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特許7413093エッチング方法、半導体製造装置、および半導体装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】エッチング方法、半導体製造装置、および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240105BHJP
   H10B 43/27 20230101ALI20240105BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240105BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20240105BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20240105BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H10B43/27
H01L29/78 371
H05H1/46 M
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020042953
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021019185
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2019132868
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 知央
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊行
(72)【発明者】
【氏名】林 久貴
(72)【発明者】
【氏名】大村 光広
(72)【発明者】
【氏名】今村 翼
【審査官】船越 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/117130(WO,A1)
【文献】特開2018-073962(JP,A)
【文献】特開昭62-186533(JP,A)
【文献】特開2015-046564(JP,A)
【文献】特開2015-061073(JP,A)
【文献】特開2013-201302(JP,A)
【文献】特開2019-071346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H10B 43/27
H01L 21/336
H01L 29/792
H01L 29/788
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電圧を供給せず、フッ素原子を含む第1のガスを導入することにより、前記第1のガスの液化温度以下の温度で冷却された加工対象物の表面に表面層を形成する第1のステップと、
前記第1のガスとは異なり、前記温度で気体状態の第2のガスを導入し、前記高周波電圧を供給することにより、前記第2のガスからプラズマを生成して前記プラズマを用いたスパッタリングにより前記加工対象物をエッチングする第2のステップと、
を交互に切り替える工程を具備し、
前記高周波電圧を供給せず、前記第1のガスを導入する第3のステップと、
水素原子を含む第3のガスを導入し、前記高周波電圧を供給することにより、前記表面層を改質する第4のステップと、
を交互に切り替える工程をさらに具備する、エッチング方法。
【請求項2】
前記第1のステップと前記第2のステップとを交互に切り替える工程の後に、前記加工対象物に向けて光を照射して前記表面層の残存物を気化させる工程をさらに具備する、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記第1のガスは、組成式C(Cは炭素を表し、Hは水素を表し、Fはフッ素を表し、xは1以上の整数を表し、yは0以上の整数を表し、zは2以上の整数を表す)により表されるフッ化物ガスを含む、請求項1または請求項2に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記第3のガスと異なる第4のガスを導入し、前記高周波電圧を供給することにより前記表面層の改質部の一部を除去する第5のステップをさらに具備する、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記第1のステップは、
前記高周波電圧を供給せず、前記第1のガスの気相領域における第1温度および第1圧力で前記第1のガスを導入する第1のサブステップと、
前記高周波電圧を供給せず、前記第1のガスの液相領域における前記第1温度よりも低い第2温度および第2圧力で前記加工対象物を冷却することにより、液相の前記表面層を形成する第2のサブステップと、
前記高周波電圧を供給せず、前記第1のガスの固相領域における前記第2温度よりも低い第3温度および第3圧力で前記加工対象物を冷却することにより、固相の前記表面層を形成する第3のサブステップと、
前記高周波電圧を供給せず、前記固相領域における第4温度および前記第3圧力よりも低い第4圧力で前記加工対象物を冷却する第4のサブステップと、
を含み、
前記第2のステップは、前記第2のガスを導入し、前記高周波電圧を供給することにより、前記固相領域における前記第4温度および前記第4圧力で前記第2のガスから前記プラズマを生成して前記プラズマを用いたスパッタリングにより前記加工対象物をエッチングする、請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記第2圧力は、前記第1のガスの三重点の圧力よりも高い、請求項に記載のエッチング方法。
【請求項7】
処理室と、
前記処理室に配置される加工対象物をフッ素原子を含む第1のガスの液化温度以下の温度で冷却する冷却装置と、
前記処理室に高周波電圧を供給する電源と、
前記高周波電圧を供給せず前記第1のガスを導入する第1の動作と、前記第1のガスとは異なり、前記温度で気体状態の第2のガスを導入して前記高周波電圧を供給する第2の動作と、を交互に切り替える制御回路と、
を具備し、
前記制御回路は、
前記高周波電圧を供給せず、前記第1のガスを導入する第3の動作と、
水素原子を含む第3のガスを導入し、前記高周波電圧を供給する第4の動作と、
の実行を制御する、半導体製造装置。
【請求項8】
光を照射する光源をさらに具備する、請求項に記載の半導体製造装置。
【請求項9】
前記第1のガスは、組成式C(Cは炭素を表し、Hは水素を表し、Fはフッ素を表し、xは1以上の整数を表し、yは0以上の整数を表し、zは2以上の整数を表す)により表されるフッ化物ガスを含む、請求項または請求項に記載の半導体製造装置。
【請求項10】
前記制御回路は、前記第3のガスと異なる第4のガスを導入し、前記高周波電圧を供給する第5の動作の実行を制御する、請求項7ないし請求項9のいずれか一項に記載の半導体製造装置。
【請求項11】
前記第1の動作は、
