(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】浮体連結装置および浮体運搬方法
(51)【国際特許分類】
B63B 35/38 20060101AFI20240105BHJP
B63B 39/06 20060101ALI20240105BHJP
E02D 23/02 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
B63B35/38 B
B63B39/06 A
B63B35/38 C
B63B35/38 A
E02D23/02 B
(21)【出願番号】P 2020028496
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2019151706
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】田村 大樹
(72)【発明者】
【氏名】新里 英幸
(72)【発明者】
【氏名】正木 洋二
(72)【発明者】
【氏名】松野 進
(72)【発明者】
【氏名】石原 和之
(72)【発明者】
【氏名】田名後 輝之
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-108497(JP,U)
【文献】特開2016-180248(JP,A)
【文献】実開平03-108598(JP,U)
【文献】特開2008-238920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/38
B63B 39/06
E02D 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体連結装置であって、
配列方向に配列された複数の浮体を、前記配列方向の前側および後側から挟む一対の支持部材と、
前記一対の支持部材間を分離可能に接続することにより、前記一対の支持部材間において前記複数の浮体を前記配列方向に連結する接続部と、
各支持部材に固定されるフロート部と、
を備え
、
一方の支持部材に固定されるフロート部が、一対のフロートを有し、
前記一対のフロートが、前記一方の支持部材に対して前記配列方向に垂直な幅方向の両側にそれぞれ配置され、
各フロートの前記幅方向に垂直な断面形状が、上方を向く上面と下方を向く下面とを含む翼型であり、前記配列方向に沿う方向への曳航において、前記各フロートが水中で下降する際に、前記各フロートの前記下面側の圧力が前記上面側の圧力よりも大きくなることを特徴とする浮体連結装置。
【請求項2】
浮体連結装置であって、
配列方向に配列された複数の浮体を、前記配列方向の前側および後側から挟む一対の支持部材と、
前記一対の支持部材間を分離可能に接続することにより、前記一対の支持部材間において前記複数の浮体を前記配列方向に連結する接続部と、
一方の支持部材に固定されるとともに、前記一方の支持部材に対して前記配列方向に垂直な幅方向の両側にそれぞれ配置される一対の減揺翼と、
を備え、
前記配列方向に沿う方向への曳航において、前記一対の減揺翼が水中に配置され、各減揺翼が水中で下降する際に、前記各減揺翼の下面側の圧力が上面側の圧力よりも大きくなることを特徴とする浮体連結装置。
【請求項3】
請求項2に記載の浮体連結装置であって、
各支持部材に固定されるフロート部をさらに備えることを特徴とする浮体連結装置。
【請求項4】
請求項1
ないし3のいずれか1つに記載の浮体連結装置であって、
前記接続部が、前記複数の浮体を前記配列方向に圧縮しつつ連結することを特徴とする浮体連結装置。
【請求項5】
請求項1
ないし4のいずれか1つに記載の浮体連結装置であって、
前記接続部において前記一対の支持部材間の接続部材が、前記複数の浮体の外面に対向することを特徴とする浮体連結装置。
【請求項6】
請求項1ないし
5のいずれか1つに記載の浮体連結装置であって、
前記複数の浮体のそれぞれがケーソンであることを特徴とする浮体連結装置。
【請求項7】
請求項1ないし
6のいずれか1つに記載の浮体連結装置であって、
前記複数の浮体において互いに隣接する2個の浮体の間に配置される中間部材をさらに備え、
前記中間部材が、前記配列方向に垂直な幅方向または/および上下方向に関して、前記2個の浮体の相対位置のずれを制限する位置ずれ制限部を備えることを特徴とする浮体連結装置。
【請求項8】
浮体連結装置を用いる浮体運搬方法であって、
前記浮体連結装置が、
配列方向に配列された複数の浮体を、前記配列方向の前側および後側から挟む一対の支持部材と、
前記一対の支持部材間を分離可能に接続することにより、前記一対の支持部材間において前記複数の浮体を前記配列方向に連結する接続部と、
を備え、
前記浮体運搬方法が、
前記浮体連結装置を用いて、所定の連結位置において複数の浮体を連結する工程と、
前記複数の浮体を曳航して、前記連結位置から据付位置まで運搬する工程と、
前記据付位置において、前記浮体連結装置における前記接続部による前記一対の支持部材間の接続を解除する工程と、
前記一対の支持部材を曳航して、前記据付位置から離れた所定位置まで運搬する工程と、
を備えることを特徴とする浮体運搬方法。
【請求項9】
浮体運搬方法であって、
請求項1ないし
7のいずれか1つに記載の浮体連結装置を用いて、所定の連結位置において複数の浮体を連結する工程と、
前記複数の浮体を曳航して、前記連結位置から据付位置まで運搬する工程と、
前記据付位置において、前記浮体連結装置における前記接続部による前記一対の支持部材間の接続を解除する工程と、
前記一対の支持部材を曳航して、前記据付位置から離れた所定位置まで運搬する工程と、
を備えることを特徴とする浮体運搬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体連結装置および浮体運搬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大型の浮体構造物を工場から設置場所まで運搬する際に、台船を使わずに構造物そのものを浮かせて曳航することが行われている。この場合に、複数の浮体(構造物)を連結して曳航することにより、運搬に要するコストを削減する手法が提案されている。例えば、特許文献1では、複数函の単体ケーソンを、静穏海域に設けられた仮置きマウンド上でジョイント部材を介して連結し、この連結された長大ケーソンを所定の据付位置まで曳航する手法が開示されている。特許文献1では、複数函にわたって布設されたシース管内にPCケーブルが配線され、当該PCケーブルによりケーソン間の連結が行われる。
【0003】
