることで、光学、受光時電圧レベルは高くなる。その後、ASIC201はS506で、光学センサ受光部205における受光時電圧レベルを検出する。そして、ASIC201はS507で、検出した電圧レベルが所定の設定値よりも高いか否かを判定する。まだ、検出した電圧レベルが所定の設定値よりも低い場合には、ASIC201はS508で、増幅回路206の増幅率が最小値か否かを判定する。最小値ではない場合、ASIC201はS503に戻って処理を繰り返す。増幅回路206の増幅率が最小値である場合、ASIC201はS513に移行して、光学センサ受光部205における受光時電圧レベルを検出する。S507で、検出した電圧レベルが所定の設定値よりも高い場合には、光学センサ112の光量調整処理を終了する。
【0040】
ASIC201はS513で光学センサ受光部205における受光時電圧レベルを検出すると、S514に移行して、検出した電圧レベルが所定の設定値よりも高いか否かを判定する。S514では、既に光学センサ発光部204からの光を増幅回路206の増幅率では調整できない場合であるので、S514における判定に基づいて光学センサ発光部204へ供給される電流を調整することで光量を調整する。
【0041】
ASIC201はS513で検出した電圧レベルが所定の設定値よりも低い場合、S515に移行して、光学センサ発光部204への電流を小さくすることで光量を少なくしてS503に移行して処理を繰り返す。ASIC201はS513で検出した電圧レベルが所定の設定値よりも高い場合、S516に移行して、光学センサ発光部204への電流を大きくすることで光量を多くしてS503に移行して処理を繰り返す。
【0042】
図6は、
図4のS407のディスク位置検出動作における光学センサ112の受光時電圧レベル波形を示したグラフである。横軸はキャリッジ104の走査距離を示し、縦軸は光学センサ112の受光時電圧レベルを示す。
図4のS406の光量調整にて、光量調整部308に光を照射して反射光を受光することで光学センサ112の光量調整を行う際、光量調整部308で光量調整設定電圧V1が得られるように光学センサ112の調整を行う。よって、光ディスク孔部307と対応するトレイ302上の領域の光量調整部308では、受光時電圧レベルは光量調整設定電圧V1となる。
【0043】
また、光ディスク301は、光量調整部308に比べて、光学センサ発光部204の発する光を反射しやすい。よって、光ディスク301の位置では、光量調整部308に比べて、光学センサ受光部205における受光量が大きく、受光時電圧レベルは小さくなる。このため、
図4のS407の光ディスク位置検出にて、光学センサ112を主走査方向検出範囲309あるいは搬送方向検出範囲310に往復移動させることで、
図6に示すような受光時電圧レベルを得ることができる。
【0044】
光量調整設定電圧V1から、所定電圧低い値を所定の受光時電圧レベルの位置検出閾値V2として予め設定する。そして、光学センサ112の受光時電圧レベルを検出し、所定の受光時電圧レベルの位置検出閾値V2をまたぐ位置を検出することで、光ディスク孔部307の端部位置を検出することができる。光ディスクの孔部付近は、凹凸形状をしている場合があり、
図6に示すように受光時電圧レベルが大きく変化することがあるが、光量調整設定電圧V1と位置検出閾値V2とを設定し読み取ることで、光ディスク孔部307の端部位置を精度よく検出することができる。
【0045】
なお、本実施形態における光量調整処理や、光学センサの増幅率、光量の調整は、印刷装置101が制御手段を用いて自動で行ってもよいし、ユーザが手動で行ってもよい。
【0046】
このように、光ディスクの端部から所定距離の範囲内のトレイ上に、平坦に形成された光量調整部を含んだ受光反射部を設ける。そして、光量調整部で反射した光を受光することで得られた電圧が所定値となるよう光量調整を行った後に、トレイ302に保持された光ディスクと受光反射部とに、光を照射してその反射光を受光することで、光ディスクの位置を検出する。これによって、対象物の反射率が低下した場合や反射率にばらつきが生じた場合でも安定した検出が可能であり、印刷の位置ずれを抑制することができる光学式記憶媒体の位置決定方法および印刷装置を提供することができる。
【0047】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0048】
本実施形態では、光ディスク孔部307内の複数箇所に光量調整部308が設けられており、光学センサ112を各光量調整部308の位置に移動させ、光学センサ受光部205によって受光時電圧レベルを検出する。そして、取得した複数の電圧レベルから、中央値となる箇所の光量調整部308を光量調整位置として選択し、選択した光量調整位置で光量調整を行う。以下、その方法について説明する。
【0049】
図7は、本実施形態の印刷装置101における印刷動作を示したフローチャートである。以下、このフローチャートを用いて本実施形態の印刷動作を説明する。なお、ここで説明する印刷動作における各処理の主体はASIC201であり、ASIC201が、プログラムをROM202や不図示の外部記憶装置から読み出して、そのプログラムを実行することにより実現される。なお本実施形態の印刷動作におけるS701からS704までの処理及びS707からS711までの処理は、第1の実施形態の印刷動作における
図4のS401からS404までの処理及びS406からS410までの処理と同様の処理であるため説明を省略する。
【0050】
ASIC201はS705で、光量調整位置を選択する。光ディスク孔部307内の複数箇所の光量調整部308に光学センサ112を移動させ、各光量調整部308で光学センサ受光部205受光時電圧レベルを検出する。検出した複数の電圧レベルを比較し、中央値となる光量調整部308を光量調整位置として選択する。なお、光量調整位置の選択は、電圧レベルが最も低い箇所としてもよい。また、複数の光量調整部308に光学センサ112を移動させるのではなく、キャリッジ104の走査及びトレイ302の搬送により、光学センサ112を光ディスク孔部307内の光量調整部308へ移動させながら、電圧レベルの検出を行ってもよい。
【0051】
その後、ASIC201はS706で、選択した光量調整部308へ光学センサ112を移動させる。
【0052】
このように、複数箇所に設けた光量調整部308に光学センサ112を移動させて受光時電圧レベルを検出する。これによって、より精度よくディスク位置を検出することができる。
【符号の説明】
【0053】
104 キャリッジ
112 光学センサ
204 光学センサ発光部
205 光学センサ受光部
301 光ディスク
307 光ディスク孔部
308 光量調整部