前記高周波電圧を供給せず、前記第1のガスの気相領域における第1温度および第1圧力で前記第1のガスを導入する第1のサブ動作と、
前記高周波電圧を供給せず、前記第1のガスの液相領域における前記第1温度よりも低い第2温度および第2圧力で前記加工対象物を冷却する第2のサブ動作と、
前記高周波電圧を供給せず、前記第1のガスの固相領域における前記第2温度よりも低い第3温度および第3圧力で前記加工対象物を冷却する第3のサブ動作と、
前記高周波電圧を供給せず、前記固相領域における第4温度および前記第3圧力よりも低い第4圧力で前記加工対象物を冷却する第4のサブ動作と、
を含む、請求項ないし請求項10のいずれか一項に記載の半導体製造装置。
【請求項12】
前記第2圧力は、前記第1のガスの三重点の圧力よりも高い、請求項11に記載の半導体製造装置。
【請求項13】
半導体基板の上に設けられた被加工膜を備える加工対象物を準備する工程と、
高周波電圧を供給せず、フッ素原子を含む第1のガスを導入することにより、前記第1のガスの液化温度以下の温度で冷却された前記加工対象物の表面に表面層を形成する第1のステップと、前記第1のガスとは異なり、前記温度で気体状態の第2のガスを導入し、前記高周波電圧を供給することにより、前記第2のガスからプラズマを生成して前記プラズマを用いたスパッタリングにより前記加工対象物をエッチングする第2のステップと、を交互に切り替える工程と、
を具備し、
前記高周波電圧を供給せず、前記第1のガスを導入する第3のステップと、
水素原子を含む第3のガスを導入し、前記高周波電圧を供給することにより、前記表面層を改質する第4のステップと、
を交互に切り替える工程をさらに具備する、半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記第1のステップと前記第2のステップとを交互に切り替える工程の後に、前記加工対象物に向けて光を照射して前記表面層の残存物を気化させる工程をさらに具備する、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記第1のガスは、組成式C(Cは炭素を表し、Hは水素を表し、Fはフッ素を表し、xは1以上の整数を表し、yは0以上の整数を表し、zは2以上の整数を表す)により表されるフッ化物ガスを含む、請求項13または請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記第3のガスと異なる第4のガスを導入し、前記高周波電圧を供給することにより前記表面層の改質部の一部を除去する第5のステップをさらに具備する、請求項13ないし請求項15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記第1のステップは、
前記高周波電圧を供給せず、前記第1のガスの気相領域における第1温度および第1圧力で前記第1のガスを導入する第1のサブステップと、
前記高周波電圧を供給せず、前記第1のガスの液相領域における前記第1温度よりも低い第2温度および第2圧力で前記加工対象物を冷却することにより、前記表面層を形成する第2のサブステップと、
前記高周波電圧を供給せず、前記第1のガスの固相領域における前記第2温度よりも低い第3温度および第3圧力で前記加工対象物を冷却する第3のサブステップと、
前記高周波電圧を供給せず、前記固相領域における第4温度および前記第3圧力よりも低い第4圧力で前記加工対象物を冷却する第4のサブステップと、
を含み、
前記第2のステップは、前記第2のガスを導入し、前記高周波電圧を供給することにより、前記固相領域における前記第4温度および前記第4圧力で前記第2のガスから前記プラズマを生成して前記プラズマを用いたスパッタリングにより前記加工対象物をエッチングする、請求項13ないし請求項16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
前記第2圧力は、前記第1のガスの三重点の圧力よりも高い、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
高周波電圧を供給せず、フッ素原子を含む第1のガスを導入することにより、前記第1のガスの液化温度以下の温度で冷却された加工対象物の表面に表面層を形成する第1のステップと、
前記第1のガスとは異なり、前記温度で気体状態の第2のガスを導入し、前記高周波電圧を供給することにより、前記第2のガスからプラズマを生成して前記プラズマを用いたスパッタリングにより前記加工対象物をエッチングする第2のステップと、
を交互に切り替える工程を具備し、
前記第1のステップは、
前記高周波電圧を供給せず、前記第1のガスの気相領域における第1温度および第1圧力で前記第1のガスを導入する第1のサブステップと、
前記高周波電圧を供給せず、前記第1のガスの液相領域における前記第1温度よりも低い第2温度および第2圧力で前記加工対象物を冷却することにより、液相の前記表面層を形成する第2のサブステップと、
前記高周波電圧を供給せず、前記第1のガスの固相領域における前記第2温度よりも低い第3温度および第3圧力で前記加工対象物を冷却することにより、固相の前記表面層を形成する第3のサブステップと、
前記高周波電圧を供給せず、前記固相領域における第4温度および前記第3圧力よりも低い第4圧力で前記加工対象物を冷却する第4のサブステップと、
を含み、
前記第2のステップは、前記第2のガスを導入し、前記高周波電圧を供給することにより、前記固相領域における前記第4温度および前記第4圧力で前記第2のガスから前記プラズマを生成して前記プラズマを用いたスパッタリングにより前記加工対象物をエッチングする、エッチング方法。
【請求項20】
処理室と、
前記処理室に配置される加工対象物をフッ素原子を含む第1のガスの液化温度以下の温度で冷却する冷却装置と、
前記処理室に高周波電圧を供給する電源と、
前記高周波電圧を供給せず前記第1のガスを導入する第1の動作と、前記第1のガスとは異なり、前記温度で気体状態の第2のガスを導入して前記高周波電圧を供給する第2の動作と、を交互に切り替える制御回路と、
を具備し、
前記第1の動作は、
前記高周波電圧を供給せず、前記第1のガスの気相領域における第1温度および第1圧力で前記第1のガスを導入する第1のサブ動作と、
前記高周波電圧を供給せず、前記第1のガスの液相領域における前記第1温度よりも低い第2温度および第2圧力で前記加工対象物を冷却する第2のサブ動作と、
前記高周波電圧を供給せず、前記第1のガスの固相領域における前記第2温度よりも低い第3温度および第3圧力で前記加工対象物を冷却する第3のサブ動作と、
前記高周波電圧を供給せず、前記固相領域における第4温度および前記第3圧力よりも低い第4圧力で前記加工対象物を冷却する第4のサブ動作と、
を含む、半導体製造装置。
【請求項21】
半導体基板の上に設けられた被加工膜を備える加工対象物を準備する工程と、
高周波電圧を供給せず、フッ素原子を含む第1のガスを導入することにより、前記第1のガスの液化温度以下の温度で冷却された前記加工対象物の表面に表面層を形成する第1のステップと、前記第1のガスとは異なり、前記温度で気体状態の第2のガスを導入し、前記高周波電圧を供給することにより、前記第2のガスからプラズマを生成して前記プラズマを用いたスパッタリングにより前記加工対象物をエッチングする第2のステップと、を交互に切り替える工程と、