なお、特許文献2では、着脱式減揺装置が開示されている。当該装置では、構造物の周囲に所定の遊びをもって嵌め合される鋼製の枠部材が用いられる。枠部材の外側にはキールが設けられ、枠部材の内側には拡縮自在な中空のラバーチューブが設けられる。ラバーチューブを窄めた状態で枠部材を構造物に嵌め、ラバーチューブを膨らませることにより、当該装置が構造物に簡単に装着される。また、キールの働きにより構造物の動揺が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-237875号公報
【文献】実用新案登録第3043406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、PCケーブルにより複数の浮体が連結されるが、PCケーブルを配線するためのシース管を、複数の浮体にわたって布設する必要があり、複数の浮体の連結に係る特別な設計および施工が必要になる。また、特許文献1では、PCケーブルの端部が浮体の内部に配置されており、連結作業も繁雑となる。
【0006】
一方、連結した複数の浮体の長さが波の波長と同程度まで長くなると、サギングおよびホギングと呼ばれる現象が発生する。この場合に、例えば、隣接する浮体同士を強固に固定し、一体化したときには、サギングにおいて浮体下面に大きな引張力が作用し、ホギングにおいて浮体上面に大きな引張力が作用する。ケーソン等の浮体は引張力に弱いため、浮体が破損する可能性がある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、複数の浮体を容易に連結するとともに、曳航時におけるサギングおよびホギングによる浮体の破損を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、浮体連結装置であって、配列方向に配列された複数の浮体を、前記配列方向の前側および後側から挟む一対の支持部材と、前記一対の支持部材間を分離可能に接続することにより、前記一対の支持部材間において前記複数の浮体を前記配列方向に連結する接続部と、各支持部材に固定されるフロート部とを備え、一方の支持部材に固定されるフロート部が、一対のフロートを有し、前記一対のフロートが、前記一方の支持部材に対して前記配列方向に垂直な幅方向の両側にそれぞれ配置され、各フロートの前記幅方向に垂直な断面形状が、上方を向く上面と下方を向く下面とを含む翼型であり、前記配列方向に沿う方向への曳航において、前記各フロートが水中で下降する際に、前記各フロートの前記下面側の圧力が前記上面側の圧力よりも大きくなる。
請求項2に記載の発明は、浮体連結装置であって、配列方向に配列された複数の浮体を、前記配列方向の前側および後側から挟む一対の支持部材と、前記一対の支持部材間を分離可能に接続することにより、前記一対の支持部材間において前記複数の浮体を前記配列方向に連結する接続部と、一方の支持部材に固定されるとともに、前記一方の支持部材に対して前記配列方向に垂直な幅方向の両側にそれぞれ配置される一対の減揺翼とを備え、前記配列方向に沿う方向への曳航において、前記一対の減揺翼が水中に配置され、各減揺翼が水中で下降する際に、前記各減揺翼の下面側の圧力が上面側の圧力よりも大きくなる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の浮体連結装置であって、各支持部材に固定されるフロート部をさらに備える。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の浮体連結装置であって、前記接続部が、前記複数の浮体を前記配列方向に圧縮しつつ連結する。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の浮体連結装置であって、前記接続部において前記一対の支持部材間の接続部材が、前記複数の浮体の外面に対向する。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の浮体連結装置であって、前記複数の浮体のそれぞれがケーソンである。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の浮体連結装置であって、前記複数の浮体において互いに隣接する2個の浮体の間に配置される中間部材をさらに備え、前記中間部材が、前記配列方向に垂直な幅方向または/および上下方向に関して、前記2個の浮体の相対位置のずれを制限する位置ずれ制限部を備える。
【0016】
請求項8に記載の発明は、浮体連結装置を用いる浮体運搬方法であって、前記浮体連結装置が、配列方向に配列された複数の浮体を、前記配列方向の前側および後側から挟む一対の支持部材と、前記一対の支持部材間を分離可能に接続することにより、前記一対の支持部材間において前記複数の浮体を前記配列方向に連結する接続部とを備え、前記浮体運搬方法が、前記浮体連結装置を用いて、所定の連結位置において複数の浮体を連結する工程と、前記複数の浮体を曳航して、前記連結位置から据付位置まで運搬する工程と、前記据付位置において、前記浮体連結装置における前記接続部による前記一対の支持部材間の接続を解除する工程と、前記一対の支持部材を曳航して、前記据付位置から離れた所定位置まで運搬する工程とを備える。
請求項9に記載の発明は、浮体運搬方法であって、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の浮体連結装置を用いて、所定の連結位置において複数の浮体を連結する工程と、前記複数の浮体を曳航して、前記連結位置から据付位置まで運搬する工程と、前記据付位置において、前記浮体連結装置における前記接続部による前記一対の支持部材間の接続を解除する工程と、前記一対の支持部材を曳航して、前記据付位置から離れた所定位置まで運搬する工程とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の浮体を容易に連結するとともに、曳航時におけるサギングおよびホギングによる浮体の破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施の形態に係る浮体連結装置を示す正面図である。
【
図6】複数のケーソンを据付位置まで運搬する処理の流れを示す図である。
【
図7】複数のケーソンおよび浮体連結装置を曳航する様子を示す図である。
【
図8】比較例の連結手法を説明するための図である。
【
図9】浮体連結装置を用いて連結した複数のケーソンにおけるホギングの影響を説明するための図である。
【
図10】曳航時における浮体連結装置を示す図である。
【
図12】第2の実施の形態に係る浮体連結装置を示す正面図である。
【
図15】ケーソンの対向面および中間部材を示す図である。
【
図16】中間部材の横枠材および当接部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る浮体連結装置1を示す正面図である。
図2は、浮体連結装置1を示す側面図であり、