を具備し、
前記第1のステップは、
前記高周波電圧を供給せず、前記第1のガスの気相領域における第1温度および第1圧力で前記第1のガスを導入する第1のサブステップと、
前記高周波電圧を供給せず、前記第1のガスの液相領域における前記第1温度よりも低い第2温度および第2圧力で前記加工対象物を冷却することにより、前記表面層を形成する第2のサブステップと、
前記高周波電圧を供給せず、前記第1のガスの固相領域における前記第2温度よりも低い第3温度および第3圧力で前記加工対象物を冷却する第3のサブステップと、
前記高周波電圧を供給せず、前記固相領域における第4温度および前記第3圧力よりも低い第4圧力で前記加工対象物を冷却する第4のサブステップと、
を含み、
前記第2のステップは、前記第2のガスを導入し、前記高周波電圧を供給することにより、前記固相領域における前記第4温度および前記第4圧力で前記第2のガスから前記プラズマを生成して前記プラズマを用いたスパッタリングにより前記加工対象物をエッチングする、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エッチング方法、半導体製造装置、および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元メモリ等の半導体装置の製造方法において、フッ素化炭化水素化合物を含むエッチングガスを用いたエッチングにより加工対象物に開口を形成する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6408903号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の発明が解決しようとする課題は、より高いエッチングレートを有するエッチング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のエッチング方法は、高周波電圧を供給せず、フッ素原子を含む第1のガスを導入することにより、第1のガスの液化温度以下の第1温度で冷却された加工対象物の表面に表面層を形成する第1のステップと、第1のガスとは異なり、第1温度で気体状態の第2のガスを導入し、高周波電圧を供給することにより、第2のガスからプラズマを生成してプラズマを用いたスパッタリングにより加工対象物をエッチングする第2のステップと、を交互に切り替える工程を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】半導体装置の製造方法例を説明するためのフローチャートである。
図2】加工対象物の構造例を示す断面模式図である。
図3】半導体製造装置の構成例を示す模式図である。
図4】エッチング方法例を説明するためのタイミングチャートである。
図5】第1のステップを説明するための断面模式図である。
図6】加工対象物に供給されるガスの状態の違いによる表面層の形状の違いを説明するための断面模式図である。
図7】加工対象物に供給されるガスの状態の違いによる表面層の形状の違いを説明するための断面模式図である。
図8】第2のステップを説明するための断面模式図である。
図9】メモリ層形成工程を説明するための断面模式図である。
図10】半導体装置の製造方法の他の例を説明するためのフローチャートである。
図11】半導体製造装置の他の構成例を示す模式図である。
図12】エッチング方法の他の例を説明するためのタイミングチャートである。
図13】照射工程を説明するための断面模式図である。
図14】照射工程を説明するための断面模式図である。
図15】半導体装置の製造方法の他の例を説明するためのフローチャートである。
図16】半導体製造装置の他の構成例を示す模式図である。
図17】保護工程の例を説明するためのタイミングチャートである。
図18】第4のステップを説明するための断面模式図である。
図19】第5のステップを説明するための断面模式図である。
図20】半導体装置の製造方法の他の例を説明するためのフローチャートである。
図21】エッチング方法の他の例を説明するためのタイミングチャートである。
図22】第1のガスの状態の例を示す相図である。
図23】温度および圧力の違いによる表面層の形状の違いを説明するための断面模式図である。
図24】温度および圧力の違いによる表面層の形状の違いを説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。図面に記載された各構成要素の厚さと平面寸法との関係、各構成要素の厚さの比率等は現物と異なる場合がある。また、実施形態において、実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し適宜説明を省略する。
【0008】
<第1の実施形態>
図1は、半導体装置の製造方法例を説明するためのフローチャートである。半導体装置は、例えば3次元メモリである。半導体装置の製造方法例は、準備工程(S1)と、エッチング工程(S2)と、メモリ層形成工程(S3)と、を具備する。
【0009】
[準備工程]
準備工程では、エッチング工程においてエッチング対象である加工対象物を準備する。図2は、加工対象物の構造例を示す断面模式図であり、基板101のX軸とX軸およびX軸に直交するY軸に直交するZ軸とを含むX-Z断面の一部を示す。
【0010】
加工対象物10は、基板101と、基板101の上に設けられた下地層102と、下地層102の上に交互に積層された第1の層103と第2の層104とを有する積層と、積層の上に設けられた導電膜105と、導電膜105の上に設けられたマスク層106と、内壁面HAと底面HBとを有し導電膜105を貫通して積層の一部を露出させる開口Hと、を備える。下地層102、第1の層103、第2の層104、導電膜105、およびマスク層106は、基板101の上に設けられる被加工膜の一例であって、被加工膜は上記構成に限定されない。
【0011】
基板101としては、例えばシリコン基板、炭化ケイ素基板等の半導体基板、ガラス基板、石英基板、サファイア基板等の絶縁基板、またはGaAs基板等の化合物半導体基板を用いることができる。
【0012】
下地層102としては、例えば酸化シリコン膜や窒化シリコン膜等の絶縁膜や絶縁膜間の導電層を用いることができる。下地層102は必ずしも設けなくてもよいが、その場合は、基板101上に第1の層103が形成される。また、下地層102上に第1の層103を形成してもよい。
【0013】
第1の層103は、犠牲層である。犠牲層は、後に導電層が形成される領域である。第1の層103としては、例えば窒化シリコン膜を用いることができる。
【0014】
第2の層104としては、例えば酸化シリコン膜を用いることができる。
【0015】
導電膜105としては、例えば化学気相成長(CVD)法により形成された炭素膜(CVDカーボン膜)を用いることができる。
【0016】
マスク層106は、導電膜105の一部をエッチングするためのマスクとしての機能を有する。マスク層106としては、例えば有機ハードマスク等を用いることができる。なお、マスク層106は、導電膜105の一部をエッチングした後に除去されてもよい。
【0017】
[エッチング工程]
(エッチング装置の構成例)
図3は、エッチング工程に使用可能な半導体製造装置(エッチング装置)の構成例を示す模式図である。エッチング装置1は、処理室2と、電極3と、電極4と、ガス供給部5と、ガス排出部6と、冷却装置7と、電源部8と、制御回路9と、を具備する。
【0018】
処理室2は、プラズマを用いたスパッタリングにより加工対象物10をエッチング(プラズマエッチング)することが可能な空間である。なお、処理室2は、加工対象物10を搬入および搬出するための扉(ゲート)を有していてもよい。
【0019】
電極3は、下部電極であり、加工対象物10を載置するための載置台としての機能を有する。電極3は、加工対象物10の載置面である表面3aを有する。なお、エッチング装置1は、加工対象物10を保持するための静電チャックを有していてもよい。
【0020】
電極4は、上部電極である。電極4は、表面4aと、電極4を貫通してガスを処理室2に導入するための開口4bと、を有する。開口4bは、表面4aに複数の導入口を有する。
【0021】
ガス供給部5は、シリンダーキャビネット等のガス供給源51と、マスフローコントローラ52と、を有する。ガス供給部5は、ガス供給源51から処理室2にガスを供給する。
【0022】
ガス供給源51は、第1のガス(GAS1)と、第2のガス(GAS2)と、を収容する。第1のガスおよび第2のガスは、ガスボンベ等の容器にそれぞれ収容される。
【0023】
第1のガスは、フッ素原子を含む。第1のガスは、例えば組成式C(Cは炭素を表し、Hは水素を表し、Fはフッ素を表し、xは1以上の整数を表し、yは0以上の整数を表し、zは2以上の整数を表す)により表されるフッ化物ガスを含んでいてもよい。第2のガスは、第1のガスとは異なり、第1のガスの液化温度以下の温度で気体状態のガスであり、例えばアルゴンガスまたはクリプトンガス等の不活性ガスを含む。
【0024】
マスフローコントローラ52は、ガス供給源51から処理室2に導入する第1のガスの流量および第2のガスの流量のそれぞれを調整する。
【0025】
ガス排出部6は、バルブ61と、ターボ分子ポンプ62と、ドライポンプ63と、を有する。ガス排出部6は、処理室2の内部を減圧して真空状態にする機能を有するとともに、処理室2内のガスを排出する機能を有する。
【0026】
冷却装置7は、例えばチラー71と、電極3の内部の冷媒管72と、を備える。チラー71は、冷媒管72を介して冷媒を循環させることにより加工対象物10を冷却する。
【0027】
電源部8は、交流電圧を供給する電源81と、マッチングボックス等の整合回路82と、を有する。電源部8は、整合回路82により処理室2と電源81との間のインピーダンスを整合し、高周波電圧(RF)を処理室2に供給する機能を有する。高周波電圧は、例えば200kHz以上200MHz以下の周波数を有する交流電圧である。
【0028】
制御回路9は、マスフローコントローラ52および電源81を制御する。制御回路9は、例えばプロセッサ等を用いたハードウェアを用いて構成される。なお、各動作を動作プログラムとしてメモリ等のコンピュータ読み取りが可能な記録媒体に保存しておき、ハードウェアにより記録媒体に記憶された動作プログラムを適宜読み出すことで各動作を実行してもよい。
【0029】
(エッチング方法例)
エッチング工程は、図1に示すように、加工対象物10の表面に表面層を形成する第1のステップ(S2-1)と加工対象物10をエッチングする第2のステップ(S2-2)とを、例えば開口Hのアスペクト比が所望の値以上になるまで、交互に切り替える工程を含む。
【0030】
図4は、エッチング方法例を説明するためのタイミングチャートである。第1のステップ(S2-1)および第2のステップ(S2-2)は、制御回路9によりマスフローコントローラ52および電源81を制御し、高周波電圧を供給せず(RF:OFF)に第1のガスを導入する(GAS1:ON)第1の動作と、第2のガスを導入して(GAS2:ON)高周波電圧を供給する(RF:ON)第2の動作と、を交互に切り替えることにより行われる。
【0031】
第1のステップ(S2-1)では、制御回路9により電源81を制御して電源部8により処理室2の電極3と電極4との間に高周波電圧を印加せず、制御回路9によりマスフローコントローラ52を制御してガス供給源51から開口4bを介して処理室2に第1のガスを導入する。第1のガスを導入する前に、制御回路9によりマスフローコントローラ52を制御して第2のガスの処理室2への導入を停止する(GAS2:OFF)。
【0032】
図5は、第1のステップを説明するための断面模式図であり、X-Z断面の一部を示す。第1のステップでは、処理室2の電極3の表面3aに配置された加工対象物10の表面に表面層11を形成する。表面層11は、開口Hの内壁面HAに沿って延在する第1の領域11aと、開口Hの底面HBに沿って延在する第2の領域11bと、マスク層106(加工対象物10の最上層)の上面に沿って延在する第3の領域11cと、を有する。
【0033】
表面層11は、液体または固体であり、フッ素原子を含む。
【0034】
表面層11は、プラズマやラジカル状態でないガス状態でのガスの供給と、冷却装置7により第1のガスの液化温度以下の温度で加工対象物10を冷却することにより形成される。第1のガスの液化温度は、処理室2の圧力と第1のガスの蒸気圧曲線に応じて一義的に決めることができる。加工対象物10は、例えば-150℃以下の温度で冷却されることが好ましい。なお、第2のガスは、第1のガスの液化温度以下の温度において不活性である。
【0035】
図6および図7は、加工対象物10に供給されるガスの状態の違いによる表面層11の形状の違いを説明するための断面模式図であり、X-Z断面の一部を示す。
【0036】
第1のステップにおいて、高周波電圧が供給され、第1のガスからプラズマやラジカルが生成される場合、Cのプラズマやラジカルは不対電子を有するため、不対電子の周りの立体障害が小さく、開口Hの内壁面HAに付着しやすく、底面HBに到達しにくい。また、プラズマやラジカルは付着確率が高いため、第1のガスの液下温度に関わらず加工対象物10に形成され得る(例えば-70℃)。よって、表面層11は、図6に示すように、内壁面HAの上部やマスク層106の上部に厚く形成される一方、底面HBには形成されにくい。この場合、底面HBはエッチングされにくいため、エッチングレートが低下する。
【0037】
これに対し、第1のステップにおいて、高周波電圧を供給せずプラズマやラジカルでない第1のガスを供給する場合、第1のガスをガス状態のまま底面HBに到達させることができる。また、加工対象物10を第1のガスの液化温度以下の温度(例えば-150℃)で冷却することより、内壁面HAや底面HBに到達したガスが液体または固体となり表面層11が形成される。よって、底面HBに表面層11を形成しやすくできるため、図7に示すように第1の領域11aないし第3の領域11cを形成することができる。この場合、底面HBは第2の領域11bによりエッチングされやすくなるため、エッチングレートが向上する。