図3は、浮体連結装置1を示す平面図である。浮体連結装置1は、浮体である複数のケーソン9を連結する装置である。後述するように、浮体連結装置1を用いて連結された複数のケーソン9は、曳航船により曳航されて所定の据付位置まで運搬される。本実施の形態におけるケーソン9は、例えば、鋼とコンクリートの合成構造のハイブリッドケーソンであり、典型的には、上部が開口した略直方体の函状である。複数のケーソン9は、例えば、海底に設けられた土台上に設置されて防波堤等として利用される。
【0020】
浮体連結装置1は、一対の支持部材2と、接続部3とを備える。一対の支持部材2は、配列方向に配列された複数のケーソン9を、配列方向の前側および後側から挟む。各支持部材2は、配列方向の端に位置するケーソン9において配列方向の外側を向く面91(隣接するケーソン9とは反対側を向く面91)に接触する。本実施の形態では、後述するように、当該面91は当該支持部材2により押圧されるため、以下、「被押圧面91」という。被押圧面91は、配列方向に垂直な
図1中の縦方向および横方向(以下、それぞれ「上下方向」および「幅方向」という。)に広がる。
図1ないし
図3では、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を矢印で示しており、X方向、Y方向およびZ方向は、それぞれ配列方向、幅方向および上下方向を示す(他の図において同様)。
【0021】
各支持部材2は、例えば金属等により形成された矩形のフレームである。
図1に示すように、支持部材2は、上下方向(Z方向)に延びる2本の縦枠材21と、上下方向に垂直な幅方向(Y方向)に延びる2本の横枠材22とを備える。2本の縦枠材21は互いに平行に配置される。2本の縦枠材21の上端には、一方の横枠材22の両端がそれぞれ接続される。2本の縦枠材21の下端には、他方の横枠材22の両端がそれぞれ接続される。
図1の例では、幅方向に延びる後述のフロート支持部42が、2本の縦枠材21に固定されており、フロート支持部42と縦枠材21との接続位置と、縦枠材21と横枠材22との接続位置とを繋ぐ筋交いが設けられる。各支持部材2の形状は、矩形には限定されず、等脚台形等、任意の形状に変更されてよい。
【0022】
各縦枠材21の上端部および下端部には、係合部231および当接部232がそれぞれ設けられる。係合部231および当接部232は、縦枠材21において幅方向外方を向く面に設けられる。
図2に示すように、各支持部材2における係合部231は、他方の支持部材2側に向かって開口するU字状部材であり、上下方向に間隔を開けて配列方向(X方向)に延びる2本の部位を有する。支持部材2が接触するケーソン9(すなわち、配列方向の端に位置するケーソン9)において、幅方向を向く側面92には突起部921が設けられる。係合部231は、当該ケーソン9の上記側面92に対向し、当該2本の部位の間に突起部921が配置される。これにより、当該ケーソン9に対して、上下方向における支持部材2の位置が大きくずれることが防止される。
【0023】
各支持部材2における当接部232は、他方の支持部材2側に向かって突出する部材である。当接部232は、係合部231と同様に、配列方向の端に位置するケーソン9の側面92に対向する。幅方向における支持部材2の両側、すなわち、2本の縦枠材21のそれぞれに係合部231および当接部232が設けられることにより、当該ケーソン9に対して、幅方向における支持部材2の位置が大きくずれることが防止される。係合部231および当接部232の形状は、任意に変更されてよい。
【0024】
係合部231および当接部232のそれぞれにおいて幅方向外方を向く面上には、固定部24が設けられる。
図1に示すように、各支持部材2では、4個の固定部24が、2本の縦枠材21の上端部および下端部にそれぞれ設けられる。一方の支持部材2における4個の固定部24は、それぞれ他方の支持部材2における4個の固定部24と配列方向に対向する。すなわち、一方の支持部材2の各固定部24が、他方の支持部材2のいずれか1つの固定部24と対応する。
【0025】
接続部3は、複数の接続部材31を備える。接続部材31は、典型的にはPC(プレストレスト・コンクリート)鋼材であり、PC鋼線、PC鋼棒、または、PCケーブル(PC鋼より線)である。接続部材31は、PC鋼材以外の緊張材であってもよい。本実施の形態では、接続部材31は、PCケーブルであり、4本の接続部材31が用いられる。4本の接続部材31の一端は、一方の支持部材2における4個の固定部24に着脱可能に固定(定着)され、他端は他方の支持部材2における4個の固定部24に着脱可能に固定される。このように、一対の支持部材2間が接続部3により分離可能に接続される。
【0026】
実際には、各接続部材31は、緊張した(引っ張った)状態で、配列方向に互いに対向する2つの固定部24にその両端が固定される。これにより、各支持部材2が配列方向の端に位置するケーソン9の被押圧面91を押圧しつつ、複数のケーソン9が配列方向に連結される。一対の支持部材2の間では、複数のケーソン9に対して配列方向の圧縮力が付与される。一対の支持部材2、隣接するケーソン9において互いに対向する後述の対向面93、および、端のケーソン9の被押圧面91は、互いに平行であるため、複数のケーソン9は強固に連結される。各接続部材31は、複数のケーソン9の外部に配置される。
図2の例では、各接続部材31は、複数のケーソン9における幅方向を向く側面92に対向する。各側面92に対向する接続部材31の本数は、1本でもよく、3本以上であってもよい。複数のケーソン9に対して配列方向の圧縮力が適切に付与されるのであるならば、
図2のように幅方向に沿って見た場合に、接続部材31が、配列方向(X方向)に対して傾斜してもよく、同じ側面92に対向して設けられる2本の接続部材31が交差してもよい。また、
図3のように上下方向に沿って見た場合に、接続部材31が、配列方向に対して僅かに傾斜してもよい。
【0027】
図1に示すように、各支持部材2には、フロート部4が固定される。フロート部4は、一対のフロート41と、フロート支持部42とを備える。フロート支持部42は、幅方向に延びる棒状であり、支持部材2の2本の縦枠材21に固定される。一対のフロート41は、フロート支持部42の両端にそれぞれ取り付けられる。すなわち、一対のフロート41は、支持部材2に対して幅方向の両側にそれぞれ配置される。
図1の例では、縦枠材21の下端部とフロート41とを接続する補助支持部43も設けられ、フロート41が、フロート支持部42および補助支持部43により強固に支持される。上下方向におけるフロート支持部42およびフロート41の位置は、ケーソン9の喫水に合わせて設定される。
【0028】
図4は、フロート41を示す断面図であり、幅方向に垂直な面における断面を示している。
図4では、断面を示す平行斜線の図示を省略している。幅方向に垂直なフロート41の断面形状は、上方を向く上面411と下方を向く下面412とを含む翼型である。
図4の断面における上面411および下面412は、曲線状である。上面411は上方に向かって凸であり、下面412は下方に向かって凸である。後述するように、浮体連結装置1を曳航する際に、フロート41に対して
図4中に矢印A1で示す向きに流れが発生する場合、下面412側の圧力が上面411側の圧力よりも大きくなる。その結果、矢印A2で示す揚力と、矢印A3で示す抗力とが発生する。
図4の例では、フロート41は、上面411および下面412のみにより構成されるが、上面411および下面412に加えて他の面を有してもよい。フロート41では、下面412側の圧力が上面411側の圧力よりも大きくなるのであるならば、一般的な翼型には限定されず、様々な形状が採用されてよい。
【0029】
図5は、ケーソン9において他のケーソン9と対向する面93(以下、「対向面93」という。)を示す図である。対向面93は、配列方向(X方向)を向く面であり、支持部材2とは対向しない。対向面93の下部には、複数の剪断キー931が幅方向(Y方向)に配列して設けられる。各剪断キー931は、凸部が設けられた凸部板と、凹部が設けられた凹部板とを有する。配列方向に沿って見た場合に、凸部の外形は、凹部の外形よりも小さい。配列方向に配列された複数のケーソン9において、互いに対向する対向面93の一方に凸部板が固定され、他方に凹部板が固定される。凸部板および凹部板の固定には、例えばボルトが利用される。複数のケーソン9が連結された状態では、上下方向(Z方向)および幅方向にある程度の距離だけ移動可能な状態で、凸部が凹部内に挿入される。これにより、配列方向に互いに隣接する2つのケーソン9において、幅方向および上下方向における位置が大きくずれることが防止される。
【0030】
対向面93において幅方向の端部には、複数の緩衝材932が上下方向に配列して設けられる。緩衝材932は、例えば、対向面93に固定された矩形枠状のスポンジ部材の内側にモルタルを流し込むことにより形成される。また、互いに隣接する2つのケーソン9の間には、幅方向に延びる2本のPCケーブル51が上下方向に離れた状態で設けられる。各PCケーブル51は、僅かに緊張した(引っ張った)状態で、その両端が2つの側面プレート52に固定される。
図2および
図3に示すように、当該2つのケーソン9において、幅方向の一方側を向く2つの側面92に一方の側面プレート52が接触し、幅方向の他方側を向く2つの側面92に他方の側面プレート52が接触する。側面プレート52は、側面92に固定されてはいない。当該PCケーブル51により、当該2つのケーソン9が幅方向にずれることが抑制される。PCケーブル51は、互いに隣接する2つのケーソン9間に配置される中間部材であり、2つの側面プレート52は、幅方向に関して、当該2つのケーソン9の相対位置のずれを制限する位置ずれ制限部である。剪断キー931、緩衝材932およびPCケーブル51の構造および配置は、適宜変更されてよく、これらの構成が省略されてもよい。
【0031】
図6は、浮体連結装置1を用いて複数のケーソン9を据付位置まで運搬する処理の流れを示す図である。ケーソン9の運搬処理では、まず、複数のケーソン9が準備される(ステップS11)。ケーソン9の準備では、例えば鋼殻ブロックが工場で作製され、鋼殻ブロックがドックまで運搬される。ドック内では、鋼殻ブロック間を溶接して一体化することにより、鋼殻が作製される。その後、底版部および外壁部に対し、配筋およびコンクリート打設を行うことによりケーソン9が作製される。各ケーソン9は、上部が開口した略直方体の函状である。なお、ケーソン9の内部には、例えばフラットバーおよびH鋼が交差するように設けられる(
図3参照)。本実施の形態では、複数のケーソン9はほぼ同じ形状を有する。もちろん、複数のケーソン9の形状が互いに相違してもよい。
【0032】
複数のケーソン9が準備されると、ドック内において、複数のケーソン9が配列方向に配列されるとともに、配列方向の前側および後側に一対の支持部材2が配置される。このとき、隣接する2つのケーソン9の間には、複数の剪断キー931および複数の緩衝材932が設けられ、さらに、側面プレート52を有するPCケーブル51が配置される。続いて、各接続部材31の一端が、一方の支持部材2における固定部24に固定され、その後、接続部材31を緊張した状態で、他端が他方の支持部材2における対応する固定部24に固定される。このようにして、浮体連結装置1を用いて、連結位置であるドック内において複数のケーソン9が配列方向に連結される(ステップS12)。以下の説明では、連結された複数のケーソン9および浮体連結装置1を「ケーソン-装置連結体」と総称する。
【0033】
複数のケーソン9が連結されると、ドック内に水(海水)を進入させることにより、ケーソン-装置連結体(複数のケーソン9および浮体連結装置1)が水面に浮かべられる。
図7に示すように、ケーソン-装置連結体は、曳航船8に曳航索81を介して連結され、ドックから出される。曳航船8は、ケーソン-装置連結体を引っ張る引船(いわゆる、タグボート)である。曳航船8は、原動機または発電機等の動力源に接続された推進器を備える。ケーソン-装置連結体には、推進器は設けられていない。
【0034】
曳航船8により、ケーソン-装置連結体が、
図7中の矢印D1で示す曳航方向に曳航される。このとき、ケーソン-装置連結体の下部は水底(例えば、海底)から上方に離れた状態で水面(例えば、海面)下に位置し、ケーソン-装置連結体の上部は水面から上方へと突出している。ケーソン-装置連結体は、ドックから据付位置まで運搬される(ステップS13)。
【0035】
据付位置では、各接続部材31と、少なくとも一方の支持部材2の固定部24との固定が解除される。換言すると、浮体連結装置1における接続部3による一対の支持部材2間の接続が解除される(ステップS14)。これにより、複数のケーソン9が浮体連結装置1から取り外され、非連結状態となる。複数のケーソン9は所定の手法で位置決めされた後、内部への注水および中詰砂の投入等により、1函毎に沈設される。これにより、ケーソン9が据付位置に据え付けられる。
【0036】
一方、各支持部材2にはフロート部4が固定されているため、一対の支持部材2間の接続を解除した際には、双方の支持部材2は水面に浮いた状態となる。一対の支持部材2は、例えば接続部材31を用いて互いに連結される。そして、一対の支持部材2が、曳航船8により曳航され、据付位置から離れた所定位置(例えば、ドック)まで運搬される(ステップS15)。以上により、浮体連結装置1を用いた複数のケーソン9の運搬処理が完了する。
【0037】
ここで、浮体連結装置1を用いない比較例の連結手法について述べる。
図8は、比較例の連結手法を説明するための図である。比較例の連結手法では、配列方向(X方向)に隣接する2つのケーソン9の側面92が、板部材99で固定され、複数のケーソン9が一体化される。この場合、水面Wが
図8に示す状態となり、ホギングが発生する場合に、中央のケーソン9の下面において大きな圧縮力が作用するとともに(