【0038】
第2のステップ(S2-2)では、制御回路9によりマスフローコントローラ52を制御してガス供給源51から開口4bを介して処理室2に第2のガスを導入し、制御回路9により電源81を制御して電源部8により処理室2の電極3と電極4との間に高周波電圧を印加する。第2のガスを導入する前に、制御回路9によりマスフローコントローラ52を制御して第1のガスの処理室2への導入を停止する(GAS1:OFF)。
【0039】
図8は、第2のステップを説明するための断面模式図であり、X-Z断面の一部を示す。第2のステップでは、第2のガスからプラズマを生成し、プラズマ(図8ではアルゴンプラズマ)を用いたスパッタリングにより加工対象物10および表面層11をエッチングする。
【0040】
プラズマは、電極3に向かって移動する。よって、第1の層103および第2の層104は、第2のステップにより主に第2の領域11bおよび第3の領域11cとともにエッチングされる。これにより、開口Hのアスペクト比を高めることができる。
【0041】
エッチング工程では、第1のステップ、第2のステップにおいて、第1のガス、第2のガスをそれぞれ導入する前に処理室2の内部のガスをガス排出部6により排出することができる。
【0042】
第1のステップの期間、第2のステップの期間、および第1のステップと第2のステップとを切り替えるタイミングは、例えば表面層11の厚さをエリプソメータ等の測定器を用いてin-situで監視し、第1の領域11aないし第3の領域11cの厚さのそれぞれの関係を示すデータを取得し、上記データに応じて制御されてもよい。例えば、表面層11の不足によりエッチングが停止する前に上記データに応じて第1のステップと第2のステップとを切り替えることが好ましい。
【0043】
以上のように、表面層を形成する第1のステップとエッチングを行う第2のステップとを設け、高周波電圧を供給しない期間と第1のガスを導入する期間とを同期させて第1のステップと第2のステップとを交互に切り替えることにより、高アスペクト比の開口Hを形成する場合であってもエッチングレートを向上させて高速なエッチングを実現することができる。
【0044】
(メモリ層形成工程)
図9はメモリ層形成工程を説明するための断面模式図であり、X-Z断面の一部を示す。メモリ層形成工程では、ブロック絶縁膜193と、電荷蓄積層192と、トンネル絶縁膜191とを含むメモリ膜109と、半導体チャネル層108と、コア絶縁膜107とを開口Hにこの順に形成する。コア絶縁膜107、半導体チャネル層108、メモリ膜109は、メモリセルを構成するメモリ層として機能する。
【0045】
コア絶縁膜107としては、例えば酸化シリコン膜を用いることができる。半導体チャネル層108としては、例えばポリシリコン層を用いることができる。トンネル絶縁膜191としては、例えば酸化シリコン膜と酸窒化シリコン膜とを有する積層膜を用いることができる。電荷蓄積層192としては、例えば窒化シリコン膜を用いることができる。ブロック絶縁膜193としては、例えば酸化シリコン膜を用いることができる。
【0046】
メモリ膜109を形成した後に、第1の層103を除去し、第2の層104の間に空洞を形成し、空洞内に複数の導電膜を積層することにより導電層110を形成する。導電層110は例えばゲート電極(ワード線)としての機能を有する。さらに、基板101の上にコンタクトプラグや、配線、層間絶縁膜等を形成する。これにより半導体装置を製造することができる。
【0047】
<第2の実施形態>
図10は、半導体装置の製造方法の他の例を説明するためのフローチャートである。半導体装置は、例えば3次元メモリである。半導体装置の製造方法の他の例は、準備工程(S1)と、エッチング工程(S2)と、メモリ層形成工程(S3)と、を具備する。なお、準備工程およびメモリ層形成工程は、第1の実施形態と同じであるため、本実施形態では説明を省略する。
【0048】
[エッチング工程]
(エッチング装置の他の構成例)
図11は、エッチング工程に使用可能な半導体製造装置(エッチング装置)の他の構成例を示す図である。エッチング装置1は、処理室2と、電極3と、電極4と、ガス供給部5と、ガス排出部6と、冷却装置7と、電源部8と、制御回路9と、光源12と、を具備する。図3に示すエッチング装置1と同じ部分については第1の実施形態の説明を適宜援用する。
【0049】
光源12は、光(L)を照射する機能を有する。光源12は、制御回路9により制御される。光は、例えば赤外光、可視光、または紫外光である。光源12からの光は、例えば表面3aに向かって延在し円形の平面形状を有する光導波路13を通り加工対象物10の表面に到達する。なお、光を透過する透過体14を光導波路13を塞ぐように設けることにより、光源12がプラズマにより劣化することを抑制することができる。また、エッチング工程後に処理室2の真空状態を維持したまま酸素プラズマクリーニング等の処理を実施して透過体14のクリーニングを行うことができる。
【0050】
(エッチング方法の他の例)
エッチング工程は、図10に示すように、第1のステップ(S2-1)と第2のステップ(S2-2)とを、例えば開口Hのアスペクト比が所望の値に到達するまで、交互に切り替える工程と、第1のステップと第2のステップとを交互に切り替える工程の後に、例えば表面層11における第1の領域11aの厚さが所定の値以上になった場合に加工対象物10に向けて光(L)を照射する照射工程(S2-3)と、を含む。
【0051】
図12は、エッチング方法の他の例を説明するためのタイミングチャートである。第1のステップ(S2-1)および第2のステップ(S2-2)は、図4を参照して説明したエッチング方法例と同様に制御回路9によりマスフローコントローラ52および電源81を制御し、高周波電圧を供給せずに第1のガスを導入する第1の動作と、第2のガスを導入して高周波電圧を供給する第2の動作と、を交互に切り替えることにより行われる。よって、第1の実施形態の説明を適宜援用する。
【0052】
照射工程(S2-3)は、制御回路9により光源12を制御し、第1の動作と第2の動作とを交互に切り替えた後に、加工対象物10に向けて光を照射する(L:ON)動作を制御することにより行われる。照射工程での光の照射時間は、第1のステップの期間や第2のステップの期間よりも長い。なお、照射工程の間も加工対象物10は、第1のガスの液化温度以下の温度で冷却されていることが好ましい。また、照射工程以外の期間では光の照射を停止することが好ましい(L:OFF)。
【0053】
図13および図14は、照射工程を説明するための断面模式図であり、X-Z断面の一部を示す。第1のステップと第2のステップとを交互に切り替える工程において、表面層11は、プラズマの移動方向に略垂直な第2の領域11bおよび第3の領域11cが優先的に消費されるため薄くなりやすい。一方、プラズマの移動方向に略平行な第1の領域11aは消費されにくいため厚くなりやすい。よって、第1のステップと第2のステップとの切り替えを続けると、第1の領域11aが残存して開口Hを閉塞する可能性がある。
【0054】