図8中の矢印B1参照)、当該ケーソン9の上面に大きな引張力(
図8中の矢印B2参照)が作用する。また、サギングが発生する場合に、中央のケーソン9の上面において大きな圧縮力が作用するとともに、当該ケーソン9の下面に大きな引張力が作用する。ケーソン9のように、コンクリート製の製造物は圧縮力には強いが、引張力には弱いため、曳航時においてケーソン9が破損する可能性がある。
【0038】
図9は、浮体連結装置1を用いて連結した複数のケーソン9におけるホギングの影響を説明するための図である。浮体連結装置1を用いて連結した複数のケーソン9では、配列方向に互いに隣接するケーソン9同士は固定されていない。したがって、ホギングが発生する場合に、中央のケーソン9の下面において大きな圧縮力は作用するが(
図9中の矢印B3参照)、当該ケーソン9の上面において大きな引張力が作用することはない。同様に、サギングが発生する場合に、中央のケーソン9の上面において大きな圧縮力は作用するが、当該ケーソン9の下面において大きな引張力が作用することはない。したがって、浮体連結装置1を用いることにより、曳航時においてケーソン9が破損することが抑制される。
【0039】
以上に説明したように、浮体連結装置1では、配列方向に配列された複数のケーソン9が、一対の支持部材2により配列方向の前側および後側から挟まれる。また、一対の支持部材2間を分離可能に接続する接続部3により、一対の支持部材2間において複数のケーソン9が配列方向に圧縮されつつ連結される。これにより、複数のケーソン9に対してシース管を布設する等の特別な設計および施工を行うことなく、複数のケーソン9を容易に連結することができる。また、複数のケーソン9の連結および連結の解除、すなわち、一対の支持部材2間における接続部材31の接続および接続の解除を、ケーソン9の外部(支持部材2における固定部24)で行うことができ、浮体連結装置1を用いたケーソン9の運搬および据え付けを容易に行うことができる。さらに、ケーソン9同士は固定されないため、曳航時におけるサギングおよびホギングによるケーソン9の破損を抑制することができる。
【0040】
浮体連結装置1では、一対の支持部材2間の接続部材31が、複数のケーソン9の外面、すなわち、ケーソン9の他の部位に覆われていない面に対向する。これにより、一対の支持部材2間において接続部材31を取り付ける作業、および、取り外す作業を容易に行うことができる。なお、複数のケーソン9の外面に対向する接続部材31は、当該外面の法線方向に位置するものには限定されない。例えば、
図1のケーソン9において、(+Z)方向を向く外面と(+Y)方向を向く外面とが接続する角部から、(+Y)方向かつ(+Z)方向に離れた位置に配置される接続部材31(すなわち、角部から斜め上方に離れた接続部材31)も、複数のケーソン9の外面に対向する接続部材31に含まれる。浮体連結装置1の設計によっては、
図7中に二点鎖線で示すように、一部の接続部材31が(+Z)方向を向く外面に対向してもよい。
図7の例では、(+Z)方向を向く外面に対向する2本の接続部材31が交差している。
【0041】
また、単体では水に浮かない各支持部材2にフロート部4を固定することにより、複数のケーソン9から取り外した支持部材2が水中に沈むことを防止して、支持部材2を容易に回収することができる。フロート部4のフロート41が翼型であることにより、曳航方向D1と反対向きに作用する流体抵抗を低減することが可能となる。
【0042】
次に、曳航時におけるフロート部4による減揺について説明する。
図10は、曳航時における浮体連結装置1を示す図である。ケーソン-装置連結体を配列方向(X方向)に沿う曳航方向へと曳航する際には、ケーソン-装置連結体の横揺れ(ローリング)により、
図10中に二点鎖線で示すように、フロート部4における一方のフロート41が、矢印D2で示す方向に水中で下降する。この場合、フロート41に対して
図4中に矢印A1で示す向きに相対的な流れが発生する。なお、
図4中の矢印D1は、曳航方向である。このとき、フロート41では、下面412側の圧力が上面411側の圧力よりも大きくなり、矢印A2で示す揚力が発生し、フロート41の下方への移動が抑制される。したがって、フロート部4を有する浮体連結装置1では、曳航時における横揺れを抑制することができる。また、
図4中に矢印A4で示すように、矢印A2で示す揚力は、曳航方向D1に作用する力の成分を含む。これにより、フロート41における流体抵抗をさらに低減することも可能となる。
【0043】
図11は、浮体連結装置1の他の例を示す図である。
図11の浮体連結装置1では、
図1の浮体連結装置1におけるフロート部4に代えて、減揺部4aが設けられる。他の構成は、
図1の浮体連結装置1と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
【0044】
減揺部4aは、一対の減揺翼44と、減揺翼支持部45とを備える。減揺翼支持部45は、幅方向(Y方向)に延びる棒状であり、支持部材2の2本の縦枠材21に固定される。一対の減揺翼44は、減揺翼支持部45の両端にそれぞれ取り付けられる。このように、一対の減揺翼44は、支持部材2に対して幅方向の両側にそれぞれ配置された状態で支持部材2に固定される。減揺翼44の形状は、
図4のフロート41と同様である。すなわち、幅方向に垂直な減揺翼44の断面形状は、上方を向く上面と下方を向く下面とを含む翼型である。これにより、減揺翼44では、曳航方向と反対向きに作用する流体抵抗を低減することが可能となる。
【0045】
ケーソン-装置連結体を配列方向(X方向)に沿う曳航方向へと曳航する際には、
図11に示すように、一対の減揺翼44は水中に、すなわち、水面Wの下方に配置される。ケーソン-装置連結体の横揺れにより、
図11中に二点鎖線で示すように、減揺部4aにおける一方の減揺翼44が、矢印D2で示す方向に水中で下降する場合、
図4を参照して説明したフロート41と同様に、下面側の圧力が上面側の圧力よりも大きくなり、揚力(
図4中の矢印A2参照)が発生する。これにより、当該減揺翼44の下方への移動が抑制される。このように、減揺部4aを有する浮体連結装置1では、曳航時における横揺れを抑制することが可能となる。また、当該揚力は、曳航方向D1に作用する力の成分を含む(
図4中の矢印A4参照)。これにより、減揺翼44における流体抵抗をさらに低減することも可能となる。
【0046】
図11の浮体連結装置1では、支持部材2が単体で水に浮くため、複数のケーソン9の据付位置への運搬後に、各支持部材2をケーソン9から分離した際に、支持部材2が沈むことはない。支持部材2が水に浮かない場合等、必要に応じて、支持部材2に対して減揺部4aおよびフロート部4の双方が設けられてもよい。また、一方の支持部材2のみに減揺部4aが固定されてもよい(フロート部4において同様)。
【0047】