これに対し、照射工程では、図13に示すように加工対象物10に向けて光源12から光を照射することにより、図14に示すように表面層11の残存物(第1の領域11aの残存物を含む)を熱で気化させて除去することができる。このとき、下地層102、第1の層103、第2の層104、導電膜105、マスク層106等の他の層は、照射光を吸収しないため気化せずに残存する。
【0055】
照射工程の期間は、例えば表面層11の厚さをエリプソメータ等の測定器を用いてin‐situで監視し、第1の領域11aないし第3の領域11cの厚さのそれぞれの関係を示すデータを取得し、上記データに応じて制御されてもよい。例えば、第2の領域11bの厚さが所定の値以上になったときに照射工程を行うことが好ましい。
【0056】
以上のように、エッチング方法の他の例では、第1のステップと第2のステップとを交互に切り替える工程の後に加工対象物10に向けて光を照射することにより、表面層11の残存物を除去して開口Hの閉塞を抑制することができる。なお、照射工程後に開口Hのアスペクト比が所望の値未満であれば、第1のステップと第2のステップとを交互に切り替える工程を再度実施してもよい。
【0057】
なお、第1の実施形態では高周波電圧を供給せずプラズマやラジカルでない第1のガスを供給する例について説明したが、第2の実施形態はこれに限定されず、例えば高周波電圧を供給して第1のガスから生成されたプラズマやラジカル由来の表面層を除去する場合であっても上記照射工程を適用することができる。
【0058】
<第3の実施形態>
図15は、半導体装置の製造方法の他の例を説明するためのフローチャートである。半導体装置は、例えば3次元メモリである。半導体装置の製造方法の他の例は、準備工程(S1)と、エッチング工程(S2)と、メモリ層形成工程(S3)と、を具備する。なお、準備工程およびメモリ層形成工程は、第1の実施形態と同じであるため、本実施形態では説明を省略する。
【0059】
[エッチング工程]
(エッチング装置の他の構成例)
図16は、エッチング工程に使用可能な半導体製造装置(エッチング装置)の他の構成例を示す図である。エッチング装置1は、処理室2と、電極3と、電極4と、ガス供給部5と、ガス排出部6と、冷却装置7と、電源部8と、制御回路9と、を具備する。図3に示すエッチング装置1と同じ部分については第1の実施形態の説明を適宜援用する。
【0060】
電源部8は、電源81Aと、電源81Bと、整合回路82Aと、整合回路82Bと、を具備する。電源81Aは、図3に示す電源81に相当し、整合回路82Aにより処理室2と電源81Aとの間のインピーダンスを整合し、例えば13.56MHz以下の周波数を有する高周波電圧(RF)を処理室2に供給する機能を有する。電源81Bは、整合回路82Bにより処理室2と電源81Bとの間のインピーダンスを整合し、例えば40MHz以上の周波数を有する高周波電圧(RF2)を処理室2に供給する機能を有する。電源81Aおよび81Bは、制御回路9に接続される。
【0061】
ガス供給源51は、第3のガス(GAS3)と、第4のガス(GAS4)と、第5のガス(GAS5)と、をさらに収容する。第3のガス、第4のガス、および第5のガスは、ガスボンベ等の容器にそれぞれ収容される。第3のガスは、水素原子を含む。第3のガスは、例えば硫化水素(HS)を含んでいてもよい。第4のガスは、水素原子または酸素原子を含むガス、ハロゲン原子を含むガス、等のエッチング可能なガスを含む。第5のガスは、シリコンやタングステンを含むガス(SiFやWFを含むガス)を含む。なお、ガスの詳細については後述する。
【0062】
マスフローコントローラ52は、ガス供給源51から処理室2に導入する第1のガスの流量、第2のガスの流量、第3のガスの流量、および第4のガスの流量のそれぞれを調整する。
【0063】
(エッチング方法の他の例)
エッチング工程は、図15に示すように、第1のステップ(S2-1)と第2のステップ(S2-2)とを、交互に切り替える工程(S2-1、S2-2切替)と、S2-1、S2-2切替後に、第3のステップ(S2-4)と第4のステップ(S2-5)とを交互に切り替えて開口Hの内壁面HAを保護する保護膜を形成する工程(保護工程)と、を含む。図15に示すように、保護工程の後に、再びS2-1、S2-2切替を繰り返しても良いし、第1のステップ(S2-1)と第2のステップ(S2-2)との切替の繰り返し処理と、第3のステップ(S2-4)と第4のステップ(S2-5)との切替の繰り返し処理と、を交互に複数回行うこともできる。なお、第1のステップ(S2-1)と第2のステップ(S2-2)の繰り返し回数、および第3のステップ(S2-4)と第4のステップ(S2-5)の繰り返し回数は、特に限定されない。第3のステップ(S2-4)および第4のステップ(S2-5)は、例えば保護膜の厚さが所望の値以上になるまで交互に繰り返される。
【0064】
図17は、保護工程の例を説明するためのタイミングチャートである。第3のステップ(S2-4)および第4のステップ(S2-5)は、制御回路9によりマスフローコントローラ52、電源81A、および電源81Bを制御し、高周波電圧RFおよびRF2を供給せずに第1のガスを導入する(GAS1:ON)第3の動作と、第3のガスを導入して(GAS3:ON)高周波電圧RF2を供給する(RF2:ON)第4の動作と、を交互に切り替えることにより行われる。
【0065】
第3のステップ(S2-4)では、制御回路9により電源81A、電源81Bを制御し、処理室2の電極3と電極4との間に高周波電圧RFおよびRF2を印加せず、制御回路9によりマスフローコントローラ52を制御してガス供給源51から開口4bを介して処理室2に第1のガスを導入する。
【0066】
第3のステップ(S2-4)では、第1の実施形態の第1の動作と同様に、高周波電圧RFおよびRF2を供給せずプラズマやラジカル状態でない第1のガスを供給するため、第1のガスをガス状態のまま開口Hの底面HBに到達させることができる。また、加工対象物を第1のガスの液化温度以下の温度(例えば-150℃の温度)で冷却することより、開口Hの内壁面HAや底面HBに到達したガスが液体または固体となり表面層11を形成できる。
【0067】
第4のステップ(S2-5)では、制御回路9によりマスフローコントローラ52を制御してガス供給源51から開口4bを介して処理室2に第3のガスを導入し、制御回路9により電源81Bを制御して電源部8により処理室2の電極3と電極4との間に高周波電圧RF2を印加する。第3のガスを導入する前に、制御回路9によりマスフローコントローラ52を制御して第1のガスの処理室2への導入を停止する(GAS1:OFF)。
【0068】
第4のステップ(S2-5)では、高周波電圧RF2を供給し、第3のガスを導入することにより、表面層11からフッ素等を離脱させて表面層11を改質させて保護膜を形成する。高周波電圧RF2は、高周波電圧RFよりも周波数が高いため、自己バイアス電圧が生じにくい。
【0069】
第4のステップ(S2-5)において、高周波電圧RF2に加えて高周波電圧RFを重畳させることにより、表面層11を改質させるとともに、例えば表面層11の第2の領域11bの改質部を除去できる。
【0070】