図12は、本発明の第2の実施の形態に係る浮体連結装置1aを示す正面図である。
図13は、浮体連結装置1aを示す側面図であり、
図14は、浮体連結装置1aを示す平面図である。浮体連結装置1aでは、
図1の浮体連結装置1と比較して、フロート部4が省略されるとともに、支持部材2の構造が相違する。また、互いに隣接する2個のケーソン9の間において、PCケーブル51、剪断キー931および緩衝材932(
図5参照)に代えて、フレーム状の中間部材6が設けられる。他の構成は
図1の浮体連結装置1と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。もちろん、浮体連結装置1aの支持部材2および中間部材6にフロート部4または減揺部4aが設けられてもよい。
【0048】
各支持部材2は、配列方向(X方向)の端に位置するケーソン9の配列方向の外側を向く面91に対向する。支持部材2は、複数の縦枠材21と、複数の横枠材22とを備え、
図12の例では、2本の縦枠材21と、5本の横枠材22とを備える。2本の縦枠材21は、面91上の幅方向の両端近傍に配置され、上下方向(Z方向)に延びる。5本の横枠材22は、幅方向(Y方向)に沿って延びており、各横枠材22の両端が2本の縦枠材21にそれぞれ接続される。
図12の例では、最も上側の横枠材22が、当該面91の形状に合わせて幅方向に対して傾斜して設けられる。既述のように、各支持部材2の形状は、任意の形状に変更されてよく、縦枠材21および横枠材22の本数も任意に変更されてよい。また、支持部材2では、筋交いが設けられてよい。
【0049】
各縦枠材21においてケーソン9側の面には、複数の緩衝材211が設けられる。
図12では、緩衝材211に平行斜線を付している。緩衝材211は、板状であり、例えばゴム等の弾性材料により形成される。支持部材2は、緩衝材211を介してケーソン9の面91と当接する。
【0050】
最も上側の横枠材22の両端部、および、最も下側の横枠材22の両端部には、固定部24が設けられる。各支持部材2では、4個の固定部24が設けられる。一方の支持部材2における4個の固定部24は、他方の支持部材2における4個の固定部24と配列方向にそれぞれ対向する。上記浮体連結装置1と同様に、一対の支持部材2において互いに対向する2個の固定部24には、接続部3の接続部材31の両端が着脱可能に固定される(
図13および
図14参照)。
【0051】
図12に示すように、上下方向の略中央に位置する横枠材22の両端部には、曳航索81用の索保持部24aが設けられる。各支持部材2では、2個の索保持部24aが設けられる。一方の支持部材2における2個の索保持部24aは、他方の支持部材2における2個の索保持部24aと配列方向にそれぞれ対向する。各索保持部24aには貫通孔が設けられ、ケーソン-装置連結体(複数のケーソン9および浮体連結装置1a)を曳航する際に、当該貫通孔に曳航索81が挿入される。
【0052】
2本の縦枠材21の各端部には、当接部23aが設けられる。また、固定部24および索保持部24aが設けられていない2本の横枠材22の各端部には、当接部23bが設けられる。
図13および
図14に示すように、当接部23a,23bは、他方の支持部材2側に向かって突出する部材(ブラケット)である。縦枠材21の両端部の当接部23aは、配列方向の端に位置するケーソン9の上面94および下面95にそれぞれ対向する。これにより、当該ケーソン9に対して、上下方向における支持部材2の位置が大きくずれることが防止される。横枠材22の両端部の当接部23bは、当該ケーソン9の両側面92にそれぞれ対向する。これにより、当該ケーソン9に対して、幅方向における支持部材2の位置が大きくずれることが防止される。
【0053】
浮体連結装置1aでは、複数のケーソン9において互いに隣接する2個のケーソン9の間に中間部材6が配置される。互いに隣接する2個のケーソン9を隣接ケーソン対と呼ぶと、各隣接ケーソン対の間に中間部材6が配置される。
図15は、ケーソン9において他のケーソン9と対向する面93(すなわち、対向面93)を示す図であり、対向面93上に設けられる中間部材6も示している。
【0054】
各中間部材6は、例えば支持部材2と略同形状である。中間部材6は、複数の縦枠材61と、複数の横枠材62とを備え、
図15の例では、2本の縦枠材61と、5本の横枠材62とを備える。各縦枠材61において配列方向の両側の面には、複数の緩衝材611が設けられる。中間部材6は、緩衝材611を介して、配列方向の両側のケーソン9と当接する。最も上側の横枠材62の両端部、および、最も下側の横枠材62の両端部には、接続部材保持部64が設けられる。
図13および
図14に示すように、各接続部材保持部64は、一対の支持部材2において互いに対向する2個の固定部24の間に配置され、配列方向において当該2個の固定部24に対向する。接続部材保持部64には貫通孔が設けられ、複数のケーソン9を連結する際に、当該貫通孔に接続部材31が挿入される。
【0055】
図15に示すように、上下方向の略中央に位置する横枠材62の両端部には、曳航索81用の索保持部64aが設けられる。各中間部材6では、2個の索保持部64aが設けられる。
図13に示すように、各索保持部64aは、一対の支持部材2において互いに対向する2個の索保持部24aの間に配置され、配列方向において当該2個の索保持部24aに対向する。各索保持部64aには貫通孔が設けられ、ケーソン-装置連結体を曳航する際に、当該貫通孔に曳航索81が挿入される。
【0056】
図15に示す2本の縦枠材61の各端部には、当接部63aが設けられる。また、接続部材保持部64および索保持部64aが設けられていない2本の横枠材62の各端部には、当接部63bが設けられる。
図13および
図14に示すように、当接部63a,63bは、配列方向の両側に向かって突出する部材である。縦枠材61の上端部の当接部63aは、中間部材6を挟む2個のケーソン9(隣接ケーソン対)の上面94に対向し、縦枠材61の下端部の当接部63aは、当該2個のケーソン9の下面95に対向する。これにより、上下方向に関して、当該2個のケーソン9の相対位置が大きくずれることが防止される。
【0057】
横枠材62の(+Y)側の端部の当接部63bは、当該2個のケーソン9の(+Y)側の側面92に対向し、横枠材62の(-Y)側の端部の当接部63bは、当該2個のケーソン9の(-Y)側の側面92に対向する。これにより、幅方向に関して、当該2個のケーソン9の相対位置が大きくずれることが防止される。中間部材6では、これらの当接部63a,63bの集合が、上下方向および幅方向に関して、当該2個のケーソン9(隣接ケーソン対)の相対位置のずれを制限する位置ずれ制限部となる。
【0058】
図16は、中間部材6の横枠材62および当接部63bを示す図である。
図16では、縦枠材61を省略している。また、緩衝材611を破線にて示し、中間部材6を挟む2個のケーソン9の、当接部63bの位置における断面(上下方向に垂直な断面)を示している。
【0059】
図16に示すように、各当接部63bは、当接部本体631と、2個の緩衝部632と、2個のガイド部633とを備える。当接部本体631は、横枠材62の端部に取り付けられ、配列方向(X方向)の両側に突出する。2個の緩衝部632および2個のガイド部633は、当接部本体631における幅方向(Y方向)の内側の面、すなわち、ケーソン9側の面に取り付けられる。2個のガイド部633は、配列方向における当接部本体631の両端部に配置される。各ガイド部633は、配列方向において横枠材62に近づくに従って当接部本体631から離れる傾斜面634を有する。当接部本体631およびガイド部633は、例えば金属等により形成される。
【0060】
2個の緩衝部632は、配列方向における横枠材62の両側近傍に配置される。各緩衝部632は、ガイド部633と横枠材62との間に位置する。緩衝部632は、板状であり、例えばゴム等の弾性材料により形成される。中間部材6では、幅方向においてケーソン9と当接部63bとの間に、設計上の隙間が設けられる。後述するケーソン-装置連結体の曳航時には、ケーソン-装置連結体の揺れにより、ケーソン9と当接部63bとが衝突する場合がある。このような場合でも、中間部材6では、緩衝部632を設けることにより衝突時における衝撃を小さくすることが可能であり、ケーソン9および当接部63bの破損が防止または抑制される。
【0061】
縦枠材61の端部に設けられる各当接部63aは、緩衝部632およびガイド部633が、当接部本体631における上下方向の内側の面(ケーソン9側の面)に取り付けられる点を除き、
図16の当接部63bと同様の構造を有する。上下方向においてもケーソン9と当接部63aとの間に、設計上の隙間が設けられる。ケーソン-装置連結体の曳航時に、ケーソン9と当接部63aとが衝突する場合であっても、緩衝部632を設けることにより衝突時における衝撃を小さくすることが可能である。
【0062】
また、支持部材2の当接部23a,23bも、当接部本体が縦枠材21または横枠材22の端部から幅方向の片側(ケーソン9側)のみに突出し、当接部本体に1個の緩衝部および1個のガイド部が取り付けられる点を除き、中間部材6の当接部63a,63bと同様の構造を有する。支持部材2においても、ケーソン9と当接部23a,23bとの間に、設計上の隙間が設けられる。ケーソン-装置連結体の曳航時に、ケーソン9と当接部23a,23bとが衝突する場合であっても、緩衝部を設けることにより衝突時における衝撃を小さくすることが可能である。
【0063】
浮体連結装置1aを利用したケーソン9の運搬処理では、複数のケーソン9が、陸上(ヤード等)で作製されて準備される(
図6:ステップS11)。ケーソン9は、例えばクレーンを用いて1函ずつ海上に浮かべられる。続いて、海上における所定の連結位置において、複数のケーソン9が配列方向に配列され、配列方向の前側および後側に一対の支持部材2が配置される。また、互いに隣接する2個のケーソン9の間に1個の中間部材6が配置される。このとき、各当接部63a,63bにおいて、ガイド部633(
図16参照)が設けられることにより、ケーソン9と中間部材6とを配列方向に近づける(接触させる)際に、ケーソン9が、配列方向における緩衝部632の側面と接触する等して、緩衝部632(例えば、緩衝部632を当接部本体631に固定するボルト等)が破損することが防止される。ケーソン9と支持部材2とを配列方向に近づける場合も同様である。
【0064】
その後、各接続部材31の一端が、一方の支持部材2における固定部24に固定され、他端が他方の支持部材2における対応する固定部24に固定される。これにより、複数のケーソン9が中間部材6を介して間接的に接触するとともに、一対の支持部材2が両端のケーソン9に接触し、複数のケーソン9が配列方向に連結される(ステップS12)。このとき、一対の支持部材2の間において各接続部材31は弛むことなく、およそ張った状態であるが、複数のケーソン9に作用する配列方向の圧縮力はおよそ0とされる。換言すると、接続部材31では、自重による張力を除き、付与される張力(初期張力)が0とされる。なお、接続部材31は、各中間部材6の接続部材保持部64の貫通孔にも挿入される。
【0065】
海上の連結位置において複数のケーソン9が連結されると(ケーソン-装置連結体が形成されると)、2本の曳航索81のそれぞれが、配列方向に並ぶ索保持部24a,64aの貫通孔に挿入される。各曳航索81の一端は、曳航船8に固定され、他端は、曳航船8とは反対側の支持部材2の索保持部24aに固定される。そして、曳航船8により、ケーソン-装置連結体が曳航され、連結位置から据付位置まで運搬される(ステップS13)。
【0066】
据付位置では、接続部3による一対の支持部材2間の接続が解除され(ステップS14)、複数のケーソン9が浮体連結装置1aから取り外される。その後、ケーソン9が据付位置に据え付けられる。一方、一対の支持部材2、および、複数の中間部材6は、例えば接続部材31を用いて互いに連結され、曳航船8により所定位置(例えば、ドック)まで運搬される(ステップS15)。以上により、浮体連結装置1aを用いた複数のケーソン9の運搬処理が完了する。
【0067】
以上に説明したように、浮体連結装置1aでは、配列方向に配列された複数のケーソン9が、一対の支持部材2により配列方向の前側および後側から挟まれる。また、一対の支持部材2間を分離可能に接続する接続部3により、一対の支持部材2間において複数のケーソン9が配列方向に連結される。これにより、複数のケーソン9を容易に連結することができる。また、一対の支持部材2間における接続部材31の接続および接続の解除を、ケーソン9の外部(支持部材2における固定部24)で行うことができ、浮体連結装置1aを用いたケーソン9の運搬および据え付けを容易に行うことができる。さらに、ケーソン9同士は固定されないため、曳航時におけるサギングおよびホギングによるケーソン9の破損を抑制することができる。
【0068】
ところで、
図13に示すように、第2の実施の形態に係るケーソン9では、一方の側面92に、消波用の複数のスリット98が形成されている。複数のスリット98は、上下方向に延びており、配列方向に配列される。この場合に、仮に、第1の実施の形態のように、接続部3により複数のケーソン9を配列方向に圧縮しつつ連結すると、圧縮力によってはケーソン9が破損する可能性がある。
【0069】
これに対し、浮体連結装置1aでは、支持部材2がケーソン9の面91をほとんど押圧することなく、かつ、接続部材31が弛んでいない状態で複数のケーソン9が配列方向に連結される。その結果、ケーソン9が破損することを防止または抑制することが可能となる。なお、各接続部材31は、およそ張った状態であるため、曳航時においてケーソン9同士が、例えば中間部材6の当接部63a,63bの長さ以上に離れることはない。