エッチング工程は、図15に示すように、保護工程の後であってS2-1、S2-2切替の前に第5のステップ(S2-6)をさらに含んでいてもよい。第5のステップ(S2-6)は、制御回路9によりマスフローコントローラ52および電源81Aを制御し、第4のガスを導入し、高周波電圧RFを供給する第5の動作を実行することにより行われる。
【0071】
第5のステップ(S2-6)では、制御回路9によりマスフローコントローラ52を制御してガス供給源51から開口4bを介して処理室2に第4のガスを導入し、制御回路9により電源81Aを制御して電源部8により処理室2の電極3と電極4との間に高周波電圧RFを印加する。第4のガスを導入する前に、制御回路9によりマスフローコントローラ52を制御して第3のガスの処理室2への導入を停止する(GAS3:OFF)。
【0072】
図18は、第4のステップ(S2-5)を説明するための断面模式図であり、X-Z断面の一部を示す。図19は、第5のステップ(S2-6)を説明するための断面模式図であり、X-Z断面の一部を示す。第4のステップ(S2-5)において、高周波電圧RF2を供給し、第3のガスからプラズマやラジカルを生成する場合、表面層11の少なくとも一部が改質され、例えば図18に示すように、開口Hの内壁面HAおよび底面HBに沿って改質表面層11Aが形成される。これに対し、第5のステップ(S2-6)により、図19に示すように、改質表面層11Aの第2の領域11bおよび第3の領域11cの改質部を除去できるため、その後のS2-1、S2-2切替による開口Hのエッチングをスムーズに進めることができる。
【0073】
第1、第2、第3、第4のガスは、それぞれ、CxHyFzを含むガス、希ガスを含むガス、水素を含むガス、水素または酸素を含むガスであってもよい。また、第3のステップ(S2-4)において第1のガスの代わりに第5のガスを用いることもでき、その場合には第1、第2、第3、第4、第5のガスは、それぞれ、CxHyFzを含むガス、希ガスを含むガス、水素を含むガス、ハロゲンを含むガス、シリコンやタングステンを含むガス(SiClもしくはSiF4、またはWFを含むガス)であってもよいし、それぞれ、CxHyFzを含むガス、希ガスを含むガス、酸素を含むガス、ハロゲンを含むガス、シリコンやタングステンを含むガス(SiClもしくはSiF4、またはWFを含むガス)であってもよい。
【0074】
希ガスを含むガスは、例えばHe,Ne、Ar,Kr、Xeを含み、エッチングの促進のために好適である。水素を含むガスは、例えばH、HS、HO、NH、HBr、HCl、HI、SiHを含み、フッ素の脱離のために好適である。水素または酸素を含むガスは、例えばH、HO、O、COを含み、改質部の除去のために好適である。ハロゲンを含むガスは、Cl、HBr、CF、Cを含み、加工対象物10に形成されるシリコン膜や酸化シリコン膜等の膜の除去のために好適である。酸素を含むガスは、例えばO、HO、NO、NO、CO、COを含み、表面層11の酸化のために好適である。
【0075】
第3のガスが水素原子または酸素原子を含む場合、表面層11中のフッ素原子を水素原子または酸素原子と反応させて脱離させることができる。これにより、例えば表面層11よりもカーボンリッチな改質表面層11Aを形成でき、改質表面層11Aのフッ素濃度を表面層11中のフッ素濃度よりも低減できる。これにより、高エネルギーのイオンが改質表面層11Aに入射しても開口Hの内壁面HAのエッチングを抑制できる。
【0076】
第3のステップ(S2-4)において第5のガス、例えばSiClを用いる場合、第4のステップ(S2-5)において水素を含むガスによってClをHClとして表面層11から引き抜いて除去することにより、シリコン膜を形成して内壁面HAを保護できる。また第4のステップ(S2-5)において、酸素を含むガスを用いる場合、SiClの表面層11を酸化し、シリコン酸化物膜を形成して内壁面HAを保護できる。
【0077】
本実施形態では、表面層11を改質することによりエッチング耐性を高めて開口Hの内壁面HAのエッチングを抑制する。これにより、高アスペクト比の開口Hを形成しやすくできる。
【0078】
なお、本実施形態は、他の実施形態と適宜組み合わせることができる。
【0079】
<第4の実施形態>
図20は、半導体装置の製造方法の他の例を説明するためのフローチャートである。半導体装置は、例えば3次元メモリである。半導体装置の製造方法の他の例は、準備工程(S1)と、エッチング工程(S2)と、メモリ層形成工程(S3)と、を具備する。なお、準備工程およびメモリ層形成工程は、第1の実施形態と同じであるため、本実施形態では説明を省略する。
【0080】
[エッチング工程]
(エッチング装置の他の構成例)
エッチング工程に使用可能な半導体製造装置(エッチング装置)は、第1の実施形態の半導体製造装置と同じ構成要素を具備する。図3に示すエッチング装置1と同じ部分については第1の実施形態の説明を適宜援用する。
【0081】
本実施形態の半導体製造装置は、加工対象物10の冷却温度および処理室2内の圧力を変化させることができる。加工対象物10の冷却温度は、例えば制御回路9により冷却装置7を制御することにより調整できる。処理室2内の圧力は、例えば制御回路9によりマスフローコントローラ52を制御することにより調整できる。
【0082】
(エッチング方法の他の例)
エッチング工程は、図20に示すように、第1のステップ(S2-1)と第2のステップ(S2-2)とを、例えば開口Hのアスペクト比が所望の値に到達するまで、交互に切り替える工程を含み、第1のステップ(S2-1)が第1のサブステップ(S2-1-1)と、第2のサブステップ(S2-1-2)と、第3のサブステップ(S2-1-3)と、第4のサブステップ(S2-1-4)と、を含む。
【0083】
図21は、エッチング方法の他の例を説明するためのタイミングチャートである。第1のサブステップ(S2-1-1)ないし第4のサブステップ(S2-1-4)は、制御回路9により、冷却装置7およびマスフローコントローラ52を制御して、第1のガスの相図に応じて温度および圧力を変化させることにより行われる。
【0084】
図22は、第1のガスの状態の例を示す相図である。第1のガスの相図は、温度を示す横軸と、圧力を示す縦軸により表され、図22に示すように、気相領域と、液相領域と、固相領域と、気相、液相、および固相の三重点と、を有する。
【0085】
第1のサブステップ(S2-1-1)では、制御回路9により電源81を制御して電源部8により処理室2の電極3と電極4との間に高周波電圧を印加せず(RF:OFF)、制御回路9により冷却装置7およびマスフローコントローラ52を制御して第1のガスの固相領域における第1温度および第1圧力(図22の(1))でガス供給源51から開口4bを介して処理室2に第1のガスを導入する(第1のサブ動作)。第1温度は、例えば三重点の温度よりも高い。第1圧力は、例えば三重点の圧力よりも高い。なお、制御回路9によりマスフローコントローラ52を制御して第2のガスを処理室2に導入する(GAS2:ON)。第2のガスは、図21に示すように、第1のサブステップ(S2-1-1)ないし第4のサブステップ(S2-1-4)、および第2のステップ(S2-2)の間、処理室2に導入されることが好ましい。これにより、処理室2内の圧力の低下を抑制できる。