【0070】
また、互いに隣接する2個のケーソン9の間に中間部材6が配置され、当該中間部材6が、幅方向および上下方向に関して、当該2個のケーソン9の相対位置のずれを制限する位置ずれ制限部(当接部63a,63b)を有する。これにより、複数のケーソン9を配列方向に圧縮しないで連結する場合でも、幅方向および上下方向に関して、当該2個のケーソン9の相対位置が大きくずれることを防止または抑制することができる。なお、浮体連結装置1aの設計によっては、位置ずれ制限部が、幅方向または上下方向の一方のみに関して、当該2個のケーソン9の相対位置のずれを制限してもよい。
【0071】
ところで、ケーソン9の対向面93に剪断キー931を設ける
図5の例では、複数のケーソン9の連結前に各ケーソン9に複数の剪断キー931を形成し、複数のケーソン9の連結解除後に当該複数の剪断キー931を除去する必要がある。したがって、複数のケーソン9の運搬に係る作業が繁雑になるとともに、運搬に要するコストが増大する。
【0072】
これに対し、中間部材6を用いる浮体連結装置1aでは、複数のケーソン9の運搬において、剪断キー931を形成することなく、ケーソン9同士の位置ずれを防止または抑制することが可能である。その結果、複数のケーソン9の運搬に係る作業を簡素化するとともに、運搬に要するコストを削減することができる。同様に、中間部材6に緩衝材611が取り付けられる浮体連結装置1aでは、ケーソン9に複数の緩衝材932(
図5参照)を設ける必要がないため、複数のケーソン9の運搬に係る作業を簡素化するとともに、運搬に要するコストを削減することができる。
【0073】
上記浮体連結装置1,1a、および、浮体連結装置1,1aを用いた運搬方法では様々な変形が可能である。
【0074】
複数のケーソン9は、必ずしも1列に配列される必要はなく、複数列に配列されてもよい。
図17の例では、曳航方向D1に沿う配列方向(X方向)に並ぶ2個のケーソン9をケーソン列90として、配列方向に垂直な幅方向(Y方向)に2個のケーソン列90が並ぶ。一対の支持部材2は、2個のケーソン列90を配列方向の前側および後側から挟む。各支持部材2の幅は、ケーソン9の幅よりも大きい。また、接続部3の接続部材31は、2個のケーソン列90の間に配置され、一対の支持部材2間において各ケーソン列90を配列方向に圧縮しつつ(または、圧縮することなく)一対の支持部材2間を接続する。これにより、複数のケーソン9が連結される。なお、ケーソン-装置連結体の流体抵抗を低減するという観点では、複数のケーソン9は配列方向に1列に並ぶことが好ましい。一方、複数のケーソン列90を設ける場合には、幅方向の幅が大きくなるため、横揺れに対する復元力を大きくすることが可能となる。
【0075】
また、各支持部材2は、ケーソン9における幅方向の端部のみに接触するものであってもよい。
図18の例では、各支持部材2は、2個の支持要素20を有する。2個の支持要素20は、ケーソン9の被押圧面91において幅方向(Y方向)の両端部にそれぞれ接触する。一対の支持部材2における4個の支持要素20のうち、1個の支持要素20には2個の固定部24が設けられる。また、他の3個の支持要素20には、滑車25が設けられる。
図18の浮体連結装置1では、一方の固定部24に一端が固定された接続部材31が、3個の支持要素20の滑車25を経由し、当該接続部材31の他端が他方の固定部24に固定される。これにより、一対の支持部材2間が分離可能に接続される。
図18の例でも、一対の支持部材2間において複数のケーソン9が配列方向(X方向)に圧縮されつつ(または、圧縮されることなく)連結される。また、
図19に示すように、ケーソン9の配列方向(X方向)と曳航方向D1とが相違してもよい。ケーソン9の配列方向の前側および後側は、便宜的なものであり、必ずしも曳航方向D1の前側および後側である必要はない。
図19の例では、曳航方向D1に垂直な水平方向(
図19の横方向であり、ケーソン9の配列方向)に関する、サギングおよびホギングによる浮体の破損を抑制することが可能となる。
【0076】
浮体連結装置1では、ケーソン9を傾斜させる力と反対方向に揚力が働くように、フロート41の向きが自動制御されてもよい。例えば、浮体連結装置1において、移動速度や、ケーソン9の横揺れを取得するセンサ(加速度センサ等)が設けられる。また、幅方向に平行な軸を中心としてフロート41を回動することにより、フロート41の角度を変更する回動機構が設けられる。そして、浮体連結装置1の移動速度(曳航船8の移動速度)やケーソン9の横揺れのデータから、フロート41における揚力が最大となる角度が求められ、その角度となるように回動機構が自動制御される。浮体連結装置1の設計によっては、フロート部4が翼型以外の形状のフロート41を有してもよい。また、フロート41を減揺に用いない場合等には、フロート41の個数および支持部材2に対する配置は任意に決定されてよい。
【0077】
浮体連結装置1,1aの設計によっては、互いに隣接する2個のケーソン9(隣接ケーソン対)の間において、中間部材6(およびPCケーブル51)が省略されてもよい。この場合、互いに隣接する2個のケーソン9が直接的に接触した状態で、複数のケーソン9が配列方向に連結される。また、一部の隣接ケーソン対の間に中間部材6が設けられ、残りの隣接ケーソン対の間において中間部材6が省略されてもよい。いずれの場合も、浮体連結装置1,1aでは、複数のケーソン9が直接的または間接的に接触した状態で配列方向に連結されることが好ましい。
【0078】
上記第1の実施の形態において、ドック内の最大浸水高さがケーソン9の喫水よりも小さい場合(ドック内においてケーソン9を浮遊させることができない場合)等には、海上の連結位置にて複数のケーソン9が連結されてもよい。上記第2の実施の形態において、ドック内の最大浸水高さがケーソン9の喫水よりも大きい場合等には、ドック内の連結位置にて複数のケーソン9が連結されてもよい。また、複数のケーソン9の連結位置は、陸上(ヤード等)であってもよい。この場合、ケーソン-装置連結体は、クレーン等を用いて海上に浮かべられた後、曳航により据付位置まで運搬される。
【0079】
ケーソン9は、ハイブリッドケーソン以外に、鉄筋コンクリート構造のRCケーソン等であってもよい。また、浮体連結装置1は、ケーソン9以外の構造物である浮体の連結に利用されてもよい。
【0080】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0081】
1,1a 浮体連結装置
2 支持部材
3 接続部
4 フロート部
6 中間部材
9 ケーソン
31 接続部材
41 フロート
44 減揺翼
51 PCケーブル
52 側面プレート
63a,63b 当接部
92 (ケーソンの)側面
411 (フロートの)上面
412 (フロートの)下面
S11~S15 ステップ