【0086】
第2のサブステップ(S2-1-2)では、制御回路9により電源81を制御して電源部8により処理室2の電極3と電極4との間に高周波電圧を印加せず(RF:OFF)、制御回路9により冷却装置7およびマスフローコントローラ52を制御して第1のガスの液相領域における第1温度よりも低い第2温度および第2圧力(図22の(2))で加工対象物10を冷却する(第2のサブ動作)。
【0087】
第2のサブステップ(S2-1-2)では、第1のガスの液相領域における第2温度および第2圧力で加工対象物10を冷却することにより、加工対象物10の表面に液相の表面層11を形成する。液相の表面層11は、固相の表面層11よりも流動性が高い。よって、液相の表面層11を形成することにより、底面HBにも表面層11を形成しやすくできる。
【0088】
第2温度は、例えば第1温度よりも低く三重点の温度よりも高い。第2圧力は、第1のガスの三重点の圧力よりも高いことが好ましい。三重点の圧力よりも低い第2圧力の場合、第1のガスは、図22に示すように、温度の低下に伴い気相から固相に直接変化するため、液相の形成が困難である。また、圧力を高めることにより液相領域を広げることができる。第1のガスの三重点は、ガス種毎に異なり、CHFガスの場合、三重点の温度は例えば-155℃であり、圧力は例えば456mTorrである。Cガスの場合、三重点の温度は例えば-40.04℃である。CFガスの場合、三重点の温度は例えば-183.5℃である。SFガスの場合、三重点の温度は、例えば-49.445℃である。なお、三重点は、使用する処理室2や温度および圧力の計測方法によりズレが発生する場合があるため、使用する装置において相変化する温度や圧力を確認することが好ましい。第2圧力は、第1圧力と同じ圧力であってもよい。
【0089】
図23および図24は、相状態の違いによる表面層11の形状の違いを説明するための断面模式図であり、X-Z断面の一部を示す。
【0090】
第2のサブステップ(S2-1-2)において、第1のガスの固相領域において固相の表面層11を形成する場合、表面層11の固相が低い流動性を有するため、図23に示すように、開口Hの底面HBにおいて表面層11(第2の領域11b)が形成されにくい。この場合、底面HBはエッチングされにくいため、エッチングレートが低下する。
【0091】
これに対し、第2のサブステップ(S2-1-2)において、第1のガスの液相領域において液相の表面層11を形成する場合、表面層11の液相が高い流動性を有するため、図24に示すように、底面HBに表面層11を厚く形成できるため、第1の領域11aないし第3の領域11cを形成することができる。この場合、底面HBは第2の領域11bによりエッチングされやすくなるため、エッチングレートが向上する。
【0092】
第3のサブステップ(S2-1-3)では、制御回路9により電源81を制御して電源部8により処理室2の電極3と電極4との間に高周波電圧を印加せず(RF:OFF)、制御回路9により冷却装置7およびマスフローコントローラ52を制御して第1のガスの固相領域における第2の温度よりも低い第3温度および第3圧力(図22の(3))で加工対象物10を冷却する(第3のサブ動作)。第3温度は、例えば三重点の温度よりも低い。第3圧力は、例えば三重点の圧力よりも高い。第3圧力は、第2圧力と同じ圧力であってもよい。なお、制御回路9によりマスフローコントローラ52を制御して所定の期間に第1のガスの処理室2への導入を停止する。図21は、第3のサブステップ(S2-1-3)で第1のガスの処理室2への導入を停止する例(GAS1:OFF)を示す。
【0093】
第3のサブステップ(S2-1-3)では、第1のガスの固相領域における第3温度および第3圧力で加工対象物10を冷却することにより、加工対象物10の表面に固相の表面層11を形成する。第2のサブステップ(2-1-3)により液相の表面層11を形成することにより、第3のサブステップ(S2-1-3)により底面HBに固相の表面層11を形成できるため、第1の領域11aないし第3の領域11cを形成することができる。
【0094】
第4のサブステップ(S2-1-4)では、制御回路9により電源81を制御して電源部8により処理室2の電極3と電極4との間に高周波電圧を印加せず(RF:OFF)、制御回路9により冷却装置7およびマスフローコントローラ52を制御して第1のガスの固相領域における第4温度および第3圧力よりも低い第4圧力(図22の(4))で加工対象物10を冷却する(第4のサブ動作)。第4温度は、例えば三重点の温度よりも低い。第4温度は、第3温度と同じ温度であってもよい。第4圧力は、例えば三重点の圧力よりも低い。
【0095】
第4のサブステップ(S2-1-4)後の第2のステップ(S2-2)において、高圧力の第3圧力のままでプラズマを生成すると、プラズマの均一性が悪化し、シース内の衝突頻度を増加させて、イオンエネルギーが減少する。これは、加工処理物10の均一なエッチングを妨げる。これに対し、第3圧力よりも低い第4圧力に降圧することにより、均一なプラズマを生成できる。
【0096】
第2のステップ(S2-2)は、図4を参照して説明したエッチング方法例と同様に、制御回路9により冷却装置7、マスフローコントローラ52および電源81を制御し、第4温度および第4圧力で第2のガスを導入して高周波電圧を供給する第2の動作を実行することにより行われる。よって、第1の実施形態の説明を適宜援用する。
【0097】
以上のように、エッチング方法の他の例では、第1のガスの液相領域における高圧および低温で液相の表面層を形成した後に、第1の領域の固相領域における低圧および低温で加工対象物10をエッチングすることにより、高アスペクト比の開口Hを形成する場合であってもエッチングレートを向上させて高速なエッチングを実現することができる。
【0098】
なお、本実施形態は、他の実施形態と適宜組み合わせることができる。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0100】
1…エッチング装置、2…処理室、3…電極、3a…表面、4…電極、4a…表面、4b…開口、5…ガス供給部、6…ガス排出部、7…冷却装置、8…電源部、9…制御回路、10…加工対象物、11…表面層、11a…第1の領域、11b…第2の領域、11c…第3の領域、12…光源、13…光導波路、14…透過体、51…ガス供給源、52…マスフローコントローラ、61…バルブ、62…ターボ分子ポンプ、63…ドライポンプ、71…チラー、72…冷媒管、81…電源、81A…電源、81B…電源、82 整合回路、82…整合回路、82A…整合回路、82B…整合回路、101…基板、102…下地層、103…第1の層、104…第2の層、105…導電膜、106…マスク層、107…コア絶縁膜、108…半導体チャネル層、109…メモリ膜、110…導電層、191…トンネル絶縁膜、192…電荷蓄積層、193…ブロック絶縁膜。
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